第13回 世界漢詩同好会総会(二〇〇六年四月十六日)

 『世界漢詩同好会』の第13回総会は、四月十六日に開かれました。
 詩題(今回は『四處春滿』)と押韻(今回は「上平声十三元」)として、その日までに各国の幹事サイトに投稿された詩を交流し合うものです。
 今回は、近年世界各地で自然災害が起きている事、被災された方々への思いをテーマとしました。眼前の社会の出来事に、日本を含め、各国の詩人がどのように目を向けているか、を考えてみたいと思います。

 日本では、この『漢詩を創ろう』のサイトが幹事となり、皆さんの交流詩を集約、掲載します。



 日本からの参加詩です。投稿順に紹介します。


]  鮟鱇    「四處春滿」        七言律詩
]  黒浴@   「四處春滿」        七言絶句
]  黒浴@   「四處春滿」        七言絶句
]  杜正    「四處春滿」        七言絶句
]  深溪    「四處春滿」        七言絶句
]  Y.T   「春日惜落花」       七言絶句
]  登龍    「四處春滿」        七言絶句
]  嗣朗    「春宴」          七言絶句
]  北口鐵枴  「四處春滿」        七言律詩
10]  藤原崎陽  「四處春滿」        七言律詩
11]  謝斧    「四處春滿」        七言律詩
12]  点水    「四處春滿」        七言絶句
13]  岡田嘉崇  「四處春滿」        七言律詩
14]  佐竹丹鳳  「四處春滿」        七言律詩
15]  常春    「四處春滿」        七言絶句
16]  海山人   「四處春滿」        五言律詩
17]  菊太郎   「四處春滿」        七言絶句
18]  ニャース  「四處春滿」        七言絶句
19]  井古綆   「四處春滿」        七言律詩


番号をクリックして下さい。















[1]
投稿者 鮟鱇 

[四處春滿]

快哉天霽好風翻,   快きかな 天れて好風 翻り,

老骨多閑花更繁。   老骨 閑多くして花 更に繁し。

笑入櫻雲賞香雪,   笑って桜雲に入って香雪を賞し,

漫傾壺酒忘塵喧。   漫に壺酒を傾けて塵喧じんけんを忘る。

雖無牙齒流霞美,   牙歯がしなきといえども流霞りゅうか うまく,

尚有口喉吟志奔。   口喉なおありて吟志 はしる。

依旧高歌和鶯語,   旧に依り高歌して鶯語に和せば,

朱顔恰似解言猿。   朱顔 恰も似たり 言を解するの猿。

<解説>

[語釈]

天霽:雨があがる
塵喧:世のなかのわずらわしいこと
牙齒:歯
流霞:仙人が飲む酒
依旧:いつもどおりに


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[2]
投稿者 黒浴@

[四處春滿]

遊人無限戯山村   遊人無限 山村に戯れ

燕子歸來舞轟エ   燕子帰来して 緑原を舞ふ

蕭寺梅林黄鳥囀   蕭寺の梅林 黄鳥囀る

將春爛漫忘文言   將に春爛漫 文言を忘る



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[3]
投稿者 黒浴@

[四處春滿]

春日遲遲歩苑園   春日遅遅 苑園を歩く

流鶯紫白惠風暄   流鴬紫白 恵風暄かなり

悠然几座生幽興   悠然几座し 幽興生ず

正是閑翁長壽源   正に是れ 閑翁 長寿の源なり



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[4]
投稿者 杜正 

[四處春滿]

遊人漫歩入公園   遊人、漫歩して公園に入る

春漲雲流風日温   春は漲り雲は流れ風日温かなり

童子徘徊追野蝶   童子、徘徊して野蝶を追う

村郊到処百花繁   村郊、到る処に百花繁る

<解説>

最近、やっと暖かくなり、犬の散歩の途中に公園に入ると、到るところ、春めいていた。
蝶を追いかけて公園の奥に行く子供を犬が追いかけていくのにまかせ、付いていくと、そこは、あたり一面、花が咲き乱れていた。

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[5]
投稿者 深溪 

[四處春滿]

四處春滿坐傾樽   四処 春は満つ 坐して樽を傾け

信醉呵呵狂詠喧   酔ふに信せ 呵呵 狂詠喧し

花盡夭夭山樹   花は尽き 夭夭 山樹の緑

雙方賞否妙難論   双方 賞するや否や 妙として論じ難し

<解説>

四方春漫々桜花の下で酒を酌む。
酔うにまかせての放歌高吟が喧しい。
やがて、花も散り山の木々の嫩芽が美しい頃になる。
花も嫩芽も甲乙を付けがたく美しい。如何にや。


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[6]
投稿者 Y.T 

[春日惜落花]

高臺柳淡杏花繁   高臺の柳 淡く 杏花は 繁し

春意闌珊暮靄温   春意 闌珊として 暮靄 温か

細雨無情墜英去   細雨 つれ無く 英を墜とし去り

飛紅點翠徧芳園   飛紅 翠に點じて 芳園にあまね



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[7]
投稿者 登龍 

[四處春滿]

一路韶光情味温   一路韶光情味温かなり

芳菲細膩滿丘園   芳菲細膩として丘園に満つ

春風揺曳柳絲影   春風揺曳す柳絲の影

栩栩花間胡蝶翻   栩栩として花間胡蝶翻る

<解説>

一筋の道は春の景色が美しく優しく暖かであり
良い匂いの花がきめ細かく滑らかで丘園に満ちている
春風は長い糸のような柳の枝の影をたなびき揺れ
喜んで花の間を飛び回り蝶が翻る 


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[8]
投稿者 嗣朗 

[春宴]

散華馥郁弱風翻   散華馥郁 弱風に翻る

春宴酣觴笑満門   春宴酣觴 笑ひ門に満つ

婦女麗容如太后   婦女は麗容 太后の如く

阿爺酔漢舞雄魂   阿爺は酔漢 雄魂を舞ふ

<解説>

 去年のこの時節に桜の名所楽寿荘(この地では)にて春の宴が開催され、天気快晴、桜は満開、僅かな風にもひらひらと散り、参加された諸先生方の艶やかさと、散華の下での吟詠は今も脳裏に残っている。

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[9]
投稿者 北口鐵枴 

[四處春滿]

蜂歌蝶舞遂風翩   蜂は歌ひ蝶は舞ひ 風を遂うて翩る

萬紫千紅燦曉暾   萬紫千紅 曉暾に燦なり

送韻新鶯鳴翠柳   韻を送る新鶯 翠柳に鳴き

知時舊燕戀朱門   時を知る舊燕 朱門を戀ひ

遊山曳杖穿花径   山に遊び杖を曳き 花径を穿ち

對月傾杯認酒痕   月に對して杯を傾くれば 酒痕を認む

飽賞芳菲明媚景   飽賞す 芳菲 明媚の景

無窮春色満乾坤   窮まり無き春色 乾坤に満つ



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[10]
投稿者 藤原崎陽 

[四處春滿]

漫漫晴昼趁春喧   漫漫たる晴昼 春暄を趁へば

野景放青幽草繁   野景青を放って 幽草繁し

嫋娜柳条新緑岸   嫋娜の柳条 新緑の岸

芬馨花臉老紅村   芬馨の花臉 老紅の村

千峰黛色描仙界   千峰黛色  仙界を描き

万壑泉声洗俗煩   万壑泉声  俗煩を洗ふ

拾翠佳人煙靄裏   拾翠の佳人 煙靄の裏

尋芳騒客渉邱園   尋芳の騒客 邱園を渉る



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[11]
投稿者 謝斧 

[四處春滿]

東風生意満乾坤   東風の生意 乾坤に満ち

病起扶藜多出門   病起藜に扶けられて 門を出ること多し

耳裏微聞水禽静   耳裏微かに聞けば 水禽静かに

眼前飽見野花繁   眼前飽くまで見る 野花繁し

拾蕘沽酒徐雙脚   蕘を拾ひ酒を沽って 双脚徐なり

燒筍煮芹傾一樽   筍を燒き芹を煮て 一樽を傾く

晒背岸塘甘坐睡   背を岸塘に晒せば 坐睡甘く

老躯最喜惠春暄   老躯最も喜ぶは 春暄を恵れるを



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[12]
投稿者 点水 

[四處春滿]

雨罷天晴出宅門   雨罷み天晴れ 宅門を出づ

東郊麦黒S花繁   東郊の麦は緑 百花繁し

観瞻雲雀追胡蝶   雲雀を観瞻 胡蝶を追ふ

享受春光心自温   春光を享受 心自づから温かし

<解説>

色々と難事のあった冬も終り、漸く春が回ってきたという感じを抱いています。

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[13]
投稿者 岡田嘉崇 

[四處春滿]

江南十里趁春暄   江南十里 春暄を趁ひ

麗日彩加輕脚跟   麗日彩は加はり 脚跟輕し

嫋嫋和風埀柳岸   嫋嫋たる和風 埀柳の岸

遲遲永晝好花村   遲遲たる永晝 好花の村

紅英掃地桃株圃   紅英 地を掃ふ 桃株の圃

緑葉成陰橘樹園   緑葉陰を成す 橘樹の園

描出櫻雲惟一白   描き出す櫻雲 惟一白

芳菲極目別乾坤   芳菲極目 別乾坤



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[14]
投稿者 佐竹丹鳳 

[四處春滿]

漫遊客路恵風暄   漫遊客路 恵風暄かなり

過盡芳村又一村   芳村 過ぎ尽くして又一村

富嶽悠悠輝冠雪   富嶽 悠悠として 冠雪煌き

墨川漾漾遶花源   墨川 漾漾して 花源を遶る

群鷗翠柳飛汀岸   群鴎 翆柳の汀岸を飛び

孤舫紅灯傾酒樽   孤舫 紅灯に酒樽を傾く

婦姑相攜幽興足   婦姑 相携えて 幽興足り

春宵佳處薦盤飧   春宵 佳き処 盤飧を薦む



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[15]
投稿者 常春 

[四處春滿]

嫩葉生生薫茗園   嫩葉生々として茗園に薫り

百花齊放競春暄   百花斉放春暄に競う

富峰映帯駿河海   富峰映り帯ぶ駿河の海

歳歳何知造化恩   歳々何ぞ知らん造化の恩を



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[16]
投稿者 海山人 

[四處春滿]

彩雲映旭日   彩雲 旭日に映じ

夜雨洗前村   夜雨 前村を洗う

楊柳緑鮮岸   楊柳 緑鮮かなる岸

櫻桃紅淡園   櫻桃 紅淡き園

虫魚回野水   虫魚 野水を回り

鳥獣叫山原   鳥獣 山原に叫ぶ

風息誰須待   風息みて 誰れか須らく待たんや

春光促出門   春光 出門を促すを



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[17]
投稿者 菊太郎 

[四處春滿]

韶光満地入春村   韶光 地に満つ 春村に入る 

芳草萋萋数畝園   芳草 萋萋たり 数畝の園

櫻樹萬枝紅爛漫   櫻樹の萬枝 紅爛漫たり

凭筇花徑恵風暄   筇に凭る 花徑 恵風暄かなり



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[18]
投稿者 ニャース 

[四處春滿]

爛漫桃花枕酒樽   爛漫たり 桃花 酒樽を枕とし、

青天酔臥片雲存   青天 酔い臥せば 片雲あり。

子規不解孤棲客   子規は解さず 孤棲の客を、

一叫千愁望故園   一叫 千愁 故園を望む。

  桃の花は爛漫と咲き、私は花の下で酒樽を枕とする。
  酔って青い空をみれば、一片の雲が浮かんでいる。
  ほととぎすは、一人住まいの私の気持ちなど察しようともしないで鳴いている。
  お前がひとたび鳴けば、多くの愁いが湧き、ただ私は故郷の方角をながめるだけなのだ。



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[19]
投稿者 井古綆 

[四處春滿]

伴妻一路趁春暄   伴妻一路春暄を趁い

車指嵐山心更奔   車は嵐山を指して心は更に奔る

垂柳千条臨水麗   垂柳千条水に臨んで麗しく

堤桜万片任風翻   堤桜万片風に任せて翻る

琴音嚠喨憶悲史   琴音嚠喨悲史を憶い

墨跡淋漓記報恩   墨跡淋漓報恩を記す

橋畔摩肩遊客溢   橋畔摩肩して遊客溢れ

忘機忘刻既黄昏   忘機忘刻既に黄昏

悲史=小督の局の哀史
報恩=頼山陽の「母を奉じて嵐山に遊ぶ」
摩肩=雑踏



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