作品番号 2023-391
奇异果
千載雄雌同處栽 千載 雄雌 同処に栽う
八方延蔓拂條來 八方 蔓を延べ 條(こえだ)を払ひて来たる
奇异上柚作因果 奇异 柚に上り 因果と作す
競共容姿圓卵魁 共に競ふ 容姿 円卵を魁(おさ)める
<解説>
農地転作でキウイを植えた結果、葉がどんどん延び、柚木にキウイと柚が同時に果とした感想です。
<感想>
キウイの表記ですが、「异」は「異」の簡体字でもありますので、「奇異果」とも書くようです。
そのまま読むと「不思議な果物」という感じで面白いですね。
起句の「千載」は「千年」ですが、ここではどういうことでしょうか。
承句は上四字はよく分かりますが、「拂條來」は「蔓が枝を払いのけて」ということでしょうか。
転句は「上柚」が無理で、柚子との関わりが分かりません。書くなら承句で「柚枝抬(もた)ぐ」とした方が良いです。
ここは下三字の「作因果」が分かりませんので、表現を検討すべきでしょう。
結句は「共競」が語順としては正しい形です。「柚子」も「キウイ」も丸い卵の形で、両方が結実したという面白さです。
「魁」で「おさめる」と読んでも下三字の意味は何のことか分かりませんので、「瑰(たま)」の方が韻字としては良いでしょう。
2024. 2.25 by 桐山人
作品番号 2023-392
臺風寸暇
仲秋臺風狙寸暇 仲秋の台風 寸暇を狙ふ
兒孫雨過盡還家 児孫 雨過(よぎ)り 尽く家に還る
門前雀網向餐食 門前 雀網 餐食に向かふ
忘時炎談數碗茶 時を忘れ 炎談 数碗の茶
<解説>
台風七号の合間を狙った食事会開催(盆行事)
<感想>
平仄の合わない所が幾つか。
まず起句の「秋」は平声ですね。
ただ、この句では「台風」が「寸暇を狙ふ」という形になります。
「陸續臺風」として「連続する台風」を主語とし、「生寸暇」とすれば通じますね。
承句は「児孫」が家に還ってしまっては、食事会はできません。これは何の話なのでしょうか。
転句は「門前雀羅」を平仄合わせしたのですかね。「門前に人が居なくて寂しい」となるのですが、それで「向餐食」とどういう関係なのでしょうね。
結句は、この句だけはそのまま句意が理解できますが、二字目の平仄が逆です。
ここは「時」を「刻」に替えれば落ち着きますね。
「炎談」という言葉はどういう意味ですか。あまり聞かない言葉ですし、ここは「盆行事」での集まりだと言うなら「歡談」で良いと思いますが。
2024. 2.25 by 桐山人
作品番号 2023-393
晩秋郊村
月照空庭楓錦中 月は空庭を照らし 楓錦の中
如鈴C韻聽秋虫 鈴の如く清韻 秋虫を聴く
讀書三到口心眼 読書の三到 口と心と眼
冊枕睡眠無始終 冊を枕に睡眠 始まりて終り無し
<感想>
まず結句ですが、語順の違うのが二カ所あります。
「冊枕」は「冊を枕にす」と読むならば「枕冊」の語順です。
「無始終」は「始まりも終わりも無い」という意味です。
読み下しのようにするなら「始無終」ですが、平仄が合いませんのでこの言葉は無理ですね。
全体で見ると、「晩秋」はかろうじて「楓錦」がありますので分かりますが、「郊村」は場面が出来ていませんね。
これでしたら、「晩秋閑居」でしょうね。これを「郊村」に持って行こうとすると、後半を全部直さなくてはいけませんので、
まあ、課題ではなく、「閑居」の題の詩としましょう。
起句は「月が空庭を照らし」までは良いですが、「楓錦」の中に入っているのは何なのか。
「楓錦」は庭の中にありますし、「月」は「庭を照らして」いますから庭の上にあるし、ということで「月照」は「月影」としましょうか。
承句は「如鈴」の比喩はありきたりと言うか、もう使い古した感がします。ここに木さんならではの言葉が入ると詩らしくなりますね。
転句は「読書三到」で良いですが、順番は良いですか。
「目で読んで、声に出して、最後に心で感じる」という流れが自然かと思いますので、そうなると「心」を最後に置かないといけません。
ここは別案の「方繙巻」で行きましょう。
結句で、本を読んでいると寝てしまう、という俗っぽい落ちは内容を軽くして、せっかくの前半の風雅が単なる舞台道具になってしまいます。
ここは別の展開を考えましょう。
2024. 2.25 by 桐山人
作品番号 2023-394
定期健康診斷
馬齡加一藉良醫 馬齢 一を加へ 良医に藉(たよ)る
基準指標更二危 基準の指標 更に二つ危ふし
測定身材驚數値 測定 身材 数値に驚く
心魂診斷不相知 心魂 診断 相知らず
<感想>
起句は良いですが、承句は「四字目の孤平」ですね。
また、承句の「指標」と転句の「数値」、「測定」と「診斷」は似た内容ですので、もう少し違うことを出して欲しいです。
直すならば二つ重なる転句でしょうね。
結句の「心魂」は何の診断のことでしょう。
「不相知」はどんなことが言いたいのか、分からないですね。
2024. 2.25 by 桐山人
作品番号 2023-395
栗収拾
山紅黃穀g寒分 山紅黄緑 暖寒分かつ
黃熟栗梢音響聞 黄熟 栗梢 音響を聞く
不瀑開毬三二一 瀑ぜず 毬(いが)を開きて三二一
加餐常膳炭爐熏 加餐 常膳 炭爐熏(いぶ)す
<解説>
庭前の栗拾いを朝夕、猪対策です。「音響」は栗の落花音です。
<感想>
起句と承句に「黃」が重なっていますね。
起句の方は色の配置上必要でしょうから、直すとしたら承句の方です。
「落果」としておくと、下の「音響」が何のことか、分かりやすくなるでしょうね。
転句は「三二一」の効果ですね。
この順番は何を意味するのか、栗を拾っている様子ならば「一二三」と順に増えていく方が自然だと思います。
「三二一」だとだんだん減っていって無くなる感じ。
「満籃樂(籃に満つる楽しみ)」というところですかね。
結句は収穫後の調理ですね。分かりやすくなっていると思います。
2024. 2.25 by 桐山人
作品番号 2023-396
麥秋筍亭
桾嵐h欒雨灑簷 薫風 檀欒 雨簷に灑(そそ)ぐ
碧苔草樹C香簾 碧苔 草樹 清香の簾
洛陽隱棲龍孫食 洛陽 隠棲 竜孫食す
雅客融融喜色添 雅客 融融 喜色添ふ
<解説>
そぞろ雨の中、京たけのこを食べに行った。庭園等風情があり満足。
<感想>
「檀欒」は竹が茂る姿を表した言葉、平仄でやや問題がありますね。
起句は二字目を仄字に、承句は「下三平」を直す、転句は四字目の「棲」が平字ですの「二四不同」が壊れています。
起句の「薫風」は「風爽」で良いでしょう。
承句はどんな香りにすると良いかですね。
濃い香りなら「鬱香」、弱い香りなら「淡香」でしょうね。
「碧苔」と来ましたので「草樹」は「蒼樹」などが良いですね。
転句の「洛陽」は京都も表しますが、行かれた庭園の場所をもう少しはっきりさせるつもりで、「落南」とか「落東」、多少甘くして「洛中」などが良いでしょう。
「隠棲」は誰が隠棲したのでしょう。
ここは庭園と分かるように、「幽院」などとしておくと、結句の「雅客」への流れが良くなるでしょうね。
その「雅客」ですが、自分達のことですので「雅」と言うのはどうか。「行客」「遊客」などが無難だと思います。
2024. 2.25 by 桐山人
作品番号 2023-397
龍神彩雲
嫋嫋郊畛野趣愁 嫋嫋 郊畛(こうしん) 野趣の愁ひ
霽氛芳菊繞村流 霽氛 芳菊 村を繞りて流る
彩雲欣矚龍神使 彩雲 欣矚 龍神の使ひ
良運來迎散積憂 良運 来迎 積憂を散らす
<解説>
いつか見た彩雲を思い出して。承句と転句の読みが似すぎているのは一考有りでしょうか。
<感想>
「嫋嫋」は風にそよぐ様、そうなると「嫋嫋郊畛」はそんなに「愁」のような気持ちになるとは思えませんね。
「幽」くらいが良いですね。他にも「周」「留」「浮」など、色々考えられそうですよ。
承句は下の「繞村流」の主体が何か、はっきりしません。
「菊」ではなく、「水」を流した方が繋がりは良いですので、どんな「水」が良いかを考えましょう。
転句ですが、雲が「龍神」に見えたのだと思いますが、「使」が必要ですか。
中二字は「欣」がどんな気持ちなのか、よく分かりません。「宛」でどうでしょう。
結句は「積憂」はちょっと重すぎるように思います。
何か別の「憂」を表す言葉とか、起句で使った「愁」くらいの方が軽いでしょうね。
2024. 2.25 by 桐山人
作品番号 2023-398
雲
嶽色高風旭影新 岳色 高風 旭影新なり
輕陰日落桂花陰 軽陰 日落ち 桂花陰る
青山秀嶺白雲裏 青山 秀麗にして 白雲の裏
岝嵀天心絶点塵 岝嵀(さくがく)にして 天心 絶点塵
<感想>
平仄は良いですが、押韻で「陰」は「下平声十二侵」ですので、韻が合いません。
起句で朝陽が登ったかと思うと、もう承句で「日落」となるのは気ぜわしいです。
また、起句の「岳色」は、転句で「山」「嶺」と来ますので、別の物にした方が転句が生きるでしょう。
承句の「軽陰」は「薄曇り」、「高風」と矛盾します。朝と夕方を描こうという意図かもしれませんが、食い違いの印象が強くなります。
そういう狙いなら、はっきり、「朝は・・・・、夕方は・・・・」と書き出した方がすっきりします。
と言うことで、前半は「晴色高風旭影新 郊村芳郁桂香頻」という感じでしょうか。
転句は「青山」よりも「遠山」と遠景にした方が視点が変わって良いです。
その「嶺」が「白雲裏」にあるのでは雲で見えませんので、ポツンと浮かぶ雲ということで「一雲影」でしょう。
結句の「岝嵀」は「岝峉」とも書きますが、「山が高く険しい」という意味ですね。
ただ、「秀嶺」ともう険しさは説明していますので、更に繰り返すのはくどい感じ。転句に戻って、「秀嶺」を「嶺」にしましょうか。
「天心」は「空の中心」ですが、これはどういうことか、峰がそびえ立って空の中心に向かっているという感じでしょうか。
画面が分かりにくいので、「岝嵀」に続ける形で「崚嶒(りょうそう)」「巉巉(ざんざん)」などが同じく険しさを表す「○○」の熟語です。
あるいは「天心」を生かして、「きよらかで澄んだ」という意味を表す言葉で「C朗天心」「C徹天心」など。
「絶点塵」は「わずかな塵も無い」ということですので、こちらの方が作者の気持ちには合うかなと思います。
2024. 2.25 by 桐山人
作品番号 2023-399
晩秋郊村
靈光萬里夕陽空 霊光 万里 夕陽空し
芒浪暉銀曠野叢 芒浪 銀に暉く 曠野の叢
憶母涙流秋色日 母を憶ひ 涙流す 秋色の日
胸懷慰撫桂花風 胸懐 慰撫す 桂花の風
<解説>
十月に突然、実母を亡くしました。葬儀が終り、帰宅する時の詩です。
<感想>
お母様を悼む気持ちが後半にしっかり出ていますので、完成させましょう。
その後半から見て行きましょう。
転句は「涙流」でしたら「涙流る」と「涙」を主語にします。それならば「流」は「零」が適してます。
下は「秋色」というのがちょっと変なので、「秋欲暮(秋暮れんと欲す)」「秋暮日(秋暮るる日)」ですね。
結句は「胸懷」を「悲懷」とすると気持ちが深まります。
どちらが良いかは作者の気持ちで決めれば良いと思います。
前半に行くと、起句の「靈光」は何か厳かな光に感じたのでしょうね。
ただ、「靈光」は「(天子の)恵みの光」という比喩的に使われますので、どうかなあ? 「茜光千里」「高雲千里」で。
承句は「暉」が「光」とぶつかりますので、「茫穂銀波」ですかね。
2024. 2.25 by 桐山人
作品番号 2023-400
晩秋故園子等與憩
殘秋急囀伯勞讙 残秋 急囀(きゅうてん) 伯労讙(かまびす)し
郷里荒園覺暮寒 郷里の荒園 暮寒を覚ゆ
野老拾薪燒甘藷 野老 薪を拾いて 甘藷(かんしょ)を焼く
村童繋手做團欒 村童 手を繋(つな)いで団欒を做(な)す
<解説>
晩秋の故郷に着いたとたん、頭上でモズが激しく鳴き出した。
荒れた田畑で農作業をしていると夕暮れ時の寒さを感じる。
枯れ木をあつめて、掘ったサツマイモを焼けば、
村の子供たちが手を繋いで集り、芋の焼けるのを楽しみながら待っている。
「殘秋」… 秋の末。 「急囀」… 鳥が急に声を続けて鳴く。 「伯勞讙」… モズの声がやかましい。
「郷里」… ふるさと。 「荒園」… 荒れた田園。 「暮寒」… 夕暮れの寒さを知る。
「燒甘藷」… さつま芋を焼く。 「団欒」… 集まって楽しむ。
<感想>
まず題名ですが、子供たちと一緒に、ということでしたら、「與子等」の語順になります。
詩では、この「子等」は村の子供達のようで、芋を焼いていたら集まってきたということですね。
前半の寒々とした晩秋の景色から、暖かみのある出来事へと展開する意図は、分かりやすくて良いと思います。
ただ、これが「故園」とか「ク里」、つまり故郷に帰った詩とすると、この「野老」は作者ではなく、
見知らぬ田舎の爺さんとした方が、故郷はまだこんな長閑さが残っているのだ、という久し振りに帰った感動を詠んだ詩になります。
帰郷した作者が芋を焼くとなると、ちょっとイメージがちがいますね。
となると、ここは作者かもと思わせる「野老」ではなく「一老」、題名も「子等」は削って「晩秋故園」「晩秋帰郷」だけで十分だと思います。
2024. 2.25 by 桐山人