作品番号 2023-301
秋夜
碧落迢迢月二更 碧落 迢々 月二更
夜風處處早寒生 夜風 処々 早寒生ず
籬邊蟲語感何盡 籬辺の虫語 感何ぞ尽きん
一片秋心憶舊盟 一片の秋心 旧盟を憶(おも)ふ
作品番号 2023-302
曉天坐
蟬聲聒聒坐凌晨 蝉声聒々 凌晨に坐す
流汗淋漓不動身 流汗淋漓 身を動ぜず
一陣涼風加爽氣 一陣の涼風 爽気加へ
參禪三昧洗心塵 参禪三昧 心塵を洗ふ
作品番号 2023-303
初冬出遊
新寒獨訪古禪宮 新寒 独り訪ふ 古禅宮
銀杏參天帯夕舂 銀杏 天に参 夕舂を帯ぶ
黄葉成堆人不掃 黄葉 堆を成して 人掃かず
北風切切送疎鐘 北風 切々 疎鐘を送る
<解説>
「参天」: 樹木が天に届くほど高い
「帯夕舂」: 夕暮れの様相を呈している
「疎鐘」: 間遠な鐘の音
作品番号 2023-304
小春吟
丹楓黄菊彩山園 丹楓 黄菊 山園を彩る
富嶽玲瓏白雪繁 富岳は玲瓏 白雪繁し
愛日尋朋香野徑 愛日 朋を尋ぬ 野径香し
茶梅花綻樂晴暄 茶梅 花綻び 晴暄を楽しむ
作品番号 2023-305
彩雲
富良野阜鹿聲飛 富良野の阜 鹿声は飛ぶ
鮮紫花田已落暉 鮮紫 花田 已に落暉
變幻彩雲容刻刻 変幻の彩雲 容(すがた) 刻々
感嘆佇見北陲輝 感嘆 佇み見る北陲の輝き
作品番号 2023-306
七夕
雨洗殘炎坐此宵 雨は残炎を洗ひ 此の宵に坐す
涼臺翁媼一天遙 涼台 翁媼 一天遥かなり
星河欲滴傍逢遇 星河滴らんと欲し 逢遇に傍(そ)へば
千古慕情盈地饒 千古の慕情 地に盈ちて饒(ゆた)か
作品番号 2023-307
訪篤行老
桂月郊村訪老翁 桂月 郊村 老翁を訪ふ
營農自足食鮮豐 営農自足 食鮮は豊か
率先隣曲信心語 率先す 隣曲 信心語るに
篤行天眞爛漫公 篤行 天真爛漫の公(きみ)
<解説>
「桂月」: 陰暦八月、木犀の花咲く頃
作品番号 2023-308
天城越
梅霖伊豆越天城 梅霖 伊豆 天城を越ゆ
一座襟遭遇行 一座 青襟 遭遇して行く
此伴舞姫談笑樂 此の舞姫に伴って 談笑楽し
灣頭離別兆餘情 湾頭の離別 余情兆す
作品番号 2023-309
銷暑
畏日炙人三伏時 畏日(いじつ)人を炙る 三伏の時
天漠漠縉雲垂 青天漠々と 縉雲(しんうん)垂る梁山
松風奏瑟国級コ 松風瑟を奏づる 緑窓の下
閑誦幾編銷夏詩 閑に誦す 幾編 銷夏の詩
<解説>
「畏日」: 夏の炎天の日。夏の太陽
「縉雲」: 薄赤いろの夏の雲
作品番号 2023-310
新秋夜坐
一榻移階坐夜闌 一榻(いっとう)階(きざはし)に移し 夜闌に坐す
嬋娟朗月耀雲端 嬋娟たる朗月 雲端に耀く
桂花未馥吟蟲好 桂花未だ馥らざれど 吟蟲好く
風送C涼澄肺肝 風は清涼を送って 肺肝を澄ます
<解説>
「肺肝」: こころ。心の奥底
作品番号 2023-311
月夜聽胡琴
馝桂花薫梵林 馝(ひつほつ)と桂花 梵林に薫り
夜風影裡聽胡琴 夜風影裡(ようり) 胡琴を聴く
錚錚幽韻潤吟肺 錚々たる幽韻 吟肺を潤し
月放C光照素心 月はC光を放って 素心を照らす
「馝」: {馝}{}ともに かんばしい。よいかおり
「梵林」: 寺院
「錚錚」: 琴や琵琶の澄んだ音の形容
「素心」: かざりけのない 平素の心
作品番号 2023-312
賀婚
菊花瀟灑錦秋天 菊花瀟灑たり 錦秋の天
伉儷情深結勝縁 伉儷(こうれい) 情深く 勝縁を結ぶ
偕老契來華燭宴 偕老契り来たる 華燭の宴
擧杯祝酒醉芳筵 祝酒を挙杯し 芳筵に酔ふ
<解説>
「伉儷」: 夫婦 つれあい
「偕老」: 老いを偕(とも)にする
「瀟灑」: 上品で清らかなさま
作品番号 2023-313
天恩
全身放下委波良 全身を放下(ほうげ)し 波に委ねて良し
必有天恩守我康 必ず天恩有りて 我を守りて康し
感到前途横障壁 感じ到る前途 障壁横たはるも
勇然進歩見桃郷 勇然歩を進むれば 桃郷を見ん
<解説>
天の理法は常に大地に降り注いでいる。
海水に浮かぶように、全身の力を抜いてこれに託せば、どんな難事も解決できるが、人間は自分の欲に縛られて、わざわざ力んでは無理を生じている。
八方塞がってどうにもならない時でも勇気を持って踏み出せば、桃源郷が待っている。
作品番号 2023-314
軋轢
人間軋轢従何招 人間(じんかん)の軋轢(れつあき) 何に従って招かるるか
自大夜郎毎個驕 自大の夜郎は 毎個(いずれも)驕(おご)るなり
百歳古来稀苦界 百歳 古来 稀なる苦界
哀哉狂乱罵徒跳 哀れなる哉 狂乱罵り徒らに跳ぬ
作品番号 2023-315
漢字俳句 一
子背父途窮 背かれて
残路難行宛轉蓬 戸惑う父や
蜩躁只轟轟 暮れの蟬
作品番号 2023-316
漢字俳句 二
何故乞哀鳴 なにゆえに かく愛(かな)しげに
搖谷暮蜩讒陥聲 汝(な)は鳴くか
航路宛流萍 寄せては返す 暮(ぼ)蜩(ちょう)の波よ
作品番号 2023-317
苦熱
酷暑燒身三伏天 酷暑 身を焼く 三伏の天
蜩螗亂噪破閑眠 蜩螗の乱噪 閑眠を破る
涼風吹得荷風好 涼風吹き得て 荷風好し
未散殘炎落照邊 未だ残炎散らず 落照の辺り
作品番号 2023-318
天童寺拜登
夏雨天童究絶巓 夏雨の天童 絶巓を究む
僧房老柳濠ワ煙 僧房の老柳 緑は煙を含む
永平高祖曾遊地 永平 高祖 曾遊の地
一炷C香志更堅 一炷の清香 志更に堅し
作品番号 2023-319
消夏
門巷閑人避暑遊 門巷 閑人 暑を避けんと遊ぶ
蟬聲相對鐸鈴流 蝉声 相対す 鐸鈴の流れ
一途念誦快川事 一途 念誦 快川の事
院落風C是我秋 院落 風Cし 是れ我が秋
作品番号 2023-320
餞歳偶成
景物蕭蕭隔世塵 景物 蕭々 世塵を隔て
今宵市井出遊人 今宵 市井 出遊の人
閑居寂寞寒威迫 閑居 寂寞 寒威迫る
臘尾窮陰只待春 臘尾 窮陰 只だ春を待つ
作品番号 2023-321
勤労宿営
深夜撃音皆起床 深夜の撃音 皆起床
少年把銃走村牆 少年銃を把り 村牆を走る
緊張南下戰車報 緊張す 南下戦車の報に
不日聖音繞感傷 不日 聖音 感傷繞る
<解説>
北京中学3年生2百名は、蘆溝橋の北十数キロのある兵舎に泊まり込みで爆弾造りの毎日だった。
8月7日早暁銃声一発、総員起床の声あり、ゲートルを巻き銃を把って近くの村落を駆け巡った。
9日大同よりソ連戦車南下、11日戦車引き返し、東に向かう模様、そして15日を迎えた。
作品番号 2023-322
浜松花苑
四時竭力育成勤 四時力を竭くして育成に勤しむ
季節選苗誠直分 季節の選苗 誠直に分かつ
慧眼碎身無厭棄 眼慧く 身を砕き 厭棄するなし
整齎滿苑彩花雲 整ひ斉(ととの)ふ 滿苑 花雲の彩り
<解説>
花雲は一般に桜を指し春の季語だが、ここで浜松フラワーパークのテーマソング「花の雲」歌詞にある「手をかけ目をかけ時をかけ」
作品番号 2023-323
無題
欲防誤嚥伏顔食 誤嚥防がんと欲し顔を伏せて食し
咀嚼悠悠滿遍常 咀嚼悠々 滿遍常とす
齒緩喉憔時澁噎 歯は緩み 喉は憔(やつ)れ 時に渋り噎(むせ)ぶも
猶貪珍味併傾觴 猶ほ貪たり 珍味併せて 觴傾くるに
<解説>
胃の内視鏡検査、又胃癌潰瘍の内視鏡切除、咽喉部は大分摩耗したかなと誤嚥予防の毎日。
歯の緩みもあって食事緩慢なこと。
作品番号 2023-324
初夏水村
岬角燈臺今尚嚴 岬角(こうかく)の灯台 今尚厳か
遠望近景頃回瞻 遠望 近景 頃(しばら)く回(めぐ)り瞻(み)ん
水平明瞭半圓海 水平 明瞭 半円の海
彼此騎遊冲浪添 彼ち此ちの騎遊 冲浪に添ふ
<解説>
御前崎燈台、海抜40m位、燈台脇からの眺望、周円100度くらいか。
そして高波に挑むサーファーの姿
作品番号 2023-325
猛暑
連日炎氛記録新 連日の炎氛 記録新たなり
息心低下歎吾身 息心の低下 吾が身を歎く
菜園枯死高騰夏 菜園 枯死 高騰の夏
氣象異常傾首頻 気象異常 首を傾くること頻りなり
<解説>
今年の夏も高齢者には厳しい日々でした。猛暑かと思えば線状降水帯、世界各地で地球規模の異常気象。
今後地球はどうなっていくのか?
作品番号 2023-326
煙火大会
煙火再興愉悦來 煙火再興して 愉悦来たる
好音反響巨花開 好音反響して 巨花開く
交斟麥酒納涼宴 麦酒斟み交わす 納涼の宴
夏夜風光湖上催 夏夜の風光 湖上に催す
<解説>
コロナも平常となり久々に花火大会が各地で復活し賑わいをみせております。
夏の夜は一杯飲みながらの花火見学最高です・・・
作品番号 2023-327
港未来街
埠頭潮氣晩涼催 埠頭 潮気 晩涼催す
觀覧高層輕輦回 観覧高層 軽輦回る
灣内周遊光飾彩 湾内周遊すれば 光飾彩やか
横濱港市更新裁 横浜港市 更に新たに裁す
<解説>
孫が大学生となり、横浜に居住したので、訪ねてみました。
夜は夜景を見ながらの湾内巡り最高でした・・・
「高層」: ランドマークタワー
「観覧」: 大観覧車
作品番号 2023-328
視聽~君心骨
コ川發足遠州城 徳川発足 遠州の城
放映即時來訪榮 放映即時 来訪栄ん
街角騒然騎馬列 街角騒然 騎の列
~君偉業盛名成 神君の偉業 盛名成る
<解説>
大河ドラマ「どうする家康」の人気俳優が浜松まつりパレードに参加した。
市中心街は二万二千人の観客が詰めかけ「家康公」騎馬武者行列に声援を送った。
作品番号 2023-329
春日花下
風温櫻蕾萬枝先 風温かく 桜の蕾 万枝の先
痼疾流行幾變遷 痼疾の流行 幾変遷る
露國貪狼庸恐辣 露国 貪狼 畏辣庸(つね)とし
八旬野老待明天 八旬の野老 明天を待つ
<解説>
櫻の満開近く、コロナの流行も一服。
ロシアは強引にウクライナを潰そうとする。
早く戦いが終わりますよう。
作品番号 2023-330
戦後之東京
西郊練馬大根豐 西郊の練馬 大根豊か
焼盡都心再建隆 焼き尽くす都心 再建隆ん
鐵釜浴槽兄弟惑 鉄釜の浴槽 兄弟惑ひ
共穿木履戯遊窮 共に木履を穿きて戯遊窮む
<解説>
戦後、父と私と弟は練馬の平沼邸へ泊まった。
はじめての釜風呂にまごまごして下駄を履いて入った。