第12回 世界漢詩同好会総会(二〇〇六年2月19日)

 『世界漢詩同好会』の第12回総会は、二月十九日に開かれました。
 詩題(今回は『雨水節有感』)と押韻(今回は「上平声十二文」)として、その日までに各国の幹事サイトに投稿された詩を交流し合うものです。
 今回は、近年世界各地で自然災害が起きている事、被災された方々への思いをテーマとしました。眼前の社会の出来事に、日本を含め、各国の詩人がどのように目を向けているか、を考えてみたいと思います。

 日本では、この『漢詩を創ろう』のサイトが幹事となり、皆さんの交流詩を集約、掲載します。



 日本からの参加詩です。投稿順に紹介します。


]  庵 仙    「雨水節有感」        七言絶句
]  登 龍    「雨水節有感」        七言絶句
]  菊太郎    「雨水節有感」        七言絶句
]  海山人    「丙戌雨水」         七言律詩
]  謝 斧    「雨水節有感」        七言律詩
]  Y.T    「懐中越之災禍而雨水節有感」 七言絶句
]  鮟 鱇    「雨水節有感」        七言律詩
]  佐竹丹鳳   「雨水節有感」        七言絶句
]  禿 羊    「村郊雨水」         七言絶句
10]  藤原崎陽   「雨水節有感」        七言律詩
11]  岡田嘉崇   「雨水節有感」        七言律詩
12]  緑 風    「山蹊散策」         七言絶句
13]  常 春    「雨水節有感」        七言絶句
14]  桐山人    「雨水節有感」        七言絶句
15]  嗣 朗    「雨水節有感」        七言絶句
16]  長岡瀬風   「雨水節」          七言律詩
17]  井古綆    「雨水節」          七言律詩


番号をクリックして下さい。















[1]
投稿者 庵仙 

[雨水節有感]

過雨山巓漂雪雲   過雨の山巓に 雪雲漂ふも、

後庭籬落雀聲群   後庭の籬落に 雀聲群がる。

恵風未力無花影   恵風 未だ力なく 花影なきも、

忽識春來滴瀝聞   忽ち識る 春來の滴瀝 聞こゆを。

<解説>

雨のあがった山巓にまだ雪雲が漂っているが、
我が家の後庭の垣根には雀が群がっている。
春風が未だ力なく、花影もないが、
忽ち識ることだろう、春が来て雪解けの雨滴を聞くを。

 雨水は春の魁である。
「雪が融けると何になるの?」その答えは「水になる。」といわれるが、別の答えには「春になる。」がある。
今は情緒的に後者を取りたい気分ですね。

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[2]
投稿者 登龍 

[雨水節有感]

四檐點滴似琴聞   四檐點滴琴のごとく聞き

輕暖輕寒草色分   輕暖輕寒草色分る

潤地催花欲開蕾   地を潤し花を催し蕾を開かんと欲し

待他朶朶吐奇芬   他の朶朶奇芬を吐くを待つ

<解説>

 四方の軒のあまたれは琴の音のように聞こえ、
 軽くて暖かい衣服を着て薄ら寒いが草の色がはっきりして来た
 地を潤し花を催して蕾が開こうとしていて
 他のたくさんの枝もよい詩が作れるようになることを待っている


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[3]
投稿者 菊太郎 

[雨水節有感]

東風氷解氣氤氳   東風 氷解け 氣 氤氳たり

慈雨絲絲草木欣   慈雨 絲絲として 草木欣ぶ

青帝眠醒輕暖促   青帝 眠り醒めて 輕暖を促す

囀聲細細隔簾聞   囀聲 細細 簾を隔てて聞く



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[4]
投稿者 海山人 

[丙戌雨水]

結氷降雪已無聞   結氷 降雪 已むを聞くなし

何日溶成兩水文   何の日か 溶けて兩つながら水文とならむ

梅木五輪初可發   梅木 五輪 ようやく發くべきも

水仙三本未能群   水仙 三茎 いまだむれるあたはず

乾坤任自運行刻   乾と坤は 自に任かせて 運行を刻み

身世恐天些事勤   身と世は 天を恐れて 些事に勤む

今季苦寒随所冀   今季 寒に苦しみ 随所に冀う

青風越得白峰雲   青風 白峰の雲を越え得るを

<解説>

「已」やむ。用例 李白「春夜宴従弟桃花園序」『幽賞未已、高談轉清。』
「発」ひらく。咲く。


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[5]
投稿者 謝斧 

[雨水節有感]

杖錢沽酒拾蕘焚   杖銭酒を沽って 蕘を拾って焚き

江上傾杯羹嫩芹   江上杯を傾けて 嫩芹を羹にする

暦過立春沙漸暖   暦は立春を過ぎて 沙漸く暖かく

日經膏雨草初分   日に膏雨を経て 草初めて分かつ

上牋野景能牽我   箋に上せし野景 能く我を牽き

添信梅枝些贈君   信に添えて梅枝 些か君に贈らん

却喜閑身自無事   却って喜ぶ 閑身 自から事無く

宛如散木謝霜斤   宛も散木の霜斤を謝する如し

「杖銭」;杖頭銭

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[6]
投稿者 Y.T 

[懐中越之災禍而雨水節有感]

冬天北国雪紛紛   冬天の北国 雪 紛紛

多難前途不忍聞   多難の前途 聞くに忍びず

越地近年災禍衆   越(こし)の地 近年 災禍 衆し

庶幾雨水掃妖氛   庶幾(こいねがわくは) 雨水 妖氛を掃え



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[7]
投稿者 鮟鱇 

[雨水節有感]

雨洗雪花寒暖分,   雨は雪花を洗って寒暖分かれ,

淺春殘夢又思君。   淺春 殘夢にまた君を思ふ。

樹顛黄鳥啼暄日,   樹顛の黄鳥 暄日に啼き

院落白梅流郁氛。   院落の白梅 郁氛を流す。

昨夜有誰偸鶴子,   昨夜 誰かありて偸まんや 鶴子の,

只今張翼入仙雲?   只今 翼を張って仙雲に入らんとするを?

東風拂面醒茅舎,   東風 面を払えば茅舎に醒め,

身在重衾雀語聞。   身は重衾にありて雀語 聞こゆ。

<解説>

[語釈]
郁氛:よい香
鶴子:鶴
重衾:重ねた布団

「昨夜有誰偸鶴子」句:
 芭蕉の句に「梅白し昨日ふや鶴を盗まれし」とある。

 また、拙作漢俳に

     把芭蕉句加注作漢俳一首

  梅白無鶴声。       梅 白くして鶴声なし
  問詢亭主“有誰盗?”    亭主に誰かありて盗まんかと問えば
  答復“是春風。”     答えるに これ春風なりと



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[8]
投稿者 佐竹丹鳳 

[雨水節有感]

雨水乘春寒暖分   雨水 春に乗じて寒暖分ち

横斜枝上吐香聞   横斜枝上 香を吐くを聞く

観梅攜酒惟依夢   観梅 酒を携うは 惟 夢に依る

毎憶曾遊倍憶君   曾遊 憶う毎に 倍すます君を憶う



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[9]
投稿者 禿羊 

[村郊雨水]

被雪遠山連白雲   雪を被る遠山 白雲に連なり

穿林清瀬洗新芹   林を穿ちて清瀬 新芹を洗ふ

東風既好出冬蟄   東風 既に好し 冬蟄を出るに

盡日群鴉荒圃耘   盡日 群鴉 荒圃に耘(くさぎ)る



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[10]
投稿者 藤原崎陽 

[雨水節有感]

萌生草色一村芬   萌生の草色一村芬る

破蕾紅梅己發薫   蕾を破って紅梅 己に薫を發す

經雨古池水温順   雨を経て古池 水温 順に

侵霜新樹林景分   霜を侵して新樹 林景分ち

谿邊煖酒幽情適   谿邊酒を煖めて 幽情適い

舟上吟詩淑気欣   天上詩を吟じて 淑気欣ぶ 

終日尽歓風雅客   終日歓を尽す 風雅の客

紅塵遠隔日将曛   紅塵遠く隔てて 日将に曛んぜとす 



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[11]
投稿者 岡田嘉崇 

[雨水節有感]

早春黄鳥四方聞   早春に黄鳥 四方に聞き

村落園林梅気薫   村落 園林 梅気薫る

流水激溪成歳律   流水溪に激して 歳律成り

輕風吹樹補天文   輕風樹を吹いて 天文補ふ

緑歸柳葉岸頭活   緑は柳葉に歸りて 岸頭に活り

紅入桃花野色分   紅は桃花に入って 野色分つ

初動陽光蘇萬物   初めて動く 陽光 萬物蘇し

雨催季節老農勤   雨は季節を催して 老農勤む



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[12]
投稿者 緑風 

[山蹊散策]

山蹊散策野禽群   山蹊 散策 野禽の群れ

日暖風和萬作薫   日暖かく 風和らぎ 萬作薫る

枯荻蕭条春尚淺   枯荻 蕭条 春尚淺し

軽寒田圃老農勤   軽寒たる田圃に 老農勤む

<解説>

今月初め比較的暖かい日に裏山を散策して作りました。

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[13]
投稿者 常 春 

[雨水節有感]

鴨去江邊芝葦焚   鴨去りし江辺 芝葦焚く

青青嫩草好風熏   青々した嫩草 好風に熏る

春泥雨水佳耕土   春泥雨水 土を耕すに佳し

出野忘時早暮雰   野に出でて時を忘れ 早くも暮雰

<解説>

毎週 近くの湯日川に沿って散歩します。
先週まで賑やかだった鴨の群れは、今週は1羽もおらず、ただ烏鷺が遊ぶ静かな光景、寒暖も激しい中にも季節を感じました。
そして葦を焼き払った焦げ土にしっかりと青い草が芽生えています。

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[14]
投稿者 桐山人 

[雨水節有感]

雨滿春池盡水紋   雨は春池に滿ちて 水紋を盡くす

和風拂野草薫薫   和風野を拂ひて 草 薫薫

横斜猶戴殘寒雪   横斜 猶ほ戴す 殘寒の雪

孤杖高吟穿晩雲   孤杖 高吟 晩雲を穿つ



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[15]
投稿者 嗣朗 

[雨水節有感]

東風水弛細波紋   東風水弛み 細波の紋

雨滴催花時節氛   雨滴花を催す 時節の氛

芳信鶯啼香脈脈   芳信鶯啼いて 香り脈々

無言恍惚是欣欣   言無く恍惚 是れ欣欣


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[16]
投稿者 長岡瀬風 

[雨水節]

尋春佳處最先聞   春を尋ねんとして佳處 最も先に聞き

誘引鳴禽逃世氛   鳴禽を誘引させて世氛を逃る

潤物無聲連雨歇   物を潤ほして聲無く 連雨歇み

憑欄初霽恵風薫   欄に憑れば初霽 恵風薫る

池頭冰解坐臨水   池頭冰解け 坐して水に臨み

山腹途迷臥見雲   山腹途に迷うて 臥して雲を見る

東帝不忘荒畝緑   東帝忘れず 荒畝緑に

千花取次吐清芬   千花取次 清芬を吐かん



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[17]
投稿者 井古綆 

[雨水節有感]

終帰六出与同雲   終に帰る六出と同雲と

寒去温来改朔氛   寒去温来朔氛を改める

暖雨過時霧濛昧   暖雨過ぎる時霧濛昧

雪山融処水汾沄   雪山融ける処水汾沄

朝携紙筆探詩趣   朝に紙筆を携えて詩趣を探り

夕厭琴書愛酒醺   夕べに琴書に厭きて酒醺を愛す

喜見庭梅含萼兆   喜び見る庭梅の含萼の兆し

洪鈞寸進送東君   洪鈞は寸進して東君を送る



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