作品番号 2023-151
晩秋郊村
出城處處晩花紅 城を出づれば処々に 晩花紅なり
柿熟凌霜到菊叢 柿は熟し 霜を凌ぎて 菊叢に到る
錦繡映輝欺二月 錦繍 映輝して 二月に欺き
留人詩入畫圖中 人を留め詩入るは 画図の中(うち)
<解説>
街外れの到るところに晩秋の紅い花が咲き、柿は熟し霜を凌いで菊は今盛りと咲き叢っている。
紅葉は輝き映じて二月花よりも紅い、この光景は人を留めて詩と絵画の世界に誘う。
作品番号 2023-152
晩秋郊村
農郊散策晩霞明 農郊 散策すれば 晩霞明らかなり
村北村南簫鼓聲 村北 村南 簫鼓の声
阡陌千畦禾黍熟 阡陌 千畦 禾黍熟し
邑人少長喜秋成 邑人 少長 秋の成りを喜ぶ
<解説>
田園地帯を散策していると 美しい夕焼け空
村の南でも北でも笛と太鼓の音が響いている
広い田畑に麦とキビが沢山実って
村人は老いも若きも秋の実りを喜こんでいる
作品番号 2023-153
晩秋郊村
超山渡野訪吟翁 山を超え野を渡り 吟翁を訪ぬ
君已消亡柿葉紅 君已に消亡す 柿葉紅なり
破屋崩摧叢竹茂 破屋は崩摧し 叢竹茂し
只今惟有去來風 只今惟 去来の風有るのみ
<解説>
山を超え野を渡り詩吟を愛する翁を訪ねた
君はすでに亡くなり 柿の葉が紅に染まっていた
壊れた家屋は崩れて倒れ竹藪が茂っていた
今はただ風が去来しているだけであった
作品番号 2023-154
晩秋郊村
香柑縹緲動秋風 香柑縹渺たり秋風に動く
四望林衣深淺紅 四望の林衣深浅の紅
衆鳥歡言而雅宴 衆鳥歓言して雅宴
須臾暮色樂無窮 須臾にして暮色楽しみ窮まり無し
「縹緲」: 香りがたゆたう 「林衣」: 林の葉 「深浅紅」: 深い赤色や淡い赤色のこと
「歓言」: 楽しく語り合う 「而」: 接続の置き字〜、シテ 「雅宴」: 風雅な宴
「須臾」: しばらくすると 「楽無窮」: 楽しみはいつまでも続く
<解説>
柑橘の香りが秋風に動きたゆたう
四方の林の葉は深い赤や淡い赤色だ
鳥達が集まって楽しく語り合い、素敵な宴を開いている
しばらくして夕暮れの気配が迫るが楽しみは続いている
作品番号 2023-155
晩秋郊村
遙岑黄葉滿山楓 遥岑 黄葉 満山の楓
野徑無人叢裏虫 野径 人無く 叢裏の虫
衰老増愁秋瑟瑟 衰老 愁を増さしむ 秋瑟瑟
朔吹既繞暮村中 朔吹 既に繞る 暮村の中
作品番号 2023-156
晩秋郊外
木蘭銀杏更梧桐 木蘭 銀杏 更に梧桐
落葉保身生命雄 葉を落とし 身を保つ 生命雄なり
播種無青觀景色 種を播く 青無しの景色を観る
新生脈脈待望翁 新生 脈脈 待望する翁
作品番号 2023-157
晩秋郊村
郊野飄揚金桂風 郊野を飄揚す 金桂の風
稲雲萬頃去年同 稲雲 万頃 去年に同じ
悠悠淺酒閑居夕 悠悠 浅酒 閑居の夕
舊友交歓矍鑠翁 旧友と交歓す 矍鑠たる翁
<解説>
実りの秋を迎え、訪ねてきた友人と歓談した様子。
作品番号 2023-158
晩秋郊村
十里平疇漠漠空 十里 平疇 漠漠として空し
影寒蝴蝶舞秋風 影寒く 蝴蝶 秋風に舞ふ
菊花猶在疎籬内 菊花 猶ほ在る 疎籬の内
村老傾壺勞歳功 村老 壺を傾け 歳功を労ふ
作品番号 2023-159
晩秋郊村
蕭蕭微雨野橋東 蕭蕭たる微雨 野橋の東
行客影稀山麓蒙 行客 影稀にして 山麓蒙たり
秋水秋郊畫圖裏 秋水 秋郊 画図の裏
河邊好景錦楓紅 河辺の好景 錦楓紅たり
<解説>
晩秋に郊村を歩いていると、山、川、紅葉を併せた景色が霧雨で映えて絵画のようである。
作品番号 2023-160
晩秋郊村
秋暮ク村渡景風 秋暮 ク村 景風渡る
夕陽影淡彩雲中 夕陽 影淡く 彩雲の中
啾啾促織寥寥氣 啾啾たる促織 寥寥の氣
茅屋空庭柿葉紅 茅屋 空庭 柿葉紅し
作品番号 2023-161
晩秋郊村(身延山)
靈山遙望晩晴中 霊山 遥かに望めば 晩晴の中
冷氣下峯懸梵宮 冷気 峯を下れば 梵宮に懸かる
錦繡ク村周洽飾 錦繍の郷村 周洽の飾り
季秋暮色盡天工 季秋 暮色 天工を盡くす
「身延山」: 在日本靜岡縣古刹
作品番号 2023-162
晩秋郊村(上高地)
晩秋橋上一村中 晩秋 橋上 一村の中
流水漫漫千里通 流水 漫漫 千里通ず
紅葉穂高誇五彩 紅葉の穂高 五彩を誇る
遙然山上片雲風 遥然 山嶺 片雲の風
「上高地」:長野縣避暑行樂地
作品番号 2023-163
晩秋郊村(柿田川小徑)
秋杪C川蘋末風 秋杪の清川 蘋末の風
小蹊決決水聲中 小蹊 決決たる 水声の中
午天遊歩旅愁散 午天の遊歩 辺愁散じ
左右楓林葉半紅 楓樹 顔前 葉半ば紅
「柿田川」:靜岡県富士山湧水之地
作品番号 2023-164
晩秋郊村
信歩悠揚西又東 歩に信せ 悠揚 西又東
郊村散策夕陽中 郊村 策を散ず 夕陽の中
鐘聲瑟瑟秋將暮 鐘声 瑟瑟 秋将に暮れんとす
目送歸鴉立晩風 帰鴉を目送し 晩風に立つ
作品番号 2023-165
晩秋郊村(富士)
靈峰屹立映蒼穹 霊峰屹立し 蒼穹に映ず
十里羊腸石路通 十里 羊腸たる 石路通ず
舊友迎吾情暖處 旧友吾を迎へ 情暖むる処
微醺倶聽晩秋風 微醺 倶に聴く 晩秋の風
作品番号 2023-166
仲秋郊村
圓影玲玲映昊穹 円影 玲玲たり 昊穹を映ず
兔蟾皎皎起C風 蟾兔 皎皎 秋風起こり
炎干霖雨禍災甚 炎干と霖雨 天の神怒る
惟看今宵秋色充 惟だ看る 今宵 秋色の充つるを
作品番号 2023-167
晩秋郊村(燒落葉)
風穩掃庭焚落葉 風穏やかに 庭を掃き 落葉を焚く
香煙流廣地滋豐 香煙 流広 地は滋豊
炭酸同化結晶 炭酸同化 結晶の緑
干草剪枝今古同 草を干し 枝を剪るは 今古同じ
<解説>
憂穀n減少、不管地球温暖化。
作品番号 2023-168
晩秋郊村
菊散秋林葉落中 菊散じ 秋林 葉落つる中
涼天蕭瑟碧玲瓏 涼天 蕭瑟 碧玲瓏
今宵宴樂邀明月 今宵 宴楽 明月を邀ふ
村邑風烟西又東 村邑 風烟 西又東
作品番号 2023-169
晩秋郊村
女未來愁殺楓 青女 未だ来たらず 愁殺の楓
可憐數柿帶深紅 憐れむべし 数柿 深紅を帯ぶるを
汽車喧絶晩霞鎖 汽車の喧(かまびす)きは絶え 晩霞鎖ざされば
細細蛬聲聽路叢 細細たる蛬声 路叢に聴く
<解説>
地球沸騰で、秋は一ヶ月遅れています。
一因である自動車を挙げて、環境の悪化を風刺しました。
作品番号 2023-170
晩秋郊村
茅簷箕踞曉霜中 茅簷 箕踞す 暁霜の中
黄菊欄開芳艷叢 黄菊 欄開 芳艶の叢
遠嶽雪稜雲靉靆 遠岳の雪稜 雲靉靆たり
商飆氣滿秋空 商飆気 秋空に満つ
「丹葉」…紅葉
「商飆」…秋の風
「靉靆」…たなびく
「気」…清らかで汚れのない秋の元になる気
<解説>
晩秋と言うと、菊が思い浮かびます。
父が若い頃は菊作りが趣味で、十一月になると、庭に、一本立・三本立・懸崖などが所狭しと並びました。
父の一年の成果がまさに花開く、華やかな季節でした。
作品番号 2023-171
晩秋郊村
孤村黄落路纔通 孤村 黄落 路纔かに通ず
露菊幽香夕照風 露菊 幽香 夕照の風
飛雁影過聲斷續 飛雁 群過ぎ 声断続す
ク愁一片客途中 郷愁 一片 客途の中
<解説>
旅の途中、晩秋の田舎の風景にしみじみとしたことを思い出し、創りました。
作品番号 2023-172
晩秋郊村
催寒脈脈入窗風 寒を催し 脈脈 窓に入る風
絡緯微聽白屋中 絡緯 微かに聴く 白屋の中
秋末郊村轉蕭寂 秋末 郊村 転た蕭寂
憂懷欲遣酒無功 憂懐 遣らんと欲す 酒功無からん
作品番号 2023-173
晩秋郊村(秋祭)
熟柿影高秋社空 熟柿 鳥銜む 秋杪の空
門前旗幟靡西風 門前の旗幟 西風に靡く
神輿鼓譟行邨巷 神輿 鼓譟 村巷を行く
露店數多屯幼童 露店 数多 幼童屯す
<解説>
晩秋の天満社祭り
作品番号 2023-174
晩秋郊村
滿山落葉季秋空 満山 落葉す 季秋の空
霜氣飄飄渡壑風 霜気 飄飄 壑を渡る風
遙望故園千里遠 遥かに故園を望めば 千里遠く
一聲飛雁夕陽紅 一声 飛雁 夕陽紅たり
<解説>
素直な気持ちで晩秋の寂しさと四国八十八箇所参りを思い、作詩しました。
作品番号 2023-175
晩秋郊村
郊墟散策仰長空 郊墟 散策 長空を仰ぐ
樹樹深秋葉半紅 樹樹 深秋 葉半ば紅なり
道邊石蒜千株簇 道の辺の石蒜 千株簇がり
雙蝶偸來舞晩風 双蝶 偸かに来たりて 晩風に舞ふ
<解説>
町外れの街を散歩すれば、桜の木々の葉が色づき、三日程前まで凄まじい暑さが無くなっていた。
道端には千株を越える赤い彼岸花に二匹の揚羽蝶がこっそりと飛び来たり、夕方の風に舞っていた。
作品番号 2023-176
晩秋郊村
天高雲散季秋風 天高く 雲散ず 季秋の風
閑歩郊村霜後空 閑歩 郊村 霜後の空
寂寂祇林紅葉寺 寂寂たる祇林 紅葉寺
荒田枯稿夕陽中 荒田 枯稿にして 夕陽の中
作品番号 2023-177
晩秋郊村
橋頭望嶺滿山紅 橋頭 嶺を望めば 満山紅たり
丹桂C香舞野風 丹桂 清香 野風に舞ふ
秋祭詰晨催鼓吹 秋祭 詰晨 鼓吹を催し
村家稔歳喜聲中 村家 稔歳 喜声の中
<解説>
コロナ自肅もほぼ無くなり、秋祭りも賑やかに開催された。
作品番号 2023-178
秋月
胡枝花白映秋空 胡枝の花白く 秋空に映ず
樹下深陰喞喞虫 樹下 草深し 喞喞の虫
檐座斟杯對明月 檐座 杯を斟み 明月に対す
無情遊樂二更風 無情の遊楽 二更の風
作品番号 2023-179
郊村思秋(新美南吉記念館)
ク川行客歩秋空 郷川の行客 秋空に歩す
赤卒翩翩爽快風 赤卒 翩翩 爽快の風
時節不違村落至 時節は違はず 村落に至る
暮鐘石蒜滿堤紅 暮鐘 石蒜 満堤紅なり
作品番号 2023-180
晩秋海邊
今朝秋霽望蒼穹 今朝 秋霽 蒼穹を望む
雲海銀瀾千里通 雲海 銀瀾 千里通ず
熊野遊行鬼岩列 熊野遊行 鬼岩列し
水天浩浩颯C風 水天 浩浩 清風颯たり