第29回 世界漢詩同好会総会(二〇一〇年六月十三日)

 『世界漢詩同好会』の第28回総会は、六月十三日に開かれます。
 詩題(今回は『夏日即事』)と押韻(今回は「下平声十四鹽(塩)」)を共通として、その日までに各国の幹事サイトに投稿された詩を交流し合うものです。
 日本では、この『漢詩を創ろう』のサイトが幹事となり、皆さんの交流詩を集約、掲載します。



 日本からの参加詩です。投稿順に紹介します。
番号をクリックして下さい。
 
    作品番号 作 者 題 名 詩 形
   01 謝斧 「夏日即事 一(初夏即事)」七言律詩
   02 謝斧 「夏日即事 二」七言律詩
   03 深溪 「夏日即事」七言絶句
   04 井古綆 「夏日即事 一」七言絶句
   05 井古綆 「夏日即事 二」七言絶句
   06 井古綆 「夏日即事 三(葵祭)」七言絶句
   07 井古綆 「夏日即事 四」七言律詩
   08 井古綆 「夏日即事 五」七言律詩
   09 謝斧 「夏日即事 三」五言律詩
   10 明鳳 「夏日即事 一(過東海北陸道)」七言絶句
   11 明鳳 「夏日即事 二(於 倶利伽羅鳳凰殿)」七言絶句
   12 明鳳 「夏日即事 三(早苗風景點描)」七言律詩
   13 明鳳 「夏日即事 四(憂憤日本國首相之五月病)」七言絶句
   14 明鳳 「夏日即事 五(勵學徒之五月病)」七言絶句
   15 兼山 「夏日即事」七言絶句
   16 謝斧 「夏日即事 四」五言律詩
   17 謝斧 「夏日即事 五」五言律詩
   18 Y.T 「夏夜即事」七言絶句
   19 井古綆 「夏日即事 六」七言絶句
   20 井古綆 「夏日即事 七」七言絶句
   21 井古綆 「夏日即事 八」七言絶句
   22 井古綆 「夏日即事 九」七言律詩
   23 謝斧 「夏日即事 六」五言律詩
   24 觀水 「夏日即事 (一)」七言律詩
   25 觀水 「夏日即事 (二)」七言絶句
   26 博生 「夏日即事」七言絶句
   27 道佳 「夏日即事」七言絶句
   28 常春 「夏日即事 (一)」七言絶句
   29 常春 「夏日即事 (二)」七言律詩
   30 点水 「夏日即事」七言絶句
   31 忍夫 「夏日即事 一」七言絶句
   32 忍夫 「夏日即事 二」七言絶句
   33 忍夫 「夏日即事 三」七言絶句
   34 井古綆 「夏日即事 十(日本新内閣誕生)」七言律詩
   35 杜正 「夏日即事」七言律詩
   36 鮟鱇 「夏日即事」五言律詩
   37 風雷山人 「夏日即事」七言絶句
   38 黒浴@「夏日即事」七言絶句
   39 禿羊 「夏日即事」七言絶句
   40 桐山人 「夏日即事」七言絶句




























[01]
投稿者 謝斧 

[夏日即事(初夏即事)]

霽朝晨起捲疎簾   霽朝晨起して疎簾を捲けば

茂樹陰陰風日恬   茂樹陰陰 風日恬なり

燕子飛飛穿草屋   燕子飛飛 草屋を穿ち

槿花族族映茅檐   槿花族族 茅檐に映ず

開扉掃径迎詩友   扉を開き径を掃って 詩友を迎え

曳屐扶筇過酒帘   屐を曳き筇に扶られて 酒帘を過ぐ

水灔山濃未侵暑   水灔よひ山濃やかに 未だ暑を侵さざるも

還逢三伏赫曦嚴   還三伏に逢っては 赫曦嚴し




 最初に戻る



































[02]
投稿者 謝斧 

[夏日即事]

午餘隠几下疎簾   午餘几に隠りて疎簾を下し

倦読南華睡味添   南華読み倦みて 睡味添ふ

栩栩戯飛胡蝶舞   栩栩戯飛し 胡蝶舞ひ

悠悠游泳白鯈潜   悠悠游泳して 白鯈潜む

紫陽花発心身穏   紫陽花発いて 心身穏やか

梅子雨収風日恬   梅子雨収まりた 風日恬かなり

破壁貧居涼意足   破壁の貧居 涼意足く

一生迂癖亦何嫌   一生の迂癖 亦何んぞ嫌がわん



「梅子雨」: 梅雨
「嫌」: 嫌疑 疑う

「白鯈」: はや 『荘子』秋水


 最初に戻る



































[03]
投稿者 深溪 

[夏日即事]

旱雲溽暑汗頻霑   旱雲 溽暑 汗頻りに霑す

矮屋紙窓紅射簾   矮屋の紙窓 紅簾を射る

未散晩粧三伏熱   晩粧に未だ散ぜず  三伏の熱

夢醒冷器烈寒砭   冷器に夢は醒む  烈寒砭す



〇 盛夏になれば毎年のことながら、こんな銷夏の法でしょう。

 最初に戻る



































[04]
投稿者 井古綆 

[夏日即事 一]

權家跌蕩餘樽俎   権家 跌蕩てっとう 樽俎そんそを余し

弱者辛酸苦米鹽   弱者 辛酸 米塩に苦しむ

今夏待望參院選   今夏 待望の 参院選

幾人候補貫清廉   幾人の候補 清廉を貫くや?



「跌蕩」: しまりがなくほしいまま
「樽俎」: 酒と料理
「米塩」: 生活に必要最小限なもの



 最初に戻る



































[05]
投稿者 井古綆 

[夏日即事 二]

朱明白屋暑炎炎   朱明 白屋 暑炎々

獨作酒仙尋黒甜   独り酒仙と作って 黒甜こくてんを尋ぬ

赤帝深慈憐散士   赤帝の深慈 散士を憐れみ

涼風一陣度湘簾   涼風 一陣 湘簾しょうれんを度る




「朱明」: 夏
「黒甜」: 黒甜郷、ひるね
「赤帝」: 夏の神
「湘簾」: 原義は湘水のほとりで産する竹で編んだすだれ



 最初に戻る



































[06]
投稿者 井古綆 

[夏日即事 三(葵祭)]

藤花垂蓋作輿簾   藤花の垂蓋すいがい 輿簾よれんと作し

葵葉因縁此仰瞻   葵葉きようの因縁 此に仰瞻

盛祭千年如畫巻   盛祭 千年 画巻がかんの如く

京都五月自端嚴   京都 五月は 自ずから端厳



「輿簾」: こしのすだれ
「画巻」: 絵巻(物)
「端厳」: ただしくおごそかなこと



 最初に戻る



































[07]
投稿者 井古綆 

[夏日即事]

維新失政偽朋嫌   維新 失政 偽朋ぎほうが嫌われ

丞相威光誰仰瞻   丞相の 威光 誰か仰瞻

合從連衡名案盡   合従連衡 名案尽き

巧言令色悪魔潜   巧言令色 悪魔が潜む

權家跌蕩餘樽俎   権家 跌蕩 樽俎を余し

弱者辛酸苦米鹽   弱者 辛酸 米塩に苦しむ

今夏待望參院選   今夏 待望の 参院選

希承民意徹恭謙   こいねがわくは民意をけて 恭謙に徹するを



「偽朋」: いつわりの友。利害関係で結ばれた仲間
「合従連衡」: ここでは日米安保条約をさす
「悪魔潜」: ここでは朝令暮改をさす
「恭謙」: ここでは民意を尊重すること



 最初に戻る



































[08]
投稿者 井古綆 

[夏日即事 五]

盛夏連旬過赫炎   盛夏 連旬 赫炎に過ぎ

憐聞乳燕囀茅檐   憐れみ聞く乳燕の 茅檐に囀ずるを

消閑一刻交紅友   消閑 一刻 紅友と交わり

逸脱三杯入黒甜   逸脱 三杯 黒甜に入る

急雨潺潺覺喧噪   急雨 潺潺せんせん 喧噪にめざ

鳴雷殷殷破安恬   鳴雷 殷殷 安恬あんてんを破る

雲開倏忽虹橋泛   雲は倏忽しゅっこつと開いて 虹橋泛び

陣陣清風搖玉簾   陣々たる清風 玉簾を揺るがす




「紅友」: 酒の別名
「逸脱」: 日常の酒量を
「潺潺」: 雨の降るさま
「安恬」: 安らかで静かなさま



 最初に戻る



































[09]
投稿者 謝斧 

[夏日即事]

食少身如病   食少く 身病めるが如く

餐盤肉味嫌   餐盤 肉味嫌ふ

午餘涼気絶   午餘 涼気絶え

夏日暑威厳   夏日 暑威厳し

爽口煎茶熱   口爽やかに 煎茶熱く

怡顔索麺纖   顔怡らかに 索麺纖ふ

茅廬能袒裸   茅廬 能く袒裸になり

揺扇坐風檐   扇を揺がして風檐に坐す





 最初に戻る



































[10]
投稿者 明鳳 

[夏日即事 一(過東海北陸道)]

積翠山容更眺瞻   積翠の 山容 更に 眺瞻(ちょうせん)すれば

藤花點在好風添   藤花(とうか) 点在して 好風 添ふ

夏陰緑澗淙淙響   夏陰の 緑澗(りょくかん)は 淙々と 響き

飛越仙寰勝景濳   飛越の 仙寰(せんかん)に 勝景 潜む



「緑澗」: たに川
「仙寰」: 俗気を離れた清らかな所、仙境
「飛越」: 飛騨・越中



 最初に戻る



































[11]
投稿者 明鳳 

[夏日即事 二(於 倶利伽羅鳳凰殿)]

倶利伽羅緑樹沾   倶利伽羅に 緑樹 沾(うるお)ひ

牡丹躑躅繞藤瞻   牡丹 躑躅 藤を 繞って 瞻(み)れば

鳳凰殿苑佛恩遍   鳳凰殿の 苑に 仏恩 遍(あまね)し

五彩麗花馨更添   五彩の 麗花 馨り 更に 添ふ



「鳳凰殿」: 倶利迦羅不動尊・西之坊鳳凰殿
「瞻」: 仰ぎ観る、見上げる
「五彩」: 八重桜・牡丹・躑躅・藤・石楠花
 表記は、地名は「倶利羅」、不動尊は「倶利羅」




 最初に戻る



































[12]
投稿者 明鳳 

[夏日即事 三(早苗風景點描)]

蛙鼓俄而苗已沾   蛙鼓(あこ)俄かにして 苗は 已(すで)に 沾(うるお)ひ

薫風渡野自南添   薫風 野(や)を 渡って 南より 添ふ

農勤拭汗遙天暮   農勤(のうきん)して 汗を 拭(ぬぐ)へば 遥天は 暮れ

耡隙啜茶新月纎   耡隙(じょげき)に 茶を 啜(すす)れば 新月 繊たり

降靄盈充陰翳暗   降靄(こうあい) 盈充(えいじゅう)して 陰翳は 暗く

流螢點滅暈光濳   流蛍(りゅうけい) 点滅して 暈光(うんこう) 潜む

還家植女歸心切   家に 還る 植女(うえめ)の 帰心は 切なるも

白雨空濛幾顧瞻   白雨 空濛として 幾たびか 顧瞻す





「蛙鼓」: 蛙の鳴き声(ゲロゲロ)
「薫風」: 南風・南薫
「野」: 田圃や畑地
「農勤」: 農家の勤め(農作業)
「耡隙」: 農作業の合間
「暈光」: ぼんやりとした光
「植女」: 早乙女
「白雨」: 夕立
「顧瞻」: 顧み見上げる



 最初に戻る



































[13]
投稿者 明鳳 

[夏日即事 四(憂憤日本國首相之五月病)]

政權交代未來嚴   政権 交代するも 未来は 厳しく

經國濟民試煉濳   経国済民に 試煉は 潜む

基地問題渾沌裡   基地 問題は 渾沌の 裡(うち)

沖繩辛苦尚多添   沖縄の 辛苦 尚 多く 添ふ



「首相」: 鳩山由紀夫総理大臣
「五月病」: 五月危機 即ち 五月末迄に決着の公約



 最初に戻る



































[14]
投稿者 明鳳 

[夏日即事 五(勵學徒之五月病)]

學徒勉勵未來嚴   学徒は 勉励するも 未来は 厳しく

粒粒修身辛苦濳   粒々として 身を 修むも 辛苦は 潜む

莫厭人生當面事   厭(いと)ふ 莫(なか)れ 人生 当面の 事を

少年大志逐時添   少年の 大志は 時を 逐って 添ふもの



「粒粒」: 粒々皆辛苦(艱難辛苦)
「大志」: 少年よ大志をもて

「五月病」は「夏日即事」の詩題に似つかわしいか疑問なるも、「五月」は「夏日」の内かと愚考し、また「時事漢詩」として、敢えて拙吟を試みたものです。

 最初に戻る



































[15]
投稿者 兼山 

[夏日即事]

旱雲漾漾上陽炎   旱雲 漾漾 陽炎上る

懶出欲涼垂御簾   出づるに懶く 涼を欲して 御簾を垂る

團扇何須風亦死   團扇 何ぞ須ひん 風亦死す

北窓一枕燕南檐   北窓 一枕 燕 南檐




  団扇手にして邯鄲の午睡かな



 最初に戻る



































[16]
投稿者 謝斧 

[夏日即事 四]

良宵残午熱   良宵 午熱残り

移榻挙頭瞻   榻を移して 頭を挙げて瞻れば

燦燦垂銀漢   燦燦として銀漢垂れ

団団明彩蟾   団団として彩蟾明かなり

納涼醇酒旨   涼を納めれば醇酒旨く

成酔薄衫沾   酔を成して薄衫沾ふ

冗子多閑事   冗子閑事多く

側身能執謙   身を側てて 能く謙を執らん




「成酔薄衫沾」: 酔ったため汗が出て 薄衫が濡れる


 最初に戻る



































[17]
投稿者 謝斧 

[夏日即事 五]

今歳無春旱   今歳 春旱無く

農家収穫占   農家 収穫を占う

厭聞蛙閤閤   聞くを厭ふ 蛙の閤閤たるを

喜見麦漸漸   見るを喜ぶ 麦漸漸たり

漉漉頻揮汗   漉漉として 頻りに汗を揮ひ

劬劬常執鎌   劬劬として 常に鎌を執らん

辛勤苦蒸暑   辛勤 蒸暑に苦しむも

豐穣展眉尖   豐穣に眉尖を展ぶ




「今歳無春旱」: 今歳春旱に逢えば概ね凶作に逢う


 最初に戻る



































[18]
投稿者 Y.T 

[夏夜即事]

三伏祝融蒸玉簾   三伏の祝融 玉簾を蒸し

夕風無力暑威厳   夕風 力無く 暑威 厳なり

煩溽悩人眠不得   煩溽 人を悩まし眠を得させず

臥看繊月挂虚檐   臥して 繊月の虚檐に挂るを看る




真夏の熱帯夜を意識して、作ってみました。



 最初に戻る



































[19]
投稿者 井古綆 

[夏日即事 六]

天機異変朔風淹   天機の異変 朔風とどまり

五月春寒誰卜占   五月の春寒 誰か卜占ぼくせん

迂叟近來欣冷夏   迂叟 近来 冷夏を欣ぶも

遥思農父自恭謙   遥か農父を思へば 自ずから恭謙きょうけん




「天機」: 天の運行するからくり
「恭謙」: 慎み深いさま。(蛇足 稻の成長に思いを馳せる)



 最初に戻る



































[20]
投稿者 井古綆 

[夏日即事 七]

暖冬親愛夏怨嫌   暖冬は親愛 夏は怨嫌えんけん

亦食氷糕渇舌霑   亦 氷糕ひょうこうを食せば 渇舌うるお

赫赫驕陽更凌駕   赫々たる驕陽きょうよう 更に凌駕するは

人衝選擧氣炎炎   人は選挙にむかって 気炎々





「氷糕」: アイスクリーム

 最初に戻る



































[21]
投稿者 井古綆 

[夏日即事 八]

綸言輕薄舌端甜   綸言りんげん 軽薄 舌端あま

朝令逃辭暮改兼   朝令の逃辞は 暮改が兼ねる

選擧從前失人望   選挙従前 人望を失ひ

鳩山内閣滅譏嫌   鳩山内閣 譏嫌に滅ぶ



「綸言」: 本来は天子のおことば
「逃辞」: 逃げ口上
「陽炎」: 俳句の季語では春



 最初に戻る



































[22]
投稿者 井古綆 

[夏日即事 九]

綸言輕薄舌端甜   綸言 軽薄 舌端甜く
朝令逃辭暮改兼   朝令の逃辞は 暮改が兼ねる
踏襲金權重堕落   金権を踏襲して 堕落を重ね
非違法律忘清廉   法律に非違して 清廉を忘る
維新八月過驕傲   維新 八月 驕傲きょうごうに過ぎ
守舊雙頭識峻嚴   守旧 双頭 峻厳を識る
選擧攻防凶與吉   選挙の攻防 凶か吉か
鳩山内閣滅譏嫌   鳩山内閣 譏嫌きけんに滅す



「非違」: 法にそむく
「八月」: 八ヶ月
「驕傲」: おごりたかぶってほしいままにふるまう
「峻厳」: 来るべき参院選与党への支持率
「譏嫌」: 譏はそしる



 最初に戻る



































[23]
投稿者 謝斧 

[夏日即事]

草屋逢三伏   草屋三伏に逢い

難堪苦赫炎   堪え難し赫炎に苦しむを

階庭竹陰暗   階庭竹陰暗く 

甃砌蘚花黏   甃砌蘚花黏る

風榻軽衫脱   風榻に軽衫脱し

湯槽痩脚淹   湯槽に痩脚淹す

老慵加暑気   老慵暑気を加え

身倦口緘箝   身倦みて口緘箝す





 最初に戻る



































[24]
投稿者 觀水 

[夏日即事 (一)]

リ天白雲湧   晴天 白雲湧き

夏興十分添   夏興 十分に添ふ

吹髮風過室   髪を吹く風は室を過ぎ

哺兒燕舞檐   児を哺む燕は檐に舞ふ

深深胡蝶影   深深たり 胡蝶の影

歴歴水於   歴歴たり 水精の簾

味盡新茶冷   新茶の冷きを味わひ尽せば

南窻好黒甜   南窓 黒甜に好し




   青空に白い雲湧き
   夏らしいおもむきがある
   髪ゆらし吹き抜ける風
   餌運ぶ軒端の燕
   奥深いちょうちょの姿
   水晶のきらめくすだれ
   よく冷えたお茶を飲んだら
   窓のそば昼寝をしよう




 最初に戻る



































[25]
投稿者 觀水 

[夏日即事 (二)]

殷殷雷霆破黒甜   殷殷たる雷霆 黒甜を破り

始知妻子曳衣添   始めて知る 妻子の衣を曳いて添ふを

家庭幸福此些在   家庭の幸福 此に些か在り

亦樂雨風時入檐   亦た楽しまん 雨風の時に檐に入るを



  かみなりバリバリ鳴り出して さて昼寝から目覚めれば
  いつの間にやら妻と子が シャツ引っ張ってそばにいる
  家族と一緒のしあわせが ささやかながらここにある
  折から風にあおられて 吹き込む雨もまた楽し




 最初に戻る



































[26]
投稿者 博生 

[夏日即事]

飄然避暑坐茅簷   飄然暑を避け 茅簷に坐す

碧樹蝉声心気霑   碧樹蝉声 心気霑ふ

山靜日長無客到   山静かにして日長く 客到る無し

槿花片片雨繊繊   槿花片片 雨纎纎




山荘での避暑 心しずかに過ごす
庭の白い槿の花もいつの間にか萎れ
やわらかい雨に打たれている。


 最初に戻る



































[27]
投稿者 道佳 

[夏日即事]

淀川青翠帳蓬潜   淀川 青翠の帳(ちょう)蓬(ほう)潜む

失職如何生赫炎   職を失ひ如何にして 赫炎(かくえん)に生きん

翻手命軽弾政治   手を翻し命軽んじる政治を弾じ

若流上善願東漸   流れるがごとく上善 願はくば東漸せん




 暑くなり電車にはクーラーが入り、通勤でみる淀川には、青いシートのテントに潜み、暮らしている人が増えてきています。
 職を失い、ここに住まざるを得なくなった人たちは、灼熱の夏、どのようにして生きていかれるのだろうか。
 命が大切と言いながら手を翻すように命を削り人情のない政治を弾じなくてはなりません。
 そして、「上善水のごとし」と言われるように、人間を大切にする善政が、この川べりに宿る人々にも流れ着くように、少しずつでも進んでいってほしいと心から願わざるをえません。



 最初に戻る



































[28]
投稿者 常春 

[夏日即事 (一)]

飛燕銜泥營巣簷   飛燕泥を銜み 巣簷に営なむ

水田駆械乍苗繊   水田械を駆りて 乍ち苗繊ぐ

請天須保正天柱   天に請ふ 須からく天柱を正し

安穏雷雲與夏炎   安穏なる雷雲と夏炎を保つべし





 最初に戻る



































[29]
投稿者 常春 

[夏日即事 (二)]

凍土温融雨雪霑   凍土温融して 雨雪霑ひ

近年寒暖動搖厳   近年寒暖 動揺厳し

菜園不順市場滞   菜園不順にして 市場滞り

衣帯失宜商賈猒   衣帯宜を失して 商賈猒ふ

若夏尋常農勉勵   もし夏尋常ならば 農勉励し

將秋無事稔甘甜   まさに秋無事 稔り甘甜たらん

冷房莫用資環境   冷房用いるなく環境に資し

自樂風鈴涼信簷   自ら風鈴を楽しみ 涼簷に信す





 最初に戻る



































[30]
投稿者 点水 

[夏日即事]

午下驕陽猶照檐   午下の驕陽 猶 檐を照らす

雲奔風起便搖簾   雲奔り 風起こり 便ち 簾を揺らす

沛然驟雨牽牛潤   沛然たる驟雨 牽牛潤ひ

樹上鳴蝉何處潛   樹上の鳴蝉 何處に潜む



「牽牛」: 朝顔



 最初に戻る



































[31]
投稿者 忍夫 

[夏日即事 一]

竹林茅屋掲疎簾   竹林の茅屋 疎簾を揚げれば

一枕清風不識炎   一枕の清風 炎をしらず

易入酔郷難破夢   酔郷に入るは易く、夢を破るは難し

冷茶爽快潤長髯   冷茶爽快にして長髯を潤す





 最初に戻る



































[32]
投稿者 忍夫 

[夏日即事 二]

風鈴響快動疎簾   風鈴の響き快く 疎簾を動かし

浴後麻衣暫忘炎   浴後の麻衣 しばし炎を忘れる

月下涼台真在此   月下の涼台 真ここにあり

一杯麦酒潤長髯   一杯の麦酒 長髯を潤す





 最初に戻る



































[33]
投稿者 忍夫 

[夏日即事 三]

一願就成抽吉籤   一願就成 吉籤をひき

千年神木立荘厳   千年 神木立つこと荘厳

紫陽花満青苔院   紫陽花は青苔の院に満ちて

細雨蓮池忽悦蟾   細雨の蓮池 忽ち蟾を悦ばす





 最初に戻る



































[34]
投稿者 井古綆 

[夏日即事 十(日本新内閣誕生)]

鳩山内閣退譏嫌   鳩山内閣 譏嫌きけんに退き

聽此相公言語尖   此の相公は 言語尖ると聴く

承繼驕盈識汚濁   驕盈を承継して 汚濁を識り

排除院政扮清廉   院政を排除して 清廉をよそおふ

人迎選擧低姿勢   人は選挙を迎へて 姿勢を低くするも

票從浮雲可峻厳   票は浮雲に従って 峻厳たる可し

衆庶何關爭黨派   衆庶は何ぞ関せん 党派争ふを

須衝弱者舜恩霑   須らく弱者にむかって 舜恩しゅんおんうるおふべし



「尖」: IRAKANをいう
「驕盈」: 驕って分に過ぎたことをする
「浮雲」: 悪○のたとえ。「浮雲蔽白日」より
「舜恩」: 尭舜の恩沢 



 最初に戻る



































[35]
投稿者 杜正 

[夏日即事]

三伏驕陽使下簾   三伏の驕陽 簾を下げしむ

蝉声遮止挙頭瞻   蝉声 遮止し 頭を挙げて瞻(み)る

遥雷風起駆炎熱   遥なる雷 風 起き 炎熱を駆る

白雨吹涼草樹沾   白雨 涼を吹き 草樹 沾(うるお)う




 夏の日差しの強さに 思わず簾を下げてしまった。
 ふと蝉の声が急に止まったので 頭を挙げてみる。
 遠くから雷の音が聞こえ 風が吹き出してきて 暑さを吹き飛ばした。
 すると夕立が来て あたり一面に涼しさ吹き込んきたので 草樹も生き返ったようだ。





 最初に戻る



































[36]
投稿者 鮟鱇 

[夏日即事]

碧落火雲涌,   碧落に火雲涌き,

緑陰涼意添。   緑陰に涼意添ふ。

音書辯平仄,   音書は平仄を弁じ,

壺酒洗蒸炎。   壺酒は蒸炎を洗ふ。

人作蒼蠅舐,   人 蒼蝿の舐めるとなれば,

氷如白璧霑。   氷 白璧の霑ふごとし。

蛞蝓爬臉面,   蛞蝓 臉面を爬い,

詩筆夢中粘。   詩筆 夢中に粘る。





 最初に戻る



































[37]
投稿者 風雷山人 

[夏日即事]

身清気爽捲軽簾,   身清気爽 軽簾を捲き

窓外相看鳥赴檐。   窓外に相看る 鳥、檐に赴くを

一脈薫風千樹緑,   一脈の薫風 千樹の緑

万枝采采想陶潛。   万枝采采 陶潛を想ふ





 最初に戻る



































[38]
投稿者 黒浴@

[夏日即事]

朱明尽日宙炎炎   朱明尽日 宙 炎々

巷陌騒音暑気添   巷陌の騒音 暑気添える

蝉響山門松韻爽   蝉響 山門 松韻爽やか

無須白扇意涼潜   白扇をもちいるなく 意涼 潜む





 最初に戻る



































[39]
投稿者 禿羊 

[夏日即事]

五月薫風入茆檐   五月 薫風 茆檐に入り

近林遠嶺緑烟霑   近林 遠嶺 緑烟霑ふ

樹陰坐榻閑穿篆   樹陰 榻に坐して 閑に篆を穿つ

石適印刀精且粘   石は印刀に適ひて 精且つ粘なり





 最初に戻る



































[40]
投稿者 桐山人 

[夏日即事]

墻角薔薇紛郁甜   墻角の薔薇 紛郁として甜く

竹風淅淅繞茅檐   竹風淅淅として 茅檐を繞る

翩飛双燕盤桓去   翩飛する双燕 盤桓して去れば

暮色西天夏月繊   暮色の西天に 夏月繊たり





 最初に戻る