第6回 世界漢詩同好会総会(二〇〇五年一月十六日)

 『世界漢詩同好会』の第六回総会は、一月十六日に開かれました。
 詩題(今回は『迎新送舊』)と押韻(今回は「上平声六魚」)として、その日までに各国の幹事サイトに投稿された詩を交流し合うものです。

 日本では、この『漢詩を創ろう』のサイトが幹事となり、皆さんの交流詩を集約、掲載します。



 日本からの参加詩です。投稿順に紹介します。


]  鮟鱇    「迎新送舊」    五言律詩
]  深渓    「迎新送舊」    七言絶句
]  謝斧    「迎新送舊」    七言律詩
]  Y.T   「守歳」      七言絶句
]  海山人   「迎新送舊」    五言律詩
]  登龍    「迎新送舊」    七言絶句
]  菊太郎   「迎新送舊」    七言絶句
]  逸爾散士  「迎新送舊」    七言絶句
]  岡田嘉崇  「迎新送舊」    七言律詩
10]  藤原崎陽  「迎新送舊」    七言律詩
11]  黒浴@   「迎新送舊」    七言絶句
12]  佐竹丹鳳  「迎新送舊」    七言律詩
13]  長岡瀬風  「迎新送舊」    七言律詩
14]  觀水    「迎新送舊」    七言絶句
15]  ニャース  「迎新送舊」    七言絶句
16]  禿羊    「乙酉元旦述懐」  七言絶句
17]  桐山    「迎新送舊」    七言絶句
18]  舜隱    「迎新送舊」    七言絶句
19]  逸爾散士  「迎新送舊」    七言絶句


番号をクリックして下さい。







[1]
投稿者 鮟鱇 

[迎新送舊]

三元曙光上,   三元 曙光のぼり,

四欲晩年疎。   四欲 晩年に疎し。

送舊人滋老,   旧を送って人 滋(ますます)老い,

迎新心自舒。   新しきを迎えて心 自ずから舒(の)ぶ。

庭梅將綴玉,   庭梅 まさに玉を綴らんとし,

雀語似憑虚。   雀語 虚に憑(よ)るに似る。

傾酒無功譽,   酒を傾けて功譽なく,

醉描翁跨驢。   醉って翁の驢に跨ぐを描く。

<解説>

 (語釈)
雀語:雀の鳴き声
憑虚:大空に身をゆだねる。空中に浮かぶ。

「雀語似憑虚」の句は、「雀の鳴き声が大空から聞こえるかのようだ」の意味で書いています。「燕雀いずくんぞ知らん大鵬の志」をもじっています。雀だって、空を飛べますから。

 最初に戻る






















[2]
投稿者 深渓 

[迎新送舊]

奇奇怪怪欲何如   奇々 怪々 何如せんと欲す

天怒風雲萬事虚   天怒 風雲 萬事虚しく

拭捨綺麗今歳裏   綺麗に拭い捨てん 今歳の裏

煕煕門巷曙光初   煕煕たる 門巷 曙光の初めを

<解説>

  非常に奇怪なことばかりでどうしたらよい、
  昨年はイラク問題から始まり、台風や地震と日本列島は悲鳴の連続であった。
  が、今年のうちに綺麗に拭い捨てて、
  和やかな初日を迎えたいものである。

 最初に戻る






















[3]
投稿者 謝斧 

[迎新送舊]

偕餐蕎麦歳將除   偕に蕎麦を餐して歳將に除し

時聞霜鐘思有余   時に霜鐘を聞けば思い余り有り

黄橘一包含口旨   黄橘一包 口を含んで旨く

緑茶三啜潤喉徐   緑茶三啜 喉を潤すこと徐ろなり

座間相話世情乱   座間相い話す 世情の乱れるを

胸裏偏希民意舒   胸裏偏えに希う 民意舒ぶを

孺子無聊就眠未   孺子無聊なるも 眠り就くこと未し

數窺戸外喜年初   數々戸外を窺っては 年初を喜ぶ

●偕餐蕎麦 越年蕎麦切

 最初に戻る






















[4]
投稿者 Y.T 

[守歳]

寒燈一夜意紛如   寒燈 一夜 意(おもい) 紛如

百八鐘聲夜牖虚   百八の鐘声 夜牖に虚(むな)し

臘盡年更人欲老   臘盡き 年更まって 人は 老いんと欲するも

樹花依舊笑茅廬   樹花 舊に依り 茅廬に笑う



 最初に戻る






















[5]
投稿者 海山人 

[迎新送舊]

履霜氷雪至   霜を履めば氷雪至るがごとく

万物破生虚   万物 破れて 虚に生ず

甚雨沈吟降   甚雨 沈吟を降し

大風発羽書   大風 羽書を発す

振衣思漢室   衣を振ひて漢室を思ひ

洗耳去秦墟   耳を洗ひて秦墟を去る

天命岐山在   天命 岐山に在り

何時大事與   何の時か大事ならむか



 最初に戻る






















[6]
投稿者 登龍 

[迎新送舊]

歳朝萬里曙光初   歳朝萬里曙光の初め

列島災妖凌太虚   列島災妖太虚を凌ぐ

脱舊迎新神所護   舊を脱し新を迎へ神の護る所

罐鐘牽望響軒除   罐鐘望みを牽き軒除に響く

<解説>

  元旦の朝果てしなき遠いところまで曙の光が届き
  災害の遭った日本の各地は大空を凌ぐほどである
  過去のことから抜け出し新しい年を迎えて神の護るところ
  ドラム缶を鐘の代わりに鳴らして望みを繋ぎ軒先に響く

新聞紙上に列島災害の表現が使用され災害の悲惨さが伝えられている。
年が変わり気分転換を図るのも人間の知恵である。
ドラム缶を鐘の代わりに叩くのも被災地の知恵である。
かつて戦後立ち上がったことを想い起こせば不可能のことは無い筈である。
迎新送舊は正に気分転換して幸せを迎える年に切り替えたい。


 最初に戻る






















[7]
投稿者 菊太郎 

[迎新送舊]

早暁風和迎歳初   早暁 風和らいで 歳初を迎え

忙忙處世六旬餘   忙忙として 世に處し 六旬餘

未辞塵事安吾分   未だ 塵事を辞せずとも 吾が分に安んじ

偕老相憐在草廬   偕老 相憐れみて 草廬に在り

<解説>

 慌ただしく人生走り続けて、いつしか60歳を過ぎた。
 今尚、世俗の縁は絶てないが、分に安んじ、夫婦仲良く生きていきたいもの。


 最初に戻る






















[8]
投稿者 逸爾散士 

[迎新送舊]

甲申安穏祈年初   甲申の安穏、年初に祈りしを

南海天災意悵如   南海の天災に意悵如たり

願逐厄魔迎吉歳   願わくは、厄魔を逐いて吉歳を迎え

困民救得世情舒   困民救い得て世情舒やかならんことを


 甲申歳末于印度洋有大海溢。忸怩安逸列閑文字。賦一詩而祈念被災者救援速。

 最初に戻る






















[9]
投稿者 岡田嘉崇 

[迎新送舊]

村翁晩節楽三餘   村翁晩節 三餘を楽しむ

世俗匆忙逼歳除   世上匆忙 歳除を同じくす

臈解愁眉話佳客   臈は愁眉を解いて 佳客話し

春隨咲面到精廬   春は咲面に隨って 精廬に到る

元朝集室族斟酒   元朝室に集いて 族は酒を斟み

過午淨牀人試書   過午牀を淨めて 人は書を試みる

麗日全家旗影暖   麗日全家 旗影暖かに

惠風吹洽早梅舒   惠風吹き洽いて 早梅舒ぶ




 最初に戻る






















[10]
投稿者 藤原崎陽 

[迎新送舊]

窮陰外郭出無車   窮陰外郭 出るに車無く 

老父探梅歩自徐   老父梅を探ねて 歩自ずから徐なり

枯葉飃零寂淒矣   枯葉飃零 寂として淒矣

啼鴉群噪亂紛如   啼鴉群噪 亂れて紛如

怱忙臘月誰敲戸   怱忙たる臘月 誰が戸を敲かん

恬静元朝初試書   恬静たる元朝 初めて書を試みん

茅屋開春籠瑞氣   茅屋春を開いて 瑞氣籠め

擧盃賀頌感有餘   盃を擧げ頌を賀して 感餘り有り




 最初に戻る






















[11]
投稿者 黒浴@

[迎新送舊]

瑞気蓬蓬新暦初   瑞気 蓬蓬 新暦の初め

賀書觀看坐茅廬   賀書を觀看せんと 茅廬に座す

客年多変傷心極   客年 変多く 傷心の極み

交吉祥觴懐晏如   吉祥の觴を交わし 懐(こころ) 晏如たり




 最初に戻る






















[12]
投稿者 佐竹丹鳳 

[迎新送舊]

椒酒傾觴拜歳初   椒觴を傾く拝歳の初め

窮陰送得意紛如   窮陰送り得て 意紛如たり

忍言南北災妖惨   言うに忍びんや 南北 災妖惨たり

更覺東西殉難虚   更に覚ゆ 東西 殉難の虚しさを

不管春陽周萬里   管せず 春陽は万里に周し 

無妨明月樂三餘   妨ぐる無し 明月に三餘を楽しむを

肝懐吐鳳詩人分   肝懐 吐鳳するは詩人の分

風雅千秋友與書   風雅 千秋 友と書と




 最初に戻る






















[13]
投稿者 長岡瀬風 

[迎新送舊]

机邊架上亂堆書   机邊架上 亂堆の書

詩債幾編猶有餘   詩債幾編 猶餘り有り

作意遲遲眠不就   作意遲遲 眠り就かず

立言淺淺歳將除   立言淺淺 歳將に除せん

新陽向暖風光換   新陽暖に向って 風光換わり

老友随年音信疎   老友年に随って 音信疎なり

兒女三孫含笑到   兒女三孫 笑を含んで到り

嚢銭僅與酔顔舒   嚢銭僅に與えて 酔顔は舒ぶ




 最初に戻る






















[14]
投稿者 觀水 

[迎新送舊]

寺寺鐘聲報歳除   寺寺の鐘声 歳除を報じ

乾杯喜得一年初   乾杯 喜び得たり 一年の初

請君休問嚢中事   請う君 問うを休めよ 嚢中の事

自有氷心晏晏如   自ら 氷心の 晏晏如たる 有り



 最初に戻る






















[15]
投稿者 ニャース 

[迎新送舊]

薄酒三杯醉有餘   薄酒 三杯にて 醉い余りあり、

新春却覺晩年初   新春 却って覺る 晩年の初まるを。

東京雪景令人驚   東京の雪景は人をして驚かしむるも、

白髪鏡中雪不如   鏡中の白髪 雪も如かず。

<解説>

 薄い酒 三杯でしこたま酔うようになり、
 新春に年齢の衰えを却って感じさせる。
 東京の雪景色に皆 驚くが、
 鏡の中の私の白髪は雪もおよばぬ白さである。 


 最初に戻る






















[16]
投稿者 禿羊 

[乙酉元旦述懐]

旭光遍照及茅廬   旭光 遍く照らして 茅廬に及ぶ

六十三年白髪疎   六十三年 白髪疎らなり

少忘萬邦災禍事   少らく万邦災禍の事を忘れ

抱孫臨賀老顔舒   孫を抱きて 賀に臨めば 老顔舒たり




 最初に戻る






















[17]
投稿者 桐山 

[迎新送舊]

寒山暁闇遠鐘初   寒山 暁闇 遠鐘の初

細径含霜落葉餘   細径 霜を含む 落葉の餘

一半暾光穿凍樹   一半の暾光 凍樹を穿ち

鶏聲新響滿田閭   鶏聲 新たに響き 田閭に滿つ




 最初に戻る






















[18]
投稿者 舜隱 

[迎新送舊]

怱怱假滿臘來初   怱々として仮は満つ 臘来るの初

將往隔山塵裡居   将に山を隔てたる塵裏に往いて居らんとす

幽澗漸攀煙漸肅   幽澗漸く攀れば 煙漸く粛しく

C篁逾密雪逾餘   清篁逾々密に 雪逾々余りたり

素峯故室半生牖   素峯は故室の半生の牖(まど)

蒼昊異ク千里車   蒼昊は異郷の千里の車

懶惰東風知孰報   懶惰 東風 知んぬ孰か報ずる

一枝攜得在茅廬   一枝携へ得て茅廬に在らん




 最初に戻る






















[19]
投稿者 逸爾散士 

[迎新送舊]

春光不厭到閑居   春光は厭わず閑居に到るを

希望漫充新歳初   希望、漫に充つ新歳の初

遮莫昨年詩債足   さもあらばあれ昨年、詩債足り

机邊放置讀残書   机邊に讀残の書を放置せんことを



 最初に戻る