2025年の投稿詩 第211作は静岡芙蓉漢詩会の 擔雪 さんからの作品です。
 令和6年11月29日に静岡市の鎌倉文庫にて合評会を開きました。
 完成作を『芙蓉漢詩集 第35集』としてまとめました。

作品番号 2025-211

  盛夏        

樹葉映日妍   樹葉 青々 映日妍なり

槿花皓皓一枝鮮   槿花 皓々 一枝 鮮なり

園林酷暑風全止   園林 酷暑 風全く止む

炎夏蟬休三伏天   炎夏 蝉休んで 三伏の天

          (下平声「一先」の押韻)


「蟬休」: 暑さで鳴けない

<解説>

 今年の夏は全く閉口しました。
 涼風もなく酷暑、猛暑、厳暑と言われ正に三伏の夏。
 しかし、木蓮のほのかな香りに慰められました。

























 2025年の投稿詩 第212作は静岡芙蓉漢詩会の 擔雪 さんからの作品です。
 令和6年11月29日に静岡市の鎌倉文庫にて合評会を開きました。
 完成作を『芙蓉漢詩集 第35集』としてまとめました。

作品番号 2025-212

  探春        

茅屋春寒料峭風   茅屋 春寒 料峭(りょうしょう)の風

靈峯富嶽一峯崇   霊峰 富岳 一峯崇し

小庭閑寂臘梅郁   小庭 閑寂 臘梅郁(かぐわ)し

時歩村墟一徑通   時歩 村墟 一径通ず

          (上平声「一東」の押韻)


「霊峰」: 富士山























 2025年の投稿詩 第213作は静岡芙蓉漢詩会の 子方 さんからの作品です。
 令和6年11月29日に静岡市の鎌倉文庫にて合評会を開きました。
 完成作を『芙蓉漢詩集 第35集』としてまとめました。

作品番号 2025-213

  孫之夕景        

夕陽西没待団欒   夕陽 西に没すれば 待つは団欒

部活男孫聲勢彈   部活の男孫 声勢 弾ます

更到携書笑顔姉   更に到る 書携へし 笑顔の姉

帰途門外月光闌   帰途の門外 月光闌(たけなわ)なり

          (上平声「十四寒」の押韻)


<解説>

 日が沈む頃 孫が夕飯を食べる爲 我家に寄る。
 弟より遅れて姉が高校から帰ってくる。
 食後直ちに帰宅。

























 2025年の投稿詩 第214作は静岡芙蓉漢詩会の 子方 さんからの作品です。
 令和6年11月29日に静岡市の鎌倉文庫にて合評会を開きました。
 完成作を『芙蓉漢詩集 第35集』としてまとめました。

作品番号 2025-214

  菊花        

熱風連日吹東海   熱風 連日 東海に吹き

既過中秋尚暑加   既に中秋過ぎて 尚暑加はる

時有集中豪雨害   時に有り 集中豪雨の害

雖然那様發黃花   然りと雖も那様(いかん)ぞ 黄花発(ひら)くは

          (下平声「六麻」の押韻)


























 2025年の投稿詩 第215作は静岡芙蓉漢詩会の 常春 さんからの作品です。
 令和6年11月29日に静岡市の鎌倉文庫にて合評会を開きました。
 完成作を『芙蓉漢詩集 第35集』としてまとめました。

作品番号 2025-215

  流蘇樹        

清明新葉初   清明 新葉の初め

立夏白花餘   立夏 白花余す

翳樹絹綾飾   樹を翳(かげ)るは絹綾の飾り

流蘇埀穂舒   流蘇 垂穂舒(ひろ)がる

          (上平声「六魚」の押韻)


<解説>

「流蘇樹」は「なんじゃもんじゃ」という樹名
「なんと言うものじゃこの樹は」といろいろあるようだが、ここでは 「ヒトツバダゴ」

(注)流蘇: 下垂的穂状飾物

























 2025年の投稿詩 第216作は静岡芙蓉漢詩会の 常春 さんからの作品です。
 令和6年11月29日に静岡市の鎌倉文庫にて合評会を開きました。
 完成作を『芙蓉漢詩集 第35集』としてまとめました。

作品番号 2025-216

  花花        

何奈希長壽   何奈(いかん)ぞ 長寿 希(のぞ)むは

會花花解言   花に会へば 花 言を解く

包容如慈母   包容 慈母の如く

忘老復童孫   老いを忘れ 童孫に復る

          (上平声「十三元」の押韻)


<解説>

 『坂村真民一日一詩』より

  花たち
 なぜに長生きしたいのか
 花たちに会うためだ
 花は 花嫁のように
 いのちに満ち ひかりに溢れ
 わたしを若返らせ
 わたしを幸せにしてくれる


























 2025年の投稿詩 第217作は静岡芙蓉漢詩会の 常春 さんからの作品です。
 令和6年11月29日に静岡市の鎌倉文庫にて合評会を開きました。
 完成作を『芙蓉漢詩集 第35集』としてまとめました。

作品番号 2025-217

  白露        

白露猶餘炎暑天   白露 猶ほ余す 炎暑の天

茫茫夏草更芽伸   茫茫たる夏草 更に芽伸ぶ

雖然逐日蟲聲樂   然りと雖も 日を逐うて虫声楽し

季節漸亨心亦新   季節 漸く亨(とお)る 心亦新た

          (下平声「一先」・上平声「十一真」の通韻)


<解説>

 今年の処暑八月廿三日は、真夏日 秋らしさは全くなかった。
 そして白露九月八日、朝の気温三十度、処暑と変わりない真夏の日差し、それでも入浴時に虫の声。
 秋分にはススキの穂が出そろった。

























 2025年の投稿詩 第218作は静岡芙蓉漢詩会の 常春 さんからの作品です。
 令和6年11月29日に静岡市の鎌倉文庫にて合評会を開きました。
 完成作を『芙蓉漢詩集 第35集』としてまとめました。

作品番号 2025-218

  福島處理水        

纔含放射能   纔(わず)かに含む 放射能

排水海洋層   排水 海洋の層

政府安全證   政府 安全証す

権威自飲承   権威 自ら飲み承くべし

          (下平声「十蒸」の押韻)


<解説>

 結句の「権威自飲承」

 「おうおう、雁首揃えたお偉いさんよ。
  そんなに大丈夫(デージョーブ)ってなら、
  てめーで飲んでみやがれ」
 という感じ。

 この水、微量のトリチューム含有。

























 2025年の投稿詩 第219作は静岡芙蓉漢詩会の Y・H さんからの作品です。
 令和6年11月29日に静岡市の鎌倉文庫にて合評会を開きました。
 完成作を『芙蓉漢詩集 第35集』としてまとめました。

作品番号 2025-219

  猛暑        

連日炎威人影疎   連日の炎威 人影疎(まば)らなり

熱中對策一家居   熱中対策 一家の居

北窓鈴韻南遮幕   北窓 鈴韻 南幕(みなみまく)で遮る

涼氣充分妻與予   涼気 充分 妻と予(われ)

          (上平声「六魚」の押韻)


<解説>

 今年の夏も猛暑。
 高齢者はとにかく熱中症対策を徹底して猛暑を乗り切ろう。

























 2025年の投稿詩 第220作は静岡芙蓉漢詩会の Y・H さんからの作品です。
 令和6年11月29日に静岡市の鎌倉文庫にて合評会を開きました。
 完成作を『芙蓉漢詩集 第35集』としてまとめました。

作品番号 2025-220

  猛暑災害        

炎暑更新豪雨來   炎暑更新して 豪雨来る

土砂洪水故山摧   土砂 洪水 故山摧(くだ)く

地球變動沸騰化   地球変動 沸騰化

何處何時人類災   何処何時 人類の災ひ

          (上平声「十灰」の押韻)


<解説>

 今年は記録的な猛暑が続き、夏の暑さは災害級だと言われています。
 ひとたび雨が降れば、線状降水帯の発生など被害が多発しています。
 国連事務総長は今や「地球沸騰化」の時代が到来したと、コメントしております。

























 2025年の投稿詩 第221作は静岡芙蓉漢詩会の Y・H さんからの作品です。
 令和6年11月29日に静岡市の鎌倉文庫にて合評会を開きました。
 完成作を『芙蓉漢詩集 第35集』としてまとめました。

作品番号 2025-221

  食糧不足        

炎塵豪雨異常天   炎塵 豪雨 異常の天

米穀凶荒耕種田   米穀 凶荒 耕種の田

価格高騰家計苦   価格 高騰 家計苦しむ

店頭行列不安連   店頭に行列すれば 不安連なる

          (下平声「一先」の押韻)


<解説>

 台風一〇号による長雨など農作物への影響が懸念されています。
 特に穀物は品薄の状況が続き、価格も高騰し生活への影響が心配されています。

























 2025年の投稿詩 第222作は静岡芙蓉漢詩会の Y・H さんからの作品です。
 令和6年11月29日に静岡市の鎌倉文庫にて合評会を開きました。
 完成作を『芙蓉漢詩集 第35集』としてまとめました。

作品番号 2025-222

  想富士登山        

霊峰富士望登巓   霊峰 富士 登巓を望み

異客輕裝落日前   異客軽装 落日の前

危險入山規制促   危険な入山 規制促す

課題集積必優先   課題 集積 優先 必し

          (下平声「一先」の押韻)


<解説>

 夏山シーズンを迎え、富士山は登山客で賑わっています。
 特に外国人の登山客が多く、又そのマナーの悪さも問題とされております。
 世界遺産である富士山は環境面においても日本一であるよう後世に伝えていきたいものです。

























 2025年の投稿詩 第223作は静岡芙蓉漢詩会の 一菊 さんからの作品です。
 令和6年11月29日に静岡市の鎌倉文庫にて合評会を開きました。
 完成作を『芙蓉漢詩集 第35集』としてまとめました。

作品番号 2025-223

  遭雨        

遭雨秋宵古驛中   雨に遭ふ秋宵 古駅の中

芒花含露倚微風   芒花 露含みて 微風に倚る

醉人澁舌能留客   醉人舌渋りて 能く客を留め

何事飛謄類轉蓬   何事ぞ飛謄せん 転蓬(てんぽう)に類すと

          (上平声「一東」の押韻)


<解説>

「澁舌」: 呂律が回らない
「飛騰」: 遠くへ旅立つこと
「類轉蓬」: 風に吹かれる枯れ蓬のように

 ホテルで食事後、雨が降り駅に行くべきか悩んでいると、酔客の方が「この雨の中行かずに飲んだ方がいい」とアドバイスしてくれました。
 そのことをヒントに作りました。

























 2025年の投稿詩 第224作は静岡芙蓉漢詩会の 一菊 さんからの作品です。
 令和6年11月29日に静岡市の鎌倉文庫にて合評会を開きました。
 完成作を『芙蓉漢詩集 第35集』としてまとめました。

作品番号 2025-224

  秋        

芳氣芬芬丹桂秋   芳気芬芬(ふんふん) 丹桂の秋

冷光皎皎赤楓頭   冷光皎皎(きょうきょう) 赤楓の頭(ほとり)

殘蛩奏樂金風起   残蛩奏楽 金風起こり

落葉凋霜歳月流   落葉 凋霜 歳月流る

          (下平声「十一尤」の押韻)


<解説>

 対句のための習作です。
 清らかな秋の夜と友を送る景色を詠みました

























 2025年の投稿詩 第225作は静岡芙蓉漢詩会の 一菊 さんからの作品です。
 令和6年11月29日に静岡市の鎌倉文庫にて合評会を開きました。
 完成作を『芙蓉漢詩集 第35集』としてまとめました。

作品番号 2025-225

  思友        

昨夜纏羅送暑氛   昨夜羅を纏いて暑氛を送り

今朝重領迎秋雲   今朝領(えり)を重ねて秋雲を迎ふ

雁聲惻惻向何處   雁声惻々(そくそく)何処へと向(む)かひ

歸客遙思又見君   帰客遥かに思ふ又君を見んと

          (上平声「十二文」の押韻)


<解説>

 昨日まで暑かったのが、今朝になり急に寒くなり旅鳥の声もまだ南にも北にも聞こえる中の寂しさを詠みました。

「惻惻」: 寒々しい様
「紛紜」: 心が揺れ動く様

























 2025年の投稿詩 第226作は静岡芙蓉漢詩会の 一菊 さんからの作品です。
 令和6年11月29日に静岡市の鎌倉文庫にて合評会を開きました。
 完成作を『芙蓉漢詩集 第35集』としてまとめました。

作品番号 2025-226

  贈酒        

友贈香醅錦繍秋   友に香醅(こうばい)贈る 錦繍の秋

音書幸矣憶同游   音書幸ひなる矣 同游憶ふ

冀望他日還郷國   冀望す 他日 郷国に還り

小集歡言解破愁   小集歓言解く 愁ひを破る

          (下平声「十一尤」の押韻)


<解説>

 友に酒を贈り、返信をもらいました。又会って、友だちと集まりたい気持ちを詠みました

























 2025年の投稿詩 第227作は桐山堂刈谷の 孜堂 さんの作品です。
 2月の作詩教室での作品です。
 その折の私の感想も添えます。

作品番号 2025-227

  煖飲酒        

窗外大寒新雪來   窓外 大寒 新雪来たる

火爐赫炭酒瓷開   火爐 赫炭 酒瓷開く

紅顏半醉一衫薄   紅顏 半酔 一衫(ひところも)薄く

嚔起半醒衣着回   嚔(くしゃみ)起こり 半醒 衣着回る

          (上平声「十灰」の押韻)


<感想>

 起句は「新雪が来る」というのはおかしいので、「新雪堆(うずたかシ)」の方が良いですね。

 承句の「瓷」は「質の細かい焼き物」ですが、「かめ、とっくり」の意味もあるようですね。
 「開」との対応で考えると「酒壺」でも平仄的には問題無いと思いますが、どうでしょう。
 この「火爐」を「ひばち」と読みたいようですが、これでは「いろり」ですね。「ひばち」ならば「火盆」で、こちらも平仄的には問題無いはずです。

 転句の「紅顔」は最初ビックリしました。「紅顔」は「少年」も表しますので、子どもが酔っていては大変だと思ったわけですが、これは「酔顏」と言いたいのですね。
 誤解を避けるためにも、「一杯半醉輕衫冷」というところでしょう。

 結句は「くしゃみ」という漢字にビックリ、ちゃんと文字変換できました。
 「半醒」は前の「半醉」との対応でしょうが、「半醉」だったのが「半醒」ではよく分からなくなります。
「醒然」という「はっと目が覚める」という言葉がありますので、それが良いですね。
 最後の「回」は何をしているのでしょう。暖かい服を探して走り回っているのでしょうか。
「袍覓回(袍覓め回る)」ですかね。


 by 桐山人(2025. 2月教室作品)

























 2025年の投稿詩 第228作は桐山堂刈谷の 梗艸 さんの作品です。
 2月の作詩教室での作品です。
 その折の私の感想も添えます。

作品番号 2025-228

  入箱根湯        

連山染錦耀朝陽   連山 錦に染まり 朝陽耀く

爽氣露天野趣湯   爽気 露天 野趣の湯

奢侈一人入溢水   奢侈(しゃし) 一人 溢水(いつすい)に入る

身心溫回過時忘   身心 温回り 時過ぐるを忘る

          (下平声「七陽」の押韻)


<解説>

 箱根に行きました。露天風呂に入り、日の出を独り占めした贅沢(奢侈)な気持ちを詩にしました。
 承句の孤平を何とかしようと思ったのですが・・・・ 

<感想>

 題名ですが、「入」は日本語でも俗語っぽいですね。
 通常は「浴」でしょうが、題名の場合には「箱根湯」だけで良く、季節を表す語を上に置くとすっきりします。

 起句は下三字が語順もそうですが、意味としても「朝陽」と「耀」は当たり前ですので、少し工夫が欲しいところ。
 「耀」を「待」「迓(むかえる)」としてはどうでしょうね。

 承句は語順を入れ替えるだけでは「四字目の孤平」は解消しませんので、いっそ「露天」を転句に持っていく形で考えるのが良いでしょう。
 季節が冬ですと「爽氣」は合いませんので「霜氣」とし、中二字は「盈盈」とすると「霜氣」にも「野趣」にも掛かる形になりますね。

 転句はこの句も「四字目の孤平」ですので、解消を考えながら行きましょう。
 「一人」は「孤」「獨」の一字で済みますので、「露天」を入れる形で、「獨樂温泉露天浴(独り楽しむ 温泉 露天の浴)」

 結句は中二字、「回」の平仄が違いますので、ここに「奢侈」を入れれば収まると思いますよ。

 by 桐山人(2025. 2月教室作品)

























 2025年の投稿詩 第229作は桐山堂刈谷の 一兔 さんの作品です。
 2月の作詩教室での作品です。
 その折の私の感想も添えます。

作品番号 2025-229

  祈豐年        

正旦靜思春意暄   正旦 静かに思ふ 春意暄かし

浮空華蓋萬雷奔   空に浮かぶ華蓋 万雷奔る

享年富有人多少   年を享け 富有 人多少

祈福~前酒滿樽   福を祈る 神前 酒は樽に満つ

          (上平声「十三元」の押韻)


<感想>

 起句は「靜思」と「春意暄」が繋がりませんね。「靜思」もどうか。
 「閑坐新正春意暄」なら話は通じますね。

 承句は直訳すれば「空に浮かぶ雲 雷が沢山鳴り響いている」ということですが、これはお正月の景としてどういう意味を持たせたのでしょうか。
 正月には合わないし、起句の「暄」とか結句の「祈福神前」という言葉とも齟齬がありますね。
 「萬雷」を「吉」と目出度い方向に持って行くべきでしょう。

 転句の「享年」は「年を享け」ではなく「(天から)享けた年」です。それで「人生の長さ」つまり「寿命」という意味になります。
 下の「多少」は色々な意味に解釈できそうです。
 『春暁』の「花落知多少」ですと「どのくらい」、杜牧の『江南春』の「多少樓臺煙雨中」なら「沢山」です。
 「享年富有」、つまり「寿命や財産」を人は「どのくらい持っているのか」「沢山持っていることだ」の両方が意味としては読み取り可能ですね。
 ただ、どちらの意味にしても、題名の「祈豐年」とは離れて個人的な「福」に行きそうです。
 話の流れとしては、転句は「享年富有人知外」として、結句で願い事に向かうのが良いでしょう。

 結句は「神前酒滿樽」ですと「神様の前でどんちゃん騒ぎ」、これはちょっと不謹慎に感じます。
 「只禱平安」「偏願豐饒」とすれば「酒滿樽」も違和感が消えるでしょう。


 by 桐山人(2025. 2月教室作品)

























 2025年の投稿詩 第230作は桐山堂刈谷の 一兔 さんの作品です。
 2月の作詩教室での作品です。
 その折の私の感想も添えます。

作品番号 2025-230

  愛知用水夢        

木曾河景四山幽   木曽の河景 四山幽たり

父老汲流千歳憂   父老 流れを汲む 千歳の憂

裂岸水渠多潤澤   岸を裂く 水渠 潤沢多し

望ク洋洋夢中求   郷を望んで 洋洋 夢中に求む

          (下平声「十一尤」の押韻)


<解説>

 木曽川から取水して、郷の潤いのあることを詩にしたい

<感想>

 東郷町の愛知池は木曽川から運んでくる愛知用水の調整池でしたね。

 起句は木曽川の景を述べたものですが、「幽」よりも「悠」が合うと思います。

 承句は「流」が冒韻、また「千歳憂」ですと木曽川のせいで苦しんでいるように読めます。
 意図としては、用水が出来る前は水を汲むのにも苦労した、と言うことでしょう。
 しかし、起句でもう木曽川を出していますので、ここで木曽川から遠く離れた土地のことを言うのはおかしいです。
 用水の話に早く持って行き、「千里導渠豐潤流」ですかね。

 転句は用水の様子や景色を入れて、結句に持って行きたいですね。「柳岸梅堤水滾滾」かな。

 結句は「望郷」ですと遠くから故郷を思い浮かべることになります。「臨ク」の方でしょうね。
 下三字の「夢中求」は何を求めるのか、判然としません。「夢中周」ではどうでしょう。


 by 桐山人(2025. 2月教室作品)

























 2025年の投稿詩 第231作は桐山堂刈谷の 一兔 さんの作品です。
 2月の作詩教室での作品です。
 その折の私の感想も添えます。

作品番号 2025-231

  菊花香        

曉雨糸糸詩興加   暁雨 糸糸 詩興加ふ

庭前秋菊不多花   庭前の秋菊 花多からず

午晴風起芳香散   午晴 風起こり 芳香散ず

白首忘時獨煮茶   白首 時を忘れ 独り茶を煮る

          (下平声「六麻」の押韻)


<感想>

 起句の「糸糸」は「細かい雨が降る様子」。
 朝の細かな雨が「詩興」を深めるということですが、「加」だと他にも何かが有って、更に「雨」がプラスされたという意味合い。
 では他のものは何だろうか、となると、次の「秋菊」か。
 でも、これは「不多花」とありますので見たところは良くない。
 転句で「芳香」が漂うようですが、それは「午晴」で、昼まで待たなくてはいけません。
 どうにも「加」の対象が出て来ないですので、「詩興芽(めぐム)」と起句だけで収まるのが良いでしょう。

 承句は「不多花」がどんな意図なのか。
 花が少なかったら芳香も出ないように思いますが、ちょっとしかない花がしっかりと香りを出しているということですかね。
 「花が少ない」という情報が本当に必要かどうか、「庭籬秋菊重濡花」くらいならば、「午晴」への流れも良くなると思いますよ。

 結句の「白首」は作者自身、「忘時」はうっとりとして、夢中になってという意図でしょうが、「長時間、茶を煮る」意味になります。
 また、茶は香りが大切、菊の「芳香」が漂う中で茶の香りは生きてこない。
 例えば「仙境家」とか、韻字も含めて最後は検討されてはどうでしょう。


 by 桐山人(2025. 2月教室作品)

























 2025年の投稿詩 第232作は桐山堂刈谷の 静巒 さんの作品です。
 2月の作詩教室での作品です。
 その折の私の感想も添えます。

作品番号 2025-232

  野雀        

霜晴郊野覺春溫   霜晴の郊野 春温を覚ゆ

小雀成群集菜園   小雀 群を成し 菜園に集す

踊躍啄虫飛回囀   踊躍 虫を啄み 飛回し囀る

突如驚散寂無喧   突如 驚散し 寂として喧無し

          (上平声「十三元」の押韻)


<解説>

 家の近くの畑の様子です。
 雀がものすごい大群でやって来て、何かに驚いて急に居なくなってしまいます。

<感想>

 起句は「溫」が分かりにくいですね。
 同じ「あたたかさ」でも「暄」という韻字がありますので、そちらが良いでしょう。

 承句は「成群」と「集」は同じこと、ちょっと物足りないので、「聚群遊菜園」でどうですか。

 転句は平仄が違い、「二六対」が壊れています。
 この句は動詞が多いので、「飛復囀」とし、「復」も「又」「更」など考えても面白いですね。

 結句は「突如」でも良いですが、勢いの良さを出して「一驚雲散遂無喧」でしょうか。

 by 桐山人(2025. 2月教室作品)

























 2025年の投稿詩 第233作は桐山堂刈谷の 容将 さんの作品です。
 2月の作詩教室での作品です。
 その折の私の感想も添えます。

作品番号 2025-233

  探春        

晞影寒簷衣更着   晞影 寒簷 衣更に着る

春尋池苑木梢紅   春は池苑を尋ぬれば 木梢紅く

見吾潛隱鴨黃愛   吾を見て潜隠す 鴨黄愛し

香鳥初音渡惠風   香鳥の初音 恵風に渡る

          (上平声「一東」の押韻)


<感想>

 起句の「衣更着」は陰暦二月の古名、語源は「春にはなってもまだ寒いので衣を更に重ねて着る」という説が濃厚のようです。
 他にも「着更着」「絹更着」などとも表記するようですね。
 上の四字は明の袁宏道の句、よく勉強なさってますね。朝の微かな光が寒々とした軒端に差し込む、という描写ですね。

 承句は「春」がどうしたのか、この語順ですと悩みますので、「尋春」として主語を作者にしなくてはいけません。

 転句の「鴨黃」は「鴨の雛」、結句で「香鳥」が「ウグイス」、視覚と聴覚の違いはありますが、二つ鳥を使うのはどうでしょう。
 特に転句では「吾」や「愛」などの表現がこの句の位置づけを大きく感じさせますので、どちらに主眼があるのか悩ましく、結論として結句が軽くなりますね。
 上を対にする形で、「鴨黃潛隱輪紋水 香鳥囀鳴幽谷風」のようにすると、二つの素材が並列になりますね。


 by 桐山人(2025. 2月教室作品)

























 2025年の投稿詩 第234作は桐山堂刈谷の 聖陽 さんの作品です。
 2月の作詩教室での作品です。
 その折の私の感想も添えます。

作品番号 2025-234

  初春梅花        

軽寒牆角蟄虫伸   軽寒 墻角 蟄虫伸ぶ

瓊樹経冬黛色新   瓊樹 冬を経て 黛色新たなり

破蕾横枝香馥郁   蕾を破りて 横枝 香馥郁

柴門梅信鳥聲春   柴門 梅信 鳥声春なり

          (上平声「十一真」の押韻)


<解説>

 春が待ち遠しいです

<感想>

 起句は初春らしくて良いですね。

 承句の「瓊樹」は梅のことかと最初思いましたが、梅を出すのは構成としてちょっと早い。
 それに梅の枝自体はゴツゴツした枯れたような感じです。
 となると、庭の木で、春を迎えて生き生きした姿を表したということでしょうね。
 「黛色」は山の青々とした姿に使いますが、ここは濃い緑色ということで、理解できます。
 ただ、「黛色」などは先述のように解釈されそうですので、ここは「庭樹経冬肌色新」。
 木を限定して良いなら「松竹経冬樹色新」も。
 梅の木ということでしたら、もうここで「梅樹」と出して、結句の「梅信」は「芳信」でしょう。

 転句、結句は問題なく仕上がっていますね。最後の「鳥聲春」は明るい終わりになってます。

 by 桐山人(2025. 2月教室作品)

























 2025年の投稿詩 第235作は桐山堂刈谷の 芳親 さんの作品です。
 3月の作詩教室での作品です。
 その折の私の感想も添えます。

作品番号 2025-235

  林園早春        

垂糸粉色早梅花   垂糸 粉色 早梅の花

鳥雀低回啄草芽   鳥雀 低回 草芽を啄む

歩歩小丘風尚峭   歩歩 小丘 風尚ほ峭(けわ)し

遠山殘雪一望遐   遠山 残雪 一望遐(はる)かなり

          (下平声「六麻」の押韻)


<解説>

 刈谷市の日高公園を散策し、早春の風景を詩にしました。

<感想>

 起句の「垂糸」は柳でしょうか。それとも枝垂れ梅?でしょうか。
 枝垂れ梅なら、「垂枝」でしょうから、やはり柳かな。
 それでしたら、「垂糸」だけで終っては中途半端なので、中二字の「粉色」(白い花)をやめて、柳のことを述べた方が良いでしょう。
 「早梅」は「素梅」「白梅」で行けるでしょう。
 あるいは、柳はやめて梅だけにするなら「浮香」とすれば良いでしょう。

 承句は「低回」とも書きますが、誤解の無いようにするなら「彽徊」と表記した方が良いですね。
「低く(飛び)回る」のかと思います。

 転句は「小丘」が公園の特色を出しているのでしょうか。
 前半が近い視線でしたので、ここは「小園」と全体を見渡すような広がりを出しておくと、結句の遠景へと流れが良くなりますね。

 結句は良いですね。

 by 桐山人(2025. 3月教室作品)

























 2025年の投稿詩 第236作は桐山堂刈谷の 容将 さんの作品です。
 3月の作詩教室での作品です。
 その折の私の感想も添えます。

作品番号 2025-236

  菜花        

吹渡暄風黃已   吹き渡る暄風 黄已に奄オ

菜花漠漠賞心新   菜花 漠漠 賞心新なり

幽香四溢多遊蝶   幽香 四溢 遊蝶多し

天地悠然渥美春   天地悠然 渥美の春

          (上平声「十一真」の押韻)


<解説>

 「渥美半島」の「渥美」は「あくび」と読んで「きわめて美しい」ことを表します。

<感想>

 「渥美半島菜の花浪漫街道」は、渥美半島をグルッと一周、一千万本の菜の花で到る処が黄色に染まります。
 私も昨年、伊良湖岬まで行き、菜の花をしっかり楽しんで来ました。
 今回の詩は、渥美半島の雄大さを結句で示すと共に、「渥美」の漢語の意味を表しているわけですね。
 一読した時は、半島の意味にしか捉えられず、結びとしてはやや安直かと感じましたが、掛詞だと言われると面白みが出て来ますね。

 前半はやや冗舌で、「黃已堰vと「菜花漠漠」は重複感があります。
 もう少し半島の要素も入れて「吹渡暄風沙白濱」、あるいは「三月暄風吹渡濱」とか。

 承句の上四字を「黃花漠漠」とすれば、起句の「堰vは要らないでしょう。
 下三字は「賞心新」とここで感情をまとめるのではなく、「旅心」とすれば、まだこの後変化があるような趣になります。

 転句は、「漠漠たる菜花」の、「四溢」である「香」に対して「幽」という形容はどうでしょうかね。
 確かにキツイ香りではないですので、「幽香」を生かすなら「四溢」を控え目にして「溢道(道に溢れ)」などでしょう。

 結句は最初に書きましたように、これで良いのですが、この下三字を起句に持って行くとインパクトが強くなります。
 起句が「吹渡海風渥美濱」、結句はそうですね、「天地悠然百里春」は具体性が加わるように思いますが、ご参考に。


 by 桐山人(2025. 3月教室作品)

























 2025年の投稿詩 第237作は桐山堂刈谷の 静巒 さんの作品です。
 4月の作詩教室での作品です。
 その折の私の感想も添えます。

作品番号 2025-237

  春花爛漫        

猿投邑里帶輕煙   猿投の邑里 軽煙を帯ぶ

笑臉桃花喜春鮮   笑臉(しょうけん) 桃花 春鮮を喜ぶ

可愛籠川流水碧   愛すべし 籠川 流水の碧

滿枝畳錦絳連天   満枝 錦を畳み 絳天に連なる

          (下平声「一先」の押韻)


<解説>

 猿投山の麓の桃は有名ですが、その源は籠川の水です。そのことを詠みたいと思います。
 結句の「絳」は「紅」にしたかったのですが、平仄が合わず、これにしました。

<感想>

 承句の「笑臉」は「笑顔」のこと、この場合には桃の花を喩えたものですね。
 この承句で桃の花に目が行き、そこから広がるかと思ったら、最後でまた桃の花に戻り、作者の視点があちこちに飛んでいます。
 できれば承句と転句を入れ替える形が良いでしょう。
 「籠川」も早めに「猿投」と近づけておくと良いですね。
 「可愛」は具体的なものにした方が画面が明瞭になりますので、「碧碧籠川流水遷」のような描写が良いかと思います。

 転句の方は下三字を検討しましょう。

 結句はこれで良いですが、「紅」を使いたければ「紅錦」として、こちらも下三字を検討することですね。

 by 桐山人(2025. 4月教室作品)

























 2025年の投稿詩 第238作は桐山堂刈谷の 清井 さんの作品です。
 4月の作詩教室での作品です。
 その折の私の感想も添えます。

作品番号 2025-238

  春花爛漫        

春輝駘蕩雨餘天   春輝 駘蕩 雨餘の天

馥郁梅花古寺邊   馥郁 薄暮 古寺の辺

幽寂人歸僧堂靜   幽寂 人帰り 僧堂静かなり

新鶯一聲驚午眠   新鶯 一声 午眠を驚かす

          (下平声「一先」の押韻)


<解説>

 滞在した寺の梅の花がきれいでした。

<感想>

 平仄については、転句の「堂」が平字なので「二六対」になっていない点、結句は「二四不同」「二六対」の両方が合わない点ですね。

 内容的には、大きな流れは良いですが、例えば起句、「雨餘」ということで雨上がりの景に対して「春輝駘蕩」は極端過ぎますね。
 次の承句でも「馥郁梅花」ですので、雨が降っていたことが必要かどうか。「午晴天」くらい。

 承句は良いですが、転句は「人歸」の理由が分かりません。
 ひとまず平仄を合わせる形で、「幽寂僧堂」として、下に「人語絶」「人影去」とか。

 結句は中二字、平仄を合わせるために「澁舌」ですかね。
 下三字は「午眠」では「古寺」や「僧堂」で昼寝していることになりますので、失礼な話になりますね。
 こちらに先ほどの「午晴天」など。
 「天」を使う韻脚を持ってきても良いですし、鶯に相応しい場所とかを考えても良いと思います。


 by 桐山人(2025. 4月教室作品)

























 2025年の投稿詩 第239作は桐山堂刈谷の 芳親 さんの作品です。
 4月の作詩教室での作品です。
 その折の私の感想も添えます。

作品番号 2025-239

  春花爛漫        

四面山飛鳥邊   四面 山青く 飛鳥の辺

春風習習寺門前   春風 習習 寺門の前

淡紅香遍誘鶯語   淡紅 香遍く 鶯語を誘ふ

滿院櫻花映日姸   満院の桜花 日に映じて妍なり

          (下平声「一先」の押韻)


<解説>

 「飛鳥邊」が使えなければ「古跡邊」にします。

<感想>

 そうですね、起句は「飛鳥」を地名の「あすか」と理解して貰うのは難しいですね。
 他にも「飛鳥」を想起させるものが出て来れば良いですが。
 例えば、「古跡山村飛鳥邊」「山碧古村飛鳥邊」とか。

 承句は特に問題は無いですが、ここも飛鳥のお寺らしい描写が欲しいですね。
 「寺樓前」とすると、少し雰囲気が加わります。

 転句は「香遍」と「誘鶯語」は桜と言うよりも梅の花の場面ですね。
 結句と合わせて語を入れ替えて、「櫻花滿院誘鶯語 香遍淡紅映日姸」と分離して、桜を真っ先に出すようにすると良いです。
 その上で、「鶯語」を例えば「遊客」としてみるとか、「香遍」を「萬朶」とするなど、色々試してみると、また景が変化しますね。


 by 桐山人(2025. 4月教室作品)

























 2025年の投稿詩 第240作は桐山堂刈谷の 一兔 さんの作品です。
 4月の作詩教室での作品です。
 その折の私の感想も添えます。

作品番号 2025-240

  春華爛漫        

鶯語新枝流水邊   鶯語 新枝 流水の辺

老夫窗外憶春田   老夫 窓外に春田を憶ふ

梅花馥郁都如夢   梅花 馥郁 都て夢の如し

寂靜黄昏値萬錢   寂静 黄昏 値万銭

          (下平声「一先」の押韻)


<感想>

 話をまとめていくと、この「老夫」は室内に居て、「春田」に行けなくて寂しい気持ちですかね。
 そうすると、周りの景色(起句や転句)は実景ではなくなりますので、ここは反対に「老夫」は「郊外」に居た形にした方が良いでしょう。

 起句は「枝」があると梅なのか何なのかややこしくなるので、「鴬語頻聞疎水邊」

「梅」は承句に持ってきた方が前半がまとまりますので、「梅香馥郁滿耕田」

 転句に「老夫」を持ってきて、のんびりと景色を眺めるのも良いでしょうし、畑仕事をしても良いですね。

 結句は「値萬錢」となる条件で「寂靜」では役不足でしょう。
 転句の方から合わせて「萬錢」にかなうような素材を並べたいですね。
「老夫獨佇夕陽下 滿地黄昏値萬錢」のような形。


 by 桐山人(2025. 4月教室作品)