| 作品番号 | 作 者 | 題 名 | 詩 形 | |
| [01] | 深溪 | 「初夏情景」 | 七言絶句 | |
| [02] | 銅脈 | 「初夏鎌倉高徳院情景」 | 七言絶句 | |
| [03] | 道佳 | 「初夏情景」 | 七言絶句 | |
| [04] | 兼山 | 「初夏情景(一)」 | 七言絶句 | |
| [05] | 兼山 | 「初夏情景(二)」 | 七言絶句 | |
| [06] | Y.T | 「初夏情景(一)」 | 七言絶句 | |
| [07] | Y.T | 「初夏情景(二)」 | 五言律詩 | |
| [08] | Y.T | 「初夏情景(三)」 | 七言律詩 | |
| [09] | Y.T | 「夏雨情景」 | 五言絶句 | |
| [10] | 謝斧 | 「初夏情景」 | 七言律詩 | |
| [11] | 押原 | 「初夏情景」 | 七言絶句 | |
| [12] | 茜峰 | 「初夏情景(清掃山行)」 | 七言絶句 | |
| [13] | 劉建 | 「初夏情景」 | 七言律詩 | |
| [14] | 哲山 | 「初夏情景」 | 五言絶句 | |
| [15] | 薫染 | 「初夏情景」 | 七言絶句 | |
| [16] | 明鳳 | 「初夏情景 其一」 | 七言絶句 | |
| [17] | 明鳳 | 「初夏情景 其二」 | 七言絶句 | |
| [18] | 鮟鱇 | 「初夏情景 其一」 | 五言絶句 | |
| [19] | 鮟鱇 | 「初夏情景 其二」 | 七言絶句 | |
| [20] | 鮟鱇 | 「初夏情景 其三」 | 五言律詩 | |
| [21] | 鮟鱇 | 「初夏情景 其四」 | 七言律詩 | |
| [22] | 東山 | 「初夏情景(一)」 | 七言絶句 | |
| [23] | 東山 | 「初夏情景(二)」 | 七言絶句 | |
| [24] | 點水 | 「初夏情景」 | 七言絶句 | |
| [25] | 杜正 | 「初夏情景」 | 七言絶句 | |
| [26] | 洋景 | 「初夏情景」 | 七言絶句 | |
| [27] | ニャース | 「初夏情景 於申城(上海)」 | 七言絶句 | |
| [28] | 常春 | 「初夏情景(一)」 | 七言絶句 | |
| [29] | 常春 | 「初夏情景(二)」 | 七言絶句 | |
| [30] | 常春 | 「初夏情景(三)」 | 五言絶句 | |
| [31] | 觀水 | 「初夏情景」 | 七言律詩 | |
| [32] | Y.T | 「初夏偶成」 | 七言絶句 | |
| [33] | 桐山人 | 「初夏情景(一)」 | 七言絶句 | |
| [34] | 桐山人 | 「初夏情景(二)」 | 七言絶句 | |
| [35] | 桐山人 | 「初夏情景(三)」 | 五言律詩 | |
| [36] | 桐山人 | 「初夏情景(四)」 | 七言律詩 | |
| [37] | 春空 | 「初夏情景」 | 七言絶句 | |
| [38] | 忍夫 | 「初夏雜感(一)」 | 七言絶句 | |
| [39] | 忍夫 | 「初夏雑感(二)」 | 七言絶句 | |
| [40] | 玄齋 | 「初夏情景」 | 七言絶句 | |
| [41] | �黒浴@ | 「初夏情景」 | 七言絶句 | |
| [42] | M.T(桐山堂刈谷) | 「初夏情景」 | 七言絶句 | |
| [43] | T.K(桐山堂刈谷) | 「初夏情景」 | 七言絶句 | |
| [44] | 眞海(桐山堂刈谷) | 「初夏農園」 | 七言絶句 | |
| [45] | 勝江(桐山堂刈谷) | 「西尾郷初夏」 | 七言絶句 | |
| [46] | N.I(桐山堂刈谷) | 「初夏情景」 | 七言絶句 | |
| [47] | 老遊(桐山堂刈谷) | 「初夏情景」 | 七言絶句 |
[初夏情景]
閣閣秧田野色斉 閣閣 秧田 野色斉しく
望遠冨岳夕陽西 夕陽の西に冨岳を遠く望み
東郊十里塵機絶 東郊 十里 塵機を絶す
夏草扶疎玉水堤 夏草扶疎たる 玉水の堤
「閣閣」: 蛙の鳴き声。
「秧田」: 稲田。
「扶疎」: 草の茂るさま。
「玉水」: 日本関東地方、多摩川。
[初夏鎌倉高徳院情景]
落紅一路樹如齊 落紅一路 樹 斉ふが如し
俳句風懷知大体 俳句の風懐 知が大体
大佛香煙薫風裏 大仏香煙 薫風の裏
蕭然閑坐甲兵洗 蕭然として閑坐 甲兵を洗ふ
[初夏情景]
峰頂白銀山鳥啼 峰頂は白銀 山鳥は啼く
水村田作彩花畦 水村の田作 花畦彩たり
開華霏散櫻桃匆 開華すれど霏散す 桜桃匆(いそが)し
短美春光何處迷 短し 美しき春光 何処へ迷はん
大山の山頂は雪で光り輝き、山鳥が啼いている
村里では、田植えに忙しく、畦道にはいろいろな花が咲いている
先ごろまで咲いていた桜桃はなんと早くも散ってしまった
春が大変短くどこへ迷い行ってしまったのか
[初夏情景(一)]
櫻花前線今何處 櫻花 前線 今 何處
燕子歸來食草泥 燕子 歸り來り 草泥を食む
不住光陰春已去 光陰 住らず 春 已に去り
如潮新緑促新題 新緑 潮の如く 新題を促す
万緑の中に葉桜失せにけり
[初夏情景(二)]
早曉六時聽遠雞 早曉 六時 遠鶏を聽く
百花飛盡緑初齊 百花 飛び盡して 緑初て齊し
池中水暖動緋鯉 池中 水暖 緋鯉動き
家内怱怱老嫗迷 家内 怱怱 老嫗迷ふ
花冷えの過ぐれば暑し昨日今日
[初夏情景(一)]
梅子青青�此゙堤 梅子 青々 緑 堤に満ち
池塘水溢草萋萋 池塘 水溢れて 草 萋々たり
小齋到暮無來客 小斎 暮に到るも 来客 無く
只聴林間杜宇啼 只 林間に 杜宇の啼くを聴くあるのみ
[初夏情景(二)]
梅子初黄節 梅子 初めて黄ばむの節
風薫野草萋 風 薫って 野草 萋る
林間聴杜宇 林間 杜宇を聴き
池上望田鶏 池上 田鶏を望む
雙蝶舞花苑 双蝶 花苑に舞ひ
亂鴉飛麦畦 群鴉 麦畦に飛ぶ
�拷A催午睡 緑陰に 午睡を催し
時自夢魂迷 時に自ずと 夢魂迷ふ
「田鶏」: 殿様蛙。因みに中国料理で使う蛙が是。
[初夏情景(三)]
梅肥時節草萋萋 梅 肥ゆるの時節 草 萋萋
雨霽風温緑満堤 雨霽れ 風 温かく 緑 堤に満つ
十里驅車游古刹 十里 車を駆りて 古刹に游び
半途凭軾憩幽蹊 半途 軾に凭りて 幽蹊に憩ふ
上丘樹蔭囀黄鳥 丘に上れば 樹蔭 黄鳥 囀り
下澤池辺戯水鶏 澤に下れば 池辺 水鶏 戯る
獨佇蘆汀松籟急 獨り 蘆汀に佇めば 松籟 急に
夕雲流去日将西 夕雲 流れ去って 日 将に西せんとす
「黄鳥」: 高麗鶯(日本鶯とは少し種を異にす)
「水鶏」: 秧鶏(くいな)。
[夏雨情景]
天陰風颯颯 天陰(かげ)り 風 颯颯
雲湧雨凄凄 雲湧いて 雨 凄凄
草裏蟲声歇 草裏 蟲声 歇み
林間一鳥啼 林間 一鳥 啼く
[初夏情景]
首夏出遊瓢酒携 首夏出遊して瓢酒携へ
山行排草入幽蹊 山行草を排して 幽蹊に入る
乞茶田媼清神爽 茶を田媼に乞えば 神を清くして爽やかに
聞路村童疲足迷 路を村童に聞いては 足を疲て迷う
燕子平飛楊柳�� 燕子平飛して 楊柳緑に
卯花初發杜鵑啼 卯花初て發いて 杜鵑啼く
扶疎樹裏香城浄 扶疎たりし樹裏に 香城浄く
借榻跏趺與物斉 榻を借って跏趺すれば物と斉し
[初夏情景]
清風習習草萋萋 清風習習 草 萋萋
溌剌池魚水拍堤 溌剌たる池魚 水 堤を拍つ
初夏�拷�禽語靜 初夏の緑園 禽語 静か
圍棋閑客忘陽低 棋を圍む閑客 陽の低きを忘る
[初夏情景(清掃山行)]
拾芥山行迂回蹊 拾芥の山行 蹊を迂回す
踏破叢莽下降溪 叢莽を踏破し 溪に下降す
談諧朋友慈苺味 朋友と談諧し 苺の味を慈しむ
緑樹薫風杜宇啼 緑樹 薫風 杜宇啼く
私の所属する山岳会の全国連盟では、毎年6月第1日曜日は一斉に清掃登山をする。
それぞれ決められた近くの山を 清掃する。
山道を迂回しながら、ポリ袋、ごみばさみ等を持って登る。
草むらに分け入ったり、小川の谷道に下ったりして 隠れたごみを拾う。
途中で採ったキイチゴなどを食べ野趣を楽しみ 仲間と談笑 ほっと息していると、
緑の木々のどこからか風に乗ってホトトギスの声が聞こえる。
清掃とはいえ 労働半分、山行気分満喫半分の 楽しい山行である。
[初夏情景]
枝繁葉茂鳥飛低 枝繁り 葉茂り 鳥飛ぶこと低く
�壕テ紅稀柳覆隄 緑暗く 紅稀なり 柳堤を覆ふ
點水蜻蜒跳上下 水を点じて 蜻蜒 上下に跳び
穿花蛺蝶舞東西 花を穿ちて 蛺蝶 東西に舞ふ
樓空人去未能解 楼空しく 人去り 未だ解すこと能くせず
雁杳魚沈忽得迷 雁杳として 魚沈み 忽ち迷ひを得る
禍起蕭墻有前兆 禍は蕭墻に起こらば 前兆有り
變生肘腋無端倪 変は肘腋に生まれても 端倪無し
「禍」: ここではマレーシア機の失踪事件を指す。
「變」: 異変が極近くに起きて何者かがどこかに(異次元を含む)に拉致した可能性。
[初夏情景]
風爽爽鳥囀 風爽爽として鳥囀り
花乱草萋萋 花乱れて草萋萋
午影書窗内 午影 書窓の内
胡虫欲出迷 胡虫 出んと欲して迷ふ
[初夏情景]
年年愛惜晩春溪 年年愛惜す 晩春の渓
歳歳歡迎野鳥啼 歳歳歓迎す 野鳥の啼くを
内海微風翻被服 内海微風 被服を翻(ひるがへ)し
青山岳麓小川堤 青山の岳麓 小川の堤
[初夏情景(其一)]
晩來好雨地中齊 晩来の 好雨は 地中に 斉(ひと)しく
端午竹林求笋躋 端午の 竹林に 笋(たけのこ)を 求めて 躋(のぼ)る
早曉叢篁心氣爽 早暁の 叢篁(そうこう)は 心気 爽やかに
豐年筍膳此相携 豊年の 筍膳(じゅんぜん) 此(ここ)に 相 携(たずそ)ふ
今年の「竹の子」は、表年(おもてどし)にあたり、出来が良いと言われる。
宿雨の後の早朝に、朝掘りの「竹の子」を求め、早速 旬(しゅん)の美味を食した。
[初夏情景(其二)]
端午叢篁求笋躋 端午の 叢篁に 笋(たけのこ)を 求めて 躋(のぼ)れば
竹林生育地中齊 竹林の 生育は 地中に 斉(ひと)しく
晩來好雨知時節 晩来の 好雨は 時節を 知る
朝掘新鮮筍膳携 朝掘りは 新鮮にして 筍膳(たけのこぜん) 携(たずそ)ふ
春の到来遅く、花見や農耕の時期が心配だったが、その時機が至れば、花見も農耕も例年通りで一安堵乎。
「竹の子」も端午の時節に「旬」の味覚を頂いて、自然の恵みを満喫した。
[初夏情景 其一]
緑陰篩日景, 緑陰 日景を篩ひ,
白首探詩題。 白首 詩題を探る。
人小山高處, 人は小さく山は高きところ,
閑吟競午鷄。 閑吟 午鷄と競ふ。
[初夏情景 其ニ]
初夏臥游尋碧溪, 初夏 臥游して碧溪を尋ぬれば,
緑陰肥處老鶯啼。 緑陰肥ゆるところ老鶯啼く。
蒼巖堪坐輕風爽, 蒼巖 坐るに堪へて輕風は爽か,
目送清流山麓西。 目送せし清流は山麓の西。
[初夏情景 其三]
日暄春已逝, 日は暄にして春はすでに逝き,
風軟繞雙栖。 風軟かく雙栖を繞る。
行樂尋湖畔, 行樂 湖畔を尋ね,
逍遙伴老妻。 逍遙 老妻を伴ふ。
浮光水輝煥, 光を浮かべて水は輝煥し,
游目嶺高低。 目を遊ばす嶺に高低あり。
霞彩收歸鳥, 霞彩 歸鳥を収め,
旅亭聽水鷄。 旅亭に水鷄を聽く。
「雙栖」: 夫婦ふたりの住まい。
「水鷄」: 蛙のこと。
[初夏情景 其四]
清貧少好伴荊妻, 清貧 好むを少なくして荊妻を伴ひ,
探勝逍遙桃李蹊。 勝を探り逍遙す 桃李の蹊。
花痩緑肥春已逝, 花は痩せ緑は肥えて春すでに逝き,
山高人小夏難題。 山は高く人は小さく夏は題とするに難し。
風光游目詩無用, 風光 目を游ばせば詩に用は無く,
茅店傾杯酒到臍。 茅店 杯を傾ければ酒 臍に到る。
暫借紅顔望河水, 暫く紅顔を借りて望む河水,
清輝瀲瀲洗長堤。 清かに輝いて瀲瀲と長堤を洗ふ。
[初夏情景(一)]
新�轟O風村野景 新緑薫風 村野の景
黄雲燕語鯉旗蹊 黄雲燕語 鯉旗の蹊
朝陽吟歩遠山笑 朝陽吟じ歩けば 遠山笑い
今日江畔草木萋 今日江畔 草木萋たり
[初夏情景(二)]
雨止携筇新緑蹊 雨止んで筇を携ふ 新緑の蹊
午陰�C澗老鶯啼 午陰の清澗 老鶯啼く
登臺眺望故郷景 台に登り眺望す 故郷の景
五月晴空見絳霓 五月の晴空 絳霓を見る
[初夏情景]
麥秋白晝緑楊堤 麦秋の白昼 緑楊の堤
雲雀高飛燕子低 雲雀は高飛 燕は低く
収穫插秧農事急 収穫 插秧 農事は急
田夫捷足走町畦 田夫は捷足 町畦を走る
[初夏情景]
首夏奇峰樹色斉 首夏の奇峰 樹色 斉し
薫風樵径杜鵑啼 薫風の樵径 杜鵑 啼く
昔時競採君安在 昔時の競採 君 安こに在りや
山上孤筇思故谿 山上にて 孤筇 故谿を思ふ
夏に入ったばかりの山の峰々 樹色が若葉一色だ。
薫風が吹くきこりの道を歩いていると、ホトトギスが啼いた。
昔、小さい頃、山に入って競っていろいろなものを採り合った君 今はどこにいるのだろう。
山上に登って 一人杖をついて 故郷の谷のことを思い出すのだ。
[初夏情景]
藤花嫋嫋玉簾低 藤花嫋嫋として玉廉低れ
習習薫風芬郁齎 習習たる薫風 芬郁齎す
双燕翩飛碧天下 双燕翩飛す 碧天下
舊巣不忘屋檐啼 舊巣忘れず 屋檐に啼く
[初夏情景 於申城(上海)]
江南立夏雨雲低 江南 立夏 雨雲低れ
歸巢怱忙衆鳥啼 巣に帰らんと怱忙 衆鳥啼く
禽獸又知團聚樂 禽獣も又知る 団聚の楽しみ
白頭何意選孤棲 白頭 何の意か 孤棲を選ぶ
江南地方は立夏を迎えているが、雨雲がたれこめている。
鳥たちは、慌ただしく自分の巣に帰っていく。
禽獣でも皆の集まりを楽しんでいるのに、
私は何故 ひとり暮らしをしているのだろう。
[初夏情景(一)]
正終春菜急耕犂 正に春菜を終え 耕犂急なり
忽整秧田燕落泥 忽ち整ふ秧田 燕 泥に落つ
合理文明工省力 合理の文明 省力工なるも
惟祈天帝秋熟黎 惟だ 天帝に祈る 秋の熟黎を
[初夏情景(二)]
一望茶園槍芽齊 一望の茶園 槍芽斉ふ
農機採剪觀東西 農機の採剪 東西に観る
今消酬唱纔單韻 今酬唱消えて 纔かに単韻
年歳從新不可稽 年歳 新に従ひて稽まるべからず
[初夏情景(三)]
生生新�獄� 生々 新緑の野
雍鼻歩叢畦 雍鼻(鼻歌) 叢畦を歩む
乍覺幼時唱 乍ち覚ゆ 幼時の唱
舊懷青壯迷 旧懐す 青壮の迷を
老鶯鳴隠篠 老鶯 篠に隠れて鳴き
新燕剪銜泥 新燕 泥を銜えて剪る
好景心跳動 好景 心跳動す
幸哉今隠棲 幸いなる哉 今の隠棲
[初夏情景]
田夫韻事數相迷 田夫の韻事は数しば相迷ふも
孟夏風光是好題 孟夏の風光是れ好題
輕燕悠悠雲上下 軽燕悠悠たり雲の上下
野童喜喜水東西 野童喜喜たり水の東西
鬢邊蝶舞開��眼 鬢辺蝶は舞ひ青眼を開き
鞋底花驚度曲堤 鞋底花は驚き曲堤を度る
一日逍遙欲歸處 一日逍遥して帰らんと欲する処
自知胸裏妙詩携 自ら知る胸裏妙詩携ふを
風流人のまねごとは しょっちゅう迷ってばかりでも
夏のはじめのこの景色 詩の題材にちょうどよい
燕かるがる跳びまわる 雲の上やら下やらへ
子供わいわい騒いでる 川の東や西やらで
頭のまわり舞う蝶に 親しい眼差し送りつつ
足もとの花驚かし 曲がりくねった土手を行く
たっぷり一日歩いたら そろそろ家に帰るとき
自然と気付く胸のうち よい詩ができていることに
[初夏偶成]
異郷漂泊独羈棲 異郷に 漂泊し 独り 羈棲す
初夏時聴杜宇啼 初夏 時に杜宇の啼くを聴く
日午涼陰催一睡 日は午にして 涼陰 一睡を催(もよお)し
林間夢覚客心迷 林間 夢覚めて 客心 迷う
「羈棲」: 旅住まい。
[初夏情景(一)]
滿園躑躅白紅齊 園に満つる躑躅 白紅斉し
颯颯薫風飛蝶低 颯颯たる薫風 飛蝶低し
古寺門前野衣老 古寺の門前 野衣の老
鄙歌長嘯午鳩啼 鄙歌 長嘯すれば 午鳩啼く
[初夏情景(二)]
樹樹濃陰萬草萋 樹樹 陰を濃くして 万草萋し
薫風一陣度閑溪 薫風一陣 閑渓を度る
水聲瀝瀝清涼趣 水声は瀝瀝たり 清涼の趣
幽境更深苔石蹊 幽境 更に深し 苔石の蹊
[初夏情景(三)]
首夏川原路
丘山緑一齊
橘花清氣滴
栗樹馥香提
田水浸蔬圃
野風過麦畦
孤筇吟午下
閑歩酒壺攜
[初夏情景(四)]
郊村一路草萋萋 郊村一路 草萋萋
午下農人憩稻畦 午下 農人 稲畦に憩ふ
柔嫋輕風搖�克� 柔嫋たる軽風 緑樹を揺らし
翩翻雙燕覓新栖 翩翻たる双燕 新栖を覓む
嘯吟詩句野鳩和 詩句を嘯吟すれば 野鳩和し
來往陌阡郷犬啼 陌阡を来往すれば 郷犬啼く
夏日晴光還似舊 夏日の晴光 還た旧の似し
悠然更歩酒壺攜 悠然として更に歩すに酒壺を携ふ
[初夏情景]
薫風漾緑上清溪 薫風は緑を漾はす 清渓の上(ほとり)
躑躅滿庭山鳥啼 躑躅は庭に満ち 山鳥啼く
聳立塔堂千歳寶 聳立せる塔堂 千歳の宝
香煙讀經淨心齋 香煙 読経 淨心齋し
[初夏雜感(一)]
楊柳薫風十里堤 楊柳、風を薫らせる 十里の堤、
耕人暫憩兩三畦 耕人 暫く憩ふ 両三畦。
孤追白蝶迷行路 孤り白蝶を追って、行路に迷ひ、
借問村童湖水西 村童に借問す 湖水の西。
[初夏雜感(二)]
田園處處老鶯啼 田園 処々 老鶯啼き、
徐揚疎簾野色齊 徐々に疎簾を揚ぐれば 野色斉し。
草木浴光生爽氣 草木は光を浴びて、爽気を生じ、
清風一陣竹林西 清風 一陣 竹林の西。
[初夏情景]
朝來新樹歩山蹊 朝来 新樹の山蹊を歩き
再會行途草萋萋 再び行途に会うて 草 萋萋たり
�壕テ影深春已去 緑暗うして影深うして春已に去り
堅懷一念奮然題 堅く一念を懐ひて奮然として題す
朝から新緑の樹々の中で山道を歩いていくと、再びその道の途中であるあなたと出会い、そこは草が茂っているところでした。
深い緑で陰も深い中、春はすでに去ってゆき、堅く一つの思いを抱いて心をふるい立たせて漢詩を作りました。
[初夏情景]
燕子飛翔山麓畦 燕子 飛翔 山麓の畦
周囲水漲稲萋萋 周囲 水漲り 稲萋萋
�漉ム鬱蒼幽清趣 緑林 鬱蒼 幽清趣あり
昼寂藪中鶯獨啼 昼寂にして薮中 鶯独り啼く
[初夏情景]
首夏光輝落日低 首夏の光輝 落日低し
漁船來往過長堤 漁船 來往 長堤を過ぐ
涼風樹下酣眠夢 涼風 樹下 酣眠の夢
煙火轟轟月色迷 煙火 轟轟 月色迷ふ
[初夏情景]
蛙聲閣閣近窗啼 蛙声 閣閣 窓に近づきて啼く
蓬艾香蒲�壕�齊 蓬艾 香蒲 �壕黷ノ斉し
倚机繙書浴蘭節 机に倚り書を繙く 浴蘭の節
古詩吟詠夕陽低 古詩 吟詠すれば 夕陽低し
[初夏農園]
薫風吹袖草萋萋 薫風袖を吹き 草萋萋
花後田園桃李蹊 花後の田園 桃李の蹊
初夏晴耕農事樂 初夏の晴耕 農事の楽しみ
一苗萬顆待新畦 一苗万顆 新畦に待つ
春の万花散り尽くし、新緑が一面に広がっている。
畑にも草が生い茂り、桃李の枝には小さな実がついている。
農事には、一粒万顆の楽しみがある。
今年も見事に実ってほしいものだ。
[西尾郷初夏]
郭環城跡駅亭西 郭は環る城跡 駅亭の西
白堊家家月影低 白堊の家家 月影低し
首夏茶人斜面裏 首夏 茶をつむ人 斜面の裏
清風�克�落花蹊 南風緑樹 落花の蹊
六万石の城下町として城跡が歴史公園になっています。
また、抹茶で有名な緑豊かな西尾です。
町の中を流れる川(みどり川)は桜が美しい。今は葉桜であざやかです。
抹茶と緑の文化が香る町をめぐり、作った詩です。
[初夏情景]
秧田茜映暮雲低 秧田 茜に映え 暮雲低し
清爽薫風渡緑畦 清爽たる薫風 緑畦を渡る
四月郊村農事急 四月 郊村 農事急なり
故郷追憶杜鵑啼 故郷を追憶すれば 杜鵑啼く
[初夏情景]
農人荷鍤夕陽低 農人鍤を荷えば 夕陽低れ
百頃禾田一鑑齊 百頃の禾田 一鑑齊ふ
今日殘飧街土上 今日 殘飧 街土の上
須知辛苦汗顔齎 須らく知るべし 辛苦 汗顔の齎なるを