作品番号 2023-01
令和癸卯新春口号
瘴疫干戈度歳横 瘴疫干戈 歳を度りて横たふるも
一家相集祝新正 一家 相集ひて 新正を祝ふ
不関人世百年後 関せず 人世 百年の後
只願安寧此輩生 只だ願ふ 安寧なる此の輩の生を
<解説>
殺風景な詩ですが、老い先短い身としては、せいぜい目の前にいる孫たちまでが平穏に生きられればよく、その先のことまでは関知しません。
作品番号 2023-02
新年
早梅黄鳥麗初陽 早梅 黄鳥 初陽麗なり
門巷昇平国運昌 門巷 昇平にして 国運昌なり
唱和高吟詩骨健 唱和 高吟 詩骨健なり
蓬蓬瑞気有希望 蓬蓬たる 瑞気 希望有り
作品番号 2023-03
新正口占
年華改處一心新 年華 改まる処 一心新たなり
草木鳥魚齊喜春 草木 鳥魚 斉しく春を喜ぶ
好日如何欲謀婦 好日 如何せん 婦に謀らんと欲すれば
眼前忽看有芳醇 眼前 忽ち看る 芳醇有るを
<解説>
新しい年お迎えし 気持ちもすっかりあらたまる
鳥も魚も草も木も 皆々春を嬉しがる
きょうの佳き日をどうしよう 女房に相談しようかと
思ったときには目の前に お酒の支度できている
作品番号 2023-04
白屋迎春
妻子柴門飾竹松
清閑白屋聴鳴鐘
年逾花甲方知足
喜酒三杯醉意濃
作品番号 2023-05
歳晩回顧
病魔戦禍不知衰 病魔 戦禍 衰えを知らず
災害規模搨キ時 災害の規模 増長の時
体育歓僖民衆救 体育の歓僖 民衆の救
來年平穏到今疑 来たる年の平穏 今に到って疑う
「病魔」: 新型コロナウイルス
「戦禍」: ロシアのウクライナ侵攻
「体育」: スポーツ
作品番号 2023-06
歳晩書懐
晩學遅遅月日流 晩学 遅遅 月日 流る
作詩気勢幾時休 作詩の気勢 幾時か休む
壬寅年歳今宵尽 壬寅の年歳 今宵 尽き
癸卯知新何処求 癸卯の知新 何の処に求めん
「壬寅(じんいん)」: みずのえ とら
「癸卯(きぼう)」: みずのと う
作品番号 2023-07
癸卯新年書感
癸卯巡來喜壽年 癸卯 巡り来たる喜寿の年
先交拝歳賀宴前 先ず交す拝歳 賀宴の前
愛孫愛玩分馳走 愛孫 愛玩 馳走を分かつ
笑語延延心境円 笑語 延々 心境 円なり
「癸卯」: みずのと う
「喜寿」: 七十七歳
「拝歳」: 年始の挨拶
作品番号 2023-08
癸卯新年口占
年年送往友親 年年 往くを送る友親 増す
歳歳迎來發音正 歳歳 来る迎う発音の正
渡谷登山経喜壽 谷を渡り山を登り経に喜寿
安心立命歩殘生 安心立命 残生を歩まん
「癸卯」: みずのと う
「発音」: 徒死の初めに啼く鶯
「喜寿」: 七十七歳
「安心立命」: 天命を悟り心安らかで悩まない事
作品番号 2023-09
五絶・癸卯新年試筆
兔角成詩筆, 兔の角(つの)が詩筆となり,
龜毛溫詠懷。 亀の毛は詠懐を温(あたた)む。
歲朝傾酒美, 歳朝 酒の美(うま)きを傾け,
期待繆斯來。 期待す 繆斯(ミューズ)の来たるを。
作品番号 2023-10
五絶・癸卯迎春
兔奔脱虎口, 兔 奔(はし)りて虎口を脱(のが)れ,
人醒延龜壽。 人 醒めて亀寿を延ばす。
歲旦願和平, 歳旦 和平(平和)を願ひ,
夫婦傾椒酒。 夫婦 椒酒を傾く。
作品番号 2023-11
五絶・癸卯迎春 其二
玄兔騎白虎, 玄兔 白虎に騎り,
旭陽新月隣。 旭陽 新月の隣。
三元香夢醒, 三元 香夢醒めて,
延壽笑欣欣。 寿を延ばし 欣び欣び笑む。
作品番号 2023-12
五律・癸卯新年傾酒
兔奔脱虎口, 兔は奔りて虎口を脱(のが)れ,
人醒展龜年。 人は醒めて亀年を展(の)ばす。
歲旦身無恙, 歳旦 身は恙なく,
蝸廬酒涌泉。 蝸廬 酒は泉に涌く。
溫顏陪醉叟, 温顔 酔叟に陪し,
花眼對嬋娟。 花眼(老眼)嬋娟に対す。
正是山妻勸, 正に是れ山妻にして勧む,
更傾杯在前。 更に傾けよ 前に在りたる杯を と。
作品番号 2023-13
山花子・癸卯三元懷舊
玄兔奔脱虎口還, 玄兔 虎口を奔り脱れて還(かえ)り,
白頭夢醒展龜年。 白頭 夢醒めて亀年を展(の)ばす。
夫婦歲朝傾椒酒, 夫婦 歳朝に傾けたる椒酒,
若清泉。 清泉のごとし。
○ ○
醉境開談懷舊日, 酔境に談を開いて懐(おも)へる旧日,
青春攜手走花間。 青春 手を携へて花間を走(い)く。
海誓山盟婚配後, 海誓山盟 婚配(結婚)の後,
喜連歡。 歓びを連ぬるを喜ぶ。
作品番号 2023-14
想歳末
齢達九旬憂老衰 齢 九旬に達し 老衰を憂ふ
身躯五感鈍化悲 身躯 五感 鈍化悲し
但懐心意同今昔 但し 懐ふ 心意は今昔同じと
余命風流樂逸嬉 余命は風流な遊逸 嬉(たのし)まん
作品番号 2023-15
懐歳末 二
馬齢九秩白頭翁 馬齢 九秩 白頭の翁
五感体躯衰弱忡 五感 体躯 衰弱忡(うれ)ふ
但思心情同往昔 但し思ふ 心情は往昔同じと
余生樂逸気融融 余生は樂逸 気 融融
作品番号 2023-16
令和五年 年賀
依然癘疫未亡憂 依然 癘疫(らいえき) 未だに亡びず 憂ふ
翁媼蟄居將似囚 翁媼 蟄居し将に囚(とりこ)に似たり
専愛鳥花吟詠弄 専ら鳥花を愛で 吟詠 弄ぶ
迎年懐古樂周遊 迎年は懐古の周遊を楽しまん
作品番号 2023-17
癸卯新春偶感 一
世運年年憂色深 世運年年 憂色深し
政官産學国基侵 政官産学 国基を侵す
黎民何忘先人徳 黎民 何ぞ忘れん 先人の徳
歳歳回帰日本心 歳々 回帰せん 日本の心に
作品番号 2023-18
癸卯新春偶感 二
~亀萬戸 ~亀 万戸にし
仙鶴娯千秋 仙鶴 千秋を娯しむ
人豈哀塵俗 人 豈に塵俗を哀しまんや
一吟斯自由 一吟 斯れ自由
作品番号 2023-19
癸卯新春念舊
裕裕三千歳 裕裕たり 三千歳
哀哀一敗天 哀哀たり 一敗の天
然猶遺烈在 然れども猶 遺烈在り
武士道重躔 武士道 重ねて躔まん
作品番号 2023-20
迎新年
春晨瑞氣草堂邊 春晨 瑞気 草堂の辺り
柏酒辛盤開歳天 柏酒 辛盤 歳天を開く
家眷團欒頻笑語 家眷 団欒 笑語頻り
融融萬感賀新年 融融 万感 新年を賀す
作品番号 2023-21
新春即事
C空風穩富峰前 清空 風穏やかに 富峰の前
松柏古梅春景鮮 松柏 古梅 春景鮮やか
萬福融和滿茅屋 万福 融和 茅屋に満つ
友朋談笑十分圓 友朋 談笑 十分円なり
作品番号 2023-22
喜壽即事
一觴一詠草庵中 一觴 一詠 草庵の中
坐愛春光花信風 坐って愛す 春光 花信の風
朗暢殘年心未老 朗暢 残年 心未だ老いず
上和下睦樂無窮 上和下睦 楽しみ窮まり無し
作品番号 2023-23
歳末偶成
良宵冬至涸陰新 良宵 冬至 陰涸れて新たなり
柚浴洗心愉待春 柚浴 洗心 愉しみて春を待つ
電飾佯徒非我思 電飾 佯徒 我が思ひに非ず
迎年賀壽樂豐醇 迎年 賀寿 豊醇を楽しまん
作品番号 2023-24
迎春有感
穀風日暖發梅花 穀風 日暖 梅花発き
和景樂天愉歳華 和景 楽天 歳華を愉しむ
祈念期頤今夕酒 祈念す 期頤 今夕の酒
一家無恙壽齡嘉 一家 恙無し 寿齢嘉す
<解説>
「穀風」: 万物を育てる春風
作品番号 2023-25
癸卯新年
新正又到一齡加 新正 又到り 一齢加ふ
七十七春稀歎嗟 七十七の春 歎嗟稀なり
歡語笑顏年賀宴 歓語 笑顔 年賀の宴
健翁饞口酒偏嘉 健翁 饞口 酒偏へに嘉し
<解説>
「饞口」: 読みは「さんこう」。「欲張り、食いしん坊」、「健啖」という言葉もありますがこちらは「大食らい」
作品番号 2023-26
新年書懷
曈曈初日欲驅邪 曈曈初日 邪を駆らんと欲し
萬戸千門願百嘉 万戸千門 百嘉を願ふも
遠聽東歐春未到 遠く聴く 東欧 春未だ到らず
砲雷戰火苦紛拏 砲雷 戦火 苦だ紛拏
作品番号 2023-27
正月
送舊迎新改暦時 旧を送り 新を迎へ 改暦の時
門前三友靜嘉姿 門前に 三友 静嘉の姿
賀餐芳酒紅顏極 賀餐 芳酒 紅顔極まる
親眷健康談笑嬉 親眷 健康 談笑嬉し
作品番号 2023-28
瑞夢
三元飲酒醉顔呈 三元 飲酒 酔顔呈し
夢裏瑞嘉兆驚 夢裏 瑞祥 嘉兆に驚く
悪疫沈消世間穩 悪疫 沈消し 世間穏かなり
異邦萬里客行輕 異邦 万里 客行軽し
作品番号 2023-29
新年書懷
歳旦雲晴暖意加 歳旦 雲晴れ 暖意加ふ
早梅春信一枝花 早梅 春信 一枝の花
鶯聲樹上催幽興 鴬声 樹上 幽興を催し
和氣清香閑煮茶 和気 清香 閑かに茶を煮る
作品番号 2023-30
早春蠟梅
牆角蠟梅花影幽 牆角 蝋梅 花影幽なり
耐寒素豔細香流 寒に耐へ 素艶 細香流る
疎枝映日横斜好 疎枝 日に映じ 横斜好し
庭宇魁春風自悠 庭宇 春に魁けし 風自ら悠なり
<解説>
庭の隅の蝋梅の木が伸び、花をつけ毎日よい香を放っています。詩に残したいと創りました。