21世紀を迎えた新年漢詩、第1作は 三耕 さんからの作品です。
 

作品番号 2001-1

  千年 其二 (新年漢詩)       

千年応作来今昨   千年 応作 来今昨

百歳不休昼夜晨   百歳 不休 昼夜晨

滄海蒼天黄大地   滄海 蒼天 黄大地

四花来復一枝春   四花 来復 一枝の春

          (上平声「十一真」の押韻)

<解説>

[序] 二十一世紀に向けて。

 [語釈]
 「千 年」 :世の中の時の流れ。
 「応 作」 :『金剛経』
          「一切有為法、如夢幻泡影。如露亦如電、応作如是観。」
 「来今昨」 :未来、現在、過去。
 「百 歳」 :人の一生。
 「 晨 」  :朝。
 「黄大地」 :『易』坤 六五象曰「黄裳元吉、文在中也」。
              地は『易』では「坤」。
              黄裳:黒い礼服の下に着る。中庸の徳が内に在る意。
              転句:天と海と 其の間に在る恵みの大地。
              「釣磯(2000/5/5)」に「空水青青相不侵」と詠む。
 「四 花」 :春夏秋冬の花。
 「 春 」  :その盛んなる時。

「其二」とありますのは、下の第一作に「何か足りない」ということで結句を改めました。
ご参考まで

[千年](其一)
  千年 応作 来今昨
  百歳 不休 昼夜晨
  滄海 蒼天 黄大地
  行蔵 一歩 学斉鈞

 「行蔵」:『論語』述而第七「用之則行、舎之則蔵。」
     (舎:おく、蔵:かくる。)
     『湛然居士(耶律楚材)文集』巻三『再用韻自嘆行蔵』
     「箕裘家世忝先君、慚愧飃蕭両鬢塵。
     自古山河帰聖主、従今廊廟棄愚臣。
     常思臥隠雲郷外、肯倣行吟澤国濱。
     駅使不来人已老、江南誰寄一枝春。」

 「斉鈞」:釣り合いの取れた、ひとしい。


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 第2作は ニャース さんからの作品です。
 

作品番号 2001-2

  臨除夜 (新年漢詩)       

鐘声寂寞到柴門   鐘声寂寞として柴門に到る

是否君聞在故園   君は故園にありて聞くや否や

二十余年期再会   二十余年 再会を期すも

空残一夜別離言   空しく残る 一夜 別離の言

          (上平声「十三元」の押韻)

<解説>

 年賀状を整理していると、古い友人の住所が目につき、五木ひろしの歌ではありませんが、
”あのこどこにいるのやらー”という感じになります。
 奥さんにはあまり見せられませんが。

 今年 本当にありがとうございました。
 中国文学出身ですが漢詩ができずに、困っておりました私。おかげさまで、とても楽しく投稿することができました。
 新世紀也請多々指教!!

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 新年漢詩、第3作も ニャース さんからの作品です。
 

作品番号 2001-3

  新年漢詩        

童年懐古在寒村   童年懐古すれば寒村に在りて

打架捉魚終日喧   打架 魚とり 終日 喧しく

愚父今為迎次紀   愚父と今為りて 次紀をむかえる

青春雖過夢還存   青春過ぎたと雖も 夢まだ存す

          (上平声「十三元」の押韻)

<解説>

 21世紀を迎えたら、どんな大人になっているだろうと子供の時考えていました。
 それがもう来てしまうところに歳月の流れの恐ろしさを感じてしまいます。

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 新年漢詩、第4作は 木筆 さんからの作品です。
 

作品番号 2001-4

  歳旦自贈 (新年漢詩)        

四海滔滔世紀頭   四海 滔々たり 世紀の頭(はじめ)

随波逐浪度春秋   随波(ずいは) 逐浪(ちくろう) 春秋を度(わたる)

従他生路塞翁馬   従他(ままよ) 生路(せいろ)は 塞翁(さいおう)が馬

一片浮泡自在流   一片の 浮泡(ふほう)自在に 流れん

          (下平声「十一尤」の押韻)

<解説>

 右を向いても、左を向いても世界中至るところで紛争は尽きない。
 二十世紀は將に動乱の世紀であったが、争いは総て二十一世紀に持ち越され、此の二十一世紀は、初めから何一つ明るい見通しもたっていない。
 動乱の世紀、時勢に随い、又時勢に逐われ70余年を生きてきたが、新しい世紀にも何の希望が持てる保証もない。
 ただただ、儚い残りの人生を、波間に漂う一粒の泡のように、時の流れに身を任せ勝手次第に渡って行こう。

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 新年漢詩、第5作は Y.T さんからの作品です。
 

作品番号 2001-5

  新春遺壊 (新年漢詩)        

六十已身朽   六十にして已に身は朽ちたれど

新春神未衰   新春 神(こころ) 未だ衰えず

況方新世紀   況や方(まさ)に新世紀なるを

独竊與春期   獨り窃かに春と(与)期す

          (上平声「四支」の押韻)

<解説>

 六十四になって、ひょんな事から詩を作り始めましたが、作ってみて、只、漫然と読んでいた時より少し読み方が変わってきたと自分では思っています。
 それで、こんな詩が出来ました。
 只、是迄は、何かのきっかけで句が浮かぶ度に、作ってきましたが、今回の様にテーマを決めて、いざ作ろうとすると大変に難しく、乏しい脳味噌から絞り出すようにしてやっと出来ました。
 承句は新年にすると面白くないので、春を二度使う事になりました。
 転句も新世紀は代え難く、此処でも新を使ってしまいました。


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 新年漢詩、第6作は 観水 さんからの作品です。
 

作品番号 2001-6

  元旦作(新年漢詩)        

昨日独吟除夜作   昨日 独り吟ず 除夜の作

今朝共祝一年初   今朝 共に祝す 一年の初

誰知遊子客中意   誰か知る 遊子 客中の意

君是故郷千里書   君は是れ 故郷 千里の書

          (上平声「六魚」の押韻・起句踏み落とし)

<解説>

 ・大意
昨日は独りぼっちで「除夜作」を歌ってた。
でも今朝は君と一緒に新年を祝うことができる♪
とはいえ、そんな気持を誰が知っているでしょうね。
だって君は人ならぬ年賀状なんだから。

都合により帰省していられなかったので、 年賀状ばかりが慰めです。

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 新年漢詩、第7作は 香舟 さんからの作品です。
 

作品番号 2001-7

  迎新年詠所懷      新年を迎え懷ふところを詠ず  

風雪轟然掩碧天   風雪轟然として碧天を掩ひ

濤波囘紆欲摧船   涛波囘紆して船を摧かんと欲す

勿憂浮世彌難測   憂ふなかれ浮世いよいよ測り難きを

萬物何爲久永年   萬物何爲れぞ永年に久しからんや

          (下平声「一先」の押韻)

<解説>

 新春のお慶びを申し上げます。
 昨年は、どうもお世話になりました。今年も色々とご迷惑をおかけすると思いますが、どうぞ宜しくお願い致します。
新年の漢詩ですが、今回初めて作りました。色々と難あることと思います。

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 新年漢詩、第8作は 謝斧 さんからの作品です。
 

作品番号 2001-8

  御題草 詠物体        

凝霜枯殄緑蕪黄   凝霜は枯れ殄さんとして、緑蕪は黄となり

野火焼夷空四望   野火は焼夷して、四望空し

還値春風嫩芽発   還た春風に値っては、嫩芽発き、

古原草上別情長   古原草上 別情長し

          (下平声「七陽」の押韻)

<解説>

 謹賀新年 
本年もよろしくご指導の程お願い致します。

 [訳]
 冬ともなれば、凝り固まった霜は、青々としていた草も枯らして、黄になり
 野火は、跡形もなく、枯れた草を焼夷してしまいます。
 しかし、春になれば、また草は嫩芽を発かせて、元の緑蕪に戻ります。
 そのように、私の別離の情も、古原の草のように、尽きることはありません。

 結句は2字目が孤平になってしまいました。「祠辺詩客引愁長」も考えましたが、(蘇舜欽の詩をふまえたのですが)結句は少しわかりにくいかもしれません。
 転句は、「還値春風嫩芽発」「還」「應」のほうがよいかもしれません。「応に春風に値っては、嫩芽の発くなるべし」

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 新年漢詩、第9作は 舜隱 さんからの作品です。
 

作品番号 2001-9

  (新年漢詩) 聽除夜鐘    除夜の鐘を聴く   

夜半風逾冷   夜半 風逾々冷たく

光陰逝又來   光陰 逝き又来る

鐘聲欹枕聽   鐘声 枕を欹てて聴けば

只識響猶哀   只識る 響くことの猶哀しきを

          (上平声「十灰」の押韻)

<解説>

 今年は無事に21世紀が来たのを見届けるや、私は除夜の鐘の響く中早々と床に就いてしまったのですが、外では風が休むことなく吹いており、その音を聞きながら、去りゆく20世紀と来る21世紀を思って 「逝者如斯夫(私のような若輩の言うことではありませんが)」という心境に浸っておりました。
 しかし、「枕を欹てて」聴いていると、このような中でも鐘の音は変わらずに(これに関しても上に同じ)鳴っていることにささやかな感動を覚えたのでした。新年早々「哀」というのはふさわしくないかも知れませんが、除夜の鐘にこう感じる方は少なくないと思います。

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 新年漢詩、第10作は 鮟鱇 さんからの作品です。
 

作品番号 2001-10

  (新年漢詩) 年頭所懐       

龍化蛇春願太平,   龍、蛇と化すの春、太平を願い

画龍欠足異蛇成。   龍を画いて足を欠けば異蛇となる。

龍頭蛇尾吾天命,   竜頭蛇尾はわが天命なるも

却愈画蛇添足生。   却って画蛇添足の生に愈(まさ)らん。

          (下平声「八庚」の押韻)

<解説>

 新世紀、しかしわたしはもう年寄りですから、これからのことは若い人に任せて過不足なく過ごせればと願っています。
 とはいえ、小生平常、「不足」してしまいます。ご指導ご鞭撻、本年もよろしくお願いいたします。
 なお拙作の同字重出、「打油詩」のつもりです。「打油詩」は、平仄は乱れ、孤平、下三連、同字重複などなど、近体詩の規律に杜撰、また、雅意に乏しく、要するにヘタクソな詩のことをいうと理解しています。
 詩の作法のうえではヘタクソだが、それでも捨て難きものあれば、打油詩として成功。
 拙作、平仄は外しそこないました。捨て難きものの有無は小生には判断できませんのでご指正いただければ幸いです。

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 新年漢詩、第11作は 西川介山 さんからの作品です。
 

作品番号 2001-11

  (新年漢詩) 歳朝素懷       

人生久客幾春秋   人生 久客 幾春秋

鬢雪難消雙涙流   鬢雪消し難く 双涙流る

新歳寛心一樽酒   新歳 心を寛(ゆる)めん 一樽の酒

鏡中相酌忘千憂   鏡中相い酌み 千憂を忘る

          (下平声「十一尤」の押韻)

<解説>

 結句は鏡中の自分と相い酌んでという意味です。 

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 新年漢詩、第12作は 佐竹丹鳳 さんからの作品です。
 

作品番号 2001-12

   御題草 詠物体       

離離草原為眺望   離離たる草原 眺望を為せば

栄枯一歳感無常   栄枯一歳 無常を感ず

風霜随節倩名匠   風霜節に随って名匠を倩い

描出春秋翠與黄   描き出す春秋 翠と黄と

          (下平声「七陽」の押韻)

<解説>

 承句の栄枯一歳感無常 は白楽天の古原草送別と同じ趣意です。

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 新年漢詩、第13作は神戸市の 蒼風 さんからの初めての投稿作品です。
 水墨画が趣味とおっしゃる60代の男性の方です。
 お手紙には、
 「趣味で水墨画をやっておりますので、自作の漢詩を賛に出来たらいいなあーなどと思っています」とお書きになっておられました。

作品番号 2001-13

  (新年漢詩) 迎春     

曙霞紅四海   曙霞紅なる四海

萬里風解凍   万里の風凍れるを解く

花未発鶏唱   花いまだ発かずして 鶏は唱ひ

五雲中報春   五雲の中に春を報ず

<解説>

 [訳]
 明け方の空はどこまでも紅に染まって美しい。
 遠くから吹いてくる風は凍れるものを解かす
 花はまだ咲いていないが一番鶏が鳴き
 五色の美しい雲の中に春を告げる。

  『漢詩の作り方』(新田大作著)を読みながら初めての作詩です。
 作法に合っているのかどうか判りませんが、今後も参加したいと思いますのでよろしくお願いします。

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 新年漢詩、第14作は 中山逍雀 さんからの作品です。
 

作品番号 2001-14

  (新年漢詩) 辛巳新年書懐     

遊雁信裏写心塵   

墨跡詩縁五尺身   

翰藻投竿得聞識   

憶君酒盞是天真   

          (上平声「十一真」の押韻)

<解説>

 平素のご厚情を深謝し益々のご発展をお祈りします。
本年も相変わりませずお引き立ての程宜しくお願い申し上げます。
    平成十三年元旦

註:記載は横書きですが、縦書きに表示して、巳年の巳の筆順に沿って読みますと、瀛歌に成ります。
 尚 小生のホームページ に記載があります。

<縦書き>
  憶  翰  墨  遊
  君  藻  跡  雁  辛
  酒  投  詩  信  巳
  盞  竿  縁  裏  新
  是  得  五  写  年
  天  聞  尺  心  書
  真  識  身  塵  懐


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 新年漢詩、第15作は 京祥 さんからの作品です。
 

作品番号 2001-15

  (新年漢詩) 新年書懐        

天排雲陣曙光催   天は雲陣を排し曙光催す

紅日漸生吹夢来   紅日漸く生じ夢を吹いて来る

世紀末年分別刻   世紀末年分別の刻

酒肴解憶喜心開   酒肴憶を解いて喜心開く

          (上平声「十灰」の押韻)

<解説>

 21世紀の新年にあたり、前世紀の戦争や戦後の暗い思い出を心の中から解き放って、新世紀に期待をかけた喜びの気持ちが満ちている正月の風景を詩に創りました。

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