作品番号 2025-91
元旦
旭日曈曈輕暖晨 旭日 曈曈 軽暖の晨
小窩戚戚太平春 小窩(しょうか) 戚戚 太平の春
青年獻壽白髯叟 青年献寿す 白髯の叟
滿座交觴和氣新 満座 交觴 和気新た
作品番号 2025-92
新年
迎春歳旦鳥聲喧 迎春 歳旦 鳥声喧し
梅發陽和香滿村 陽和に梅発き 香は村に満つ
東望慶雲歡正極 東に望む慶雲 歓び正に極まる
親朋來集祝三元 親朋来たり集ひて 三元を祝ふ
作品番号 2025-93
乙巳元朝
百八鳴鐘淨六根 百八 鳴鐘 六根を浄め
春盤椒酒迓三元 春盤 椒酒 三元を迓(むか)ふ
干戈災害足前歳 干戈 災害 前歳に足ると
倚醉衰翁吐獨言 酔に倚りて 衰翁 独言を吐く
作品番号 2025-94
新歲偶作
歳日好風寒又溫 歳日 好風 寒又た温
高天雲散喜三元 高天 雲散じ 三元を喜ぶ
屠蘇倶酌一家宴 屠蘇 倶に酌む 一家の宴
盡語老翁乘膝孫 語を尽くす老翁 膝に乗る孫
作品番号 2025-95
新年口號 一
巳年又迓七巡期 巳年又迓(むか)ふ 七巡の期
天惠長生拜謝滋 天恵の長生 拝謝滋し
世上近憂多戰亂 世上近ごろ憂ふ 戦乱の多きを
神前只願太平時 神前 只だ願ふ 太平の時
作品番号 2025-96
新年口號 二
社會不安蒙甲辰 社会不安 甲辰を蒙ふ
今朝旭日告年新 今朝の旭日 年新たまるを告ぐ
巳催創造眾人語 巳は創造を催す 衆人の語
一路平和須拂塵 一路平和 須らく塵を払ふべし
作品番号 2025-97
歲朝偶成
微暖東風回小軒 微暖 東風 小軒を回り
瑞雲初日賀三元 瑞雲 初日 三元を賀す
歲朝佳景春粧好 歳朝 佳景 春粧好し
淑氣平安滿曠原 淑気 平安 曠原に満つ
作品番号 2025-98
祝正旦
薫風微暖水邊村 薫風 微暖 水辺の村
草木梅枝野漸暄 草木 梅枝 野漸く暄たり
淑氣詔光初日上 淑気 詔光 初日上る
新晴十里祝三元 新晴 十里 三元を祝す
作品番号 2025-99
迎新年 一
歳旦冬榮足美花 歳旦 冬栄 美花足る
白椿黃菊赤山茶 白椿 黄菊 赤山茶
毛衣氈帽嚴寒扞 毛衣 氈帽 厳寒を扞(ふせ)ぐ
愛日無風野老嘉 愛日 風無し 野老は嘉(よろこび)
作品番号 2025-100
迎新年 二
木公木母此君瞠 木公 木母 此君を瞠(みつめ)て
準備萬端元旦迎 準備 万端 元旦を迎える
百八鐘鳴始瞑想 百八 鐘鳴 瞑想を始む
冥冥之志守終生 冥冥之志 終生守る
作品番号 2025-101
感春
春陽穩穩陌阡溫 春陽 穏穏として 陌阡温なり
不變風光梅里村 変はらず 風光 梅里の村
花舞鳥歌心樂逸 花舞ひ 鳥歌ひ 心は楽逸
行吟歩歩育詩魂 行吟 歩歩 詩魂を育む
作品番号 2025-102
新歲
三元得喜歳重晨 三元 喜びを得たり 歳重ぬる晨
結柳柔枝淑氣新 結柳 柔枝 淑気新たなり
砂白松青名勝地 砂白く 松青き 名勝の地
再尋何日太平春 再び尋ねん何れの日か 太平の春
作品番号 2025-103
新春上野天滿宮
春氣高樓古趣存 春気 高楼 古趣存し
鶯鳴梅樹映花門 鴬鳴 梅樹 花に映ずるの門
博文約禮浩然志 博文約礼 浩然の志
祈願天神守護孫 天神に祈願す 孫を守護せんと
<解説>
受験生の孫、今年こそ実(巳)が結びますように、です。
作品番号 2025-104
初夢
玉暦開端乙巳番 玉暦 端を開けば 乙巳の番
團欒笑語酒芳樽 団欒 笑語 酒は樽に芳し
陶然醉裏已甜睡 陶然 酔裏 已に甜睡
夢路道中鷹影翻 夢路 道中 鷹影翻る
<解説>
江戸時代初期に生まれたとされる「一富士二鷹三茄子」
作品番号 2025-105
新年吟詠
東天瑞氣太平門 東天 瑞気 太平の門
三友春粧福祿蕃 三友 春の粧ひ 福禄蕃し
立志歳朝新筆硯 志を立て 歳朝 筆硯を新たにす
揮毫將獻一吟魂 揮毫 将に献ぜん 一吟魂
<解説>
蛇は古代から再生、永遠の象徴とのこと。
作品番号 2025-106
新年書懷
古風松竹吉祥門 古風の松竹 吉祥の門
新築厨房笑語溫 新築の厨房 笑語温かし
椒酒辛盤春盎盎 椒酒 辛盤 春盎盎
東窗瑞氣祝三元 東窓 瑞気 三元を祝ふ
作品番号 2025-107
乙巳新年作
元旦暉光乙巳新 元旦 暉光 乙巳新たなり
歡來淑氣酌芳醇 歓び来たる淑気 芳醇を酌む
人生登嶽蛇行路 人生 岳に登る 蛇行の路
自刻胸中七八春 自ら刻す 胸中 七八の春
作品番号 2025-108
乙巳歳旦
鷄鳴告曉入階軒 鶏鳴 暁を告げ 階軒に入る
水淨香芳祖廟尊 水浄く 香芳しく 祖廟尊し
椒酒醺然延壽藥 椒酒 醺然 延寿の薬
半醒半醉笑聲繁 半醒 半酔 笑声繁し
作品番号 2025-109
乙巳新年作 一
爭亂東歐尚未終 争乱の東欧 尚未だ終らず
民揮涕涙戰圖中 民は揮(ふる)ふ 涕涙 戦図の中
乾坤政治不安定 乾坤 政治 不安定
解決萬邦祈莫窮 解決 万邦 祈り窮まり莫し
作品番号 2025-110
乙巳新年作 二
東山日上別乾坤 東山 日は上り 別乾坤
獨把酒杯香滿樽 独り酒杯を把れば 香は樽に満つ
歳旦團欒是唯一 歳旦の団欒は是れ唯一
故人親戚更兒孫 故人 親戚 更に児孫
<解説>
歳旦の楽しみは、知人、親戚、孫たちとの団欒である
作品番号 2025-111
迎歳
寒天苗長玉葱園 寒天に苗は長ず 玉葱の園
霜氣黃柑果熟繁 陽気 黄柑 果熟繁し
葦索松筠加雪骨 葦索 松筠 雪骨を加へ
慶雲迎歳靄然魂 慶雲 迎歳 靄然の魂
<解説>
暖冬でしたので、たまねぎの苗も植えたし、みかんも色づいた。
お正月飾りを用意して、和やかな心で新年を迎えたい
作品番号 2025-112
大寒即事
朝來細雪大寒村 朝来の細雨 大寒の村
満地冷威飢鳥喧 満地の冷威 飢鳥喧し
野老尋春南圃歩 野老 春を尋ぬる 南圃の歩
梅枝一影璨氷魂 梅枝 一影 氷魂璨たり
作品番号 2025-113
立春
仍然寒氣掩柴門 仍然たる寒気 柴門を掩ひ
雖過節分風未溫 節分を過ぎたりと雖も 風未だ温ならず
隣竝小童聲喚喚 隣並の小童 声喚喚
老驢伏櫪待春樽 老驢 櫪に伏して 春樽を待つ
作品番号 2025-114
新年
新年乙巳元
春氣淡無言
風煦雨濡落
花開滿蝶園
なお、感想につきましては、教室での折に添えた私の文章を元にしています。
作品番号 2025-115
傍若無人 一
無視地球溫暖化 地球温暖化を無視して
石油掘削再開號 石油掘削再開の号び
約條破棄侮天下 約条の破棄 天下を侮る
大國盈憍日日騷 大国の盈憍 日々騒がし
<感想>
就任して以来の某国大統領の発言や行動は、私だと「我田引水」かな、自分だけ良ければ良いという論理と、それを隠さない姿は、「仁」を今でも大切にしている日本人には聞くにも見るにも耐えられないものですね。
人の痛みとか苦しみが理解出来ない人間が権力を握ると世の中はどうなるのか、まだ観客席から三文芝居を見ている立場で居ますが、嫌なものを見せられて退場もできないのは困ったものです。
結句の「盈憍」は「傲りに満ちる」、本当に毎日が騒がしいですね。
2025. 3.25 by 桐山人
作品番号 2025-116
傍若無人 二
大國小人群 大国 小人群がり
音聲喝采雰 音声(おんじょう)喝采の雰
約盟離脱恣 約盟 離脱恣に
世界正紛紛 世界 正に紛々
<感想>
某国新大統領の政権の顔ぶれを見ると、やはり「類は友を呼ぶ」と言うか、起句に書かれた通りで「成り上がりの小人」ばかりの印象(偏見かな?)ですね。
この起句のスパッとした表現は良いですね。
批判や忠言を聞かぬお殿様と、おこぼれを狙う家老達、この配役でも人気があるのが不思議です。
今パソコンで「政権」を入力したら「聖賢」が表示されました。
機械にも嘆きが感染したようです。
2025. 3.25 by 桐山人
作品番号 2025-117
山林火災
森林放置度長期 森林放置 長期に度り
到處枯乾古木枝 到る処 枯れ乾く古木と枝
一火瞬燃焔蔓延 一火 瞬く燃え 焔蔓延す
消防微力待天爲 消防微力 天為を待つ
<解説>
昭和の頃は、薪採りに山林に入ったものだが、現代は荒れ放題
<感想>
つい先日、カリフォルニアの山火事をテレビニュースで見ながら、どことなく「対岸の火事」のような感覚がありましたが、大船渡の火事は本当にびっくりでした。
火事の原因は分からないようですが、仰るように森林の放置は火災の拡大に関して大きな要因だったようですね。
前半で火事の前の乾いた山林、転句で一気に燃え上がっていく様子がよく表されていますね。
結句は、「消防」の努力も空しく感じる場面で、「微」という言葉が切実で、「天爲」という天からの雨に頼りにするしかない思いが表されています。
2025. 3.25 by 桐山人
作品番号 2025-118
無題
中世帝王風 中世帝王の風
叱聲號令窮 叱声 号令窮まる
何時搖反動 何時 反動に揺れん
冷靜節操豐 冷静 節操豊かにして
<感想>
今回も某国の新大統領の話ですね。
最後の「冷靜」「節操」は全く同感ですね。
2025. 3.25 by 桐山人
作品番号 2025-119
外孫子成人式有感
最高学府幼顔残 最高学府 幼顔 残る
早作孫児此弱冠 早に作る 孫児 此に弱冠
激動変遷當試練 激動の変遷 当に試練
前途従是覚天寛 前途 是より天の寛きを覚ゆ
<解説>
娘の長男が成人式を迎えました。
2年前に「新成人」にはなりましたが 成人式は従来通り20歳で開催です。
まだ学生で幼さが残りますがこれからがたのしみです
<感想>
お書きになったように「新成人」と「成人式」の2段構えになりましたが、お祝いということではやはり二十歳ですね。
大学生になったけどまだ幼さが残るお孫さん、「弱冠」になったことを「早作」「此」の語で強調していますね。
私の孫を見ていても思いますが、若者はこれから、私たちの知らない世の中を生きて行くのだ、ということを改めて感じます。
未来は常に現状を変革していくものですが、願わくば、若者が希望を沢山持てるような世界になってほしいですね。
2025. 4.30 by 桐山人
作品番号 2025-120
賀畢業
少年各有自誇才 少年 各おの自ら才を誇る有り
北嶺風寒志豈摧 北嶺の風寒きも 志豈に摧かれんや
笑望青雲二千日 笑って青雲を望む二千日
未知天地爲君開 未だ知らざるの天地 君が為に開く
<解説>
まだまだ子供と思っても 自分で恃むところある
どんな厳しい北風も 決して挫けぬ志
笑って過ごした六年間 高みを目指して二千日
これから君らが拓くのは 誰も知らない新時代
中学・高校と6年間の寮生活だった長男、この3月、無事に卒業し、我が家に戻ってきています。
4月からは大学進学、本人も諸準備に忙殺されているところですが、毎日とても楽しそうです。
<感想>
観水さんからは、息子さんへの思いを詠んだ詩をいただきました。
中学から6年間の寮生活、家を離れての生活だったわけですので、大きく成長されたことでしょう。
転句の「二千日」は、ほぼ6年間を表しますが、数の重みが随分違いますね。
単に数字が大きいというだけでなく、親としても子としても、様々な沢山の思いの積み重なった日々だったのだろうなぁと想像させられます。
結句の「爲君開」も万感の思いが籠められていて、つい一緒に応援したくなるような結びになっていると思いました。
2025. 4.30 by 桐山人