第11回 世界漢詩同好会総会(二〇〇五年12月18日)

 『世界漢詩同好会』の第11回総会は、十二月十八日に開かれました。
 詩題(今回は『冬至』)と押韻(今回は「上平声十一真」)として、その日までに各国の幹事サイトに投稿された詩を交流し合うものです。
 今回は、近年世界各地で自然災害が起きている事、被災された方々への思いをテーマとしました。眼前の社会の出来事に、日本を含め、各国の詩人がどのように目を向けているか、を考えてみたいと思います。

 日本では、この『漢詩を創ろう』のサイトが幹事となり、皆さんの交流詩を集約、掲載します。



 日本からの参加詩です。投稿順に紹介します。


]  鮟鱇    「冬至」              七言律詩
]  井古綆   「歳末有感」            七言律詩
]  人正    「思冬至」             七言絶句
]  謝斧    「冬至偶成」            七言律詩
]  Y.T   「當冬至、患伊拉克」        七言絶句
]  謝斧    「冬至」              七言絶句
]  登龍    「冬至」              七言絶句
]  深溪    「冬至天行」            七言絶句
]  嗣朗    「冬至」              七言絶句
10]  長岡瀬風  「冬至」              七言律詩
11]  常春    「冬至」              七言絶句
12]  常春    「冬至」              七言絶句
13]  西克    「冬至訪湖畔古祠」         七言絶句
14]  真瑞庵   「冬至」              七言絶句
15]  点水    「冬至」              七言絶句
16]  菊太郎   「冬至」              七言絶句
17]  禿羊    「過年與朋友宿月瀬山荘、偶冬至」  七言絶句
18]  諦道    「冬景色」             七言絶句
19]  庵仙    「冬至降雪夢」           七言絶句
20]  庵仙    「冬至日向老撾」          七言絶句
21]  岡田嘉崇  「冬至」              七言律詩
22]  藤原崎陽  「冬至」              七言絶句
23]  海山人   「乙酉至日」            五言絶句
24]  桐山人   「冬至」              七言絶句


番号をクリックして下さい。















[1]
投稿者 鮟鱇 

[冬至]

日短夜長年未新,   日は短くして夜長く 年 いまだ新ならず,

星明雲散雪爲銀。   星明るく雲散じて 雪 銀とる。

吟翁傾酒轉乘興,   吟翁ぎんおう 酒を傾けてうたた興に乗り,

禿筆求詩不待春。   禿筆 詩を求めて春を待たず。

夢蝶飄飄舞空想,   夢蝶 飄飄 空想に舞ひ,

芳梅楚楚映清淪。   芳梅 楚楚として清淪に映ず。

老懷最愛天温暖,   老懐 最も愛す 天の温暖, 

覓句又佯花下賓。   句を覓めて また佯る 花下の賓。

[語釈]

禿筆:使い古した筆。
清淪:清らかなさざ波。
佯る:振りをする。


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[2]
投稿者 井古綆 

[歳末有感]

守拙多年慣赤貧   守拙多年赤貧に慣れ、

妻嘆桂玉順風塵   妻は桂玉を嘆き風塵に順ふ

病床長臥苦盛夏   病床長く臥して盛夏を苦しみ、

骨疾纔癒待麗春   骨疾纔かに癒えて麗春を待つ

轉眼他郷悲惨禍   眼を他郷に轉じて惨禍を悲しみ、

馳心異国憫流民   心を異国に馳せて流民を憫れむ 

人間至福無優健   人間の至福は健に優る無し、

託喜青錢致寸眞   喜びを青錢に託して寸眞を致さん。

[語釈]

桂玉:物価高。
青銭に託す:歳末助け合い。


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[3]
投稿者 人正 

[思冬至]

買暦縫衣只待春   暦を買ひ衣を縫ひ只春を待つ

光陰如矢總爲塵   光陰矢の如く總て塵となる

昔時学舎思交誼   昔時の学舎の交誼を思う

君逝前年涕涙新   君逝くは前年か涕涙新たなり

<解説>

 来年の暦も買ったし、衣服も準備したし、後は正月を待つばかりだ。
 この1年を思い出すとあっという間に過ぎていってしまったな。
 昔の学生時代の友達との交流を思い出す。
 そう言えば、君が亡くなったのは去年の今頃だったと思うとまた涙が出てくる。

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[4]
投稿者 謝斧 

[冬至偶成]

納慶履長何必眞   履長を慶び納む 何んぞ必ずしも眞ならんや

從今寒沍苦酸辛   今從り寒沍 苦だ酸辛す

山茶花發紅粧艷   山茶花發きて 紅粧艶やかに 

盧橘子低黄熟新   盧橘子低れて 黄熟新らし

自信生涯能守分   自ら信ず生涯 能く分を守り

仍懷世事早抽身   仍は懷ふ世事 早く身を抽かん

蝸蘆無事披袍坐   蝸蘆事無く 袍を披て坐し

酌酒圍爐別有春   酒を酌み炉を囲んでは 別に春有り

<解説>

「山茶」: 和名稱椿 非山茶花(茶梅)
「盧橘」: 金柑 非枇杷

此詩破格 非詠物之體 為題冬至偶成

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[5]
投稿者 Y.T 

[當冬至、患伊拉克]

伊國被侵流血頻   伊國 侵を被むり 流血 頻り

邦都是處漲兵塵   邦都 是(あらゆ)る處 兵塵 漲る

一陽来復當佳節   一陽来復 佳節に當り

待望和平念日新   和平 待ち望んで 念ひ 日に新たなり

<解説>

[語釈]
是處:あらゆる處、到る處

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[6]
投稿者 謝斧 

[冬至]

南瓜味美酌芳醇   南瓜味美く 芳醇を酌み

柚子浴湯医病身   柚子浴湯 病身を医す

宮線初長和気動   宮線初めて長く 和気動き

一陽来復又逢春   一陽来復 又春に逢ふ

<解説>

至日茹南瓜而浴柚子湯 則無病息災  是日本之風習也

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[7]
投稿者 登龍 

[冬至]

一陽來復暗傳春   一陽來復暗に春を傳ふ

籬角臘梅天下珍   籬角の臘梅天下の珍

浴柚村翁順閑課   柚に浴す村翁閑課に順ひ

鞭駑延壽勵斯身   駑に鞭ち延壽斯の身を勵ます

<解説>

起句 陰気が極まり陽気が生じ始め何となく春がち近づいて来るようで
承句 籬の黄梅は優れた宝のように感じる
轉句 柚子の湯に浴する慣わしに従い英気を養い
結句 のろ馬に鞭打ち長生きして斯身を勵ます。


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[8]
投稿者 深溪 

[冬至天行]

柚入浴槽茅屋人   柚を浴槽に入れし 茅屋の人

坐湯晏起不辭貧   坐湯 晏起して 貧を辭せず

天行老拙如流水   天行 老拙 流水の如き

未作祭詩迎早春   未だ祭詩を作さじして 早春を迎へん

<解説>

坐湯晏起=湯に入り朝寝坊する。
天行=天体の運行・春夏秋冬正しくすすみこと。

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[9]
投稿者 嗣朗 

[冬至]

今迎節気我家因   今は節気を迎へ 我が家の因

芋粥南瓜飧待春   芋粥南瓜の飧げ 春を待つ

風雲荒天只辛苦   風雪荒天 只辛苦のみ

一陽来復夢中身   一陽来復 夢中の身

   

   

   

   



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[10]
投稿者 長岡瀬風 

[冬至]

老逢冬至暗傷神   老いて冬至逢ひ 暗に傷神し

晝短夜長多苦辛   晝短夜長 苦辛多し

欲笑水仙伸緑袖   笑はんとす水仙 緑袖を伸し

漸抽二麥藉青茵   漸く抽んず二麥 青茵を藉く

朝嘗薄粥思佳味   朝に薄粥を嘗めて 佳味を思ひ

夕食南京感令辰   夕に南京を食して 令辰を感ず

寒暖未違千古事   寒暖未だ違はず 千古の事

一陽来復待春人   一陽来復 春を待つ人



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[11]
投稿者 常春 

[冬至]

蝋梅欲発蕾黄伸   蝋梅 発かんとし 蕾の黄 伸ぶ

橘柚芳香包老身   橘柚の芳香 老身を包む

此夜南瓜旨於酒   此の夜 南瓜 酒より旨し

一陽来復眼前春   一陽来復 眼前の春

<解説>

 我が庭には今柚子、夏みかんが黄ばんでいます。花と違って芳香を放つとはいえませんが、承句はきわめて和風に風呂に浮かべた柚子の香です。
 老齢晩酌は欠かせませんが、何かにつけ酒量を減らしたい。酒の肴に向かない冬至の南瓜も年に一度の行事、酒を控え目にしたいなー。

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[12]
投稿者 常春 

[冬至]

寒水微陽鴻雁馴   寒水 微陽 鴻雁馴れ

珠黄橘柚動枝頻   珠黄の橘柚 強風 頻り

分冬此日進羞粥   分冬の此の日 進羞の粥

長夜団欒薄酒親   長夜の団欒 酒を薄うして親しむ

<解説>

近くの川には、今留鳥、冬鳥 5〜6種類 と賑やかです。
よい散歩道となっています。
名物は遠州の空っ風、枝もたわわな柚子、よく実が落ちないものよ。
結句薄酒は節酒のつもり、断酒とまではいきません。


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[13]
投稿者 西克 

[冬至訪湖畔古祠]

芙岳千峰白扇新   芙岳千峰白扇新たに

古祠參道隔後塵   古祠の參道後塵を隔つ

初冬訪間瑚辺暮   初冬間に訪ふ瑚辺の暮れ

林径看時鳥俔人   林径時に看る鳥の人を俔ふを

<解説>

近くの山に登り山麓湖畔の古祠を過ぎた時の印象です

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[14]
投稿者 真瑞庵 

[冬至]

至日影長村社樹   至日 影は長し 村社の樹

書房背暖午眠人   書房 背は暖かし 午眠の人

今夕沐槽浮柚子   今夕 沐槽 ゆずを浮かべ

以慈霜髪老生身   以って慈しまん 霜髪老生の身

<解説>

 破瓜の歳を迎えようとする身は、年の瀬の忙しさなどどこ吹く風、日長書斎で居眠り。
 そんな役立たずの身で居ながらやっぱり長生きはしたいもの。
 今夜は柚子湯にでも浸って年老いた体をいたわってやろう


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[15]
投稿者 点水 

[冬至]

枯木蕭然立水濱   枯木は蕭然と水濱に立ち

北風池面鴨鳧巡   北風の池面 鴨鳧は巡る

自今屡次寒波襲   自今屡次 寒波襲ふも

白日変長情緒新   白日長さを変へ 情緒新し

<解説>

冬至の後からも寒波がやってきますが、しかし、日脚は伸び、日照も強くなります。自然と気分も変わってきます。

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[16]
投稿者 菊太郎 

[冬至]

籬垣菊老立霜晨   籬垣の菊老いて 霜晨に立つ

剪剪風刀落葉頻   剪剪たる風刀 落葉頻りなり

曝背南軒茅屋裏   南軒に背を曝す 茅屋の裏

陽回明旦一天新   陽は回り 明旦 一天新たなり

   

   

   

   

<解説>

神奈川県地方、雪こそ降りませんが、例年になく寒い冬至を迎えそうです。

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[17]
投稿者 禿羊 

[過年與朋友宿月瀬山荘、偶冬至。]

厳霜半夜満澄旻   厳霜 半夜 澄旻に満ち 

囲火林間酌醴醇   火を囲んで 林間 醴醇を酌む

時彼無言儂亦黙   時に 彼 言無く 儂も亦黙せり

柴燎訥訥独話頻   柴燎 訥訥 独話頻なり

<解説>

過年朋友と月ヶ瀬山荘に宿す、偶々冬至なり。

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[18]
投稿者 諦道 

[冬景色]

寒柯雪裏浄無塵   寒柯の雪裏浄して塵なし

朶朶庭梅香馥親   庭の梅の香りが馥郁とているとしている

安坐僧房聴鶯語   静かなお寺で一人座っていると鶯の鳴き声が聞こえてくる

幽清之処又逢春   そういうところにも春は巡ってくる

<解説>

北陸の冬景色を詠みました

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[19]
投稿者 庵仙 

[冬至降雪夢]

皚皚尺雪迎冬至   皚皚たる尺雪 冬至を迎う

柔浴微陽山嶺新   柔かに微陽を浴し 山嶺新たなり

忘却老躯忘躰力   老躯を忘却し 躰力を忘れ

夢奔斜面樹氷巡   夢む 斜面を奔り 樹氷を巡ぐるを

<解説>

  冬至の日に降雪があり夢を抱いた
真っ白な雪が冬至の朝、30cmも積もった。
柔らかな冬に日差しに山脈(山なみ)は見る目に眩しい。
老いた身体や体力を忘れて、
夢を見た。雪の斜面を滑り、樹氷を巡っている自分の姿を。

 若いときは雪が降ればすぐスキーに出かけたものだ。私の近くの山はどの山もスキー場がある。つい最近まで行っていた。
 この冬至も雪が一杯降ったので、出かけようと気持の上では準備完了。しかしもう、身体も体力も付いていけない。頭の中で樹間を滑っている今日この頃である。

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[20]
投稿者 庵仙 

[冬至日向老撾]

心緒多忙冬至晨   心緒 多忙 冬至の晨

侵寒超海遠行身   寒を侵し 海を超ゆ 遠行の身

老撾大師承招待   老撾 大師の 招待を承(う)け

如夢交歓異国賓   夢の如き交歓 異国の賓

<解説>

  冬至の日にラオスに向かう
身も心も多忙な冬至の朝早く、
寒さに逆らって、海を超えて海外旅行である。
ラオス大使の招待を受けた。
この旅行は夢のような交歓で、異国のお客さんとなる。

 ラオスから来ている駐在日大使とお友達です。この度の招待は、ラオス大使の息子さんが結婚するというものです。ラオスで式を挙げるというので夫婦で招待を受けました。こんなことが滅多にないので、是非と言うことで話がまとまり、冬至の日(実際はその数日後)出発します。この旅行を楽しみにしています。

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[21]
投稿者 岡田嘉崇 

[冬至]

水凍同雲入令辰   水凍り同雲 令辰に入り

朔風伴雹自無塵   朔風雹を伴って自ぞから塵無し

寒嚴餞歳世間臘   寒嚴しく 餞歳 世間の臘 

日短窮陰雪裏春   日短く窮陰 雪裏の春

柚果涵湯千古習   柚果湯に涵す 千古の習

南瓜餔食百年身   南瓜食を餔う 百年の身

一陽来復微陽動   一陽来復 微陽動き 

晩節平安撃壤人   晩節平安たり 撃壤の人



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[22]
投稿者 藤原崎陽 

[冬至]

蓬頭霜髪老衰身   蓬頭霜髪 老衰の身

弱線添長物候新   弱線長きを添えて 物候新し

憐恕病妻難結夢   病妻を憐恕して 夢結び難く

凍雲不動切焦春   凍雲動かず 春を焦がれること切なり



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[23]
投稿者 海山人 

[乙酉至日]

極陽初入奥   極陽 初(ようや)く奥に入るも

寒気即侵人   寒気 即(すなわ)ちく人を侵す

露木梅芽出   露木に梅芽出で

乾坤一待春   乾坤 一に春を待つ

[語釈]

「乙酉至日」:2005年の冬至。12月22日。
「極陽」:"陰"極まった低い太陽。
「乾坤」:陰陽。天地。さらには万物。



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[24]
投稿者 桐山人 

[冬至]

江上散行霜雪晨   江上 散行 霜雪の晨

西空殘月影猶輪   西空の殘月 影猶ほ輪たり

窮陰更宿酷寒気   陰を窮むれども更に宿す 酷寒の気

堰草焼痕纔一春   堰草の焼痕 纔かに一春



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