作品番号 2024-31
思元日能登地震
元日能登激震傳 元日に能登 激震伝ふ
風光明媚地顛連 風光明媚の 地は顛連
山崩家倒瀾波襲 山崩れ家は倒れ 瀾波襲ふ
慘劇茫茫空仰天 惨劇茫茫 空しく天を仰ぐ
<解説>
平成六年元日に能登半島に激しい地震が連なって起きた。
ここは風光明媚で冬は極寒の地。山は崩れ家は倒れ 津波も襲った。
発生した被害はとりとめもない惨劇で 私は空しい思いで天を仰ぐのみだった。
作品番号 2024-32
思年始災害
内憂外患舊年態 内憂外患 旧年の態
但願甲辰迎泰平 但だ願ふ 甲辰 泰平を迎ふを
一轉能登坤震報 一転 能登 坤震の報
前途不穏益充盈 前途の不穏 益(ますま)す充盈
<解説>
「内憂外患」… 政治不信、異常な物価高騰等の国内不安と、覇権争い、民族対立等の国際不安
「坤震」… ここでは能登地震 「機衝」… ここでは羽田空港の飛行機衝突事故
作品番号 2024-33
初日感懐
正朝日月肅然來 正朝の日月 肅然と来たる
回看前年百感催 前年を回看して 百感催す
喜壽殘軀多病甚 喜寿の残躯 多病甚だし
仰望老健獨傾杯 老健を仰望して 独り杯を傾く
作品番号 2024-34
新年早朝書懐
早晨綽綽倚東垣 早晨綽綽として 東垣に倚る
新歳庭前寒已温 新歳の庭前 寒已に温
世上戰塵生不止 世上 戦塵 生じて止まず
心期平穩拜朝暾 心に平穏を期して 朝暾に拝す
作品番号 2024-35
歳除
孤坐聽鐘爐火紅 孤坐し 聴鐘す 炉火紅し
昏迷今歳現將終 昏迷の今歳 現将に終らんとす
甲辰至樂喜春信 甲辰 至楽なり 春信を喜ぶ
宿望猶求一老翁 宿望 猶ほ求む 一老翁
作品番号 2024-36
新春感懷
凋年茅屋竹林東 凋年 茅屋 竹林の東
雪裏書燈爐火紅 雪裏の書灯 炉火紅し
朔氣正晨春未到 朔気の正晨 春未だ到らず
人生百歳白頭翁 人生 百歳 白頭の翁
作品番号 2024-37
迎歳寒梅
南庭古木犯寒開 南庭の古木 寒を犯して開く
慶賀甲辰長壽杯 甲辰を慶賀し 長寿の杯
世相遷移誰得語 世相の遷移 誰か語り得ん
惟知春信百花魁 惟だ知る 春信 百花の魁
作品番号 2024-38
新年
新正陽暖早梅開 新正 陽暖かにして 早梅開く
C影幽香春宴回 清影 幽香 春宴回る
有客彈琴夫尺八 客有りて琴を弾じ 夫は尺八
吟聲相和好風來 吟声 相和せば 好風来たる
作品番号 2024-39
函山驛傳
新年富嶽雪冠皚 新年 富岳 雪冠皚たり
連繋十區長又崴 連繋 十区 長く又崴(わい)なり
沿道聲援支走破 沿道の声援 走破を支ふ
若人氣概報春來 若人の気概 春の来たるを報ず
<解説>
箱根駅伝は毎年楽しみに観ています。
今年も感動の場面が多かったです。
作品番号 2024-40
歳朝詩思
除夜凄然鐘韻來 除夜 凄然として 鐘韻来たる
祭詩窗下一檠開 祭詩の窓下 一檠開く
履端朋友迎春宴 履端 朋友 迎春の宴
歡語笑顏高興催 歓語 笑顔 高興催す
作品番号 2024-41
新年再會
麗日恵風春正回 麗日恵風 春正に回る
和顏衆子復歸來 和顔の衆子 復た帰り来たる
三元小宴無窮已 三元 小宴 窮り已むことなし
只願瀕年共酒杯 只願ふ 瀕年 酒杯を共にすと
作品番号 2024-42
甲辰頌春
華表煌然旭日回 華表 煌然として 旭日回る
鶯聲一二早梅開 鴬声 一二 早梅開く
暖窗正旦甲辰宴 暖窓 正旦 甲辰の宴
家族怡顔喜壽杯 家族 顔を怡ばし 喜寿の杯
作品番号 2024-43
甲辰年頭作
乾轉坤旋春又回 乾転坤旋 春又回り
三朝茅屋一枝梅 三朝の茅屋 一枝の梅
雖貧樂日無官好 貧なりと雖も 日を楽しんで無官好し
滿目平安和氣來 満目 平安 和気来たる
作品番号 2024-44
新年
傾聽晨鐘坐石臺 傾聴す 晨の鐘 石台に坐す
曙光拜手瑞雲開 曙光 拝手 瑞雲開く
安常處順身多幸 安常 処順 身多幸なり
新歳融融春又囘 新歳 融融たり 春又回る
作品番号 2024-45
初吟會
芳歳詩朋相會辰 芳歳 詩朋 相会するの辰
C吟朗詠動梁塵 清吟 朗詠 梁塵を動かす
萬雷拍手滿場響 万雷の拍手 満場に響き
爾後宴遊酬應頻 更に喜ぶ 宴遊 酬応頻りなり
作品番号 2024-46
歳暮
蕭疎枝影立寒空 蕭疎 落葉 寒空に立つ
徹夜薪燎祇苑中 夜を徹する薪燎 祇苑の中
往事回頭眞一霎 往事 回頭すれば 真に一霎
安寧祈願甲辰風 安寧 祈願 甲辰の風
作品番号 2024-47
元旦能登
輕寒淨界晩鐘催 軽寒の浄界より 晩鐘催す
新歳東風萬里開 新歳 東風 万里を開く
忽至能登惶遽報 忽ち至る 能登 惶遽の報
已喪舜日故丘哀 已に舜日を喪ひ 故丘哀れ
作品番号 2024-48
新春即事
護符願壽賀正辰 護符に寿を願ふ 賀正の辰
和酌屠蘇景福新 和やかに屠蘇を酌めば 景福新たなり
檐際白梅初破蕚 檐際の白梅 初めて萼を破る
春庭雖陋足容身 春庭陋なりと雖も 身を容るるに足る
作品番号 2024-49
憂能登半島地震
突如激震襲能登 突如 激震 能登を襲ふ
山海人家盡壞崩 山海 人家 尽く壊崩す
幾許災黎歸未得 幾許の災黎 帰ること未だ得ず
待機何日會親朋 待機すれば何れの日にか 親朋と会せん
作品番号 2024-50
能登地震 其一
家族團欒元日夕 家族団欒 元日の夕べ
怒濤地震襲能登 怒濤 地震 能登を襲ふ
寸時倒壊失防御 寸時の倒壊 防御を失す
離別無情悔恨憑 離別無情 悔恨 憑りつかん
作品番号 2024-51
能登地震 其二
海底隆昇阻港灣 海底 隆昇し 港湾阻む
陸行寸断救援艱 陸行 寸断 救援 艱し
寒逾降雪宿営阻 寒さ愈々 雪降り 宿営阻む
對策徹宵真摯顔 対策 宵を徹して 真摯な顔
作品番号 2024-52
能登地震 其三
突如火焔捲朝市 突如の火焔 朝市を捲く
無奈消防全斷水 奈ともする無し 消防 全断水
高屋塗師房半傾 高屋 塗師の房 半ば傾く
廢墟輪島矜持矣 廃墟の輪島 矜持あらんか
作品番号 2024-53
能登地震 其四
月餘搜索尚懸命 月余の捜索 尚懸命
避難集團心漸勁 避難の集団 心漸く勁し
不遠復興繁喚聲 遠からず 復興の 喚声繁がらん
民間公共須施政 民間 公共 施政須たん
作品番号 2024-54
能登地震
暖冬未見結氷生 暖冬 未だ見ず 結氷の生ずるを
地震重來北陸傾 地震重ねて来たり 北陸は傾く
涙雨無情濡廃屋 涙雨無情にして 廃屋を濡らす
蒼生幾萬溢嗟聲 蒼生幾万 嗟声溢る
作品番号 2024-55
新春即事
東風剪剪破寒來 東風 剪剪たり 寒を破りて来る
春信鶯聲庭樹回 春信 鶯声 庭樹回る
淑景新正周萬古 淑景 新正 万古に周し
素梅一朶百花魁 素梅 一朶 百花の魁
作品番号 2024-56
歳晩
荏苒光陰年又闌 荏苒たる光陰 歳又闌に
風吹鬢雪一身寒 風鬢雪に吹きて 一身寒し
籬邊痩菊凌霜凜 籬辺の痩菊 霜を凌ぎて凜に
猶發C芬入夜欄 猶ほ清芬を発して 夜欄に入る
作品番号 2024-57
年頭偶成 一
東風吹綻數輪梅 東風 吹き綻ばす 数輪の梅
C徹玲玲絶點埃 清徹 玲玲 点埃を絶す
鳳暦茲迎甲辰旦 鳳暦茲に迎ふ 甲辰の旦
麗天一氣共馨來 麗天 一気 馨と共に来たる
作品番号 2024-58
年頭偶成 二
洪鈞一轉曉風吹 洪鈞(こうきん) 一転 暁風吹き
歳旦陽光灼灼奇 歳旦の陽光 灼灼として奇なり
潦倒糊塗幸無恙 潦倒(ろうとう)糊塗なれど 幸ひに恙(つつが)無し
屠蘇數酌作春祺 屠蘇数酌 春祺(しゅんき)を作(な)す
<解説>
「洪鈞」… 造物主 万物が造化する宇宙自然
「潦倒」… 疲れて元気が無い 老衰の様
「糊塗」… 愚か 事理を解さない
「祺」… 安泰の兆し 吉兆
作品番号 2024-59
年頭偶成 三
初㬢爛爛放光芒 初㬢爛爛として 光芒を放ち
氣滿乾坤自見 気は乾坤に満ち 自づから祥を見(あらわ)す
一點寒梅綻花蕊 一点の寒梅 花蕊綻び
東君既到梵王ク 東君 既に到る 梵王の郷
作品番号 2024-60
新春汀
小波穩寄渚沙皚 小波 穏やかに寄せ 渚沙皚く
遙望煙霞去又來 遥望する煙霞 去り又来る
忽響轟音舟疾走 忽ち響く轟音 舟は疾走
新春三保富峰開 新春 三保 富峰開く