第39回 世界漢詩同好會總會(二〇一四年十月二十六日)

 『世界漢詩同好會』の第39回総会は、10月26日に開かれます。
 詩題(今回は『晩秋山野』)と押韻(今回は「上平声九佳」)を共通として、その日までに各国の幹事サイトに投稿された詩を交流し合うものです。

 日本では、この『漢詩を創ろう』のサイトが幹事となり、皆さんの交流詩を集約、掲載します。



         日本からの参加詩です。

   掲載は投稿順です。   番号かお名前をクリックして下さい。


    作品番号 作 者 題 名 詩 形
   01芳原「晩秋山野」七言絶句
   02筋明「晩秋山野」七言絶句
   03薫染「晩秋山野」七言絶句
   04玄齋「晩秋山野」五言律詩
   05兼山「晩秋山野(一)」七言絶句
   06兼山「晩秋山野(二)」七言絶句
   07謝斧「晩秋山野(一)」七言絶句
   08謝斧「晩秋山野(二)」七言絶句
   09謝斧「晩秋山野(三)」七言律詩
   10「晩秋山野」七言絶句
   11忍夫「晩秋山野(於高取城跡)」七言絶句
   12忍夫「晩秋山野(於平城宮跡)」七言絶句
   13道佳「晩秋山野」七言絶句
   14押原「晩秋山野」七言絶句
   15鮟鱇「晩秋山野 五言絶句一」七言絶句
   16鮟鱇「晩秋山野 五言絶句二」七言絶句
   17鮟鱇「晩秋山野 五言絶句三」七言絶句
   18鮟鱇「晩秋山野 七言絶句一」七言絶句
   19鮟鱇「晩秋山野 七言絶句二」七言絶句
   20鮟鱇「晩秋山野 五言律詩」七言絶句
   21鮟鱇「晩秋山野 七言律詩」七言絶句
   22哲山「晩秋山野」七言絶句
   23藤城英山 「晩秋山野」七言絶句
   24茜峰「晩秋山野」七言絶句
   25ニャース「晩秋山野」七言絶句
   26劉建「晩秋山野」七言律詩
   27明鳳「晩秋山野(皆既月触偶感)」七言絶句
   28明鳳「晩秋山野(寒露即事)」七言律詩
   29明鳳「晩秋山野(里山思秋即事)」七言律詩
   30和光健心「晩秋山野」七言絶句
   31Y.T「晩秋山野(一)」七言絶句
   32Y.T「晩秋山野(二)」五言律詩
   33Y.T「晩秋山野(三)」五言絶句
   34東山「晩秋山野(一)」七言絶句
   35東山「晩秋山野(二)」七言絶句
   36常春「晩秋山野 其一」七言絶句
   37常春「晩秋山野 其二」五言絶句
   38常春「晩秋山野 其三」五言律詩
   39點水「晩秋山野」七言絶句
   40杜正「晩秋山野」七言絶句
   41觀水「晩秋山野(一)」七言律詩
   42觀水「晩秋山野(二)」七言絶句
   43禿羊「晩秋山行」七言絶句
   44老遊(桐山堂刈谷)「晩秋山野(一)」七言絶句
   45老遊(桐山堂刈谷)「晩秋山野(二)」七言絶句
   46一兔(桐山堂刈谷)「晩秋山野」七言絶句
   47T.K(桐山堂刈谷)「晩秋山野」七言絶句
   48眞海(桐山堂刈谷)「晩秋山野」七言絶句
   49眞海(桐山堂刈谷)「晩秋」七言絶句
   50M.S(桐山堂刈谷)「晩秋山野」七言絶句
   51松閣(桐山堂刈谷)「晩秋山野」七言絶句
   52勝江(桐山堂刈谷)「秋日郊行」七言絶句
   53N.I(桐山堂刈谷)「晩秋山野」七言絶句
   54桐山人「晩秋山野(一)」七言絶句
   55桐山人「晩秋山野(二)」五言律詩





































[01]
投稿者 芳原 

[晩秋山野]

晩秋山野露華皆   晩秋山野 露華皆(あまね)き

弄月嘯風仙境佳   弄月嘯風 仙境に佳(よろ)し

殘燭影長方丈室   残燭 影は長し方丈の室

三更獨臥客愁懐   三更獨り臥して客愁懐ふ

          (上平声「九佳」の押韻)



























[02]
投稿者 筋明 

[晩秋山野]

風雷一過暑盛排   風雷一過暑盛を排す

節気分花彼岸佳   節気を分かつ花彼岸佳し

里野黄紅涼爽快   里野の黄紅涼爽快

流雲眺想故郷懐   流れ雲を眺めて想う故郷の懐

          (上平声「九佳」の押韻)



























[03]
投稿者 薫染 

[晩秋山野]

秋霜且降近廛街   秋霜まさに降らんとす 近き廛街

野外青天実麗佳   野外の青天 実(まこと)に麗佳

混雜民家群衆賑   混雑する民家 群衆賑ひ

諸人挨拶上庭階   諸人挨拶し 庭階を上る

          (上平声「九佳」の押韻)


「廛(テン)」: みせ

























[04]
投稿者 玄齋 

[晩秋山野]

少癒微寒候   少しく癒えたる微寒の候

逍遙暫遠街   逍遙 暫く街を遠ざかる

乾坤秋色麗   乾坤 秋色 麗らかに

老若笑顔佳   老若 笑顔 佳し

斜日輝楓葉   斜日 楓葉を輝かせ

長途輕草鞋   長途 草鞋 軽やかなり

病軀雖未忘   病躯 未だ忘れずと雖も

得句入茅齋   句を得て茅斎に入る

          (上平声「九佳」の押韻)



「晩秋に野山を散策する光景を詠みました」

少し病気が癒えて来た、かすかに寒い時期に、
気ままに歩き回ろうと、暫く街を遠ざかる事にしました。
天地の様子は秋の色どりが美しく、
老いも若きも、良い笑顔を見せていました。
夕日は楓の紅葉を輝かせ、
長い道のりも、草鞋が軽やかに感じられました。
自分が病気の身である事を未だ忘れていないけれども、
詩句を得てから、茅葺(かやぶき)の粗末な自分の家に入って行く事が出来ました。

























[05]
投稿者 兼山 

[晩秋山野(一)]

靈峰山野到天涯   靈峰 山野 天涯に到る

一片白雲周景佳   一片の白雲 周景佳し

錦繡爭姸秋九月   錦繍 妍を爭ふ 秋九月

莫汚晩節是吾懷   晩節を 汚すこと莫かれ 是吾が懷ひ

          (上平声「九佳」の押韻)



   野も山も裝ひの果て秋暮るる  兼山
























[06]
投稿者 兼山 

[晩秋山野(二)]

明淨秋山野亦佳   明淨 秋山 野亦佳し

菊花一簇發幽齋   菊花 一簇 幽齋に發く

吟嘯挽歌人獨坐   吟嘯 挽歌 人獨り坐す

餘生有限悦無涯   餘生 有限 悦無涯

          (上平声「九佳」の押韻)


   菊の香や人の命の限り有る  兼山
























[07]
投稿者 謝斧 

[晩秋山野]

山明野濶軽雙鞋   山明らか野濶く 雙鞋軽し

秋日出遊叢草排   秋日出遊 叢草を排す

仰見鳶飛戻天際   仰見る鳶飛 天際に戻り

因希家國世情佳   因りて希ふ 家國世情佳なるを

          (上平声「九佳」の押韻)


「鳶飛戻天」: 魚躍于淵 豈弟君子 遐不作人 詩
























[08]
投稿者 謝斧 

[晩秋山野]

病翁晨起出茅柴   病翁晨起して茅柴を出で

四野三山軽草鞋   四野三山 草鞋軽し

一鶴排雲秋日好   一鶴雲は排して 秋日好く

紅楓満目暢吟懷   紅楓目に満ちて 吟懷暢ぶ

          (上平声「九佳」の押韻)



























[09]
投稿者 謝斧 

[山野晩秋]

奪目秋光驚客懷   目を奪はれし秋光に客懷を驚かせ

恰遊仙區忘形骸   恰も仙區に遊んで 形骸を忘るるごとく

青猨偸果疎枝喰   青猨果を偸んで 疎枝に喰らひ

殘葉摧霜寒径埋   殘葉霜に摧かれて 寒径に埋もる

坐石傾壺斟菊酒   石に坐し壺を傾けて 菊酒を斟み

停笻探句拾松釵   笻を停め句を探りて 松釵を拾ふ

詩家須写天然画   詩家なら須く写せ 天然画

千朶妖紅楓錦佳   千朶の妖紅 楓錦佳なり

          (上平声「九佳」の押韻)



























[10]
投稿者 黒浴@

[晩秋山野]

獨上深山紅葉佳   独り深山に上れば 紅葉美し

樵蹊叢莽足蹤埋   樵蹊 叢莽として 足蹤埋む

坐岩愉晩艶疲癒   岩に坐し晩艶を愉しめば 疲れ癒ゆ

鐘韻緩由林下排   鐘韻緩やかに 林下より排す

          (上平声「九佳」の押韻)



























[11]
投稿者 忍夫 

[晩秋山野(於高取城跡)]

名城舊跡在山崖   名城の旧跡 山崖に在り

険路清瀬萬歩階   険路 清瀬 万歩の階

拭汗暫休風一陣   汗を拭ひて暫し休めば 風一陣

晩秋楓葉勝花佳   晩秋の楓葉は花に勝りて佳なり

          (上平声「九佳」の押韻)



























[12]
投稿者 忍夫 

[晩秋山野(於平城宮跡)]

宮跡荒寥近市街   宮跡は荒寥たるも市街に近し

列車遠影夕陽佳   列車の遠き影に夕陽は佳なり

蟲聲滿野涼風渡   虫声が野に満ちて涼風渡れば

芒穂相和奏調諧   芒の穂が相和して調諧を奏す

          (上平声「九佳」の押韻)



























[13]
投稿者 道佳 

[晩秋山野]

紅葉染於春絶佳   紅葉は春より染め絶佳なり

泛英九日賀筵皆   英(はな)を泛(うか)べ九日 賀(が)筵(えん)す皆(ともに)

傾心地氣鼓妖響   地気の鼓妖(こよう)の響を傾(けい)心(しん)し

畏敬山神祓禊諧   畏敬す山神 祓禊(ふつけい)し諧(やわ)らげん

          (上平声「九佳」の押韻)


「地気」: 地中の気
「鼓妖」: どこからともなく大きな音が聞こえてくる
「祓禊」: ふつけい・・・・みそぎはらう

  秋の紅葉は春より心にしみわたりこの上ないものがある。
  お酒に須臾の花を浮かべ、九月九日の慶賀はみなで祝う。
  噴火や地震など、大地の鼓動に心を傾け、
  山の神を畏敬し、禊を祓い怒りが和らぐように


























[14]
投稿者 押原 

[晩秋山野]

田園穫後素風佳   田園穫後 素風佳し

夕映山腰黃葉埋   夕映の山腰 黄葉に埋まる

佇立在橋人影寂   橋に佇立す人影寂し

残暉幾許想無涯   残暉幾許 想い涯り無し

          (上平声「九佳」の押韻)



























[15]
投稿者 鮟鱇 

[晩秋山野 五言絶句一]

清景堪遊目,     清景 目を遊ばするに堪へ,

滿山紅葉佳。     滿山の紅葉 佳なり。

俳人醉茅店,     俳人 茅店に醉ひ,

覓句興無涯。     句を覓むるに興に涯(はて)無し。

          (上平声「九佳」・中華新韵一麻平声の押韻)


























[16]
投稿者 鮟鱇 

[晩秋山野 五言絶句二]

西郊坐禪寺,     西郊 坐禪の寺,

遊客踏苔階。     遊客 苔階を踏む。

滿目紅黄好,     滿目の紅黄好し,

山門望市街。     山門に市街を望む。

          (上平声「九佳」・中華新韵三皆平声の押韻)


























[17]
投稿者 鮟鱇 

[晩秋山野 五言絶句三]

滿目紅楓好,     滿目の紅楓好し,

正堪試詠懷。     正に堪ふ 詠懷を試みるに。

情深俳句短,     情深く俳句は短く,

村酒洗躯骸。     村酒 躯骸を洗ふ。

          (上平声「九佳」・中華新韵四開平声の押韻)


























[18]
投稿者 鮟鱇 

[晩秋山野 七言絶句一]

白頭却老歩偕偕,   白頭 老いを却(しりぞ)けて歩むこと偕偕,

千里清遊隔市街。   千里 清遊して市街を隔つ。

悦目紅楓滿山徑,   目を悦ばして紅楓 山徑に滿ち,

季題堪詠樂俳諧。   季題 詠むに堪へれば俳諧を樂しむ。

          (上平声「九佳」・中華新韵三皆平声の押韻)


























[19]
投稿者 鮟鱇 

[晩秋山野 七言絶句二]

晩秋山野探詩材,   晩秋の山野に詩材を探り,

穿入楓林試詠懷。   楓林に穿ち入りて詠懷を試む。

十里逍遙無好句,   十里 逍遙するも妙想なく,

月中迷夢醒寒齋。   月中 夢に迷ひて寒齋に醒む。

          (上平声「九佳」・中華新韵四開平声の押韻)


























[20]
投稿者 鮟鱇 

[晩秋山野 五言律詩]

少年携細手,     少年 細き手を携へ,

老骨愛俳諧。     老骨 俳諧を愛す。

注目迎霓袖,     目を注いで霓袖を迎へ,

回頭送錦鞋。     頭を回らして送錦鞋を送る。

賞楓爲季語,     楓を賞(め)づるは季語のため,

覓句競仙階。     句を覓(もと)めては仙階を競ふ。

投稿期稱贊,     投稿 稱贊を期し,

登臺望市街。     臺に登れば市街を望む。

          (上平声「九佳」・中華新韵三皆平声の押韻)


























[21]
投稿者 鮟鱇 

[晩秋山野 七言律詩]

風冷晩秋紅葉埋,   風冷たき晩秋 紅葉は埋む,

青春回憶伴金釵。   青春の回憶(思い出)の伴金釵を伴ふを。

與君携手穿花徑,   君と手を携へ花徑を穿ち,

探勝登山多感懷。   勝を探り山に登り感懷多し。

往日雙棲在都市,   往日 都市に雙棲し,

今天獨歩按詞牌。   今天 詞牌を按じ獨り歩む。

眼前欲暮鏡湖耀,   眼前 欲暮れんと欲して鏡湖耀き,

月中迷夢醒寒齋。   日は霞光を照らし六骸に透る。

          (上平声「九佳」・中華新韵四開平声の押韻)


























[22]
投稿者 哲山 

[晩秋山野]

山遊登客錦楓   山遊の登客 錦楓の

碧宇仙ク極石階   碧宇の仙郷 石階を極む

噴火遽然蒙嶽頂   噴火 遽然として嶽頂をおおい

殘秋晴乱恨中懐   残秋の晴乱 中懐を恨む

          (上平声「九佳」の押韻)



























[23]
投稿者 藤城 英山 

[晩秋山野]

仰天噴火避難皆   噴火に仰天皆非難せり

噴石降灰山頂埋   噴石、降灰で山頂埋む

行樂登山大慘事   行楽登山は大惨事に

愁傷寂寂虚天涯   愁傷寂寂天涯虚し

          (上平声「九佳」の押韻)



  去る9月27日丁度昼時、御嶽山が噴火、山頂付近の登山者が多数被災、
  晩秋の山野はなお一層悲しく寂しい憶いで、何もかも虚しく感ぜられます。
  ・・・被災者のご冥福を祈るばかりです・・・


























[24]
投稿者 茜峰 

[晩秋山野]

光漏林間續土階   光漏れる 林間 続く土階

拉枯落葉友歡諧   落葉を 拉枯し 友と歓諧す

回歸童幼拾収杼   童幼を 回帰し 杼を拾収す

秋曲微吟追躡儕   秋曲の 微吟 儕を追躡す

          (上平声「九佳」の押韻)



























[25]
投稿者 ニャース 

[晩秋山野(於国慶節長暇)]

涼氣徐來節日佳   

隨風行路帶輕鞋   

郊遊不出尋秋色   

金桂飄香滿老街   

          (上平声「九佳」の押韻)


  やはり江南の秋は金木犀です。
  ジョキングをしていてもいたる処で香が漂います。
  国慶節は、七日間の休暇ですが、でかけたら人の波にあいますので大人しく上海に居ました。
  街の中でも秋は感じられます。

























[26]
投稿者 劉建 

[晩秋山野]

銀河倒瀉崩山   銀河 倒瀉して 山崖を崩し

滄海盆傾水蝕街   滄海 盆傾いて 水街を蝕す

雨去天晴猶石隱   雨去り 天晴れて 猶ほ石隠し

雲開日出被泥埋   雲開き 日出でて 泥に埋めらる

臨洪欲塡如精衞   おおみずに臨み うずまんと欲する 精衛の如く

及溺將呼若女娃   できに及び 将に呼ばんとする 女娃じょえの若し

艸木凋零垂馬乳   草木 凋零して 馬乳を垂れ

黃花獨秀踏枯柴   黄花 独り秀で 枯柴を踏む

          (上平声「九佳」の押韻)


「精衛・女娃」:女娃とは炎帝の娘を指し、東海で遊んで溺死した。
        彼女の霊魂は精衛鳥となり、西山の石や枝を銜えて東海を埋めにやって来た。
「馬乳」:葡萄の異名。

























[27]
投稿者 明鳳 

[晩秋山野(皆既月触偶感)]

嫦娥隠見在天涯   嫦娥(こうが)隠見して 天涯に在り

鏡面黯然月触佳   鏡面黯然(あんぜん)たるも 月食に佳(よ)し

西郊散策蟲聲裡   西郊の散策は 蟲声の裡

夜氣C涼俗務排   夜気は清涼にして 俗務排す

          (上平声「九佳」の押韻)


 今回10月8日の「皆既月触」は、平成23年(2011)12月10日以来、約3年ぶり。次回は来年4月4日と謂う。

「嫦娥」: 月の別名 姮娥
「隠見」: 見え隠れする
「黯然」: 暗いさま
「俗務」: 世俗の煩わしいこと

























[28]
投稿者 明鳳 

[晩秋山野(寒露即事)]

寒露蕭條天地佳   寒露蕭條として 天地に 佳くも

晩秋山野總愁懷   晩秋の山野は 総て愁懐

月輪隠見凌虚影   月輪隠見して 凌虚の影

鏡面黯然匿貌埋   鏡面黯然たり 匿貌の埋

霜葉映窗知節序   霜葉窓に 映じて 節序を知り

紅楓入矚滿庭階   紅楓矚(ながめ)に 入り 庭階に満つ

西郊散策蟲聲裡   西郊の散策は 蟲声の裡

夜氣C涼俗霧排   夜気は清涼にして 俗霧排す

          (上平声「九佳」の押韻)



 10月8日は、「寒露」の節気でもあった。

「蕭條」: 物寂しいさま
「凌虚」: 天空をしのぐ、空を押し分けて
「黯然」: 暗いさま
「匿貌埋」: 貌を匿し埋める(=皆既月食)
「節序」: 季節の移り変わる順序
「矚」: ながめる、目をつける
「俗霧」: 俗氛、俗事
「庭階」: 庭と階段、門内

























[29]
投稿者 明鳳 

[晩秋山野(里山思秋即事)]

色彩經霜幽賞諧   彩葉霜を経て 幽賞諧(ととの)ひ

思秋郊野落暉埋   思秋の郊野に 落暉埋まる

谷間金氣霧烟抹   谷間(たにあい)の金気に 霧烟抹(はら)ひ

山際黄昏陰翳乖   山際の黄昏(こうこん)に 陰翳乖(そむ)く

啁喞蟲聲殘照外   啁喞(ちゅうしょく)の蟲声は 残照の外

依稀暮色露深涯   依稀たる暮色は 露深き涯(きわみ)

麓裾巖窟隔郷靜   麓裾の岩窟は 郷(さと)を隔てて静かに

石切隧洞風戰佳   石切りの隧洞(すいどう)に 風戦(そよ)ぎて佳し

          (上平声「九佳」の押韻)

「彩葉」: 色とりどりな紅葉
「幽賞」: 静かにほめ味わう
「諧」: ととのう、かなう
「思秋」: 思春(期)に対して
「啁喞」: 蟲の頻りに鳴く声
「麓裾」: ふもとの山裾




 晩秋の一日、偶々好天に恵まれ「里山自然学校」の見学は、谷間や山上の入り日景色は対照的である。
 亦、周遊の途次石切り場の洞窟で一休みした感懐です。
























[30]
投稿者 和光健心 

[晩秋山谷]

江流両畔圧層崖   江流の両畔層崖を圧す

一面菊花明月佳   一面の菊花 名月佳し

舊里故人閑座夜   旧里の故人 閑座の夜

世緣忘却酒杯懷   世縁を忘却し 酒杯の懐

          (上平声「九佳」の押韻)



























[31]
投稿者 Y.T 

[晩秋山野(一)]

落日山巓冠雪埋   落日の山巓 冠雪に埋れ

無邊曠野落暉佳   無辺の曠野 落暉 佳し

秋深晧夜雁飛過   秋深くして 晧夜 雁 飛んで過(わた)る

鳧影遙遙雲漢涯   鳧影 遙遙 雲漢の涯

          (上平声「九佳」の押韻)



























[32]
投稿者 Y.T 

[晩秋山野(二)]

荒野煙光淡   荒野 煙光 淡く

連山暮靄佳   連山 暮靄 佳し

秋風動枯木   秋風 枯木を動かし

流水繞蒼崖   流水 蒼崖を繞ぐる

亂蛬幽叢泣   乱蛬 幽叢に泣き

殘花白草埋   残花 白草に埋る

遙天孤雁過   遙天 孤雁 過ぎ

鳧影彩雲涯   鳧影 彩雲の涯

          (上平声「九佳」の押韻)



























[33]
投稿者 Y.T 

[晩秋山野(三)]

遠山纔冠雪   遠山 纔かに 雪を冠し

郊野夕風佳   郊野 夕風 佳し

秋深残雁過   秋 深くして 残雁 過(わた)る

鳧影暮雲涯   鳧影 暮雲の涯

          (上平声「九佳」の押韻)



























[34]
投稿者 東山 

[晩秋山野(一)]

村里晩秋小寒齊   村里の晩秋 小寒の斎

回頭往歳洞爺涯   頭を回らす往歳 洞爺の涯

母川群遡銀鱗輝   母川群遡して 銀鱗輝き

白雪丹楓山野佳   白雪丹楓 山野佳なり

          (上平声「九佳」の押韻)



「洞爺」: 北海道洞爺湖
























[35]
投稿者 東山 

[晩秋山野(二)]

石徑停笻渓澗涯   石径笻を停む 渓澗の涯

尋來古刹緑苔階   尋ね来る古刹 緑苔の階

晩秋庭裡茗三碗   晩秋の庭裡 茗三碗

山野紅黄舊里懷   山野の紅黄 旧里を懐ふ

          (上平声「九佳」の押韻)



























[36]
投稿者 常春 

[晩秋山野 其一]

白樺紅蔦適宜排   白樺紅蔦適宜に排ぶ

落葉松林秋不乖   落葉松林 秋に乖かず

家口驅車遠遊道   家口 車を駆る遠遊の道

今宵翁媼賀筵偕   今宵 翁媼 賀筵偕にす

          (上平声「九佳」の押韻)



























[37]
投稿者 常春 

[晩秋山野 其二]

俯觀黄葉滿   俯観すれば黄葉満ち

遙望紫峰皆   遥かに望めば紫峰皆くす

索道車窓佇   索道 車窓に佇めば

乍昇千丈階   乍ち昇る千丈の階

          (上平声「九佳」の押韻)



























[38]
投稿者 常春 

[晩秋山野]

東北經秋早   東北 秋を経ること早し

山間新雪埋   山間 新雪 埋まる

霜林舞風葉   霜林 風に舞ふ葉

湍瀬遡流鮭   湍瀬 流れを遡る鮭

依舊天然野   旧に依る 天然の野

如今地異街   如今 地異の街は?

營營復興努   営々 復興に努むるも

猶有遠芳懷   猶有り 遠芳の懐ひ

          (上平声「九佳」の押韻)



























[39]
投稿者 點水 

[晩秋山野]

秋色遊觀依斷崖   秋色の遊觀 断崖に依る

金風颯颯鳥偕偕   金風 颯颯  鳥 偕偕

霜晴日暖照山野   霜晴れ 日暖く 山野を照らす

錦繍紅楓是絶佳   錦繍の紅楓 是れ 絶佳

          (上平声「九佳」の押韻)



























[40]
投稿者 杜正 

[晩秋山野]

秋老西郊落葉埋   秋老いぬ 西郊 落葉埋む

欲尋舊友訪山齋   旧友を尋ねんと欲して 山齋を訪ふ

飛楓殘菊迎騒客   飛楓 残菊 騒客を迎ふ

恍惚論詩入雅懷   恍惚として 詩を論じ 雅懷に入る

          (上平声「九佳」の押韻)



   晩秋の郊外は 落葉に埋もれている。
   旧友を尋ねようと思って 山の家を訪問した。
   飛び散る楓 残った菊が 私を迎えてくれた。
   その情景に恍惚となって 友と詩を論じ 風雅の世界に浸るのだった。


























[41]
投稿者 觀水 

[晩秋山野(一)]

奈何觸物抱愁懷   奈何んせん物に触れて愁懐を抱くを

清興相尋出巷街   清興相尋ねて巷街を出づ

漸去塵寰紅葉路   漸く塵寰を去る紅葉の路

漫望山寺碧苔階   漫に山寺を望む碧苔の階

野田送雁西風爽   野田に雁を送れば西風爽やかに

茅店案詩秋色佳   茅店に詩を案じて秋色佳し

終日如斯吾所説   終日斯くの如きは吾が説(よろこ)ぶところ

不知返照盡天涯   知らず返照の天涯に尽くるを

          (上平声「九佳」の押韻)


   どうしたものか何につけ うら悲しさを抱くのは
   面白いこと探すため ちょっと街から出てみるか
   俗世だんだん離れてく あかく色づく木々の道
   山寺なんか眺めやる あおく苔むす石の段
   渡るかりがね見送れば 野べ吹く風はさわやかで
   店さきで詩を考えて 秋の景色のよさを知る
   一日ずっとこのように していられたら素敵だな
   いつの間にやら夕焼けが 地平の果てに消えていく

























[42]
投稿者 觀水 

[晩秋山野(二)]

白雲紅葉不相乖   白雲紅葉相乖(そむ)かず

兩映蒼旻好景偕   両つながら蒼旻に映じて好景偕(とも)にす

一日逍遙爽風裏   一日逍遥す爽風の裏

剩期歩歩朗吟諧   剰え期す歩歩朗吟諧(ととの)ふを

          (上平声「九佳」の押韻)


   赤いもみじに白い雲 合わないなんてことはない
   どちらも青い空に映え 一緒につくる好い景色
   さわやかに吹く風のなか ぶらりぶらりとした後は
   ひと足ごとにうたう詩の 調子が良ければそれでいい

























[43]
投稿者 禿羊 

[晩秋山行]

好秋難癒老殘懷   好秋 癒し難し 老残の懐

獨歩山稜立峻崖   山稜を独歩して峻崖に立つ

朱日彩霞消遠嶺   朱日彩霞 遠嶺に消え

凄凄晩籟沍枯骸   凄凄たる晩籟 枯骸沍る

          (上平声「九佳」の押韻)



























[44]
投稿者 老遊(桐山堂刈谷) 

[晩秋山野(一)]

滿野丹楓布絶佳   野に満つる丹楓は絶佳を布き

辭枝黄葉堕懸崖   枝を辞す黄葉は懸崖に堕つ

一年遊計紅於結   一年の遊計 紅於の結び

最好深秋慰老懷   最も好し 深秋の老懐を慰むるを

          (上平声「九佳」の押韻)



























[45]
投稿者 老遊(桐山堂刈谷) 

[晩秋山野(二)]

萬頃黄雲稲穂佳   万頃の黄雲 稲穂の佳

田収滿了祭歌偕   田収満了 祭歌偕にす

山腰錦繡楓林屏   山腰の錦繍 楓林の屏

霜節不悲適老懷   霜節悲しまず 老懐に適ふ

          (上平声「九佳」の押韻)



























[46]
投稿者 一兔(桐山堂刈谷) 

[晩秋山野]

暮風寒意在天涯   暮風 寒意 天涯に在り

紅葉前山月夕佳   紅葉の前山 月夕佳なり

多少人家燈火閃   多少の人家 灯火閃き

洗心一霎抱香懷   心を洗ふ一霎 香懐を抱く

          (上平声「九佳」の押韻)



























[47]
投稿者 T.K(桐山堂刈谷) 

[晩秋山野]

桂花馥郁走長街   桂花馥郁 長街を走る

赤卒黄雲萬象佳   赤卒 黄雲 万象佳なり

陋屋籬邊儘移歩   陋屋の籬辺 儘に歩を移す

清霜爽氣散愁懷   清霜 爽氣 愁懐を散ず

          (上平声「九佳」の押韻)



























[48]
投稿者 眞海(桐山堂刈谷) 

[晩秋山野]

紅葉蕎花御嶽涯   紅葉 蕎花 御嶽の涯

突如噴火石巖埋   突如の噴火 石巖埋む

昼夜捜探不辭險   昼夜の捜探 険を辞さざるも

何時見晷旅人骸   何れの時に晷を見ん 旅人の骸

          (上平声「九佳」の押韻)


























[49]
投稿者 眞海(桐山堂刈谷) 

[晩秋]

欲賦秋景望雲階   秋景を賦せんと欲し 雲階を望む

鬱鬱天空雨未排   鬱鬱たる天空 雨未だ排せず

重襲颱風已東去   重襲の颱風 已に東に去り

霜楓殘菊午晴偕   霜楓 殘菊 午晴偕にす

          (上平声「九佳」の押韻)


























[50]
投稿者 M.S(桐山堂刈谷) 

[晩秋山野]

田園稲架急樵柴   田園 稲架 樵柴を急がせ

秋熟怡顔父子偕   秋熟し 怡顔 父子偕にす

日暮山村霜降早   日暮 山村 霜降ること早く

冷澄天鏡照空齋   冷澄たる天鏡 空齋を照らす

          (上平声「九佳」の押韻)



























[51]
投稿者 松閣(桐山堂刈谷) 

[晩秋山野]

空山寂寂白雲埋   空山寂寂 白雲埋む

黄葉蟲聲幽賞諧   黄葉の虫声 幽賞諧す

日午閑居茶一啜   日午 閑居 茶一啜

琴書相愛坐寒齋   琴書 相愛し 寒斎に坐す

          (上平声「九佳」の押韻)



























[52]
投稿者 勝江(桐山堂刈谷) 

[秋日郊行]

舊朋秋日旅途偕   旧朋 秋日 旅途偕にす

淡照丹楓動客懷   淡照 丹楓 客懐を動かす

二季櫻花古村麓   二季の桜花 古村の麓

傳香風靜晩晴佳   香を伝ふるの風は静かに 晩晴佳なり

          (上平声「九佳」の押韻)



























[53]
投稿者 N.I(桐山堂刈谷) 

[晩秋山野]

浮雲流去在天涯   浮雲流れ去りて天涯に在り

山景寒村暮色埋   山景 寒村 暮色埋む

春夏生生諸事盛   春夏は生生として諸事盛んなり

秋容肅殺入愁懷   秋容は粛殺 愁懐に入る

          (上平声「九佳」の押韻)



























[54]
投稿者 桐山人 

[晩秋山野(一)]

山風嫋嫋晩寒排   山風嫋嫋として 晩寒排し

無盡白雲依絶崖   無尽の白雲 絶崖に依る

滿目紅楓融夕照   満目 紅楓 夕照に融け

行人一日洒吟懷   行人一日吟懐を洒ふ

          (上平声「九佳」の押韻)



























[55]
投稿者 桐山人 

[晩秋山野(二)]

   
午窗慵韻事   午窓 韻事に慵く

依杖小春街   杖に依る 小春の街

籬菊香紛郁   籬菊 香 紛郁

叢蟲息和諧   叢虫 息 和諧

楓林紅繡染   楓林 紅繍に染まり

稲田黄波埋   稲田 黄波に埋む

颯颯秋風爽   颯颯として 秋風爽やかに

觀望萬象佳   観望すれば 万象佳なり

          (上平声「九佳」の押韻)