芙蓉漢詩集 第11集の第1作は 蘭君 さんからの作品です。
 



  暮江二題(其一)        

空江天欲暮   空江 天 暮れんと欲し

汀岸水煙微   汀岸 水煙微(かすか)なり

門犬聲傳處   門犬 声 伝ふる処

老漁茅屋歸   老漁 茅屋に帰る

          (上平声「四支」の押韻)

























 芙蓉漢詩集 第11集の第2作は 蘭君 さんからの作品です。
 



  暮江二題(其二)        

歩來江上路   歩し来たる 江上の路

日暮渚禽稀   日暮 渚禽稀なり

渡口雲俄出   渡口 雲 俄かに出で

孤舟載雨歸   孤舟 雨を載せて帰る

          (上平声「四支」の押韻)

























 芙蓉漢詩集 第11集の第3作は 辰馬 さんからの作品です。
 



  季夏偶成        

蜀葵花落雨雲行   蜀葵 花落ちて 雨雲行(さ)る

百日紅開溽暑横   百日紅 開き 溽暑横たふ

一陣爽風炎熱散   一陣の爽風 炎熱散じ

吟餘麥酒息心生   吟余の麦酒(ビール) 息心生ず

          (下平声「七陽」の押韻)


 梅雨明けの裏庭の花の移り変わりを読んでみました。























 芙蓉漢詩集 第11集の第4作は 辰馬 さんからの作品です。
 



  處暑        

殘蟬啼罷起涼風   残蝉 啼き罷んで 涼風起こる

落日蛩聲賑草叢   落日 蛩声 草叢を賑はす

誘友囲棋長一局   友を誘ひ 棋を囲んで 長し一局

二更談笑酒杯豊   二更 談笑す 酒杯豊たり

          (上平声「一東」の押韻)



<解説>

 残暑も八月下旬になり朝晩の涼しさを感ずる時候となって、好きな囲碁、お酒を詠んでみました。























 芙蓉漢詩集 第11集の第5作は S.G さんからの作品です。
 



  題紅葉        

清閑半日歩溪流   清閑 半日 渓流に歩す

染出千林收一眸   染め出だす千林 一眸に収む

葉葉紛飛看不盡   葉葉紛飛 看れども尽きず

勝花錦繍滿山秋   花に勝る錦繍 満山の秋

          (下平声「十一尤」の押韻)


 愛知県のくらがり渓谷の正に錦繍の紅葉を堪能しつつ山に登った思い出を詩にしてみました























 芙蓉漢詩集 第11集の第6作は S.G さんからの作品です。
 



  初冬偶成        

村莊過午寂無喧   村荘 過午 寂として喧無し

落木蕭蕭埋敗垣   落木蕭蕭 敗垣を埋む

信歩逍遙寒尚薄   歩に信せて逍遥すれば 寒尚ほ薄く

歸鴉飜影易黄昏   帰鴉 影飜して 黄昏なり易し 

          (上平声「十三元」の押韻)



 季節の移ろいを感じながら過ぎ去った時の流れを思い起こし歩を進めた初冬の一日























 芙蓉漢詩集 第11集の第7作は M.S さんからの作品です。
 



  戀人岬        

與君副腕水雲郷   君と腕を副ふ 水雲の郷

誓愛鐘聲快意長   愛を誓ふの鐘声 快意長し

赤石山峰連岳靜   赤石の山峰 連岳静かに

岩頭汀渚海風涼   岩頭 汀渚の 海風涼し

          (下平声「七陽」の押韻)


「快意長」: 余韻が心よく長い






















 芙蓉漢詩集 第11集の第8作は M.S さんからの作品です。
 



  堂ケ島遊覧        

凝灰浮石岸礁尋   凝灰 浮石の岸礁 尋ぬ

浸蝕濤痕億劫今   浸蝕 涛痕 億劫の今

遊覧舟航陽景淡   遊覧の舟航 陽景淡き

天窓洞窟水深深   天窓の洞窟 水深深たり

          (下平声「十二侵」の押韻)



「凝灰浮石岸礁尋」: 白色の浮石質凝灰岩からなる波食列島を尋ねる
「億劫」: 非常に長い時間
「陽景淡」: 太陽の光淡き
「天窓洞窟」: 海水の浸蝕でできた洞窟の天井の抜けた処 (天然記念物)























 芙蓉漢詩集 第11集の第9作は 修玲 さんからの作品です。
 



  夜坐感秋        

西風蕭瑟曲欄頭   西風 蕭瑟 曲欄の頭

兎影玲瓏星火流   兎影 玲瓏 星火流る

千里故山人健否   千里の故山 人 健なるや否や

青春懷憶去來稠   青春 懐憶 去来稠し

          (下平声「十一尤」の押韻)

























 芙蓉漢詩集 第11集の第10作は 修玲 さんからの作品です。
 



  初冬偶成        

小春午日麗風光   小春 午日 風光麗かなり

氣爽村園橘柚香   気爽かに 村園 橘柚香し

吟履逍遙雲影淡   吟履 逍遥 雲影淡く

詩情脈脈鳥聲長   詩情 脈脈 鳥声長し

          (下平声「七陽」の押韻)

























 芙蓉漢詩集 第11集の第11作は 洋靖 さんからの作品です。
 



  倫敦五輪        

林立旌旗飜惠風   林立の旌旗 恵風に飜る

堂堂開幕國威隆   堂堂の開幕 国威隆

闘魂美技歡聲擧   闘魂 美技 歓声挙げる

多種抗爭輝日東   多種 抗争 輝く日東

          (上平声「一東」の押韻)

























 芙蓉漢詩集 第11集の第12作は 洋靖 さんからの作品です。
 



  金環日食        

金環日食待望期   金環日食 待望の期

輝似指輪全土縲   輝きは指輪(リング)に似て 全土を縲ぐ

老若二人驚喜上   老若二人 驚き喜び上る

自然神秘寶生涯   自然の神秘 生涯の宝

          (上平声「四支」の押韻)

























 芙蓉漢詩集 第11集の第13作は H.Y さんからの作品です。
 



  中田島砂丘        

潮光搖蕩遠州洋   潮光 揺蕩 遠州の洋

蒼海濤聲自激昂   蒼海の涛声 自ずから激昂

白漠砂丘三景一   白漠たる砂丘 三景の一

風紋幽美迥相望   風紋 幽美 迥かに相望む

          (下平声「七陽」の押韻)


「風紋」: 風によって作られる模様
























 芙蓉漢詩集 第11集の第14作は H.Y さんからの作品です。
 



  弁天島煙花大會        

今切長橋萬客來   今切の長橋 万客 来る

絶佳風色夕陽催   絶佳の風色 夕陽 催す

煙花絢爛波間映   煙花 絢爛 波間に映り

相集浴衣倶擧杯   相集ふ 浴衣 倶に杯を挙ぐ

          (上平声「十灰」の押韻)



「今切」: 今切口で太平洋につながっている。

 浴衣も国際色豊かになってきた























 芙蓉漢詩集 第11集の第15作は 恕庵 さんからの作品です。
 



  雨窓聽蛙聲揮毫        

蛙聲醒午夢   蛙声 午夢醒め

五月雨如煙   五月雨 煙るが如し

垂柳枝吹   垂柳 枝 緑を吹き

間揮書札權   間かに揮ひ 書札 権る

          (下平声「一先」の押韻)


 「行きては到る、水極まる処。坐しては看る、雲起こるの時」王維の終南別業の詩句を想いての作。























 芙蓉漢詩集 第11集の第16作は 恕庵 さんからの作品です。
 



  遊清澄寺        

曾遊C淨地   曾って遊ぶ 清浄の地

緩歩氣融融   緩歩すれば 気 融融たり

林裡僧堂靜   林裡 僧堂 静かに

誰知色即空   誰か知らん 色即空なるを

          (上平声「一東」の押韻)



 本年五月三日に母が他界し、仏壇の前で手を合わすことが多い日に。
 自分の小さな命が、広大無辺な永遠のいのちのなかに抱かれていることに時々気づきます。感謝合掌。























 芙蓉漢詩集 第11集の第17作は 洋春 さんからの作品です。
 



  拷A讀書        

庭上架瓜風意徐   庭上の架瓜 風意徐なり

拷A倚机月刊書   緑陰 机に倚る 月刊の書

悠然獨坐無人境   悠然 独坐 無人の境

一巻讀完心自舒   一巻 読み完え 心自ずから舒ぶ

          (上平声「六魚」の押韻)


 暑さを忘れようと、ゴーヤーの棚の陰で、本を開いてみました。
 一冊を読み終わる頃には、なぜか落ち着いた、静かな気持ちになっていました。























 芙蓉漢詩集 第11集の第18作は 洋春 さんからの作品です。
 



  梅天閑詠        

萬峰雲霧濕衣襟   万峰 雲霧 衣襟を湿ほす

御製歌碑梅島潯   御製の歌碑 梅ヶ島の潯り

天地開懐泉館夕   天地懐を開く 泉館の夕べ

山行閑詠自同心   「山行」を閑かに詠ずれば自ずから心同にす

          (下平声「十二侵」の押韻)


 ずっと以前に梅ヶ島に行った時の事です。
 梅雨の頃で景色がけむって見えました。
 ここに天皇の行幸の時の「天地(あめつち)のおおきこころに親しむと・・」の碑があります。
 温泉につかり杜牧の「山行」を閑に詠ってみました。























 芙蓉漢詩集 第11集の第19作は 青淵 さんからの作品です。
 



  秋郊散歩        

西郊涼氣爽   西郊 涼気爽やかに

野徑一川斜   野径 一川斜めなり

村店靜煎茗   村店 静かに茗を煎れば

紅楓尚勝花   紅楓 尚ほ 花に勝る

逍遙隨白鷺   逍遥は白鷺に隋ひ

返照送歸鴉   返照は帰鴉を送る

秋色催愁緒   秋色 愁緒を催し

衰翁撫鬢華   衰翁 鬢華を撫す

          (下平声「六麻」の押韻)


 いなかの路を気ままに歩くと、自然に満ちて「万物詩に入る」という感がするのだが、悲しいかな、筆力なく、凡凡たる表現になってしまうもどかしさ・・・。
 でも、感じたことを自分なりに素直に詠もうと思うこの頃である・・・。























 芙蓉漢詩集 第11集の第20作は 報風 さんからの作品です。
 



  樂下保津川        

両豪ム綉保津川   両高フ錦綉 保津川

遊覧溪流紅葉鮮   遊覧 渓流 紅葉 鮮やかなり

舟上有名湯豆腐   舟上 有名 湯豆腐あり

雪肌映景更佳筵   雪肌 景を映じて 佳筵 更なり

          (下平声「一先」の押韻)


 飯田報風さんは九月十六日、逝去されました。

 謹んでご冥福お祈り申し上げます。
























 芙蓉漢詩集 第11集の第21作は 報風 さんからの作品です。
 



  嵐山桂川屋形船        

嵐山峽谷試清遊   嵐山の峡谷 清遊 試む

萬態紅楓競誘舟   万態の紅楓 競ひて舟を誘ふ

舟上割烹諧趣尚   舟上の割烹 趣尚に諧ふ

醉顔笑語満高秋   酔顔 笑語 高秋に満つ

          (下平声「十一尤」の押韻)

























 芙蓉漢詩集 第11集の第22作は 報風 さんからの作品です。
 



  訪舞雪湯治場        

乾坤一色白玲瓏   乾坤 一色 白 玲瓏

枯木愈粧雪舞風   枯木 愈よ 粧ひ 雪 風に舞ふ

湯治温泉山岳地   湯治の温泉 山岳の地

長期療養別天中   長期療養 別天の中

          (上平声「一東」の押韻)

























 芙蓉漢詩集 第11集の第23作は 報風 さんからの作品です。
 



  觀東京天樹搭        

天樹伸長六三四   天樹 伸長す 六三四

全都睥睨電波流   全都 睥睨し 電波 流る

隅田川畔新名勝   隅田の川畔 新名勝

遠近眺望遊覧舟   遠近 眺望す 遊覧の舟

          (下平声「十一尤」の押韻)

























 芙蓉漢詩集 第11集の第24作は 常春 さんからの作品です。
 



  悼報風詩兄        

天性樂天心更雄   天性楽天 心更に雄

遊山小景詩興豊   遊山の小景 詩興豊か

寺垣尊影描盈机   寺垣尊像描きて机に盈てあらん

泉域安眠御佛胸   泉域安かに眠れ御仏の胸に

          (上平声「一東」「二冬」の押韻)























 芙蓉漢詩集 第11集の第25作は 常春 さんからの作品です。
 



  龍脊梯田        

高段栽禾低看穗   高段 禾を栽え 低きには穗を看る

梯田上下尺三千   梯田の上下 尺 三千

深山耕得水盤屈   深山 耕し得たり 水盤 屈る

風土悠悠人半仙   風土 悠悠 人 半ば仙

          (下平声「一先」の押韻)


 桂林一帯は、少数民族が多い、長髪世界一とギネスに載っているのも此処である。
 龍脊棚田は最高所1180m、最低所380mと高低差800m、面積70平方キロ、江西壮(チャン)族の結晶である。
 木造板壁の家屋多く、親近感が沸く。























 芙蓉漢詩集 第11集の第26作は 常春 さんからの作品です。
 



  漓江舟遊        

似搭如螺亂立山   搭の似く螺の如く乱れ立つ山

各般天與造形刪   各般 天与 造形の刪(けず)り

沿流誇耀奇觀繼   流れに沿いて誇耀 奇観継がる

正是風光第一寰   正に是 風光第一の寰

          (上平声「十五刪」の押韻)



 桂林から陽朔まで80q、漓江を下る。
 山脈とか連山とかの表現はできない。
 独立した山が、ひょこひょこと立ち並び、一つ一つが特徴を誇る。山水画の世界。























 芙蓉漢詩集 第11集の第27作は 常春 さんからの作品です。
 



  大震災餘波        

一年瞬過夏還來   一年 瞬に過ぎ 夏また来る

東北街頭瓦礫堆   東北の街頭 瓦礫 堆し

錯雜風評及隣近   錯雑たる風評 隣近に及ぶ

靜聽實學踏査該   静かに聴け 実学踏査の該(ことごと)くを

          (上平声「十灰」の押韻)


 「ゴジラ」は水爆実験で突然変異した怪獣で大暴れした人気アニメ、核爆発の怖さを訴えた。
 が、放射能即遺伝子変異と、刷り込まれた人も多いかな?「福島では妊婦胎児への影響は心配いりません」という実学の言葉は消されがち。























 芙蓉漢詩集 第11集の第28作は 常春 さんからの作品です。
 



  泊天草洋        

天草洋 天草洋   天草洋 天草洋

浩然海角憶邊防   浩然たる海角 辺防を憶ふ

放漫長期濛領域   放漫 長期 領域 濛として

蛟龍魑魅眼前荒   蛟竜 魑魅 眼前に荒ぶる

          (下平声「七陽」の押韻)



<解説>

瀟湘神詞譜
頼山陽が呉越を望んだ天草洋は、東支那海を見渡す恰好の場所。
中国は1950年代、尖閣諸島は沖縄に帰属と認めていたものを、なし崩しに地図を塗り替えた?























 芙蓉漢詩集 第11集の第29作は 幹心 さんからの作品です。
 



  寒月        

風寒疎影好   風 寒く 疎影 好し

窓外既黄昏   窓外 既に黄昏

乘興徘徊久   興に乗じて徘徊すること久し

月光湔俗煩   月光は 俗煩を湔(あら)ふ

          (上平声「十三元」の押韻)



<解説>

 地域の自然に親しみつつ、人の心の温かさを感じ、生かされている自分を見つめています。
 日々体を大切にと念じて。























 芙蓉漢詩集 第11集の第30作は 緑楓林 さんからの作品です。
 



  古戦場(諏訪湖畔にて)        

深秋湖畔轉荒涼 深秋の湖畔 転た荒涼

史傳興亡古戰場 史伝 興亡の古戦場

悲運機山名不朽 悲運なる機山 名は朽ちず

追憶一夜月如霜 追憶 一夜 月 霜の如し

          (下平声「七陽」の押韻)



 諏訪湖畔に宿泊したとき、月が大変きれいな一夜で歴史上の武将を思いだしました。

「機山」: 武田信玄
























 芙蓉漢詩集 第11集の第31作は 緑楓林 さんからの作品です。
 



  立宗谷岬望樺太島        

清空水碧白鷗翔   清空 水碧 白鴎翔び

打岸波濤潮色光   岸打つ 波濤 潮色光る

樺太水天青一髪   樺太 水天 青一髪

往來途絶幾星霜   往来 途絶して 幾星霜

          (下平声「七陽」の押韻)


 宗谷岬を訪れたとき大変天候が良く、遠く洋上には樺太を看ることが出来ました。























 芙蓉漢詩集 第11集の第32作は 緑楓林 さんからの作品です。
 



  富士山遠望        

靈峰遙望上陵丘   霊峰 遥かに望む 陵丘の上

颯颯清風碧宇秋   颯颯 清風 碧宇の秋

新雪山巓如白帆   新雪の山巓 白帆の如く

悠然屹立斷雲留   悠然と屹立し 断雲留まる

          (下平声「十一尤」の押韻)



 自宅の裏山より新雪の富士山を遠望したときの詩です。























 芙蓉漢詩集 第11集の第33作は 洋景 さんからの作品です。
 



  金環日食        

萬人待望仰東天   万人待望 東天を仰ぐ

新樹輝辰遭遇縁   新樹輝く辰 遭遇の縁

陽月地球浮線上   陽 月 地球 線上に浮かぶ

神奇宇宙意遙然   神奇宇宙 意 遙然たり

          (下平声「一先」の押韻)


 生涯に二度と見られない金環日食という珍しい現象をこの眼で見ることが出来、宇宙の一員である事を実感しました。

「神奇」: 不思議  























 芙蓉漢詩集 第11集の第34作は 洋景 さんからの作品です。
 



  伊根里        

西風嫋嫋野原涯   西風嫋嫋 野原の涯

亂草白波丹後羈   乱草白波 丹後の羈

漸到融融海村宿   漸く到る融融 海村の宿

駢羅舟屋側湾奇   駢羅舟屋 湾に側して奇なり

          (上平声「四支」の押韻)



<解説>

 かねてから一度尋ねたいと思っていた、伊根の舟屋に向いました。
 道中は道幅も狭く、野原の中の道を延々と走りやっと辿り着きました。
 静かな海に向かって舟屋がずらりと並んで見事でした。

「駢羅」: ならぶ
「舟屋」: 船の収蔵庫であると共に住居でもある。
     伊根町には二百三十軒余りあり、国の伝統的建造物群保存地区である。























 芙蓉漢詩集 第11集の第35作は 洋景 さんからの作品です。
 



  瑞士朝        

窗前嚴峭嶽   窓前 厳峭の岳

靉靆彩雲娟   靉靆 彩雲娟なり

岑嶺耀紅旭   岑嶺 紅旭耀き

湖邊煙碧漣   湖辺 碧漣煙る

村閭鐘韻度   村閭 鐘韻度り

獄子牛旋   緑野 子牛旋る

瑞士C晨急   瑞士 清晨急なり

農人共自然   農人 自然と共にす

          (下平声「一先」の押韻)



<解説>

 スイスには家の若い家族が住んでいた頃、四回程出かけました。
 この時はアイガーの麓の山荘に一週間程宿泊し、彼方此方の山をトレッキングしました。

 或る朝早く目覚めた時の光景を詠んだものです。

「厳峭岳」: 険しい山
「靉靆」: たなびくさま
「岑嶺」: 山の頂上
「碧漣」: さざなみ
「村閭」: 村
「清晨」: 朝