第42回 世界漢詩同好會總會(2015年11月15日)

 『世界漢詩同好會』の第42回総会は、11月15日に開かれます。
 詩題(今回は『晩秋書懷』)と押韻(今回は「上平声十二文」)を共通として、その日までに各国の幹事サイトに投稿された詩を交流し合うものです。

 日本では、この『漢詩を創ろう』のサイトが幹事となり、皆さんの交流詩を集約、掲載します。



         日本からの参加詩です。

   掲載は投稿順です。   番号かお名前をクリックして下さい。


    作品番号 作 者 題 名 詩 形
   01兼 山「晩秋書懷(一)」七言絶句
   02兼 山「晩秋書懷(二)」七言絶句
   03忍 夫「晩秋書懷」七言絶句
   04忍 夫「晩秋書懷(於明日香村)」七言絶句
   05劉 建「晩秋書懷」七言律詩
   06押 原「晩秋書懷」七言絶句
   07明 鳳「晩秋書懷(日田紀行:其一)」七言絶句
   08明 鳳「晩秋書懷(日田紀行:其二)」七言絶句
   09明 鳳「晩秋書懷(日田紀行:其三)」七言律詩
   10東 山「晩秋書懷 一」七言絶句
   11東 山「晩秋書懷 二」七言絶句
   12凌 雲「晩秋書懷(図書館帰路)」五言律詩
   13茜 峰「晩秋書懷(愛児童)」七言絶句
   14謝 斧「晩秋書懷」七言律詩
   15道 佳「晩秋書懷」七言絶句
   16杜 正「晩秋書懷」七言絶句
   17觀 水「晩秋書懷(一)」七言律詩
   18觀 水「晩秋書懷(二)」七言律詩
   19玄 齋「晩秋書懷」七言律詩
   20Y.T「晩秋書懷 其一」七言絶句
   21Y.T「晩秋書懷 其二」七言絶句
   22鮟 鱇「晩秋書懷 五言絶句 其一」五言絶句
   23鮟 鱇「晩秋書懷 五言絶句 其二」五言絶句
   24鮟 鱇「晩秋書懷 五言絶句 其三」五言絶句
   25鮟 鱇「晩秋書懷 五言絶句 其四」五言絶句
   26鮟 鱇「晩秋書懷 五言絶句 其五」五言絶句
   27鮟 鱇「晩秋書懷 五言絶句 其六」五言絶句
   28鮟 鱇「晩秋書懷 五言絶句 其七」五言絶句
   29鮟 鱇「晩秋書懷 五言律詩 其一」五言律詩
   30鮟 鱇「晩秋書懷 五言律詩 其二」五言律詩
   31鮟 鱇「晩秋書懷 六言絶句」六言絶句
   32鮟 鱇「晩秋書懷 七言絶句」七言絶句
   33鮟 鱇「晩秋書懷 七言律詩 其一」七言律詩
   34鮟 鱇「晩秋書懷 七言律詩 其二」七言律詩
   35鮟 鱇「晩秋書懷 七言律詩 其三」七言律詩
   36點 水「晩秋書懷」七言絶句
   37春 空「晩秋書懷」七言絶句
   38香@風「晩秋書懷」七言絶句
   39哲 山「晩秋書懷」七言絶句
   40鐵 峰「晩秋書懷」七言律詩
   41慧 眼「晩秋書懷(晩秋干柿)」七言絶句
   42(桐山堂刈谷)眞海「晩秋書懷(御嶽山噴火後一年)」七言絶句
   43(桐山堂刈谷)岳喨「晩秋書懷」七言絶句
   44(桐山堂刈谷)老遊「晩秋書懷」七言絶句
   45(桐山堂刈谷)老遊「晩秋書懷」七言絶句
   46(桐山堂刈谷)Y.M「晩秋書懷」七言絶句
   47(桐山堂刈谷)靜巒「晩秋書懷」七言絶句
   48(桐山堂刈谷)M.T「晩秋書懷」七言絶句
   49(桐山堂刈谷)風葉「晩秋書懷」七言絶句
   50(桐山堂刈谷)A.K「晩秋書懷」七言絶句
   51(桐山堂刈谷)T.I「晩秋書懷」七言絶句
   52(刈谷桐山堂)M.O「晩秋書懷」七言絶句
   53桐山人「晩秋書懷 一」七言絶句
   54桐山人「晩秋書懷 二」七言絶句
   55常 春「晩秋書懷」七言絶句
   56ニャース「晩秋書懷」七言絶句





































[01]
投稿者 兼山 

[晩秋書懷(一)]

街頭銀杏葉紛紛   街頭の銀杏 葉紛紛

滿地經霜秋色分   滿地霜を經て 秋色分る

八十有三歡不極   八十有三 歡極まらず

餘生幾許斷知聞   餘生 幾許 知聞を斷ず

          (上平聲「十二文」の押韻)


   昨日今日裸木となりし銀杏かな



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[02]
投稿者 兼山 

[晩秋書懷(二)]

震天動地未曾聞   震天動地 未だ曾て聞かず

異變暖冬何足云   暖冬異變 何ぞ云うに足らん

歳月盛年雙不待   歳月 盛年 雙つながら待たず

人間八秩幾悲欣   人間 八秩 幾悲欣

          (上平聲「十二文」の押韻)


   傘壽祝ふ悲喜交々の暮の秋




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[03]
投稿者 忍夫 

[晩秋書懷]

連山色褪圧浮雲   連山の色褪せて 浮雲を圧し

寂寞天高帰雁群   寂寞と天高くして 帰雁の群れ

昏近梵鐘漂浄韻   昏れ近くして 梵鐘 浄韻を漂わせば

池辺紅葉散紛紛   池辺の紅葉 散ること紛紛

          (上平聲「十二文」の押韻)





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[04]
投稿者 忍夫 

[晩秋書懷(於明日香村)]

秋田稲熟似黄雲   秋田の稲熟して 黄雲に似て

夕日鐘声赤卒群   夕日 鐘声 赤卒の群れ

古代王城栄此地   古代の王城 此の地に栄えるも

如今無跡憶昌殷   如今 昌殷を憶う跡なし

          (上平聲「十二文」の押韻)



 明日香村の秋の夕暮。多数の赤蜻蛉が群れ飛ぶ様子は非常に美しいです。
 大和をあきつしま、蜻蛉の島とは言い得て妙です。





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[05]
投稿者 劉建 

[晩秋書懷]

褐山白冠錦楓裙   褐山 白く冠り 錦楓の裙

黄又橙敷落葉芬   黄又 橙に敷く 落葉芬し

麋鹿食楢跫近去   麋鹿 楢を食し 跫近く去り

熊羆捕鱒掌逃羣   熊羆 鱒を捕へ 掌群を逃す

饑餐夜宿無愁自   餐に飢へ 夜宿る 自らを愁ふ無く

渇飮晨行再遇君   飲に渇き 晨行く 再び君に遇ふ

世外桃源雪蟲舞   世外 桃源 雪虫舞ひ

壺中K地拾柴焚   壺中 黒地 柴を拾ひ焚く

          (上平聲「十二文」の押韻)





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[06]
投稿者 押原 

[晩秋書懷]

梧桐葉散夕陽曛   梧桐 葉散り 夕陽曛し

蟲韻啾啾靜夜聞   虫韻 啾啾 静夜に聞く

落魄如今詩未就   落魄たり如今 詩未だ就らず

殘生幾許思紜紜   残生幾許 思い紜紜

          (上平聲「十二文」の押韻)



   晩秋は万象 終曲へのいざない。




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[07]
投稿者 明鳳 

[晩秋書懷(日田紀行:其一)]

遠訪日田秋色薫   遠く日田を訪ぬれば 秋色 薫り

敬天教導淡窗筋   敬天の教導は 淡窓の筋(ことわり)

咸宜園跡學寮處   咸宜園(かんぎえん)の跡は 学寮の処

月旦評論識此君   月旦の評論に 此の君を識(し)る

          (上平聲「十二文」の押韻)



 10月17〜18日の全日本漢詩・福岡大会参加の機会に、日田市に有る廣瀬淡窓所縁の「咸宜園」を訪ねた。

「敬天教導」: 淡窓独自の敬天思想で、門下生の育成に努めた。
「月旦評」: 月の初めに門下生の学力を客観的に評価する席次表の制度。





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[08]
投稿者 明鳳 

[晩秋書懷(日田紀行:其二)]

休道詩碑讀撰文   休道(いうを やめよ)の詩碑に 撰文を読めば

敬天思想遠猶聞   敬天の思想は 遠く猶聞(きこ)ゆ

咸宜門下壯心在   咸宜(かんぎ)の門下には 壮心在り

卒塾綺羅彰盛勲   卒塾の綺羅は 盛勲を彰(あら)はす

          (上平聲「十二文」の押韻)



「休道詩碑」: 桂林荘雑詠示諸生の一節(休道他郷多苦心)の詩碑。
「綺羅」: 門下生には綺羅星の如く有能な人材(大村益次郎・高野長英・清浦奎吾=第23代総理大臣、等々)が輩出した。 *




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[09]
投稿者 明鳳 

[晩秋書懷(日田紀行:其三)]

遠訪日田風韻薫   遠く日田を訪ぬれば 風韻薫り

咸宜育導淡窗筋   咸宜(かんぎ)の育導は 淡窓の筋(ことわり)

明雲白處遙秋景   明雲白き処 秋景を遙かにし

陰影蒼邊送雁群   陰影蒼き辺り 雁群を送る

休道詩辭傳萬世   休道(いうを やめよ)の詩辞は 万世に伝はり

敬天思想讀遺文   敬天の思想に 遺文を読めば

綺羅門下壯心在   綺羅の門下には 壮心在り

卒塾英才彰盛勲   卒塾の英才は盛勲を彰はす

          (上平聲「十二文」の押韻)






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[10]
投稿者 東山 

[晩秋書懷 一]

鷄鳴霜降明暗分   鷄鳴霜降りて 明暗分かれ

殘月寒光照片雲   残月の寒光 片雲を照らす

曾喩嚴慈吾懶惰   曾て喩す厳慈 吾の懶惰を

小齊愚叟僅親文   小斎の愚叟 僅かに文に親しむ

          (上平聲「十二文」の押韻)






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[11]
投稿者 東山 

[晩秋書懷 二]

風冷村江靜水紛   風冷ややかに村江 静水紛れ

遼遼獨佇晩鐘聞   遼遼独り佇めば 晩鐘聞こゆ

母憂五歳數慈壽   母憂五歳 慈の寿を数へ

往昔幽懷望遠雲   往昔幽懐 遠雲を望む

          (上平聲「十二文」の押韻)






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[12]
投稿者 凌雲 

[晩秋書懷(図書館帰路)]

歩道驚秋晩   歩道 秋の晩るに驚く、

斜陽雁影群   斜陽 雁影の群。

西風優撫髪   西風 優しく髪を撫で、

少女獨懷文   少女 独り文を懐く。

片片翻紅葉   片片と翻る紅葉、

遙遙杳紫雲   遥遥と杳かな紫雲。

踏枯還落莫   枯れるを踏み落莫を還る、

領子欲寄君   領子 君に寄せんと欲す。

          (上平聲「十二文」の押韻)



「領子」: マフラーの訳語




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[13]
投稿者 茜峰 

[晩秋書懷(愛児童)]

虐待貧窮報道紛   虐待 貧窮 報道紛れ

児童煩悶耐埃氛   児童は 煩悶し 埃氛に耐へる

欲孚温潤愛縁念   孚まんと欲す 温潤 愛縁の念ひ

願復近親年始欣   願はくは 近親に復りて 年始の欣びを

          (上平聲「十二文」の押韻)


 児童の虐待貧困について たびたび報道される。私は児童福祉施設でささやかであるがボランティア活動をしている。
 児童は一見、一般家庭の子供と変わりなく見えるが、小さい体に世の中の矛盾を背負って生きているのがわかる。
 正月も近親者のところへ帰れない子が多い。
 また、そんな子が年々増えているようだ。
 せめて正月は肉親と過ごし 温かさ潤いを感じ 愛情と信頼の心が育まれるようにと思う。

 子供は未来の宝である。






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[14]
投稿者 謝斧 

[晩秋書懷]

晨朝出戸肅晴雰   晨朝戸を出れば 晴雰肅たり

未授冬衣寒望分   未だ冬衣を授けず 寒望分つ

携背行厨歩幽徑   背に行厨を携へて 幽径を歩し

支頤吟杖送歸雲   頤を吟杖に支へられて 帰雲を送らん

橘酸烏鵲過枝去   橘酸にして 烏鵲枝を過ぎて去り

柹熟猴猨偸果欣   柹熟して猴猨 果を偸んで欣ふ

楓葉經霜晩秋美   楓葉霜を経て 晩秋美なり

蕭蕭風物寫詩文   蕭蕭たる風物 詩文を写さん

          (上平聲「十二文」の押韻)


「寒望分」: 寒き望みが分明になる
「授冬衣」: 準備する。寒に備えて予め冬衣を準備





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[15]
投稿者 道佳 

[晩秋書懷]

晨旦吾庭何紫群   晨旦 吾が庭 何(なん)ぞや紫群がる

薔薇共發碧空薫   薔薇と共に発き 碧空へ薫らん

深秋早早生寒露   深秋 早早 生ず寒露

装束更衣備雪雲   更衣を装束し 雪雲に備へん

          (上平聲「十二文」の押韻)






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[16]
投稿者 杜正 

[晩秋書懷]

清閑野屋暮鐘聞   清閑たる野屋 暮鐘を聞く

落葉敲窗菊放芬   落葉 窓を敲き 菊 芬を放つ

迎友圍爐酌新醅   友を迎へ 炉を囲み 新醅を酌み

今宵懷昔恋秋氛   今宵 昔を懐い 秋氛に恋す

          (上平聲「十二文」の押韻)



  静かでのんびりした拙宅で 暮鐘を聞く。
  落葉が窓を敲き、菊の香がする。
  友人を迎え 炉を囲んで 新酒を酌みながら
  今宵は、昔を懐いだしながら 秋氛に恋するのだ。





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[17]
投稿者 觀水 

[晩秋書懷(一)]

西風聚集短長雲   西風 聚集す 短長の雲

晩氣清涼月色曛   晩気 清涼なるも 月色曛ず

郊里定居生碌碌   郊里 居を定めて 生は碌々

今宵執筆思紛紛   今宵 筆を執りて 思ひ紛々

綺箋忽見縱横字   綺箋 忽ち見る 縦横の字

淺學難成典雅文   浅学 成り難し 典雅の文

散歩霜天求感興   霜天に散歩して 感興を求めん

送秋蟲韻尚應聞   秋を送るの虫韻 尚応に聞ゆべし

          (上平聲「十二文」の押韻)


   風に吹かれて様ざまな 大きさの雲あつまって
   空気はさわやかなんだけど 月は少々かげってる
   郊外に住むことにして さほどのことのない人生
   今夜は筆を手にとって 思うところは多々あるさ
   たちまちのうち紙のうえ いっぱいの字で埋まるけど
   立派な文章書くことは 学が浅くて難しい
   霜降るなかを散歩して ちょっと気分を変えてみよう
   秋の名残の虫の声 まだ聴くことができるだろう





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[18]
投稿者 觀水 

[晩秋書懷(二)]

劫奪糖菓既十分   糖菓を劫奪すること既に十分

幼童辭去語慇懃   幼童 辞去するに語は慇懃

南瓜燈盡市騷散   南瓜灯尽きて市騒散じ

萬聖夜深秋思熏   万聖夜深くして秋思熏ず

禿筆求詩遠佳興   禿筆 詩を求めて佳興遠く

空杯映月好微醺   空杯 月に映じて微醺好し

良妻未寐忙家事   良妻 未だ寐ず 家事忙し

爲煮濃茶呈上君   為に濃茶を煮て君に呈上せん

          (上平聲「十二文」の押韻)


   お菓子は大人をおどかして ぞんぶんに手に入れたので
   ちびっ子どものさよならの 挨拶とても丁寧だ
   ジャック・オ・ランタンの灯も消えて まちの騒ぎもおさまった
   ハロウィン祭の夜更けて くすぶる秋の物思い
   詩を作ろうと無理しても 佳い具合には程遠く
   空の杯月明り ほろ酔い加減はこれで好い
   わが良き妻は忙しい 寝ないで家事を片付ける
   濃い目のお茶を沸かしたら 君のところへ持っていこう






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[19]
投稿者 玄齋 

[晩秋書懷]

江上晩秋飛雁羣   江上の晩秋 飛雁の群れ

寥寥遠叫過斜曛   寥寥 遠く叫びて斜曛を過ぐ

把箋望景題詩案   箋を取り景を望みて題詩 案じ

煎藥重衾養病勤   薬を煎じ衾を重ねて養病 勤む

欲畫遙山紅葉錦   畫かんと欲す遥山 紅葉の錦を

偏吟古寺国ロ紋   偏に吟ず古寺 緑苔の紋を

浮生常憶無悲歎   浮生 常に憶ふ悲歎する無れと

已足衰軀作拙文   已に衰躯 拙文を作るに足る

          (上平聲「十二文」の押韻)


   秋の末の川の上では空飛ぶ雁の群れが見えて、
   寂しげに遠く叫んで夕日を過ぎていきました。
   詩文を書くための小さな紙片を取って景色を見上げてお題の詩を考え、
   薬を煎じ、寝間着を重ね着して病気の療養に力を尽くしていました。
   描こうと思うのは遥か遠くの山にある紅葉の錦の織物のような景色であり、
   ひたすらに吟ずるのは古いお寺にある緑の苔の織物の模様のような景色なのです。
   儚い人生で常に思うのは悲しみ嘆いてはいけないということです。
   衰えて弱った身体も私の拙い文を作るのに既に十分なのです。






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[20]
投稿者 Y.T 

[晩秋書懷 其一]

晩秋幽夜思紛紛   晩秋 幽夜 思ひ紛紛

孤雁南飛入斷雲   孤雁 南へ飛び 断雲に入る

殘蛩泣露籬邊噎   残蛩 露に泣いて 籬邊に噎び

喞喞蟲聲誰喜聞   喞喞たる蟲声 誰か聞くを喜ばん

          (上平聲「十二文」の押韻)





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[21]
投稿者 Y.T 

[晩秋書懷 其二]

遠州城外雨紛紛   遠州城外 雨 紛紛

獨在異ク遙憶君   独り異郷に在りて 遙に君を憶ふ

客舎夜更風轉急   客舎 夜更けて 風 転た急なり

簾幃颯颯不堪聞   簾幃に颯颯として 聞くに堪へず

          (上平聲「十二文」の押韻)





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[22]
投稿者 鮟鱇 

[晩秋書懷 五言絶句 其一]

遊目山紅葉,     目を遊ばす 山に紅葉,

題詩天碧雲。     詩を題す 天に碧雲。

村童指聲病,     村童 声病を指し,

鼻哂可三分。     鼻で哂(わら)ふ 可なるは三分(十分の三)なりと。

          (上平声「十二文」の押韻)





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[23]
投稿者 鮟鱇 

[晩秋書懷 五言絶句 其二]

楓林逢羽君,     楓林に逢ひたる羽君(仙人),

笑賣筆徴文。     笑みて売るる 筆の文を徴(あらは)すを。

紅葉爲金幣,     紅葉 金幣と為れば,

醉翁茅店欣。     醉翁 茅店に欣ぶ。

          (上平声「十二文」の押韻)





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[24]
投稿者 鮟鱇 

[晩秋書懷 五言絶句 其三]

商氣催紅葉,     商気 紅葉を催(うなが)し,

秋天翻碧裙。     秋天 碧裙(青いスカート)を翻す。

旗亭花貌勸,     旗亭に花貌は勧む,

白首買酣醺。     白首 酣醺を買へ と。

          (上平声「十二文」の押韻)





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[25]
投稿者 鮟鱇 

[晩秋書懷 五言絶句 其四]

贅句如紅葉,     商気 紅葉を催(うなが)し,

飄然舞散文。     秋天 碧裙(青いスカート)を翻す。

題詩從韻律,     旗亭に花貌は勧む,

醉筆掃塵紛。     酔筆 塵紛を掃く。

          (上平声「十二文」の押韻)





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[26]
投稿者 鮟鱇 

[晩秋書懷 五言絶句 其五]

山湖映斷雲,     山湖 断雲を映じ,

夕照碎波紋。     夕照 波紋を砕く。

紅葉飄舞處,     紅葉 飄舞するところ,

浮舟隔世紛。     舟を浮かべ世紛を隔つ。

          (上平声「十二文」の押韻)





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[27]
投稿者 鮟鱇 

[晩秋書懷 五言絶句 其六]

裸虫因呪文,     裸虫(人間)呪文により,

秋夜化家蚊。     秋の夜に家蚊(イエカ)に化す。

吸血顔紅潤,     血を吸へば顔は紅に潤ひ,

醉歌飛艷聞。     醉歌して艷聞へ飛ぶ。

          (上平声「十二文」の押韻)





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[28]
投稿者 鮟鱇 

[晩秋書懷 五言絶句 其七]

生涯如庫蚊,     生涯 庫蚊(イエカ)のごとく,

延壽過秋分。     寿を延ばして秋分を過ぐ。

輕舞金風裡,     輕く舞へる金風のなか,

登仙入碧雲。     仙に登りて碧雲へ入る。

          (上平声「十二文」の押韻)





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[29]
投稿者 鮟鱇 

[晩秋書懷 五言律詩 其一]

霜髪含愁恨,     霜髪 愁恨を含み,

生涯如庫蚊。     生涯 庫蚊(イエカ)のごとし。

隨風飄慾界,     風に隨ひ慾界に飄ひ,

延壽過秋分。     寿を延ばして秋分を過ぐ。

緑酒爲甘露,     緑酒は甘露となり,

紅顔帶醉醺。     紅顔は酔醺を帯ぶ。

晩寒何不飲,     晩寒なんぞ飲みて,

取暖吐香雰。     暖を取り香雰を吐かざらんや。

          (上平声「十二文」の押韻)





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[30]
投稿者 鮟鱇 

[晩秋書懷 五言律詩 其二]

白頭遊景勝,     白頭 景勝に遊べば,

紅葉促詩文。     紅葉 詩文を促す。

才藻生金氣,     才藻 金気を生じ,

仙毫潤紫雲。     仙毫 紫雲(紫石硯)に潤ふ。

遊魂望秋水,     魂を遊ばせて秋水を望み,

却老鼓骸筋。     老いを却(しりぞ)けて骸筋を鼓す。

鬼斧裁章句,     鬼斧 章句を裁ち,

霞杯適賞勲。     霞杯 賞勲に適す。

          (上平声「十二文」の押韻)





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[31]
投稿者 鮟鱇 

[晩秋書懷 六言絶句]

金氣滿山紅葉,    金気 山を満たす紅葉,

蒼穹映水青裙。    蒼穹 水に映る青裙(青いスカート)。

湖亭花貌斟酒,    湖亭に花貌 酒を斟めば,

夕暮白頭買醺。    夕暮に白頭 醺を買ふ。

          (上平声「十二文」の押韻)





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[32]
投稿者 鮟鱇 

[晩秋書懷 七言絶句]

葡萄美酒染將軍,   葡萄の美酒の染めたる將軍,

醉夢遊魂作庫蚊。   醉夢に魂を遊ばせ庫蚊(イエカ)となる。

遇到詩仙望秋水,   詩仙の秋水を望みをるに遇ふに到り,

偸偸吸血醉醺醺。   偸偸として血を吸ひ醉って醺醺たり。

          (上平声「十二文」の押韻)





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[33]
投稿者 鮟鱇 

[晩秋書懷 七言律詩 其一]

秋老山湖如鏡耀,   秋老いて山湖は鏡の耀くごとく,

斜暉舖錦泛清濆。   斜暉 錦を舖いて清濆に泛ぶ。

金風渡水拂紅葉,   金風 水を渡って紅葉を払ひ,

白首傾杯仰碧雲。   白首 杯を傾けて碧雲を仰ぐ。

回憶一年延永壽,   回憶す 一年 永壽を延ばし,

空思三界帶微醺。   空しく思ふ 三界に微醺を帯びをるを。

七情難斷多塵慮,   七情 断ちがたく塵慮多く,

醉借朱顔未樂欣。   醉って朱顔を借りるもいまだ樂しみ欣べず。

          (上平声「十二文」の押韻)





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[34]
投稿者 鮟鱇 

[晩秋書懷 七言律詩 其二]

詩叟書懷却散文,   詩叟の書懷 散文を却(しりぞ)け,

晩秋韻事帶微醺。   晩秋の韻事 微醺を帯ぶ。

月光如水洗茅舎,   月光 水の如く茅舎を洗ひ,

蛩雨傷情濕氣氛。   蛩雨 情を傷めて氣氛を湿らす。

往日忘餐在塵務,   往日 餐(く)ふを忘れて塵務にあり,

良宵癈寢耐辛勤。   良宵 寢るを廃して辛勤に耐ふ。

如今自適揮刀筆,   如今 自適して刀筆を揮ひ,

求句低吟聲似蚊。   句を求めて低吟するも声は蚊に似る。

          (上平声「十二文」の押韻)





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[35]
投稿者 鮟鱇 

[晩秋書懷 七言律詩 其三]

金樽緑酒涌黄昏,   金樽の緑酒 黄昏に涌き,

紅葉青山伴紫雲。   紅葉 青山の紫雲を伴ふ。

醉賞秋光映湖水,   醉って賞す 秋光の湖水に映ずるを,

尋求風韻作詩文。   尋ね求む 風韻の詩文となるを。

禿毫如鶴歩箋紙,   禿毫 鶴の箋紙を歩むごとく,

吟叟佯仙却世雰。   吟叟 仙の世雰を却(しりぞ)くる佯(ふり)をす。

曳杖歸途迷筆路,   杖を曳いて歸途に筆路に迷へば,

藝林深處見鷄群。   芸林の深きところ鷄群見ゆ。

          (上平声「十二文」の押韻)





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[36]
投稿者 點水 

[晩秋書懷]

無情今夕半天雲   無情な今夕 半天の雲

如咽蟲聲窗下聞   咽ぶが如き蟲の声 窓下に聞こゆ

一片雁書傳快事   一片の雁書 快事を伝ふ

吟懷脈脈氣欣欣   吟懐 脈脈 氣 欣欣

          (上平聲「十二文」の押韻)





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[37]
投稿者 春空 

[晩秋書懷]

窗外風吹落葉紛   窓外 風吹き 落葉紛たり

殘蛩切切夜將分   残蛩 切切 夜将に分かる

白頭倚几尋先哲   白頭 几に倚りて 先哲を尋ぬれば

疑義倍生心愈勤   疑義倍す生じ 心愈よ勤む

          (上平聲「十二文」の押韻)





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[38]
投稿者 黒浴@

[晩秋書懷]

秋季登丘稲如雲   秋季 丘に登れば 稲 雲の如し

今年豊穣太平欣   今年も 豊穣なり 太平 よろこぶ

乙未余僅光陰箭   乙未も 余り僅か 光陰 箭

古刹鐘声散雀群   古刹の鐘声 雀群を散らす

          (上平聲「十二文」の押韻)





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[39]
投稿者 哲山 

[晩秋書懷]

苗田風偃櫻花群   苗田の風偃 櫻花の群

暑雨蛙鳴草棘殷   暑雨 蛙鳴いて 草棘さかんなり

夏去已秋躇落葉   夏去って已に秋 落葉を躇む

時逝何遽故吾云   時は逝くも 何ぞ故吾かくのごとしや

          (上平聲「十二文」の押韻)





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[40]
投稿者 鐵峰 

[晩秋書懷]

秋気應惆悵   秋気 応に惆悵

風音不忍聞   風音 聞くに忍びず

庭梧時搖落   庭梧 時に搖落し

籬菊尚流芬   籬菊 尚 流芬

滿地含清露   満地 清露を含み

半天映夕曛   半天 夕曛に映ず

詩人先易感   詩人 先ず感じ易く

愁思故紛紛   愁思 紛々たり

          (上平聲「十二文」の押韻)





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[41]
投稿者 慧眼 

[晩秋書懷(晩秋干柿)]

晩秋干柿曝陽熏   晩秋干し柿 陽に曝し熏(や)く

吹粉丹朱色映曛   粉を吹き 丹朱 色 曛(たそがれ)に映ゆ

正月賀装嘉瑞餅   正月は賀装す 嘉瑞の餅

老生賞味意欣欣   老生 賞味して 意は欣欣

          (上平聲「十二文」の押韻)





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[42]
投稿者 (桐山堂刈谷)眞海 

[晩秋書懷(御嶽山噴火後一年)]

去年今日滿炎氛   去年の今日 炎氛満ち

六十三名鎖墨雲   六十三名 墨雲に鎖さる

御嶽雪溪無限恨   御嶽の雪溪 無限の恨み

行人安否未能聞   行人の安否 未だ聞く能(あた)はず

          (上平聲「十二文」の押韻)





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[43]
投稿者 (桐山堂刈谷)岳喨 

[晩秋書懷]

歩簷倚杖看行雲   歩簷 杖に倚りて 行雲を看る

促織清吟獨靜聞   促織の清吟 独り静かに聞く

秋興尤宜氣蕭瑟   秋興 尤も宜し 気は蕭瑟

紅楓黄葉落紛紛   紅楓 黄葉 落つること紛紛たり

          (上平聲「十二文」の押韻)





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[44]
投稿者 (桐山堂刈谷)老遊 

[晩秋書懷 一]

紅於片片亂紛紛   紅於 片片 乱れて紛紛

一葉零池點水紋   一葉池に零ち 水紋を点ず

鳥語數聲何所見   鳥語 数声 何れの所かを見れば

秋天行雁過斜曛   秋天 行雁 斜曛を過る

          (上平聲「十二文」の押韻)





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[45]
投稿者 (桐山堂刈谷)老遊 

[晩秋書懷 二]

林徑丹楓落葉紛   林径の丹楓 落葉紛として

村園緩歩亂蛩聞   林園 緩歩すれば 乱蛩聞く

秧鶏已去到霜信   秧鶏已に去って 霜信に到るも

未看旻天行雁群   未だ旻天行雁の群を看ず

          (上平聲「十二文」の押韻)





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[46]
投稿者 (桐山堂刈谷)Y.M 

[晩秋書懷]

丹楓細徑帯斜曛   丹楓 細径 斜曛を帯ぶ

丘壑野煙迷斷雲   丘壑 野煙 断雲に迷ふ

孤雁一声秋欲逝   孤雁一声 秋逝かんと欲す

晩鐘寂寂獨思君   晩鐘寂寂として 獨り君を思ふ

          (上平聲「十二文」の押韻)





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[47]
投稿者 (桐山堂刈谷)靜巒 

[晩秋書懷]

嵯峨野徑草欣欣   嵯峨の野径 草欣欣

柿熟數枝秋色分   柿熟し 数枝 秋色分る

獨坐茅蘆詩興動   独り茅蘆に坐せば 幽興動き

去來句塔帯斜曛   去来の句塔 斜曛を帯ぶ

          (上平聲「十二文」の押韻)


「去來」: 日本江戸期之俳句人。




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[48]
投稿者 (桐山堂刈谷)M.T 

[晩秋書懷]

三河黄葉滿山紛   三河の黄葉 満山は紛たり

竹砲秋郊衆寄欣   竹砲 秋郊 衆寄りて欣なり

神樂祇園終奉納   神楽 祇園 奉納を終へ

哀愁肅殺雨聲聞   哀愁 粛殺 雨声を聞く

          (上平聲「十二文」の押韻)





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[49]
投稿者 (桐山堂刈谷)風葉 

[秋日郊行]

西風爽冷逐輕雲   西風 爽冷 浮雲を逐ひ

滿地秋花馥郁薫   滿地の秋花 馥郁として薫る

歩歩愉吟歌一曲   歩歩 吟を愉しみ 歌一曲

朋談茶話暮鐘聞   朋談 茶話 暮鐘を聞く

          (上平聲「十二文」の押韻)





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[50]
投稿者 (桐山堂刈谷)A.K 

[晩秋書懷]

山野秋深看雁群   山野 秋深くして 雁群を看る

高風越嶺送孤雲   高風 嶺を越え 孤雲を送る

陽光叢上映銀色   陽光 叢上 銀色に映え

一日閑翁紅葉焚   一日 閑翁 紅葉を焚く

          (上平聲「十二文」の押韻)





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[51]
投稿者 (桐山堂刈谷)T.I 

[晩秋書懷]

西天歸鳥兩三群   西天の帰鳥 両三の群れ

蟋蟀一聲窗下聞   蟋蟀 一声 窓下に聞く

滿目菊花香馥郁   満目の菊花 香は馥郁

愛孫異國夜思君   愛孫 異国なりて 夜君を思ふ

          (上平聲「十二文」の押韻)



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[52]
投稿者 (刈谷桐山堂)M.O 

[晩秋書懷]

旻天澄爽看孤雲   旻天 澄爽として 孤雲を看る

茅屋閑庭黄菊熏   茅屋 閑庭 黄菊薫る

錦繡連山勝花景   錦繍の連山 花にも勝る景

雁行連影過斜曛   雁行 影を連ねて斜曛を過(よぎ)る

          (上平聲「十二文」の押韻)





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[53]
投稿者 桐山人 

[晩秋書懷 一]

風冷西天暮色雲   風冷やかにして西天 暮色の雲

枯田鳥雀舞爲羣   枯田 鳥雀 舞ひて群を為す

逍遙野徑秋將老   逍遙する野徑 秋将に老ゆるも

殘菊堪霜清冽薫   残菊は霜に堪へて 清冽と薫る

          (上平聲「十二文」の押韻)





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[54]
投稿者 桐山人 

[晩秋書懷 二]

雁影高天望一群   雁影 高天 一群を望む

山村涼氣遍氛氳   山村の涼気 遍く氛氳

秋霜粛殺凋林樹   秋霜は粛殺し林樹を凋ませ

墜葉黄紅映夕曛   墜葉 黄紅 夕曛に映ず

          (上平聲「十二文」の押韻)





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[55]
投稿者 常春 

[晩秋書懷]

一葉舞風還一葉   一葉 風に舞ひ また一葉

晩秋庭樹夕陽曛   晩秋の庭樹 夕陽に曛し

重來訃報同齡友   重ね来る訃報 同齢の友

衰老奈何空弔文   衰老 奈何するともなし 空しく弔文

          (上平聲「十二文」の押韻)





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[56]
投稿者 ニャース 

[晩秋書懷]

晩秋客地又逢君   

新酒開樽勸萬斤   

想起當年多笑話   

尚談醉裏混中文   

          (上平聲「十二文」の押韻)



 大学の友人が、紹興で行われた魯迅学会に出席した帰り、上海に立ち寄ったので久しぶりに飲みました。

 中国文学卒業で、彼は学者になりましたが、中国に来るたびに痛飲します。
酔えば中国語も冴える?二人です。


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