2019年の投稿詩 第271作は静岡の芙蓉漢詩会の 岳游 さんからの作品です。
 静岡市で6月に開かれた合評会からの参加詩です。

作品番号 2019-271

  潮見坂 遠江八景其二        

久尋潮見坂   久しく尋ぬ 潮見坂(しおみざか)

一望遠州灘   一望す 遠州灘

雲影光芒散   雲影 光芒散らし

春暉眼界寛   春暉 眼界寛し

白波崩翠岸   白波 翠岸に崩れ

碧水喚清瀾   碧水 清瀾を喚ぶ

曲浦濤聲爽   曲浦 涛声爽やか

悠揚倚檻看   悠揚 檻に倚りて看る

          (上平声「十四寒」の押韻)





























 2019年の投稿詩 第272作は静岡の芙蓉漢詩会の Y・H さんからの作品です。
 静岡市で6月に開かれた合評会からの参加詩です。

作品番号 2019-272

  謝恩歌        

多年師訓尚心敦   多年の師訓 尚心に敦し

愛育情濃累歳溫   愛育の情濃やかにして歳を累ねて温かし 

軟語仙顔迎米壽   軟語 仙顔 米寿を迎へ

同窓偕祝報深恩   同窓偕に祝ひ 深恩に報いん

          (上平声「十三元」の押韻)

 高校の担任が米壽を迎えるのを期に、同窓会を開催し、受けた恩に対し感謝の気持ちを伝え、皆で祝うことにした。



























 2019年の投稿詩 第273作は静岡の芙蓉漢詩会の Y・H さんからの作品です。
 静岡市で6月に開かれた合評会からの参加詩です。

作品番号 2019-273

  河西訓導殉職之碑        

濁流溢決奪童娘   濁流 溢決(いっけつ)して 童娘を奪ふ

欲救以身師道芳   身(み)を以て救わんと欲す 師道芳し

訓導功勲名不朽   訓導の功勲 名は朽ちず

都田仁説世傳長   都田(みやこだ)の仁説 世に伝ふること長し

          (下平声「七陽」の押韻)

 昭和二年五月三日、前日からの雨で都田川は増水しておりました。
 集団下校中の児童の一人が、川に落とした傘を拾おうとして、増水した川に落ちてしまいました。
 河西先生は児童を救うため自ら川に飛びこみました。
 幸い児童は助かりましたが、河西先生は流されて亡くなってしまいました。




























 2019年の投稿詩 第274作は静岡の芙蓉漢詩会の Y・H さんからの作品です。
 静岡市で6月に開かれた合評会からの参加詩です。

作品番号 2019-274

  三方原回顧        

決戰千回重激突   決戦千回 激突 重ね

三方原地弔幽魂   三方原地 幽魂を弔ふ

武田智略徳川勇   武田の智略 徳川の勇

史蹟尋求往昔痕   史蹟を尋求すれば 往昔の痕(あと)

          (上平声「十三元」の押韻)

 三方ケ原合戦は、熟成しきった最強武田軍に対し、若き徳川軍が立ち向かったが、徳川勢が大敗した。
 犀ケ崖付近では、徳川勢の夜襲により武田軍に多数の死者が出た。
「犀ケ崖のたたり」を鎮めるため念仏を唱え供養した。
 これが遠州大念仏のはじまりである。




























 2019年の投稿詩 第275作は静岡の芙蓉漢詩会の Y・H さんからの作品です。
 静岡市で6月に開かれた合評会からの参加詩です。

作品番号 2019-275

  瓶梅        

絶賞瓶梅趣   絶賞 瓶梅の趣

數花何恍然   数花 何ぞ恍然

仙姿香馥郁   仙姿 香馥郁 

開遍互爭妍   開き遍し 互いに妍を争ふ

          (下平声「一先」の押韻)





























 2019年の投稿詩 第276作は静岡の芙蓉漢詩会の M・M さんからの作品です。
 静岡市で6月に開かれた合評会からの参加詩です。

作品番号 2019-276

  誕辰與妻看櫻花        

日影殘霞同伴行   日影 残霞 同伴して行く

初花散瓣續花萌   初花 弁散り 続花萌ゆ

我方誕節令和祝   我方の誕節 令和の祝ひ

共慶逢春吉野櫻   共に慶ぶ 春 吉野桜に逢ふを

          (下平声「八庚」の押韻)

 四月近くの川の土手へ妻と桜を見に行った。
 人もいない桜の下を歩いた。
 間もなく令和の年、八十二旬よく生きてこられたものだと思った。




























 2019年の投稿詩 第277作は静岡の芙蓉漢詩会の M・M さんからの作品です。
 静岡市で6月に開かれた合評会からの参加詩です。

作品番号 2019-277

  山紫水明處與頼新翁        

西向幽庭東鴨川   西 幽庭に向かい 東は鴨川

大人居寓配蘆天   大人の居寓 蘆天を配す

玄孫磊落長康壽   玄孫 磊落 長康の寿

猶羨悠然獅子眠   猶羨む 悠然たる獅子の眠りを

          (下平声「一先」の押韻)

「山紫水明処」: 頼山陽故居
「昔山陽旧居」: 頼新先生に案内して頂いた。
          天井の網代が印象に残った。頼先生は「獅子のようにゆったり寝そべっている方がよい」が持論。
          頼先生は百二歳まで長寿であった。




























 2019年の投稿詩 第278作は静岡の芙蓉漢詩会の 恕庵 さんからの作品です。
 静岡市で6月に開かれた合評会からの参加詩です。

作品番号 2019-278

  己亥新年作        

新春迎旭日   新春 旭日を迎へ

仰見五雲天   仰ぎ見る 五雲の天

瑞氣千門滿   瑞気 千門に満ち

稱杯景物妍   杯を称(あ)げれば 景物妍なり  

          (下平声一先」の押韻)

 平成三十一年と言うより己亥新年。いや令和元年新年作の方がよろしいでしょうか。



























 2019年の投稿詩 第279作は静岡の芙蓉漢詩会の 恕庵 さんからの作品です。
 静岡市で6月に開かれた合評会からの参加詩です。

作品番号 2019-279

  偶成        

風度池園暖   風度る 池園暖かに

落花片片飛   落花 片々と飛ぶ

侵窗又浮浪   窓を侵し また浪に浮かぶ 

西嶺夕陽微   西嶺 夕陽微なり

          (上平声五微」の押韻)

 五言絶句は起・承・転・結のリズムがとても難しく、時の流れをどのように風景と、よきハーモニーとするか悩んでの作となりました。



























 2019年の投稿詩 第280作は静岡の芙蓉漢詩会の 洋景 さんからの作品です。
 静岡市で6月に開かれた合評会からの参加詩です。

作品番号 2019-280

  早春        

東風送暖促吟行   東風暖を送り 吟行を促す

僅發梅花鳥有聲   僅かに発く 梅花 鳥の声有り

入眼蒼黄二三四   眼に入る 蒼黄 二三四   

陽光欲浴蕗薹生   陽光浴びんと欲し 蕗薹生ず   

          (下平声八庚」の押韻)

「蒼黄」: 萌黄色
「蕗薹」: 蕗の薹


 早春の朝、図らずも蕗の薹を見つけた時の嬉しさを書いてみました。




























 2019年の投稿詩 第281作は静岡の芙蓉漢詩会の 洋景 さんからの作品です。
 静岡市で6月に開かれた合評会からの参加詩です。

作品番号 2019-281

  初夏偶吟        

薫風習習紫雲香   薫風 習習 紫雲香し

燕子歸來上下忙   燕子帰り来たりて 上下忙し

爛爛鯉旗游碧落   爛爛 鯉旗 碧落に游ぐ

愛孫成長我家王   愛孫 成長 我家の王

          (下平声「七陽」の押韻)

「紫雲」: 藤の花
「爛爛鯉旗」: キラキラ輝く鯉のぼり
「活気」:元気


 初夏青空に風をはらんで泳ぐ鯉のぼりを見ての思いです。




























 2019年の投稿詩 第282作は静岡の芙蓉漢詩会の 洋景 さんからの作品です。
 静岡市で6月に開かれた合評会からの参加詩です。

作品番号 2019-282

  櫻花春        

東風習習及芳辰   東風 習習 芳辰に及ぶ

邑里長堤畫景新   邑里 長堤 画景新たなり

染井皚皚香雪漲   染井 皚皚 香雪漲り

河津片片泛紅塵   河津 片片 紅塵泛ぶ

千枝優雅醍醐寺   千枝 優雅 醍醐の寺

萬朶嫣妍吉野宸   万朶 嫣妍 吉野の宸

懐舊C遊如夢裏   清遊を懐旧す 夢裏の如し

想望時節八州春   想望の時節 八州の春

          (上平声「十一真」の押韻)

「宮都」: 古都
「嫣妍」: 美しい様
「想望」: 待望


 待望の春、彼方此方の桜を尋ねた時を思い出しつつ詠んでみました。




























 2019年の投稿詩 第283作は 東山 さんからの作品です。
 

作品番号 2019-283

  謝兼山先生        

始會大人獅子前   

微醺美膳電網縁   

桐山堂裡同心慶   

一謝高懷繙玉篇   

          (下平声「一先」の押韻)

<解説>

 昨夜、常春先生のご投稿を拝見して、兼山先生がお亡くなりになっていた事を知りました。

 想えば、平成27年の福岡大会に先立ち、何かお手伝いが出来ればと、3月7日に福岡の天神で兼山先生と初めてお会いしました。
 色々とお話を伺いながら食事をし、先生手作りの詩集を頂戴しました。
 しかし、私の都合がつかなくなり、結局お手伝いも大会参加も出来ないで、兼山先生には申し訳なく思っておりました。

 昨夜、改めて兼山先生から頂戴した詩集を読み返し、先生の母校愛・郷土愛とご高邁なご人格を思っています。
 此れは、兼山先生にお会いした後に、お礼の葉書に書いて贈らせて頂いた詩です。
 兼山先生のご冥福をお祈り申し上げます。合掌

「獅子」: 天神のビルの獅子彫像の前で待ち合わせしました

<感想>

 東山さんからも、兼山さんの思い出の詩を送っていただきました。

 桐山堂においては、懇親会の席などで「桐山堂三長老のお一人」と呼ばせていただき、様々な面でお世話になりっぱなしでした。

 ご友人の命日に毎年、夏に投稿して下さっていた「花茨忌」の詩も、もう拝見できないことを思うと、本当に寂しい思いです。

 兼山さんらしく、一句供えさせていただきます。

 花茨風は何処の空に消え



2019.12.28                  by 桐山人
























 2019年の投稿詩 第284作は 深渓 さんからの作品です。
 桐山堂の仲間で今年の八月に中国旅行をした折の作品です。
 写真と一緒にお楽しみください。

作品番号 2019-284

  旅與桐山会友 (桐山堂旅游)        

桐山師友旅中華   桐山 師友 中華に旅す

上海賞鑑雑技嘉   上海で賞鑑の 雑技嘉し

江旅汽船何処宿   江旅 汽船 何れの処にか宿せん

九旬餘叟在天涯   九旬 餘叟 天涯に在り

          (下平声「六麻」の押韻)

<解説>

 令和元年八月 上海、杭州、無錫、蘇州と江南水郷を巡り、桐山堂師朋と五日間の旅をする。

<解説>

 深渓さん、楊川さん、醉竹さん、そして桐山人の四人で、夏に中国旅行に行きました。
 暑い中でしたが、詩友との旅は楽しいものでした。

 夜にはホテルで一部屋に集まり、聯句会も開きました。


  セントレアの出発ロビーにて

2019.12.28                  by 桐山人
























 2019年の投稿詩 第285作は 楊川 さんからの作品です。
 

作品番号 2019-285

  訪中偶詠 (桐山堂旅游)        

湖水潭潭船上游   湖水 潭潭 船上の游

秋天層閣翠松丘   秋天 層閣 翠松の丘

杭州風物異郷趣   杭州の風物 異郷の趣

白晝夢中催旅愁   白昼 夢中 旅愁を催す

          (下平声「十一尤」の押韻)

<解説>

 旅の終わりには、今回の旅の記念として、一人二首ずつの作詩をお願いしました。
 皆さん、宿題をきっちりと提出してくれました。さすが!!ですね。


  西湖の篷舟(現在は観光用として操船しているそうです)


2019.12.28                  by 桐山人
























 2019年の投稿詩 第286作は 醉竹 さんからの作品です。
 

作品番号 2019-286

  西湖逍遥 (桐山堂旅游)        

垂柳搖搖碧水頭   垂柳 揺揺 碧水の頭

荷葉鯉魚悠   青青 荷葉 鯉魚悠なり

湖央小島加佳趣   湖央の小島 佳趣を加へ

但看晴嵐仏塔丘   但看る 晴嵐 仏塔の丘

          (下平声「十一尤」の押韻)

<解説>

 旅の目的は、この西湖を眺めることが一番のものでしたが、八月の終わりは夏休みの終わりでもあり、家族連れの観光客(勿論、中国の方達です)がいっぱいで、昔の歩行者天国(古いかなぁ?)のよう、歩くだけでも大変でした。


  仏塔の丘


2019.12.28                  by 桐山人
























 2019年の投稿詩 第287作は 深渓 さんからの作品です。
 

作品番号 2019-287

  湖上旧懐 (桐山堂旅游)        

老去何忘中国遊   老い去て 何ぞ忘れん 中国の遊

荊妻夢立画橋頭   荊妻 夢に立つ 画橋の頭

眼前湖水無人管   眼前の湖水 人の管する無く

依舊眺瞻万里流   舊に依り 眺瞻 万里の流れ

          (下平声「十一尤」の押韻)

<解説>

 深渓さんは二度目の中国行、普段から海外旅行を愉しんで旅慣れていらっしゃるのですが、今回は時期が八月下旬だったため、まだ厳しい暑さ、二日目は食事があまり進まず体調を崩されましたが、翌日には回復されて安心しました。


  夕陽に照らされた白堤断橋辺り



2019.12.28                  by 桐山人
























 2019年の投稿詩 第288作は 楊川 さんからの作品です。
 

作品番号 2019-288

  遊西湖 (桐山堂旅游)        

紅白蓮華水上浮   紅白の蓮華 水上に浮き

垂垂青柳艷姿柔   垂垂の青柳 艶姿柔らかなり

風光明媚西湖畔   風光明媚 西湖の畔

遠路騒人怡勝遊   遠路の騒人 勝遊を怡ぶ

          (下平声「十一尤」の押韻)

<解説>

 楊川さんは初めての中国旅行ということで、西湖を見ることも愉しみにしておられたそうです。

  西湖畔の垂柳


2019.12.28                  by 桐山人
























 2019年の投稿詩 第289作は 桐山人 の作品です。
 

作品番号 2019-289

  西湖 (桐山堂旅游)        

蘇堤水靜柳陰稠   蘇堤 水静かに 柳陰稠し

湖上曳波漁老舟   湖上 波を曳く 漁老の舟

島影搖搖暮風裏   島影 揺揺として 暮風の裏

三潭印月待中秋   三潭印月 中秋を待つ

          (下平声「十一尤」の押韻)

<解説>

私も宿題を忘れずに、作りました。


  胡面の三潭印月の宝塔




2019.12.28                  by 桐山人
























 2019年の投稿詩 第290作は 桐山人 らの作品です。
 

作品番号 2019-290

  蘇堤(桐山堂旅游)        

垂柳連綿緑影幽   垂柳 連綿として 緑影幽たり

荷花紅白六橋頭   荷花は紅白 六橋の頭

遠望翠靄孤山寺   遠望す 翠靄 孤山の寺

行客融然旅趣悠   行客融然として 旅趣は悠かなり

          (下平声「十一尤」の押韻)

<解説>

 蘇軾が築いた「蘇堤」は六つの橋が架かっており、緑豊かな遊歩道という感じでした。

 湖の反対側には孤山寺が霞んで見えました。


   蘇堤に建つ蘇軾の石像


2019.12.28                  by 桐山人
























 2019年の投稿詩 第291作は 醉竹 さんからの作品です。
 

作品番号 2019-291

  烏鎭故景 (桐山堂旅游)        

入鎭忽回千歳時   鎮に入れば 忽ち回(かえ)る 千歳の時

江南故景目前遺   江南の故景 目前に遺り

巷中處處吟情滿   巷中 処処 吟情満ち

流水交舟無盡期   流水 交舟 尽くる期無し

          (上平声「四支」の押韻)

<解説>

 上海から蘇州に戻り、千年前の建物が残る烏鎮に行きました。
 運河沿いに情緒溢れる家家は、黒い壁で、落ち着いた趣きでした。



   烏鎮の古景



2019.12.28                  by 桐山人
























 2019年の投稿詩 第292作は 深渓・楊川・醉竹・桐山 の柏梁体聯句です。
 西湖を出た後の客舎にて、言い出しっぺの桐山人が発句を詠み、画面の流れに合わせて句を並べました。

作品番号 2019-292

  西湖勝景        

西湖堤畔已中秋   桐山

荷葉青青湖水頭   醉竹

紅白蓮華水涯浮   楊川

群泳小魚西湖頭   楊川

垂柳連綿拷e稠   桐山

同好揺艇西湖遊   醉竹

多層堂塔翠巒丘   楊川

三潭印月塔灯浮   桐山

遠来騒客怡舟遊   楊川

水上游覧意悠悠   楊川

山紫水明一望収   深渓

清風柳葉紅魚悠   醉竹

青柳水畔風趣幽   楊川

行客許多驚岸頭   桐山

古門待客西湖頭   深渓

          (下平声「十一尤」の押韻)

<解説>

 全体として、西湖の様々な景が描かれ、パノラマ写真やビデオを観ているような感じになりました。
 一人では描ききれない素材豊かな絵になり、一堂、大変満足しました。



2019.12.28                  by 桐山人
























 2019年の投稿詩 第293作は 岳城 さんからの作品です。
 

作品番号 2019-293

  即位正殿儀        

瑞雨央俄菊蕊薫   瑞雨 俄かに央(や)んで 菊(きく)蕊(ずい) 薫る

萬邦元首列鳳宸   万邦の元首 鳳宸に列す

天皇即位宣明詔   天皇即位 宣明の詔(みことのり)

宮府文虹平世辰   宮府の文虹 平(へい)世(せい)の辰

          (上平声「十二文」・「十一真」の通韻)

「文虹」: 美しい虹
「平世」: 良く治まった社会


<感想>

 即位を祝うお気持ちが出ていて、瑞祥を表す素材も配して構成されていると思います。

 承句の「鳳」は仄字ですので、「凰」の平字の方が良いですが、「鳳」が雄、「凰」が雌となっていますので、平仄だけのことで入れ替えるて良いかは岳城さんのお気持ちによりますね。
 「芳宸」としておけば、無理はないと思います。



2019.12.29                  by 桐山人
























 2019年の投稿詩 第294作は芙蓉漢詩会の 甫途 さんの作品です。
 

作品番号 2019-294

  天皇即位        

古式黄袍束帶装   古式 黄袍 束帯の装ひ

誓言澄K溢洋洋   誓言 澄K 溢洋洋

二重橋下歡呼謁   二重橋下 歓呼の謁

殷殷砲聲開慶   殷殷たる砲声 慶祥を聞く

          (下平声「七陽」の押韻)

<解説>

 新しい天皇は古式の黄袍束帯の装いで 内外に宣言をして即位した。その姿、言葉は自信に溢れ洋々としている。
 二重橋の周辺に皆が集まって祝意を表している。祝砲は数発、万歳が続き、慶賀が開く。

<感想>

 静岡での漢詩講座でも「即位礼」の詩を甫途さんがお書きになっていましたので、岳城さんの詩と併せてご覧ください。
 以下は、その折の私のコメントです。

   大きな齟齬は無いですが、承句の「溢」は主語が無く、無駄な字になっていますね。
   通常ならば「氣洋洋」とするところですが、即位礼でもありますので「勢洋洋」でしょうか。




2019.12.29                  by 桐山人
























 2019年の投稿詩 第295作は 凌雲 さんからの作品です。
 

作品番号 2019-295

  偶成        

西風難約事   西風 事を約し難く、

請願散東雲   請ひ願はくは東雲を散ぜんことを。

漸漸深秋色   漸漸 秋色を深め、

只看鳥影群   只看る 鳥影の群れ。

          (上平声「十二文」の押韻)

<感想>

 凌雲さんからいただいた原稿では詩題がありませんでしたので、「偶作」とさせていただきました。
 五言絶句で、何となく漱石っぽいかなというだけの発想です。
 凌雲さんが書き忘れでしょうから、また、訂正があるかもしれません。

 五言は省かれる部分がどうしても多く、少ない字数で最大限の情報を伝える必要があります。
 この詩の後半のような叙景ならばすっきりしますが、心情を推し量らねばならない場合には難解になりますね。
 例えば、起句は「難約事」「西風」がどうつながるのか、七言で余裕があれば「西風○○」として、西風を作者がどう見ているのかという情報を入れることができ、だから「難約事」なのだと理解出来ます。
 また、承句でも「散東雲」「請願」する理由とか、作者は「東雲」に何を見ているのか、についても読者が推測することになります。
 それは五言詩の持つ魅力でもありますが、難解の原因でもあります。
 承句の「請願」に一工夫があると良いでしょうね。



2019.12.28                  by 桐山人
























 2019年の投稿詩 第296作は 遥峰 さんからの作品です。
 

作品番号 2019-296

  初冬偶成        

殘柿寒村獨散紅   残柿 寒村に 独り紅を散じ

摘蒿江畔荻花風   蒿(よもぎ)摘みし江畔 荻花の風

老鴉孤影歸斜照   老鴉の孤影 斜照を帰り

雪僅白山冬淺中   雪 僅かに山を白む 冬浅き中

          (上平声「一東」の押韻)

<解説>

 詩料さがしと腰痛治療も兼ねての散歩です。
 同じコースは飽きるので、あちこちへ出かけて、眺めをメモしています。
 今日は、家を出て川沿いに散歩です。


「蒿」はよもぎです。「蓬」での冒韻を避けました。

<感想>

 こちらは「上平声一東」韻で冬の詩ですので、桐山堂詩会の参加詩だったのでしょうか。

 散歩しながら、目に入ったものを描いて行ったということで、スケッチとも言えるでしょうね。
 晩秋から初冬の寂しさをよく描かれていると思います。

 起句は「寒村殘柿獨散紅」と先に場所を示して主語(柿)と述語(散)を近づける語順が良いので、読み下しで「寒村」と無理して入れましたか。
 しかし、「殘・寒・獨・散」などの字がもの悲しいイメージを醸し出していて、良い句だと思います。

 承句は、この場面で「ヨモギ採り」が必要でしょうか。作者としては、記憶に残って思い出かもしれませんが、読者はそこにヨモギが生えていたことも知りませんので、ここは眼前の景だけにした方が良いですね。

 転句は、夕陽の中を飛んでいく鴉ですが、「老」はどこから判断したのか疑問です。声なのか、飛び方なのか、決まり言葉が先行したでしょうか。

 結句は「白山」を「山を白くす」と読んでもらえるか、がポイントですね。
 色彩を表す形容詞を動詞として用いるのは、王安石の詩「泊船瓜州」の中で「春風又麹]南岸」(春風は又江南の岸を緑にす)という用例もあります。
 ただ、この文脈ですと「雪僅かにして 白山 冬浅き中」、つまり「白い山」と解釈する人が多いでしょうね。
 「白い」ということを言わずに「遠山」「連山」「旧山」など、形容詞を前につけるのが良いかと思います。



2019.12.30                  by 桐山人
























 2019年の投稿詩 第297作は 岳城 さんからの作品です。
 

作品番号 2019-297

  稱履正社岡田監督        

三十餘年願不諧   三十余年 願い諧(かな)はず

櫛風沐雨鍛球兒   櫛風(しっぷう)沐(もく)雨(う) 球児を鍛ふ

榮光頂點潘零涙   栄光の頂点 零涙 潘る

連霸高望既夢移   連覇の高望 既に夢 移る

          (上平声「九佳」「四支」の通韻)

「櫛風沐雨」: 目的を達成するために苦労する


<解説>

 「大阪を制する者は全国を制する」
 孫達が住んでいる最寄りの高校というだけですが、応援に力が入りました(笑)

<感想>

 今年の夏の甲子園優勝校ですね。
 おめでとうございました。

 転句の優勝の喜びから、結句ではもう「連覇」へと流れるのが急ぎ過ぎかな。優勝そのものの感動が薄れてしまう点が惜しいところです。




2019.12.30                  by 桐山人
























 2019年の投稿詩 第298作は 岳城 さんからの作品です。
 

作品番号 2019-298

  七十三歳誕生日偶感        

七十三年谷又山   七十三年 谷 又 山

人生行路愈終邊   人生の行路 愈よ 終の辺

兒孫成育惟誇負   児孫の成育 惟だ 誇負

康健殘生願千千   康健なる残生 願ひ千千

          (上平声「十五刪」・下平声「一先」の通韻)

「誇負」: 自慢して誇りに思う

<感想>

 誕生日、おめでとうございます。

 これからの人生に対して「願千千」ということで、羨ましい、と言うか、私も同じ年になった時にこういう気持で居られたら良いな、と素直に思いました。
 そういう意味では、承句の「愈終邊」は「半途邊」くらいで、前向きが良いかもしれませんね。



2019.12.30                  by 桐山人
























 2019年の投稿詩 第299作は 亥燧 さんからの作品です。
 

作品番号 2019-299

  偶成        

離職耽詩名利軽   職を離れ詩に耽り 名利軽し

帰郷級友笑相迎   帰郷の級友 笑って相迎ふ

一觴一曲忽忘老   一觴一曲 忽ち老いを忘れ

不覚五更星斗横   覚えず五更 星斗横たふ

          (下平声「八庚」の押韻)

<解説>

 5月にようやく仕事から解放され、毎日日曜日。
 暇を持て余していたところ、東京から一時帰省の友がやってきて、早速地元の友を集めて急遽のクラス会。
 盃を重ね、かさね、いくつになっても、すぐに昔に帰りますね。

<感想>

 私も毎年、高校の同窓生たちと年末に会うことにしています。
 同じ期日に同じ会場で、と決めていますので、遠く海外からも帰省の日程を調整して必ず参加してくれる仲間も居ます。
 学校としての同窓会も4年に一度開いていますが、こちらは昔話や病気の話がメインなのですが、毎年の暮の集まりでは不思議なことに、昔話は皆無、話題は現在の生活や孫のこと、何よりも自分のこれからやりたいこととか、今熱中していることなどが話の大事な種、元気が湧いてくる会になっていて、楽しく、あっという間に時間が過ぎます。
 青春時代を共に過ごした友だからこそ、その仲間が今現在をどう生きているか、人生の仲間という感覚なのでしょうね。

 結句の「不覚五更」は時間的にやや飲み過ぎの気もしますが、亥燧さんの楽しい気持がよく出ていて、嬉しくなりますね。

 少し難を言えば、起句で作者の現状を語ったのですが、承句の友との再会と「耽詩名利軽」は分離していているのが気になります。
 ここは別に作者のことは言わなくても良くて、つまり、このままですと、「悠悠自適に世俗から離れているから友だちと会えた」みたいに読まざるをえなくなります。季節をさりげなく語っておくのが良いでしょうね。

 承句の「帰郷級友笑相迎」は「帰郷した級友が迎えた」となりますので、下三字を「笑顔盈」「喜逢迎」とか、「清觴高宴旧朋迎」などでしょうか。



2020. 1. 2                  by 桐山人
























 2019年の投稿詩 第300作は 恕水 さんからの作品です。
 

作品番号 2019-300

  天使梯        

村落獲収新稲香   村落 獲収 新稲の香

畔疇竜爪好風涼   畔疇 竜爪 好風涼し

遠山曇下鷺飛夕   遠山 曇下 鷺飛ぶ夕

呈露一条雲隙光   呈露す 一条の雲隙の光

          (下平声「七陽」の押韻)

<解説>

 村落では収穫が行われ、刈られたばかりの稲の香りが漂っている。
 畦道には彼岸花が咲き、心地よい風が咲いてくる。
 遠くには緑の山々が見えているが、空は厚い雲に覆われ、白鷺が飛んでいく、そんな夕刻である。
 天使の梯子が現れた。

<感想>

 題名の「天使梯」は宗教画によく描かれている、雲の切れ間から太陽の光がカーテンのように垂れてくる光景ですね。

 承句は「風涼」と来れば「好」は要らないわけで、ここは風を出すよりも「竜爪」のことをもう少し引っぱるべきでしょうね。

 清浄な空気が感じられ、敬虔な気持になる場面を「一条雲隙光」で表した形で、この結句が良く、それを導く転句も遠景を丁寧に描こうという気持が感じられます。
 「曇下」はせっかくの「雲隙」を弱めてしまいます。ここに風を持ってきてはどうでしょうね。



2020. 1. 2                  by 桐山人