作品番号 | 題 名 | 作 者 | 詩 形 |
24-01 | 菊花 | 岳 詠 | 七言絶句 |
24-02 | 秋日絶句 | 禿 羊 | 七言絶句 |
24-03 | 孔子作猗蘭操 | 杜 正 | 七言絶句 |
24-04 | 菊花 | ニャース | 七言絶句 |
24-05 | 菊 | 風雷山人 | 七言絶句 |
24-06 | 霜晨黃 | 栖 竹 | 七言絶句 |
24-07 | 賞菊 | 河 山 | 七言絶句 |
24-08 | 題久隅守景納涼圖 | 竹 林 | 七言絶句 |
24-09 | 三秋禱 | 恕 水 | 七言絶句 |
24-10 | 月下秋花 | 凌 雲 | 七言絶句 |
24-11 | 菊花 | 康寧堂 | 五七言絶句 |
24-12 | 菊花 | 東 山 | 七言絶句 |
24-13 | 秋花 | 岳 城 | 七言絶句 |
24-14 | 隠士賞菊 | 魏河民 | 七言絶句 |
24-15 | 菊香芳馥 | 鮟 鱇 | 五言絶句 |
24-16 | 杯浮黄蕊 | 鮟 鱇 | 七言絶句 |
24-17 | 菊香芳馥 | 鮟 鱇 | 五言律詩 |
24-18 | 菊開人醉吟 | 鮟 鱇 | 七言律詩 |
24-19 | 秋花 | 觀 水 | 七言律詩 |
24-20 | 閑坐偶成 憶東籬菊花 | 觀 水 | 七言絶句 |
24-21 | 菊 | 神無月 | 七言絶句 |
24-22 | 江邊白菊 | 忍 冬 | 七言絶句 |
24-23 | 看菊小集 | 瓊 泉 | 七言絶句 |
24-24 | 霜降 | 青 風 | 七言絶句 |
24-25 | 秋花(愛山路草花) | 茜 峰 | 七言絶句 |
24-26 | 秋花(胡枝花 一) | 老 遊(桐山堂刈谷) | 七言絶句 |
24-27 | 秋花(胡枝花 二) | 老 遊(桐山堂刈谷) | 七言絶句 |
24-28 | 秋花(曼珠沙華) | 老 遊(桐山堂刈谷) | 七言絶句 |
24-29 | 重陽賞菊 | 聖 峰(桐山堂刈谷) | 七言絶句 |
24-30 | 菊酒 | 鉃 山(桐山堂刈谷) | 七言絶句 |
24-31 | 老父作菊 | 汀 華(桐山堂刈谷) | 七言絶句 |
24-32 | 重陽節句 | 容 将(桐山堂刈谷) | 七言絶句 |
24-33 | 菊 | 容 将(桐山堂刈谷) | 七言絶句 |
24-34 | 訪友看菊 | 芳 親(桐山堂刈谷) | 七言絶句 |
24-35 | 看菊 | 靜 巒(桐山堂刈谷) | 七言絶句 |
24-36 | 彼岸菊 | 梗 艸(桐山堂刈谷) | 七言絶句 |
24-37 | 裏庭秋明菊 | 小 圃(桐山堂刈谷) | 七言絶句 |
24-38 | 金栗 | 小 圃(桐山堂刈谷) | 七言絶句 |
24-39 | 重陽節 | 美 豊(桐山堂刈谷) | 七言絶句 |
24-40 | 秋響 | 孜 堂(桐山堂刈谷) | 七言絶句 |
24-41 | 菊花展會 | 醉 竹(桐山堂半田) | 七言絶句 |
24-42 | 秋花(九日雜感) | 健 洲(桐山堂半田) | 七言絶句 |
24-43 | 重陽觀菊 | 輪中人(桐山堂半田) | 七言絶句 |
24-44 | 晩秋偶成 | 輪中人(桐山堂半田) | 七言絶句 |
24-45 | 菊花布 | 泠 江(桐山堂半田) | 七言絶句 |
24-46 | 懷母 | 向 岳(桐山堂半田) | 七言絶句 |
24-47 | 秋思 一 | 福 江(桐山堂半田) | 七言絶句 |
24-48 | 秋思 二 | 福 江(桐山堂半田) | 七言絶句 |
24-49 | 野辺叢菊 | 甫 途(桐山堂静岡) | 七言絶句 |
24-50 | 明月菊花 | 甫 途(桐山堂静岡) | 七言絶句 |
24-51 | 菊祭 | 甫 途(桐山堂静岡) | 七言絶句 |
24-52 | 菊花 | 子 方(桐山堂静岡) | 七言絶句 |
24-53 | 九月九日 | 一 菊(桐山堂静岡) | 七言絶句 |
24-54 | 重陽看菊 | F・U(桐山堂静岡) | 七言絶句 |
24-55 | 菊 | 香 裕(桐山堂静岡) | 七言絶句 |
24-56 | 秋菊 | 常 春(桐山堂静岡) | 七言絶句 |
24-57 | 觀菊 | 柳 村(桐山堂静岡) | 七言絶句 |
24-58 | 菊花展 | 柳 村(桐山堂静岡) | 七言絶句 |
24-59 | 重陽 | 擔 雪(桐山堂静岡) | 七言絶句 |
24-60 | 觀菊 | 擔 雪(桐山堂静岡) | 七言絶句 |
24-61 | 萬物齊同之命 | 道 佳 | 七言絶句 |
24-62 | 菊花 | 桐山人 | 七言絶句 |
[01] 参加者 岳詠
菊花
過雨碧天秋色嘉 過雨の碧天 秋色嘉し
傲霜沾露一籬花 霜に傲り露に沾ひ 一籬の花
絶無人訪草堂裡 絶えて人の訪ふ無く 草堂の裡(うち)
對菊尋思吹鬢華 菊に対して尋思すれば 鬢華を吹く
通り雨の後、青空となり秋景が色鮮やかで、
霜に耐え露に沾って籬の菊は咲き始めた。
粗末な家には訪れる人もいなく、菊に向かい合ってあれこれ
考えていると、秋風が揉み上げなどの白髪に吹寄せて来た。
[02] 参加者 禿羊
秋日絶句
好日秋山誘老爺 好日 秋山 老爺を誘ひ
依笻歩歩細途斜 笻に依って 歩歩 細途斜めなり
岡頭炙背坐枯草 岡頭 炙背して 枯草に坐し
愛看搖風野菊花 愛し看る 風に揺らるる 野菊の花
[03] 参加者 杜正
孔子作猗蘭操
秋意歸途逢物華 秋意の帰途 物華に逢ふ
妙香蘭蕊發霜葩 妙香 蘭蕊 霜葩を発す
松間夫子鳴琴應 松間の夫子は 琴を鳴らして応ふ
清韻洋洋何可加 清韻 洋洋たり 何をか加ふべけん
「猗蘭操」は琴の曲として今残っている中で一番古い曲とされています。
<解説>
孔子が諸国を歴訪したが採用されることがなく、魯の国に帰る途中に松林の中の雑草の中で蘭が美しく咲いているのを見て、
自分と同じようだと思い、琴の曲「猗蘭操」を作曲して演奏している状況を詠みました。
秋になって (国に)帰る途中 美しい景色に出会った
すばらしくいい匂いがする蘭が白い花を咲かせていた
松の間で 孔子が琴を鳴らしてそれに応えていた
清らかな音が遠くまで響きわたっている これ以上何をつけ加える必要があろうか
[04] 参加者 ニャース
菊花
小徑清晨踏薄霜
紅楓葉落覆村庄
寒秋唯有籬邊菊
傲立枝頭幾朶黃
[05] 参加者 風雷山人
菊
濁酒吟杯貧士家、 濁酒吟杯 貧士の家、
西風漾漾酌流霞。 西風漾漾 流霞を酌む。
清香盡日重陽節、 清香尽日 重陽節、
遠想陶潛觀菊花。 陶潜を遠想し 菊花を観る。
(大意:片歌形式)
濁り酒。我が家、吟杯、善き呑み日和。
せいふうが運ぶりゅうかをくむ、その気持ち。
清らかな重陽節の、香り終日。
菊の花。見つめて想う、とうせんの憩い。
[06] 参加者 栖竹
霜晨黃菊
滿目蕭條曉日斜 満目蕭条として 暁日斜めなり
霜風吹過散人家 霜風吹き過ぐ 散人の家
數枝含露發籬落 数枝露を含み 籬落に発く
愛惜耐寒黃玉花 愛惜す寒に耐ふる黄玉の花
[07] 参加者 河山
賞菊 菊を賞す
朶朶爭姸籬畔花 朶朶 妍を争ふ 籬畔の花
黃紅映日賞心加 黄紅 日に映じ 賞心加はる
泛英觴詠幽香裡 英を泛べ觴詠す 幽香の裡
晩節C標在我家 晩節の清標 我家に在り
庭の籬では、枝が美しさを争うように咲き乱れている。
黄や紅の花が日に映じて風情が増す。
菊の花びらを採り、杯に浮かべて飲みながら詩を吟じれば、仄かな菊の香りが漂っている。
清らかな菊の花が我が家の庭に咲いている。
[08] 参加者 竹林
題久隅守景納涼圖 久隅守景の納涼図に題す
月上壺蘆籬落花 月上る 壺蘆 籬落の花
鴛鴦竹簟共嘗茶 鴛鴦 竹簟 共に茶を嘗む
疎簾搖動微風起 疎簾 揺動して 微風起る
靜聽簷鈴絶世嘩 静かに簷鈴を聴く 世嘩を絶す
月が上り 夕顔の花が垣根に開く、
夫婦が並んで竹で編んだたかむしろで一緒に茶を飲む。
目のあらいすだれがゆれ そよ風が来たのを知る、
静かに耳を澄ますと 軒につるした風鈴の音がする 此処には世の喧噪は届かない。
[09] 参加者 恕水
三秋禱 三秋の祷り
香雲素手插茱釵 香雲 素手 茱釵を挿す
月下杯中佳友些 月下 杯中 佳友些かなり
宇内軍聲戈未息 宇内 軍声 戈未だ息まず
妻孥獻壽出師家 妻孥寿を献ず 出師の家
美しい黒髪に白い手でカワハジカミのかんざしをさす。
月明かりの下、杯には菊の花(と酒)が少し。
世界のあちらこちらで戦闘兵の声がし、戦乱は収まらない。
夫を戦場に送り出した家では、妻子が家族の健康長寿を祈る。
[10] 参加者 凌雲
月下秋花
秋風明月白雲遮 秋風の明月 白雲遮り、
夜更虫聲潤露華 夜更けて虫声 露華に潤う。
皎皎流光仙女舞 皎皎たる流光は仙女の舞、
猶飄萬葉笑梔ヤ 猶 万葉を飄して薫花に笑む。
[11] 参加者 康寧堂
菊花
平水丹青裏 平水、丹青の裏、
金風靡雜花 金風、雜花を靡かしむ。
莫言凡草木 言ふ莫かれ、凡草木と、
一一是良葩 一一、是れ良葩。
水にうつりし丹(に)に青(あお)に
風になびきし秋の花
君言ふなかれ雑草と
全ての花は良き花ぞ
[12] 参加者 東山
菊花
幽香數朶里居和 幽香数朶 里居和む
花砭壽杯人醉歌 花は寿杯に砭びて 人は酔ふて歌ふ
自照風塵秋正老 風塵を自照すれば 秋正に老いんとす
殊憐残菊後無花 殊に残菊を憐れむは 後に花の無ければなり
[13] 参加者 岳城
秋花
郊途緩歩思無邪 郊途の緩歩 思い邪 無し
多色平原是秋花 多色の平原 是 秋花
穩健鴛鴦齡八十 穏健なる鴛鴦 齢 八十
身邊爽氣又何加 身辺の爽気 又 何ぞ加へん
[14] 参加者 魏河民
隱士賞菊
城隅茅屋似陶家 城隅の茅屋、陶家に似たり
更在庭前籬下花 更に在り、庭前籬下の花
採菊浮觴相對坐 菊を採りて觴に浮かべ相対して坐す
幽香漾漾感秋加 幽香漾漾として感秋加ふる
[15] 参加者 鮟鱇
菊香芳馥
黄蕊開清楚, 黄蕊開いて清楚に,
菊香圍酒家。 菊香 酒家を囲む。
甜娘也芳馥, 甜娘もまた芳馥として,
鳳女笑如花。 鳳女 笑みて花の如し。
<語釋>
黄蕊:黄菊。甜娘:酒の異名。鳳女:女性の美称。
[16] 参加者 鮟鱇
杯浮黄蕊
素秋夕日若金葩, 素秋の夕日 金葩のごとく,
芳馥菊香生酒家。 芳馥たる菊香 酒家に生ず。
笑扮淵明醉翁喜, 笑みて淵明に扮したる醉翁喜べば,
杯浮黃蕊月中嘉。 杯は黄蕊を浮かべ月中に嘉なり。
<語釋>
淵明:陶淵明。
[17] 参加者 鮟鱇
菊香芳馥
無聊終老處, 無聊にして老いを終(すご)せるところ,
有酒扮詩家。 酒あり 詩家に扮す。
筆翰馳箋紙, 筆翰(ふで)は箋紙を馳せ,
菊香生墨花。 菊香は墨花に生ず。
白頭陶醉賞, 白頭 陶酔して賞すに,
金蕊盛開嘉。 金蕊 盛んに開いて嘉なり。
芳徑穿秋野, 芳徑 秋野を穿ち,
夕陽輝彩霞。 夕陽 彩霞に輝けり。
<語釋>
終老:老境を過ごす。金蕊:黄菊。
[18] 参加者 鮟鱇
菊開人醉吟
黄蕊盛開環酒家, 黄蕊 盛んに開いて酒家を環(めぐ)り,
菊香芳馥吐金霞。 菊香 芳馥として金霞を吐く。
詩翁如此描仙府, 詩翁 此の如く仙府を描かば,
夢想迎秋伴月華。 夢想 秋を迎えて月華を伴う。
清影照臨吟興起, 清影 照臨して吟興起こり,
非才奮迅瘦肩誇。 非才 奮迅して痩肩誇る。
擬唐平仄玲瓏響, 唐に擬えたる平仄 玲瓏たる響き,
陶醉景光求句嘉。 景光に陶酔して句を求むるは嘉なり。
[19] 参加者 觀水
秋花
莫言本不及春華 言ふ莫かれ 本(もと)春華に及ばずと
到處秋光各可誇 到る処の秋光 各おの誇るべし
呈秀紫蘭宜我室 秀を呈す紫蘭 我が室に宜しからん
放芳金桂是誰家 芳を放つ金桂 是れ誰が家ぞ
村田含露白蕎麥 村田 露を含む 白蕎麦
野路傲霜黃菊花 野路 霜に傲る 黄菊花
一一寫來閑客樂 一一 写し来るは 閑客の楽しみ
錦囊也有自豪奢 錦嚢も也(ま)た自づから豪奢なる有り
もとより春の華やぎに 及ばないとは言うまいぞ
いたるところの秋景色 みんなそれぞれ誇るべし
見目麗しきあの紫蘭 ウチにもあったらいいのにな
香り豊かな金木犀 どちらのお宅のものだろう
村の田見れば露帯びて 白く可憐に蕎麦咲いて
野の路行けば霜に耐え 黄色際立つ菊の花
一つ一つを取り上げて 詩に詠むことの楽しさよ
これで作品ストックも 豪勢になるというものさ
[20] 参加者 觀水
閑坐偶成 憶東籬菊花
想像東籬照夕霞 想像す 東籬の夕霞に照らされ
霜風繞處發金葩 霜風 繞る処 金葩の発くを
坐引壺觴擬彭澤 坐ろに壺觴を引いて 彭沢に擬す
酒中詠菊思無邪 酒中 菊を詠じて 思ひ邪無からん
想像してみる東のほう 籬の夕日に照らされて
霜衝く風の吹くなかで 黄金(こがね)の花が咲くところ
お酒の支度を整えて 陶淵明にあやかって
酔いに任せて詠む菊に 邪心なんかはあるものか
[21] 参加者 神無月
菊
病兒窗下發黃花 病児の窓下黄花ひらく
夜氣侵街戰齒牙 夜気街を侵し歯牙を戦わす
被背母將看急診 母に背負はれ将に急診を受けんとす
月光照道菊莖斜 月光道を照らし菊茎斜めなり
病児の窓の下で黄色の菊の花が咲きました。
夜気が街を侵し病児は寒くて歯がガチガチと鳴っています。
母に背負われて、これから急診を受けようとするとき、
月光が病児の行く道を照らし、菊が斜めに揺れていました。
(筆者の子供時代の体験をイメージして作りました)
[22] 参加者 忍冬
江邊白菊
雨霽江邊一徑斜 雨霽る 江辺 一径斜めなり
西風颯颯度穿花 西風 颯颯として 花を穿ちて度る
叢生白菊有C馥 叢生の白菊 清馥有り
閑看赤蜓亂逐葩 閑かに看る 赤蜓 乱れて葩を逐ふを
[23] 参加者 瓊泉
看菊小集
千枝松菊釀秋陰 千枝の松菊 秋陰を醸し
庭上開筵香自深 庭上筵を開けば 香自ら深し
佳節風情詩料好 佳節の風情 詩料好し
良宵相酌剪燈吟 良宵相ひ酌んで 灯を剪りて吟ず
[24] 参加者 青風
霜降
C晨小苑見霜華 清晨の小苑 霜華を見る
撩乱山茶隱士家 撩乱たる山茶 隠士の家
借問何因棲樹裏 借問す 何によりてか樹裏に棲むと
赤楓楓落喜無涯 赤楓も楓落も喜び果てなし
清らかな朝、この家の小庭は霜の華で真っ白。
紅の山茶花が咲き乱れ、ここは隠者の家のようだ。
「ちょっとお尋ねします。どうしてこんな林の中に棲んでいるんですか」
「紅葉した楓も、風に舞う楓の葉も私には限りない喜びなんです」
[25] 参加者 茜峰
秋花(愛山路草花)
避嫌残暑山河遊 残暑を 避嫌し 山河の遊び
涼気樹陰清水流 涼気の 樹陰 清水流る
五彩可憐花点在 五彩の 可憐な 花点在す
今年亦愛悦康秋 今年も 亦愛づ 悦康の秋
※ 草花は ヤマジノホトトギス、ツリフネソウ、アケボノソウ、ミカエリソウ等です。
きびしい残暑から逃れたいと 山行をした。渓流に沿って樹間の斜面を登ると いつか涼気に包まれる。
ピンク、紫、朱等の 可愛い秋の草花が あちこちに咲いて待ってくれている。
今年もまたこの時期 ここで 出会えたねと嬉しく しみじみとした喜びの秋を味わう。
[26] 参加者 老遊
秋花(胡枝花 一)
秋旻歳歳暑威加 秋旻 歳歳 暑威加はる
園菜方枯散夏葩 園菜 方に枯れんとし 夏葩を散ず
天變空知籬落下 天変空しく知る 籬落の下
數條白蕾醉胡花 数条の白蕾 胡花に酔ふ
[27] 参加者 老遊
秋花(胡枝花 二)
殘炎未去夏風加 残炎 未だ去らず 夏風加はる
不育菜茄農叟嗟 不育の菜茄に農叟は嗟(なげ)く
興盡投鍬寄籬落 興尽き 鍬を投げて 籬落に寄れば
豈圖白蕾見胡花 豈に図らんや 白蕾の胡花を見る
[28] 参加者 老遊
秋花(曼珠沙華)
始収米稼幾村家 米稼収め始むる 幾村の家
長汝辛勞汗滴加 汝を長つるに 辛労 汗滴加ふ
無爲自然天地下 無為自然 天地の下
新莖驚見曼珠華 新茎 驚き見るは 曼珠の華
[29] 参加者 聖陽
重陽賞菊
蕭瑟金風秋氣加 蕭瑟 金風 秋気加はる
重陽幽暮獨看花 重陽 幽暮 独り花を看る
虫聲楚楚萬香菊 虫声 楚楚とした万香の菊
石榻泠泠一椀茶 石榻 泠泠 一椀の茶
[30] 参加者 鉃山
菊酒
瓶菊一枝明鄙家 瓶菊 一枝 鄙家を明るくす
花盃傾盡樂年華 花盃 傾け尽くして 年華を楽しむ
西風吹露桂香冷 西風 露を吹いて 桂香冷ややか
虛室餘間靜煮茶 虚室 余閑 静かに茶を煮る
[31] 参加者 汀華
老父作菊
寒日堆肥斫地爺 寒日 肥を堆(たい)し 地を斫(き)る家
待春封植挿千芽 待春 封植(ほうしょく)し 千芽を挿す
茎枝誘引炎天下 茎枝(けいし)の誘引 炎天下
秋影閑迎爛漫花 秋影 閑かに迎ふ 爛漫の花
父が以前取り組んでいた菊作りの一年の様子をまとめました。
「斫地」… すきで田畑をすく 「封植」… 栽培する
[32] 参加者 容将
重陽節句
旻天爽籟好秋華 旻天 爽籟 好秋華
籬下芬馨隱逸花 籬下の芬馨 隠逸花
樹下開筵傾壽酒 樹下 筵を開いて寿酒を傾け
歡娯不盡帶陽斜 歓娯 尽きず 陽を帯びて斜めなり
[33] 参加者 容将
菊
朝來風露亂秋芳 朝来 風露 秋芳乱る
園苑菊花寒更香 園苑 菊花 寒にして更に香し
姿體爭姸C又楚 姿体 妍を争ふ 清く又楚なり
賞心忘刻欲昏黃 賞心 刻を忘れ 昏黄ならんと欲す
[34] 参加者 芳親
訪友看菊
嫋嫋秋風山麓家 吹き渡る秋風 山麓の家
黃英素蕊競相誇 黄英 素蕊 競ひ相誇る
清香滿架積年技 清香 満架 積年の技
好景一詩題菊花 好景 一詩 菊花を題す
毎年多くの菊を栽培し楽しんでいる吟友を訪ねた時のことです。
色紙に菊を描き、句を添えました。
[35] 参加者 靜巒
看菊
暑威漸去野人家 暑威 漸く去る 野人の家
颯颯西風過竹笆 颯颯たる西風 竹笆を過ぐ
雙蝶翅輕重九日 双蝶 翅軽し 重九の日
白英金蕊競C華 白英 金蕊 清華を競ふ
[36] 参加者 梗艸
彼岸菊
晴空一碧思無邪 晴空一碧 思ひに邪無し
父母慕懷陳菊花 父母を慕懐して 菊花を陳(なら)ぶ
殘手C香蘇幼日 手に残る清香 幼日を蘇らす
西風涼意寂寥加 西風 涼意 寂寥加はる
彼岸の一日の詩です。
転句の「同幼日」は、この時季に菊花の片を使ってままごと遊びをした時の、手に残る香を懐かしく思う気持ちです。
[37] 参加者 小圃
裏庭秋明菊
野堂庭際滿叢花 野堂の庭際は満叢の花
秀草瓊英秋雨斜 秀草 瓊英 秋雨斜めなり
早晩繽紛鋪石徑 早晩 繽紛 石径に鋪く
殘紅房牖一香加 残紅 房牖 一香加はる
大輪の菊の開花にはまだ早い頃、裏庭の日陰でも秋明菊が満開です。
美しい赤い花を詠みました。
秋 明 菊
[38] 参加者 小圃
金栗
晩秋山影夕陽斜 晩秋 山影 夕陽斜め
風渡霜林冷氣加 風は霜林を渡り 冷気加はる
大小白黃色香競 大小 白黄 色香を競ふ
滿庭C菊野人家 滿庭の清菊 野人の家
大輪の白菊、黄菊、小さな菊が並んだ庭。一年中でもっとも華やかです。
「金粟」は白居易の次の詩から。
詠菊 白居易(中唐)
一夜新霜著瓦輕 一夜 新霜 瓦に著(つ)きて輕く
芭蕉新折敗荷傾 芭蕉は新たに折れて 敗荷は傾く
耐寒唯有東籬菊 寒に耐ふるは 唯だ 東籬の菊のみに有りて
金粟初開曉更C 金粟 初めて開きて 曉更に清し
(七言絶句 「輕」「傾」「C」… 下平声「八庚」の押韻)
[39] 参加者 美豊
重陽節
巻雲氣感秋嘉 巻雲 気 感秋嘉し
稻武仙遊石徑斜 稲武の仙遊 石径斜めなり
絹帛爛然重九飾 絹帛 爛然たり 重九の飾
門前壽客未開葩 門前の寿客 未だ葩(はな)開かず
愛知県豊田市、稲武の寺へ「重陽の節句飾り展」を見に行った。
豪華絢爛、秋真っ盛り。庭の菊花はまだ開いていない。
[40] 参加者 孜堂
秋響
金風片片楓斜 秋風 片片 楓斜めなり
無影大空啼一鴉 碧落 姿無く 一鴉啼く
庭菊白黃香和酒 驚き飲む 金葩 香り酒に和す
陶然秋麗興何涯 陶然 秋麗 興何ぞ涯(かぎ)らん
[41] 参加者 醉竹
菊花展會
秋寺金風萬菊花 秋寺 金風 万菊の花
培翁得賞頗矜誇 培翁 得賞 頗る矜誇
C姸逸品人皆讃 清妍 逸品 人皆讃ふ
流憩悠悠日已斜 流憩 悠悠 日已に斜なり
[42] 参加者 健洲
秋花(九日雜感)
西風過鬢報秋來 西風 鬢を過ぎ 秋を報じ来たる
坐對庭柯百感催 坐して庭柯に対すれば百感催す
近歳病餘當止酒 近歳 病餘 当に酒を止むべければ
泛茶今日菊花杯 茶に泛べ 今日 菊花の杯
[43] 参加者 輪中人
重陽觀菊
脈脈秋香籬畔花 一脈の秋香 籬畔の花
千枝萬態一叢譁 千枝 万態 一叢譁(かまびす)し
初開玉蕊黄金色 初めて開く玉蕊 黄金色
盡日C姸貧士家 尽日 清妍 貧士の家
[44] 参加者 輪中人
晩秋偶成
金風漾漾碧天遐 金風 漾漾 黄花を試む
處處村堂秋色嘉 処処 村堂 秋色嘉(よ)し
一簇千莖籬落下 一簇 千茎 籬落の下
C香黃菊野人家 幽香 晩節 野人の家
田舎の晩秋のゆったりした風景を思い描いて作詩しました。
[45] 参加者 泠江
菊花布
玉露漙漙碧葉遮 玉露 漙漙(たんたん) 碧葉遮る
秋光帷幕菊紋紗 秋光 帷幕 菊紋の紗
群芳貴種彩時節 群芳の貴種 時節を彩る
瑞典尊前馥郁花 瑞典 尊前 馥郁の花
[46] 参加者 向岳
懷母
秋分天冷献香華 秋分 展墓 秋花冷ややか
院内讀經童子哇 院内 読経 童子の哇
北地終生勤恪母 北地 終生 勤恪の母
墓前白菊憶生涯 墓前の白菊で 生涯を憶ふ
[47] 参加者 福江
秋思 一
夕暮涼風情感嘉 夕暮 涼風 情感嘉し
軒墀絡緯興添加 軒墀(けんち)の絡緯 興添加す
春蘭秋菊孤松 春蘭 秋菊 孤松の緑
憂樂託詩殘月斜 憂楽 詩に託せば 残月斜なり
[48] 参加者 福江
秋思 二
菊花帶露冷涼加 菊花 露を帯び 冷涼加はる
虫韻微聞野老家 虫韻 微かに聞く 野老の家
長夜燈前端坐久 長夜 灯前 端坐久し
知音尺素一杯茶 知音の尺素 一杯の茶
[49] 参加者 甫途
野辺叢菊
晩山秋色三両鴉 晩山 秋色 三両の鴉
破屋荒林墓碣斜 破屋 荒林 墓碣斜めなり
腐朽竹筒何事況 腐朽 竹筒 何の事況
時看叢菊白黄花 時に看る叢菊 白黄の花
[50] 参加者 甫途
明月菊花
白髪何年今更加 白髪 何年 今更に加ふ
痩皮纏體揺躇斜 痩皮 體に纏ひ 揺躇斜なり
東籬獨佇看飛鳥 東籬 獨り佇めば 飛鳥を看る
明月煌煌黃菊花 明月 煌煌 黄菊の花
[51] 参加者 甫途
菊祭
湯島天神滿院花 湯島天神 満院の花
松陰散策踏庭沙 松陰散策 庭沙を踏む
秋風颯颯遍愁殺 秋風 颯颯 遍く愁殺
白菊吹香獨自誇 白菊 香を吹き 獨り自ら誇る
[52] 参加者 子方
菊花
熱風連日吹東海 熱風 連日 東海を吹き
已往仲秋猶暑加 已に往く仲秋 猶ほ暑加はる
朔北雨多蒙水害 朔北は雨多く 水害を蒙る
鐘聲晩照看黃花 鐘声 晩照 黄花を看る
[53] 参加者 一菊
九月九日
九日紅樓涼意加 九日 紅楼 涼意加ふ
銀蟾一片照窗紗 銀蟾 一片 窗紗を照らす
宴游歡笑夜逾永 宴游 歓笑 夜逾よ永し
客散孤酙對菊花 客散じて孤酙 菊花に対す
[54] 参加者 F・U
重陽看菊
秋入衣襟涼氣嘉 秋は衣襟に入り 涼気嘉く
庭除澹澹夕陽斜 庭除 澹澹 夕陽斜めなり
重陽又看籬邊菊 重陽 又看る 離辺の菊
灑灑冷香幽趣賖 蕭灑 冷香 幽趣賖(なが)し
[55] 参加者 香裕
菊
陋村細徑發黃花 閑居の細径に黄花発く
芳艷C香懷故家 芳艶 清香 故家を懐ふ
孤雁暮雲千里遠 孤雁 暮雲 千里遠く
重陽佳節獨烹茶 重陽の佳節 独り茶を烹る
[56] 参加者 常春
秋菊
炎炎殘暑是寒露 炎炎たる残暑 是れ寒露
禾穂滿叢餘力誇 禾穂 叢に満ち 余力誇る
栗綻柿紅多彩色 栗綻び 柿紅く 多彩の色
重陽那處未黃花 重陽 那れの処 黄花未だし
[57] 参加者 柳村
觀菊
偶訪西郊故友家 偶ま訪ふ 西郊 故友の家
小庭C楚又豪奢 幽庭は清楚 又た豪奢
黃黃白白籬邊菊 黄黄 白白 籬辺の菊
脈脈芳香秋氣加 脈脈たる芳香 秋気加はる
[58] 参加者 柳村
菊花展
陳列菊盆佳興長 陳列の百株 佳興長し
傲霜浥露放幽香 霜に傲り 露に浥ひ 幽香を放つ
栽培半歳秀花展 栽培 半歳 秀花展
萬態千姿誇麗粧 万態 千姿 麗粧を誇る
[59] 参加者 擔雪
重陽
庭際東籬白菊花 庭際 東籬 白菊の花
C香馥郁野人家 清香 馥郁 野人の家
猶殘暑氣難忘苦 猶ほ残る 暑気 苦を忘れ難し
遠望高天秋色嘉 遠く望む 高天 秋色嘉し
[60] 参加者 擔雪
觀菊
九月山村野老家 九月 山村 野老の家
芳庭籬落白黃花 芳庭 籬落 白黄の花
重陽正是好時節 重陽 正に是れ 時節佳し
向晩朋僚酒當茶 向晩 朋僚 酒 茶に当つ
[61] 参加者 道佳
萬物齊同之命 万物斉同の命
異常四季變開花 異常な四季 変る開花
危険生靈猛暑牙 危険なる生霊 猛暑の牙
一將功多枯萬骨 一将功なりて多に 枯れん万骨
即今憲法知能遮 即今 憲法の知能で遮らん
百日紅が七月からひと月早く咲き、彼岸花が一〇月に彩る。
草花の開花の時期がまったく狂ってきています。
「命の危険」と気象予報で、猛暑を警告。
全てのものは、同じなのに。まさに一握りの人達による儲け第一主義、止まない戦争で、万物が危機が迫っています。
いまこそ、こうした暴挙を止めさせなくては、憲法の知能で!
[62] 参加者 桐山人
菊花
幽庭一縷冷香加 幽庭 一縷の冷香加はる
破曉傲霜黃蕊花 破暁 霜に傲る 黄蕊の花
百草秋衰人亦老 百草 秋に衰へ 人も亦た老ゆ
C光獨占菊將誇 清光を獨り占めて 菊将に誇る
冬菊のまとふはおのがひかりのみ 水原秋桜子