作品番号 2018-91
新年
旭旗歳旦兩三花 旭旗 歳旦 両三の花
微暖和風江上家 微暖 和風 江上の家
芳酒一樽怡賀客 芳酒 一樽 賀客怡ぶ
慶雲千里夢榮華 慶雲千里 栄華を夢む
作品番号 2018-92
戊戌新春只管打坐入禪
休道繁忙敲字躬 道ふを休めよ 繁忙 字を敲くの躬
聲譽禪聽愧微功 声誉 禅かに聴いて 微功を愧づ
結跏趺坐視心底 結跏趺坐し 心底を視るに
無我集中如悟空 無我集中し 空しきを悟るが如し
作品番号 2018-93
新年雜感
屠蘇閑酌酒杯中 屠蘇 閑かに酌す 酒杯の中
告曉梅花枝蕾充 暁を告ぐる梅花の枝蕾充つ
戊戌三元身尚健 戊戌の三元 身は尚健なり
吉玉歴太平風 吉祥の玉歴 太平の風
作品番号 2018-94
早春
寒風颯颯降霜皚 寒風颯颯として 降霜皚し
殘月僅明牆壁隅 残月は僅かに牆壁の隅を明かす
乍識老松猶傲冽 乍ち識る 老松の猶ほ傲冽たるを
早春花信一枝梅 早春の花信は一枝の梅なり
作品番号 2018-95
新年感懷
元朝東海瑞雲中 元朝 東海 瑞雲の中
麗日春光萬里同 麗日 春光 万里同じくす
詩朋吟友重斟酒 詩朋 吟友 重ねて酒を斟む
鶴髪笑顔談未終 鶴髪 笑顔 談未だ終らず
作品番号 2018-96
新年
新晴佳氣滿窗紗 新晴 佳気 窓紗と満たす
韶景早鶯芳樹花 韶景 早鶯 芳樹の花
邀遠來君歡宴饗 遠来の君を邀へ 宴饗を歓ぶ
坦然祈福樂韶華 坦然 福を祈りて 韶華を楽しむ
作品番号 2018-97
新年書懷
歳朝初日抱人家 歳朝の初日 人家を抱ふ
梅發閑庭紅白花 梅発く 閑庭 紅白の花
摘句敲詩齡七十 句を摘み詩を敲くも齡七十
三多尚琢興逾加 三多尚琢き 興逾よ加はる
作品番号 2018-98
新年
初陽瑞氣帶朝霞 初陽 瑞気 朝霞を帯ぶ
詣客往来人語譁 詣客 往来して 人語譁し
春淺早梅花始發 春浅 早梅 花始めて発く
三元一醉笑顔家 三元 一酔 笑顔の家
作品番号 2018-99
新年
元旦拝年ク社譁 元旦 拝年すれば 郷社譁し
春盤笑語一堂嘉 春盤 笑語 一堂嘉し
人生百歳南山夢 人生 百歳 南山の夢
快飲陶然悦喜爺 快飲 陶然 悦喜の爺
作品番号 2018-9
初吟會
麗日春光發嫩芽 麗日 春光 嫩芽発く
詩友參集少年加 詩友参集し 少年加はる
高吟朗朗一堂響 高吟 朗朗 満堂の響き
萬事平安樂歳華 万事平安 歳華を楽しむ
作品番号 2018-101
與雙親迎春慶賀 双親と春を迎へ慶賀す
寒月暗香除夕家 寒月 暗香 除夕の家
鐘聲微雪靜煎茶 鐘声 微雪 静かに茶を煎る
五雲瑞氣曈曈日 五雲 瑞気 曈曈の日
鳴謝雙親兩鬢華 鳴謝す 双親 両鬢の華
作品番号 2018-102
新年書懷
春光瑞氣早梅披 春光 瑞気 早梅披く
門巷家家翻旭旗 門巷 家家 旭旗翻る
頽齡追約生涯計 頽齢 約を追ふ 生涯の計
無恙煕煕迎歳時 恙無く煕煕として歳時を迎ふ
作品番号 2018-103
新年
歳朝淑氣到田家 歳朝の淑気 田家に到る
麗日春生一枝花 麗日春は生ず 一枝の花
筆硯友朋無別事 筆硯の友朋 別事無し
萬邦四海樂栄華 万邦 四海 栄華を楽しむ
作品番号 2018-104
望觀音岳
觀音岳靜入窗紗 観音岳静かにして窓紗に入る
山影尊顏安野家 山影の尊顔 野家を安んず
歳旦峯頭紅映日 歳旦の峰頭 紅く日に映じ
彩雲紛郁邑郷嘉 彩雲紛郁として 邑郷嘉し
作品番号 2018-105
迎春
閑収亂帙惜年華 閑かに乱帙を収めて 年華を惜しむ
百八鐘聲雪意加 百八の鐘声 雪意加はる
戊戌正朝迎賀客 戊戌 正朝 賀客を迎へ
一觴一詠野翁家 一觴 一詠 野翁の家
作品番号 2018-106
迎新年
瑞光千里滿紅霞 瑞光 千里 紅霞芳葩を散らす
四海昇平萬壽花 四海 昇平 万樹の華
賀客辛盤開盛宴 賀客 辛盤 盛宴を開く
醉歌笑語這春家 酔歌 笑語 春を這ふるの家
作品番号 2018-107
迎新年
歳旦瑞光入窗紗 歳旦 瑞光 窓紗に入る
新正天地暖氣加 新正 天地 暖気加ふ
陋居客到屠蘇酒 陋居 客到りて 屠蘇の酒
此節遙懷故里家 此の節 遥かに懐ふ 故里の家
作品番号 2018-108
迎七十三新春
疎梅陋屋結芳葩 疎梅 陋屋 芳葩を結び
占卜鷄鳴新歳家 占卜 鶏鳴 新歳の家
椒酒元朝祝無恙 椒酒 元朝 恙無きを祝ひ
菜羹人日賞春華 菜羹 人日は春華を賞す
作品番号 2018-109
新年偶成
紅旭曈曨四海明 紅旭 曈曨として 四海明らか
春風萬里入都城 春風万里 都城に入る
高樓遠望富峯雪 高楼に遠望す 富峰の雪
戊戌新正樂太平 戊戌の新正 太平を楽ぶ
作品番号 2018-110
拝旭日
高樓小閣列C晨 高楼 小閣 清晨に列し
淑氣蓬蓬此歳新 淑気蓬蓬として 此に歳新た
萬戸蕭森迎旭日 万戸蕭森と旭日を迎へ
城邊堤上一閑人 城辺 堤上 一閑人
作品番号 2018-111
謝桐山堂
獨稱詩客事風騷 独り詩客と称して風騒を事とするも
恰似暗中揮大刀 恰も似たり 暗中 大刀を揮ふに
幸訪鈴門多雅友 幸ひに鈴門を訪へば雅友多く
陪從我也一吟高 陪従して 我も也た 一吟高し
ひとり詩人と言い張って 風雅を気取ってみるけれど
大きな刀を闇のなか 振り回すのと変わらない
幸いにして鈴の音に 仲間たくさん集まって
わたしも側にしたがって 上手になった気になれる
<感想>
2018年の投稿漢詩の掲載をやっと始められました。
一月に義母の入院などもあり、どうも気持ちの面でどうも気合いが入らなくて、昨年いただいた投稿詩も積み残したままで済みません。
しばらくお休みさせていただいた形になりましたが、その間に新しい方からの投稿をいただくこともあり、元気が戻ってきました。
さて、今年度の最初の掲載は嬉しい報告の作品です。
観水さんは昨年の「漱石記念漢詩大会」で最優秀賞を受賞されました。
おめでとうございます。桐山堂の長年の仲間として、心からお祝いの気持ちを贈ります。
受賞式の様子は「第二回漱石記念漢詩大会」をご覧ください。
昨年は全日本漢詩連盟の指導者講習会にも、ネット会員の代表として受講していただきましたが、実力をつけた若い方が今後の漢詩界を引っぱっていくことを期待させてくれますね。
もちろん、年長の私たちもまだまだ負けないように頑張りますよ。
2018. 4. 1 by 桐山人
作品番号 2018-112
誌小説獨舞付梓 二首之一
十載苦吟窮鹿島, 十載 苦吟するも 鹿島に窮し、
一朝獨舞進扶桑。 一朝 独舞して 扶桑に進む。
慨思浮芥歸何處? 慨思す 浮芥 何れの処にか 帰せんと、
五嶽四溟有故郷。 五嶽四溟に 故郷有らん。
<解説>
平成三十年三月、初めて日本語で書いた小説にして、第一単行本『独り舞』の刊行が決定しました。
そのことを記念するために書いた詩です。
「鹿島」は、台湾の別称です。第一句と第二句は、台湾で十年間書いても文名はなかなか上がらなかったけれど、まさか初めて日本語で書いた小説を日本で出版できるとは、という意味です。
「独舞」は書くことの孤独さと書名とにかけています。
<感想>
まずは何よりも単行本の出版、おめでとうございます。
先日の受賞に続いて、いよいよ日本での作家活動の第一歩ですね。応援と期待をしています。
単行本は角川書店から3月末に発刊されました。
記念の作品を拝見しました。
読み下しでは赤字にした部分、二字の熟語は音読みした方が良いのと、「行き着く」の意味では「帰す」とサ変動詞に訓じた方が自然です。
前半の対句が効果的で、台湾と日本、「獨舞」も「苦吟」の対としてみると、お気持ちがよくわかります。
それを受けての転句ですが、「慨思」がぼやけていて、有っても無くてもよい語になっています。ここは「浮芥」を修飾する言葉を入れて作者の感情を削った方が良いでしょう。
「泛泛」「揺漾」など色々と考えられると思いますので、気持ちにしっくり合う言葉で考えてはどうでしょうね。
また、結句ですが「四字目の孤平」でこれは禁忌です。
上四字は変更できないでしょうから「有」、これに替えて先ほどの「思」を持ってきても良いですが、「故郷を見失った」という趣とはちょっとずれますね。
「尋故郷」が無難かもしれませんが、せっかくの上梓記念ですので、「周」とか「都」とか「全」と、肯定的というか開き直りというか、よく分かりませんが、明るい形で収束するのが良いと思います。
花が開くのはその場所があるから、選んだ土地で生きて行く、どこでも(日本も)故郷だと思っていただきたいという、これは私の希望ですが。
2018. 4. 1 by 桐山人
作品番号 2018-113
誌小説獨舞付梓 二首之二
未有白翁蒼浩筆, 未だ 白翁の 蒼浩たる筆有らず、
也無邱女冷纖魂。 また 邱女の 冷繊たる魂も無し。
孤琴偶得周郎顧, 孤琴 周郎の顧みるを 偶に得たれば、
漢柱和絃究道源。 漢柱と和絃もて 道源を究めん。
<解説>
「白翁」「邱女」はともに台湾の有名な現代小説家です。「白翁」とは白先勇(1937-)のことで、「邱女」とは邱妙津(1969-1995)のことです。
「漢柱」と「和絃」は、中国語を母語としながら日本語で小説を書いている自分の喩えです。
<感想>
こちらの詩はすっきりとした心境で、これからへの決意が籠められていて良いと思います。
細かい所では、承句の「也」は追加の意味を表す「又」の方が分かりやすいでしょう。
個人名が転句まで続きますが、前半は現代人、転句は古人ということでしかも故事として使っていますので、問題は無いと私は思います。
ただ、全て(日本人から見れば)中国の人であり、結句の「和絃」に当たる記述が無いので、結句がどうしても浮いてしまいます。
できれば「偶得」を「此得」「纔得」として、日本に来ている今現在を感じられる表現にしてはどうでしょうか。
2018. 4. 1 by 桐山人
作品番号 2018-114
晩春有感
巻簾徒看晩春霖、 簾を巻いて 徒だ看る 晩春霖、
流水落花無古今。 流水落花に 古今無し。
枝上老鶯何處去、 枝上の老鶯 いづくにか去らん、
放開梨雪未還吟。 梨雪を 放開し 未だ還 吟じざるに。
<解説>
簾を巻いて春の長雨をなんとなしに看ている、
流水に落花という晩春の景色は今も昔も変わらないのだろう。
枝にとまっていた老いた鶯よ何処へゆくのだ、
雨に打たれて散りしだきゆく真白き梨の花への手向けの美声を啼きもしないで。
結句の「還」は副詞として、「開」は「放」について、乖離の意で用いています。
<感想>
新しい漢詩仲間を迎えて、とても嬉しく思っています。
今後とも宜しくお願いします。
漢詩創作のご経験は一年くらい、とのことですが、平仄・押韻も整って、しっかりと取り組んでいらっしゃることが分かります。
内容的には、晩春の情景を拾い上げていらっしゃるのですが、最初の場面設定とその後の措辞がやや不釣り合いです。
「巻簾徒看」ということですと自宅の室内から窓越しに眺めているわけで、そうすると見える範囲は庭の中、あるいは庭越しに見える遠くの山くらいになります。
(雨が降っていますから、遠くの山は今回は見られないでしょうが)
そう思って見ると、「流水」がひっかかります。「水」は「川」ですので、いつの間に川辺に行ったのか、混乱します。
「流水落花」は晩春景の常套語ではありますが、ここでは別の言葉にしてはどうでしょうね。
これも常套語になりますが「片片落花」とすれば庭の景に戻ります。ただ、ここで「落花」を使うと、結句の「梨雪」がややインパクトが弱くはなりますね。
「流水落花」を残すならば、「巻簾」を削って、例えば「郊行一日晩春霖」のように外に出かけた形になると思います。後半の「梨」を考えると、自宅の庭よりも広い土地の方が良いと思いますので、こちらで検討してはどうでしょう。
転句は意図は分かるのですが、「枝上」「何処」と場所を表す言葉が重なるのがやや気になります。
結句は「放開」ですが、これは「開き放つ」の印象が強いですね。作者の意図としては「擲抛」の方が合うと思います。
この句のポイントは下三字、「未還」が適切かどうかです。
この「還」は「もう一度」ですので、春先の鶯が「まだ去年のように鳴いていない」ならば分かりやすいです。
しかし、ここは晩春で「老鶯」、初鳴きではないので、「一度鳴いた鶯がまだ二度目を鳴いていない」ということで、「二度鳴き」ということにどうして執着するのか、詩をまとめる感動として何があるのか、率直に言うと疑問があります。
主語を転換して、例えば「藤房梨雪惜殘吟」のように、晩春の情、春愁にもって行くのが穏当かと思います。
その上で再度見直しということで、例えば「落花」が入った方が良いか、とか「枝上」が必要かどうか、などを検討するのが推敲過程になりますので、少し時間を置いてから考えると良いと思います。
2018. 4. 1 by 桐山人
作品番号 2018-115
力走向函山
早発東京高楼間 早に東京高楼の間を発す
天寒力走仰孱顔 天寒 力走 孱顔を仰ぐ
只管登尽羊腸路 只管に登り尽くす羊腸の路
将欲健児過函関 健児将に函関を過ぎんと欲す
<解説>
初めて投稿させていただきます。
漢詩を作り始めて二ヶ月くらいなもので、全く詩の体や文法をなしていないとは思いますが、ご助言いただきたく、思い切って投稿させて頂きます。
朝早くに、東京のビルの間を出発し、寒空を険しき山を仰ぎながら走る、山道を登り尽くし、箱根の関所を過ぎようとしている。
上記のような構想にて作詞してみました。
<感想>
新しい漢詩仲間を迎えて、とても嬉しく思っています。
今後とも宜しくお願いします。
東京をスタートして箱根まで、途中の景色に「高楼」「孱顔」「羊腸路」「函関」を配置して、箱根駅伝の趣をよく出していると思います。
新年恒例の駅伝をテレビ中継で私も見ていますが、選手の走る姿や順位は勿論ですが、途中の新春の風景を見るのも楽しみですね。
まだ漢詩創作を始めて日が浅いとのことですが、表現したいことが伝わって来る詩になっています。押韻は大丈夫ですので、平仄を合わせることをしていきましょう。
一句一句は「二四不同」「二六対」「下三連の禁」という平仄の規則があり、二字目と四字目は平仄を逆に、また、二字目と六字目は同じ、下三字は同じ平仄ばかりにしないようにする必要があります。
第一句(起句)の平仄は「●●○○○○○」となっていて、「二四不同」は良いですが、「二六対」「下三連の禁」が壊れています。
六字目を仄字にすれば「下三連」も自動的に解消しますので、「楼」を同意の「閣」にすれば良いですね。
「東京」も悪くないですが、「京師」「東都」とした方が漢詩の雰囲気が出ます。
「早發京師高閣間」という形ですね。
第二句(承句)の平仄は「○○●●●○○」となっていて、問題はありません。
第三句(転句)は「●●○●○○●」、ここは二字目が平字にならないといけないところ、直す必要があります。
第四句(結句)は「○●●○△○○」で、ここは六字目が仄字にならないといけません。
五字目の「過」は平仄両用字です。
以上の点を考慮して、取りあえず平仄を合わせてみると、
早発東京高閣間
天寒力走仰孱顔
新春登尽羊腸路
将欲健児過険関
まだ、「力走」「登尽」「健児過」が同じことをどうも繰り返している感じがしますので、そのあたりを整理して、
早発東都層閣間
天寒力走仰孱顔
健児登尽羊腸路
新歳春風過険関
結句には、駅伝とは離れて自然の風景を描くと収まりがよくなります。
箱根の地名が出ないのが残念かもしれませんが、その場合には語句を入れ替えて改めて平仄を整えることになりますね。
2018. 4. 1 by 桐山人
作品番号 2018-116
雪余
二月雪余暫共安 二月の雪余 暫く共に安んず
天晴雲散北風寒 天晴れ雲散じ北風寒し
山光積雪遥疑逼 山光 雪を積み遥かなるも逼るかと疑ふ
感慨美容雄大看 感慨 美容 雄大に看ゆ
<解説>
二月に雪が降ったあと、しばらくは安らかだった。
空が晴れ雲が散り、北風は寒く、
山が日の光を浴びて明るく、山に積もった雪が遥かにせまってくるかと思うほどだ。
見に染みて深く感じる美しい姿は大きく堂々と見えた。
<感想>
玉作拝見しました。
順に感想を申し上げますと、
起句につきましては、平仄は「●●●○●●○」となっていて、「四字目の孤平」になっています。「雪余」となると「暫」は使えませんね。
句意として二点、「共」は何と何が「共」なのか、分かりません。これは無駄な言葉でしょう。「安」はここで作者の感情が出るのは早すぎで、結句の「感慨」がぼやけてしまいます。情景を描くようにすべきで、作者が居る場所、例えば「野亭欄」などとしておくと、郊外に出たという設定になります。
承句は、「天晴雲散」と空が晴れ渡ったことと、「北風寒」は直接つながりにくいのが難点です。普通は「空が晴れ渡ったら、日差しが暖かい」となるでしょうから。
「北風」をやめて、「尚風寒」とした方がつながりは良くなりますね。
転句は下三字が理屈っぽく感じます。「山が逼ってくる」と言えば「疑」は余分な言葉ですし、「遥」は「遠山」と書いておけば通じます。
「雪」の字も起句で既に出ていますので、「皚皚遠嶺」「銀冠山嶺」のような上四字、下三字は「眼前逼」でしょうか。
結句は作者の感動を一気に出したところですが、「美容雄大」と表しているのが「冠雪の山」であり、それは転句に書かれている情報だけですので、どこまで「美容雄大」なのかは伝わりません。
厳しく言えば、作者がひとりで感動しているという印象です。
結句の上四字にも山や周りの景色を出して、それらをまとめて「雄大」と表すと共感が生まれるでしょう。例えば(実際にご覧になった景色が分かりませんので、具体性が欠けますが)、「一望連山雄大看」(一望の連山 雄大の看)のようにすると、「雄大」の根拠が多少はっきりするでしょう。
2018. 4. 1 by 桐山人
作品番号 2018-117
梅園
寒色梅園古画如 寒色の梅園 古画の如し
万方経雨雪消初 万方 雨を経て 雪消ゆるの初め
一枝萌動春風起 一枝 萌動し春風起こる
梅樹物華微酔余 梅樹の物華 微酔の余
<解説>
冬の寒そうな梅園の景色はまるで水墨画のようだ
天下四方は雨が降って、雪が消えていく頃である
一つの枝が芽吹き春一番の風が起こる
梅の木々の優れた景観に少し酔った私だった
<感想>
こちらは昨年の投稿詩172作の「梅林」の推敲作ですが、韻字も題名も変更しましたので、新たに掲載をさせていただきました。
韻目を替えたのは何の関係でしょうか。「古画」は私がお示ししたものですが、語順としては「如古画」でなくてはいけません。
このように「如」を最後にすると意味が通じません。
起句と承句でひとまとまりというイメージで漢詩は作られますが、今回は二つの句が勝手なことを言っている印象です。
前半の二句ではあまり大きな変化は出さず、「二句でひとまとまり」を意識することが大切です。
「上平声六魚」の韻で行くとして、「二月梅園雪解初」、「古画」の趣を残すなら「二月梅園古色閭」としてはどうでしょう。
承句は、「万方」とあまり承句で拡がると、結句の感慨が弱くなります。雪を起句に持っていきましたので、「東郊経雨暖風徐」とこちらに「風」をもってきましょうか。
転句は大きく変化させても良いところです。今回は結句が「物華」と大きく来ていますので、「一枝」ではなく「千枝萌動」としても大丈夫です。
下三字は上と対応させて「万花発」としても面白いですが、作者のお気持ちでお考えください。
結句は「梅」は起句に出していますので同字重出です。
起句か承句のどちらに「梅」を残すかですが、題名にも使っていますので、もう梅の話だとは分かります。あまり勿体ぶらずに初めに(起句に)出しておいた方が良いでしょうね。
最後の「微酔余」は「微酔の私」ではなく、「微酔のあと」という語です。また、突然「微酔」が出て来ても、それまでに酒の話はありませんから驚きます。
「微酔」の言葉をせっかくですので生かしたいですが、今のところ良い案が浮かびませんので、取りあえず、感動が深くなるように言葉を選んでみました。
まとめると、以下のようになりますので、参考にしてください。
二月梅園雪解初
東郊経雨暖風徐
千枝萌動万花発
縦目物華春候舒
2018. 4. 1 by 桐山人
作品番号 2018-118
歳寒偶成
風強霙降歳寒時 風強く霙降る歳寒の時
懶出庭隅弌草萎 出づるに懶し 庭隅弌草萎ゆ
有酒與文吾意足 文と酒有れば吾が意足る
深沈盡日獨敲詩 盡日深沈獨り詩を敲く
<解説>
寒い季節です。
布団をかぶったまま庭を見ると草が寒さで萎えています。
しかし、書物と酒が有れば満足です。
終日落ち着いて詩を推敲します。
「酒」は、「苦い酒」の字だったのですが、パソコンで出ないので諦めました。
最後の「敲(たた)く」は大漢和でも載っていない用法ですが、呂山先生が使っているので用いてみました。
雅号: 「れきせん」 私は本が大好きで、目標は古代アレキサンドリアの大図書館です。それで中国簡体字の areki山大(アレキサンドリア)から「reki山」と取りました。実は「reki」は簡体字で、がんだれに力と書き、パソコンで出ません。それで取りあえずひらがなとしました。
名前: 佐藤昭彦 住所: 326−0824栃木県足利市八幡町1−19−19 電話: 0284−73−8920 性別: 男 年齢: 56歳 創作経験: 1.5年 アドレス: sgiath@eagle.ocn.ne.jp ホームページへの感想: まだ感想がわくほどよく読んでいません。すいません。それより私の詩が掲載された場合、ホームページのどこを見ればあるのでしょうか。詳しく教えてください。よろしくお願いします。また年会費が必要との記載もみましたが、その点はどうなっているのでしょうか。教えてください。
以上です。鈴木先生もかぜなどお引きにならずに頑張ってください。またそのうち投稿します。では失礼します。さようなら。
<感想>
平仄も整い、起承転結も考えておられて、まとまりのある詩だと思いました。
承句の「弌」は正字ではありませんので、「一」と表記すれば良いですが、庭の草を(部屋から)眺めるのに「一草」では細か過ぎる印象です。
「窗前庭草萎」という形でどうでしょう。
転句は「酒與文」がしつこいですね。
ここは「苦い酒」ということですので、「酓」でしょうか。わざわざ「苦い酒」と述べる必要性は疑問で、酒に形容を付けて「芳酒」「醪酒」などが候補として出るでしょう。
ただ、ここでは「酒と書物」ということを強調するなら、句中対で「有酒有書當足意(酒有り書有りて当に意に足る)」と持って行くのが良いでしょう。
結句は転句までの「布団から出るのも面倒、酒を飲んで書物に触れる」という描写と「落ち着いて集中して」という「深沈」がそぐわないように思います。
「悠然」「閑然」「陶然」などの方が場面にしっくりします。
こうした上で再度見直してみると、承句の「懶」の字に含まれる感情が、後半の心情とのつながりが無く、逆に後半をぼやかしている気がしてきます。
感情を出さないようにして、「窓から覗き見る」というような表現で「懶」を暗に感じさせるような方向が、詩としては収まりが良いでしょう。
ただ、作者の思いとして、「寒い冬の日は布団から出ないでダラダラしている」という状態を記録したいということでしたら、現行のままでも納得はできます。
2018. 4. 1 by 桐山人
作品番号 2018-119
箱根駅伝觀戦
戊戌新春旗影颺 戊戌の新春 旗影 颺り
靈峰富士聳陽光 霊峰富士 陽光に聳ゆ
青山学院連雲勢 青山学院 連雲の勢
沿道歡聲餘韻長 沿道の歓声 余韻 長し
<解説>
年の初めは箱根駅伝から。
山梨学院全盛時代?からの習慣です。
往路は兎も角 四連覇の青山学院大学の底力に感服、上位の争いは見応えがありますが、あと何秒かでの繰り上げスタートには胸に熱いものがこみ上げてきます。
<感想>
新春恒例の駅伝、私も毎年テレビをつけっぱなしで観ています。
岳城さんもこの駅伝で新年を感じるとのこと、今年の新作をすぐにお作りになったのでしょうね。
気になるのは「青山学院」の固有名詞ですね。
この言葉が入っているため、詩の主題は「青山学院の四連覇」を讃えるものとなります。「沿道歡聲」も連覇に対してのもの、もっと言えば「靈峰富士」もその背景に過ぎなくなります。
仮にそうだとするならば、句の順番としては結句が二句目に入るべきで、富士が転句、連覇のことが結句に来た方が流れは良くなります。
作者の視点はどこの大学であれ、走っている選手たちを応援したものでしょう、その途中に連覇のことを入れたために視点がぶれて、全体に中途半端で何を言いたいのかがぼやけてしまったのではないでしょうか。
転句を走る学生たちの姿にすると(それが欠けていますので)落ち着くと思います。
2018. 4. 1 by 桐山人
作品番号 2018-120
冬期異常気象
今冬降雪異常豪 今冬の降雪 異常に豪し
確保交通多苦労 交通の確保 苦労多し
過度低温生育害 過度の低温は生育の害ひ
新鮮野菜値真高 新鮮な野菜の値 真に高し
<解説>
北陸地方の豪雪を心配しながら、つくりました。
<感想>
今年に入ってから、天気予報の度に何度も「観測史上○番目」とか「○○年振りの大雪」という言葉を聞きました。
寒さも随分厳しくて、私もヒートテックの下着を脱ぐことがなかなかできませんでした。
点水さんの今回の作品は、すらすらと言葉がそのまま詩になったような形で、後半の生活感の溢れる表現と合っていると思います。
それでも、承句の「確保交通」はまるっと散文という感じですので、同じ口語でも「上学上班」と「通学通勤」の意味合いにしてはどうでしょうね。
また、転句の「過度低温」も「厳寒」の二字で表せるところ、「亦恐」などを入れてみてはどうでしょう。
2018. 4. 6 by 桐山人