作品番号 2026-181
梅雨偶晴
積雨聊晴出舊扉 積雨聊(いささ)か晴れて 旧扉を出(い)づれば
翠梢�克�映生衣 翠梢 緑樹 生衣に映ず
頡頏輕燕掠頭去 頡頏(きっこう)せる軽燕 頭を掠(かす)めて去り
顧眄榴花如焔緋 顧眄(こべん)すれば 榴花 焔(ほのお)の如く緋なり
「積雨」: ながあめ
「生衣」: 夏に切る衣服、ひとえもの
「頡頏」: 鳥が上へ飛んだり下へ飛んだりする
「顧眄」: 振り返って見ること
作品番号 2026-182
觀音名湯
觀音藥水下田晨 観音の薬水 下田の晨(あした)
六百標高不看人 六百の標高 人を看ず
滾滾明泉涵皺手 滾滾たる明泉 皺手(しゅうしゅ)を涵(ひた)せば
梅花耐雪待遲春 梅花雪に耐へ 遅春を待つ
作品番号 2026-183
元旦
孫臨考試日專書 孫は考試に臨み 日に書を専らにす
我洗身邊欲算余 我は身辺を洗ひ 余を算へんと欲す
整整輪廻無順逆 整整たる輪廻 順逆無ければ
屠蘇馥郁一年初 屠蘇馥郁たり 一年の初め
<解説>
孫は入試の正念場で専ら勉強。我は身辺を整理して残りの時間を考え遺言状を準備する。
整整たる輪廻 順逆無ければ、天に感謝あるのみ。
お屠蘇の芳香に酔う元旦。
作品番号 2026-184
想司馬溫公
積財以欲到兒孫 財を積み以て児孫に到さんと欲すれど
�コ薄猶慮反目煩 徳薄ければ猶慮(おそ)る反目の煩ひを
難測天機人太小 測り難き天機 人は太(あまり)に小さし
架書萬巻果誰繙 架書 万巻 果たして誰か繙(ひもと)かん
<解説>
これは、「司馬温公家訓」に感銘を受けて、一部を真似して作ったものです。
結句はご存じの鎌倉文庫の蔵書ですが、どのみち猫に小判ですし、一切を捨てるように妻には言ってあります。
知徳ふたつながら備えた者が、代々続くのは希で、必ず不肖の子孫が出て全てを台無しにしてしまうでしょう。
数百年続いた旧家のような天恵を得るのは、天命と感じます。
司馬温公は、「だから、陰徳を積むにしかず」としめくくっていますが、慨嘆するのみです。
作品番号 2026-185
立春偶成
山色谿淙表瑞祥 山色 渓淙 瑞祥表はす
新鶯睍�v笑語長 新鶯 睍�v(けんかん) 笑語長し
茲時村巷春風遍 茲の時 村巷 春風遍し
乙巳韶華萬物昌 乙巳 韶華 万物昌たり
「谿淙」: 谷を流れる水のさま
「睍�v」: 声の美しいさま
「乙巳」: 令和七年
「韶華」: 華やかな春景色
「昌」 : さかん
作品番号 2026-186
改歳偶成
料峭瑞烟迎好辰 料峭(りょうしょう) 瑞烟 好辰を迎へ
乾坤韶景太平春 乾坤 韶景 太平の春
馬齡八十都似夢 馬齢 八十 都(すべ)て夢に似たり
行雲流水只一身 行雲 流水 只だ一身
「料峭」: 春の風の肌寒い形容
「乾坤」: 天地、自然
「韶景」: 春の景色
「行雲流水」: 空行く雲と流れる水
作品番号 2026-187
姫様道中
櫻花淡淡細江�ク 桜花淡淡たり 細江の郷(さと)
華麗衣装行列長 華麗なる衣装 行列長し
再現古來風物誌 再現す 古来の風物誌
路邊觀衆喜呈祥 路辺の観衆 祥を呈するを喜ぶ
<解説>
姫様道中は、江戸時代に公家や大名の姫様が姫街道を往来した様子を再現したお祭りです。
毎年四月に浜松市浜名区細江町気賀で行われています。
豪華絢爛な衣装をまとったお姫様を始め約百名の行列が練り歩きます。
作品番号 2026-188
天龍川
�C流諏訪水溶溶 清流の諏訪(すわ) 水溶溶
落灑飛泉色倍醲 落ち灑(そそ)ぐ飛泉 色倍(ますま)す醲(じょう)たり
嶺上猿聲悲痛惹 嶺上の猿声 悲痛を惹く
長河向海勢如龍 長河海に向って 勢ひ竜の如し
<解説>
天竜川は、諏訪湖を水源ととする延長二一三キロの一級河川で遠州灘に注いでいます。
上流には、佐久間ダム、秋葉ダム、船明ダムなどがあり、古くは久根鉱山、峰之沢鉱山など、鉱石の採掘も盛んでした。
作品番号 2026-189
想トランプ關税
米國横謀激震傳 米国の横謀 激震伝ふ
相爭貿易輒憂煎 相争ふ貿易 輒ち憂煎
折衝關税困難究 折衝の関税 困難を究む
互見腹中誰是先 互に見る腹中 誰か是先んず
<解説>
トランプ関税、世界で何が起きているのか?日本も甚大な影響。
関税の標的となった各国はアメリカを一斉に批判した。
トランプ氏は、アメリカが貿易不均衡の犠牲になってきたと主張。
関税強化で雇用と製造業を復活させると強調した。
作品番号 2026-190
同窗會
歳月閑流已七旬 歳月閑かに流れ 已に七旬
傷神友去自悲辛 傷神 友は去り 自づから悲辛す
引杯談語延年術 杯を引き談語 延年の術
共願息災長壽身 共に願うは息災 長寿の身
<解説>
久しぶりの同窓会。しかし、恩師は既に亡く、我が級友も知らせを受けているだけでも十人ほどはいる。
騒ぐこともなく、いずれは我が身。
最後の同窓会とすることで閉会した。
作品番号 2026-191
釜奥(かまおく)山中散策
鶯聲訥訥竹叢邊 鶯声 訥訥(とつとつ) 竹叢の辺
花散華開又一年 花散り華開き 又一年
嫩草陵丘風颯颯 嫩草 陵丘 風は颯颯
春霞湧出碧山巓 春霞 湧き出づ 碧山の巓
<解説>
今は第二東名高速が通っている山の方、畑を作っていた。
鶯が鳴いていた(夏)を思い出して作ってみた。
滝はどうなったろうか。
作品番号 2026-192
亀虫之害
頻發害虫農苑愁 頻発せる害虫 農園を愁ひ
孤翁佇立志難留 孤翁佇立し 志留まり難し
徒勞殺剤無成果 徒労せる殺剤 成果無く
歳月空流蕾落休 歳月空しく流れ 蕾は落ちて休む
<解説>
昨年の秋は、亀虫が次々と飛来し、みかんは大害。
野菜も天候の変化で値段も高くなり、稲まで市場から無くなった。
作品番号 2026-193
雙孫歸宅
共終部活夕陽曛 共に部活を終えれば 夕陽曛たり
茜色暮天歸路雲 茜色の暮天 帰路の雲
姉弟笑聲厨裏響 姉弟の笑声 厨裏に響けば
嫗翁滿福意欣欣 嫗翁 満福 意欣欣
作品番号 2026-194
昔日夜景
隣田閣閣亂蛙聲 隣田 閣閣 乱蛙の声
井水群螢点又清 井水の群螢 点じて又清し
窗外微涼庭樹動 窓外 微涼 庭樹動き
遠聞汽笛夜風輕 遠く聞く汽笛 夜風軽し
<解説>
田舎育ちの小生、幼いころは、ツルベの井戸で風呂をくみバケツで水を運んだ。
蛍が家の中へ飛び田植えが終わると蛙がうるさかった。
作品番号 2026-195
清晨雨中初醒望資水
雨滴凄凄泪透窗, 雨滴凄凄として 泪は窓を透し
高樓矗立入雲間。 高楼矗立して 雲間に入る
不知晨露染玻壁, 知らず 晨露の玻壁を染むるを
秋霏疑是鎖江湾。 秋霏疑ふらくは是れ江灣を鎖すと
「玻壁(はへき)」は私が作った造語で、現代の窓ガラスを表しています。
<解説>
雨粒がしとしとと窓を濡らします。
近代都市の高いビルが空へ聳えています。
窓ガラスについているのは早朝の霜なのか、それとも秋雨の靄が川辺に広がっているのだろうか。
初めまして。中国湖南省在住の詩作愛好家です。
雨の朝、故郷の資水の景色を眺めて詠んだ自作七言絶句を投稿させていただきます。
古い漢詩の形式を用いながら、現代都市の風景を詠むことを試みました。
ご査収いただけますと幸いです。
作品番号 2026-196
偶成
何事近來多夢人 何事ぞ 近来 人を夢むこと多し
故�ク朋友與雙親 故郷の朋友と双親とを
吾生半百無功業 吾が生 半百 功業無し
夜夜叱呵當有因 夜夜 叱呵せらるるは 当に因有るべし
<解説>
どうしたわけだかこの頃は どいつもこいつも夢に出る
ふるさとにいる友達や 親父お袋etc.
もうすぐ五十になるけれど たいして仕事もできなくて
夜な夜なお叱り受けるのも それなりのワケあるわけだ
作品番号 2026-197
自嘲
堪笑同袍盡錦衣 笑ふに堪へたり 同袍 尽く錦衣にして
獨甘薄宦事狂詩 独り薄宦に甘んじて狂詩を事とす
空誇今日如凡鳥 空しく誇る 今日 凡鳥の如きも
三十年前是鳳兒 三十年前 是れ鳳児
<解説>
お笑いぐさだねオレ以外 みんな立派に出世して
ひとりうだつを上げられず 適当な詩を書き散らす
むなしいだけの昔自慢 人なみ称する今だけど
三十年ほど前ならば 人みな称えていたものさ
※凡鳥二字合成鳳字雖然自嘲猶有所期。
作品番号 2026-198
立春郊外
吹面江風寒意生 面を吹く江風 寒意生ず
飛來飛去水禽聲 飛来 飛去 水禽の声
荷鋤老圃耕南畝 鋤を荷ふ老圃 南畝を耕す
緩歩堤塘春草萌 緩歩 堤塘 春草萌す
<解説>
市郊外の立春の頃の風景を想い浮かべながら創りました。
<感想>
承句は良いですね。
転句の「老圃」は「畑作りが得意な農夫」ということで、『論語』に用例がある言葉です。
結句は、「春草」を「嫩草」あるいは「繊草」などでも良いでしょうね。
起句の「寒意生」は、立春だというのにまだ寒いぞ、という意図でしょうか、その寒さは承句以降には出てきませんし、やはり「立春」ですので「春意生」の方が自然です。
ここの「老」は「年寄り」ということでなく「熟練した」という意味ですね。
良い言葉を見つけましたね。
「耕」は「荷鋤」も上にありますので、表現としてはちょっとくどいです。
「事(こととす)」などの言葉はどうでしょう。
by 桐山人(2026.2月教室作品)
作品番号 2026-199
於大公園觀楓
紅粧紅散點吟衣 紅は粧ひ 紅は散じ 吟衣に点ず
野鳥呼風林徑微 野鳥 風を呼び 林径微かなり
三代墓碑千古意 三代の墓碑 千古の意
雲流滿目錦楓圍 雲は流れ 満目 錦楓囲む
<解説>
昨年十一月、知多郡東浦町の於大(家康の生母)公園の紅葉を観に行きました。印象深く、詩に残しました。
<感想>
承句は「林徑」が「微か」というのは、「細い」ということでしょうか、上の「野鳥」との繋がりが無く、画面がうまく描けません。
転句の「三代墓碑」は東浦町緒川を収めた水野家三代の墓碑、於大の方の父親である水野忠政(四代)以後の位牌は隣の乾坤院に収められているそうですね。
結句は「圍」が散文的、「幃」でも綺麗かと思いますがどうでしょう。
於大公園の紅葉は、モミジやメタセコイアが美しいそうですね。
起句の「紅」の繰り返しが工夫したところですね。
同字ですが、対語になっていますので「重複」とはなりません。
目線の上から下まで「紅」一色の艶やかさが伝わり、良い効果が出ていると思います。
転句に出した「墓碑」への道案内の気持ちでしょうか。
「幽徑鳥聲人影稀」「野鳥幽林人影稀」くらいが良いかなと思います。
私は紅葉を観に行ったことはなく、今年の秋は行ってみようと思いました。
by 桐山人(2026.2月教室作品)
作品番号 2026-200
獨夜立春
梅雪春林一鳥鳴 梅雪 春林 一鳥鳴く
東風涯岸瑠璃光 東風 涯岸 瑠璃の光
梨花楊柳窗前月 梨花 楊柳 窓前の月
肅肅��燈獨夜情 粛粛 青灯 独夜の情
<解説>
立春の夜の独りの時の流れを思って作りました。
音や光を入れての表現を試みました。
<感想>
起句は、夜という点で行くと「鳥鳴」はちょっと苦しい。
承句は、意味的にも前半で「光」は要らないし、この字は「下平声七陽韻」ですので韻違いになります。
転句の「梨花」ですが、これは大体四月から五月が開花時期ですので、立春に使うのは苦しいです。
結句はこのままで良いですね。
場面の関係で、起句で「林」、承句で「涯岸(水辺)」、転句で「窗前(室内)」となりますので、作者はどこに居るのかという点で統一しないと混乱します。
後半は室内ということで合いますので、こちらをメインにして、そうするとどうでしょうかね、起句の「梅」はまだ窓から見えても、承句は苦しいですね。
沢山のことを入れようとせず、逆に一つのことで通してみるのも良いです。
梅でまとめるなら、「如雪梅花一樹明」かな。
まずは「東風」を「軒風」にして、「已聽立春聲」のような形かな。
「梅」がもう出ていますので、花はもう要らないですね。
ここも色々出すのではなく、「楊柳」の形容語を入れる形で「搖搖」なら結句との並びも対になり良いですね。
by 桐山人(2026.2月教室作品)
作品番号 2026-201
立春偶成
韶光嫩草一陽生 韶光 嫩草 一陽生ず
習習香風聴早鶯 習習 香風 早鶯を聴く
七秩逢春何幸矣 七秩 逢春 何ぞ幸ひなる矣
負喧緩歩覓梅行 喧を負ひ 緩歩 梅を覓めて行く
「嫩草」: 春に萌え出た若草
「一陽」: 冬が去り春が来ること。逆境の後に道が開けること。
「七秩」: 七十歳
「負喧」: 日光を背に当てて体をあたためる。ひなたぼっこ
<解説>
この年まで元気で春を迎えられた喜びと、これからも楽しいことをのんびり探していきたいという思いを詩にしました。
<感想>
起句は「韶光」と「一陽」だと当たり前過ぎますね。
承句はこのままで良いですね。
転句はどうでしょう、「七秩」は良いとして、下は「還逢立春候」と丁寧に書いておけば、喜びの感じは出ませんかね。
結句の「喧」は「暄」、「負暄」で「日射しを背に受けて」ということで、杜甫の詩でも使われている言葉です。
前半は穏やかな立春の景、転句は自身の姿になる構成は良いです。
話もそれなりに分かるのですが、転句の「何幸矣」がちょっと直球過ぎますので、ここを変更して、どうやって幸せ感を出すかですね。
また、「一陽生」ですが、これは立春にも使いますが、本来は「冬至」の言葉ですので、こちらを換えた方が良いかな。
どこを歩いているのか、も大切ですので、「池頭嫩草水光生」「�ク田嫩草午陽長」など。
この言葉だけでも嬉しい感情は出て来ます。
はっきり出したいならば転句の方を強調する形で、「歡迎立春候」としても良いかな。
「迎」は冒韻ですが、転句ならまだ許されますから。
by 桐山人(2026.2月教室作品)
作品番号 2026-202
晩冬閑居
無雨無風霜氣�C 雨無く 風無く 霜気清し
爐邊取暖茗煙輕 炉辺 暖を取り 茗煙軽し
老妻會讀論詩處 老妻 会読 詩を論ずる処
述意相違費品評 意を述べ 相違 品評を費やす
<解説>
「会読」を知り、使ってみました。
<感想>
気になるのは、題名の「晩冬」が出ていないこと、起句は工夫したところでしょうが、「晩冬」ならではの景が欲しいですね。
「会読」は「合評会」と考えれば良いですね。奥さまがそうしたサークルで活動されているのですか。
詩の場面から考えると、夫婦揃って勉強会に参加されているということで、素晴らしいことですね。
それでしたら、最後の「費」はあまりプラスのイメージが出ませんので、「交」の方が良いです。
平仄も大丈夫です。
「閑居」も詩の内容とは合わないので、「會讀」「論詩」など詩中の言葉を使うと良いです。
by 桐山人(2026.2月教室作品)
作品番号 2026-203
午歳立春
尾根雪解抵頭驚 尾根 雪解け 頭に抵たりて驚く
破蕾魁春鶯響鳴 蕾を破り 春に魁て 鶯鳴き響く
風光欲盡廻千載 風光尽きんと欲す 千載廻る
忘老忘貧遂意生 老を忘れ 貧を忘れ 意を遂(と)いて生ず
<解説>
起句は、一月十二日に雪十センチの思い
結句は近況を生々しく表現しました
<感想>
起句は「尾根」ですと山の上の雪になりますので、それが「抵頭」ではすごいことになります。
承句は「鶯」が「蕾を破る」ようで、句がまとまりません。
転句は「欲盡」と言う程の「風光」は描かれていませんので、言葉が先走っています。
結句は上四字は工夫されていますが、最後は何が「生」じたのか、説明が必要でしょうね。
送り仮名は活用する所から書くのが基本ですので、起句「抵」は「抵(あた)りて」、承句「魁」は「魁け」ですね。
「屋根」の間違いでしょうね。「屋檐」でどうでしょうね。
中二字の「魁春」を「庭梅」、下三字は「響」と「鳴」の語順が違いますので、「鶯鳥鳴」で。
「千載」も大げさかな。また、「盡」と「廻」は内容として矛盾してます。
「今年も立春を迎えることができた」くらいの内容が結句との繋がりも良いでしょう。
転句で粘法を崩しています(「拗体」)が、できれば正格が良いです。
語句を修正する時に合わせるようにしましょう。
by 桐山人(2026.2月教室作品)
作品番号 2026-204
春詠
粉華阡陌幽暮晨 粉華の阡陌に幽暮の晨
麥浪皚皚落花塵 麦浪 皚皚 落花の塵
歸來庭昏香馥郁 帰来 庭昏 香馥郁
一枝夕日小園春 一枝 夕日 小園の春
<解説>
麦畑の畝には色鮮やかな麦の緑と土の茶色の対比の美しさを詠みました。
我が家の紅梅の様子も。
<感想>
承句ですが、「皚皚」「落花」ですので、もう麦の穂に白い花が開いて散っているということですね。
転句は「昏」が余分な感じですね、起句でもう「幽暮」と出ています。
結句ですが、直前に「香馥郁」と言ってますので、「一枝」では少ないと思います。
春の景ということですが、起句の「粉華」は祇女、「紛華」で「美しく華やか」となります。
最後の「晨」は「朝」の意味、「とき」ということですと「辰」ですね。
平仄としては六字目は平字にしないといけませんので、「暮雲」「暮煙」としておきましょう。
うーん、この時期ですと麦はまだ早いように思いますが、どうなのでしょう。
また、ここに梅の花も描いたということですが、「香」だけでは分からないので、「庭梅」とすれば解決しますね。
数を増やすよりも「架枝」とすると絵画的な美しさが出るかもと思います。
by 桐山人(2026.2月教室作品)
作品番号 2026-205
近立春
水暖閑庭春興生 水暖み 閑庭 春興生ず
老僧歩歩下階行 老僧 歩歩 階を下って行く
深懷淨界�C泉響 深く浄界を懐ふ 清泉の響き
香氣迎門雪片輕 香気 門に迎へ 雪片軽し
<解説>
「立春」をどう表すか。雪片の軽さで表現してみました。
<感想>
転句の「深懐」は作者の感覚か、老僧のものか、どちらにしろ、ここでは不要な言葉に思います。
結句の「雪片輕」は良いと思いますよ。
承句で「老僧」を登場させるには、その前に場所をもう少し絞っておかないと苦しいです。
「閑庭」を「寺庭」とするか、題名にお寺の名前とかを入れるかですね。
「澹然」「恬然」と「淨界」を修飾するか、「淨界�C泉響」でまとまるように「眼前」でも良いと思います。
by 桐山人(2026.2月教室作品)
作品番号 2026-206
熊天地(くまあめつち)
稚子歡聲動物園 稚子 歓声 動物園
月輪格子仰天溫 月輪 格子 天を仰ぎ温まる
野生爲獸雲泥差 野生 獣と為し 雲泥の差
熊胆藥湯誰怨恩 熊胆 薬湯 誰か恩を怨まんや
<解説>
今年話題の熊に挑戦しました。
「月輪」はツキノワグマ、「熊胆」は熊の胆嚢で解熱や鎮痛の薬のことです。
<感想>
承句の「月輪」は日本語での分類、中国名は「�K熊」、そのまま使えますね。
転句は、野生の熊が「獣」として扱われているということですが、「獣」だけで悪者扱いは難しいですね。
結句は、子供の頃に呑まされましたね。
句の展開は分かりやすくなっていますので、面白い詩になりましたね。
動物園は漢文では「囿苑」と言いますが、現代中国語ではそのまま「動物園」と書きますので、起句はそのままで分かりやすいですね。
「格子」はオリの中のことですが、「檻熊」の二字で「オリに入った熊」を表せます。
これを上二字に使うと、中二字に更に情報を加えることができます。
ここで飼われた熊と野生の熊の差を強く出しておくと良いですね。
「黙黙」「粥粥(しゅくしゅく)」「肅肅」などが行けそうですね。
下三字の「仰天」は仰向けに無防備に寝転がっている姿ですね。
末字の「差」も平仄が違いますので、「野生以其何爲悪(野生 其れを以て何ぞ悪と為す)」「野生唯以人爲猛(野生 唯だ以て 人は猛と為す)」ですかね。
「越中富山の薬売り」さんが置いていく「熊の胆(い)」、黒くて恐ろしく苦い薬が家にありました。
漢方では「熊胆(ゆうたん)」と呼ばれ、日本では飛鳥時代から作られ使われていたそうですから、熊と人の付き合いも長いものですね。
ただ、最近は「富山の薬売り」さんも来なくなりましたし、「熊の肝」を知る人も少ないでしょうね。
そういう意味では、結句は分かる人にしか分からないとも言えます。
題名だけがよく分かりませんが。
by 桐山人(2026.2月教室作品)
作品番号 2026-207
紅彩秋
飛楓片片匪來禽 飛楓 片片 来禽に匪ず
柿熟方甜初食臨 柿熟し 方に甜(あま)し 初食に臨む
遍地紅彩彤一色 地に遍く紅彩 彤一色
今宵餐食強肴深 今宵 餐食 強(し)い肴深し
<解説>
今年も山禽少なく、柿が長く枝に停まる風景を詠みました。
<感想>
起句は「ハラハラと飛ぶ楓葉」が「飛んで来た禽」ではない、として、鳥が少ないことを表したいということですね。
起句で「鳥が少ない」と表せれば、承句は「殘柿」と書いても通じますね。
転句の「紅」「彤」の色は柿か楓か悩むところ、「遍地」「一色」から考えると楓の方でしょうね。
結句の「強肴」は和食の語、懐石料理からの言葉ですので和習でしょうね。
鳥が少ないのは猛暑など、何か原因があるのでしょうかね。
ただ、「楓葉」と「禽」を見間違える設定はどうか、「少來禽」とストレートに書いた方が良いですね。
下の「食」は結句でも出てきますので(同字重出)、「殘柿盈枝甜熟任(た)ふ」と柿の様子だけが良いでしょう。
そうなると、承句の柿がぼやけます。楓で前半を揃えて承句と転句を入れ替えるか、転句も柿に持っていくかですね。
転句の四字目「彩」は仄字です。また、「遍地」と「一色」も同じような意味ですので、どちらかで。
「熟柿」で強肴はちょっと遠慮しますが。結句で晩ご飯が出てくるのも、転句までの内容と話が飛んでいる気がしますね。
by 桐山人(2026.2月教室作品)
作品番号 2026-208
田家新米
仲商新米候披倉 仲商 米新た 倉を披いて候(ま)つ
粒粒如珠白雪光 粒粒 珠の如く 白雪の光
炊爨啼兒非蓋把 炊爨 児啼くとも蓋(ふた)取るに非ず
團欒餐飯吐秋香 団欒 餐飯 秋香を吐く
<解説>
八月新米の収穫が終わり、その時の感想です。
結句の代案で「豐穰甘旨肥美(?)忙」を考えました。
<感想>
承句はお米の美しさを出していますが、「如珠」も「白雪光」もどちらも比喩ですので、どちらかにした方が良いです。
結句は、新米を食べると秋の香りがするというおしゃれな言い方ですね。「吐」は意味が強いので、もう少し穏やかな表現、「漾(ただよわす)」「溢(あふる)」などでどうでしょうね。
代案は六字目がはっきり読めないのですが、「美」かな「英」かな。
起句の下三字はこの語順ですと「倉を披くを候つ」となります。
「候」という述語と「披」という述語は並列ですので、本来は二つを独立して並べる、つまり「披倉候」としなくてはいけませんね。
ただ、「倉を披くを候つ」でも意味は伝わりますのでこのままで行きましょう。
文法のことでは、転句で二箇所、「啼兒」は「兒」が主語、「啼」が述語ですので語順としては「兒啼」。
下三字も同じで、「蓋」は「把」の目的語ですので述語の下に来なくてはいけません。ここは平仄も関係ないですので「非把蓋」ですね。
どちらにしても下三字が意味が分からないのと、「肥」は平声ですので六字目が平字ならば「下三平」、仄字ならば「二六対が崩れる」形ですので、良くないですね。
by 桐山人(2026.2月教室作品)
作品番号 2026-209
松食蟲
古往近來蒼翠誇 古往近来 蒼翠を誇る
采松蕈去興何涯 松蕈(じん)采り去り 興何ぞ涯(かぎ)らん
枯枝茶葉黴如悽 枯枝 茶葉 黴(かび)悽(うら)むが如し
活菌菌生春夢加 菌を活かし 菌を生み 春夢加はる
<解説>
早朝散策中、又、松枯れを発見。再発?
松茸がとれないと思い詠みました。
<感想>
起句は上四字が大げさな感じ。「松は千年」ですので分からないではないですが、何が「蒼翠」を誇るのかが出ていません。
承句は「采」と「去」を分離する必要は無いですし、「蕈」も仄声ですので四字目に置く方が良いでしょう。
転句は「黴」の気持ちを想像するのは面白いですが、ここで「黴」が目に見えているわけではないので、「如」の比喩があまり共感できません。
結句は「菌を活かし菌は生まれ」と読みます。「菌を生む」ならばこちらも「生菌」でないといけません。
全体を読んでみると、題名の「マツクイムシ」は出てきませんね。
前半は元気な松林の様子で、転句で傷んだこと、結句で再生を願うという構成ですね。
「松林古來蒼翠誇」ならば分かりやすくなります。
「采歸松蕈」が意味としてはすっきりします。「松」を起句に使いましたので、ここは「秋蕈」にしておきましょう。
上四字が「松枯れ」を表しているのですが、枯れ枝や落ち葉と「黴」は共存関係でもあるので、「悽」に直結しないのも原因ですかね。
インパクトを強くして、「近年屡見病枯樹」
「唯願再生」「黴菌再生」というところでしょうかね。
松が枯れた原因という位置づけですが、詩の中で気配も無いのはどうでしょう。
題名は「松林」「枯松」あたりにしておくと落ち着くかと思います。
by 桐山人(2026.2月教室作品)
作品番号 2026-210
立春
柳影花明野趣盈 柳の影 花明るく 野趣盈つ
立春節到暖風�C 立春の節到って 暖風清し
乘晴巡歩餘閑日 晴れに乗じて歩を巡らす 余閑の日
十里東郊吟屐輕 十里 東郊 吟屐軽し
承句の「立春節到」は説明的ですので、「立春好節」が良いですかね。
転句は「餘閑日」の説明として上の四字、「晴れたのを幸いに歩き回る」が楽しげな雰囲気を出しています。
結句は問題無く、良い句です。
<感想>
起句は陸游の「柳暗花明又一村」(『遊山西村』)が浮かんで来る書き出しですね。
「柳は暗く茂り花は明るく開く」という対が奥行きのある画面を出している名句ですね。
今回の詩では、「柳影」として場所を表しますので、「柳の木陰に花が明るい」となり、ちょっと画面が小さいですね。
下の「野趣盈」を考えるともう少し広い景色が欲しいですね。
あと、「明」は韻字で「冒韻」になりますので、中二字を「梅香」として広がりを出すか、「新柳香梅」とするのも良いかと思います。
この句も実は「晴」が韻字ですが、転句の冒韻は許されるとされていますし、何より表現として生きていますので、このままで行きましょう。
by 桐山人(2026.3月教室作品)