作品番号 2024-391
訪伊勢
紀北C流爽似秋 紀北の清流 爽やかなること秋に似たり
奇岩怪石迫江樓 奇岩 怪石 江楼に迫る
呼涼佳景忘三伏 涼を呼ぶ佳景 三伏を忘る
遊子欣懷一段稠 遊子 欣懐 一段稠し
<解説>
奇岩の中を清らかな水の流れ、すばらしい景色に暑さを忘れることを表現したかった。
<感想>
その「伊勢」ですが、「紀北」ということですとちょっと離れ過ぎている感じがしますし、承句に描かれた景色などは「南紀」という感じです。
転句の「呼涼」は起句の「爽似秋」と重なります。「佳景」の所に新たに「飛瀑」などを登場させないと重複感が出てしまいます。
結句はやや言い足りないというお気持ちがあるようですね。「一段稠」も説明的ですので、検討しましょう。
起句の「爽似秋」を伝えるには、題名に「夏」ということが分かるようにしたいですね。
転句に「三伏」がありますので後まで読めば分かるとは言えますが、起句はすっきりとさせたいので「夏日訪伊勢」で。
「夏日訪紀伊半島」とか「夏天遊海濱」などでしょうかね。
あるいは、この上四字を別の景色にするかですね。
言いたいことは、「雜念(世塵)を忘れる」ということ、素晴らしい景色が頭の中もすっきりさせてくれたという形。
ストレートに「洗世塵」と言っても良いですが、下三字を「去百憂」とすることで表すことができます。
上は「佳景重重」くらいでも良いと思います。
作品番号 2024-392
家族
伉儷相扶六十年 伉儷 相い扶けて 六十年
得男得女最良緣 男を得 女を得 最良の縁
一家一族幸無恙 一家 一族 幸ひ恙無し
更願安康此憶堅 更に安康を願ふ 此の憶ひ堅し
<解説>
夫婦六十年、助け合い過ごしている。男、女の子どもを得て、幸いである。
一家一族ともに恙無く暮らしている幸せ。
更に健康で過ごしていきたい思いで作りました。
<感想>
仰るように、感情だけをまとめて詩にするのは難しいですね。
でも、家族が皆、無事に過ごしている、そのことを素直に喜ぶお気持ちがよく出ていると思います。
このままでも十分な詩だと思いますが、欲を言えば結句のまとめがやや強引かも。
勝手な想定をすれば、こうした家族の気持ちが一番感じられるのはお正月ですので、そういう設定にすると画面が想定しやすくなるかもしれません。
例えば結びを「初日天」とするだけでも、具体性も表れて来ますね。
合わせて少し直せば、承句は「喜良緣」とご自分の気持ちを出し、転句は「皆無恙」、結句は「更願」を「祈願」とすると正月らしくなるかと思います。
作品番号 2024-393
立秋出遊
園庭焦土少秋光 園庭 土を焦がす 秋光少なし
殘暑池邊荷氣香 残暑の池辺 荷気香(かんば)し
樹蔭寒蟬聲斷續 樹蔭の寒蝉 声断続
脚疲喉渇汗如漿 脚は疲れ 喉は渇き 汗漿の如し
<解説>
立秋(8/7)、愛知県豊明市の勅使池周辺
<感想>
結句の内容を見ると、随分歩いているようですので、題名を「立秋遊歩」としておきましょうか。
立秋を迎えてもまだまだ暑い、という情景で、「焦土」「荷氣香」「喉渇」「汗如漿」などの夏を表す語はよく分かります。
対して、「寒蝉」だけは秋の気配。ここは「殘」が使えなかったこともあるでしょうか、「鳴蟬」がバランスとしては良いと思いますよ。
その場合には下の「聲」が「鳴」と重なりますので、「猶斷續」くらいが良いでしょうね。
作品番号 2024-394
處暑園
中庭郁郁草花怡 中庭 郁郁 草花怡ぶ
天道盛開向日葵 天道に盛開する向日葵
紈扇功無秋老虎 紈扇は功無き 秋老虎
小亭解渇獨敲詩 小亭 渇を解いて 独り詩を敲く
<解説>
処暑(8/22)、名古屋市鶴舞公園にて
<感想>
転句の「秋老虎」は中国語で「厳しい残暑」のこと。残暑を凶暴な「虎」に例えるのは、いかにも中国らしいですね。
承句の「盛」は「もる」で平声、「さかん」では仄声、ここは仄声の意味になりますね。
そうすると、下の「向」も仄声ですので、「開」が「四字目の孤平」になります。
「頻開」が良いでしょう。
日本だと「狼」とか「熊」でしょうかね。
ここは「功無」でなく「無功」が良いですね。
作品番号 2024-395
河
催寒蕭颯下長流 催寒 蕭颯 長流を下る
霜葉猿啼境更幽 霜葉 猿啼 境更に幽なり
回顧山川歸晩色 回顧する山川 晩色に帰す
信風放溜泛虛舟 風に信(まか)し 溜に放ち 虚舟を泛(うか)ぶ
<解説>
「蕭颯」… 風が寂しげな音を立てて吹くさま 「歸晩色」… 夕暮れの色に溶け込む
「信風」… 風に任せる 「放溜」… 流れに任せる 「泛虚舟」… 世の流れに身を任せる
<感想>
転句の「回顧山川」は舟から後ろを振り返って、という構図ですが、「回顧」だと昔を振り返るような印象にもなります。
結句の「溜」は「したたる、流れる」というのが本来の語義ですので、ここでは「水の流れにまかせて」というところですね。
全体に見ると、「蕭颯」「興幽」「晩色」などと寂しげな言葉が続いてますので、今回の舟旅は「明るく未来に向かって」というものではないわけで、そうなると結句の上四字も「風まかせ波まかせ」の気楽な旅というものではなく、もう少しマイナス方向、「虛」の字がよく働いていると思います。
前半は晩秋の寂しげな様子がうまく表現されていると思います。
「顧望」とか、李白の「早發白帝城」に倣えば「已過」「忽過」も良さそうですね。
作品番号 2024-396
處暑
殘蟬啼罷暑威疎 残蝉 啼き罷んで 暑威疎なり
涼動晩粧秋氣初 涼動き 晩粧 秋気の初め
一葉忽驚桐樹下 一樹 忽ち驚く 桐樹の下
新蛩喞喞語階除 新蛩 喞喞 階除に語る
<解説>
暑さが落ち着き、秋へと向かう「処書」を詩にしました。
<感想>
承句は「晩粧」が「夕景色」でしょうか、「晩風」とオーソドックスな素材が落ち着くかと思います。
結句の「喞喞」は「虫がしきりに鳴く」と解されますので、「新蛩」に合うかな?
今年は暑さがいつまでも続き、処暑でも酷暑のままなので、詩の世界で秋の気配を感じられるのは嬉しいですね。
起句の「罷」の字は両韻字で、平声(上平声四支「ヒ」)では「つかれる」、仄声(上声十蟹「ハイ」)が「やめる、やめさせる」となります。
そうなると、例えば「大臣を罷免する」などは「ヒメン」ではなく「ハイメン」、ストライキも「同盟罷業」ではなく「ハイギョウ」と言うべきですが、現在は「ヒ」で統一されていますね。
その起句では「蝉の鳴き声が途切れた」と言い、結句では「新蛩(こおろぎ)の鳴き声」と音の変化で秋の訪れを表そうという狙いですね。
全体的に初秋の素材が配置されて、工夫が感じられます。
別の表現を探してみるのも面白いでしょうね。
作品番号 2024-397
白露
新寒脈脈到深更 新寒 脈脈 深更に到る
庭院靜閑絡緯鳴 庭院 静閑 絡緯鳴く
此夜名月臨滿地 此の夜 名月 満地に臨む
桂花香裏露華C 桂花の香裏 露華清し
<解説>
「処暑」の次の「白露」で詩を作りました。夜月で露が白く輝くことを表現しました。
<感想>
承句は「四字目の孤平」になっています。
転句は「月」の平仄が違います。
結句は良いですが、「裏」がもう少し考えられると思いますよ。
起句は「新寒」が主語ですので、「渡深更」が良いでしょう。
「風」くらいを持ってきて、「涼風」「無風」など。
「月明」となれば落ち着きますが、「明」は下平声八庚韻ですので冒韻になりますね。
「月澄」としても良いですが、語を入れ替えて「名月今宵」の方がすっきりするでしょうね。
作品番号 2024-398
重陽
遙憶東籬露菊香 遥かに憶ふ 東籬 露菊の香
黄昏微雨近重陽 黄昏の微雨 重陽近し
精華冷艷秋光靜 精華の冷艶 秋光静かなり
瑟瑟吟懷月滿廊 瑟瑟とした吟懐 月廊に満つ
<解説>
九月九日は重陽の節句。静かな夜を書きたくて・・・・。涼しさを求めて、気持ちを静めて、美しく。
<感想>
起句で「遙憶」と書き出したのは、この後の描写は記憶の中の風景だと示したいのですかね。
承句の「黄昏」と結句の「月滿廊」は夕方から夜へと時間が流れたということで理解はできますが、その間に「秋光」が来るのはどうでしょうね。
転句の「精華」が何を指しているのか、ですが、まあ菊の花だとしてしまって、承句と転句の上四字を入れ替えるのが良いでしょうね。
結句は良いですね。
一足早く、秋を味わうというのは、詩人には大切なことですし、詩人の特権でもあります。
以前も同じような感じがありましたよね。あまり正直に書かなくても、過去と現在などの時間軸を自分で調整しても大丈夫ですよ。
ここは菊の香りを表すような表現で始めても良いでしょうね、「C艷」「清冽」など。
「秋光」は「秋の日射し」、つまり昼間の様子ですし、「微雨」もぶつかる感じ。
その上で、「微雨」「秋光」のバランスなどを考えると良いでしょう。
C冽東籬露菊香 清冽な東籬 露菊の香
精華冷艷近重陽 精華の冷艶 重陽近し
黄昏雲樹梧桐雨 黄昏 雲樹 梧桐の雨
瑟瑟吟懷月滿廊 瑟瑟とした吟懐 月廊に満つ
承句は、直前の「菊香」を受けて花の美しさを述べ、更に「近重陽」の根拠も表して、入れ替えて良かったですね。
転句は「梧桐雨」、これは白居易の『長恨歌』に「秋雨梧桐葉落時」をイメージしたもの、会えなくなった人(楊貴妃)を偲ぶ場面です。
となると起句の役割は、最後の「菊香」を大事にして、その周辺を描いておく方向ですね。
「露菊」は朝方、あるいは雨上がりのイメージですので、「一颯秋風籬菊香(一颯 秋風 籬菊の香)」「雨過東籬露菊香(雨過ぎ 東籬 露菊香し)」ですかね。
ただ、ここは「雨」を出すと、次の「月滿廊」へ流れるのが苦しくなります。
作者がここで何をしているのか、という方向で画面を作っていくとまとまってくるでしょうね。
作品番号 2024-399
攜家犬散歩
朝陽杲杲蕣花新 朝陽 杲杲 蕣花新た
嬌囀樹聲涼可親 嬌囀 樹声と涼親しむべし
如意偶然人不見 意の如し 偶然 人の見るなし
二人幽趣滌心塵 二人 幽趣 心塵を滌(あら)ふ
<解説>
愛犬と朝散歩に出た時の情景を詩にしました。
とても気持ちの良い朝で、このまま誰とも会わず静かだと良いなと思っていたら、本当に会わず、静かな朝を満喫しました。
「二人」は、私と愛犬です。
<感想>
起句の「杲杲」は太陽が輝く様子、漢詩でも「杲杲朝陽時」のように使われます。
承句は「嬌囀」が何の音なのか、季節から行けば「蝉」か、あるいは朝の鳥の声でしょうね。
転句から作者の姿が出て来ますが、「如意」は「思いのまま」「思った通り」となりますので、対して「偶然」はおかしいです。
結句の「二人」は愛犬と私ですか。
描かれた情景は、起句でアサガオ、承句で「樹聲」という形で、視覚と聴覚、「涼」も入れれば皮膚感覚という要素を配置した点がまず良いです。
この句は良い句です。
「嬌囀」はあくまでも音を形容した言葉ですので、何の音かをここでは示した方が良いでしょう。
ただ、「樹声」は「樹を抜ける風の音」ということで、こちらはまだ「涼可親」につながりますが、「嬌囀」はどうでしょうね。
気分的には暑さが増すような気がしますね。句としてのまとまりを考えて、「池畔樹風」とか「翠柳樹陰」など、散歩している場所の情報を入れてはどうでしょうね。
「偶然」に合わせるなら「不意」、単に「気持ちが良かった」というなら「適意」でしょうね。
結句で「滌心塵」と持ってくるなら、同じような感情を表す語は避けた方が良いです。
下三字は「人見えず」と読み下します。
「人の見るなし」ならば「無人見」。
ここは「人」の字が結句と重複していますので、どちらかは削らなくてはいけません(「同字重出の禁」)が、ひとまず転句の下三字を残して、上四字を「閑歩村郊」「前路此時」など。
ヒトではないものを一緒に数えるということでは、李白が『月下獨酌』という詩で、「月と自分と自分の影」で「三人」と詠んだ例はありますが、ここは、うーん、犬への愛情を含めて理解しなくてはいけないので、難しいですね。
可能性としては、「犬と私の影が二つ並ぶ」という画面にすると良いですが、その場合には夕方の方が合うので、全面改訂が必要、今回は辛抱しましょう。
「悠悠家犬滌心塵」とすると、犬がのびのびと歩いている姿で、それを見ている作者の心が洗われたような気持ちになるという形ですが、愛犬が心を滌っているとも取れて、どちらも可能ということで「二人」のニュアンスが出るかな、と思いますがどうでしょうね。
作品番号 2024-400
石垣島川平灣遊覽
川平灣曲樂船底 川平湾曲 船底を楽しむ
蒼海微漣泡沫優 蒼海 微漣 泡沫優なり
魚隊爭姸青赩碧 魚隊 妍を争ふ 青赩碧
好天閑暇浴潮鷗 好天 閑暇 浴潮の鴎
<解説>
石垣島でのグラスボート(玻璃底船)の感想です。
<感想>
起句の「曲」は「まがる」ではなく「くま、ほとり」という意味もあり、ここは「湾の辺り」くらいの意味ですね。
転句で「青赩碧」と青色が出て来ますので、承句の「蒼」は問題です。
転句では、ガラス越しに海底を眺めるという場面を書き、見えた魚なども含めて転結を収めるのが良いですね。
結句の「好天」とか「鷗」は海底の感動に邪魔なだけですので、入れるなら承句に持って行くべきでしょう。
題名は「石垣島遊覽」だけで良いですね。題と詩は別ですが、並ぶと気になることもあります。
「海」につける形容語は別の言葉を探した方が良いですね。
また、起句でグラスボートの「船底」とせっかく示したのに、承句では海上、転句でやっと海の中、結句ではまた海上、これでは流れが悪いですね。
まず起句で「船底」を止めて、「樂舟遊」とすれば、承句の景色も生きて来ます。
作品番号 2024-401
遊由希島水牛車
熱帶樂園由希島 熱帯 楽園 由希島
搖遙航路水牛車 揺遥 航路 水牛車
五音音律三絃響 五音の音律 三絃響く
不速遲遲興未涯 速からず 遅遅として興未だ涯(かぎ)らん
<解説>
沖縄の音楽表現に時間要しました。
<感想>
起句は「希」が平字ですので、「二六対」が崩れています。「南海島」「南國島」ですかね。
承句は「搖遙」は遥か遠くまで船で行くような印象。「凌波行路」かと思いますが、わざわざ言う必要も無い気もします。
転句は、琉球音階は「ドミファソシ」の五つの音を使うことを述べたものですが、転句に導入が無いと、急に音楽の話になって驚きます。
転句は上四字は良いですので、下三字「傳古調(古調を伝ふ)」
結句は「不速」と「遲遲」では同じこと、「興不涯」の結びはありきたりですし、どんな「興」があるのかが伝わって来ません。
由希島(ゆぶじま)は西表島から四百メートルほどの離島ですが、渡るのに使う乗り物で観光客に人気なのが「水牛車」だそうですね。
水牛車の中で演奏があるそうですから、その場面でしょうか。
それならば、先ほどあまり役割が感じられなかった承句で「時聞三線(時に聞く 三線)」とこちらで出しておくのも手です。
「夏日遲遲」として、下三字は再考しましょう。
作品番号 2024-402
水邊家
ク里卅家一溪流 郷里 三十家 一渓流
四隣車駕往來求 四隣 車駕 往来を求む
忽然遭遇猿將鹿 忽然 遭遇 猿と鹿
至極C恬水響幽 至極 清恬 水響幽なり
結句の「恬」の読みは「カツ」ではなく「テン」です。
同じく結句の六字目、字は「響」のようですが、「エイ」とルビが振ってありますね。
起句は「故郷は三十軒ほどの家が渓流に沿って建っている」ということでしょうね。
承句は文をどう捉えるか、ですが、「四隣は(車駕の往来を)求む」ならば、「周辺は交通の行き来を求めているが、この村だけは孤立している」となりますし、「四隣への(車駕の往来を)求む」なら、「周辺と行き来できるように求めている」となります。
後半は自然の中での落ち着いた趣ですので、承句は「孤立」で考えた方が良いですかね。
結句は流れとしては、その猿と鹿が「至極C恬」となります。
<感想>
起句の「卅」は「十」が三つ並んでいますが、これも漢字一文字、「三十」と書き直してはいけません。
「カツ」だと「ツ」で終ることになり「フクツチキ」で入声(●)になる筈ですね。
六字目の「溪」は平声です。
何か別の字を考えておられたのでしょうか。
「三十ク家溪水周」の方が分かりやすいかな。
転句は「忽然」ですと、作者は今までどこに居たのか悩みます。
無難に行くなら「山中」としておくと良いですね。
「至極」を別の言葉、「C恬」を感じさせる物にすると良いでしょう。
作品番号 2024-403
學水
梅天田畝燕飛連 梅天 田畝 燕飛連なる
雨見重眉山色鮮 雨を見て 眉重く 山色鮮やかなり
不亍螺旋如捩草 亍(とど)まらず 螺旋 捩草(ねじそう)の如し
變容問水率方圓 水に問ふ 変容 方円に率(したが)ふ
<解説>
朝の散歩で顏に雨がかかり、下を向けば鮮やかな捩草を見つけ、詠みました。
<感想>
起句は良いですが、承句は「見雨」の語順、「重眉」は「眉を重くす」「眉を重ぬ」と読むことになります。
転句は何が「不亍」なのでしょう、「螺旋」なのもネジバナかと思ったら「如」が付いていますので、もう一つ別の「螺旋」があるようです。
結句は「水」に持って行きたいとなると、「川の渦」ですか。
題名は「水に学ぶ」ということですね。
「水を学ぶ」と読みそうですので、「水」と一文字にするか、やや面倒ですが、「觀水書懷(水を観て懐ひを書す)」と丁寧に書いた方が伝わりますね。
「重」はここでは「おもい」のようですが、「眉が重い」というのはどういう意味ですかね。
また、「雨」が降ってきたと言うのに「山色鮮」も合わないです。
でも、川のことなど前半に一言も無いし、繋げようが無いですね。
ネジバナを見て、その「螺旋」状から渦を連想し、水の自在へと更に連想したのでしょうね。
どうにも課題の「水」に無理矢理持って行った感が強く、理屈っぽいだけの禅問答みたいな話になってます。
このままネジバナのことで終った方が詩らしくなるし、ネジバナも報われると思いますよ。
作品番号 2024-404
家族
靜昼C陰鳥語柔 静昼 清陰 鳥語柔らかなり
稚孫紗帽避暑求 稚孫 紗帽 避暑を求む
泉聲水面赤脚打 泉声 水面 赤脚打つ
莞爾欣欣半日遊 莞爾 欣欣 半日遊ぶ
<解説>
一歳の孫が公園で水遊び、気持ち良く楽しんでいる様子です。
はだしで足をバタバタさせる様子をどのように書いたら良いか、悩みました。
<感想>
先ずは承句ですが、下三字は「夏中遊」くらいですかね。
転句は「はだしで」というのがポイントのようですね。
結句は「莞爾」はにっこり笑うこと、子どもですのでもっと元気よく笑っても良いでしょうね。
起句は問題無いですが、承句と転句は平仄が違います。
どちらも六字目は平字が規則ですが、仄字になっています。
「はだし」は「赤脚」「赤跣」と書きますが、「赤」も「脚」「跣」も仄声ですので、中二字の所に置くしかありません。
「足をバタバタ」は、飛び散る水のことを「跳沫」と言いますので、「赤脚弄跳沫」で行けるでしょうから、上の二字は、水のある場所が分かるにすれば良いです。
また、「半日」は冒頭の「靜昼」で時間枠が出ていますので、余分な言葉。
「欣喜歡聲暑已収」とすれば、元気よく遊んでいる雰囲気が出ると思います。
作品番号 2024-405
重陽
江邊樓閣雁行來 江辺の楼閣 雁行来る
瑟瑟西風暮色催 瑟瑟 西風 暮色催す
今日登高懷故友 今日 高きに登り 故友を懐(おも)ふ
明年共醉菊花杯 明年 共に菊花の杯に酔はん
<解説>
中国の風景、重陽の風習に自分を置き、想像しながら創りました。
<感想>
また、転句の「登高」、題名の「重陽」から導いたわけですが、本来は小高い丘に登ることで、そうなると、前半の河辺の風景と噛み合わないですね。
後半は「今日」「明年」とせっかく対で来ましたので、ここは対句にしたいですね。
起句は秋空に飛ぶ雁ならば分かりますが、「樓閣」に「雁行來」は組み合わせが悪いですね。
勿論、川沿いの丘という地形も在るかも知れませんが、その場合は個別の事象、具体的な地名が必要になります。
今回は一般的な「登高」ですので、楼閣の建つような大きな河はイメージできません。
転句を結句に合わせる形で「今日獨登江上閣」とすると、きれいな対句が完成です。
この「江上閣」で、起句の上四字分が収まります。
「故友」が出さないと「共醉」になりませんので入れたいですが、起句では遠すぎますね。
語句を入れ替えて、起句を「西風瑟瑟雁行來」とし、承句に「故友」が入るように再敲してみましょう。
友人が去ったのか、作者が異郷に居るのか、そうした設定も含めて考えてみましょう。
「憶友懷ク」とか、まあ、慌てずに楽しんでください。
作品番号 2024-406
重陽賞菊
細徑金風秋氣加 細径 金風 秋気加はる
重陽幽暮水之涯 重陽 幽暮 水之涯
虫聲楚楚籬邊菊 虫声 楚楚とした籬辺の菊
石榻茶煙獨見花 石榻 茶煙 独り花を見る
<解説>
秋の夕暮れに虫の声を聞きながら、清らかな菊を独りで見る。
いつかそんな時間が持てたら・・・。良いなぁ
<感想>
承句は下三字、早めに花を見る形で、結句から持ってきて「獨看花」。後半にもつながりますので、良いですね。
転句は「虫聲楚楚」に合わせるなら、菊についても形容が欲しいですね。
結句は「茶」が韻字ですので、これを最後に持ってくるように考えると、「煮茶」「酌茶」「喫茶」「一椀茶」など。
場所を表す言葉が四つ、「細徑」「水之窪」「籬邊」「石榻」ですと、同じ地点をイメージするのに苦労します。
後半の「籬邊」と「石榻」はまとまりそうですので、こちらを生かす方向で、まず起句の「細徑」はやめて、「金風」を形容する言葉を入れましょうか。
取りあえず「細細」として、これで起句は収まりますね。
姿で行くなら「菊清冷」、香りで行くなら「菊C郁」「C芬菊」「萬香菊」などですかね。
「獨」が使えれば上の「煮茶」なども良いですが、ここは三文字の「一椀茶」としておきましょう。
中二字は「ベンチで独りお茶を飲む」という画面に加える言葉ですね。工夫の場所かな。
何か心情を表す言葉が良いかな、と思いますので、「無心」「平心」「居心」など。
作品番号 2024-407
菊酒
瓶菊一枝商酒家 瓶菊 一枝 酒を商ふ家
花盃傾盡惜年華 花盃 傾け尽くして 年華を惜しむ
西風吹露桂香冷 西風 露を吹いて 桂香冷ややか
虛室思詩靜煮茶 虚室 詩を思ひ 静かに茶を煮る
<解説>
起句・承句で酒のことを吟じ、自分が酒を飲めないので茶のことを述べました。
何か、主題に合っていないような気がします。
<感想>
承句は「惜」が常套ですが、「樂」もこの場合には面白いし、詩の方向が明るくなると思います。
転句はキリッとした良い句ですね。
結句に行くと、急に画面がぼやけてしまうのは、「思詩」と「煮茶」の二つの行動が急に入って来るからですね。
「菊酒」という題ですので、どうしても「酒家」が出て来てしまったのでしょうか。
他人の家でなくご自分の家で菊を眺める趣向で、「明鄙家(鄙家を明るくす)」などどうでしょう。
どちらの行為も転句までの内容とは無関係で、ただ、別の内容を結句の結びに使って収束させる、という描き方も「有り」だとは思いますが、二つ来るとちょっと苦しいですね。
「虚室」の様子を述べて、ちょっと違う空間を作るのが良いでしょうから、例えば「虚室」と来ると「餘閑」とすると陶潜の『歸園田居』に合わせられます。
くっつき過ぎと感じるなら「虚室安閑」でも同じ効果が出ると思います。
作品番号 2024-408
大寒朝景
凍雲風勁極寒晨 凍雲 風勁(つよ)し 極寒の晨
急雪埋門萬朶銀 急雪 門を埋む 萬朶(ばんだ)の銀
諸子通勤辛遠道 諸子 通勤 道の遠き辛し
始慚閑適自由身 始めて慚(は)ず 閑適自由の身を
「萬朶」… たくさんの枝
<解説>
白居易の「苦熱」を勉強した時、退職してすぐ大雪が降り、同じような気持ちになったことを思い出しました。
「始慚」「自由身」を真似して入れてみました。
「萬朶の銀」の使い方はこれでよいのか、自信がありません。
起句「極寒晨」は「烈膚(ふをさく)晨」を、結句は「始慚無事一閑人」 も考えてみました。
<感想>
起句の「極寒」は「大寒」「厳寒」でも同じですが、「烈膚」は体感という感じが出ますね。
承句の「萬朶銀」は樹木が全て雪に覆われている様子を表しますので、「急雪」とのバランスですね。
転句の下三字は読み下しを「辛遠の道」とか「辛く遠き道」、この「辛」は韻字ですが場所が転句ですので、ある程度は許容されます。
暑かった夏がようやく終わったと一息つく間も無く、もう雪。
イメージの豊かさ、柔軟性を感じます。
ただ、どちらが良いかは判断は難しいですね。
雪の量から行けば「夜雪」が適当ですが、直前に「晨」があるので無理ですね。
雪の美しさを表す「瓊雪」「皚雪」なども句末の「銀」と重なりますので、「積雪」とか「新雪」でしょうかね。
気になるなら別の言葉を考えた方が良いかも知れません。
「通勤」は中国語で「上班」と言いますので、それを入れると現代的になって面白いかもしれませんね。
白居易の表現にうまく乗ることができたのは、漢詩の一つの楽しみですね。
作品番号 2024-409
老爺作菊
寒日堆肥斫地家 寒日 肥を堆(たい)し 地を斫(き)る家
陽春封植挿千芽 陽春 封植(ほうしょく)し 千芽を挿す
茎枝誘引炎天下 茎枝(けいし)の誘引 炎天下
秋影閑看爛漫花 秋影 閑に看る 爛漫の花
「斫地」… すきで田畑をすく
「封植」… 栽培する
<解説>
父は五年ほど前まで熱心に菊作りに取り組んでいました。
菊作りの一年の様子を詩にしてみました。
<感想>
承句の「封」は「フウ」と「ホウ」と二つの読みがありますが、これは呉音と漢音の違いです。
承句は「陽春」と単に季節を言うよりも「待春」とした方が、気持ちが表れると思います。
転句は問題無いですね。
結句は「看」でも良いですが、ここも「迎」くらいにすると、丹精を籠めた気持ちが浮かんでくるでしょうね。
お父様のことを言うなら、起句は「家」ではなく「爺」で行けると思いますよ。
意味で区別をする時には、「領土を分け与える」では漢音、「併せ閉じる」では呉音としていますね。
「ホウ」と読んだ方が「上平声二冬」韻だとよく分かりますね。
作品番号 2024-410
重陽節句
旻天爽籟好秋華 旻天 爽籟 好秋華
一面芬馨隱逸花 一面の芬馨 隠逸花
樹下開筵傾菊酒 樹下 筵を開いて菊酒を傾け
歡嬉不盡帶陽斜 歓嬉 尽きず 陽を帯びて斜めなり
承句の方で、「一面」を「籬下」としておくと、「隠逸」への流れが明瞭になりますね。
転句は、せっかく起句と承句で名前を出さないで来たのに、しかも花そのものではなく「菊を浮かべた酒」では、菊ががっかりしますよ。
結句の「歡嬉」は「歓喜」の平仄合わせでしょうか。
<感想>
起句で「好秋華」、承句で「隠逸花」とし、秋を代表する花、陶潜の愛した花という二つの情報を入れたのは面白いと思います。
「壽酒」とすると菊酒の代名詞、菊酒の効能まで表せるので、こちらが良いでしょう。
「歡嬉」も漢詩で使われますが、宋代以降に生まれた言葉のようですね。
唐代は「歓喜」、平字にするなら「歡娯」が伝わりやすいでしょう。
作品番号 2024-411
菊
暑威漸去野人家 暑威 漸く去る 野人の家
郁郁繁枝倚竹笆 郁郁たる千枝 竹笆に倚る
雙蝶翅輕閑半日 双蝶 翅軽し 閑半日
白英金蕊競C華 白英 金蕊 清華を競ふ
<解説>
郷里の友人の家の風景です。黄色や白の菊が竹垣に寄りかかるように、競って咲き、その辺りを二匹の蝶がのんびりと飛んでいました。
<感想>
末字の「笆」は「竹で出来た垣根、籬」、そうなると、ここで「郁郁繁枝」が竹垣に「倚」るわけで、色々な樹木が入り混じっているという様子が目に浮かびます。
転句は蝶をのんびりと眺めるという意味で「閑半日」は効果的ではあります。
承句は「繁」なのか「千」なのか、迷いましたか。
「繁」の方が現実っぽく感じますので、「繁」にしましょう。
その竹垣に「白」や「金」の菊が咲き誇るわけですが、鬱蒼と繁る樹木は要りますかね。
竹の周りに葉っぱや花がゴチャゴチャしているような感じです。
菊のために植物は減らす方向で、「颯颯西風過竹笆」が良いでしょう。
ただ、題名に書かれているとは言え、結句の「白英金蕊」が唐突で、急に何の話かと途惑います。
導入の意味で、転句の下三字を「叢菊上」「重九日」などとしておくと、スムーズに結句に入れますね。
作品番号 2024-412
彼岸菊
晴空一碧思無邪 晴空一碧 思ひに邪無し
父母懷思束菊花 父母を懐思して 菊花を束ねる
殘手C香同幼日 手に残る清香 幼日に同じ
西風運冷寂寥加 西風 冷を運び 寂寥加はる
<解説>
彼岸の一日の詩です。転句の「同幼日」は、この時季に菊花の片を使ってままごと遊びをした時の、手に残る香を懐かしく思う気持ちです。
<感想>
転句は解説を読んで意味は分かりましたが、句で表すのは難しいですね。
結句は「運冷」というのは、彼岸ですとまだ「冷」までは行かない、という感じで、やや苦しいですかね。
これは「思」の字が重複していますね。
起句は残して、承句を「父母慕懷陳菊花」としましょう。
「蘇幼日」で何とか通じますかね。
「涼」くらいが適当でしょうから、「涼意」としましょう。
作品番号 2024-413
咲裏庭秋明菊
野堂庭際滿林華 野堂の庭際は満林の華
秀草瓊英秋雨斜 秀草 瓊英 秋雨斜めなり
早晩繽紛瓣石徑 早晩 繽紛 弁は石径
殘紅房牖一枝葩 残紅 房牖 一枝葩なる
<解説>
大輪の菊の花はまだ咲きませんが、裏庭の日陰でも秋明菊が満開です。
美しい赤い花を詠みました。
<感想>
起句は「満林」では樹木に花がついているようです。
承句は庭の景として、これで良いでしょうね。
転句は「早晩」、やがては、と未来を示し、「繽紛」で花が乱れ落ちる様子、「瓣石徑」がちょっと分かりづらいですね。
結句の「殘紅」は散り残った赤い花、転句を受けて、散り残った花に目を向けていますね。
題名に付けた「咲」は漢文では「笑う」の意味です。
この字は無くても題として成り立ちますので削りましょう。
庭一杯ということで「満叢花」としましょうか。
「敷」「鋪」で意味としては同じになると思います。
その花と室内(「房牖」)との関係を出すのに、「一枝葩」ですと弱いですね。
韻字を換えて、話の展開としては「殘紅房牖一香加」と香りを出してはどうでしょうね。
作品番号 2024-414
重陽節
巻雲氣感秋嘉 巻雲 気 感秋嘉し
稻武仙遊石徑斜 稲武の仙遊 石径斜めなり
絹帛菊花重九飾 絹帛の菊花 重九の飾
門前壽客未開葩 門前の寿客 未だ葩(はな)開かず
<解説>
稲武の寺へ「重陽の節句飾り展」を見に行った。
豪華絢爛、秋真っ盛り。庭の菊花はまだ開いていない。
<感想>
承句の「仙遊」は「俗世を離れて出かけること」ですので、「お寺に行った」という趣が出ていますし、また、稲武の奥深さも感じられます。
後半は「飾りの菊」と「門前の菊」を並べたものですね。
結句の「壽客」は菊の別名、重陽の節句が長寿を願うという意味合いで、 中国、宋の張敏叔という人が十二の名花を十二種の客に例えたところから来ています。
飾りの菊は見えるが、本物の菊はまだ開いていないというのが話の落ちですが、「門前」と「客」の字の対応がぴったりですね。
前半はまとまりよく出来ていますね。
「牡丹」を「貴客」、「梅花」を「清客」、「菊花」を「寿客」、「瑞香(沈丁花)」を「佳客」、「丁香(丁子)」を「素客」、「蘭花」を「幽客」、「蓮花」を「静客」、「酴釄(とび)」を「雅客」、「桂花」を「仙客」、「薔薇」を「野客」、「茉莉(まつり)」を「遠客」、「芍薬」を「近客」としたものです。
以来、南画家が好んで描く題材となりました。
そうなると、転句の方はもう少し強調した方が良いですね。
「爛然」「許多」として、最後を「重九菊」としても良いでしょう。
「花」の冒韻も避けることができます。
作品番号 2024-415
寒露候
秋暑已収金氣C 秋暑 已に収まりて 金気清し
桂香池苑候蟲鳴 桂香 池苑 候虫鳴く
來賓鴻雁逢宵夜 来賓す 鴻雁 宵夜に逢ふ
月色玲玲星斗 月色 玲玲たり 星斗横たはる
<解説>
晩秋の景色
<感想>
起句は「已」とするか「漸」とするか、「漸」ならば「少しずつ暑さが収まる」ですし、「已」だと「やっとのことで」というニュアンスが含まれるところでしょうね。
承句は「桂」や「蟲」と「池」が画面として合わず、バラバラという感じがします。
転句は誰と誰が「逢」か、「鴻」と「雁」、「鴻雁」と作者など考えさせるのも面白いです。
結句の「月」ちょうど半月くらい、夕方には空にあり、存在もくっきりで「玲玲」がぴったりでしょう。
二十四節気では、「寒露(10/8)」と「霜降(10/23)」までが晩秋の季節になります。
描かれているように「桂(キンモクセイ)」も香り、虫の音色、十三夜の月(10/15)も美しい季節ですね、例年なら。
今年はなかなか秋を実感できず、酷暑が続きましたので、詩の世界で深まりゆく秋を感じられるのは嬉しいことです。
これが中秋頃ならば「残暑」と「秋気」の組み合わせですが、うまく対応させていますね。
嗅覚と聴覚を配置して工夫してある句ですので、つないでくれるように「滿苑」「幽苑」など。
作者として池を残したい場合には、詩題に入れる形でしょう。
あるいは、「逢」を「渡」とすれば、悩むことは無くなります。。
ただ、「星斗」まで必要かどうか、悪くはないのですが全体的には素材が豊富で、そろそろ作者の姿が欲しいところです。
作品番号 2024-416
菊
朝來風露亂秋芳 朝来 風露 秋芳乱る
園苑菊花寒更香 園苑 菊花 寒更に香る
姿體爭姸紅又白 姿体 研を争ふ 紅又白
賞心忘刻欲昏黄 賞心 刻を忘れ 昏黄ならんと欲す
戻って、章句の下三字は「寒」が形容詞ですので、「香」も同様にして「香し」が良いです。
<感想>
菊の花を描くのに、「紅」と「白」では足りず、「黄色」はどうしたかと思ったら、最後に「昏黄」、韻字でしたか。
結句に色を残すという点では、転句では逆に花の色を出さずに「争姸」だけで押さえておく方が穏やかでしょうね。
「清又楚」「誇艶麗」というところでしょう。
結句は流れがあり、下三字もちょっと哀傷を含んでいて、良い結びになっています。
作品番号 2024-417
看菊
吹渡秋風山麓家 吹き渡る秋風 山麓の家
千茎香遍競相誇 千茎 香遍し 競ひ相誇る
黄葩素蕊積年技 黄葩 素蕊 積年の技
畫景題詩賞菊花 景を画き 詩を題し 菊花を賞す
<解説>
毎年多くの菊を栽培し楽しんでいる吟友を訪ねた時のことです。
色紙に菊を描き、句を添えました。
題を「賞菊」にして、結句下三字を「詠菊花」と思いましたが、題詩と意味が重なるかと迷いました。
<感想>
転句は、何が「技」なのか、花が黄色や白であること自体は菊の功績ですので、承句と転句の上四字を入れ替えてみますか。
結句は「畫景」が突然、という感じですね。
起句の「吹渡」は必要かどうか、「吹き渡る」という程ですと、菊の香りも飛ばされてしまうように思います。
「嫋嫋」「蕭瑟」など秋風の形容をするか、友を訪ねたという作詩事情を書いた方が良いですね。
承句の方は「黄葩素蕊競相誇」で問題無いですが、転句は「千茎香遍積年技」となります。
もう少し「技」が示されるような景になると良いので、「C香滿架」「萬香千朶」など華やかさを出しましょう。
また、「畫」「題」「賞」と述語が三つも重なるのも慌ただしいので「好景一詩題菊花」と持って行くと収まりが良いでしょう。
作品番号 2024-418
高年歳旦
人間送舊又迎新 人間 旧を送り 又新を迎ふ
歳旦信濃有老親 歳旦 信濃 老親有り
沈寂屠蘇回首處 沈寂(じんじゃく)の屠蘇 首を回らせし処
半窗梅亦自知春 半窓の梅も亦 自ら春を知る
<解説>
主人の両親(九十七才と九十二才)は二人暮らし。お正月に訪ねた時を思い出し作りました。
時間を気にせず、もの静かに過ごしているが、窓から見る梅は春を感じている。
<感想>
起句の「送舊」「迎新」は、一言で言えば次の「歳旦」、二句で繰り返しになりますので、起句でまとめる形、「歳朝送舊又迎新」ならば収まりが良くなります。
承句の方は場所を表す形で、「山國」「山邑」とか「深雪」でも面白いですね。
転句は年を取ったお二人が静かに屠蘇を飲みながら、過ぎし日々を振り返るという場面ですね。
結句は「亦」が起句の「又」と同意ですので「梅樹」「梅蕾」とするか、起句の「又」を「正」としておくか、どちらかですね。
題名の「高年」はそのまま「高年齢」のことですので、ここは「老人の正月」という題ですが、表現がストレートですので、「老親歳旦」とした方が穏やかだと思います。
下三字は「雙老親」と二人を表すと具体性が出ると思います。
「沈寂」は「もの静かな様子」を表しますが、「寂」の字が強くて、お二人が寂しく過ごしているような感じが字面から出てきます。
できれば、何十回目のお正月、お二人の長い人生が伝わるような言葉があると良いですね。
「百歳」だと誇張が強いかな。
下三字は、「梅が春を知る」というよりも「梅が教えてくれる」という形で「遣知春(春を知らしむ)」、それならば上の「亦」を「復」とするのでしょうね。
作品番号 2024-419
早晨寫經
一陽石砌響晨鐘 一陽の石砌 晨鐘響く
叢竹枯蓮霜氣濃 叢竹 枯蓮 霜気濃やかなり
跨越象爐入塵外 象炉を跨越し 塵外に入れば
寫經肅肅筆墨蹤 写経 粛粛 筆墨の蹤
<解説>
早朝、お寺に写経に出かけました。日常の喧騒を離れ、静かに集中したひと時でした。
のんびりと飛んでいました。
<感想>
承句は「叢竹」だけでは季節感が出ませんので、「衰竹」が良いです。
転句の「象爐」は「香炉」で、象の模様がかたどられたもの。
結句は六字目の「墨」が仄声ですので、「墨翰蹤」としましょう。
起句の「一陽」は「冬至、陰暦十一月」を表しますが、あまり寒くなると大変ですので「立冬」、これは冒韻になりますか。
では季節を言うのではなく「寒陽」あたりでどうでしょうね。
「跨越」については、はあらためて解説をいただきました。
これは「触香(そっこう)」の様子で、象の形の香炉を跨いで身を清め、本堂や道場に入る作法のこと。
男性は左足、女性は右足から跨ぐのだそうです。
知りませんでしたので、勉強になりました。
下三字は「塵外に入る」というのが面白いと言うか妙と言うか、挟み平を避けて「塵外境」でどうでしょう。
作品番号 2024-420
秋響
秋風片片赩楓斜 秋風 片片 赩楓斜めなり
碧落無姿啼一鴉 碧落 姿無く 一鴉啼く
驚飲金葩香和酒 驚き飲む 金葩 香り酒に和す
陶然彩韻興何涯 陶然 彩(かがや)き韻(ひび)き 興何ぞ涯(かぎ)らん
承句は「無姿」が分かりにくいですね。また、「赩」「碧」「金」と各句に色が出るのは煩わしいので色を削って「無影大空」が良いですね。
転句の「驚」は前の鴉の声に驚いたのでしょうか。起承転結ですので、転句で話題が変わることを考えますので、何に驚いたのか分からなくなっています。
結句の「彩韻」を「視覚と聴覚」二つを表すというのは難しいです。
<感想>
起句の「片片」は下の「赩楓」に掛かっていくわけで、風に吹かれて楓葉が斜めに飛んでいく画面ですね。
また、「飲金葩」ですと、「菊の花を飲んだ」となりますので、「驚」「飲」のどちらもやめて、「滿院」「庭上」などと場所を示すなり、「庭菊白黄」とするのが収まるでしょう。
その直前に「香」と「酒」が対比されてますので、ここでまた二つ並べても直ぐには連想は難しいです。
二つを並べるのでは無く、全体をまとめる形で「秋麗」「秋午」とし、冒頭の「秋風」は「金風」「西風」としておく形でどうでしょう。