作品番号 | 作 者 | 題 名 | 詩 形 | |
[01] | 井古綆 | 「秋暮抒情 一」 | 七言絶句 | |
[02] | 井古綆 | 「秋暮抒情 二」 | 七言絶句 | |
[03] | 井古綆 | 「秋暮抒情 三」 | 七言絶句 | |
[04] | 井古綆 | 「秋暮抒情 四」 | 七言律詩 | |
[05] | 井古綆 | 「秋暮抒情 五」 | 七言律詩 | |
[06] | 井古綆 | 「秋暮抒情 六」 | 七言律詩 | |
[07] | 明鳳 | 「秋暮抒情 一(都會的赤提燈)」 | 七言絶句 | |
[08] | 明鳳 | 「秋暮抒情 二(風之盆戀歌)」 | 七言絶句 | |
[09] | 明鳳 | 「秋暮抒情 三(日本政權交代)」 | 七言絶句 | |
[10] | 明鳳 | 「秋暮抒情 四(政權交代、又)」 | 五言律詩 | |
[11] | 謝斧 | 「抒情秋暮 一」 | 七言律詩 | |
[12] | 謝斧 | 「抒情秋暮 十三首連作之一」 | 五言絶句 | |
[13] | 謝斧 | 「抒情秋暮 十三首連作之二」 | 五言絶句 | |
[14] | 謝斧 | 「抒情秋暮 十三首連作之三」 | 五言絶句 | |
[15] | 謝斧 | 「抒情秋暮 十三首連作之四」 | 五言絶句 | |
[16] | 謝斧 | 「抒情秋暮 十三首連作之五」 | 五言絶句 | |
[17] | 謝斧 | 「抒情秋暮 十三首連作之六」 | 五言絶句 | |
[18] | 謝斧 | 「抒情秋暮 十三首連作之七」 | 五言絶句 | |
[19] | 謝斧 | 「抒情秋暮 十三首連作之八」 | 五言絶句 | |
[20] | 謝斧 | 「抒情秋暮 十三首連作之九」 | 五言絶句 | |
[21] | 謝斧 | 「抒情秋暮 十三首連作之十」 | 五言絶句 | |
[22] | 謝斧 | 「抒情秋暮 十三首連作之十一」 | 五言絶句 | |
[23] | 謝斧 | 「抒情秋暮 十三首連作之十二」 | 五言絶句 | |
[24] | 謝斧 | 「抒情秋暮 十三首連作之十三」 | 五言絶句 | |
[25] | Y.T | 「秋夜旅情」 | 七言絶句 | |
[26] | 展陽 | 「秋暮抒情」 | 七言絶句 | |
[27] | 風散士 | 「秋暮抒情 其一」 | 七言絶句 | |
[28] | 風散士 | 「秋暮抒情 其二」 | 七言絶句 | |
[29] | 風散士 | 「秋暮抒情 其三」 | 七言絶句 | |
[30] | 風散士 | 「秋暮抒情 其四」 | 七言絶句 | |
[31] | 風散士 | 「秋暮抒情 其五」 | 七言律詩 | |
[32] | 風散士 | 「秋暮抒情 其六」 | 七言律詩 | |
[33] | 風散士 | 「秋暮抒情 其七」 | 七言律詩 | |
[34] | 兼山 | 「秋暮抒情(放生會)」 | 七言絶句 | |
[35] | 常春 | 「秋暮抒情 其一」 | 七言絶句 | |
[36] | 常春 | 「秋暮抒情 其二」 | 七言絶句 | |
[37] | 常春 | 「秋暮抒情 其三」 | 七言絶句 | |
[38] | 常春 | 「秋暮抒情 其四」 | 七言絶句 | |
[39] | 謝斧 | 「秋暮抒情 二」 | 五言律詩 | |
[40] | 博生 | 「秋暮抒情」 | 七言絶句 | |
[41] | 杜正 | 「秋暮抒情」 | 七言絶句 | |
[42] | 点水 | 「秋暮抒情」 | 七言絶句 | |
[43] | 張 士杰(日本在住) | 「秋暮抒情(己丑秋分日游宇治平等院)」 | 七言律詩 | |
[44] | 鮟鱇 | 「秋暮抒情 一」 | 七言律詩 | |
[45] | 鮟鱇 | 「秋暮抒情 二」 | 七言律詩 | |
[46] | 鮟鱇 | 「秋暮抒情 三 游立陶宛参加詩祭偶成」 | 七言律詩 | |
[47] | 玄齋 | 「秋暮抒情」 | 七言絶句 | |
[48] | 觀水 | 「秋暮抒情」 | 七言絶句 | |
[49] | 菊太郎 | 「秋暮抒情」 | 七言絶句 | |
[50] | 桐山人 | 「秋暮抒情 其一」 | 七言絶句 | |
[51] | 桐山人 | 「秋暮抒情 其二」 | 七言絶句 | |
[52] | 黒浴@ | 「秋夜漫歩」 | 七言絶句 | |
[53] | 忍夫 | 「秋暮抒情 其一」 | 七言絶句 | |
[54] | 忍夫 | 「秋暮抒情 其二」 | 七言律詩 | |
[55] | 忍夫 | 「秋暮抒情 其三」 | 七言絶句 | |
[56] | 禿羊 | 「秋暮抒情」 | 七言絶句 |
[秋暮抒情 一]
過疎村落近山林、 過疎の村落 山林に近く、
熟柿連珠任野禽。 熟柿 連珠 野禽に任す。
追想少時貪數個、 追想す少時 数個を貪(むさぼ)るを、
彎彎萬朶感懐深。 弯(わん)々たる万朶 感懐深し。
「弯弯」: 枝が撓っているさま。
最初に戻る
[02]
投稿者 井古綆
[秋暮抒情 二]
老來牛歩訪辭林、 老来 牛歩 辞林を訪ふ、
蒙昧廿年惺世箴。 蒙昧 廿年 世箴を惺(さと)る。
案上常思浪仙苦、 案上 常に思ふ 浪仙の苦、
尊前未忘樂天吟。 尊前 未だ忘れず 楽天の吟。
「浪仙」: 賈島。
最初に戻る
[03]
投稿者 井古綆
[秋暮抒情 三]
黌庭雙木作清陰、 黌庭(こうてい)の双木 清陰を作す、
止杖瞻望耐正襟。 杖を止めて瞻望すれば 襟を正すに耐えたり。
曾育廟前楷樹種、 曾て廟前に育てし 楷樹の種、
長繁閑谷説仁心。 長く閑谷(しずたに)に繁りて 仁心を説く。
「黌庭」: 校庭。
「閑谷」: 閑谷学校。
「廟前」: 中国山東省曲阜にある孔子廟に植えてある楷の樹の種を持ち帰ってここに植えたといわれる。
最初に戻る
[04]
投稿者 井古綆
[秋暮抒情 四]
鳩山首相誕生臨、 鳩山首相 誕生に臨み、
就任宣言示指針。 就任宣言 指針を示す。
連立政權矛盾満、 連立政権 矛盾満ち、
巧言令色信疑深。 巧言令色 信疑深し。
願憐貧者澆千慮、 願わくは貧者を憐れんで 千慮を澆(そそ)ぎ、
勿向高齡惜萬金。 高齢に向かって 万金を惜しむ勿れ。
友愛傳承弘博愛、 友愛の伝承は 博愛に弘め、
須衝世界説仁心。 須らく世界に衝(むか)って 仁心を説くべし。
「矛盾」: 院政・三党党是強行一致など。
「巧言令色」: 口先がうまく、顔色をやわらげて人を喜ばせ、こびへつらうこと。仁の心にかけるとされる。
「信疑」: 信じてよいやら疑ってよいやら。
「友愛」: 祖父故鳩山一郎翁が公職追放された昭和21年頃に提唱した身内だけの友愛。
最初に戻る
[05]
投稿者 井古綆
[秋暮抒情 五]
漱石枕流常陸沈、 漱石枕流 常に陸沈、
偸生陋巷不端襟。 陋巷に生を偸んで 襟を端(ただ)さず。
身如精衛運泉布、 身は精衛の如く 泉布を運び、
居似轉蓬迷指針。 居は転蓬に似て 指針迷ふ。
策士甘言忘洗耳、 策士の甘言 洗耳を忘れ、
賢人苦語謝仁心。 賢人の苦語 仁心を謝す。
徒加馬齒垂華甲、 徒に馬歯を加えて 華甲に垂(なんなん)とす、
秋夜尊前悔恨深。 秋夜 尊前 悔恨深し。
「漱石枕流」: 晋の孫楚の負け惜しみの故事。
「陸沈」: 頑固で世の移り変わりを知らないこと。
「精衛」: 古代中国の想像上の鳥。夏をつかさどる炎帝の娘が東海におぼれ、化して精衛となり、
常に西山の木石をくわえて運び東海を埋めようとしたが、效が無かったという。
「泉布」: お金。
「転蓬」: 根から離れ、風のまにまに転がっていくよもぎ。
「洗耳」: 穢れたことを聞いて耳を洗い清める。
「華甲」: 還暦。
最初に戻る
[06]
投稿者 井古綆
[秋暮抒情 六]
恐慌激烈氣消沈、 恐慌 激烈 気消沈、
此迓闌秋何放吟。 此に闌秋を迓(むか)ふるも 何ぞ放吟。
物質文明崩一瞬、 物質文明は 一瞬に崩れ、
精神社會勝千金。 精神社会は 千金に勝る。
奸商壟斷求高利、 奸商は壟断(ろうだん)して 高利を求め、
策士狂奔忘世箴。 策士は狂奔して 世箴(せしん)を忘る。
釋老先師與基督、 釈老と先師とキリストと、
古來随所説仁心。 古来 随所に 仁心を説く。
「闌秋」: 深秋。
「壟断」: うまく利益をひとりじめにすること。故事。
「世箴」: 世の中の戒め。
「釈老」: 釈迦と老子。
「先師」: 孔子。
最初に戻る
[07]
投稿者 明鳳
[秋暮抒情 一(都會的赤提燈)]
秋色街衢返照沈 秋色(あきいろ)の 街衢(がいく)に 返照 沈み
層廈屋結新陰 高層の 厦屋(かおく)は 新陰を 結ぶ
白商日暮親燈火 白商の 日暮れは 灯火に 親しみ
小飲團欒愁自深 小飲の 団欒は 愁ひ 自ずから 深し
秋の日暮れ、ビルの谷間に夕陽が沈み、路傍の赤提灯が勤め帰りの人々を誘っている。その風景は、正に「秋暮」の哀愁を醸し出して居る。
「街衢」: まち、ちまた
「廈屋」: ビル建物
「小飲」: 小さな酒もり
最初に戻る
[08]
投稿者 明鳳
[秋暮抒情 二(風之盆戀歌)]
胡弓弦奏客魂侵 胡弓の 弦奏に 客魂(かくこん)侵し
日暮陂阡幻舞陰 日暮 陂阡(さかみち)に 幻舞の 陰
幽暗列聨娟踊接 幽暗の 列聯に 娟踊(けんよう)接(つづ)き
哀愁閉瞼戀情深 哀愁に 瞼(まぶた)を 閉づれば 恋情 深し
日本の歌手、菅原洋一がかつて歌った「八尾・風の盆 恋唄」は、その歌詞に「あんな哀しい夜祭りが、世界の何処にあるだろう・・・」と歌うが如く、「秋暮の哀愁抒情」は、これぞ秀逸と謂う可きか。
最初に戻る
[09]
投稿者 明鳳
[秋暮抒情 三(日本政權交代)]
人心動處願方深 人心の 動く 処 願ひは 方(まさ)に 深く
選擧一票公約任 選挙の 一票は 公約に 任(た)ふ
民意逆風吹不盡 民意の 逆風は 吹いて 尽きず
政權交代到于今 政権の 交代 今に 到る
9月16日新政権が成立して、55年体制の政権が50数年振りに交代した。これも「秋暮の抒情」の一つと言うべきか。
最初に戻る
[10]
投稿者 明鳳
[秋暮抒情 四(政權交代、又)]
政權交代日 政權 交代するの 日
期待意殊深 期待する 意は 殊に 深し
公約須遵守 公約は 須(すべか)らく 遵守(じゅんしゅ)すべきも
工程何處尋 工程は 何れの 処にか 尋ねん
官僚時腹背 官僚は 時には 腹背(ふくはい)するも
能吏必登臨 能吏は 必ず 登臨せよ
鴻鵠選良志 鴻鵠(こうこく)は 選良の 志
可排燕雀心 排すべきは 燕雀(えんじゃく)の 心
政権交代して「新政権」の前途は、「面従腹背」の官僚体制を如何に改革するか!
はたまた、選良たる度量は「燕雀 いずくんぞ 鴻鵠の志を 知らんや」の大計を 速やかに如何敷設出来るか!
マニフェストに掲げた公約の実行如何が、「秋暮の期待」を背負って居るであろう。
最初に戻る
[11]
投稿者 謝斧
[抒情秋暮]
日暮山行宿梵林 日暮山行して梵林に宿し
等閑世事老僧尋 世事を等閑して老僧を尋ぬ
驚風赤鯉跳池面 風に驚きし赤鯉は池面を跳ね
呑露青蜩啼樹陰 露を呑みし青蜩は樹陰に啼く
敲句支頤感秋早 句を敲き頤を支えては秋を感ずること早く
坐階遊目抒情深 階に坐し目を遊ばせては情を抒ること深し
獨哀老逼親朋少 獨り哀しむ 老逼りて 親朋少に
霜葉蕭疎傷我心 霜葉蕭疎 我心を傷ましむ
霜葉蕭疎に我が老残せしを思う。
最初に戻る
[12]
投稿者 謝斧
[抒情秋暮 十三首連作之一]
石磴紅楓寺 石磴 紅楓の寺
杖藜昏暮尋 杖藜 昏暮に尋ぬ
詩人値秋早 詩人 秋に値ふこと早く
山館暫登臨 山館 暫く登臨す
最初に戻る
[13]
投稿者 謝斧
[抒情秋暮 十三首連作之二]
秋暮牽愁足 秋暮愁ひを牽くこと足(おお)く
讀書聊慰心 読書聊(いささ)か心を慰さむ
等閑世情事 等閑す 世情の事
頑質未浮沈 頑質未だ浮沈せず
「浮沈」: 俗世間の流れに順応した行動をとる
與與浮沈而取栄名哉
最初に戻る
[14]
投稿者 謝斧
[抒情秋暮 十三首連作之三]
鏡中已秋髪 鏡中已みに秋髪
老逼病頻侵 老い逼りて 病頻に侵す
舊友無消息 舊友消息無く
暮愁情那禁 暮愁情那んぞ禁(た)へん
最初に戻る
[15]
投稿者 謝斧
[抒情秋暮 十三首連作之四]
老來慵世事 老来世事慵し
却喜雨霖霖 却って喜ぶ 雨霖霖たるを
謝客空斎裡 客を謝す空斎の裡
閑窓秋意深 閑窓秋意深し
最初に戻る
[16]
投稿者 謝斧
[抒情秋暮 十三首連作之五]
秋暮扶藜杖 秋暮藜杖に扶けられ
来遊碧水潯 来たり遊ぶ 碧水の潯
傭舟回楫去 舟を傭ひ 楫を回して去れば
急瀬使人瘖 急瀬人をして瘖せしむ
最初に戻る
[17]
投稿者 謝斧
[抒情秋暮 十三首連作之六]
秋颯新涼好 秋颯 新涼好く
堤塘獨自斟 堤塘 獨り自づから斟む
田翁閑事足 田翁閑事足く
遊目数帰禽 目を遊ばせて帰禽を数ふ
最初に戻る
[18]
投稿者 謝斧
[抒情秋暮 十三首連作之七]
詩人例窮苦 詩人例として窮苦し
破屋暮寒侵 破屋 暮寒侵す
何耐秋風冷 何んぞ耐へん 秋風の冷かなるを
應須理舊衾 應に須からく舊衾を理むべし
最初に戻る
[19]
投稿者 謝斧
[抒情秋暮 十三首連作之八]
間裏驚秋切 間裏 秋に驚くこと切に
酔来壞舊深 酔ひ来たれば 旧を壞ふこと深し
暮寒悲悼引 暮寒 悲悼を引く
捜句少知音 句を捜すも 知音少なり
最初に戻る
[20]
投稿者 謝斧
[抒情秋暮 十三首連作之九]
坐詩愉雅趣 詩に坐して 雅趣を愉しみ
因酒散幽襟 酒に因って 幽襟散ず
秋暮蝸廬靜 秋暮 蝸廬靜かに
苦嫌俗務侵 苦だ嫌ふ 俗務侵すを
最初に戻る
[21]
投稿者 謝斧
[抒情秋暮 十三首連作之十]
耳裏霜鐘寂 耳裏 霜鐘寂
眼前楓樹森 眼前 楓樹森
秋風何洌洌 秋風 何んぞ洌洌たり
日暮易傷心 日暮 傷心易し
最初に戻る
[22]
投稿者 謝斧
[抒情秋暮 十三首連作之十一]
人事無迎意 人事 意を迎ふる無く
世情難称心 世情 心称へ難し
秋日禅庵晩 秋日 禅庵の晩
坐覚老駸駸 坐ろ覚ゆ 老駸駸たり
最初に戻る
[23]
投稿者 謝斧
[抒情秋暮 十三首連作之十二]
掃径迷秋蝶 径を掃へば 秋蝶迷ひ
開扉帰暮禽 扉を開けば 暮禽帰る
詩人感秋早 詩人秋を感ずること早く
停策撚髭吟 策を停めて 髭を撚りて吟ず
最初に戻る
[24]
投稿者 謝斧
[抒情秋暮 十三首連作之十三]
机上蜘蛛網 机上 蜘蛛の網
庭中蟋蟀吟 庭中 蟋蟀の吟
蝸廬可容膝 蝸廬 膝を容るべし
夜坐冷衣襟 夜坐 衣襟冷かなり
最初に戻る
[25]
投稿者 Y.T
[秋夜旅情]
碧天明鏡夕沈沈 碧天 明鏡 夕べ 沈沈
客舎蕭条思不禁 客舎 蕭条 思いに禁(たえ)ず
無奈家園路千里 奈(いかん)ともする無し 家園 路 千里
殘蛩啼露旅愁侵 残蛩 露に啼いて 旅愁を 侵す
最初に戻る
[26]
投稿者 展陽
[秋暮抒情]
夕映風光惜日沈 夕映 風光 日の沈むを惜しむ
山腰一望葉紅侵 山腰一望 葉が紅に侵す
静宵月影新涼動 静宵月影 新涼動く
独倚窗頭抱膝吟 独り窓頭に凭れ 膝を抱えて吟ず
[訳]
夕焼けの景色は日が沈むのを惜しむ
山の中腹は見渡す限り 葉が紅に広がる
静かな宵の月影 初秋の涼しさが動く
独り窓際に凭れて 膝を抱えて吟ずる
最初に戻る
[27]
投稿者 風散士
[秋暮抒情 其一]
春將漉t描濃淡、 春は緑葉を将って 濃淡を描き、
秋作紅楓變淺深。 秋は紅楓と作って 浅深に変わる。
萬物榮枯有眞理、 万物の栄枯に 真理有り、
自然經典説禪心。 自然の経典 禅心を説く。
最初に戻る
[28]
投稿者 風散士
[秋暮抒情 其二]
月庭啾喞亂蛩吟、 月庭 啾喞 乱蛩吟じ、
吟使凡愚戒慢心。 吟は 凡愚を使て 慢心を戒めしむ。
繙閲詩書詢尚友、 詩書を繙閲して尚友を詢(と)へば、
青燈一穂夜沈沈。 青燈 一穂 夜沈沈。
「詢」: 問。
最初に戻る
[29]
投稿者 風散士
[秋暮抒情 其三]
衆芳搖落早寒侵、 衆芳揺落して 早寒侵し、
節過重陽霜露深。 節は重陽を過ぎて 霜露深し。
獨在東籬留正色、 独り東籬に在って 正色を留め、
黄花一簇説驕心。 黄花 一簇 驕心を説く。
最初に戻る
[30]
投稿者 風散士
[秋暮抒情 其四]
重陽節過作秋霖、 重陽の節は過ぎて 秋霖と作り、
宿夕空聽檐滴音。 宿夕 空しく聴く 檐滴の音。
馳思殘生雑愁雨、 残生に思ひを馳せれば 愁雨に雑じり、
故搖老境注虚心。 故(ことさら)に老境を揺るがして 虚心に注ぐ。
最初に戻る
[31]
投稿者 風散士
[秋暮抒情 其五]
卒業以來倶盍簪、 卒業 以来 倶に盍簪(こうしん)、
杪秋晴夕返知音。 杪秋 晴夕 知音に返る。
東方西地分疇昔、 東方 西地 畴昔に分かれ、
悪友良朋集現今。 悪友 良朋 現今に集る。
美酒三杯回肺腑、 美酒 三杯 肺腑に回り、
名詩一詠打塵心。 名詩 一詠 塵心を打つ。
紅樓月照清宵宴、 紅楼 月は照らす 清宵の宴、
老去尋盟勝萬金。 老去 尋盟 万金に勝る。
「盍簪」: 友人の会合、仄韻を借用。
最初に戻る
[32]
投稿者 風散士
[秋暮抒情 其六]
逍遥細徑聽鯨音、 細径を逍遥して 鯨音を聴き、
音誘迷途續竹陰。 音は迷途に誘(いざな)ひ 竹陰に続く。
再訪山門連善道、 再び山門を訪へば 善道に連なり、
已忘俗世友遊禽。 已に俗世を忘れて 遊禽を友とす。
曾將緑葉描濃淡、 曾て緑葉を将って 濃淡を描き、
茲作紅楓變淺深。 茲に紅楓と作って 浅深に変わる。
萬物榮枯有眞理、 万物の栄枯に 真理有り、
自然經典説禪心。 自然の経典 禅心を説く。
最初に戻る
[33]
投稿者 風散士
[秋暮抒情 其七]
清涼如水入塵襟、 清涼水の如く 塵襟に入り、
節使凡愚戒慢心。 節は凡愚を使て 慢心を戒めしむ。
顧思三餘空看過、 顧思すれば 三余 空しく看過、
蘇醒四望已深陰。 蘇醒して四望すれば 已に深陰。
東籬蟲語徐徐絶、 東籬の虫語は 徐徐に絶へ、
西嶺蟾光冉冉沈。 西嶺の蟾光は 冉冉と沈む。
繙閲詩書詢尚友、 詩書を繙閲して 尚友を詢(と)へば、
青燈一穂夜蕭森。 青燈 一穂 夜蕭森。
「蘇醒」: われにかえる。
「蟾光」: 月の光。
「詢」: 問。
「蕭森」: しずかでものさびしいさま。
最初に戻る
[34]
投稿者 兼山
[秋暮抒情(放生會)]
善男善女禱無心 善男 善女 無心に禱り
幡幟翻風作壁林 幡幟 翻風 壁林を作す
後日何爲人影尠 後日 何爲れぞ 人影尠く
秋陰冷氣暮雲深 秋陰 冷気 暮雲深し
福岡筥崎八幡宮の放生会は、博多どんたく、博多山笠と並び称される「博多三大祭」の一つである。
博多では「梨も柿も放生会(ほうじょうや」と言い、七日七夜、門前市を為し、多くの人出がある。
「放生会 過ぎ 神苑に 人影なし」
最初に戻る
[35]
投稿者 常春
[秋暮抒情 其一]
雨霽無雲月色深 雨霽れて 無雲 月色深し
風微草濕馬鈴音 風微かに草湿ほひ 馬鈴(鈴虫)の音
仲秋相酌新情感 仲秋 相酌せば 情感新たなり
好好糟糠半百心 好好 糟糠 半百の心
最初に戻る
[36]
投稿者 常春
[秋暮抒情 其二]
一水鵲橋牛女愔 一水 鵲橋 牛女の愔
滿天燦燦散銀金 満天 燦々 銀金散る
秋宵追憶驚星歴 秋宵 追憶す 星歴に驚きしを
衰老如何曖曃今 衰老 如何せん 曖曃の今
最初に戻る
[37]
投稿者 常春
[秋暮抒情 其三]
村社團欒新饗斟 村社 団欒 新饗の斟
幼童鼓笛載輿尋 幼童 鼓笛 載輿を載せて尋ぬ
暮秋例祭衰年歳 暮秋の例祭 年歳衰へ
鳩聚媼翁清夜吟 鳩聚の媼翁 清夜の吟
最初に戻る
[38]
投稿者 常春
[秋暮抒情 其四]
底事文明大氣侵 なに事ぞ 文明 大気侵すとは
仲秋尚暑聚蚊淫 仲秋 尚暑く 聚蚊淫す
難題山積連携議 難題 山積 連携の議
纔發愁眉進取音 愁眉 纔かに発く 進取の音
最初に戻る
[39]
投稿者 謝斧
[秋暮抒情]
衰残似霜葉 衰残霜葉の似く
老病忽相侵 老病忽ち相侵さん
破屋霜敷白 破屋霜は白を敷き
頽垣菊砕金 頽垣菊は金を砕く
途窮未掻首 途窮まるも未だ首を掻かず
計拙少傷心 計拙なるも傷心少なし
何事秋風裡 何事ぞ秋風の裡
偏牽愁意深 偏へに愁意を牽くこと深し
「霜」が同字重出です。
投稿前は衰残似枯葉にしたのですが、「衰残」と枯れるではくどいようなので「霜」にしました。
破屋霜敷白 頽垣菊砕金
「破屋」「頽垣」は共に我が身を擬したものです。形容枯槁するも心は未だ朽ちずというところです。
最初に戻る
[40]
投稿者 博生
[秋暮抒情]
日入西山村里陰 日 西山に入り 村里陰る
田夫仰視動歸心 田夫 仰視して帰心動く
銀芒石蒜秋郊路 銀芒 石蒜 秋郊の路
爽気涼風吹素襟 爽気 涼風 素襟を吹く
野良仕事を終えた農夫は薄暮の秋草茂る村道を快い風に吹かれて、ゆるゆると家路を辿る。
最初に戻る
[41]
投稿者 杜正
[秋暮抒情]
秋盡全山落葉深 秋尽(しゅうじん) 全山 落葉 深し
一江如矢勢流音 一江 矢の如く 勢流の音
惜陰遡上歸魚躍 惜陰 遡上(そじょう) 帰魚 躍(おど)る
千里離家郷涙心 千里 家を離れ 郷涙(きょうるい)の心
秋も深まり、山の木の葉も落ちた。
川には、鮭の遡上が見られる。
鮭があまりにも一生懸命 川の上流に帰るのを見ていると、自分もふるさとに帰りたくなる。
最初に戻る
[42]
投稿者 点水
[秋暮抒情]
澄徹旻天夕日沈 澄徹せる旻天に 夕日は沈み
西風落葉響空林 西風は葉を落とし 空林に響く
徐看宋玉窓前坐 宋玉を徐に看て 窓前に坐す
冷氣流來愁意深 冷氣 流來し 愁意 深し
最初に戻る
[43]
投稿者 張 士杰(日本在住)
[秋暮抒情(己丑秋分日游宇治平等院)]
宇治山間彼岸臨 宇治山の間に、彼岸臨み
鳳凰堂上鳳凰吟 鳳凰堂の上は、鳳凰吟ず
祥雲靄靄飛天女 祥雲、靄靄として、天女飛(あそ)び
玉指繊繊繞法音 玉指、繊繊として、法音繞(まつわ)る
阿字水清沈翡翠 阿字の水清し、翡翠沈み
弥陀相好耀檀金 弥陀の相好し、檀金耀く
曼珠沙瓣紅如血 曼珠沙(まんじゅしゃげ)の瓣(はなびら)、血の如く紅し
一震梵鐘醒俗心 一震の梵鐘、俗心を醒(さ)める
秋の彼岸の時節に、宇治平等院を見物に行った。
其の時、空青くて風清し。阿字池の畔の彼岸花が鮮やかに咲き、彼岸の鳳凰堂の阿弥陀如来の御顔が荘厳たり、それに、鳳翔館内にて雲中供養菩薩、金銅鳳凰、梵鐘を眼にして、宛も極楽浄土に身を置かれたような気がし、塵心一洗した。是に感じられ、七言の一律を吟詠した。
[秋暮抒情 一]
有人目送夕陽沈, 人ありて夕陽の沈むを目送し,
將老異ク思故林。 将に異郷に老いんとして故林を思う。
迎月清風渡湖水, 月を迎えれば清風 湖水を渡り,
傾杯美酒洗塵襟。 杯を傾ければ美酒 塵襟を洗う。
散官少事長詩筆, 散官 事少なくして詩筆に長じ,
虚器多情傷客心。 虚器 情多くして客心を傷む。
笑對醉魔誑韻士, 笑って酔魔の韻士を誑かすに対し,
零頭碎腦漫愁吟。 零頭砕脳 漫りに愁吟す。
「虚器」: 役にたたない道具。ここでは,散官の異名。
「零頭砕脳」: からっぽの頭,砕けた脳
最初に戻る
[45]
投稿者 鮟鱇
[秋暮抒情 二]
時有散官常正襟, 時に散官ありて常に襟を正し,
宦游萬里到山陰。 宦遊万里 山陰に到る。
峰高邊土收斜日, 峰は辺土に斜日を収めて高く,
人似晩鴉歸故林。 人は晩鴉の故林に帰るに似る。
仰月思ク傷客意, 月を仰いで郷(ふるさと)を思い客意を傷め,
低頭傾酒洗灰心。 頭を低(た)れて酒を傾け灰心を洗う。
無言回憶生涯處, 言なく生涯を回憶するところ,
蛩雨蕭蕭秋氣深。 蛩雨蕭蕭として秋気深し。
最初に戻る
[46]
投稿者 鮟鱇
[秋暮抒情 三 游立陶宛参加詩祭偶成]
俳人信口又披襟, 俳人 口に信(まか)せまた襟を披(ひら)き
維尓爾斯詩祭吟。 維尓爾斯(ヴィルニュス)の詩祭に吟ず。
碧眼花容唇瀝蜜, 碧眼の花容 唇は蜜を瀝(そそ)ぎ,
K膚韻士手師心。 K膚の韻士 手は心を師とす。
天知世界多佳句, 天は知る 世界に佳句多く,
地有交流擅好音。 地にあり 交流 好音を擅(ほしいまま)にす。
月下餘情傾緑酒, 月下に情を余して緑酒を傾ければ,
歡談嘩笑到更深。 歓談嘩笑 更深に到る。
立陶宛:リトアニア。維尓爾斯:リトアニアの首都ヴィルニュス。
リトアニアでは毎年秋に,かつてドイツ騎士団の侵略を撃退したドルスキニンカイで詩祭が開かれており,今年はその20回目。ヴィルニュスが今年のヨーロッパ文化首都に指定されたことも踏まえ,「ドルスキニンカイ詩の秋と第五回世界俳句協会大会2009」として,世界の俳人が招かれて俳句の朗読を競う詩祭となりました。エントリーした俳人は世界18か国47人。日本からは世界俳句協会のディレクター夏石番矢ほか12人。
わたしは,世界俳句協会の一員として,漢語俳句(漢俳五七五,曄歌三四三,その他自由律四四三,四二三など)10句を,ピンインと英語で読んできました。リトアニア語訳の朗読は,翻訳者や詩祭の司会者でした。
朗読の機会は,四回ありましたが,ヴィルニュスの聖カトリーヌ教会の,オーケストラも載る大きな舞台での朗読がいちばん楽しかったです。
律詩の朗読ともなると,英訳も大変ですし,朗読の練習も大変。しかし,俳句ほどの長さであれば,万事さほどのことではありません。
俳句が世界に広まった理由のひとつに,翻訳が容易な俳句の超言語性,ということもあるかと思います。
最初に戻る
[47]
投稿者 玄齋
[秋暮抒情]
日長茅屋薄寒侵 日長くして 茅屋 薄寒侵し
一穂青燈照夕陰 一穂の青燈 夕陰を照らす
勿謂病窗秋色老 謂ふ勿れ 病窓の秋色老ゆるを
胸中切問有冰心 胸中 切に冰心有るを問はん
「冰心」: 氷のように澄み切った混じり気のない心。
王昌齢『芙蓉樓送辛漸』「一片冰心在玉壺」
最初に戻る
[48]
投稿者 觀水
[秋暮抒情]
古來秋月有詩心 古来 秋月 詩心有って
清夜使人求好吟 清夜 人をして好吟を求めしむ
不若我携妻與子 若かず 我の妻と子とを携へて
江邊長送夕陽沈 江辺 長へに夕陽の沈むを送るに
秋の月には昔から もののあはれがつきもので
清らの夜にながめれば 詩を作りたくなってくる
私といえばそれよりも 女房子供の手をひいて
かわのほとりでいつまでも 沈む夕日を見ていたい
[秋暮抒情]
楓葉紛紛祇樹林 楓葉紛紛たり 祇樹林
竹陰何處噪歸禽 竹陰何れの処にか 帰禽噪がし
離郷幾歳鬢糸白 郷を離れて幾歳 鬢糸白し
幽聽暮鐘傷客心 幽かに聴く 暮鐘 客心傷む
最初に戻る
[50]
投稿者 桐山人
[秋暮抒情 其一]
風冷秋天雁影深 風冷やかにして 秋天 雁影深し
遠山暮色野煙沈 遠山の暮色 野煙沈む
清香處處誘詩客 清香 処処 詩客を誘ひ
萬朶黄英桂樹林 万朶の黄英 桂樹の林
最初に戻る
[51]
投稿者 桐山人
[秋暮抒情 其二]
野老迷途樵路侵 野老 途に迷ひて 樵路侵す
空溪澗水噪巢禽 空渓 澗水 巣禽噪ぐ
霜風凛凛山巓暮 霜風 凛凛たり 山巓の暮
天下一秋晴色深 天下 一つの秋 晴色深し
最初に戻る
[52]
投稿者 黒浴@
[秋夜漫歩]
西風颯颯暗蛩音 清風 颯颯(さつさつ) 暗蛩(あんきょう)の音
薄暮灯籠寂莫心 薄暮の灯籠 寂寞(せきばく)の心
古刹無人塵外境 古刹 人無く 塵外の境
鐘聲嫋嫋汎楓林 鐘声 嫋嫋(じょうじょう) 楓(ふう)林(りん)に汎(ただよ)ふ
最初に戻る
[53]
投稿者 忍夫
[秋暮抒情 其一]
院庭作句只虫吟 院庭 作句 ただ虫吟のみ
漸了推敲秋夜深 漸く推敲を了へて 秋夜深し
不入俗塵唯守拙 俗塵に入らず ただ拙を守り
仰觀皓月是冰心 皓月を仰観するは是冰心
最初に戻る
[54]
投稿者 忍夫
[秋暮抒情 其二]
暮秋殘菊耐寒侵 暮秋の残菊 寒の侵すに耐へ
万里飄零數簇金 万里 飄零 数簇の金
幽院愛花高士節 幽院に花を愛づるは高士の節
閑居得樂雅夫心 閑居に楽しみを得るは雅夫の心
路傍蟲韻以愁響 路傍の虫韻 愁をもって響き
軒下詩人酣飲吟 軒下の詩人 飲をほしいままにして吟ず
皓月孤然山寂歴 皓月は孤然として 山は寂歴
青灯一穂夜沈沈 青灯一穂 夜は沈沈
最初に戻る
[55]
投稿者 忍夫
[秋暮抒情 其三]
籬下愛花歓喜吟 籬下に 花を愛でて 歓喜の吟
一叢秋菊放黄金 一叢の秋菊 黄金を放つ
雲無定止悠悠去 雲は定る止り無くも 悠々と去り
只樂遙遊自在心 只遥遊を楽しみて 自在の心
最初に戻る
[56]
投稿者 禿羊
[病中思秋山]
病臥三旬獨抱衾 病臥三旬 独り衾を抱き
晴天日日恨秋深 晴天日日 秋の深まるを恨む
無聊空想遊溪岳 無聊 空しく想ふ 渓岳に遊ばんことを
錦繍無涯眼裏林 錦繍 涯無し 眼裏の林