2026年の新年漢詩(『第12回桐山堂詩會』参加詩) 第151作は桐山堂静岡の 甫途 さんからの作品です。
 

作品番号 2026-151

  新年即事        

曉光暖氣雪村春   暁光 暖気 雪村の春

花發鶯啼柳色新   花発き 鶯啼き 柳色新たなり

淑氣風壽三始   淑気 祥風 三始を寿ぐ

芳筵賀客酒殊親   芳筵の賀客 酒殊に親しむ

          (上平声「十一真」の押韻)


























 2026年の新年漢詩(『第12回桐山堂詩會』参加詩) 第152作は桐山堂静岡の 一菊 さんからの作品です。
 

作品番号 2026-152

  新年        

迎歳陽和城外村   歳を迎へ 風和す 城外の村

親朋拜歳叩春門   親朋 歳を拝し 春門を叩く

辛盤椒酒自怡悦   辛盤 椒酒 自ら怡悦す

共醉欣欣人更繁   共に酔ひ 欣欣 人更に繁し

          (上平声「十三元」の押韻)


























 2026年の新年漢詩(『第12回桐山堂詩會』参加詩) 第153作は桐山堂静岡の A・S さんからの作品です。
 

作品番号 2026-153

  除夜 一        

歳末巷街行客多   歳末の巷街 行客多し

買醪俄聽賣肴歌   醪を買へば 俄に聴く 肴を売る歌

日沈雪落君無急   日沈み 雪落つるも 君急ぐ無かれ

若破銀瓶如夜何   若し銀瓶を破らば 夜を如何せん

          (下平声「五歌」の押韻)


























 2026年の新年漢詩(『第12回桐山堂詩會』参加詩) 第154作は桐山堂静岡の A・S さんからの作品です。
 

作品番号 2026-154

  除夜 二        

寒林山舎寺鐘遙   寒林の山舎 寺鐘遥かなり

氷雪難融酒易消   氷雪は融け難く 酒は消え易し

爐火醉眠慵不出   炉火 酔ひて眠れば 慵くして出でず

庶幾夢裏訪神霄   庶幾くは 夢裏に 神霄を訪はん

          (下平声「二蕭」の押韻)


























 2026年の新年漢詩(『第12回桐山堂詩會』参加詩) 第155作は 桐山人 の作品です。
 

作品番号 2026-155

  正旦書懷        

寒風凛凛氣C新   寒風凛凛 気清新

鄙老復迎開歳晨   鄙老 復た迎ふ 開歳の晨(あした)

遙拜東天對初日   東天を遥拝し 初日に対す

光千里照人倫   祥光 千里 人倫を照らさん

          (上平声「十一真」の押韻)


<解説>

 寒さはとても厳しいけど空気は清新
 田舎爺は今年も正月を迎えられた
 東の空を遥かに拝み 初日に向かってただ祈る
 めでたい光が世界中に人の正しい道を照らしてくれるように


























 2026年の投稿詩 第156作は 凌雲 さんからの作品です。
 

作品番号 2026-156

  岬巡        

独背明窓海   独背く明窓の海、

傷心守約盟   傷心 約盟を守る。

荒波驚幻夢   荒波 幻夢を驚かせ、

涙胸砕岩衝   涙胸 岩衝に砕ける。

未鎮悲空色   未だ鎮まらざる悲空の色、

難忘恋慕情   忘れ難し恋慕の情。

合車巡岬走   合車 岬を巡り走る、

旅後戻街営   旅後 街営に戻らん。

          (下平声「八庚」の押韻)


<解説>

 ヤマモトコウタローとウイークエンドの岬巡りから題材を取りました。
 女房とも話したのですが、歌詞の中に恋人が死んだとは出ていませんが雰囲気からいってやはり死んだのだと思えます。
 いかがでしょう!
 何より生き別れより、その方が文学として格調高いと思うのです。


























 2026年の投稿漢詩 第157作は 鹻鼠之丞 さんからの作品です。
 

作品番号 2026-157

  耆艾獨作詩詞超過八萬首、有感        

亂墜風花失貯金   乱墜する風花 貯金を失ひ

無聊網上覓靈琛   無聊にして網上に霊琛を覓む

豺狼當絡貪名吠   豺狼絡に当たり名を貪りて吠え

獅子隱街求友吟   獅子街に隠れ友を求めて吟ず

黃髮不誇多詠意   黄髪詠意多きを誇らず

青衫亦慨少知音   青衫も亦た知音少なきを慨く

眞難邂逅詩英乂   眞に詩の英乂に邂逅し難し

與我賡酬忘抑沈   我と賡酬し抑沈を忘れん

          (下平声「十二侵」の押韻)


「風花」: 風に吹かれて飛んでくる雪片、和臭、「片雪乱飛将尽金」ならば平仄もあっているが此の季語を世界に広めたいと思う為其の儘にする。
「靈琛」: 神々しい珍しい宝、素晴らしい詩文の譬え。
「豺狼當絡」: 豺狼当路が本来だが、絡の左上より続けて読むと意味が通じる。
「隱街(○)」「隠市(●)」: 「大隠隠朝市」『反招隠詩』魏晋の王康琚。
「吟」: 吟詠、又、呻吟。
「黃髮」: 老人の事。
「青衫」: 書生や若者の事。
「邂逅」: 偶然に出会う、巡り合う。
「英乂」: 優れた人、俊才。
「賡酬」: 詩歌の遣り取りを続ける。
「抑沈」: 抑鬱と同じような意味。


「慨」が他動詞として使えない気がするので代案があれば嬉しいです。

























 2026年の投稿漢詩 第158作は 賤木 さんからの作品です。
 

作品番号 2026-158

  天平十八年八月七日従伴公惜終宴遊渋谿        

未飫酣歌赴渋谿   未だ酣歌に飫(あ)かず 渋谿(しぶたに)に赴く

道談風客列軽蹄   道すがら談(かた)らふ 風客 軽蹄を列(つら)ぬ

月弦残照映清渚   月弦残照 清渚に映ゆ

眼飽玄巌勝浪擠   眼飽せん 玄巌の浪の擠(お)すに勝(た)ふるを

          (上平声「八斉」の押韻)


「伴公」: 大伴家持。越中国司。
「渋谿」: しぶたに。現在の雨晴海岸(富山県)。並び立つ奇岩と遠景の立山連峰が美しい景勝地。

<解説>

  天平18年(746年)8月7日、大伴家持が宴の終わるのを惜しんで渋谿に遊ぶのに従って
 国司様はまだ宴の酒や歌に心行くまで満たされておられず、渋谿へと人々を誘って行かれた。
 宴の客は風流を解する人々で、道すがら語り合いつつ馬を連ねて足取り軽く進んでいく。
 上弦の月と沈みゆく夕陽が、清らかな波打ち際を照らしている。
 心行くまで眺めよう、磯の黒い岩が、押し寄せる波に耐えるようにそびえている様を。

 大伴家持が館で宴を開き、宴もたけなわの頃、楽しい集いをもう少し続けるべく、渋谿へと人々を誘ったときの和歌
「馬並(な)めて いざ打ち行(ゆ)かな 渋谿(しぶたに)の 清き磯廻(いそみ)に 寄する波見に」(大伴家持、万葉集巻17、3954)をもとに想像を膨らませて作った詩です。

 私は地元富山県ゆかりの歌人である大伴家持に私淑しており、その歌の鑑賞をするとき、近くに仕える従者の気持ちでおります。
 そのため、詩も家持本人や賓客の立場ではなく、少し離れた視点から作っています。

 詩を作るに当たり、「家持達は何時ごろに渋谿に着いたか」を考えました。
 当初は漠然と昼頃かと思っていましたが、宴のお開きの頃の歌ですから、早い時間ではないはずです。
 しかし、遅すぎても暗くて「寄する波」は見えません。ここは大まかに夕方6時ごろとしました。
 また旧暦の七日ですから、おそらくこの日の月は上弦の月であり、夕方に南の空に昇ります。
 つまり、この時の渋谿の磯は、夕陽と上弦の月に照らされており、さぞ美しかっただろうと推測しました。
 そこで、当初は転句を「月弦陽隠紫汀上」としていました。
 しかし、よく考えれば海は北にあり、一方月は南に昇るはずで、「北の海の上に月がある」のはおかしな状況です。これは昔の人なら多分しない間違いなのだろう、と思います。
 インターネット、計算ツール、人工知能など現代文明の利器を駆使してより正確に当時の状況を再現しようとするほど、かえって自分自身の自然感覚の貧弱さが浮き彫りになっていきます。
 この時の海の色は何色か?海越しの立山連峰はどう見えるか?これらを詩に落とし込むことはできませんでした。
 やはり、百聞は一見に如かず、情報をこねくり回すよりも、当時と同じ状況の現地に実際に行き体感するのが一番だと思います。


























 2026年の投稿漢詩 第159作は 賤木 さんからの作品です。
 

作品番号 2026-159

  天平二十年春従伴公巡行諸郡渡延江        

雪来江潤越東春   雪来たりて江(かは)潤ふ 越(こし)の東の春

濡肚踏沙随按巡   肚を濡らし沙(いさご)を踏み 按巡に随ふ

鐙詠遠聞奔瀬殆   鐙の詠(うた)ひ 遠く聞こゆ 奔瀬殆(あやふ)ければ

拭膚遥望立山銀   膚(はだへ)を拭ひて遥かに望む 立山(たちやま)の銀(しろ)きを

          (上平声「十一真」の押韻)


「伴公」:大伴家持。越中国司。
「越」:越中国(富山県)。
「延江」:延槻川(はいつきがわ)、現在の早月川。富山県魚津市・滑川市の境を流れる。
「立山」:現在の立山連峰(富山県)。今は「たてやま」だが古代では「たちやま」と呼んだ。

<解説>

 雪が解けて来て川の水が増している、越中国東部の春。
 私は腹まで濡らして川底の石や砂を踏みしめて懸命に川を渡りながら、国司様の巡行に付き従っている。
 鐙の上のお方は何やら歌を詠んでおられるようだが、遠くのことのようにに聞こえる、流れの速い瀬は危ないから。
 ようやく渡り終えて、体を拭いつつ遠くを見ると、まだ雪を残す立山が白く輝いている。


大伴家持が越中国諸郡を巡行し、延槻川を渡る時の歌 「立山(たちやま)の 雪し来(く)らしも 延槻(はひつき)の 河の渡り瀬 鐙浸(つ)かすも」(大伴家持、万葉集巻17、4024)をもとに想像を膨らませて作った詩です。

 私は地元富山県ゆかりの歌人である大伴家持に私淑しており、その歌の鑑賞をするとき、近くに仕える従者の気持ちでおります。
 本当はもう少し優雅な詩にしたかったのですが、想像の中の私は一介の従者であり、馬に乗れるような身分ではありません。
 そのため腹まで水に浸しながら急流を必死に渡り、歌にも立山にも心を寄せる余裕がない、そのような詩になってしまいました。


























 2026年の投稿漢詩 第160作は 緑風 さんからの作品です。
 

作品番号 2026-160

  美濃路與松尾芭蕉        

山紫水明地大垣   山紫水明の地 大垣は

國中央位舊交繁   国の中央に位し 旧交 繁し

蕉翁数訪美濃路   蕉翁 数(しば)しば 美濃路を訪れ

史蹟多留歌聖魂   史蹟多く 歌聖の魂 留まる

          (上平声「十三元」の押韻)


<解説>

 久し振りに地本大垣の漢詩を作りました。
 これは昨年の投稿詩第130作、凱抗様の「水都大垣」を 読んで作詩いたしました。


























 2026年の投稿漢詩 第161作は T・Z さんからの作品です。
 

作品番号 2026-161

  過京都花見小路        

古城春夢一仿徨,   

誰遣燈紅暗暗香。   

木屐流音青石闆,   

竹軒顧影玉華堂。   

嘗聞茶道本禪道,   

不羨檀郎與柳郎。   

遙望故園歸未得,   

空將惆悵作清狂。   

          (下平声「七陽」の押韻)


























 2026年の投稿漢詩 第162作は T・Z さんからの作品です。
 

作品番号 2026-162

  過千本鳥居        

朱紅奪目映山薇,   

禦侍狐貍信不違。   

開啟牌坊參地藏,   

栽培荷稻叩天扉。   

往生新業今猶昨,   

神域凡間是也非。   

忽省此心元奉納,   

滄溟孤影對斜暉。   

          (上平声「五微」の押韻)


























 2026年の投稿漢詩 第163作は T・Z さんからの作品です。
 

作品番号 2026-163

  過淺草寺        

金龍山一寺,   

淺草拜觀音。   

重塔通朝暮,   

風雷矗古今。   

默知何杳渺,   

入定自深沈。   

梵語相聞處,   

空空不著心。   

          (下平声「十二侵」の押韻)