第4回 世界漢詩同好会総会(二〇〇四年九月十九日)

 『世界漢詩同好会』の第四回総会は、九月十九日に開かれました。
 詩題(今回は『中秋節』)と押韻(今回は「上平声四支」)として、その日までに各国の幹事サイトに投稿された詩を交流し合うものです。

 日本では、この『漢詩を創ろう』のサイトが幹事となり、皆さんの交流詩を集約、掲載します。



 日本からの参加詩です。投稿順に紹介します。


]  謝斧    「中秋節」    七言律詩
]  海山人   「中秋節」    五言絶句
]  Y.T   「看月懐故人」  七言絶句
]  西克    「中秋節」    七言絶句
]  五流先生  「中秋節」    七言絶句
]  鮟鱇    「中秋節」    五言律詩
]  長岡瀬風  「中秋」     七言律詩
]  岡田嘉崇  「中秋」     七言律詩
]  真瑞庵   「中秋座月夜」  七言律詩
10]  藤原崎陽  「中秋節」    七言律詩
11]  逸爾散士  「中秋節」    七言絶句
12]  逸爾散士  「中秋節」    七言絶句
13]  登龍    「中秋節」    七言絶句
14]  ニャース  「中秋節」    七言絶句
15]  観水    「中秋節」    七言絶句
16]  佐竹丹鳳  「中秋節」    七言律詩
17]  鮟鱇    「中秋節貪夢」  七言律詩
18]  桐山堂   「京師旅懐」   七言絶句
19]  桐山堂   「中秋節」    七言絶句


番号をクリックして下さい。







[1]
投稿者 謝斧 

[中秋節]

昔日佳遊追憶悲   昔日の佳遊 追憶悲し

中秋値節更堪思   中秋節に値えば 更に思うに堪えり

草辺蟋蟀尋涼処   草辺の蟋蟀 涼を尋し処

軒下芭茅邀月時   軒下の芭茅(すすき) 月を邀えし時

水底季眞歡拊掌   水底の季眞に 歡んで掌を拊ち

酒家太白笑開眉   酒家の太白に 笑って眉を開かん

風流嘯嘯八仙客   風流たり嘯嘯 八仙の客

半逝黄泉無見期   半ばは黄泉に逝きて見(まみゆ)るに 期無し


[語釈]
 ●嘯嘯 嘯嘯会為吟社 
 ●八仙客 和田兎余 長岡瀬風 佐竹丹鳳 上方彩舟 田中光風 赤尾爽鳩 森谷松右 岡本喜子 庄司荘一
 ●水底季眞 眼花落井水底眠 擬森谷松右先生
 ●酒家太白 長安市上酒家眠 擬和田兎余先生
 ●拊掌 適意情
 ●芭茅 芒花



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[2]
投稿者 海山人 

[中秋節]

客秋先一葉   客秋 先ず一葉

円月宿千枝   円月 千枝に宿る

有主故園穣   主有りて故園穣かに

盈虚無尽時   盈虚 尽くる時無からむ


[語釈] 「客秋」故郷を離れて迎える秋。
「円月」満月。明月。また団欒、団子、月餅の暗喩。
「千枝」多くの枝。皆々の家庭の暗喩。
「故園」故郷。上平声十三元の韻字を用いる。

「元」韻の字を用いたのは、中国では「中秋節」に月餅を贈り合う風習があり、その由来として「明を興した朱元璋が、元朝を倒すべく8月15日に挙兵を決め、廻し文を月餅の中に隠して伝えた」故事があるのを踏まえる。
「穣」豊か。 「盈虚」エイキョ。満ち欠け。



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[3]
投稿者 Y.T 

[看月懐故人]

秋風記得別離時   秋風 記得たり 別離の時

馥郁桂香清夜滋   馥郁たる桂香 清夜に滋きを

冰輪一片天空挂   冰輪 一片 天空に挂かる

冀映故人千里姿   冀(こいねがわく)は 映せ 故人 千里の姿を



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[4]
投稿者 西克 

[中秋節]

早暁山行清露滋   早暁の山行清露滋し。

樹陰細径野花披   樹陰の細径野花披く。 

時飄一葉中秋影   時に飄える一葉に中秋の影。

満地蛩声囁節移   地に満つ蛩声節の移るを囁く。



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[5]
投稿者 五流先生 

[中秋望月]

五輪終幕素風吹   五輪 終幕して、素風吹き、

喞喞寒蛩啼竹籬   喞喞として 寒蛩 竹籬に 啼く。

孰吊金牌天漢側   孰か 吊せし 金牌、天漢の 側、

祝豐年喜溢妍姿   豊年を 祝って 喜び 妍姿に 溢る。


[語釈]
 五輪・・・オリンピック。
 素風・・・秋風。
 喞喞・・・虫の鳴き声のさま。
 寒蛩・・・こおろぎ。
 竹籬・・・竹製のまがき。
 金牌・・・金メダル。
 天漢・・・銀河。
 妍姿・・・みめよい姿。



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[6]
投稿者 鮟鱇 

[中秋節]

打鍵冩相思,   鍵を打って相思を写し,

舒情託一詩。   情を舒べて一詩に託す。

蛩鳴人老處,   蛩 鳴いて人 老いるところ,

雲散月明時。   雲 散って月 明るき時。

瞻仰玉容艷,   瞻仰す、玉容の艷にして,

看過我輩痴。   我輩の痴なるを看過するを。

緘封猶戀慕,   封を緘じて猶恋慕し,

欹枕更遲疑。   枕を欹てて更に遲疑す。


[語釈]
 打鍵:キーボードを打つ。ここでは、ワープロのキーボード。
 冩相思:冩は書くの意。相思は恋しく思うこと。
 瞻仰:見上げる。
 看過:見過ごす。大目に見る。
 遲疑:ぐずぐずとためらう。


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[7]
投稿者 長岡瀬風 

[中秋]

良宵氷鏡見尤奇   良宵氷鏡 見て尤っとも奇なり

庭裏虫鳴白露滋   庭裏虫鳴いて 白露滋し

景物古今無変態   景物古今 変態無く

風流文藻有佳期   風流の文藻 佳期有り

帝都急杵卻愁月   帝都急杵 卻って月を愁い

辺郡南楼亦入詩   辺郡南楼 亦詩に入る

冏冏閑窓揮醉筆   冏冏たる閑窓 醉筆を揮い

余生一榻憶人時   余生一榻 人を憶う時



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[8]
投稿者 岡田嘉崇 

[中秋]

中秋賞月我何辞   中秋賞月 我何んぞ辞せん

今夜吟邊詩酒宜   今夜吟邊 詩酒宜しい

餠餌穗茅供白兎   餠餌穗茅 白兎に供し

天穹冰鏡擅清姿   天穹冰鏡 清姿を擅にす

詠歌自整時方好   詠歌自ら整う 時方に好く

擧盞同慶晩更奇   盞を擧げ同に慶ぶ 晩更に奇なり

久濶師朋揮醉筆   久濶の師朋 醉筆を揮い

良宵雅興古人期   良宵の雅興 古人と期す



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[9]
投稿者 真瑞庵 

[中秋座月夜]

荊棘門扉叢菊籬   荊棘ノ門扉 叢菊ノ籬

紙窓灯燭乱蛩楣   紙窓ノ灯燭 乱蛩ノ楣

檐前邀月金輪冴   檐前月ヲ邀ヘテ 金輪冴エ

炉下傾杯酣露@   炉下杯ヲ傾ムケ 酣露@タル

可詠淵明閑適興   詠ズ可シ 淵明 閑適ノ興

勿吟子美世途悲   吟ズル勿レ子美 世途ノ悲シミ

六十二秋霜更加   六十二秋 霜 更ニ加ワエ

余生幾許楽無為   余生幾許ゾ 無為ヲ楽シムハ


第二句末字・・・・「木」+「眉」
第四句末字・・・・「示」+「右」


 秋は愁い多き季節。しかし、年を重ねての悠々自適の身ともなれば愁いを払ってその時々の趣を楽しむ事も許されるのではと。

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[10]
投稿者 藤原崎陽 

[中秋節]

涼風蟲語正秋時   涼風蟲語 正秋の時

一穗吟灯詩酒宜   一穗の吟灯 詩酒宜し

星斗横天清枕簟   星斗天に横たえて 枕簟清く

嫦娥侵@冷簾帷   嫦娥@を侵して 簾帷冷かなり

良宵曾眺彦山月   良宵曾って眺む 彦山の月

画舫閑遊大沢池   画舫閑に遊ぶ 大沢の池

庭院蕭条零露湛   庭院蕭条 零露湛え

回看往事撫霜髭   往事を回看して霜髭撫づ

@まど ユウ(版ー反)+(戸+甫)

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[11]
投稿者 逸爾散士 

[中秋節]

嫦娥美貌妬芳姿   嫦娥は美貌にして芳姿を妬み

他地清光照玉肌   他の地に清光は玉肌を照らさん

醇酒佳肴元不楽   醇酒、佳肴、元より楽しまず

中秋佳節缺相思   中秋の佳節、相思を欠く


 詠節季宴述戀情。

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[12]
投稿者 逸爾散士 

[中秋節]

宗族會餐歓話時   宗族、會餐し、歓話せし時

談論大戦亡人思   大戦を談論して亡き人を思う

日兵殺戮村上月   日兵の殺戮せし村の上の月は

今照南邦弔慰祠   今、照らすならん、南邦、弔慰の祠を



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[13]
投稿者 登龍 

[中秋節]

白露秋霑落葉知   白露秋霑ひ落葉は知る

西風吹老故園思   西風吹き老いて故園思ふ

孤輪磨出詩人興   孤輪磨き出づれば詩人興じ

幻想嫦娥巧吐奇   幻想嫦娥巧みに奇を吐く

[大意]
きらきら光る露が秋を潤し落葉は是を知る
秋風が吹き止んで故郷の事を思う
磨いたような月が出て来たので詩人は興味を引かれ
月の仙女を想い巧みに美しさを表す



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[14]
投稿者 ニャース 

[中秋節]

中秋門外夜風吹   中秋門外夜風吹き、

切切蟲声惜末期   切切たる蟲声は末期を惜しむ。

皓月天心華髪照   皓月 天心 華髪を照らせば、

新愁不尽長宵時   新しき愁いは尽きず長き宵の時。


ちょっと月に向かって哲学してしまいました。

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[15]
投稿者 観水 

[中秋節]

高樓酌酒又吟詩   高楼 酒を酌んで 又 詩を吟ず

颯颯秋風任所之   颯颯たる秋風 之く所に任さん

今夜結遊明月下   今夜 遊を結ぶ 明月の下

嚢中些少自相宜   嚢中 些少なりとも 自ら相宜し



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[16]
投稿者 佐竹丹鳳 

[中秋節]

秋宵如水冷侵肌   秋宵水の如く 冷肌を侵す

衰草庭前蟲語滋   衰草庭前 虫語滋し

風細桂香迎玉兎   風細く 桂香 玉兎を迎え

露濃梧影傍疎籬   露濃やかに 梧影 疎籬に傍う

起@門戸聞更鼓   起ちて門戸を@して 更鼓を聞き

坐発書筐検舊詩   坐して書筐を発いて 旧詩を檢べる

共眺姑蘇城下月   共に眺めし 姑蘇城下の月

擧頭何在憶先師   頭を挙げて 何くにか在る先師を

@「戸」+「同」−「一」


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[17]
投稿者 鮟鱇 

[中秋節貪夢]

善哉樗散醉無爲,   善きかな 樗散 醉って為すなく,

戀慕嫦娥横臥時。   嫦娥に恋慕す 横臥の時。

月寡吾鰥共天處,   月は寡 吾は鰥にして 天をともにするところ,

靈犀穿孔梦中馳。   靈犀 孔を穿ちて夢中に馳す。


<解説>
 樗散:   役立たず。
 嫦娥:   伝説上の美人。夫が仙女からもらった不治の薬を盗んで飲み、月に逃げた。また、月のこと
 寡・鰥:  寡(やもめ)は夫に死なれた女、鰥(やもめ)は妻に死なれた男。
 靈犀:   角の中心に穴がある霊妙な犀。
       その穴は両方が相通じており、二人の意思が知らず知らずのうちに通じあうことにたとえる。

 明月を眺めながらの空想です。「靈犀穿孔」の「孔」は、さらに大きな靈犀の角の穴と受け取っていただいても、また、好きな女性に向かっての猪突猛進ならぬ犀突猛進と受け取っていただいても、どちらでもよいかと思います。

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[18]
投稿者 桐山堂 

[京師旅懐(中秋節)]

月下凄涼松籟悲   月下 凄涼 松籟悲し

秋波漾漾掃清池   秋波 漾漾として 清池を掃ふ

隔君万里京城客   君と隔つること万里 京城の客

翠鬢遙懐東海涯   翠鬢 遥かに懐ふ 東海の涯



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[19]
投稿者 桐山堂 

[中秋節]

秋天一雁入雲危   秋天 一雁 雲に入りて危し

遠寺疎鐘催晩炊   遠寺の疎鐘 晩炊を催す

久逸里閭流景美   久しく逸しむ 里閭 流景の美

盤桓松下菊花籬   盤桓す 松下 菊花の籬



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