2022年の新年漢詩 第31作は桐山堂半田の 健洲 さんからの作品です。
 

作品番号 2022-31

  新年口号        

三元庭上瑞風巡   三元 庭上 瑞風巡り

淑氣春光寄四隣   淑気 春光 四隣に寄る

去歳任忙詞翰断   去歳 忙に任せて 詞翰断ゆ

今年把筆漢詩親   今年 筆を把って漢詩に親しまん

          (上平声「十一真」の押韻)


 元日の朝、庭先で正月の淑気の中、今年こそは漢詩を多く作りたいと思った。
























 2022年の新年漢詩 第32作は桐山堂半田の 向 岳 さんからの作品です。
 

作品番号 2022-32

  新春決意        

書齋拂几歳時新   書斎 机を払ひ 歳時新たなり

正旦窗前風暖春   正旦 窓前 風暖かな春

復願吟情當勃勃   復た願ふ 詩情 当に勃勃として

佳詩秀句本年頻   佳詩 秀句の本年頻りなるを

          (上平声「十一真」の押韻)


    
























 2022年の新年漢詩 第33作は桐山堂半田の F ・ K さんからの作品です。
 

作品番号 2022-33

  駿府觀出初式        

迎春城下太平風   迎春 城下 太平の風

市井衆人希歳豐   市井 衆人 歳豊を希ふ

梯上火消龜鶴舞   梯上の火消 亀鶴の舞

昇平淑景入C穹   昇平の淑景 清穹に入る

          (上平声「一東」の押韻)


    
























 2022年の新年漢詩 第34作は桐山堂静岡の M ・ O さんからの作品です。
 

作品番号 2022-34

  歳晩書懷        

今年碌碌委風塵   今年 碌碌 風塵に委す

翻弄妖痾奈老身   翻弄せる妖痾 老いの身を奈せん

世上鼻腔都一様   世上 口罩 都(みな)一様

泰平和氣願新春   泰平 和気 新春に願ふ

          (上平声「十一真」の押韻)


    
























 2022年の新年漢詩 第35作は桐山堂静岡の M ・ O さんからの作品です。
 

作品番号 2022-35

  新年作        

歳曉花初綻   歳暁 花初めて綻び

東天淑氣催   東天 淑気催す

献酬延壽酒   献酬 延寿の酒

老幼喜無災   老幼 災無きを喜ぶ

          (上平声「十灰」の押韻)


    
























 2022年の新年漢詩 第36作は桐山堂静岡の 甫途 さんからの作品です。
 

作品番号 2022-36

  新春即事        

旭旆曉光迎歳時   旭旆 暁光 歳を迎ふる時

頽齡白首尚堪爲   頽齢の白首 尚為すに堪へたり

乾坤無事非容易   乾坤 無事 容易には非ざらん

龍虎咆哮脅硬髭   竜虎 咆哮 硬髭を脅かす

          (上平声「四支」の押韻)


    
























 2022年の新年漢詩 第37作は桐山堂静岡の 甫途 さんからの作品です。
 

作品番号 2022-37

  孫新年初書        

五雲靉靆麗初陽   五雲 靉靆 初陽麗し

翰筆揮来孫女昌   禿筆 揮ひ来たる 孫女昌ん

遼遠前途年十二   遼遠たる前途 年十二

老懷欲辯忽逃亡   老懐 弁ぜんと欲すれば 忽ち逃亡す

          (下平声「七陽」の押韻)


    
























 2022年の新年漢詩 第38作は桐山堂静岡の F ・ U さんからの作品です。
 

作品番号 2022-38

  除夕書懷        

老來齷齪送居諸   老来 齷齪として 居諸を送り

鬢雪徒添修道疎   鬢雪 徒らに添へ 道を修すること疎し

月照禪扉四隣寂   月は禅扉を照らし 四隣寂に

鐘聲響處歳將除   鐘声 響く処 歳将に除かんとす

          (上平声「六魚」の押韻)


「居諸」: 「月日」「歳月」
























 2022年の新年漢詩 第39作は桐山堂静岡の F ・ U さんからの作品です。
 

作品番号 2022-39

  壬寅新年        

白苞點綴瓦盆梅   白苞 点綴 瓦盆の梅

馥郁一輪香蕊開   馥郁として一輪 香蕊開く

旭日曈曨新歳旦   旭日 曈曨 新歳の旦

壬寅瑞氣破寒來   壬寅の瑞気 寒を破して来たる

          (上平声「十灰」の押韻)


    
























 2022年の新年漢詩 第40作は桐山堂静岡の F ・ U さんからの作品です。
 

作品番号 2022-40

  新年偶成        

數枝C絶一瓶梅   数枝 清絶 一瓶の梅

馥郁麗香和氣開   馥郁たる麗香 和気開く

天地迎新風物改   天地 新を迎へ 風物改まり

曙光依舊正東來   曙光 旧に依って 正に東より来たる

          (上平声「十灰」の押韻)


    
























 2022年の投稿詩 第41作は 茜峰 さんからの作品です。
 

作品番号 2022-41

  懐愛唱歌冬之星座     愛唱歌「冬の星座」に懐(おも)ふ   

清夜仰望懐古謳   清夜 仰望 懐古し謳(うた)ふ

冬之星座若年悠   「冬の星座」 若年悠かなり

露営山野天穹燦   露営は山野に 天穹は燦(きらめ)き

冷気快哉談笑遊   冷気は快かな 談笑し遊ぶ

          (下平声「十一尤」の押韻)


<解説>

 晴れたすがすがしい冬の夜 星空を仰いで「冬の星座」を時々歌う。
 浮かぶのは 若いころの山野での冬のテント泊だ。
 肌を刺すような冷気も厭わず 空を見あげた。
 星座もわからないくらい びっしり大きな星がきらめき 圧倒されるように立ち尽くした。

<感想>

 私も若い頃、星を観るのが好きで、小さな天体望遠鏡も中学生の頃に買ってもらい、毎晩星を眺めていました。
 星座の名前も覚えた時に、この「冬の星座」の歌がいつも頭に浮かびました。

 これが1番の歌詞は結構難解な言葉が多いですね。
 「さゆる空」「くすしき光」「ものみないこえる」「しじま」など、きっと意味も分からないままに口が覚えていたのでしょうね。

 2番になると「銀河」「オリオン」「スバル」「北斗」と星の名が出て来て、メロディーとも相俟って忘れ難い曲です。

 さて、茜峰さんのこの詩ですが、起句は上四字と下三字が繋がらないです。「寒夜仰星古曲謳」として、承句の「冬之星座」は題名に入っていますので、書く必要は無い語です。
 「昔時」と書き始めて、転句へと流れるように過去の場面を描くようにしてはどうでしょうね。

 転句は「天穹燦燦露營野」と空の場面を先に述べた方が、星空の印象が強くなります。

 結句はこのままでも良いですが、「冷気亦嘉」としておくのも良いでしょう。



2022. 2.16                  by 桐山人



 茜峰さんから再敲作をいただきました。

 鈴木先生
 いつもご指導ありがとうございます。
「懐愛唱歌冬之星座」を下記のように補整しました。


   寒夜仰星古曲謳
   昔時行歩旧交悠
   天穹燦燦露営野
   冷気亦嘉談笑遊

 起句から承句へのつながりがうまくいきません。

2022. 3. 2                  by 茜峰



 ごめんなさい、起句のところで私がお示しした案は孤平になってしまいましたね。申し訳ありません。
「仰」「望」としてください。

 現在の景と過去の繋がりで見ると、承句から急に「昔時」と場面が変わるのが苦しい原因かもしれませんね。

 例えば、前半を「寒夜寥寥古曲謳 仰星懷昔舊交悠」として、どちらも現在のことだとすると、展開は落ち着くかと思います。


2022. 3.14                  by 桐山人






















 2022年の投稿詩 第42作は 眞瑞庵 さんからの作品です。
 

作品番号 2022-42

  水村閑居春景        

遠寺鐘音融彩霞   遠寺ノ鐘音 彩霞ニ融ケ

北帰群雁影横斜   北帰ノ群雁 影横斜

祠頭吶吶早鶯語   祠頭 吶吶 早鶯ノ語

池畔芬芬氷萼花   池畔 芬芬 氷萼ノ花

吹嶺鎌峰余攝   吹嶺 鎌峰 攝痺苧]シ

蘆洲柳岸得新芽   蘆洲 柳岸 新芽ヲ得タリ

村郊田圃春耕近   村郊ノ田圃 春耕近ク

野老偸閑獨煮茶   野老 閑ヲ偸ンデ 獨リ茶ヲ煮ル

          (下平声「六麻」の押韻)


<感想>

 真瑞庵さんのお手紙には「久し振りの律詩」ということでしたが、楽しく拝見しました。

 いつも通りの丁寧な叙景で、対句の内容も頷聯の近景と頸聯の遠景が立体感を出していますね。

 若干気になる点を書きますと、

 第二句で「群雁」、第三句で「早鶯」と来ましたが、鳥同士で近い気がします。
 雁でなければならない、というわけではないと思いますが、どうでしょう。

 もう一点は、全体の構成になりますが、題名の「閑居」の様子があまり出てなくて、最後にようやく登場という感じが強いです。
 第二句に閑歩する作者の姿を出して、尾聯とで景を挟むようにすると、中の二聯も作者の手の中のように収まるかと思います。



2022. 2.15                  by 桐山人


 真瑞庵さんから再敲作をいただきました。

    ご指摘を受け再推敲を試みました。
   私個人的には、チョット縮こまった詩になったような気がします。
   宜しくお願い致します。

  水村閑居春景(再敲作)
 遠寺鐘声融彩霞
 荊門猶閉野人家
 籬邊吶吶早鶯語
 檐下幽幽氷萼花
 吹嶺冠峰余攝
 蘆洲柳岸得新芽
 村郊田圃春耕始
 爐畔悠然獨煮茶


2022. 2.19                  by 真瑞庵


 そうですね、「縮こまった」というのは、「閑居」の関係で家の中に閉じこめたからでしょうかね。
 最後の「爐畔」が画面を小さくしていますので、ここは初案の「野老」のような語で、場所をぼかすと印象が違ってきますね。

 第二句も閉じこもるのではなく、春の「風」くらいを出しておけば、拡がりが出ると思いますが、いかがでしょう。

2022. 3.14                  by 桐山人


























 2022年の投稿詩 第43作は 眞瑞庵 さんからの作品です。
 

作品番号 2022-43

  秋夕        

桂花郁郁暮風香   桂花 郁郁トシテ 暮風香リ

好月私窺野老堂   好月 私カニ窺フ 野老ノ堂

幸有一瓢村醸酒   幸ヒニ有リ 一瓢 村醸ノ酒

勿辞對坐共傾觴   辞ス勿カレ 對坐シテ 共ニ觴ヲ傾クルヲ

          (下平声「七陽」の押韻)


<感想>

 真瑞庵さんのこの詩は昨年の秋にいただいていましたが、別件のお返事を真瑞庵に書いている内に投稿詩の方を忘れてしまったようです。すみません。

 起句は、中二字で「郁郁」と言って、更に「暮風香」ですので、「暮風」自体が香るにしろ花の香が風に入ったにせよ、どうも重複感が残ります。
 香りをそれほど強調する場面でもないと思いますので、「香」を別の韻字にするとか、「郁郁」を視覚的な言葉にするとか、それで情報量が随分増えると思います。

 後半は唐宋の詩を読んでいるような風格がありますね。
 「花香・好月・瓢酒」と揃いましたから、「勿辞」はあり得ないというか、言う必要が有るかどうか。
 ここも、相手のこととか、時刻とか、何か別の情報を加えても良いと思います。



2022. 2.15                  by 桐山人
























 2022年の投稿詩 第44作は 黒猫 さん、名古屋市にお住まいの七十代の男性の方からの初めての投稿作品です。
 お手紙をいただきました。
 昨年10月半ばから、参考書と辞書を片手に独学を始めました。
 今年になって貴サイトを知り拝見させていただき勉強になっております。
 作詩しながら漢詩とは奥がとても深いと感じております。
 拙い作品ではありますが投稿させていただきます。

作品番号 2022-44

  独過春節        

垂楊揺蕩委条風   垂楊、条風二委ネ揺蕩シ

鳥雀相飛初旭空   鳥雀ハ相ヒ飛ブ初旭ノ空

相伴唯猫独傾酒   相伴スルハ唯ダ猫ノミ独リ酒ヲ傾ケル

人生万事酒杯中   人生万事酒杯ノ中

          (上平声「一東」の押韻)


<感想>

 年が改まって早々に新しい漢詩仲間をお迎えでき、とても嬉しく思っています。
 独学で、とのことですが、押韻は勿論、転句の挟み平まで使いこなしていらっしゃるようで、よく勉強されていると思いますよ。
 漢詩の規則のことでは一点だけ、「相飛」「相伴」で「相」の字、また、「酒」の字も重複しています(「同字重出の禁」)ので、直す必要があります。
 どう直すかは、全体を見直してからの方が良いでしょうね。

 起句は問題ありませんが、読み下しは「垂楊 揺蕩し 条風に委ぬ」の語順でないと無理があります。

 承句は「初旭」が疑問で、この詩の場面として時刻を朝に設定すると、後半は猫と朝酒に耽ることになります。
 勿論、それは作者の好みではありますから、朝から飲んでいても良いですが、読者の共感を得ることはできず、呑兵衛の詩というだけで終ってしまいます。
 ここは「春節空」として、時刻は出さないようにしましょう。
 同様の観点で言えば、作者は前半は屋外で景色を眺めているように見えますが、後半になるとこれは家の中でしょうね。
 時刻や天候、作者の居る場所など、詩を作っているといつの間にか設定が初めとズレてしまうことがあります。
 完成したら一旦筆を置いて(出来れば数日置いて)、詩に描かれた画面の見直しをしてみるとこうした齟齬に気付きやすくなります。

 転句ですが、ここはまず場面転換として作者の居場所を示した方が良いでしょう。
 「茅屋」と書き出して、猫を相手に酒を呑んでいる感じにしていくと、「佳餐伴猫宴」ですかね。
 ならば、こちらを「春餐」として、承句に入れた「春節」「佳節」とした方が収まります。

 結句はスケールの大きなかっこいい句ではありますが、ここまでの流れと全く乖離していますし、よく考えると、「人生の万事は酒杯の中にある」というのは結局どういうことを言っているのか分からない言葉でもあります。
 例えは悪いかもしれませんが、飲み屋で酔っ払った人が叫んでいる言葉のようなもので、口当たりは良いが実態は無い感じですね。
 詩のまとめがこの部分で、起句承句との関連も大切です。「起句と結句でまとまるのが良い詩」と言われることもあります。
 この場合ですと、春の景物に戻ってみてはどうでしょうか。



2022. 2.17                  by 桐山人
























 2022年の投稿詩 第45作は 国士 さんからの作品です。
 

作品番号 2022-45

  二月十二日雪中作        

多少雪梅花斥孟   多少の雪梅 花斥くの孟め

池頭野鴨鳴嚶嚶   池頭の野鴨鳴くこと嚶嚶たり

逍遙黙坐呑芳茗   逍遙して黙坐し芳茗を呑む

淑景詩情毎歳生   淑景の詩情毎歳生ずる

          (下平声「八庚」の押韻)


<解説>

 いかほどの雪中の梅が花をひらきはじめただろうか。
 池のほとりでは真鴨たちが仲良く声を合わせて鳴いている。
 花見を気ままに楽しんで、無言でベンチに座り、良い香りのするお茶を飲む。
 春の良い景色の中、詩を作る心が毎年起こるのだ。

 起句は踏み落としにしましたが、なんとなくおかしい所は「花斥孟(花斥くの孟め)」という所です。
 あと承句の畳語、「嚶嚶」は句末で使ってもよろしいのでしょうか?
 他人にこの詩を見せた所、感動はしないが凡作みたいだと言われました。僕から見てもそう思います、今は『漢詩の稽古』を読んで感覚を鍛えてるんですが、なかなかうまくいかなかったです。
 どうしても上手くなりたいので、もっと添削とテキストを参考にして、自分なりに鍛えてみることにします。

<感想>

 まず、起句については、韻字の多い「下平声八庚」ですので、起承句が対句でないならば踏み落としは避けて、押韻できるように工夫が必要です。
 お使いの「斥」は「斤(おの)でたたき割る」が語源とも言われますが、縦に裂けて割れる状態を表すとすると、花の形容としては不適切でしょうね。
 また、「孟」で始まる時期を表すのでしょうが、「多少」「どのくらい」という疑問形とすれば「花の開き始め」ということは伝わります。
 春の雪の日が詩題ですので、「雪梅」の一文字だけで雪の話は終わり、ではあっさり過ぎますので、せめて「多少梅花雪裡C」と梅と同程度には扱ってほしいところ。「C」は「明」「晶」でも良いと思います。

 「野鴨が鳴いている」ことは、雪の多い地域ということを考慮すると、春の訪れを感じさせるものということでしょうね。
 「嚶嚶」の畳語については、韻字が並んでも良いか、という疑問だと思いますが、こうした場合には「冒韻」にはなりません。畳語は同じ字ですが、例えば「蕭条」のような同じ韻の字を重ねる畳韻語も使うことは全く問題ありません。
 ただ、今回は「鳴」も下平声八庚韻ですので、下三平ですし、同じ韻字を三つも重ねては駄目です。

 転句は「逍遥」「黙坐」は同時には起こりえないこと、ここは話を焦りましたね。
 外を歩いていたのに茶を飲んでいてはおかしい、と思っての補足なのでしょうが、家に戻って茶を飲むことを書くと、どこに心を動かしているのかぼやけてしまいます。
 結句の「淑景詩情」も屋外の景と考えるべきでしょうから、転句の方を合わせることが良いでしょう。



2022. 2.17                  by 桐山人
























 2022年の投稿詩 第46作は 川竹 さんからの作品です。
 

作品番号 2022-46

  坐寒夜        

寒風細細守蓬慮   寒風 細細として 蓬慮を守る

月色如刀一室居   月色 刀の如く 一室の居

獨坐閑窗呵禿筆   独坐して 閑窓 禿筆を呵す

詩思自誦事三餘   詩を思ひ 自ら誦し 三余に作る

          (上平声「六魚」の押韻)

<解説>

 戸外は冬の風が吹き、粗末な家で過ごし、
 月明りが部屋にさしてきて、一人詩を考えている。
 できた詩を口に出し詠う、時間のある冬の夜に試作する。

<感想>

 起句の「慮」は押韻から見ても「廬」ですね。
 この「廬」から「一室居」とズームインして、転句の「閑窗」へと進むのは分かりやすいですね。
 ただ、「閑窗」では次の「呵禿筆」へとは繋がらないので、ここを「寒窗」として、起句の「寒風」「朔風」にしておいた方が良いですね。

 結句は「詩を思ふ」とするなら「思詩」の語順で良いです。
 「三餘」は「夜・雨・冬」で詩作に適した時を表します。せっかくですので、ここは数字を重ねる形で「一詩自誦樂三餘」としてはどうでしょう。
 そうなると今度は承句の「一」が重複しますので、「寒滿居」と調整する形でしょうか。



2022. 2.22                  by 桐山人



 川竹さんから再敲作をいただきました。

    坐寒夜
  朔風細細守蓬蘆   北風細々として蓬蘆を守る
  月色如刀光満居   月色刀の如く光の満ちたところにいる
  独坐寒窓呵禿筆   独坐して寒窓禿筆を呵す
  一詩自誦楽三餘   詩を作り自ら誦し三余を楽しむ

2022. 2.26                  by 川竹
 起句の末字は今度は「蘆」になりましたが、この字も韻が異なりますし(「蘆」は上平声七虞)、「廬」の入力間違いかと思います。

 承句は「寒」を転句に置いたので「光」にしたわけですね。
 他は落ち着いていると思います。


2022. 4.16                  by 桐山人






















 2022年の投稿詩 第47作は 真瑞庵 さんからの作品です。
 

作品番号 2022-47

  春雪 一        

横斜仙袂羽衣影   横斜ス 仙袂 羽衣ノ影

浮動玉塵銀屑風   浮動ス 玉塵 銀屑ノ風

因妬梅花清麗態   梅花ノ清麗タル態ヲ妬ムニ因ッテ

競妍争艶早春中   妍ヲ競ヒ 艶ヲ争フ 早春ノ中

          (上平声「一東」の押韻)


<感想>

 今年は立春を迎えても記録破りの大雪で各地で事故や混乱のニュースをよく聞きましたね。コロナも猛威を揮っていて大変な早春でした。

 雪が遅くまで(こんな時期まで)降る原因を「妬梅花」と擬人化し、梅の花と美しさを競っていると見立てたところが真瑞庵さんの工夫のところですね。

 起句の「仙袂」「羽衣」、承句の「玉塵」「銀屑」はそれぞれ同じものを繰り返していることになりますが、どちらも美しさを表していますので、対句の形と相俟って強調効果が出ています。
 律詩でしたら、この二句で二つ聯ができそうですね。

 無駄を省いてすっきりと絶句らしい形で仕上がっていると思います。



2022. 3. 4                  by 桐山人
























 2022年の投稿詩 第48作は 真瑞庵 さんからの作品です。
 

作品番号 2022-48

  春雪 二        

雪罩檐前老幹梅   雪ハ罩ム 檐前 老幹ノ梅

私憂蕾凍阻花開   私カニ憂ウ 蕾凍テテ 花ノ開クヲ阻ムカト

立春時節二旬後   立春ノ時節 二旬ノ後

宜是清香窓外来   宜シク是レ 清香 窓外二来ルベシ

          (上平声「十灰」の押韻)


<感想>

 こちらは叙景よりも心情を中心にした作ですね。

 転句の「立春時節二旬後」で「もう二月も下旬になってしまった」という嘆き、苛立ちを出したところ。
 次の「宜」の再読文字による命令形に近いニュアンスと、転句の心情が響き合っていると思います。
 この結句の上二字には、願望や期待、否定など色々な表現が考えられるところですので、その辺りで共感が別れるかもしれませんね。




2022. 3. 4                  by 桐山人
























 2022年の投稿詩 第49作は福井県越前町の 洋城 さん、七十代の男性の方からの初めての投稿作品です。
 ホームページへの感想もいただきました。

 先生のソフトな添削を拝見していると、成程合点が行きます。
 自分で創作していると周りが見えず重復なども気が付きませんね。

 皆さんの作品はレベルが高そうですが、それでも、好きな語句を覚えて一歩一歩、歩みを続けたいです。


作品番号 2022-49

  春日訪菩提寺        

花香石磴浴春光   花香る石磴 春光を浴び

竹裡鶯聲倶入堂   竹裡の鶯声 倶に堂に入る

恐懼蕩兒聽説話   恐懼して蕩児 説話を聴かば

老禪大喝走廻廊   老禅の大喝 廻廊を走る

          (上平声「七陽」の押韻)


<解説>

 花の香る石段に春の日差しが降り注ぎ、
 竹林のウグイスの鳴き声が本堂へ一緒に入る。
 寺僧の説法の機会を頂いて道楽者が反省し、かしこまって聞けば
 老僧から今までの野放図な生活ぶりに大変な大声で叱責をされ、その声が廊下にも響き渡る


<感想>

 新しい漢詩仲間を迎えて、とても嬉しく思っています。
 独学で勉強なさっておられるそうで、作詩はもう四年ほどのご経験、いただいた詩も平仄を始め、規則が整っていてよく勉強されていると思います。
 これからもよろしくお願いします。

 全体的には漢詩の趣も充分に出ていますので、部分的に見直せば良いと思います。

 起句は、お寺に向かう石の坂道の両側に花が咲いている景色でしょうね。ここで嗅覚と視覚、承句で聴覚を出して五感に響くように工夫していることも分かります。
 ただ、起句は「花香」と「石磴」と二つが並列に読みがちで、そうなると「香りと石坂が春光を浴びる」と妙な話になります。両方を出すのがちょっと詰め込み過ぎなのでしょうね。
 「花間石磴浴春光」「晴春石磴草花香」のように、どちらかにしておくと良いでしょう。

 承句の「倶入堂」は前半の景色描写から後半のお寺の室内への移行を考えた描写でしょうが、「倶」があるために「鶯聲」ともう一つ、部屋に入っていくもの、つまり作者がここに登場し、やや説明的になります。
 「鶯語竹風倶入堂」とすると、作者は直接は出てきませんが、それでも目線は「堂」に向かいますので、それだけでも場面転換は充分可能です。

 転句の「恐懼」「端坐」「打坐」が、また「説話」「説法」の方が妥当です。
 「聽」の読み下しは「聴かば」ですと仮定形、ここは「聴けば」、あるいは単に「聴く」としておくのが良いですね。

 結句の「老禪」は鄭谷の「贈日東鑑禪師」に出てきましたが、「老師」と同じです。

 「大喝」が廊下に響くのは一般的な情景と見れば良いですが、<解説>にお書きになったような状況を描くとなると、ここは何が起きているのか、読者に対してもう少し説明が欲しいですね。



2022. 3. 4                  by 桐山人



洋城さんから推敲作をいただきました。

    訪菩提寺(再敲作)
  花關ホ磴浴春光   花閧フ石磴 春光を浴び
  鶯語竹風入法堂   鶯語 竹風 法堂に入る
  五十游人聽説法   五十にして 游人 説法を聴けば
  眞心念佛繞廻廊   真心の念佛 廻廊を繞る

「游人」: きまった職業につかずぶらぶらしている人

 花咲く中、石段にも春の日差しが降り注ぎ、
 ウグイスの鳴き声も風と共に法堂に入り
 反省した道楽者が五十になって初めて説法を聞き、
 心のこもった真の念佛が廊下の隅々まで行き渡る。


2022. 4.28                  by 洋城


 お返事をいただいてから時間が経ってしまい、すみません。

 再敲作を拝見しましたが、若干規則にそぐわない所が出てきてしまいましたね。

 承句が「四字目の孤平」になってしまったことと、「法」の字が承句と転句で重複してしまいました。
 句の推敲をしていくと、「良し!!」と思った言葉が、実は最初は規則通りだった部分を壊してしまうことが起きます。
 大変ですが、推敲の度に全体のチェックが必要になるのは仕方のないことです。

 承句の下三字を初案の「倶入堂」に戻せば、どちらも解決します。

 転句は、「有り難い説法に初めて出会った」という感じにしするなら「聽」「遭」にすることもできます。

 結句の「眞心」は「禅師」に敬意を表したのでしょうが、和語の印象が残ります。「心」を使う熟語は他にも沢山ありますので、選び直すか、「念佛」は別に、「淨香」としてもお寺を繞るという点では良いでしょうね。

2022. 6.24                  by 桐山人






















 2022年の投稿詩 第50作は 哲山 さんからの作品です。
 

作品番号 2022-50

  偶成        

赤子如王様   赤子は王様の如く

童児是自然   童児は 是れ 自然(じねん)

母觀音活佛   母は觀音 活き佛

男但指蕪田   男は但だ 蕪田に指(むか)うのみ

          (下平声「一先」の押韻)


<感想>

 「赤子」「童児」から「母」へと対象を持ち上げ、その内容も「王様」「自然」から、母は「觀音」「活仏」とまで行きます。
 最後に「男」でストーンと落ちる、思わず「そうだね」と応えてしまいそうな詩ですね。

 転句までの比喩はよく目にする形で、そう独自性のあるものではないし、話の展開自体も目新しいわけではありませんが、逆にその分、無理なく話に入れる、共感しやすい表現だとも言えますね。

 五言絶句ならではのスピード感が良いですね。



2022. 3. 7                  by 桐山人
























 2022年の投稿詩 第51作は 哲山 さんからの作品です。
 

作品番号 2022-51

  佛前        

熏栴觀古佛   栴を熏じ 古佛を觀る

瞑眼語爺嬢   眼を瞑(と)ぢ 爺嬢に語らふ

疑我真存否   疑ふは 我  真に存するや否や

唯嚴鬼火香   唯 鬼を嚴れ 香を火(や)く

          (下平声「七陽」の押韻)


<感想>

 転句は読み下しを見ると、ご自身が疑っているということですか。
 平仄の関係で「我」を下にしたのでしょうが、これでは「我を疑ふ」と読んでしまいます。
 「疑是眞存否」と自分を出さないか、「眞疑我存否」でしょうね。

 結句は語の流れが面白くないですね。「獨焚嚴鬼香」でしょう。



2022. 3. 7                  by 桐山人
























 2022年の投稿詩 第52作は 哲山 さんからの作品です。
 

作品番号 2022-52

  雪道        

長途過客雪中松   長途の過客  雪中の松

道絶驚惶夜半鐘   道は絶し 驚惶す  夜半の鐘

迷悟一如天心月   迷悟一如  天心の月

盈虚冴影嚴春衝   盈虚の冴影  厳春を衝く

          (上平声「二冬」の押韻)


<感想>

 転句は「二六対」が壊れていますので、下三字を「天上月」とすべきですね。

 また、結句も平仄の点では「下三平」です。
 「嚴春」も意味が不明確ですので、「早春」「嫩寒」としておきましょうか。



2022. 3. 9                  by 桐山人
























 2022年の投稿詩 第53作は 哲山 さんからの作品です。
 

作品番号 2022-53

  薩婆呵(ソワカ)        

薩一掃除   薩は 一に 掃除して汲オ

婆加笑粲愉   婆は加へて 笑粲して愉しむ

呵無忘感謝   呵は感謝 忘る無かれ

日日発心模   日日発心して 模(のり)とする

          (上平声「七虞」の押韻)


<解説>

 『般若心経』の終わりに「菩提薩婆訶(ぼぢそわか)」という偈頌がありますが、その最後「ソ・ワ・カ」の三音に託して日々心掛けることを以前教わりました。
 思いついて試みましたが漢詩として可能でしょうか?

「薩・ソ」: 掃除のソ
「婆・ワ」: 笑うのワ
「呵・カ」: 感謝のカ

<感想>

 「ソワカ」の三音から日々の戒言を導いたとのこと、日本語での話ですね。
 「漢詩として可能でしょうか」とのことですが、「薩」「掃除」だとはそもそも繋がらない話ですから、「漢詩か」と尋ねられれば「そうだ」とは言いにくいです。
 漢詩の形で書いた、というところでしょうが、「薩婆呵」がそれだけ心に残る言葉だということでしょうね。



2022. 3. 9                  by 桐山人
























 2022年の投稿詩 第54作は 観水 さんからの作品です。
 

作品番号 2022-54

  寄北京五輪        

昨日東京今北京   昨日は東京 今北京

重看電視報輸贏   重ねて看る 電視の輸贏を報ずるを

桂冠可冠新冠遠   桂冠 冠すべく 新冠遠ざくべし

口罩不妨稱讚聲   口罩 妨げず 称讃の声

          (下平声「八庚」の押韻)


「輸贏」: 勝敗。勝ち(贏)と負け(輸)
「桂冠」: 月桂冠。競技の勝者のしるし
「口罩」: 口を覆うマスク



<解説>

 ついこの前はトーキョーで 今度はペキンでオリ・パラだ
 テレビ・ニュースで各国の 選手の活躍チェックする
 新型コロナは遠ざけて メダル目指してがんばって!
 健闘たたえる声援は マスクしてても届くはず


<感想>

 転句の「桂冠」は「勝者の冠」で、次の「新冠」は「コロナウイルス」、同じ字を三字使ってありますが、「冠」は名詞用法で平字、動詞用法で仄字の両韻字ですので、その辺りを巧みに合わせてのものですね。
 「戴」とすれば常套で無難ではありますが、二四六字に同じ字が(見た目に)存在するのはドキドキ感がありますね。



2022. 3.15                  by 桐山人
























 2022年の投稿詩 第55作は 岳城 さんからの作品です。
 

作品番号 2022-55

  北京五輪開幕        

冬季五輪華北京   冬季五輪 北京を華やかにす

雪原氷上奨章爭   雪原 氷上 奨章を争ふ

病魔防疫異常壁   病魔の防疫 異常の壁

母國聲援障害衡   母国の声援 障害を衡(たいらか)にす

          (下平声「八庚」の押韻)


「奨章」: メダル
「病魔」: 新型コロナウイルス

<感想>

 岳城さんからも北京オリンピックの詩をいただきました。

 コロナの感染防止で、東京の時よりも徹底的な隔離戦術がとられていましたね。
 でも、競技を終えた選手達が互いを称えてハグする場面などを見ていると、ちょっとホッとして、ウルッとしました。

 結句の「障害」は、コロナウイルスも含めて、競技の妨害になるものを指すと解釈しました。



2022. 3.15                  by 桐山人
























 2022年の投稿詩 第56作は 岳城 さんからの作品です。
 

作品番号 2022-56

  北京五輪陰闇        

人工積雪土寥寥   人工の積雪 土 寥寥

開會榮華虚構漂   開会の栄華 虚構 漂ふ

舞踊哀微興奮剤   舞踊の哀嘆 興奮剤

不明規定電網撩   不明なる規定 電網 撩(みだ)る

          (下平声「二蕭」の押韻)


「舞踊」: フィギアスケート
「哀嘆」: 悲しんで嘆く
「興奮剤」: ドーピング剤
「不明規定」: ウエアの規定違反?
「電網」: インターネット

<感想>

 転句の四字目は読み下しや語注では「哀嘆」ですので、そちらですね。

 また、結句の「網」は仄字で平仄が合いませんので、直さないといけません。
「混迷規定協心撩」という感じでどうでしょう。



2022. 3.15                  by 桐山人



岳城さんから再敲作をいただきました。

    北京五輪陰闇
  人工積雪土寥寥   人工の積雪 土 寥寥
  開会榮華虚構漂   開会の栄華 虚構 漂ふ
  舞踊哀嘆興奮剤   舞踊の哀嘆 興奮剤
  混迷規定協心撩   混迷なる規定 協心 撩(みだ)れる

「混迷規定」: ウエアの規定
「協心」: 心を合わせる


2022. 3.21                  by 岳城























 2022年の投稿詩 第57作は 常春 さんからの作品です。
 

作品番号 2022-57

  観氷上溜石(カーリング)        

眼穿進路手繊策   眼は進路を穿ち 手は繊に策す

放把旋回滑氷石   把を放てば旋回 滑氷の石

八度攻防繞的争   八度の攻防 的を繞り争ふ

朗声情好魅観客   朗声情好 観客を魅す

          (入声「十一陌」の押韻)


<感想>

 常春さんからもオリンピックの詩をいただきました。
 今回は仄韻の詩ですね。

 前回の冬期オリンピックで一躍知られるようになったカーリングですが、今回は少し競技に見慣れてきたのか、石の当たり具合とか位置などの善し悪しが少し理解できるようになりました。
 スーパーショットは日本側でも相手側でも素晴らしいと誉めることもでき、そうなるとまた面白さが増します。

 結句に書かれたように日本選手の爽やかな笑顔と明るい声が、ふと街角で子供たちが遊んでいた昔の風景を思い出させるような魅力がありました。



2022. 3.15                  by 桐山人
























 2022年の投稿詩 第58作は神奈川県秦野市にお住まいの 山麓人 さん、女性の方から初めての投稿作品です。
 

作品番号 2022-58

  春来        

颯颯晩風墻角旋   颯颯晩風 墻角旋り

二三梅発一枝先   二三梅発く 一枝の先

小庭不覚知春信   覚えず 小庭 春信を知り

独立余寒古樹前   独り余寒に立つ 古樹の前

          (下平声「一先」の押韻)


<感想>

 ホームページへの感想で「沢山の方が作詩を楽しんでいる様子が伝わります」と書いていただきましたが、新しい仲間が増えて「沢山の方」が喜んでいらっしゃると思いますよ。
 作詩のご経験ももう長いようで、作品を拝見しても、しっかりとお気持ちを籠めてお作りになっていると感じます。
 他の人間が読むと、作者自身とはまた別の観点で感じるところもあり、そうした交流がこのホームページの良さだということで、私の感想を書かせていただきます。

 「春来」という詩題ですので、春の訪れを喜ぶ内容かと思いましたら、実は「冬の名残りでまだまだ寒い」ということでしたね。
 起句と結句は「冬の余寒」、挟まれた承句と転句で「春信」ですので、詩の大筋としては「春の気配はあるけれど、まだまだ寒いわ」という話になります。
 同じような時期を言いますが、「早春」と「春来」では受け取る印象や表れる心情にやや違いがありますので、詩題がこれで良いかな、と思いました。

 もう一点は、句の展開です。
 承句で「二三梅発一枝先」をまず見せて、転句で「知春信」は繰り返しの印象です。
 更に、「春信を知った」ことと結句の「独立余寒」はどうつながるのか、「(梅の開花を見て春の訪れを知ったから、)まだ寒いけれど春をもっと探そうと梅の古樹の前に立った」と考えれば何とか理解はできますが、そうした微妙な、と言うかややこしい心理を描くよりも、素直に春の訪れを喜んだ方が詩としては共感されると思います。

 そういうことで見ると、例えば承句と結句を入れ替えてみると(平仄は別にして「内容的に」ということですが)、「晩風が庭を吹き、まだ寒い中で庭先に立った。思いがけず春の便りを見つけた。何と梅が二つ三つだが開いていたよ」という種明かし的な展開になり、馴染みやすいように思います。  よく出される例ですが、「コップに半分入った水を見て、<もう半分しかない>と思うか<まだ半分ある>と思うか」という気の持ちようの違いが表されますが、それと同じような思いをこの詩では感じました。




2022. 3.22                  by 桐山人
























 2022年の投稿詩 第59作は 山麓人 さんからの作品です。
 

作品番号 2022-59

  探梅到山寺        

綿々濃淡到門途   綿々 濃淡 門に到る途

馥郁清香人跡無   馥郁 清香 人跡無し

鐘韻声明塵外趣   鐘韻 声明 塵外の趣

温顔仰見如来図   温顔 仰ぎ見る 如来の図

          (上平声「七虞」の押韻)


<感想>

 パソコンで入力すると自然に「綿々」と表示されてしまいますが、「々」は漢字ではなく、平仄を持たない記号ですので、漢詩本文には面倒でも同じ字を二回入れた方が良いです。

 起句の「綿綿」は梅の花が開き揃っている状態でしょうが、詩の中に「梅」「花」の語が入っていないのは、詩題で示したから省いたのでしょうか。何が「綿綿濃淡」なのか、すぐに分からない点がやや物足りません。
 内容的に結句で再度「梅」が登場するなら良いのですが、前半だけで終って、後半は別の話に移りますので、「梅」だとしっかり示した方が良いですね。
 直接「梅花濃淡」としても良いですが、承句から「清香馥郁」と持ってくると、梅とは限らないですが花盛りの道だとは分かりますね。

 承句で「人跡無」は「人の気配が無い」ことを言いますので、転句で「声明」が来ると人の声ですので違和感があります。
 「人跡無」は前半の梅の話から後半の山寺に移行するのに効果的な言葉ですので、転句の方で「声明」を別の素材にすると良いですね。

 結句は「如来図」は下三平ですね。実物を知らないのでわかりませんが、「如来」を入れるならば「如来慈愛麗顔図」「如来仰見涅槃図」のような上に置く形でしょうね。



2022. 3.22                  by 桐山人



 山麓人さんから再敲作をいただきました。


    早春訪山寺
  梅花濃淡到門途   梅花 濃淡 門に到る途
  郁郁春朝人跡無   郁郁 春朝 人跡無し
  鐘韻荘厳塵外趣   鐘韻 荘厳 塵外の趣
  一声鶯語果然愉   一声 鶯語 果然として愉しむ

2022. 4. 8                  by 山麓人






















 2022年の投稿詩 第60作は 観水 さんからの作品です。
 

作品番号 2022-60

  春日偶成        

春燕往來處   春燕 往来の処

新風簷下生   新風 簷下に生ず

深深雙翼色   深深たり 双翼の色

藹藹衆雛聲   藹藹たり 衆雛の声

欲寫知眞味   写さんと欲して真味を知り

未吟忘俗情   未だ吟ぜざるに俗情を忘る

善哉晴暖日   善哉 晴暖の日

自覺一身輕   自づから覚ゆ 一身軽きを

          (下平声「八庚」の押韻)


<解説>

  春になり 燕が行き来
  軒端には 新しい風
  おくぶかい 翼の色よ
  おだやかな 雛たちの声
  真実の 味わいを知り
  浮世など 忘れてしまう
  うれしいね 天気も好くて
  身も軽く なってきました


<感想>

 「春日偶成」という題でいただきました。

 詩の中に、春の詩の定番である花とか植物は出さず、「燕」に焦点を絞った形で律詩に仕立てた所が作者の力仕事ですね。
 燕に対しての作者の暖かい視線も感じられます。

 特に頸聯の「欲寫知眞味」「未吟忘俗情」の対はテンポが良く、自然な流れで次の「善哉」という気持ちに入って行けます。





2022. 3.29                 by 桐山人