作品番号 2003-1
寿羊歳五言絶句
平成不況長 平成の不況は長く
改革緩且偏 改革は緩く 且つ偏せり
羊歳祥光旦 羊歳 祥光の旦(あした)
青雲祝寿天 青雲 祝寿の天
<解説>
暗い不景気が続き
政治は改革が全うされていない中
羊の年となり おめでたい意味を持つ羊なので
寿の長いことを祝う
といったことを詩としました。
作品番号 2003-2
癸未歳旦
翁媼椒花酒 翁媼 椒花の酒
呵呵笑口開 呵呵 笑口開く
窮通浮生事 窮通は 浮生の事
春信到盆梅 春信 盆梅に到る
<解説>
爺さん、婆さんが屠蘇の酒を飲んで、大口を開けて大笑いする。
口を開いて、笑わざるは、是痴人。
景気の良し悪しは、俗世間の出来事。
もう既に、盆梅の花に春がやってきているではないか。
そんな気持ちで、今年のスタートを切りたい。
作品番号 2003-3
詠羊
聞説羝羊悪性根 聞くならく 羝羊性根悪く
亦令岐路欲迷魂 亦た岐路を令て 魂を迷わせしむ
誰稱狠戻敦慈孝 誰か狠戻を稱すとも 慈孝敦く
跪乳須知哺養恩 跪乳 須らく知るべし哺養の恩を
<解説>
聞いたところによると、羊は性根が悪いというが
又多岐にあっては、人を悩ませる(多岐亡羊)
然し、誰が性は狠戻と言うのか 本当は孝心が敦いのに
乳を飲むのに跪ずいて、哺養の恩を感じているではないか
[語釈]
「跪乳」:羊は乳を飲むとき、跪いて飲む
「哺養」:乳を飲ませて育てる
「狠戻」:心がねじけている
作品番号 2003-4
癸未御題街
六甲山陽扇港宏 六甲の山陽 扇港宏く
淀江沃野裕華城 淀江の沃野 華城裕し
人家聚集結都邑 人家聚集して 都邑結び
街路縦横詳里程 街路縦横 里程詳らか
殷盛商工斉勉勉 殷盛の商工 斉しく勉勉
頻繁車馬夙営営 頻繁の車馬 夙に営営
復興災禍更凌駕 災禍復興して 更に凌駕し
市政隆昌客子驚 市政隆昌して 客子驚く
作品番号 2003-5
新年口号
玉暦開端萬象新 玉暦 端を開きて 万象新なり
洋洋淑氣入C晨 洋々たる淑気 清晨に入る
妻孥頑健幸無恙 妻孥 頑健にして 幸い恙なし
椒酒團欒不夢貧 椒酒 団欒 貧を夢見ず
<解説>
昨年(と言ってもまだ2ヵ月足らずですが)はお世話になりました。
本年もよろしく。
口号=口ずさむくらいの意味。
妻孥=妻子としたいとこなれど、平仄の関係でやむなく使う。
新年を迎えて、感じたまま口ずさむ。
平凡ではあるが、これが現在の心境であります。
作品番号 2003-6
希新年 新年に希(のぞ)む
松柏凌寒姿凛然 松柏 寒を凌いで 姿 凛然
吾生無恙志猶堅 吾が生 恙なし 志猶お堅なり
邦家趨勢君休嘆 邦家の趨勢 君 嘆くを休(や)めよ
隆盛応期癸未年 隆盛 応に期すべし 癸未(きび)の年
<解説>
酷寒の中でも 老樹は凛とした姿を見せており
小生もこれにならいお陰様で元気に、まだボケずにいます。
我が国の現状については、正月早々云々することはいたしますまい。
それより今年こそパーっと明るい年にしたいものですね。
作品番号 2003-7
癸未御題 街
十字街頭乞食詩 十字街頭乞食の詩
路傍闘草突鞠姿 路傍草を闘はし、鞠を突くの姿
昔年閭巷交遊処 昔年の閭巷 交遊の処
從住層楼少此嬉 層楼に住して從り 此の嬉しみ少し
[語釈]
「十字街頭乞食詩」<:良寛の詩
「層楼」<:マンション
作品番号 2003-8
新春
朔風雖割面 朔風 面を割(さ)くと雖
歳改瑞光新 歳改まり 瑞光新たなり
亭午分香茗 亭午 香茗を分かち
題詩筆硯親 詩を題して筆硯に親しむ
<解説>
Junji 先生 新年お目出度う御座います。
本年もどうか宜しくご指導の程、お願い致します。
[語釈]
「分香茗」:香り高いお茶を点てる。
( 晴窓細乳戯分茶 陸游「臨安春雨初霽」)
作品番号 2003-9
年賀状
読賀状懐年月長 賀状を 読みて、年月の長きを 懐う。
逾思旧友動禧央 逾(はる)かに 思う、旧友の 動(やや)もすれば禧(さいわい) 央(なかば)なるを。
迎春万物甦生気 春を 迎えて 万物 生気 甦るも、
鏡説秋霜莽莽昌 鏡は 説く、秋霜の莽莽として昌(さかん)なるを。
作品番号 2003-10
歳旦述懐 歳旦の述懐
一自離郷半百経 一たびを郷を離れて自り 半百経たり、
無功処世又重齢 処世に功無くして 又た齢を重ぬ。
平生疎遠誰相問 平生の疎遠 誰か相い問わば
二句三年且未寧 二句 三年 且く未だ寧らかならずと。
<解説>
語意は、
「半百」=百年の半分、五十年。
「処世」=世の中で暮らしてゆくのが下手であった。
結句は耽詩苦吟の表現で、二句作るのに三年もかかっているので、しばらくまだ安らかでないの意。
島の「詩の後に題す」五絶の名詩の起句より。
作品番号 2003-11
美風
新年 平成癸未を迎える詩
積水湛滄海 積水 滄海を湛え
畳山蓋蒼天 畳山 蒼天を蓋う
美風持満旦 美風 満を持する旦
将発挂帆船 将に発たんとす 帆を挂くる船
[語釈]
「湛」:たたえる。
「旦」:元旦の旦。
「将」:まさに。
「挂」:かける。
作品番号 2003-12
歳旦
元旦風和麗旭光 元旦風は和らぎ旭光麗らかなり
瓶裏梅花放瑞香 瓶裏の梅花瑞香を放つ
倶酌屠蘇卜清福 倶に屠蘇を酌んで清福を卜う
新詩賦得有希望 新詩賦し得て希望あり
<解説>
昨年読売新聞の記事で沢山のお仲間がいらっしゃることを知り、文学には縁の無かった私ですが還暦を過ぎ子供のような好奇心だけで飛び込んでしまいました。
失礼とは思いましたがメールさせていただきました。
新しい年を迎え紅梅も間に合うよう笑い屠蘇を酌み詩作もなにか,うまくなれそうな希望にみちみちたお正月です。
作品番号 2003-13
於茅屋看良友的賀年片 茅屋に於いて良友の賀年片を看る
鐘声送旧且迎春 鐘声旧を送りて且つ春を迎え、
茅屋炉辺信件親 茅屋の炉辺信件に親しむ。
莫説壮年相過去 説く莫れ壮年の相過ぎ去りしを、
瓦全我是最羞人 瓦全 我は是れ 最も羞ずる人。
作品番号 2003-14
依例年賀正
門門松竹一斉春 かどかどの松竹 一斉の春
淑酒辛盤倣四隣 淑酒、辛盤、四隣に倣う
不厭賀詩常套語 厭わず、賀詩、常套の語を
年頭祈念等諸人 年頭の祈念は、諸人、等しからん
<解説>
家ゴトニ門松ヲ一斉ニ立テル新春ニナッタゾ
屠蘇、正月ノ祝膳ハ隣近所ニ倣ッタゾ
普段ハ綺語ヲ弄ブ我モ、年賀ノ詩ハ常套ノ語ヲ並ベルゾ
ナントナレバ、メデタイコトヲイフ年頭ノ思ヒハ諸人トモ同ジナレバゾ
新年早々のいたずらで抄ものの文章を真似しました。(『三体詩』の注釈書『素隠抄』の真似)
ずっと以前、NHKの『今日の料理』のテキストの「おせち料理特集」に、河野貞子さんだったか、お料理の先生が、「貧富などにかかわらず、正月は日本中、同じ料理を食べるというのは意味深いこと」と書いていた記憶があります。
なるほど、地域差や、豪華、質素の差はあっても、同じ季節に同じものを食べて祝う習俗はゆかしいものと思いました。
外国でも行事の時の料理は同じでしょう。そもそも年中行事自体がみんなで同じことをするものですね。
それは、豊作など同じ祈りを祈ること。
共同体の習俗に個が埋没するのが直ちにいいこととは言えないにしても、他人が自分と同じ祈りを祈っている、つまり同じ願い、同じ悩みを持っていることは、連帯と共感の出発点でしょう。
というような議論まで、七言絶句に盛り込むことはできませんが、正月の「社会性」を出そうとしました。
屠蘇を手にしみじみ個人的感慨にふけるのと逆の発想です。
詩の常套句を並べることと、屠蘇や雑煮を祝うことと、少し違うことかもしれないけど。
作品番号 2003-15
癸未元旦
開暦盤樽已六旬 かいれき ばんそん すでに ろくじゅん
浮生無恙隙駒巡 ふせい つつがなく げっくめぐる
餘年幾許欲時止 よねん いくばく ときとまるをほっす
歳月非常不待人 さいげつ ひじょうひとをまたず
<解説>
最近とみに一年が速い。
恙無く過ごした人生残り少ないので少し止めて欲しい。
しかし歳月は非常なものだ。
作品番号 2003-16
新年頓悟
年華親史学 年華 史学に 親しみ
竪子追其才 竪子は 其の才を追うも
醒悟真玄遠 醒悟す 真玄の 遠きを
呑嘆又一盃 嘆じて呑む 又一盃
<解説>
若輩者ですが歴史を学んで日々惑いのなかにいます。
力みすぎている状態で、ふと学問の深遠さの醍醐味に触れると、
それまでの労苦など流れていく思いがします。
しかし中々そうはかないのが実情にて、ハタと焦っている自分と、
真理の重さに気がつくといったところです。盃を重ねながら。
一歩一歩、自分自身に納得がいくように研鑚してゆきたいという新年の抱負です。
このHPと出会えて本当に嬉しく思います。
未熟であり、なかなか一句を呈することができず忸怩たる思いですが、どうか本年も宜しく御願い致します。
貴HPのより一層の賑わいを願う次第です。
寒さ厳しきおり、御身体には御自愛ください。