作品番号 | 作 者 | 題 名 | 詩 形 | |
[01] | 越粒庵 | 「雪中新年」 | 五言絶句 | |
[02] | 虎堂 | 「新年口占」 | 七言絶句 | |
[03] | 劉建 | 「歳次乙未(一)」 | 七言絶句 | |
[04] | 劉建 | 「歳次乙未(二)」 | 七言絶句 | |
[05] | 黒 | 「新年感懷 一」 | 七言絶句 | |
[06] | 黒 | 「新年感懷 二」 | 七言絶句 | |
[07] | 修玲 | 「元旦」 | 七言絶句 | |
[08] | 深溪 | 「新年感懷」 | 七言絶句 | |
[09] | 深溪 | 「又新年感懷」 | 七言絶句 | |
[10] | 仁岳 | 「新年感懷 一」 | 七言絶句 | |
[11] | 仁岳 | 「新年感懷 二」 | 七言絶句 | |
[12] | 薫染 | 「新年感懷」 | 七言絶句 | |
[13] | 哲山 | 「新年感懷」 | 五言絶句 | |
[14] | 兼山 | 「新年感懷」 | 七言絶句 | |
[15] | 禿羊 | 「新年感懷」 | 七言絶句 | |
[16] | 忍夫 | 「新年感懷(一)」 | 七言絶句 | |
[17] | 忍夫 | 「新年感懷(二)」 | 七言絶句 | |
[18] | 東山 | 「新年所懷(一)」 | 七言絶句 | |
[19] | 東山 | 「新年感懷(二)」 | 七言絶句 | |
[20] | Y.T | 「在他郷迎春」 | 七言絶句 | |
[21] | 謝斧 | 「新年感懷 其一」 | 七言絶句 | |
[22] | 謝斧 | 「新年感懷 其二」 | 七言律詩 | |
[23] | 鮟鱇 | 「迎接乙未年所懷」 | 七言絶句 | |
[24] | 鮟鱇 | 「新年感懷 其一」 | 五言絶句 | |
[25] | 鮟鱇 | 「新年感懷 其二」 | 五言律詩 | |
[26] | 明鳳 | 「新年感懷 其一」 | 七言絶句 | |
[27] | 明鳳 | 「新年感懷 其二」 | 七言絶句 | |
[28] | 押原 | 「新年感懷」 | 七言絶句 | |
[29] | 杜正 | 「新年感懷」 | 七言絶句 | |
[30] | 筋明 | 「新年感懷」 | 七言絶句 | |
[31] | 勝江 (桐山堂刈谷) | 「迎春」 | 七言絶句 | |
[32] | M.O (桐山堂刈谷) | 「新年作」 | 七言絶句 | |
[33] | 松閣 (桐山堂刈谷) | 「乙羊新年」 | 七言絶句 | |
[34] | 岳喨 (桐山堂刈谷) | 「乙未新春」 | 七言絶句 | |
[35] | 眞海 (桐山堂刈谷) | 「與友迎新春」 | 七言絶句 | |
[36] | 一兔 (桐山堂刈谷) | 「賀新春」 | 七言絶句 | |
[37] | 仁山 (桐山堂刈谷) | 「新年」 | 七言絶句 | |
[38] | 小園 (桐山堂刈谷) | 「訪伊勢社」 | 七言絶句 | |
[39] | N.I (桐山堂刈谷) | 「迎春」 | 七言絶句 | |
[40] | W.I (桐山堂刈谷) | 「春景」 | 七言絶句 | |
[41] | T.S (桐山堂刈谷) | 「新年」 | 七言絶句 | |
[42] | 桐山人 | 「新年感懷」 | 七言絶句 | |
[43] | 薫染 | 「迎立春」 | 七言絶句 | |
[44] | 洋景 | 「迎立春」 | 七言絶句 | |
[45] | 點水 | 「迎立春」 | 七言絶句 | |
[46] | 兼山 | 「迎立春」 | 七言絶句 | |
[47] | 凌雲 | 「迎立春 其一」 | 五言律詩 | |
[48] | 凌雲 | 「迎立春 其二」 | 五言律詩 | |
[49] | 常春 | 「迎立春 其一」 | 七言絶句 | |
[50] | 常春 | 「迎立春 其二」 | 七言絶句 | |
[51] | 鮟鱇 | 「迎立春 其一」 | 五言絶句 | |
[52] | 鮟鱇 | 「迎立春 其二」 | 五言律詩 | |
[53] | 鮟鱇 | 「迎立春 其三」 | 五言律詩 | |
[54] | 鮟鱇 | 「迎立春 其四」 | 七言絶句 | |
[55] | 鮟鱇 | 「迎立春 其五」 | 七言律詩 | |
[56] | 鮟鱇 | 「迎立春 其六」 | 七言律詩 | |
[57] | 明鳳 | 「迎立春」 | 七言律詩 | |
[58] | 道佳 | 「迎立春」 | 七言絶句 | |
[59] | ニャース | 「春節」 | 七言絶句 | |
[60] | 觀水 | 「迎立春」 | 七言律詩 | |
[61] | 桐山人 | 「迎立春」 | 七言絶句 | |
[62] | 桐山人 | 「迎立春」 | 七言絶句 |
[雪中新年]
村鶏初報暁 村鶏初めて暁を報じ
天地吉祥催 天地吉祥を催す
莫謂寒波苦 謂ふ莫れ寒波苦しと
春先綻早梅 春は先ず早梅を綻ばす
暖冬予報に裏切られ、大雪の正月を迎えようとしています。父祖伝来の雪とあきらめています。春を待つこと切。
[新年口占]
天地新正春又回 天地新正 春 又回る
一家無恙笑顔開 一家 恙無く 笑顔開く
馬齡雖纍未知老 馬齢累ぬると雖も 未だ老いを知らず
嬉戯児孫亦善哉 児孫と嬉しみ戯れるも 亦 善き哉
[歳次乙未(一)]
雨水迎春娘子來 雨水 迎春 娘子来たり
鵝毛片片一枝堆 鵝毛 片片として 一枝に堆く
鶇歸故里如何囀 鶇(とう) 故里に帰り 如何に囀らん
坐欲思ク問酒杯 坐に思郷 酒杯に問はんと欲す
「雨水」: 2015年2月19日は春節(旧正月)で雨水ともなる。
「鵝毛」: 白くて軽い雪。
「鶇」: つぐみ、越冬のため飛来する冬鳥。夏季には鳴かず、口をつぐんでいるとも言われる。
[歳次乙未(二)]
迎春送臘掃塵埃 迎春 臘を送り 塵埃を掃き
自酌屠蘇注斗魁 自ら酌す 屠蘇 斗魁に注ぐ
包五辛盤鍋貼食 五辛盤を包み 鍋貼を食せば
家中燈火照窓梅 家中 燈火 窓梅を照らす
「斗魁」: 北斗七星の柄杓の器の部分にあたる四星。転じて大きな杯。
「鍋貼」: 餃子を鍋で焼くこと。(我が家では麺に韮や卵を包んで焼いて食べます)『四民月令』二月に記述あり。
[新年感懷 一]
鶏鳴報暁復春回 鶏鳴 暁を報じ 歳朝来たる
老氣軒昂福運開 老気軒昂 福運 開かん
筆翰漢詩未成就 筆翰 漢詩 未だ成就せず
希求熟達獨傾杯 熟達を希求し 独り杯を傾く
[新年感懷 二]
案頭鏡餅賀書堆 案頭(あんとう)に鏡餅 賀書うず高し
拝讀青春面影回 拝読すれば 青春の面影めぐる
傘壽馬齢逝朋大 傘寿の馬齢 逝く友多し
餘生長命福祥開 余生は長命の 福祥開かん
[元旦]
歳朝淑氣曙光催 歳朝 淑気 曙光催す
萬戸千門春又回 万戸千門 春又回る
椒酒一杯宜買醉 椒酒一杯 宜しく酔いを買ふべし
草堂今日笑顔開 草堂 今日 笑顔開く
[新年感懷]
曈曈旭日喚春來 曈曈たる旭日 春を喚で來る
天地迎新又快哉 天地 新を迎へ 又快なるかな
一夢半生身亦老 一夢 半生 身亦老い
獨酌白酒草堂隈 独り酌む 白酒 草堂の隈
[又新年感懷]
八十七齢春又回 八十七齢 春又回る
人生無恙笑顔開 人生 恙なく 笑顔開く
平成未歳三元首 平成の未歳三元の首
独酌椒觴亦快哉 独り酌む 椒觴 亦快なるかな
[新年感懷 一]
走行荒馬未年來 荒馬走行未年来たり
拡大格差今更開 拡大する格差 今更に開けり
虚構世情深混乱 虚構の世情 混乱を深めり
精神慈愛仁心培 慈愛の精神 仁心を培ふなり
今年は未年、格差は開き、世情は混乱、このような時こそ慈愛の心を持ってほしいものです。
[新年感懷 二]
宗教誰爲暴挙災 宗教 誰か為さん 暴挙の災
苦悲仏國殺人哀 苦悲の仏国殺人哀し
同舟呉越大行進 同舟呉越の大行進
交渉平和期到來 交渉 平和 到来を期す
先日のフランスのイスラムテロ事件、宗教思想の相違は古来からのものとはいえテロ行為は許されません。
これを機会に双方かつ世界は人類の原点、人道的な観点からじっくりお互い反省もして再度考え解決してゆかなければならないでしょう
・・・非常に難しい事ですが・・・
[新年感懷]
新迎歳首漢詩培 新たに歳首を迎へ 漢詩を培(つちか)ひ
燦燦陽光炤竹梅 燦燦たる陽光 竹梅を炤(てら)す
稍見星辰倓點滅 やうやく見(あらは)る星辰 倓(しづか)に点滅し
煌煌月色沼湖回 煌煌たる月色 沼湖を回(めぐ)る
「培」: 素質・能力を養い育てる
「星辰」: 星
「燦燦」: あざやかに輝くさま
「煌煌」: きらきらと光りかがやく
「月色」: 月の光のこと
[新年感懷]
暖冬何雪急 暖冬 何ぞ雪の急なる
寒倨樹芽纔 寒 倨して樹の芽 纔(わずか)なり
重老他郷昊 老を重ねる他郷の昊(そら)
春秋去又来 春秋 去って又来る
[新年感懷]
初雪舞天詩興催 初雪 天に舞ひ 詩興を催す
小庭好見一枝梅 小庭 好し見る 一枝の梅
暖冬異變向誰説 暖冬 異變 誰に向って説かん
無病息災呼快哉 無病 息災 快哉を呼ぶ
初雪や心身共に穢れなく
[新年感懷]
七十三年春又回 七十三年 春又回る
苟生愧笑對椒杯 苟生 愧笑して 椒杯に対す
相待慈孫正刮目 慈孫に相待すれば 正に刮目
不關今歳老軀灰 関せず 今歳 老躯灰となるも
[新年感懷(一)]
人間求活塗塵埃 人間に活を求めて塵埃にまみれ
忘却温情惑溺哀 温情を忘却して哀しみに惑溺す
除夜鐘音消伏雪 除夜の鐘の音、消伏雪
心機一轉謹乾杯 心機 一転 謹んで杯を乾す
生活のためと、日々不本意なことをしていると、
温情を忘れ、哀しみに溺れてしまう。
除夜の鐘の音と災いを消し去るように降る雪、
どちらも気持ちを新たにさせてくれる。
[新年感懷(二)]
新春何勝子歸來 新春 何ぞ勝らん 子の帰り来たる
奉謝相身無病災 相身 病災のなきを奉謝す
小宴圍炉嬉不盡 小宴 炉を囲んで 嬉は尽きず
笑門招福共乾杯 笑門 招福 共に乾杯
新春、子の帰省に勝ることなく、
互いの無事に感謝する。
炬燵を囲んで、ささやかな宴、
笑う門には福来る、さあ乾杯。
[新年所懷(一)]
四海萬邦春色復 四海万邦 春色復り
四民萬戸喜心催 四民万戸 喜心を催す
唯愁世界不波担 唯だ愁ふ 世界 波担らかならざるを
礼義丹情友好魁 礼義丹情 友好の魁
[新年所懷(二)]
淑氣洋洋萬象開 淑気洋洋 万象開き
同胞齊祝慮餘哀 同胞斉しく祝うも 余哀を慮る
先年列島多殃禍 先年列島 殃禍多く
一祈四時平隱囘 一へに祈る 四時 平穏に回るを
[在他郷迎春]
朔北新春梅未開 朔北の新春 梅 未だ開かず
孤燈明滅客愁催 孤燈明滅 客愁を催す
清宵殘月憶郷夢 清宵の残月 憶郷の夢
千里家園一夜回 千里の家園 一夜にして回る
[新年感懐 其一]
今旦迎新雪意来 今旦新を迎えるも雪意来り
茅齋凜洌未春回 茅齋凜洌 未春は回らず
欲呵凍筆生寒栗 凍筆呵しては 寒栗生じ
箋訴東皇田父哀 東皇に箋訴すれば田父哀し
[新年感懐 其二]
久甘伏櫪未心灰 久しく伏櫪に甘んじては 未だ心灰ならず
空服塩車伍老駘 空しく塩車に服しては 老駘と伍せん
破屋迎新閑沐浴 破屋新を迎えては 閑に沐浴し
晴蕪添思獨徘徊 晴蕪に思いを添えて 獨り徘徊す
邦家平穏易忘禍 邦家平穏 禍を忘れ易く
殊域紛争難避災 殊域紛争して 災避け難し
海外英知徒黙過 海外の英知 徒らに黙過し
南沙群嶼怒濤哀 南沙群嶼 怒濤哀し
「服塩車」: 塩車之憾 夫驥之齒至矣,服鹽車而上太行。蹄申膝折,尾湛胕潰,漉汁灑地,白汗交流,中阪遷延,負轅不能上。伯樂遭之,下車攀而哭之,解紵衣以冪之。驥於是俛而噴,仰而鳴,聲達於天 「戦国策」
[迎接乙未年所懷]
羊年前路旭光來, 羊年の前路に旭光來たりて,
和氣致祥天欲開。 和氣 祥(さいわい)を致して天 開かんとす。
夫婦淺酌椒酒願, 夫婦 椒酒を淺酌して願ふ,
譱隣四海譱消災。 善隣 四海に善く災を消すを。
[新年感懷 其一]
歳朝香夢醒, 歳朝 香夢醒め,
蝸舎旭光來。 蝸舎に旭光來たる。
少啜屠蘇洗, 少しく屠蘇を啜りて洗ふ,
詩毫堪試才。 詩毫の才を試すに堪ふるを。
[新年感懷 其二]
庭前家雀鬧咳咳, 庭前に家雀(すずめ)咳咳として鬧(にぎや)かに,
新旭破雲光耀開。 新旭 雲を破れば光耀開く。
洗臉三元與妻子, 臉(かほ)を洗ひ三元に妻子(つま)と,
傾觴一醉試詩才。 觴を傾けて一醉し詩才を試す。
迎春無恙磨香墨, 迎へし春に恙なく香墨を磨き,
執筆含靈潤硯臺。 執(と)りし筆は靈を含んで硯臺(すずり)に潤ふ。
覓句如泉藝林涌, 句を覓(もと)めれば泉の藝林に涌くごとく,
繆斯有意抱琴來。 繆斯(ミューズ)に意ありて琴を抱きて來たる。
[新年感懷 其一]
梅從千古百花魁 梅は千古より 百花の魁(さきがけ)
先自履端凌凍開 先ずは 履端自り 凍(こごえ)を凌いで開く
~域呈祥初詣賑 神域は 祥を呈し 初詣は賑はひ
御籤占託喜慶來 御籤の占託に慶(よろこび) 来るを喜ぶ
初詣の際、お御籤を神域の梅の枝に捧げた折の感懐です。
「履端」: 年の初め、占託=神託、神のお告げ。
[新年感懷 其二]
家内安全參拝催 家内安全に 参拝催し
古稀有八賦詩哉 古稀有八に 詩を賦す哉
浮生如夢獨題句 浮生は夢の如くも 独り句を題し
無病息災殘夢回 無病息災なれば 残夢は回る
本年は馬齢七十八に相成る愚懐です。
「浮生」: 儚い人生
「殘夢」: 人生し残したアレコレ、
[新年感懷]
新年元朝幾度來 新年元朝 幾度か来る
殘生偏託巷間隈 残生偏に託す巷間の隈
世情渾沌向何處 世情渾沌 何処に向ふ
春夏秋冬又一回 春夏秋冬 又一回(めぐ)り
[新年感懷]
新歳雲光淑気催 新歳 雲光 淑気催す
門庭開到一枝梅 門庭 開き到る 一枝の梅
迎師試筆吉字 師を迎へ 試筆 吉の字
同好陶然春又回 同好 陶然として 春 又回る
新年を迎え、まだ寒さが身にしみるところ、お師匠を迎えて書き初めをしました。
その雰囲気に同好会の人は皆 陶然となって、このように今年一年をすごそうと思いました。
[新年感懷]
穏寒乙未這香梅 穏寒 乙未 香梅這(むか)ふ
悲喜星霜到傘才 悲喜星霜傘才に到る
郵逓脚夫通過寂 郵逓の脚夫 通過寂し
正朝年計願康哉 正朝 年計 康なるを願ふ哉
[迎春]
半夜団欒梵鐘起 半夜の団欒 梵鐘起こる
窮陰既暮草堂隅 窮陰既に暮れぬ 草堂の隅
三朝柏酒笑顏發 三朝 柏酒 笑顔発く
破蕾春風一樹梅 蕾を破る春風 一樹の梅
[新年作]
佳辰韶景曙光催 佳辰 韶景 曙光催し
萬戸昇平淑氣回 万戸 昇平 淑気回る
翁媼相嘉康健壽 翁媼相嘉し 康健の寿
賀正芳宴笑顏開 賀正の芳宴 笑顔開く
[乙羊新年]
改年淑氣伴春回 改年 淑気 春を伴ひて回る
六十八齢長命杯 六十八齢 長命の杯
香墨硯田揮新筆 香墨硯田 新筆を揮ふ
百詩自詠雅懷開 詩を問ひ 百詠 雅懐開く
[乙未新春]
茅庵庭上拂塵埃 茅庵 庭上 塵埃を払ふ
除夜鐘聲節序催 除夜の鐘声 節序を催す
野老復迎新暦日 野老 復た迎ふ 新暦日
親朋賀客共含杯 親朋 賀客 共に杯を含む
[與友迎新春]
東風吹渡曉雲開 東風吹き渡り 暁雲開く
乙未三朝吟友來 乙未の三朝 吟友来る
請禱佳詩斟新水 佳詩を請祷し 新水を斟む
春盤柏酒献酬杯 春盤 柏酒 献酬の杯
[賀新春]
南枝馥郁百花魁 南枝馥郁として 百花の魁
春氣沖融鶯哢回 春気 沖融 鶯哢り回る
老境始終追往事 老境は始終 往事を追ふ
弥年時運祥雲來 年を弥る時運 祥雲来る
[新年]
侵晨凍氣透窗來 侵晨の凍氣 窓を透して来たり
遠望秀峰初日開 遠望すれば 秀峰 初日開く
夫婦相吟喜身健 夫婦相吟じ 身の健なるを喜ぶ
八旬自壽亦愉哉 八旬 自ら寿して 亦た愉しき哉
[訪伊勢社]
神遷社殿曉雲開 神の遷りし社殿に曉雲開く
宇治橋梁楯皚皚 宇治の橋梁 楯皚皚たり
松翠風清塵外境 松は翠りに風は清し 塵外の境
陽光燦燦早梅催 陽光燦燦として 早梅を催す
[迎春]
鶯聲頻告早梅開 鶯声 頻りに告ぐ 早梅開くと
竹径携瓢賀客來 竹径 瓢を携へ 賀客来る
諸事陽和詩興起 諸事陽和にして詩興起き
佳哉共飲兩三杯 佳きかな 共に飲まん 両三の杯
[春景]
東雲將拆曙光催 東雲 将に拆かんとし 曙光催す
正旦惠風啼鳥來 正旦 恵風 啼鳥来る
歡笑滿堂廻柏酒 歓笑 堂に満ち 柏酒を廻らす
萬邦萬戸一枝梅 万邦 万戸 一枝の梅
[新年]
新正麗色瑞雲開 新正 麗色 瑞雲開き
柏酒春盤清宴催 柏酒 春盤 清宴催す
子女蘭孫無別事 子女 蘭孫 別事無し
一門咸集笑顏廻 一門 咸集 笑顔廻る
[新年感懷]
厳寒正旦改爐灰 厳寒の正旦 爐灰を改む
忽看窗前白雪堆 忽ち看る 窓前に白雪堆し
稚子昂揚唱聲響 稚子は昂揚し 唱聲響く
一庭草樹似花開 一庭の草樹 花開くが似し
[迎立春]
新年復訪早春回 新年また訪れ 早春回(めぐ)り
燦麗陽光白雪堆 燦麗なる陽光 白雪堆(つ)む
快適旻天蒼空廣 快適なる旻天 蒼空広く
疎星點滅夙宵來 疎星点滅して 夙(しゅく)宵來る
「粲麗」: あざやかで、輝くばかりに美しい
「旻天」: 天空のこと
「夙宵」: 早い宵
[迎立春]
風冷山園曲水隈 風冷ややかなり 山園 曲水の隈
四邊馥郁雪花開 四辺 馥郁 雪花開く
恍然想起逋仙句 恍然 想起す 逋仙の句
蝶舞陽春目睫來 蝶舞 陽春 目睫に来る
辺り一杯の梅の花の香りを嗅ぎながら散策をしていると、
ふと林逋の詩「山園小梅」が思い浮かびました。
[迎立春]
立春二月獨徘徊 立春二月 独り徘徊
料峭東風伴雪來 料峭たる東風 雪を伴いて来る
玉屑紛飛枝上積 玉屑 紛飛 枝上に積る
庭前光景亦佳哉 庭前の光景 亦佳き哉
[迎立春]
八十有三春又回 八十 有三 春又回る
一年一夢一凡才 一年 一夢 一凡才
誰憐白髪醉顔好 誰か憐れまん 白髪 醉顔好し
無病息災献壽來 無病 息災 壽を献じて來る
春立つや一年一日是れ好日
[迎立春]
正月試詩筆 正月 詩筆試む
当吟笑福来 吟ずるに当たりて笑福来たる
推敲相対句 推敲す 相対の句
嘆息喫茶杯 嘆息す 喫茶の杯
歩道霜猶凍 歩道 霜猶凍り
街頭燕未回 街頭 燕未だ回らず
寒枝春彩乏 寒枝 春彩乏し
想像詠紅梅 想像し紅梅を詠まん
[迎立春 其二]
芳園二月開 芳園 二月開く
早早酒肴催 早早に酒肴催す
戴雪幽隨竹 雪を戴いて 幽かに竹を随はせ
冠花獨望臺 花を冠する 独り台に望む
紅粧明細霧 紅粧 細霧に明るく
玉露踊青苔 玉露 青苔に踊る
凛凛衝天笑 凛凛と天を衝いて笑み
追風不待媒 風を追ひ媒を待たず
[迎立春 其一]
殘生傾放逸 残生 放逸に傾き
何處獨徘徊 何処ぞ 独り徘徊す
不覺家人意 覚えず 家人の意
迎春心更孩 春を迎え心更に孩
[迎立春 其二]
招福追儺聲似雷 福を招き儺を追う声 雷の似し
善男善女破寒來 善男善女 寒を破って来る
立春祈願一年事 立春祈願す 一年の事
天地人心莫妄災 天地人心 妄りに災ふ莫れ
[迎立春 其一]
延壽迎春好, 壽を延ばし春の好きを迎へれば,
庭前見素梅。 庭前に素梅見ゆ。
旗亭村婦勸, 旗亭に村婦は勸む,
傾酒洗心灰。 酒を傾け心灰を洗ふを。
[迎立春 其二]
茅齋白首坐, 茅齋に白首坐り,
院落素梅開。 院落に素梅開く。
詩筆含香墨, 詩筆 香墨を含み,
錦箋迎菲才。 錦箋 菲才を迎ふ。
千篇踏風韻, 千篇 風韻を踏み,
一律頌蓬莱。 一律に蓬莱を頌(たた)ふ。
鳳字張雙翼, 鳳字 雙翼を張り,
飛聲舞春臺。 聲を飛ばして春臺に舞ふ。
[迎立春 其三]
天天春意催, 天天 春意は催す,
詩叟試徘徊。 詩叟の徘徊を試むるを。
池水如瑤鏡, 池水は瑤鏡の如く,
陽光映酒杯。 陽光は酒杯に映ず。
旗亭村婦笑, 旗亭に村婦は笑ひ,
院落素梅陪。 院落に素梅は陪す。
有意揮詩筆, 意ありて詩筆を揮ひ,
掃除心裡灰。 掃除す 心裡の灰を。
[迎立春 其四]
日照雪融春意催, 日は照り雪融け春意は催(うなが)す,
池頭玉骨作紅梅。 池頭の玉骨 紅梅となるを。
旗亭午酒洗詩叟, 旗亭に午酒は詩叟を洗ひ,
無病呻吟敲又推。 無病呻吟 敲きてまた推す。
[迎立春 其五]
詩友隨風携酒來, 詩友 風に隨ひ酒を携へて來たり,
藝林共賞素梅開。 藝林に共に賞(め)づ 素梅の開くを。
愚生忘筆磨香墨, 愚生 筆を忘れて香墨を磨き,
笑語稱揚醉叟才。 笑語して稱揚す 醉叟の才を。
[迎立春 其六]
雅客凌寒傾酒杯, 雅客 寒を凌ぐに酒杯を傾け,
旗亭等待繆斯陪。 旗亭に等待(ま)つ 繆斯(ミューズ)の陪するを。
詩人求句尋玄府, 詩人 句を求めて玄府(仙府)を尋ね,
玉骨知春發素梅。 玉骨 春を知りて素梅の發(ひら)くを。
漸促遊魂磨墨水, 漸(ようや)く促す 遊魂の墨水を磨くを,
更揮醉筆掃心灰。 更に揮ふ 醉筆の掃心灰を掃くを。
春風將起堪張翼, 春風 まさに起ちて翼を張るに堪へんとし,
夢想行空不返回。 夢想 空を行きて返回(かへ)らず。
[迎立春]
紅白臘梅香暗靉 紅白臘梅 香は暗に靉(たなび)き
立春驛使百花魁 立春の駅使は 百花の魁
舊時故事江南信 旧時の故事は 江南の信
唐宋詞牌調曲才 唐宋の詞牌は 調曲の才
牆角數枝溶凍搖 牆角の数枝 凍えを溶かして揺らぎ
閑庭素魄冒寒開 閑庭の素魄 寒を冒して開く
西湖佳話擬妻子 西湖の佳話は 妻子に擬へ
語繼逸談乘興哉 語り継ぐ逸談は 興に乗ずる哉
梅は古くから、白・紅・薄紅・一重咲・八重咲等々、多岐多様に亘って人々に愛され、歌と詩に詠まれてきた。
それらの典故を回想し、立春の感懐とした。
「驛使」: 梅のたより
「江南信」: 杜牧の「江南春」など
「詩牌」: 唐宋時代に流行った「填詞(長短の歌詞を填める)」
「素魄」: うめの花
「西湖佳話」: 清代の「短編小説」
「妻子」: 梅妻鶴子(林逋=967〜1028)の愛称
[迎立春]
國破涙花驚鳥哀 国破れて花に涙し鳥に驚き哀しむ
砕身粉骨凱今梅 砕身粉骨 今梅を凱(たのし)まん
史編鏡誡不争闘 史編の鏡誡 争闘せず
天地和同憲法開 天地和同の憲法開かん
戦後七〇年を思い詠いました。
[春節]
萬家臨節笑顏開 萬家 節に臨みて笑顏開く
各放煙花祝發財 各おの煙花を放ちて 財を発くを祝ふ
簡朴夫妻年夜飯 簡朴なる夫妻 年夜に飯す
相斟清酒願無災 清酒を相斟みて 災無きを願ふ
[迎立春]
晩風吹凍市城回 晩風 凍を吹いて 市城を回り
又使醉翁求酒杯 又 酔翁をして 酒杯を求めしむ
疫鬼遁逃寒半減 疫鬼 遁逃して 寒半ば減じ
健兒歡喜福應來 健児 歓喜して 福応に来るべし
玲瓏窓外三更月 玲瓏たり 窓外 三更の月
馥郁庭前一朶梅 馥郁たり 庭前 一朶の梅
欲賦新詩呵禿筆 新詩 賦さんと欲して 禿筆に呵せば
迎春感興十分催 春を迎ふるの感興 十分に催す
凍えるような晩どきの 風は街中吹きめぐり
おかげのここの酔っぱらい も一度お酒に手がのびる
オニがすたこら逃げでして 寒さも半ばやわらいで
やんちゃ坊主の歓声に 呼ばれてきっと福が来る
窓のそとにはきらきらと かがやいている夜の月
庭のさきにはふわふわと 香りただよう梅の花
新しく詩をつくろうと 筆にハーっと息ふけば
春を迎える心持ち じゅうぶん湧いて出てきたぞ
[迎立春 其一]
庭際南枝數蕾梅 庭際の南枝 数蕾の梅
寒中紅點告春來 寒中に紅点し 春の来たるを告ぐ
輕風柔軟滿茅屋 軽風 柔軟 茅屋に満ち
雅士陶然感興偕 雅士は陶然 感興を偕にせん
[迎立春 其二]
滿地衰枯萬草頽 満地衰枯 万草頽れ
飢鴉凍雀絶鳴哀 飢鴉 凍雀 鳴くを絶えて哀れ
曉郊新踏凝霜路 暁郊 新たに踏む 凝霜の路
遶樹幽香一點梅 樹を遶りて幽香 一点の梅