第14回 世界漢詩同好会総会(二〇〇六年六月十八日)

 『世界漢詩同好会』の第14回総会は、六月十八日に開かれました。
 詩題(今回は『夏至』)と押韻(今回は「上平声十四寒」)として、その日までに各国の幹事サイトに投稿された詩を交流し合うものです。
 日本では、この『漢詩を創ろう』のサイトが幹事となり、皆さんの交流詩を集約、掲載します。



 日本からの参加詩です。投稿順に紹介します。


]  登龍    「夏至」          七言絶句
]  常春    「夏至」          七言絶句
]  黒浴@   「夏至」          七言絶句
]  深溪    「夏至」          七言絶句
]  嗣朗    「夏至」          七言絶句
]  鮟鱇    「夏至」          五言絶句
]  鮟鱇    「夏至」          七言絶句
]  鮟鱇    「夏至」          五言律詩
]  鮟鱇    「夏至」          七言律詩
10]  Y.T   「夏日午睡偶遇雷雨」    七言絶句
11]  明鳳    「夏至偶成」        七言絶句
12]  杜正    「夏至蹴球世界大会感慨」  七言絶句
13]  明鳳    「夏至偶成」        七言律詩
14]  菊太郎   「夏至」          七言絶句
15]  岡田嘉崇  「夏至」          七言律詩
16]  北口鐵枴  「夏至」          七言絶句
17]  藤原崎陽  「夏至」          七言律詩
18]  桐山人   「夏日登仙臺青葉城址」   七言絶句
19]  井古綆   「夏至」          七言律詩
20]  謝斧    「夏至偶成」        七言律詩


番号をクリックして下さい。















[1]
投稿者 登龍 

[夏至]

菖蒲含雨獨盤桓   菖蒲雨を含み獨り盤桓す

日在回帰掩映看   日は回帰に在るも掩映に看る

偏祷健全作豊熟   偏に祷る健全豊熟を作すを

秧風吹面暫留歓   秧風面を吹き暫く留歓す
<解説>

菖蒲の花が雨を含んで咲き、独りぶらぶら歩く
回帰線の夏至点にあるも雲が覆って掩映しているのを看る
一途に祈るばかりだ、健やかに豊年になるようにと
秧風は表面を吹き、暫く留まって楽しむ

昼が長く日照の天恩に謝し穀物の豊年に期待をかける。梅雨の時期で水も必要なので雲が太陽を覆うのも一現象としてやむを得ない

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[2]
投稿者 常春 

[夏至]

晴耕雨読剰餘寛   晴耕雨読 あり余る寛ぎ

交替陰陽長夏闌   陰陽は交替 長夏闌なり

老懶纔銜一杯酒   老いて懶く纔かに銜む一杯の酒

就床未暮起三竿   未だ暮れずして就床 起きるは三竿

<解説>

 根をつめてひとつごとに打ち込む気力衰え、読書、散歩、テレビ、庭弄り、と気を紛らせます。日は本当に長い。
そして明るい内に夕食。
以前は薄明かりで、夏は4時ごろに目覚めましたが、今はともすると8時、太陽は高く上っています。まあ、健康だけがとりえでしょうか。

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[3]
投稿者 黒浴@

[夏至]

晨朝散策老人歡   晨朝の散策 老人の歓び

新告X林鳥哢闌   新緑の森林 鳥哢 闌なり

麦浪熟成農事促   麦浪 熟成 農事促す

陽長一祷氣平安   陽長くして 一に祷る 気の平安を

<解説>

今年の天候は極めて不順で農作物が最悪の状態です。
麦秋の時期ですが、気象の安定を祷るだけです。

いただいた結句は「陽長祷気象温温   陽長くも 気象の温温を祷る」でしたが、主宰の独断で韻を整えさせていただきました。ご了承ください。

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[4]
投稿者 深溪 

[夏至]

梅霖連日在檐端   梅霖連日 檐端に在り

新竹新秧誰與看   新竹新秧 誰と與にか看ん

夏至垂綸待望裡   夏至りて 垂綸 待望の裡

老躯此節慰加餐   老躯此の節 加餐を慰らん


〇連日さみだれが軒先に垂れている。
〇雨に濡れた若竹や田の新苗を誰とともに見ようか。
〇夏に至れば川べりで釣り糸を垂れて英気を養おうと待ち望んでいる。
〇だが、この時節の変わり目に老体は夏に備えて栄養をとり大切にしよう。
〇老人の健康法は季節の変わり目にある、と。


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[5]
投稿者 嗣朗 

[夏至]

水漲棚田四面安   水漲る棚田 四面安んずれば

茅居独坐把書看   茅居に独り坐し 書を把って看る

長天夏至農人喜   長天の夏至 農人喜び

緑浪鳴蛙両不謾   緑浪 鳴蛙 ふたつながら謾かず。

 この時期、能勢の棚田の田植えが終わって10日ばかり過ぎ、その畦道と稲苗が海浪を思わせ、静寂の中どこからともなく聞こえてくる蛙の声、街中では見れない事である。

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[6]
投稿者 鮟鱇 

[夏至]

短才揮短筆,    短才 短筆を揮い,

長日望長瀾。    長日 長瀾を望む。

覓句難成處,    覓句 成り難きところ,

斜陽入海殘。    斜陽 海に入りてざんす。



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[7]
投稿者 鮟鱇 

[夏至]

杜鵑啼血夢魂丹,  杜鵑 血に啼いて夢魂あかく,

驚醒客中聽雨寒。  驚き醒めて客中に雨の寒きを聴く。

短夜孤愁似長鬣,  短夜の孤愁 長鬣ちょうりょうの,

兩毛迎夏解霜難。  両毛 夏を迎えるも霜を解き難きに似る。


<解説>

[語釈]
両毛:白髪まじり。
長鬣:長いあごひげ。


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[8]
投稿者 鮟鱇 

[夏至]

仰天雲色暗,    天を仰げば雲色暗く,

聽雨客衣單。    雨を聴いて客衣単なり。

村酒流腸暖,    村酒 腸に流れて暖かく,

蜀魂啼血寒。    蜀魂 血に啼いて寒し。

傷心欲排悶,    心を傷めて排悶はいもんせんとし,

覓句試披肝。    句をもとめて肝を披くを試みたり。

長日詩陳腐,    長日 詩は陳腐にして,

短才愁更酸。    短才 愁いて更に酸たり。


<解説>

[語釈]
排悶:気晴らし。


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[9]
投稿者 鮟鱇 

[夏至]

同僚早退扈權官,  同僚 早退して権官にしたがい,

窗外斜暉到遠巒。  窓外 斜暉は遠きやまに到る。

長日加班通夜苦,  長日 加班かはんす 通夜の苦,

短才空想擧觴歡。  短才 空想す 挙觴きょしょうの歓。

笑傾醇酒壺中緑,  笑って醇酒の壺中に緑なるを傾け,

競借醉顔樓上丹。  競って酔顔の楼上にあかきを借る。

君飲我留迷吏道,  君は飲み 我は留りて吏道に迷い,

獨瞻盈月轉銀盤。  独り盈月の銀盤を転ずるをる。


<解説>

夏至の日、同僚はお偉方と酒を飲みにいつもより早く退庁、わたしは残業、という詩です。

[語釈]
権官:偉い役人。
加班:残業。
通夜:夜通し。徹夜。
吏道:役人の道。心得。


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[10]
投稿者 Y.T 

[夏日午睡偶遇雷雨]

馥郁梔花半已殘   馥郁たる梔花 半ばは已にすた

陰陰夏木噪蝉闌   陰陰たる夏木に 噪蝉 闌なり

沛然雷雨蟲聲歇   沛然たる雷雨 蟲聲 歇み

香夢覚來虚永歎   香夢 覚め来たって 虚しく永歎



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[11]
投稿者 明鳳 

[夏至偶成]

日長六月水光寛   日長き 六月は 水光 寛く

向暑輕衫時服單   向暑に 軽衫(けいさん) 時服は 単(ひとえ)なり

緑樹成陰心氣爽   緑樹 陰を 成せば 心気 爽やかに

忽驚屋裏野禽歡   忽ち 驚く 屋裏に 野禽の 歓(よろこ)ぶを

<解説>

註)*日長=夏至のこと、
  *時服=クール・ビズの流行服。

夏至は、暑さを倶にする初めでもある。時恰も万人に、清涼を求める気持ちが募る時節でもあり、昨今はクール・ビズでノー・ネクタイの服装も流行して、更に自然の爽やかさを満喫出来ればと、その気持ちを野禽に托してみた。

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[12]
投稿者 杜正 

[夏至蹴球世界大会感慨]

終業帰来夜未闌   業を終えて帰り来るも、夜はいまだ闌(たけなわ)ならず

群蛙喧聒睡眠難   群蛙喧聒(けんかつ)にして睡眠難たし

蹴球大会欧州始   蹴球大会、欧州に始まり

試合興亡悲喜看   試合の興亡、悲喜として看る

<解説>

夏至が近いため、仕事を終えて家に帰ってもまだ明るい。
田圃の蛙の声がうるさくて夜も眠れないほどだ。
それにもまして、サッカーワールドカップドイツ大会が始まった。
試合中継を悲喜おりまぜて、興亡を歓声を上げて見る夜が続く。

日本頑張れ!

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[13]
投稿者 明鳳 

[夏至偶成]

日長六月水光寛   日 長き 六月は 水光 寛く

緑樹成陰靄殘   緑樹 陰を 成して 青靄 残る

消夏輕衫心骨爽   消夏の 軽衫 心骨 爽やかにして

忘機團扇氣魂安   忘機の 団扇に 気魂 安らかなり

白雲變化華胥夢   白雲 変化(へんげ)するは 華胥(かしょ)の 夢

墨筆縱横羲獻壇   墨筆 縦横なるは 羲献(ぎけん)の 壇

讀到嘉言塵外境   嘉言を 読み 到れば 塵外の 境

由來詠景試詩看   由来 景(けしき)を 詠ずるに 詩を 試みて 看る

<解説>

註)*日長=夏至のこと、   *羲獻=王羲之と王献之父子(二王)
  *嘉言=二王の拓本の書言、*由來=むかしから、

 先に「七言絶句」を送信投稿しましたが、その後、各国皆さんのこれ迄の参加詩を閲覧しましたら「律詩」も多く、先の七言絶句に敷衍して「律詩」を作吟してみました。

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[14]
投稿者 菊太郎 

[夏至]

蕭蕭霖雨敲欄干   蕭蕭として霖雨 欄干を敲く

凭几繙書強自寛   几に凭り書を繙き 強いて自ら寛うす

短夜忽明残夢醒   短夜 忽ち明け 残夢醒む

連陰未霽独長歎   連陰 未だ霽れず 独り長歎す

<解説>

暦の上の夏至とはいえ、梅雨の真っ只中、鬱陶しい毎日で気分も湿りがちのこの頃です。

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[15]
投稿者 岡田嘉崇 

[夏至]

裂空電影閃雲巒   空を裂く電影 雲巒に閃めき

清旦青田白露圓   清旦の青田 白露圓なり

畏日堆紅華富貴   畏日の堆紅 華富貴

薫風積翆竹平安   薫風の積翆 竹平安

時長巷陌夜陰短   時は巷陌に長くして 夜陰短く

月急郊原晝漏寛   月は郊原を急ぎ 晝漏寛やかなり

閤閤蛙鳴村路滑   閤閤蛙鳴いて 村路滑らかに

紫陽花發色初乾   紫陽花發いて 色初めて乾く



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[16]
投稿者 北口鐵枴 

[夏至]

夏至迎來暑熱闌   夏至迎え來たり 暑熱闌なり

小庭風色捲簾看   小庭の風色 簾を捲いて看れば

石榴花放燭牆角   石榴花放ちて牆角を燭す

鳴始蜩聲斜照殘   鳴き始む蜩聲に 斜照殘す



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[17]
投稿者 藤原崎陽 

[夏至]

山村夏至野風寒   山村の夏至 野風寒く

梔子紫陽花正闌   梔子紫陽 花正に闌なり

瀟洒心閑愛亭静   瀟洒心閑にして 亭の静かなるを愛し

依稀夢断覚衣単   依稀 夢断えて 衣の単なるを覚う

丹青葩卉園庭艶   丹青葩卉 園庭艶やかに

水墨林泉池畔漫   水墨林泉 池畔漫く

雨雨晴晴日長候   雨雨晴晴 日長き候

甲東到処薄香残   甲東到る処 薄香残る



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[18]
投稿者 桐山人 

[夏日登仙臺青葉城址]

碧苔更古老杉蟠   碧き苔 更に古りて 老杉は蟠る

枉径崎嶇痩杖嘆   枉りし径は崎嶇として 痩杖は嘆く

千樹萬枝青葉滿   千樹の萬枝に 青葉は滿ち

夏風颯颯鳥聲乾   夏の風 颯颯として 鳥聲乾く



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[19]
投稿者 井古綆 

[夏至]

酔郷熟睡日三竿   酔郷に熟睡すれば日は三竿

陋巷消光指一弾   陋巷に消光すれば指一弾

嘒嘒早蝉鳴樹杪   嘒嘒けいけいと早蝉は樹杪に鳴き

参参飛燕譟軒端   参参と飛燕は軒端に譟ぐ

期垂盛夏草堂暑   期は盛夏に垂んなんとして草堂は署く

才到遐年腹笥寒   才は遐年に到るも腹笥寒し

追想戦中過困匱   戦中を追想すれば困匱に過ぎる

明時偏願国平安   明時偏に願うは国の平安

参参=参差
腹笥=腹中の箪笥
困匱=おひつがカラッポ

 我々の世代は夏が近くなれば、思い出すのはあの、ひもじい敗戦のこと。
それを尾聯に詠じました。

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[20]
投稿者 謝斧 

[夏至偶成]

暦當夏至暑威酸   暦は夏至に當り 暑威酸たり

晴日晝長何必歓   晴日晝長く 何んぞ必しも歓ばん

草屋炎蒸久須雨   草屋炎蒸 久しく雨を須ち

病躯羸痩少加餐   病躯羸痩 加餐少なり

下簾解渇新茶啜   簾を下して 渇を解くに 新茶啜る

移榻追涼短褐寛   榻を移して 涼を追うに短褐を寛うし

勿怪先生懶揺扇   怪む勿れ先生 懶うく扇を揺がし

頃來漫道好春寒   頃來漫に道う 春寒好しと



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