第10回 世界漢詩同好会総会(二〇〇五年10月16日)

 『世界漢詩同好会』の第10回総会は、十月十六日に開かれました。
 詩題(今回は『歎地球村自然災害』)と押韻(今回は「上平声十灰」)として、その日までに各国の幹事サイトに投稿された詩を交流し合うものです。
 今回は、近年世界各地で自然災害が起きている事、被災された方々への思いをテーマとしました。眼前の社会の出来事に、日本を含め、各国の詩人がどのように目を向けているか、を考えてみたいと思います。

 日本では、この『漢詩を創ろう』のサイトが幹事となり、皆さんの交流詩を集約、掲載します。



 日本からの参加詩です。投稿順に紹介します。


]  謝斧    「歎地球村自然災害」    七言律詩
]  Y.T   「歎地球村自然災害」    七言絶句
]  藤原崎陽  「歎地球村自然災害」    七言律詩
]  長岡瀬風  「歎地球村自然災害」    七言律詩
]  岡田嘉崇  「歎地球村自然災害」    七言律詩
]  登龍    「歎地球村自然災害」    七言絶句
]  鮟鱇    「歎地球村自然災害」    七言律詩
]  点水    「歎地球村自然災害」    七言絶句
]  常春    「克什米爾地震」      七言絶句
10]  菊太郎   「歎地球村自然災害」    七言絶句
11]  深溪    「歎地球村自然災害」    七言絶句
12]  桐山人   「歎地球村自然災害」    七言絶句
13]  海山人   「歎地球村自然災害」    七言絶句


番号をクリックして下さい。















[1]
投稿者 謝斧 

[歎地球村自然災害]

氣象異常眼豁開   氣象異常に 眼豁として開く

染汚環境肺肝摧   環境染汚に 肺肝摧く

緜緜豪雨川途失   緜緜たる豪雨 川途失わせ

決決奔湍家屋頽   決決たる奔湍 家屋頽す

民物驕奢背慈惠   民物驕奢にして 慈惠に背き

天公悲怒下洪災   天公悲怒して 洪災を下す

萬邦人士須留意   萬邦の人士 須く意を留め

能爲子孫除禍胎   能く子孫の爲に禍胎を除くべし



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[2]
投稿者 Y.T 

[歎地球村自然災害]

埋海成田墾百災   海を埋め 田と成して 百災を墾し

鑿山鋪路水患来   山を鏨ち 路を鋪して 水患 来たる

正穿七竅戮渾沌   正に七竅を穿って 渾沌を戮し

漫弄人為天地頽   漫りに 人為を弄して 天地 頽る



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[3]
投稿者 藤原崎陽 

[歎地球村自然災害]

氾濫驚濤動地来   氾濫せし驚濤 地を動して来り

頭高数丈襲瑶台   頭高数丈 瑶台を襲う

忽呑大廈処無跡   忽として大廈を呑んで 処として跡無く

即溺衆民心已灰   即ちは衆民を溺さして 心已に灰

洪水久淹汚臭溢   洪水久しく淹り 汚臭溢れ

颱風一過暗雲開   颱風一過して 暗雲開く

崩崖潰屋空狼藉   崖を崩し 屋を潰え 空く狼藉

落日留紅泥土哀   落日紅を留め 泥土哀し



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[4]
投稿者 長岡瀬風 

[歎地球村自然災害]

遥知美国未除災   遥かに知る 美国未だ災を除かずと

累次狂風伴雨來   累次の狂風 雨を伴って來る

半壊堰堤低一丈   半壊の堰堤 一丈低く

不全機械有何才   不全の機械 何の才か有らん

禍殃情報満城識   禍殃の情報 満城識り

學術研尋萬象開   學術の研尋 萬象開く

亦聞西陲潮捲地   亦聞く西陲 潮地を捲く

憂傷交到首重回   憂傷交々も到り 首重ねて回らす



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[5]
投稿者 岡田嘉崇 

[歎地球村自然災害]

扶揺飛雨亂雲堆   扶揺雨を飛ばして亂雲堆く

忽怒須臾家欲頽   忽ち怒りて須臾にして 家頽れんとす

地覆人號風色緊   地覆り人號び 風色緊しく

天飜山壊水流催   天飜り山壊れて 水流催す

士林直向除泥去   士林直ちに向い 泥を除いて去り

国手俄趨抱薬來   国手俄かに趨き 薬を抱いて來る

超克酸辛被災衆   酸辛を超克す 被災の衆

崎嶇不厭態雄哉   崎嶇厭わず 態雄なる哉



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[6]
投稿者 登龍 

[歎地球村自然災害]

應哀惨禍賦悲哉   應に哀れむべし惨禍悲哉を賦す

温暖歎嗟世慮灰   温暖歎嗟す世慮灰すを

貪福却行齎不幸   福を貪り却行不幸を齎す

何當災害減除來   何か當に災害減除來るべからん

<解説>

起句 本当に痛ましい災害を哀れみ悲しみ歎いて詩を作り
承句 地球の温暖化を歎き世の中の思いは無駄になる
轉句 幸せを貪り後ずさりして不幸を持ってくる、
結句 何時かは本当に災害を無くしたいものだ

 今の時代の難問であり必ず解決しなければならない重要な課題であるだけに作詩を持って全人類に訴えるチャンスを与えられ良かったと思います。
 提案者に感謝致します。

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[7]
投稿者 鮟鱇 

[歎地球村自然災害]

初冬地震山崩潰,   初冬の地震に山は崩潰ほうかいし,

大雪寒村皆被埋。   大雪の寒村 皆 埋まる。

去歳家邦民涕泣,   去歳 家邦の民は涕泣し,

今年世界友悲哀。   今年 世界の友は悲哀す。

海嘯怒濤呑老少,   海嘯かいしょう怒濤どとう 老少を呑み,

颶風洪水浸樓臺。   颶風ぐふうの洪水 楼台を浸す。

天頻毀壞自然好,   天は頻りに自然の好ましきを毀壊きかいし,

人要攀援共恤災。   人は要す 攀援はんえんし共に恤災じゅつさいするを。

[海嘯」:津波。
[颶風]:ハリケーン。
[攀援]:助け合う。
[恤災]:災いにあった人を憐れみ、金品を恵む。



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[8]
投稿者 点水 

[歎地球村自然災害]

地震発生城市摧   地震発生 城市摧け

損傷人命又家財   人命又家財を損傷す

地球活動因天運   地球の活動 天運に因るも

何奈当今苦受災   当今 受災に苦しむを何奈せん

<解説>

地震の発生を予測することは、まだまだできません。
天運とも言わざるを得ない点もあります。しかし、災害を受けた場合の苦しさを目の当たりすると、何を恨んだらよいのか、とも思います。

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[9]
投稿者 常春 

[克什米爾地震(カシミール地震)]

瓦解蒙人難拂堆   瓦解人をおおい、堆を払うこと難し

土崩斷路救援摧   土崩路を断ち、救援はばむ

崑崙山麓早秋冷   崑崙山麓秋冷早し

只管待望人與材   只管待ち望む人と材



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[10]
投稿者 菊太郎 

[歎地球村自然災害]

驚天動地是何災   驚天動地、是れ何の災いぞ

但見怒涛屍作堆   ただ見る怒涛、屍堆を作す

威脅自然當畏怖   威脅なり自然、まさに畏怖すべし

人為脆弱亦哀哉   人為の脆弱亦哀しき哉

<解説>

昨年のスマトラ大津波を想起して作りました。

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[11]
投稿者 深溪 

[歎地球村自然災害]

風水震來心欲摧   風水震來り 心摧けんと欲す、

罹民夙復笑顔開   罹民よ 夙に復し 笑顔を開かん。

義捐枯渇荒墟在   義捐の枯渇 荒墟に在り、

四海連携自免災   四海の連携 自ら災を免がれん。

 〇風水震=台風・ハリケーン・水害・地震をいう。
 ○荒墟=被災地 

<解説>

このところ、地球規模で自然災害が多発している。
スマトラ沖地震、米国沿岸のハリケーンの襲来、近くは、パキスタン地震と、心を傷めることばかり。
罹災民は世界からの義捐を枯渇して被災地で待っている。一日も早く罹災民の笑顔が待たれる。
世界は連携して自然災害から逃れる方策(京都議定書の批准など)を樹て実行すべきである。と。

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[12]
投稿者 桐山人 

[歎地球村自然災害]

濤刳海厂浸樓臺   濤は海厂かいがんえぐりて 樓臺を浸す

地震雲哮碧嶂摧   地は震ひ 雲はたけりて 碧嶂は摧かる

斯彼天患不能測   斯彼の天患 測る能はざれども

難民飢凍涙声哀   難民 飢凍して 涙声哀し



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[13]
投稿者 海山人 

[歎地球村自然災害]

今年気象凄於昨   今年の気象 昨[年]より凄たるは

使破乾坤不復回   破られし乾坤の 復た回らず[をもってか]

天道勿容人道業   地道容れず 人道の業

問君挙世自何来   天に問ふ 世を挙げて何[処]より来たる

[語釈]
「気 象」 :台風、豪雨、地震など。
「凄於昨」 :昨年より凄惨。
「使破乾坤」:台風の巨大化などは地球温暖化が原因とも。ここで乾坤は地球。
「勿」   :不。


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