作品番号 | 作 者 | 題 名 | 詩 形 | |
[01] | 深溪 | 「新年書懷」 | 七言絶句 | |
[02] | ニャース | 「迎新年」 | 七言絶句 | |
[03] | 風雷山人 | 「喜迎新春」 | 七言絶句 | |
[04] | 玄齋 | 「喜迎新年」 | 七言律詩 | |
[05] | 春空 | 「新年所懷」 | 七言絶句 | |
[06] | 謝斧 | 「喜迎新春 一」 | 七言絶句 | |
[07] | 謝斧 | 「喜迎新春 二」 | 七言律詩 | |
[08] | 東山 | 「新春即事」 | 七言絶句 | |
[09] | 岳峰 | 「喜迎新年」 | 七言絶句 | |
[10] | 叶 水魚(痴凱) | 「喜迎新年(別乾坤)」 | 七言絶句 | |
[11] | 押原 | 「歳旦偶成」 | 七言絶句 | |
[12] | 劉建 | 「喜迎新年」 | 七言絶句 | |
[13] | 常春 | 「喜迎新年 其一」 | 七言絶句 | |
[14] | 常春 | 「喜迎新年 其二」 | 七言絶句 | |
[15] | 鮟鱇 | 「喜迎新年 五言絶句 其一」 | 五言絶句 | |
[16] | 鮟鱇 | 「喜迎新年 五言絶句 其二」 | 五言絶句 | |
[17] | 鮟鱇 | 「喜迎新年 五言律詩 其一」 | 五言律詩 | |
[18] | 鮟鱇 | 「喜迎新年 五言律詩 其二」 | 五言律詩 | |
[19] | 鮟鱇 | 「喜迎新年 七言絶句 其一」 | 七言絶句 | |
[20] | 鮟鱇 | 「喜迎新年 七言絶句 其二」 | 七言絶句 | |
[21] | 鮟鱇 | 「喜迎新年 七言律詩 其一」 | 七言絶句 | |
[22] | 鮟鱇 | 「喜迎新年 七言律詩 其二」 | 七言律詩 | |
[23] | 芳原 | 「喜迎新年」 | 七言絶句 | |
[24] | 禿羊 | 「喜迎新春」 | 七言絶句 | |
[25] | 忍夫 | 「喜迎新春 一」 | 七言絶句 | |
[26] | 忍夫 | 「喜迎新年 二」 | 七言絶句 | |
[27] | 兼山 | 「喜迎新年 一」 | 七言絶句 | |
[28] | 兼山 | 「喜迎新年 二」 | 七言絶句 | |
[29] | 茜峰 | 「喜迎新年(懐歩信濃路佐久平)」 | 七言絶句 | |
[30] | 徠山 | 「喜迎新年」 | 七言律詩 | |
[31] | 調布T.N | 「喜迎新年」 | 七言絶句 | |
[32] | 青眼居士 | 「喜新年」 | 七言絶句 | |
[33] | 杜正 | 「喜迎新年」 | 七言絶句 | |
[34] | 點水 | 「喜迎新年」 | 七言絶句 | |
[35] | (桐山堂刈谷)眞海 | 「喜迎新年(新春誓)」 | 七言絶句 | |
[36] | (桐山堂刈谷)静巒 | 「新年作」 | 七言絶句 | |
[37] | (桐山堂刈谷)W.I | 「新年作」 | 七言絶句 | |
[38] | (桐山堂刈谷)T.I | 「新年」 | 七言絶句 | |
[39] | (桐山堂刈谷)風葉 | 「新年作」 | 七言絶句 | |
[40] | (桐山堂刈谷)小園 | 「新春」 | 七言絶句 | |
[41] | (桐山堂刈谷)M.O | 「丙申新年芳宴」 | 七言絶句 | |
[42] | (桐山堂刈谷)游人 | 「丙申新春」 | 七言絶句 | |
[43] | (桐山堂刈谷)A.K | 「迎新年」 | 七言絶句 | |
[44] | (桐山堂刈谷)仁山 | 「新年」 | 七言絶句 | |
[45] | (桐山堂刈谷)T.S | 「新年作」 | 七言絶句 | |
[46] | (桐山堂刈谷)K.T | 「新年作」 | 七言絶句 | |
[47] | (桐山堂刈谷)藤佳 | 「新年作」 | 七言絶句 | |
[48] | (桐山堂刈谷)Y.N | 「新年作」 | 七言絶句 | |
[49] | (桐山堂刈谷)聖峰 | 「新年即事」 | 七言絶句 | |
[50] | (桐山堂刈谷)一兔 | 「新年作」 | 七言絶句 | |
[51] | (桐山堂刈谷)勝江 | 「新年書懷」 | 七言絶句 | |
[52] | 明鳳 | 「喜迎新春」 | 七言絶句 | |
[53] | 仁岳 | 「喜迎新年」 | 七言絶句 | |
[54] | 忍冬 | 「迎新年參拜山西省懸空寺」 | 七言絶句 | |
[55] | 桐山人 | 「喜迎新年」 | 七言絶句 | |
[56] | 凌雲 | 「立春即事」 | 五言律詩 | |
[57] | 兼山 | 「立春即事 其一」 | 七言絶句 | |
[58] | 兼山 | 「立春即事 其二」 | 七言絶句 | |
[59] | 明鳳 | 「立春即事」 | 七言絶句 | |
[60] | 黒 | 「立春即事」 | 七言絶句 | |
[61] | Y.T | 「立春即事」 | 七言絶句 | |
[62] | 觀水 | 「立春即事」 | 七言律詩 | |
[63] | 常春 | 「立春即事 其一」 | 五言律詩 | |
[64] | 常春 | 「立春即事 其二」 | 五言律詩 | |
[65] | 仁岳 | 「立春即事」 | 七言絶句 | |
[66] | 劉建 | 「立春即事」 | 七言律詩 | |
[67] | 哲山 | 「立春即事」 | 五言絶句 | |
[68] | 道佳 | 「立春即事(由維也納調〜ウイーンからの調べ)」 | 七言絶句 | |
[69] | 仲泉 | 「立春即事」 | 七言絶句 | |
[70] | 玄齋 | 「立春即事」 | 七言律詩 | |
[71] | 酪釜 | 「立春即事 一」 | 七言律詩 | |
[72] | 酪釜 | 「立春即事 二」 | 七言絶句 | |
[73] | 桐山人 | 「立春即事 一」 | 七言絶句 | |
[74] | 桐山人 | 「立春即事 二」 | 七言絶句 |
[新年書懷]
米年遐算在三元 米年の遐算 三元に在り
麗日曈曈照小軒 麗日 曈曈 小軒を照す
劫後七旬思往事 劫後 七旬 往事を思ひ
交感悲喜向誰論 悲喜を交も感ず 誰に向って論ぜん
「米年」: 米寿。
「劫後七旬」: 戦後七十年・七十一年目
[迎新年]
夫妻異地接三元 夫妻 異地にて 三元に接し、
相酌傾杯空酒樽 相酌し 杯を傾くれば 酒樽を空にす。
酔想女児洋上在 酔ふては想ふ 女児 洋上に在るを、
唯期早日聚家園 唯期す 早日 家園に聚まるを。
鈴木先生、私は上海で年越しです。
毎度のことながらこちらは旧正月なので、全体的には新暦の正月は盛り上がりませんが、さすが国際都市 上海。
外国人が多いのでカウントダウンは結構 盛り上がります。
妻が年末に来て、夫婦水入らずですが、海洋大学に行っている娘は、乗船実習で洋上(南氷洋に向っています)での年越しです。
初めて娘は一人 外での正月、少し感慨もあります。
[喜迎新春]
初陽淑景望春門 初陽の淑景 望春の門
満椀茶香心自温 満椀の茶香 心自ら温なり
静想幽情偏感謝 静想 幽情 偏に感謝す
暁寒静坐慰傷魂 暁寒静坐して傷魂を慰む
[喜迎新年]
新年早早養詩魂 新年 早早 詩魂を養ひ
雅會集來至樂存 雅会 集ひ来りて至楽 存す
共待發芽望柳縷 共に発芽を待ちて柳縷を望み
偏窺破蕾訪梅園 偏に破蕾を窺ひて梅園を訪ふ
探春緩歩看花詠 春を探り 歩を緩め 花を看て詠じ
傾酒開心把句論 酒を傾け 心を開き 句を把りて論ず
黃鳥巡枝何處囀 黄鳥 枝を巡りて何れの処か囀らん
吟謳芳信迓和暄 芳信を吟謳して和暄を迓ふ
新年に早々と、詩歌を作ろうとする気持ちを養い、
風流な集まりに集まって来て、この上ない楽しみがあります。
共に芽を出すのを待って糸筋のように細い柳の枝を仰ぎ見て
ひたすらに蕾を開いて花が咲くのを窺い見に、梅を多く植えている庭園を訪ねていました。
春を探り、歩を緩め、花を看て詩歌を作り
酒を傾け、心を打ち明けて、詩句を取って論じていました。
鴬(うぐいす)は枝を巡ってどこで囀っているのでしょうか。
詩歌で花が咲いた知らせを歌い、暖かい日の光を迎えようとしていました。
[新年所懷]
鐘聲分歳丙申元 鐘声 歳を分けて 丙申の元(はじめ)
燦燦陽光万戸門 燦爛たる陽光 万戸の門
四海波高倫紀乱 四海 波高うして 倫紀乱る
老残将務利他魂 老残 将に務めん 利他の魂(こころ)
除夜の鐘が鳴ってひのえさるの歳が明けた。
元朝の朝日の光は遍くを照らすけれど、
世界情勢は厳しく、人の心も荒れている。
高齢者となった自分に問う、他の幸せを願う心はどうなのかと
悠々自適の生活でなくまだまだ社会の役に立って日日を過ごしたいと思っています。
[喜迎新年]
山川変改物光暄 山川変改して物光暄なり
天地鮮霊草色繁 天地鮮霊 草色繁し
誰使東皇動梅蕾 誰東皇して梅蕾を動かしめ
破衣病起出茅門 破衣病より起って茅門を出ず
[喜迎新年]
臘雪初消早暁暄 臘雪初めて消えて 早暁暄に
迎新盥漱白湯温 新を迎え盥漱すれば 白湯温かく
山川麗景梅千里 山川の麗景 梅千里
天地微明春一元 天地微明 春一元
児揚紙鳶遊草野 児は紙鳶を揚て草野に遊び
翁呼椒酒坐茅軒 翁は椒酒を呼んで茅軒に坐す
幸居無事真吾事 幸居にして事無く 真に吾事
老去難牽歳月奔 老去って牽き難し 歳月の奔るを
「幸居」: 幸生 幸生天下無事時 韓愈文
偶然の幸運で生きている
[新春即事]
新曆新陽福壽樽 新暦新陽 福寿の樽
東西南北遍天恩 東西南北 遍く天恩
萬人齊哭巴黎惨 万人斉しく哭す 巴里の惨
世界安寧億兆魂 世界の安寧 億兆の魂
[喜迎新年]
歳月古来如水奔 歳月古来 水のごとくはしる
新正自改有姸存 新正自ずから改まり 妍を有して存す
五雲靉靆添幽興 五雲靉靆(あいたい)して 幽興に添ふ
万象風和似至恩 万象風は和らぎ 至恩に似たり
今年の穏やかな正月を愛でて作詩しました。
災害の少ない年であることを祈っています。
[喜迎新年(別乾坤)]
一夜愧空論 一夜 空論ヲ愧ヅ
平沙少雨痕 平沙 少雨ノ痕
掌中来歴物 掌中 来歴ノ物
知是別乾坤 知ンヌ是レ 別ノ乾坤
[歳旦偶成]
歳旦風和群雀喧 歳旦風和し 群雀喧し
陶陶酔裡已黄昏 陶陶酔裡 已に黄昏
難民争乱騒然世 難民争乱 騒然たる世
祈願泰平夢想存 祈願泰平わ夢想に存す
[喜迎新年] 喜迎新年
春風吹起北溟鯤 春風吹いて 北溟の鯤を起こし
路未冰凍月下門 路未だ冰凍せず 月下の門
臘日飛來南海鳳 臘日 飛来す 南海の鳳
歳星留犯太微垣 歳星留まり 太微垣を犯す
「太微垣」は獅子座と乙女座にかかる星座のことで、歳星、つまり木星は今年の年末まで、このあたりに見ることができます。
1月9日は「留」という現象で木星はこの場所に一時留まります。
この木星が太微垣に留まると、気象の異常や殊に行政の転換などが起きると、言い伝えられています。
参考までに私の愛読書で「開元占経」に書かれている天文現象を参考にして、詩の言葉にしていますが、私の勝手な詩作法としてお許しいただければ幸いです。
「太微垣」は獅子座の太微右垣と乙女座の太微左垣に分かれており、現在木星は太微右垣にあり、「垣」とは宮殿の庭の様な所ではないかと解釈しています。
[喜迎新年 其一]
涌出初光天地暄 初光涌出して 天地暄
新禧交款笑聲喧 新禧の交款 笑声喧
升陽氣勢身心活 升陽の気勢 心身に活
更歩一年無二尊 更に歩む一年 二つ無く尊し
間もなく86歳、若いころ、いや退職時にも、考え及ばなかった長寿に恵まれ、日々余生を楽しんでいます。
ここまで来たからには米寿にも届くかなと淡い期待をもって、大切に生きたいもの。
[喜迎新年 其二]
三不有名神厩猿 三不で名あり 神厩の猿
一心養育絶紛煩 一心の養育 紛煩を絶つ
丙申世事多端歳 丙申の世事 多端の歳
耳目更新而好言 耳目更新し而して好言を
頂いた賀状に三不の猿がニ三あっての感想。
日光東照宮神厩の猿、八面の2、子育てにわき目も振らずというところか。
丙申 炳若日星、神清気爽の歳、よく見よく聞き、そしてよき発言を!
[喜迎新年 五言絶句 其一]
夢醒延龜壽, 夢醒めて亀寿を延ばせば,
新年涌酒樽。 新年 酒樽に涌く。
屠蘇催却老, 屠蘇 老いを却(しりぞ)くるを催して,
呵筆鼓詩魂。 筆を呵し詩魂を鼓す。
[喜迎新年 五言絶句 其二]
夫婦祝三元, 夫婦 三元を祝ひ,
傾杯樂贅言。 杯を傾け贅言を楽しむ。
醺然借紅臉, 醺然として借る紅臉(赤い顔),
吟詠似啼猿。 吟詠すれば啼猿に似る。
[喜迎新年 五言律詩 其一]
曙光臨萬戸, 曙光 万戸に臨み,
正月叩千門。 正月 千門を叩く。
樗叟延年壽, 樗叟 年壽を延ばし,
荊妻勸玉尊。 荊妻 玉尊(酒)を勧む。
屠蘇染頭臉, 屠蘇 頭臉(かお)を染めれば,
靈感涌詩魂。 霊感 詩魂に涌く。
得意磨香墨, 意を得て香る墨を磨き,
將揮醉筆奔。 将に揮はんとす 酔筆の奔るを。
[喜迎新年 五言律詩 其二]
日照含春意, 日は照って春意を含み,
東窗家雀喧。 東窓に家雀(すずめ)喧なり。
延年臨百歳, 年を延ばして百歳に臨み,
傾酒祝三元。 酒を傾け三元を祝ふ。
眼底山妻笑, 眼底に山妻笑ひ,
口頭詩句翻。 口頭に詩句翻る。
醉佯仙走筆, 醉って仙の佯(ふり)をし筆を走らせば,
臉色似啼猿。 臉色(顔色)啼猿に似る。
[喜迎新年 七言絶句 其一]
樗翁夢醒謝天恩, 樗翁 夢醒めて天恩に謝し,
延壽一年傾酒温。 寿を延ばすこと一年 酒の温かきを傾く。
山妻含笑酌清聖, 山妻 笑みを含んで清聖(清酒)を酌し,
游目時鐘待外孫。 目を時鐘(時計)に游ばせて外孫を待つ。
[喜迎新年 七言絶句 其二]
老迷詩路作啼猿, 老いて詩路に迷ひ啼猿となり,
露宿風餐夢樂園。 露宿風餐 樂園を夢にみる。
雪裡迎春繆斯遠, 雪裡 春を迎へるも繆斯(ミューズ)の遠ければ,
將施方術得車轅。 將に方術を施し車轅を得んとす。
[喜迎新年 七言律詩 其一]
日照東窗天欲暄, 日は東窓を照らして天 暄ならんと欲し,
荊妻勸盞伴蘭言。 荊妻 盞を勧むるに蘭言を伴ふ。
笑傾祝酒白於雪, 笑って傾くる祝酒 雪よりも白(きよ)く,
暫借醉顔紅似猿。 暫く借るる酔顔 猿に似て紅(あか)し。
喜擅閑情帶靈感, 喜びほしいままにせる閑情 霊感を帯び,
恍如新歳涌詞源。 恍如として新歳 詞源に涌く。
硯池解凍堪裁賦, 硯池 解凍して賦を裁するに堪へ,
筆底墨花開樂園。 筆底の墨花 樂園に開く。
[喜迎新年 七言律詩 其二]
早起迎春延鶴壽, 早起して春を迎え鶴壽を延ばし,
笑傾椒酒謝天恩。 笑って椒酒を傾け天恩に感謝す。
年年身老難牛飲, 年年 身は老いて牛飲するは難く,
歳歳杯飛如駿奔。 歳歳 杯は飛んで駿の奔るごとし。
醉枕閑肱眠白晝, 醉って枕とせる閑肱 白晝に眠り,
勝遊香夢醒黄昏。 勝遊せる香夢 黄昏に醒む。
夕霞如扇張開處, 夕霞 扇のごとく張り開くところ,
眼底荊妻哂忘魂。 眼底に荊妻 魂を忘れしを哂ひをり。
[喜迎新春]
開暦乾無極 開暦 乾に極みなく
曈曈豊壌坤 曈曈たり 豊壌の坤
椒觴迎賀客 椒觴 賀客を迎ふ
萬戸遍天恩 万戸 天恩遍く
[丙申新春即事]
七四新正天気暄 七四の新正 天気暄(あたた)かく
春風満野及荒園 春風 野に満ちて 荒園に及ぶ
病腰妨意難郊歩 病腰 意を妨げて 郊歩すること難く
炙背南廊傾一樽 南廊に炙背して 一樽を傾く
[喜迎新春 一]
迎新家宴酌金樽 迎新 家宴 金樽を酌み、
相笑酔顔如野猿 相笑へば 酔顔 野猿の如し。
愚昧半生罹小病 愚昧なる半生 小病にかかり、
啓蒙聊従養生言 蒙を啓き 聊か従ふ 養生の言。
[喜迎新春 二]
新春多客入山門 新春 多客 山門に入り、
却識淨林塵世煩 却って識る 浄林に塵世の煩。
拂拭邪心臨佛像 邪心を払拭して 仏像に臨めば、
萬人祈念是皆尊 万人の 祈念は皆尊し。
[喜迎新年 一]
親児三代賀三元 親児 三代 三元を賀す
離散家郷遙里門 家郷 離散して 里門遙かなり
食餅滿盤春盎盎 食餅 盤に滿ち 春盎盎たり
勿辭椒酒喜盈樽 椒酒 辭さず 樽に盈つるを喜ぶ
[喜迎新年 二]
告曉晨鷄愕夢魂 晨鶏 曉を告げ 夢魂を愕かす
三餘三樂祝三元 三餘 三樂 三元を祝す
壽筵高唱南山曲 壽筵 高唱 南山の曲
何料衰殘聽暮猿 何ぞ料らんや 衰殘 暮猿を聽く
新年や喜悲交々の一里塚
[喜迎新年(懐歩信濃路佐久平)]
浅岳白衣和曠原 浅岳は白衣にして 和やかな曠原
酒醪駿馬土風源 酒醪 駿馬 土風の源
神宮楼閣止戈額 神宮の楼閣 止戈の額
歴史転旋清静魂 歴史の転旋 清静の魂
「止戈為武」: 『春秋左子伝 宣公一二』にある言葉。
新春早々中山道信濃路の佐久平を歩く。
冠雪の浅間山の稜線は緩やかに伸び拡がっている。
ここは水がよく銘酒の産地でありまた古来から名馬も多く生まれているという。
八幡宿の八幡神社楼門で「止戈為武」の額を見、途端に気持ちは引き締まる。
こののどかな郷も戦いで荒れた時期があるのだ。
様々な歴史の繰り返しを思い、これからも平和な世が続くようにと祈らずにはおれなかった。
[喜迎新年]
初陽遥拜曉光暄 初陽 遥かに拝せば 暁光暄かく
天地安寧風又溫 天地 安寧 風も又た温なり
瑞靄呈無一事 瑞靄 を呈して 一事無く
門松添竹祝三元 門松 竹を添へて 三元を祝ふ
焚香陋屋閑敲句 香を焚いて 陋屋 閑に句を敲き
迎客清談喜滿軒 客を迎へて 清談 喜び軒に満つ
何料功名空碌碌 何ぞ料らん 功名 空しく碌々
老來意却隙駒奔 老来 意却す 隙駒の奔るを
「三元」: 元旦。
「碌碌」: 平凡、凡庸なるさま。
「隙駒」: 「人生天地閨A若白駒之過隙」(荘子)
[喜迎新年]
丙申元旦恵風暄 丙申の元旦は恵風暄し
旧故手翰情自存 旧故の手翰情自ら存す
紫陌昇平慶雲現 紫陌は昇平慶雲現る
心身爽快酌芳樽 心身爽快芳樽を酌む
[喜新年]
今歳新春賀特敦 今歳の新春 賀 特(こと)に敦し、
齢垂不惑息初婚 齢(よわい)不惑に垂(なんなん)として 息初めて婚す。
為人信實親躬伐 為人(ひととなり)信実にして 親は躬ずから伐(ほこ)るも、
豈料頑童娶淑媛 豈料らんや 頑童淑媛を娶らんとは。
[喜迎新年]
新春乾坤風亦暄 新春の乾坤 風 亦た暄かなり
禅林院落早梅魂 禅林の院落 早梅の魂
迎師翕聚同門友 師を迎へ 翕聚 同門の友
試筆論交笑語溫 試筆 論交して 笑語 温かなり
あたりは新春の装いで 風もまたあたたかである
禅寺院の庭には 早梅が咲いている
師匠を迎えて 同門の友が集まり
書き初めをして お互いに出来栄えを論じ 笑い声も温かである
[喜迎新年]
蠟梅黄色彩庭園 蝋梅の黄色 庭園を彩り
瑞氣洋洋風日暄 瑞気 洋洋 風日 暄たり
無恙迎新多所感 恙なく新を迎え 所感多く
祈求寧歳倒芳樽 寧歳を祈求し 芳樽を倒す
[喜迎新年(新春誓)]
新年瑞氣拂塵煩 新年の瑞気 塵煩を払ひ
献酒神前淨六根 神前に酒を献じ 六根を浄む
作句吟詩無究道 句を作り 詩を吟ずるは無究の道
三多當學報師恩 三多 当に学びて 師恩に報ぜん
[新年作]
氷解雲晴天地暄 氷解け 雲晴れ 天地暄かし
三元瑞氣入柴門 三元 瑞気 柴門に入る
年年無事迎華甲 年年無事に華甲を迎へ
芳宴春盤酒滿樽 芳宴 春盤 酒樽に満つ
[新年作]
好風千里祝三元 好風千里 三元を祝す
瑞氣昇平萬古存 瑞気 昇平 万古に存す
柳眼梅花春意動 柳眼 梅花 春意動き
迎年賀客共開樽 迎年 賀客 共に樽を開く
[新年]
東風和氣祝三元 東風 和気 三元を祝す
朝日鶯聲花滿園 朝日 鶯声 花は園に満つ
芳酒佳肴迎賀客 芳酒 佳肴 賀客を迎ふ
平安萬事瑞光喧 平安 万事 瑞光喧か
[新年作]
瑞光暖氣祝三元 瑞光 暖気 三元を祝す
南院梅枝鳥語喧 南院 梅枝 鳥語喧し
萬事平安長久願 万事 平安 長久を願ふ
家人談笑倒芳樽 家人 談笑 芳樽を倒す
新しい年を迎え、平和な世であり、家族も元気でと願い、作りました。
[新春]
丙申旭日照東軒 丙申 旭日 東軒を照らす
招福雞鳴千古魂 招福 鶏鳴 千古の魂
將待兒郎華燭典 将に待たむ 児郎の華燭の典
慶風清麗滿田園 慶風 清麗 田園に満つ
[丙申新年芳宴]
瑞光燦燦照東軒 瑞光燦燦として 東軒を照らす
古樹梅香春意暄 古樹の梅香り 春意暄かなり
嘉讌辛盤嘗柏酒 嘉讌 辛盤 柏酒を嘗む
夫妻偕舞祝三元 夫妻で倶に舞ひ 三元を祝ふ
暖かな太陽が昇り、健康で迎えられた新年の喜びを初舞で表現しました。
[丙申新春]
社頭閑寂雪花翻 社頭 閑寂として 雪花翻る
除夜神燈徹夜存 除夜の神燈 夜を徹して存す
正旦鶏鳴迎旭日 正旦 鶏鳴 旭日を迎ふ
諸人祈願太平村 諸人 祈願す 太平の村
[迎新年]
終年未去夜霜繁 年を終へ 未は去り 夜霜繁し
改暦申來春意奔 暦を改め 申は来たり 春意奔る
處世無功身尚健 処世 功無けれど 身は尚健たり
七旬老大歳朝門 七旬の老大 歳朝の門
[新年]
枝梢處處鳥聲喧 枝梢 処処 鳥声喧し
暖日東風春起園 暖日 東風 春は園に起く
三始揮毫親筆硯 三始 揮毫 筆硯に親しむ
怡顔孫子集松門 怡顔 孫子 松門に集ふ
[新年作]
茶梅紅萼覆柴門 茶梅の紅萼 柴門を覆ふ
暖日瑞光和氣繁 暖日 瑞光 和気繁し
老去與君愉後學 老去 君と与に後学を愉しむ
子孫無恙祝三元 子孫恙無し 三元を祝す
[新年作]
和風淑氣祝三元 和風 淑気 三元を祝す
千里朝陽瑞雲奔 千里の朝陽 瑞雲奔る
賀客時來酒一盞 賀客 時に来たれば 酒一盞
遙遙春信早梅村 遙遙たる春信 早梅の村
[新年作]
丙申正旦好機源 丙申 正旦 好機の源
数朶香梅祝賀門 数朶の香梅 祝賀の門
如矢光陰離職處 矢の如きの光陰 離職の処
餘年與友樂吟魂 余年 友と与に 吟魂を楽しまん
[新年作]
數聲鶯語報春喧 数声の鶯語 春を報じて喧なり
庭草東風天地暄 庭草 東風 天地暄かなり
飾餅門松迎旭日 門松 飾餅 旭日を迎へ
新年淨几筆翰渾 新年 几を浄め 筆翰渾ふ
穏やかに新しい年を迎え、清明な気持ちで書き初めができたら、素晴らしい一年になる。
[新年即事]
新歳朝陽鳥語喧 新歳 朝陽 鳥語喧し
迎春雪後草堂門 春を迎へ 雪後 草堂の門
親朋芳宴歡無極 親朋の芳宴 歓極むる無く
立志清新墨筆繙 立志 清新 墨筆を繙く
[新年作]
春陽滿野暖風村 春陽野に満つ 暖風の村
老友尋來意気存 老友尋ね来たり 意気存す
嘉壽濁醪宜冷醉 嘉寿 濁醪 冷酔宜し
忘時寛樂百花繁 時を忘れ 寛楽 百花繁し
[新年書懷]
寒雲歳杪草堂前
破蕾庭梅馥氣傳
倚杖人生空入夢
親朋柏酒太平天
[喜迎新年]
新春祥瑞溢乾坤 新春の祥瑞 乾坤に溢れ
歳旦風光初計存 歳旦の風光に 初計存す
天候温和迎旭日 天候は温和にして 旭日を迎へ
皇居參賀祝慶旛 皇居の参賀に 祝慶の旛(はた)
1月2日、皇居一般参賀のTV中継を視ての感懐です。
[喜迎新年]
初孫一歳新年門 初孫一歳の新年の門
託夢希望祝一呑 希望の夢託して一呑祝ふ
一度人生行我道 一度の人生我が道を行くなり
未来挑戦大和魂 未来に挑戦、大和魂なり
昨年待望の初孫同じ未年誕生嬉しさでいっぱいです。
[迎新年參拜山西省懸空寺]
恆山古廟映朝暾 恒山の古廟 朝暾に映じ
遠望其形似宙存 遠望するに 其の形 宙に存す似し
九脊飛樓三教奉 九脊の飛樓 三教を奉りたる
﨟烟盎盎惠風暄 祥烟 盎盎として 恵風暄なり
懸空寺は山西省大同市郊外の渾源にあります。「儒・釈・道教合祀」の寺です。
詩題の「元韻」から一昔以上前に訪れたこの地、この寺を思い起しました。
当時、年末年始のこの時期、雲崗石窟、平遥なども観光する人無く、夫と只二人だけでしたので存分に楽しめました。
[喜迎新年]
歳日初陽入小園 歳日の初陽 小園に入り
慶風淑氣滿茅門 慶風 淑氣 茅門に満つ
裁詩先獻一杯酒 詩を裁し 先ず献ず 一杯酒
天地和平禱萬魂 天地 和平 萬魂に祷る
[立春即事]
難題殘子孫 難題 子孫に残す。
幾家流海嘯 幾家か海嘯に流るる、
何處鎮遊魂 何れの処にか遊魂を鎮めん。
掠燕懷舊交 掠燕 旧交を懐かしみ
開花想故園 開花 故園を想ふ。
春風如漂泊 春風 漂泊するが如く
未肯潛東門 未だ東門を潜ること肯ず。
[立春即事 其一]
天變地災安敢論 天變 地災 安んぞ敢へて論ぜんや
寒波來襲復何言 寒波 來襲 復何をか言はん
暖冬再問杞憂否 暖冬 再び問ふ 杞憂なるや否や
遮莫誰知春自温 遮莫 誰か知らん 春自ら温し
天恩や春来りなば水温し
[立春即事 其二]
兩三日夜六花翻 兩三 日夜 六花翻る
異變暖冬無一言 暖冬 異變 一言無し
驚殺眼前銀世界 驚殺す 眼前の 銀世界
乾坤萬事不須論 乾坤 萬事 論ずるを須ひず
一夜明け国土悉皆銀世界
[立春即事]
立春暖氣覆乾坤 立春の暖気は 乾坤を覆ひ
年初風和徹夜温 年初風は和らぎ 夜を徹して温し
天候異常還作悪 天候の異常は 還た悪さを作さんか
災難事故弄頻喧 災難と事故は 頻喧を弄す
今年のお正月松の内は、北陸・北國と雖も好天に恵まれ、これを気象庁の用語でも「新春暖気」と謂う由である。
ところが、寒の入りと大寒と共に異常寒波の襲来で、沖縄や奄美でも初雪騒ぎと相成り、これを異常気象と言わずに何と謂う。
この様な次第で、ニュース報道も連日喧騒の極みで、これは「世の中の頻喧」と謂うべき乎。
[立春即事]
世紀寒波六花昏 世紀の寒波 六花の昏
周囲靜寂閉柴門 周囲 静寂 柴門を閉ざす
庭隅梅蕾C香未 庭隅の梅蕾 清香いまだし
獨酌醇醪暖老魂 独り 醇醪を酌み 老魂を暖む
[立春即事]
東風解凍祝三元 東風 凍れるを解き 三元を祝ひ
佳節南窗日自暄 佳節の南窗 日 自ずと暄かなり
小院無人催午睡 小院 人無く 午睡を催し
不料夢裏入桃源 料(はか)らずも 夢裏 桃源に入る
[立春即事]
三竿日上太平村 三竿 日は上る太平の村
晏起豈言慵出門 晏起 豈に言はんや門を出ずるに慵しと
殘雪遠山風尚冷 残雪 遠山 風尚ほ冷やかなるも
早梅前路氣微温 早梅 前路 気微かに温む
偶聽鶯囀吟情動 偶たま鶯囀を聴きて吟情動き
過履泥流野趣存 過って泥流を履むも野趣存す
信歩探春白雲下 歩に信せ春を探ぬ白雲の下
可憐恰是別乾坤 憐れむべし恰も是れ別乾坤なるを
天下太平謳歌する 村にお日さま上ったら起きたところで出かけよう 面倒なんて言うものか
遠い山には残り雪 吹く風はまだ冷たいが 道の先には梅の花 空気も少し温かい
ウグイスのこえ耳にして 詩をつくる気になってくる うっかり泥んこはまってもそれも野はらの趣だ
足の向くまま春探し 歩いていこう雲の下 なんと素敵な別世界 まるで違って見えてくる
[立春即事 其一]
立春春早老 立春 春 早く老い
候鳥薄啼痕 候鳥 啼痕薄し
大雪六花少 大雪 六花少なく
小寒三界温 小寒 三界温かし
人間多齟齬 人間 齟齬多し
萬物爲頽煩 万物 為に頽煩
徒爾年頭感 徒爾 年頭の感
若何殘耳孫 若何ぞ 耳孫に残すのは
この冬、我が家の山茶花、半月ほど早かった。
例年蜜を求めて群がる目白、鵯も来ない。
ミカンの輪切りをぶら下げても干からびてしまった。
そして、寒い、と感じる日も僅か。
まさに地球温暖化。
だが、老人に出来ることは・・・。
[立春即事 其二]
寒波覆全土 寒波 全土を覆ふ
豪雪亦氷痕 豪雪 また 氷痕
生活搖基幹 生活 基幹を揺るがし
交通守底根 交通 底根を守らんとす
龍如萬象馭 竜 万象を馭するが如し
春制一時奔 春 一時 奔るを制ふ
安堵追儺客 安堵す 追儺の客
憙心連足跟 喜心 足跟を連ぬ
[立春即事]
新春拝宮陽明門 新春拝宮する陽明門
極意行儀知三猿 行儀の極意三猿に知る
狂氣世情非道理 狂気の世情道理非ず
平和人類遠行宛 人類平和の行く宛遠し
年明け日光東照宮陽明門に三猿を見て現代の世情に痛感。
[立春即事]
湖上煙波渡彩鴛 湖上 煙波 渡る彩鴛
天邊吹雪正銷魂 天辺 吹雪 正に銷魂
旱苗得雨田青稔 旱苗 雨を得て 田青く稔り
枯木逢春嫩緑繁 枯木 春に逢ふて 嫩緑繁る
歳月不居疎白髪 歳月 居らず 白髪を疎み
人生如颯恨黄昏 人生 颯の如く 黄昏を恨む
縦令吾滅捐刀戟 縦令(たとひ)吾滅し 刀戟を捐るとも
纔剩詩盟與筆痕 纔かに剰る 詩盟と筆痕
「刀戟」: 刀と戟。転じて生きる術。
「詩盟」: 詩を作る仲間。
[立春即事]
暖冬更凜冽 暖冬 更って凜冽
愛日牖纔暄 愛日の牖(まど) 纔かに暄かし
春運人唯老 春は運るも 人は唯だ老ゆるのみ
誰知七生魂 誰か知る 七生の魂
[立春即事(由維也納調〜ウイーンからの調べ)]
新歳欧州府樂園 新歳 欧州の楽府の園
指揮協奏自由魂 指揮と協奏 自由なる魂
史編七五周年紀 史編は七五周年の紀
調達C和響本根 調達清和す 本根に響かん
今年もニューイヤーコンサートがウイーン楽友教会から全世界へ衛生中継された。
指揮は今年で三回目となるマリス・ヤンソンスさんのもと、管弦楽団はのびやかに演奏を楽しんでいるかのようである。
歴史を経て七五年目という記念すべき新年の演奏、しかも昨年国連創設七〇年を迎えたということで、潘 基文(バンギムン)事務局長を招いて行われ、最初の曲は、「国連行進曲」が初めて演奏された。
美しく、平和で清らかな調べが、世の根本となるように世界中に響きわたっている。
[立春即事]
報春忽覺早梅村 春を報ず忽ち覚めむ早梅の村
欲訪東君詩趣存 訪れんと欲す東君詩趣存す
一脈山光孤月照 一脈の山光孤月を照らす
陶然信歩惠風暄 陶然として歩むに信せて恵風暄なりめ
[立春即事]
韶光僅識早梅村 韶光 僅かに識る早梅の村
瞥見開花又杜門 開花を瞥見して又 門を杜ざす
寄信C~可凍筆 信を寄せんと神を清(す)ませて凍筆を呵し
忘寒啜茗憶春暄 寒を忘れんと茗を啜りて春暄を憶ふ
茅檐遷朶鶯聲澁 茅檐 朶を遷りて 鴬声渋り
草屋圍爐笑語喧 草屋 炉を囲みて 笑語喧し
養病今年無事否 養病の今年 無事なるや否や
封書報節案人言 封書 節を報じて人を案ずるの言
春の景色を僅かに識様になった早咲きの梅が咲く村で、
華が開くのをちらっと見てまた門を閉じていました。
手紙を送ろうと心を落ち着けて毛先が凍った筆に息を吹きかけて暖め、
寒さを忘れようとお茶を啜って春の暖かさを思っていました。
茅葺きの軒先では、まだ春が浅いので、木の枝を移る鴬(うぐいす)の鳴き声が未だ上手に出ないようで(鴬(うぐいす)は練習 をして上手く鳴くことが出来るようになります。)、
草葺きの家では囲炉裏を囲んで笑い声がやかましいほどになっていました。
病気の療養をする今年は、何事も無く過ごすことが出来るでしょうか。
封をした手紙には季節を知らせて人のことを考える言葉を綴っていました。
[立春即事 一]
黃花荒徑未申繁、 黄花 荒径に未だ申び繁らず
絮種空庭已宿根。 絮種 空庭に已に宿り根ざせり。
冷氣萌芽零玉露、 冷気 萌芽に玉露を零し
陽光潤葉帶香魂。 陽光 潤葉に香魂を帯ぶ。
君巡宇宙攜新志、 君は宇宙に巡れ 新志を携へ
我待郊墟贈隻言。 我は郊墟に待たん 隻言を贈る。
日進如逢尋経緯、 日進 もし逢わば経緯を尋ね
春來若遇觀乾坤。 春来 もし遇わば乾坤を観ん。
「黄花」と「絮種」で蒲公英のつもりです。
「申」は伸の仮借。
「未申」、「宿根」、「乾坤」、ともに卜易の言葉。
「香魂」は花の精。
進むべき道が決まっていく季節、別れを予感させ、そして、また再び巡りあうことを淡く期待した詩歌です。
隻言一首
春立てる
しげらずと見し
この庭に
ひとつぶひかる
タンポポの露
[立春即事 二]
閑夜滿香遙昼喧、 閑夜 香満ち 昼喧遥けくし
東風奏樂喜春言。 東風 楽奏で 喜春の言。
少雲零雨來遊客、 雲少し 雨たれて 来たり客に遊び
燈下蕾梅幽幻門。 燈下 蕾梅は幽幻の門。
[立春即事 一]
水漲春池魚背奔 水漲り 春池 魚背奔り
東風任意繞林園 東風 意に任せて林園を繞る
忽聞笑語幼童影 忽ち聞く 笑語 幼童の影
老杖遊吟午日暄 老杖 遊吟すれば 午日暄なり
[立春即事 二]
春池水漲鴨鳧屯 春池水漲り 鴨鳧屯し
此出彼沈漁影翻 此に出で 彼に沈む 漁影翻る
風動柳枝如翠髪 風動き 柳枝は翠髪の如く
四望好節適吟魂 四望 好節 吟魂に適ふ