一封朝奏九重天 一封 朝に奏す 九重天
夕貶潮州路八千 夕に潮州に貶せらる 路八千
欲為聖明除弊事 聖明の為に弊事を除かんと欲す
肯将衰朽惜残年 肯て衰朽を将って残年を惜しまんや
雲横秦嶺家何在 雲は秦嶺に横たはりて 家 何くにか在る
雪擁藍関馬不前 雪は藍関を擁して 馬
知汝遠来応有意 知る 汝が遠く来たる 応に意有るべし
好収吾骨瘴江辺 好し 吾が骨を収めよ 瘴江の
韓愈が五十二歳の時、仏骨を奉じようとした皇帝に対して「仏骨を論ずる表」を書いて批判したために、左遷させられた折に作った詩です。
「路八千」は実際には五千六百里と言われていますので、長安から二千数百キロほど南。はるか地の果てへ高齢にもかかわらず飛ばされたわけですが、自己の信念を崩さない強さがありありと感じられる詩ですね。
この詩では、とりわけ頸聯の対句「雲横秦嶺家何在 雪擁藍関馬不前」が知られ、秦嶺山脈を越えるに当たっての、道の厳しさと作者の心が対応し、感動的な内容になっていますね。
私が見た時は丁度、雪に覆われた山の様子は寒々として、韓愈の旅立ちの雰囲気が感じられる写真を撮ることができました。