[01]　参加者　　玄齋　


　　夏日聽風　　　　　　　　

早朝池上玉荷幽　　　早朝の池上　玉荷　幽に

處處搖花風急流　　　処処　花を揺らして風　急に流る

水畔鳴條竹叢裏　　　水畔　条を鳴らす竹叢の中

一聽�C韻汗珠收　　　一たび清韻を聴けば汗珠　収まる

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

　早朝の池の水面の上には、美しい蓮の花が、奥深く静かに咲いていて、
　所々、花を揺らして、風が急に流れていきました。
　池の畔（ほとり）では、（風が）枝を鳴らしている竹藪（たけやぶ）の中に、
　一度、その枝を鳴らす風の清らかな響きを聴くと、滴（しずく）となった汗が収まっていきました。

[02]　参加者　　玄齋　


　　中秋風雨　　　　　　　　

曇天皆案迓中秋　　　曇天　皆　案じて中秋を迓へ

欲問今宵看月不　　　問はんと欲す今宵　月を看るや不や

雨暗金輪何處隱　　　雨　暗くして金輪　何処にか隠る

風涼紫閣使人愁　　　風　涼しくして紫閣　人をして愁へしむ

卻雲明鏡�C光澹　　　雲を却けて明鏡　清光　淡く

喜霽空亭白露幽　　　霽るるを喜びて空亭　白露　幽なり

乍出新詩壯年者　　　乍ち新詩を出だす壮年の者

遠觀星宿夜悠悠　　　遠く星宿を観て夜　悠悠

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

　曇天を皆が考えて、陰暦八月十五日の中秋（ちゅうしゅう）の日を迎え、
　今夜、月を眺めるかどうかを問おうと思いました。

　雨で暗くなって、金の輪のような月は、どこに隠れたのでしょうか。
　風が涼しくなって、金色や青緑色に輝く宮殿では、人を悲しませていました。

　雲を遠ざけて、明るい鏡のような月の清らかな光が、淡く輝いていて、
　晴れたのを喜んで、人のいない東屋（あずまや）では、白い露が微かに輝いていました。

　すると突然に、新作の詩歌を作り出す、三十代の働き盛りの人がいて、
　遠くの星座を眺めて、夜は遠く遥かに広がっていました。

　二首目は中秋の日の風と雨について詠みました。
　こういう雨から晴れになるダイナミックな光景も良いのですが、
今年の中秋の日は、何とか晴れてくれると良いなと思います。

　名月が見られますように。

[03]　参加者　　ニャース　


　　童年　　　　　　　　

懷念童年愛夏休、　　　

野營入海下川遊、　　　

貪玩最怕涼風度、　　　

學校將開作業愁。　　　

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

　懐かしい少年時代は夏休みが大好きであった、
　キャンプ　海遊び　川下りなど遊び呆けていた。
　少年がいちばんおそれるのは、風が涼しさを運ぶとき、
　学校がもうすぐ始まる　宿題をどうしようと毎度のことながら　愁うのである。

[04]　参加者　　太白山　


　　聞殘鶯　　　　　　　　

雨餘樵路�拷A稠　　　雨余の樵路　緑陰稠し

深谷無風山更幽　　　深谷　風無く　山更に幽なり

又聽殘鶯真巧囀　　　又聴く　残鶯　真に巧囀

峡中清韻洗閑愁　　　峡中の清韻　閑愁を洗ふ

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

[05]　参加者　　道佳　


　　風　　　　　　　　

揺綴紫薇連日優　　　揺綴す　紫薇　連日優れん

真紅招請気希求　　　真紅の招請　気の希求

飛升炎暑鈴虫韻　　　炎暑を飛升さする　鈴虫の韻

待望清涼鮮錦秋　　　待望す　清涼　鮮な錦秋

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

[06]　参加者　　雷鳴　


　　晩夏村祭　　　　　　　　

行雲遮日気如秋　　　行雲日を遮りて気は秋の如く

鼓楽任身忽忘愁　　　鼓楽に身を任せれば忽ち愁いを忘る

童稚甘眠還満酌　　　童稚が甘眠すれば還た満酌

引籤吉兆更何求　　　籤を引けば吉兆更に何をか求めん

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

　流れる雲が日を遮り、暑気は去って秋が訪れたよう
　祭囃子に合わせて踊れば、たちまち愁いも消えていく
　子供が眠ってしまえば、また酒をなみなみと注ぎ
　くじを引けば吉と出て、これ以上言うことはない

毎年開催されている近所の障害者授産施設主催の夏祭りに参加しました。
午前から午後にかけて、食べ物の屋台が出て、舞台では和太鼓・篠笛が奏でられ、多くの人で賑わいました。
まだ日差しは強かったのですが、ときおり雲に日は遮られて過ごしやすい一日でした。
祭りの最後は豪華賞品が当たる恒例のくじ引きです。
わたしも商品券などを手に入れることができ、大いに祭りを楽しみました。

[07]　参加者　　緑風　


　　秋日漫歩　　　　　　　　

西郊漫歩白雲流　　　西郊　漫歩　白雲流る

苔径灯籠寂静秋　　　苔径の灯籠　寂静の秋

古刹無人塵外境　　　古刹人無く　塵外の境

鐘声嫋嫋桂香幽　　　鐘声　嫋嫋　桂香幽なり

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

[08]　参加者　　緑風　


　　京都晩秋　　　　　　　　

錦楓樹下寺観前　　　錦楓　樹下　　寺観の前

遠処鐘声林叢伝　　　遠処の鐘声林叢に伝わる

夜半西風紅葉尽　　　夜半の西風に　紅葉尽き

使吾最悵晩秋天　　　吾をして最も悵ましむる　晩秋の天

　　　　　　　　　　（下平声「一先」の押韻）

[09]　参加者　　遥峰　


　　故郷　　　　　　　　

無時遠訪故園秋　　　時と無く 遠く訪（おとな）ふ 故園の秋

雪未白山蟲韻柔　　　雪 未だ山を白めず 蟲韻柔らかなり

隣近刈禾忙蓄蔵　　　隣近 刈禾（がいか） 蓄蔵に忙し

今来村気結風流　　　今来 村気 結（ゆい）の風流る

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

「刈禾」：　（がいか）穀物の刈り取り。
「結」：　（ゆい）助け合いの習慣。

[10]　参加者　　東山　


　　春風村景　　　　　　　　

春風駘蕩意由由　　　春風駘蕩　意　由由

停杖眺望和景柔　　　杖を停めて眺望すれば　和景柔らかなり

暖気花開雲雀舞　　　暖気　花開いて　雲雀舞ひ

晴江千里一山悠　　　晴江千里　一山悠なり

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

[11]　参加者　　東山　


　　春風逍遥　　　　　　　　

苦寒漸去暖光囘　　　苦寒漸く去って　暖光回り

引鶯聲尋東帝才　　　鶯声に引かれて　東帝の才を尋ぬ

古刹清溪氷釋早　　　古刹の清溪　氷　釈けて早く

春風大吉好文開　　　春風大吉　好文開く

　　　　　　　　　　（上平声「十灰」の押韻）

[12]　参加者　　洋景　


　　秋風　　　　　　　　

雨霽前庭��氣流　　　雨霽て前庭��気流れ

窗帷嫋嫋入吟眸　　　窓帷嫋嫋吟眸に入る

萩花揺動垂枝發　　　萩花揺動枝を垂れて発き

檐下玻鈴簫瑟秋　　　檐下の玻鈴蕭瑟の秋

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

[13]　参加者　　历山　


　　死歌　　　　　　　　

人間極難子知不　　　人間極めて難し　子知るや不や

望死微行誰説愁　　　死を望むも行え微　誰か愁を説かん

坐見生涯都似戦　　　坐して見る生涯　都て戦ぐが似し

機縁待満只随流　　　機縁が満つるを待ちて　只流れに随ふ

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

　世間というものは何と煩わしいのでしょうか、あなたは知っていますか
　死ぬにも死ねずこの愁いを誰が説いてくれるのでしょうか
　一人坐して生涯を翻れば全て風にそよがれている様なものです
　ここまできたら人生は機縁が満ちるのに任せて只このまま流されて行くしかありません

[14]　参加者　　岳城　


　　秋日散策　　　　　　　　

虫響路程登小丘　　　虫響の路程　小丘に登る

四望澄景穎低秋　　　四望の澄景　穎低の秋

秋風嫋嫋快無限　　　秋風　嫋嫋　快　無限

映日金波詩可酬　　　日に映ず金波　詩もて酬ゆべし

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

「穎低」：　(えいてい)穂が垂れる 「金波」：　稲穂の波

[15]　参加者　　岳城　


　　落花風　　　　　　　　

扶搖叩戸水雲重　　　扶揺　戸を叩き水雲　重なる

櫻樹妖紅庭院中　　　桜樹　妖紅　庭院の中

野鳥関関人未起　　　野鳥　関関　人　未だ起きず

曉風習習落花風　　　暁風　習習　落花の風

　　　　　　　　　　（上平声「二冬」・上平声「一東」の通韻）

「扶揺」：　つむじ風
「関関」：　鳥のなごやかに啼く様
「習習」：　春風

[16]　参加者　　岳城　


　　初夏散策（薫風）　　　　　　　　

暇遑散策緑林前　　　暇遑　散策　緑林の前

樹影搖搖忽颯然　　　樹影　揺揺　忽ち颯然

蜀鳥一声何処起　　　蜀鳥　一声　何の処にか起る

薫風麦浪有年田　　　薫風　麦浪　有年の田　

　　　　　　　　　　（下平声「一先」の押韻）

「暇遑」：　暇にまかせて
「颯然」：　さっと風の吹く様
「蜀鳥」：　ホトトギス
「薫風」：　穏やかな初夏の風
「有年」：　豊作（ここは麦）

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

[17]　参加者　　岳城　


　　深宵朔風（北風）　　　　　　　　

熒熒北斗一天遙　　　熒熒たる北斗　一天　遥かに

窓外空庭月色饒　　　窓外の空庭　月色　饒(ゆた)かなり　

老樹連枝搖落累　　　老樹の連枝　揺落　累(しきり)

朔風凜冽坐深宵　　　朔風　凜冽　深宵に座す

　　　　　　　　　　（下平声「二蕭」の押韻）

「熒熒」：　(けいけい)星の輝く様
「朔風」：　北風
「凜冽」：　寒々とした様

[18]　参加者　　芳原　


　　賦秋風　　　　　秋風を賦す　　　

緑樹纔搖陰至秋　　　緑樹纔かに陰を揺らして秋至る

傾杯投翰自餘愁　　　傾杯投翰自ら愁いを余す

人�闊站p榮辱老　　　人�閧ﾌ栄辱を遺却して老ゆれば

假寐田翁百尺樓　　　仮寐田翁百尺楼

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

[19]　参加者　　観水　


　　早行　　　　　　　　

明發江邊月一鉤　　　明発 江辺 月一鉤

曉風翦翦度中洲　　　暁風 翦翦として 中洲を度る

眼前忽見煙霞散　　　眼前 忽ち見る 煙霞散じ

還往釣船携白鴎　　　還往の釣船 白鴎を携ふを

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

　朝早くから出かければ　有明の月かがやいて
　暁の風ひえびえと　川の中洲を吹きわたる
　水面のもやの晴れるとき　すぐ目の前にあらわれる
　行ったり来たりの釣り船に　戯れているカモメたち

[20]　参加者　　観水　


　　旅夜見秋風　　　　　　　　

八月涼風到　　　八月 涼風到り

倚窓秋思樓　　　窓に倚る 秋思の楼

中天明月出　　　中天 明月出で

遠嶺暮雲收　　　遠嶺 暮雲収まる

好景入青眼　　　好景 青眼に入り

幽光照白頭　　　幽光 白頭を照らす

空杯獨徒弄　　　空杯 独り徒らに弄す

何處埋�ｸ愁　　　何れの処か 郷愁を埋めん

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

　中秋の　風は涼しく
　窓べにて　ふるさと思う
　もの思う　窓にもたれて
　空たかく　月がのぼれば
　やま遠く　雲は去り行く
　目にうつる　よろしきひかり
　白いもの　かすかに照らす
　からっぽの　さかずき前に
　この気持ち　どうしたものか

[21]　参加者　　観水　


　　秋夕漫吟　　　　　　　　

日暮出門何處遊　　　日暮 門を出でて 何れの処にか遊ばん

徐離陋巷欲忘憂　　　徐に陋巷を離れて 憂ひを忘れんと欲す

野邊葉落雲霞去　　　野辺 葉落ちて 雲霞去り

天際雁過河漢流　　　天際 雁過ぎて 河漢流る

不憾窮居身碌碌　　　憾まず 窮居に身の碌碌たるを

還知大道意悠悠　　　還って知る 大道に意の悠悠たるを

爽風掃却塵寰事　　　爽風 掃却す 塵寰の事

獨歩行吟頗自由　　　独歩 行吟 頗る自由

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

　夕暮れ時に家を出て　どこへ行ったらいいだろう
　しずかに巷から離れ　憂さを忘れてしまいたい
　木々の葉っぱが落ちるとき　野辺に消え去る晩霞
　わたる雁（かりがね）見送って　そらにかがやく天の川
　わびしいくらしに甘んずる　つまらぬ我が身もうらまない
　大きな道にでてみれば　悠然とした心持ち
　この世の中の瑣末事　爽やかな風が吹き払う
　ひとり歩いて詩をうたい　まったく自由というものさ

[22]　参加者　　杜正　


　　潮風　　　　　　　　

改暦回遊海上舟　　　暦を改め　回遊す　海上の舟

潮風習習韻難休　　　潮風　習々と　韻　休み難し

浴余窓外天将暮　　　浴余の窓外　天　将に暮れんとす

月影星文四面浮　　　月影　星文　四面に浮かぶ

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

　令和になって、日本一周のクルージングに参加し、その時の印象を詠みました。

[23]　参加者　　茜峰　


　　早秋金剛登山　　　　　　　　

枝葉緻揺風早秋　　　枝葉は　緻（こまか）に揺れ　風は早秋なり

澄清色彩野花優　　　澄清の色彩　野花は優（やさ）し

登行石径渓声快　　　登行する石径　渓声は快く

青碧大峰連嶂悠　　　青碧の大峰　連嶂悠かなり

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

[24]　参加者　　鮟鱇　


　　風　五言絶句其一　紅黄飛碧流　　　　　　　　

新涼拂面柔，　　　新涼　面を払ひて柔らかく，

夢醒自回頭。　　　夢醒めて自ずから頭を回らす。

不見仙姿走，　　　仙姿の走（い）くは見えずも，

紅黄飛碧流。　　　紅黄　碧流に飛ぶ。

　　　　　　　　　　（下平声十一尤）

[25]　参加者　　鮟鱇　


　　風　五言絶句其二　飛蚊搖晃遊　　　　　　　　

妖精張翅舞，　　　妖精　翅を張りて舞ひ，

拂面掃騷愁。　　　面を払ひて騷愁を掃く。

回看飛蚊影，　　　回看すれば飛蚊の影，

隨風搖晃遊。　　　風に隨ひ搖晃（ゆらゆら）と遊ぶ。

　　　　　　　　　　（下平声十一尤）

[26]　参加者　　鮟鱇　


　　風　五言絶句其三　裁詩醉賞梅　　　　　　　　

春淺暗香流，　　　春浅く暗香流れ，

詩箋堪臥遊。　　　詩箋　臥遊するに堪ふ。

花魁巾舞處，　　　花魁　巾舞せるところ，

人醉坐瑤舟。　　　人酔ひて瑶舟に坐す。

　　　　　　　　　　（下平声十一尤）

　臥遊：居ながらにしてその地に遊ぶ。空想の旅。
　瑶舟：酒杯の意あり。

[27]　参加者　　鮟鱇　


　　風　五言絶句其四　飲酒滿瑤舟　　　　　　　　

風藥無靈驗，　　　風薬に霊験なく，

苦吟難解愁。　　　苦吟　愁ひを解きがたし。

無言擱禿筆，　　　言無く禿筆を擱いて，

飲酒滿瑤舟。　　　酒の瑶舟に滿つるを飲む。

　　　　　　　　　　（下平声十一尤）

　風薬：瘋癲を治す薬。
　禿筆：ちびた筆。使い古した筆。
　瑶舟：酒杯の意あり。

[28]　参加者　　鮟鱇　


　　風　五言絶句其五　詩壇有風派　　　　　　　　

風派順潮流，　　　風派　潮流に順ひ，

吟詩坐玉舟。　　　詩を吟じて玉舟に坐す。

醉來搖口吻，　　　醉ひ来たれば口吻を揺らし，

閑話酒亭留。　　　閑話して酒亭に留まる。

　　　　　　　　　　（下平声十一尤）

　風派：風を見て舵を巧みに操作する人。
　玉舟：酒杯の意あり。

[29]　参加者　　鮟鱇　


　　風　七言絶句其一　東　風　　　　　　　　

東風暖氣促春遊，　　　東風暖気　春遊を促し，

人入櫻林若海流。　　　人の桜林に入ること海流のごとし。

團坐花筵喜歡笑，　　　花筵に団坐し歓笑するを喜び，

醉來搖曳坐瑤舟。　　　醉ひ来たれば揺曳（ゆれ）て瑶舟に坐す。

　　　　　　　　　　（下平声十一尤）

　瑶舟：酒杯の意あり。

[30]　参加者　　鮟鱇　


　　風　七言絶句其二　南　風　　　　　　　　

南風穿入緑陰流，　　　南風　緑陰に穿ち入りて流れ，

熱愛沸騰蟬唱酬。　　　熱愛沸騰して蝉　唱酬す。

捜覓對方聲朗朗，　　　対方（相手）を捜し覓（もと）めて声は朗朗，

欲成晩戀鼓吟喉。　　　晩恋を成さんと欲して吟喉を鼓す。

　　　　　　　　　　（下平声十一尤）

　晩恋：老いらくの恋。蝉は生涯の最後に恋をする。

[31]　参加者　　鮟鱇　


　　風　七言絶句其三　西　風　　　　　　　　

西風颯颯下江流，　　　西風颯颯として江流を下り，

日入楓林紅葉稠。　　　日は楓林に入りて紅葉稠（おお）し。

獨坐水亭傾小盞，　　　獨り水亭に坐して小盞を傾け，

無言傷感晩年秋。　　　言無く感を傷む　晩年の秋。

　　　　　　　　　　（下平声十一尤）

[32]　参加者　　鮟鱇　


　　風　七言絶句其四　北　風　　　　　　　　

北風卷雪舞寒流，　　　北風の卷きたる雪　寒流に舞ひ，

醉叟爐邊喜臥遊。　　　醉叟　炉辺に臥遊を喜ぶ。

夢想自由春信早，　　　夢想は自由にして春信早く，

一枝筆底墨花稠。　　　一枝の筆の底に墨花稠（おお）し。

　　　　　　　　　　（下平声十一尤）

　臥遊：居ながらにしてその地に遊ぶ。空想の旅。

[33]　参加者　　鮟鱇　


　　風　七言絶句其五　不見仙姿過　其一　　　　　　　　

蛩聲鳴盡已深秋，　　　蛩聲　鳴き尽きて已に深秋，

有手楓林拂面柔。　　　楓林に面を払ひて手の柔かきあり。

不見仙姿紅葉舞，　　　仙姿は見えざるも紅葉舞ひ，

輕篩夕影泛江流。　　　軽く篩へり　夕影の江流に泛（うか）ぶを。

　　　　　　　　　　（下平声十一尤）

[34]　参加者　　鮟鱇　


　　風　七言絶句其六　不見仙姿過　其二　　　　　　　　

有誰拂面掃秋愁？　　　誰かありて面を払ひ秋の愁ひを掃かんや，

回看楓林落葉稠。　　　楓林を回看すれば落葉稠（おお）し。

不見仙姿過野店，　　　見えざる仙姿　野店を過（よぎ）り，

紅旗翻卷酒香流。　　　紅旗　翻り卷いて酒香流る。

　　　　　　　　　　（下平声十一尤）

[35]　参加者　　鮟鱇　


　　風　七言絶句其七　詩神旋舞開詩眼　　　　　　　　

醉筆縱横馳不休，　　　醉筆　縱横に馳せて休まず，

吟魂卻老喜仙遊。　　　吟魂　老いを却（しりぞ）けて仙遊するを喜ぶ。

詩神旋舞開詩眼，　　　詩神　旋舞すれば詩眼開き，

箋上台風覆玉舟。　　　箋上の台風　玉舟を覆す。

　　　　　　　　　　（下平声十一尤）

　玉舟：酒杯の意あり。

[36]　参加者　　鮟鱇　


　　風　五言律詩其一　才女醉瑤舟　　　　　　　　

汗水洗詩愁，　　　汗水　詩愁を洗ひ，

初涼文苑流。　　　初涼　文苑に流る。

天天消一夏，　　　天天　一夏を消し，

各各有千秋。　　　各各に千秋あり。

晩戀殘蟬訴，　　　晩恋　残蝉は訴へ，

吟情老境稠。　　　吟情　老境に稠（おお）し。

新風有誰厭，　　　新風　誰かありて厭はんや，

才女醉瑤舟。　　　才女の瑶舟に醉へるを。

　　　　　　　　　　（下平声十一尤）

　各有千秋：人それぞれに長所・特色があること。
　晩恋：老いらくの恋。蝉は生涯の最後に恋をする。
　瑶舟：酒杯の意あり。

[37]　参加者　　鮟鱇　


　　風　五言律詩其二　蚊子任風舞　　　　　　　　

斜暉照詩苑，　　　斜暉　詩苑に照り，

美酒促相酬。　　　美酒　相ひ酬ゆるを促す。

鼓翅吟魂似，　　　翅を鼓さば吟魂は似たり，

任風蚊子遊。　　　風に任せて蚊の遊ぶに。

嗡嗡和人醉，　　　嗡嗡（ぶんぶん）と人の醉へるに和し，

暗暗入閨幽。　　　暗暗（ひそかに）閨（ねや）の幽なるに入る。

吸引繆斯血，　　　吸引したる繆斯（ミューズ）の血，

錦箋朱字留。　　　錦箋に朱字を留めり。

　　　　　　　　　　（下平声十一尤）

　各有千秋：人それぞれに長所・特色があること。
　晩恋：老いらくの恋。蝉は生涯の最後に恋をする。
　瑤舟：酒杯の意あり。

[38]　参加者　　鮟鱇　


　　風　七言律詩其一　春　遊　　　　　　　　

有誰拂面喜春遊，　　　誰かありて面を払ひ春遊を喜ばんや，

不見仙姿吹不休。　　　仙姿は見えず　吹いて休まず。

人入櫻雲如海嘯，　　　人は桜雲に入るに海嘯（つなみ）の如く，

花飛香雪舞岑樓。　　　花は香雪を飛ばして岑楼に舞ふ。

競傾清聖赭顏笑，　　　清聖（清酒）を競ひ傾けて赭顏笑ひ，

更勸濁賢青眼柔。　　　濁賢（濁酒）を更に勸めて青眼柔らかなり。

醉客蹣跚滿形勝，　　　醉客　蹣跚（ふらふら）と形勝に満ち，

烏鳴夕暮轉風流。　　　烏鳴きたる夕暮　轉（うたた）風流。

　　　　　　　　　　（下平声十一尤）

[39]　参加者　　鮟鱇　


　　風　七言律詩其二　隨風蚊子嗡嗡舞　　　　　　　　

人怠裁詩醉解憂，　　　人　詩を裁くを怠り醉ひて憂ひを解けば，

孑孒盛涌硯池游。　　　孑孒（ボウフラ）盛んに涌いて硯池に游（およ）ぐ。

月中羽化爲蚊子，　　　月中に羽化して蚊となり，

星夜群飛覓好逑。　　　星夜に群れ飛んで好逑を覓（もと）む。

戀慕氷肌眠玉洞，　　　恋慕せる氷肌　玉洞に眠り，

吸貪心血病離愁。　　　吸ひ貪る心血　離愁に病む。

隨風張翅嗡嗡舞，　　　風に随ひ翅を張って嗡嗡（ぶんぶん）と舞ひ，

吟扮妖精飄不留。　　　吟じて妖精に扮し飄として留まらず。

　　　　　　　　　　（下平声十一尤）

[40]　参加者　　鮟鱇　


　　風　七言律詩其三　秋　情　其一　　　　　　　　

新涼拂面報金秋，　　　新涼　面を払って金秋を報じ，

日落紅霞遠嶺留。　　　日は落つるも紅霞　遠嶺に留まる。

獨坐陽臺樗翁醉，　　　独り陽台に坐して樗翁酔ひ，

悲聽院落晩蟬愁。　　　悲しみ院落に聴く　晩蝉の愁ふるを。

地中養志爲羸老，　　　地中に志を養ひて羸老となり，

樹頂抛聲覓好逑。　　　樹頂に聲を抛（な）げて好逑を覓（もと）む。

追想青春憶花貌，　　　青春を追想して花貌を憶（おも）ひ，

傷情仰看月如鈎。　　　情を傷めて仰ぎ看る　月の鈎の如きを。

　　　　　　　　　　（下平声十一尤）

[41]　参加者　　鮟鱇　


　　風　七言律詩其四　秋　情　其二　　　　　　　　

院落殘蟬覓好逑，　　　院落の残蝉　好逑を覓（もと）め，

涼臺醉叟對悲秋。　　　涼台の酔叟　悲秋に対す。

古來初戀難成就，　　　古来　初恋は成就しがたく，

老去追懷屢悔愁。　　　老去って追懐すれば屡（しばしば）悔ひ愁ふ。

今日無言傾酒盞，　　　今日　言無く酒盞を傾け，

往時攜手上瑤舟。　　　往時は手を携へて瑶舟に上る。

好風拂面航星漢，　　　好風　面を払ひ　星漢を航すも，

可恨光陰逝不留。　　　恨みあるべし　光陰逝きて留まらざるに。

　　　　　　　　　　（下平声十一尤）

　瑶舟：酒杯の意あり。

[42]　参加者　　常春　


　　期待新風　　　　　　　　

少女一聲如采旒　　　少女の一声　采旒の如く

齊呼若輩表同憂　　　斉呼の若輩　同憂を表(あら)わす

地球温暖關心固　　　地球温暖　関心固し

欹耳凝瞳領導鳩　　　耳を欹て瞳を凝らす　領導の鳩(あつま)りに

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

[43]　参加者　　常春　


　　颶風有感　　　　　　　　

疾風狂暴荒街邑　　　疾風狂暴　街邑に荒れ

柱損瓦飛停電稠　　　柱損ない瓦　飛び停電稠(しげ)し

実感地球温暖急　　　実感す　地球温暖急なるを

必須抜本塞源修　　　必須ならん抜本源を塞ぐ修(おこない)いを

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

[44]　参加者　　（桐山堂半田）靖芳　


　　銷夏詩　　　　　　　　

驕陽夏午碧雲流　　　驕陽　夏午　碧雲流る

茅屋窗前�克�稠　　　茅屋の　窓前　緑樹稠し

獨坐披襟涼一味　　　獨坐し　襟を披けば　涼一味

風鈴清韻汗珠収　　　風鈴の　清韻　汗珠収まる

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

[45]　参加者　　（桐山堂半田）靖芳　


　　新秋即事　　　　　　　　

讀書床上汗珠流　　　書を読む　床上　汗珠流る

牆角松風到枕頭　　　牆角の松風　枕頭に到る

簾動些涼殘暑退　　　簾動き　些涼　残暑退く

晩來蟲韻報新秋　　　晩來　蟲韻　新秋を報ず

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

[46]　参加者　　（桐山堂半田）睟洲　


　　夏風（螢）　　　　　　　　

頡頏飛燕緑蔭稠　　　頡頏す　飛燕　緑蔭稠し

野趣旅亭塵外遊　　　野趣の旅亭　塵外に遊ぶ

隱映晩叢螢火亂　　　隠映　晩叢　螢火の乱れ

獨聽松籟不堪愁　　　独り松籟を聴けば　愁ひに堪へず

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

　本年五月末、群馬県万座温泉に行きました。
　信州と境を接し白根山腹に在る僻地で、峠道には残雪が在りましたが、途中の初夏の山景は良好でした。
　帰路は軽井沢・浅間・小諸・中央道でした。

[47]　参加者　　（桐山堂半田）睟洲　


　　秋風（一）　　　　　　　　

清商茅屋北窗幽　　　清商の茅屋　北窓幽かなり

寒雨蕭蕭暮景湫　　　煙雨飄飄として　暮景湫し

駒隙光陰身已老　　　駒隙　光陰　身已に老ゆ

坐聞風鐸使人愁　　　坐して聞く　風鐸　人をして愁へしむ

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

[48]　参加者　　（桐山堂半田）睟洲　


　　秋風（二）　　　　　　　　

高原湖岸遶塘遊　　　高原の湖岸　塘を遶りて遊ぶ

清水微漣動客愁　　　清水　微漣　客愁を動かす

紅紫遠山還感慨　　　紅紫の遠山　還た感慨あり

素風飄疾渡深秋　　　素風　飄疾して　深秋を渡る

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

　昨秋、信州志賀高原に行きました。
　すでに紅葉は過ぎ登山客も稀で、池塘廻りをしました。
　水面には周囲の景色が映り、それが漣で乱れるさまは、旅の哀愁をかきたてるものでした。

[49]　参加者　　（桐山堂半田）昇洲　


　　風　　　　　　　　

立山屹立白雲悠　　　立山　屹立　白雲悠たり

氷壁危峰氣更幽　　　氷壁　危峰　気更に幽なり

雷鳥飛逢鳴峻徑　　　雷鳥　飛び逢ひ　峻路に鳴く

清涼天籟忘千憂　　　独行の風韻　千憂を忘る

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

[50]　参加者　　（桐山堂半田）輪中人　


　　輕舟下秋江　　　　　　　　

波盈魚躍�麹]頭　　　波盈ち　魚躍る　緑江の頭

兩岸蘆花沙上鷗　　　両岸の荻蘆　沙上の鴎

十里金風天色淡　　　十里　金風　天色淡し

閑人半夜泛輕舟　　　閑人　半夜　軽舟を泛ぶ

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

[51]　参加者　　（桐山堂半田）輪中人　


　　晩風絡緯　　　　　　　　

一面胡枝田圃頭　　　一面　胡枝　田圃の頭

舊�ｸ日暮晩風柔　　　旧郷　日暮　晩風柔らか

廣衢小徑皆秋色　　　広衢　小径　皆秋色

絡緯啾啾散積憂　　　絡緯　啾啾　積憂を散ず

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

[52]　参加者　　（桐山堂半田）健洲　


　　秋日偶成　　　　　　　　

雨過江畔柳風幽　　　雨過ぎて　江畔　柳風幽たり

澄水清波滾滾流　　　澄水　清波　滾滾として流る

行客影稀人語斷　　　旅客　影稀に　人語断ゆ

西空斜日落山頭　　　西空　斜日　山頭に落つ

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

[53]　参加者　　（桐山堂半田）醉竹　


　　晩風運秋來　　　　　　　　

片時白雨暑威収　　　片時　白雨　暑威収まり

雲散天邊落照浮　　　雲散じて　天邊落照浮かぶ

蟬噪消沈蟲響起　　　蝉噪消沈して　虫響起こり

西風葉葉已知秋　　　西風　葉葉　已に秋と知る

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

[54]　参加者　　（桐山堂半田）醉竹　


　　風　　　　　　　　

明庶融氷溪水流　　　明庶　氷を融かし　渓水流る

景風運熱鍛心頭　　　景風　熱を運び　心頭を鍛ふ

西來閶闔満涼地　　　西來の閶(しょう)闔(こう)　涼を地に満たし

廣莫關門萬物休　　　広莫　門を関ざし　万物休む

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

「八風」の中から四風をとって　単に『風』という題で作ってみました。

　　　［東北］　融風　　　［東］　明庶風　　［東南］　清明風　　［南］　景風

　　　［西南］　涼風　　　［西］　閶闔風　　［西北］　不周風　　［北］　廣莫風

[55]　参加者　　（桐山堂半田）醉竹　


　　西湖逍遥　　　　　　　　

垂柳搖搖碧水頭　　　垂柳　揺揺　碧水の頭

����荷葉鯉魚悠　　　青青　荷葉　鯉魚悠なり

湖央小島加佳趣　　　湖央の小島　佳趣を加へ

但看晴嵐仏塔丘　　　但看る　晴嵐　仏塔の丘

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

[56]　参加者　　（桐山堂半田）Ｆ・Ｋ　


　　立石寺　　　　　　　　

山青水碧樹花稠　　　山青く　水は碧り　樹花稠る

古往今來風景優　　　古往今来　風景優なり

佛宇巌梯清絶地　　　仏宇　巌梯　清絶の地

明知微醉共吟遊　　　明知　微酔　共に吟遊す

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

　立石寺の山径を登って楼台から見る眼下の景色は見事

[57]　参加者　　（桐山堂半田）Ｆ・Ｋ　


　　荒砥城趾　　　　　　　　

輕風櫻樹四郊周　　　軽風　桜樹　四郊周し　

翠嶂碧雲天地優　　　翠嶂　碧雲　天地優なり

村落遠望山砦靜　　　村落　遠望す　山砦静かなり

追懷武烈古今悠　　　追懐す　武烈　古今悠たり

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

　千曲川の周りの山々には砦が多く、戦国の物語を身近に感じます。

[58]　参加者　　（桐山堂半田）Ｉ・Ｆ　


　　鵜飼觀覧　　　　　　　　

江畔涼風暮色浮　　　江畔　涼風　暮色浮かび

扁舟篝火下中流　　　扁舟　篝火　中流に下る

鵜潜魚躍漁歌起　　　鵜潜り　魚躍り　漁火起こり

夏夜前山月一鉤　　　夏夜　前山　月一鉤

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

[59]　参加者　　（桐山堂半田）Ｉ・Ｆ　


　　秋日郊行　　　　　　　　

秋天村靜一川流　　　秋光　村静かに　一川流れ

赤卒行追登小丘　　　赤卒行く行く追ひ　小丘に登る

町遠山遙風欲白　　　町遠く　山遥かに　風白からんと欲す

閑吟緩歩野花幽　　　閑吟　緩歩し　野花を愁ふ

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

[60]　参加者　　（桐山堂半田）眞海　


　　令和元年秋　　　　　　　　

猶殘猛暑已中秋　　　猶残る猛暑　已に中秋

屢次颱風來襲愁　　　屡次の颱風　來襲の愁ひ

一過故園山景改　　　一過すれば　故園　山景改む

家家崩壊哭啾啾　　　家家崩壊し　哭啾啾たり

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

　テレビで凄惨な映像を見ての被災状態を表現したつもりです

[61]　参加者　　（芙蓉漢詩会）柳村　


　　立秋即事　　　　　　　　

颯颯涼風早感秋　　　颯颯たる涼風　早に秋を感ず

今宵眉月轉催愁　　　今宵の眉月　転た愁を催す

一燈靜坐古窗下　　　一灯　静かに坐す　古窓の下

可愛閑庭蟲韻幽　　　愛すべし　閑庭　虫韻の幽かなるを

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

[62]　参加者　　（芙蓉漢詩会）柳村　


　　秋日郊行　　　　　　　　

田園一望暮煙流　　　田園　一望すれば　暮煙流る

信歩西郊散策游　　　歩に信せ　西郊　散策して游ぶ

赤卒羣飛風籟爽　　　赤卒　群飛し　風籟爽なり

黄雲十里滿村秋　　　黄雲　十里　満村の秋

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

[63]　参加者　　（芙蓉漢詩会）Ｍ・Ｍ　


　　猛暑　　　　　　　　

蠚膚炮烙赫陽遒　　　膚を蠚（さ）す　炮烙　赫陽遒る

息喘高温暮未収　　　息喘いで高温　暮れて未だ収まらず

追憶少時遨水澤　　　追懷す　少時　水沢に遨ぶ

小魚潑剌月波浮　　　小魚　潑剌　月波に浮かぶ

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

[64]　参加者　　（芙蓉漢詩会）Ｍ・Ｍ　


　　風（温暖化之夏）　　　　　　　　

南暝歩鳥異�ｸ游　　　南暝の歩鳥（ペンギン）　異郷に游び

北極白熊氷島求　　　北極の白熊　氷島求む

夏颶一過風颯颯　　　夏颶　一過　風颯颯

雕刊素髪八旬秋　　　雕刊　素髪　八旬の秋

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

[65]　参加者　　（芙蓉漢詩会）Ｋ・Ｋ　


　　風　　　　　　　　

秋風未起地如鍋　　　秋風未だ起こらず　地は鍋の如し

白日蟬聲怪又訛　　　白日蝉声　怪又訛る

屢次天行有遲速　　　屢次（しばしば）天行　遅速有りて

窮民把酒自悲歌　　　窮民は酒を把り　自ら悲歌

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

[66]　参加者　　（芙蓉漢詩会）Ｆ・Ｕ　


　　池畔觀蓮　　　　　　　　

響度蜩聲池畔頭　　　響き渡る　蜩声　池畔の頭

曉光燦然彩霞流　　　暁光燦然として　彩霞流る

香風吹起露珠轉　　　香風吹き起こり　露珠転じ

紅藕亭亭意自幽　　　紅藕　亭亭　意自ら幽なり

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

[67]　参加者　　（桐山堂静岡）Ｍ・Ｏ　


　　消夏偶成　一　　　　　　　　

尋涼歩歩立橋頭　　　涼を尋ね　歩歩　橋頭に立つ

野渡蒼然暮色幽　　　野渡　蒼然　暮色の幽

蘆荻萋萋風籟爽　　　蘆荻　萋萋　風籟爽たり

江村熱散氣如秋　　　江村　熱散じて　気は秋の如し

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

[68]　参加者　　（桐山堂静岡）Ｍ・Ｏ　


　　消夏偶成　二　　　　　　　　

浴後追涼去　　　浴後　涼を追ひて去る

殘陽田圃頭　　　残陽　田圃の頭

野風堪一洗　　　野風　一洗するに　堪へたり

稲穂已初秋　　　稲穂　已に初秋

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

[69]　参加者　　（桐山堂静岡）Ｍ・Ｏ　


　　夏日偶成　　　　　　　　

驕陽烈烈又無風　　　驕陽　烈烈　又風無し

夏草凋傷處處同　　　夏草　凋傷　処処同じ

懶出經旬三伏苦　　　出づるに懶し　経旬　三伏の苦

猶希快雨一望空　　　猶ほ希ふ　快雨　一望空し

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

[70]　参加者　　（桐山堂静岡）Ｋ・Ｉ　


　　萬頃秋風　　　　　　　　

暮音河口釣魚遊　　　暮音　河口　魚を釣って遊ぶ

芒幹傾東向西舟　　　芒幹　東に傾けば　西向の舟

徐看竿綸朱色宇　　　没我　竿頭　朱色の宇

空筐天彩更何求　　　空筐　天彩　更に何をか求めん

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

　友達の家に行って魚釣りで遊ぶ。
　居眠りが出るほどの時間、大した成果はないが、思いがけない夕焼け、
　今日はこれが一番の成果として帰宅した。

[71]　参加者　　（桐山堂静岡）Ｋ・Ｉ　


　　神院之風　　　　　　　　

百年樟木晩風柔　　　百年　樟木　晩風柔らかなり

神院境西枯葉湫　　　神院　境西　枯葉の湫

繩索注連待新歳　　　縄索　注連　新歳を待つ

屋甍雲散月中樓　　　屋甍　雲散ず　月中の楼

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

[72]　参加者　　（桐山堂静岡）Ｋ・Ｉ　


　　風吹岸壁　　　　　　　　

老父自操輕葉舟　　　老父　自ら操る　軽葉の舟

強風罷釣午歸謳　　　強風　釣りを罷む　午帰の謳

波騒堤堰搖難舫　　　波騒ぐ　堤堰　揺れて舫ひ難し

尋餌哀鳴一座鷗　　　餌を尋ね　哀鳴　一座の鴎

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

　小樽運河を観光。
　強風の元、一艘の小舟が揺られながら帰還。
　船の綱は思うように繋がらない。
　やっと船を固定。一服して鴎と遊ぶ漁師。

[73]　参加者　　（桐山堂静岡）Ｋ・Ｉ　


　　鳥葬　　　　　　　　

天空大鳥舞悠悠　　　天空　大鳥　舞ひて悠悠

五色經幡堆故丘　　　五色の経幡　故丘に堆し

死者靜虚岩石上　　　死者　静虚　岩石の上

靈魂昇宇信心収　　　霊魂は宇に上り　信の心収む

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

　チベット族の家族を訪問した折、偶然鳥葬の話を聞く。
　土産は鳥の頭骨でした。

[74]　参加者　　深渓　


　　湖上旧懐　　　　　　　　

老去何忘中国遊　　　老い去て　何ぞ忘れん　中国の遊

荊妻夢立画橋頭　　　荊妻　夢に立つ　画橋の頭

眼前湖水無人管　　　眼前の湖水　人の管する無く

依舊眺瞻万里流　　　舊に依り　眺瞻　万里の流れ

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

[75]　参加者　　楊川　


　　遊西湖　　　　　　　　

紅白蓮華水上浮　　　紅白の蓮華　水上に浮き

垂垂青柳艷姿柔　　　垂垂の青柳　艶姿柔らかなり

風光明媚西湖畔　　　風光明媚　西湖の畔

遠路騒人怡勝遊　　　遠路の騒人　勝遊を怡ぶ

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

[76]　参加者　　楊川　


　　訪中偶詠　　　　　　　　

湖水潭潭船上游　　　湖水　潭潭　船上の游

秋天層閣翠松丘　　　秋天　層閣　翠松の丘

杭州風物異郷趣　　　杭州の風物　異郷の趣

白晝夢中催旅愁　　　白昼　夢中　旅愁を催す

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

[7]　参加者　　（桐山堂刈谷）聖峰　


　　新秋聞雷　　　　　　　　

殘炎催雨黒雲流　　　残炎　雨を催して　黒雲流る

數叫歸鴉暮色稠　　　数叫の帰鴉　暮色稠し

遙響雷鳴風遶樹　　　遥かに響く雷鳴　風は樹を遶る

虫聲喞喞帶新秋　　　虫声　喞喞として　新秋を帯ぶ

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

[78]　参加者　　（桐山堂刈谷）Ｍ・Ｏ　


　　風　　　　　　　　

驕陽赫赫火雲流　　　驕陽赫々として　火雲流る

海口逍搖入酒樓　　　海際　逍揺　酒楼に入る

魚菜滿盤人笑語　　　魚菜　満盤　人笑語す

風鈴涼味暫時留　　　風鈴　涼を味はひ　暫時留まる

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

[79]　参加者　　（桐山堂刈谷）一兎　


　　春宵　　　　　　　　

待時映日碧溪頭　　　時を待って日に映ず　碧渓の頭

遠景殘霞春水流　　　遠景　残霞　春水の流れ

獨歩荒村人不見　　　独り歩す　荒村　人見えず

山風朧月兩悠悠　　　山風　朧月　両つながら悠悠

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

[80]　参加者　　（桐山堂刈谷）游山　


　　觀早曉常念寺荷花　　　　　　　　

早朝街巷快風柔　　　早朝の街巷　快風柔らかに

覓句徘徊古寺頭　　　句を覓めて徘徊する　古寺の頭

三百盆荷香泛泛　　　三百の盆荷　香泛泛

青盤玉露共相遊　　　青盤　玉露　共に相遊ぶ

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

　地元の街中に盆荷で有名な古寺を訪ねた情景です。

[81]　参加者　　（桐山堂刈谷）Ｔ・Ｋ　


　　秋日　　　　　　　　

瑟瑟西風奈此秋　　　瑟瑟　西風　此の秋を奈んせん

梧桐樹下葉零稠　　　梧桐樹下　葉零つること稠し

殘蟬啼罷無人問　　　残蝉啼くことを罷め　人の問ふ無し

一片詩情坐惹愁　　　一片の詩情　坐ろに愁ひを惹く

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

[82]　参加者　　（桐山堂刈谷）老遊　


　　初秋風韻　　　　　　　　

白波漲岸繞溪流　　　白波　岸に漲り　渓を繞りて流る

垂柳叢汀石徑幽　　　垂柳　汀に叢がり　石径幽なり

雖在香魚黄葉落　　　香魚在りと雖も　黄葉落つれば

一纖風脚已初秋　　　一繊の風脚　已に初秋

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

[83]　参加者　　（桐山堂刈谷）老遊　


　　山溪秋風　　　　　　　　

水波濯岸繞溪流　　　水波　岸を濯ひ　渓を繞りて流る

楓葉寫汀山徑幽　　　楓葉　汀に写し　山径幽なり

停歩擧頭天滃滃　　　歩を停めて頭を挙ぐれば　天滃滃たり

須臾虚籟曳初秋　　　須臾たる虚籟　初秋を曳く

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

「滃滃」…雲が湧き起こるさま

[84]　参加者　　（桐山堂刈谷）老遊　


　　新秋即事　　　　　　　　

雲移東嶺雨微収　　　雲は東嶺に移り　雨微かに収まる

山徑胡枝滴露稠　　　山径の胡枝　滴露稠る

獨占郊坰天地謐　　　独だ占む　郊坰　天地の謐（しず）かなるを

金風颯颯逐新秋　　　金風颯颯　新秋を逐ふ

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

[85]　参加者　　（桐山堂刈谷）小禽　


　　�拷A　　　　　　　　

雨余菜圃�拷A稠　　　雨余　菜圃　緑陰稠し

野水輝輝鳥語柔　　　野水輝輝として　鳥語柔らか

午睡簾波風籟爽　　　午睡　簾波　風籟爽やか

斜陽鐘韻竹亭幽　　　斜陽　鐘韻　竹亭幽なり

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

[86]　参加者　　（桐山堂刈谷）Ｙ・Ｎ　


　　風　　　　　　　　

長川碧碧抱村流　　　長川　碧碧　村を抱きて流る

獨領清風塵外遊　　　独り清風を領して　塵外に遊ぶ

堤柳翠陰螢數點　　　堤柳　翠陰　螢数点

暮鐘橋上暫時留　　　暮鐘　橋上　暫時留まる

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

[87]　参加者　　（桐山堂刈谷）靜巒　


　　風　　　　　　　　

禾穗輕黄田圃悠　　　禾穂　軽黄　田圃悠たり

蜻蛉休翅一竿頭　　　蜻蛉　翅を休むる　一竿の頭

殘炎漸去暮天月　　　残炎　漸く去り　暮天の月

松下金風如水流　　　松下の金風　水の如く流る

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

[88]　参加者　　（桐山堂刈谷）風葉　


　　風　　　　　　　　

風聲颯颯碧雲流　　　風声　颯颯として　碧雲流れ

伴友歸�ｸ半日遊　　　友を伴ひ帰郷し　半日遊ぶ

屋下檐鈴輕快響　　　屋下の檐鈴　軽快な響

淡燈影淡野村幽　　　淡灯　影淡し　野村幽なり

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

[8]　参加者　　（桐山堂刈谷）汀華　


　　風　　　　　　　　

雨洗殘炎汗自収　　　雨は残炎を洗ひて　汗自ら収まる

成陰竹樹水邊樓　　　陰を成す竹樹　水辺の楼

清風颯颯吹襟袖　　　清風　颯颯　襟袖を吹く

閑日新秋一葉舟　　　閑日　新秋　一葉の舟

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

[90]　参加者　　桐山人　


　　西湖　　　　　　　　

蘇堤七月柳陰稠　　　蘇堤　七月　柳陰稠し

湖上曳波漁老舟　　　湖上　波を曳く　漁老の舟

島影搖搖暮風裏　　　島影　揺揺として　暮風の裏

三潭印月待中秋　　　三潭印月　中秋を待つ

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

　今年の夏に、深渓さん、楊川さん、醉竹さんの四人で杭州、蘇州の旅に出かけました。

[91]　参加者　　桐山人　


　　蠡湖　　　　　　　　

梅天無錫太湖頭　　　梅天の無錫　太湖の頭

漂泛青蓮風少収　　　漂泛する青蓮　風少や収まる

傾國陶朱棲隱地　　　傾国　陶朱　棲隱の地

水煙島影古情悠　　　水煙　島影　古情悠か

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

「傾国」：　美女、ここでは西施。
「陶朱」：　春秋時代の越の政治家、范蠡。 この詩は昨年作ったものですが、陳興さんから和韻をしていただきましたので、そのイントロとして。

[92]　参加者　　陳興　


　　和桐山蠡湖　　　　　　　　

細雨江南湖盡頭　　　

鳥飛屋瓦翅先收　　　

一舟穿越河橋去　　　

回首千秋歳月悠　　　

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）