2021年の投稿詩 第211作は静岡芙蓉漢詩会の T ・ E さんからの作品です。
 対面での合評会は開けませんでしたが、各自で感想を送り合い、
 推敲を経て完成作を『芙蓉漢詩集 第28集』としてまとめました。

作品番号 2021-211

  小庭異聞        

暖寒交互小寒穹   暖寒 交互の小寒の穹(そら)

庭裏深深斜照中   庭裏深深として 斜照の中

克返光鱗片景   緑樹に光を返して鱗片の景

南天新葉彩眞紅   南天の新葉 真紅に彩る

          (上平声「一東」の押韻)


























 2021年の投稿詩 第212作は静岡芙蓉漢詩会の T ・ E さんからの作品です。
 対面での合評会は開けませんでしたが、各自で感想を送り合い、
 推敲を経て完成作を『芙蓉漢詩集 第28集』としてまとめました。

作品番号 2021-212

  薩埵嶺今昔        

天下懸崖雲徑危   天下の懸崖 雲径危ふし

鬱葱古道語星移   鬱葱たる古道 星移を語る

豁然白雪紺青景   豁然として白雪 紺青の景

幹線犇通狭海涯   幹線犇(ひしめ)き通る 海涯を狭くして

          (上平声「四支」の押韻)


























 2021年の投稿詩 第213作は静岡芙蓉漢詩会の H ・ S さんからの作品です。
 対面での合評会は開けませんでしたが、各自で感想を送り合い、
 推敲を経て完成作を『芙蓉漢詩集 第28集』としてまとめました。

作品番号 2021-213

  駿府城址賞花        

丘靜日長晴朗天   丘静かに日は長し 晴朗の天

櫻花爛漫弄春姸   桜花爛漫 春妍を弄ぶ

詩情不盡盤桓久   詩情は尽きず 盤桓久し

一刻千金實可憐   一刻千金 実に憐れむべし

          (下平声「一先」の押韻)


























 2021年の投稿詩 第214作は静岡芙蓉漢詩会の H ・ S さんからの作品です。
 対面での合評会は開けませんでしたが、各自で感想を送り合い、
 推敲を経て完成作を『芙蓉漢詩集 第28集』としてまとめました。

作品番号 2021-214

  訪川根路        

塵外清遊夢忽醒   塵外の清遊 夢忽ち醒む

依然勝景數峯青   依然の勝景 数峰青し

一聲汽笛舊懷響   一声の汽笛 旧懐の響き

獨領清音洗耳聽   独り清音を領し 耳を洗って聴く

          (下平声「九青」の押韻)


























 2021年の投稿詩 第215作は静岡芙蓉漢詩会の T ・ H さんからの作品です。
 対面での合評会は開けませんでしたが、各自で感想を送り合い、
 推敲を経て完成作を『芙蓉漢詩集 第28集』としてまとめました。

作品番号 2021-215

  賽山寺        

山門聳夕陽舂   山門く聳え夕陽舂(うすづ)き

素艶老梅枝一重   素艶(そえん)の老梅 枝一重

香靄蒼苔清淨地   香靄 蒼苔 清浄の地

誦經滿殿洗塵胸   誦経殿に満ち塵胸を洗ふ

          (上平声「二冬」の押韻)


























 2021年の投稿詩 第216作は静岡芙蓉漢詩会の T ・ H さんからの作品です。
 対面での合評会は開けませんでしたが、各自で感想を送り合い、
 推敲を経て完成作を『芙蓉漢詩集 第28集』としてまとめました。

作品番号 2021-216

  閑遊        

暄暖閑庭鳥語柔   暄暖の閑庭 鳥語柔にして

紫藤散盡洗春愁   紫藤散じ尽くし 春愁を洗ふ

餘生幾許光陰早   余生幾許(いくばく)ぞ 光陰早く

酌酒吟詩恣漫遊   酒を酌み詩を吟じ 遊を恣(ほしいまま)にせん

          (下平声「十一尤」の押韻)


























 2021年の投稿詩 第217作は静岡芙蓉漢詩会の 柳村 さんからの作品です。
 対面での合評会は開けませんでしたが、各自で感想を送り合い、
 推敲を経て完成作を『芙蓉漢詩集 第28集』としてまとめました。

作品番号 2021-217

  田子浦閑詠        

覓句長汀獨勝遊   句を覓め 長汀 独り勝遊す

潮風嫋嫋暁霞流   潮風 嫋嫋(じょうじょう) 暁霞(ぎょうか)流る

垂綸秋浦太公望   綸(いと)を垂らす 秋浦の太公望

瀲灔漂波一葉舟   瀲灔(れんえん) 波に漂ふ 一葉の舟

          (下平声「十一尤」の押韻)


「秋浦」: 秋の田子浦
「瀲灔」: 水面がきらめくさま。

























 2021年の投稿詩 第218作は静岡芙蓉漢詩会の 柳村 さんからの作品です。
 対面での合評会は開けませんでしたが、各自で感想を送り合い、
 推敲を経て完成作を『芙蓉漢詩集 第28集』としてまとめました。

作品番号 2021-218

  小春吟        

愛日如春野趣長   愛日 春の如く 野趣長し

閑人曳杖訪禪房   閑人 杖を曳いて 禪房を訪ふ

荒庭巨木公孫樹   荒庭の巨木 公孫樹

落葉成堆滿地黄   落葉 堆を成して 満地 黄なり

          (下平声「七陽」の押韻)


「公孫樹」: いちょうの漢名。老木でないと実らず孫の代に実る樹の意

























 2021年の投稿詩 第219作は静岡芙蓉漢詩会の 柳村 さんからの作品です。
 対面での合評会は開けませんでしたが、各自で感想を送り合い、
 推敲を経て完成作を『芙蓉漢詩集 第28集』としてまとめました。

作品番号 2021-219

  春日雜詠        

公園風暖日   公園 風暖かの日

緩歩伴佳人   緩歩 佳人を伴ふ

躑躅群葩發   躑躅(てきちょく) 群葩発き

櫻花半作塵   桜花 半ば塵を作(な)す

流鶯尋藪去   流(りゅう)鶯(おう) 藪(やぶ)を尋ねて去り 

戯蝶盗香頻   戯蝶香を盗むこと頻りなり

滿目興難盡   満目 興 尽し難し

清遊一路春   清遊 一路の春

          (上平声「十一真」の押韻)


























 2021年の投稿詩 第220作は静岡芙蓉漢詩会の 甫途 さんからの作品です。
 対面での合評会は開けませんでしたが、各自で感想を送り合い、
 推敲を経て完成作を『芙蓉漢詩集 第28集』としてまとめました。

作品番号 2021-220

  乾藷        

百片乾藷廂上風   百片 藷を乾す 廂上(そうじょう)の風

追懐萬感凍寒空   追懐して万感 凍寒の空

涙痕燥吻孩兒戚   涙痕 燥吻(そうふん) 孩児の戚み

心鎮西望落日紅   心鎮まる西望 落日紅なり

          (上平声「一東」の押韻)


 子どもの頃、継母が来て一年後に父が、一割しか保証できないという手術を敢行、心細い時期が数年続いた、苦い思い出。























 2021年の投稿詩 第221作は静岡芙蓉漢詩会の 甫途 さんからの作品です。
 対面での合評会は開けませんでしたが、各自で感想を送り合い、
 推敲を経て完成作を『芙蓉漢詩集 第28集』としてまとめました。

作品番号 2021-221

  春日閑居 考試        

年歳植栽芽甲伸   年歳 植栽 芽甲伸ぶ

老妻花賞興餘貧   老妻 花賞 興余貧し

不安希望去來裡   不安 希望 去来の裡

笑語孫童考試春   笑語 孫童 考試の春

          (上平声「十一真」の押韻)


























 2021年の投稿詩 第222作は静岡芙蓉漢詩会の 甫途 さんからの作品です。
 対面での合評会は開けませんでしたが、各自で感想を送り合い、
 推敲を経て完成作を『芙蓉漢詩集 第28集』としてまとめました。

作品番号 2021-222

  昔日打擲蝿        

餐卓飛蟲執拗回   餐卓(さんたく) 飛虫 執拗に回る

忽然母額小休臺   忽然として母の額 小休の台

打蠅一瞬自誇耀   一瞬に蝿を打ち 自から誇耀(こよう)

唖痛悲鳴還怒雷   唖痛 悲鳴 還(ま)た怒雷

          (上平声「十灰」の押韻)


 蝿を追い回して、いい加減にやめたらという頃、突然母の額にとまった。
 前後の見境もなく獲雑物に飛びつく。
 叩いたところが母の額であった。
 母の怒った顔、痛いと言った声、謝るばかりであった。
























 2021年の投稿詩 第223作は静岡芙蓉漢詩会の 甫途 さんからの作品です。
 対面での合評会は開けませんでしたが、各自で感想を送り合い、
 推敲を経て完成作を『芙蓉漢詩集 第28集』としてまとめました。

作品番号 2021-223

  湖上春        

東郊淺水動青蘋   東郊の浅水 青蘋を動かす

遠近亂看湖上春   遠近乱れ看る湖上の春

拂紙爽風催筆寫   紙を払う爽風 筆写を催す

野花映冴`情新   野花 緑に映じて画情 新なり

          (上平声「十一真」の押韻)


 コロナ禍で悶々の気持ちを払拭したくなり、好きな絵道具を持ってブラッと北の池に出かけた。
 水は冷たそうだが絵をかくのには丁度よかった。
























 2021年の投稿詩 第224作は静岡芙蓉漢詩会の F ・ U さんからの作品です。
 対面での合評会は開けませんでしたが、各自で感想を送り合い、
 推敲を経て完成作を『芙蓉漢詩集 第28集』としてまとめました。

作品番号 2021-224

  梅花        

梵庭春綻囀黄鸝   梵庭春綻び 黄鸝囀り

一脈香風清冷吹   一脈の香風 清冷に吹く

竹外横斜疎影動   竹外 横斜 疎影動き

素梅馥郁發花時   素梅 馥郁 花発く時

          (上平声「四支」の押韻)


「清冷」: 清らか透きとおっている。























 2021年の投稿詩 第225作は静岡芙蓉漢詩会の F ・ U さんからの作品です。
 対面での合評会は開けませんでしたが、各自で感想を送り合い、
 推敲を経て完成作を『芙蓉漢詩集 第28集』としてまとめました。

作品番号 2021-225

  悼恩師逝去        

端然辨道闡玄猷   端然として道を辨じ 玄猷(げんゆう)を闡き

滾滾教泉留不留   滾滾たる教の泉 留れども留らず

何料負春今日別   何ぞ料らん春に負いて今日別る

櫻花繚亂卻添愁   桜花繚乱 却って愁を添ふ

          (下平声「十一尤」の押韻)


「端然」: 姿勢などが乱れないできちんとしているさま。
「辨道」: 道に励み、つとめる。道に志す。
「玄猷」: 奥深い道義、人の踏み行う道。
「闡」: ひらく。明らかにする

























 2021年の投稿詩 第226作は静岡芙蓉漢詩会の F ・ U さんからの作品です。
 対面での合評会は開けませんでしたが、各自で感想を送り合い、
 推敲を経て完成作を『芙蓉漢詩集 第28集』としてまとめました。

作品番号 2021-226

  寄東日本大震災十周年(一)        

毘嵐吹斷奥州天   毘嵐(びらん)吹断(すいだん)す 奥州の天

海嘯襲來經十年   海嘯(かいしょう)襲来 十年を経たり

非業尊霊何處在   非業の尊霊 何処にか在る

反魂香片獻眞前   反魂(はんごん)の香片 真前に献ぜん

          (下平声「一先」の押韻)


「毘嵐」: 毘嵐風。劫末、劫初に吹く大暴風。その猛威ですべてが破壊されるという。
「海嘯」: 津波。
「反魂香」: この香をたくと死者の魂を呼び戻して、その姿を煙の中に現すという。























 2021年の投稿詩 第227作は静岡芙蓉漢詩会の F ・ U さんからの作品です。
 対面での合評会は開けませんでしたが、各自で感想を送り合い、
 推敲を経て完成作を『芙蓉漢詩集 第28集』としてまとめました。

作品番号 2021-227

  寄東日本大震災十周年(二)        

揺天激震怒潮奔   天を揺がす激震 怒潮奔り

江上人寰一口呑   江上の人寰 一口に呑む

興復十年艱苦道   興復十年 艱苦の道

何時轉禍爽心魂   何時(なんとき)か禍を転じ 心魂爽やかにせん

          (上平声「十三元」の押韻)


「人寰」: 人の住む所。人間社会。
「興復」: 再興。復興
「心魂」: こころの奥底。たましい。























 2021年の投稿詩 第228作は静岡芙蓉漢詩会の K ・ K さんからの作品です。
 対面での合評会は開けませんでしたが、各自で感想を送り合い、
 推敲を経て完成作を『芙蓉漢詩集 第28集』としてまとめました。

作品番号 2021-228

  無住寺        

苔階堆葉往來稀   苔階堆葉 往来稀なり

石砌荒林要暖衣   石砌の荒林 暖衣を要す

止歩凝然窺破寺   歩を止め凝然 破寺(あれでら)を窺えば

妖風分樹一燈微   妖風樹を分けて 一灯微なり

          (上平声「五微」の押韻)


























 2021年の投稿詩 第229作は静岡芙蓉漢詩会の K ・ K さんからの作品です。
 対面での合評会は開けませんでしたが、各自で感想を送り合い、
 推敲を経て完成作を『芙蓉漢詩集 第28集』としてまとめました。

作品番号 2021-229

  九九殘齢        

九九殘齢新入期   九九の残齢 新たに期に入る

非才病痩意何萎   非才の病痩 意何ぞ萎(しぼ)まん

救人妙法尋今古   人を救ふの妙法 今古に尋ね

閲覧生涯萬巻詞   閲覧せん生涯 万巻の詞

          (上平声「四支」の押韻)


 九九、八十一に近く、また新年を迎える。
 さしたる才能もなく、病気持ちの身であるが、決して萎縮せず、我も人も救う妙法を尋ね、生涯なお、万巻の書を閲覧しよう。
























 2021年の投稿詩 第230作は静岡芙蓉漢詩会の K ・ K さんからの作品です。
 対面での合評会は開けませんでしたが、各自で感想を送り合い、
 推敲を経て完成作を『芙蓉漢詩集 第28集』としてまとめました。

作品番号 2021-230

  河口湖絶景        

違時驟雨徹宵喧   違時(いじ)の驟雨 宵を徹して喧し

僅慰温泉此旅魂   僅に慰む温泉 此旅の魂(こん)

富嶽朝暉随倒影   富岳の朝暉 倒影に随ひ

水天兩態實虚沌   水天の両態 実虚の沌

          (上平声「十三元」の押韻)


 時を違えた強雨は夜中喧しかった。
 今度の旅行はさんざんになってしまったが、温泉だけは満足できた。
 酔って寝て起きると、朝日が富士山に射し込み、無風の湖面には逆さ富士が見事に映り、上が本物か下が本物か分からないほど美しい。
























 2021年の投稿詩 第231作は静岡芙蓉漢詩会の K ・ K さんからの作品です。
 対面での合評会は開けませんでしたが、各自で感想を送り合い、
 推敲を経て完成作を『芙蓉漢詩集 第28集』としてまとめました。

作品番号 2021-231

  青山白鳥        

偲君白鳥絶青山   君を偲べば 白鳥は青山に絶ゆ

薄幸佳人長臥患   薄幸の佳人 長臥の患

遺子成家齢八十   遺子家を成し 齢は八十

偲君白鳥絶青山   君を偲べば 白鳥は青山に絶ゆ

          (上平声「十五刪」の押韻)


  蘇東坡の詩

 廬山煙雨浙江潮
 未到先般恨不消
 到得還來無別事
 廬山煙雨浙江潮
に倣った。

※当サイトの「漢詩名作集」にも、蘇軾の「廬山煙雨」は載せてあります。























 2021年の投稿詩 第232作は静岡芙蓉漢詩会の 常春 さんからの作品です。
 対面での合評会は開けませんでしたが、各自で感想を送り合い、
 推敲を経て完成作を『芙蓉漢詩集 第28集』としてまとめました。

作品番号 2021-232

  嘆息        

四年尊大濁裁然   四年尊大 独裁然(どくさいぜん)とし

收欖人心喧噪牽   人心収攬(しゅうらん)して喧噪牽(ひ)く

得票無伸明敗北   得票伸びる無く 敗北明らかなるに

唆民訟法執迷憐   民を唆(そそのか)し 法に訟ふ 執迷憐れ

          (下平声「一先」の押韻)


 ヒットラーを思わせる演説強弁、これに熱狂する民衆。露骨な自国中心主義、大国の威信を捨て去った四年であった。
 そして、しめくくりは煽動による熱狂者の議事堂乱入であった。
























 2021年の投稿詩 第233作は静岡芙蓉漢詩会の 常春 さんからの作品です。
 対面での合評会は開けませんでしたが、各自で感想を送り合い、
 推敲を経て完成作を『芙蓉漢詩集 第28集』としてまとめました。

作品番号 2021-233

  隼貳再飛翔        

六年飛隼意揚揚   六年の飛隼(ひしゅん) 意揚々

至適投函翻轉翔   至適(してき)の投函 翻転(はんてん)の翔

餘裕性能新任努   余裕の性能 新たな任努

彼星觀測踏査航   彼の星 観測踏査の航

          (下平声「七陽」の押韻)


 五十億qの旅より帰還したハヤブサUは「リュウグウ」砂石収納のカプセル投下して直ちに百億q離れた小惑星に向かった。
 隼Uの観測装置は健全で、試料採取の器具一組残余があると聞く
























 2021年の投稿詩 第234作は静岡芙蓉漢詩会の 常春 さんからの作品です。
 対面での合評会は開けませんでしたが、各自で感想を送り合い、
 推敲を経て完成作を『芙蓉漢詩集 第28集』としてまとめました。

作品番号 2021-234

  辛丑醉吟        

悪疫漾天時節巡   悪疫天に漾ひ 時節巡る

塞門箝口意艱辛   門を塞ぎ 口を箝(つぐ)む 意艱辛(かんしん)

善哉舒暢反芻丑   善(よ)き哉 舒暢(じょちょう)たる反芻の丑(うし)

披闇來迎心自春   闇を披く来迎 心自から春

          (下平声「十一真」の押韻)


 この詩賀状に記したところ、三方より次韻の詩を頂いた。有難いこと。























 2021年の投稿詩 第235作は静岡芙蓉漢詩会の 常春 さんからの作品です。
 対面での合評会は開けませんでしたが、各自で感想を送り合い、
 推敲を経て完成作を『芙蓉漢詩集 第28集』としてまとめました。

作品番号 2021-235

  春日閑居        

春日閑居自覓新   春日閑居 自ずと新を覓む

新聞一色病魔隣   新に聞くは一色 病魔隣すと

隣家交誼疑寸刻   隣家の交誼 寸刻 疑(ため)らふ

刻意豫防心未春   予防に意刻みて 心未だ春ならず

          (上平声「十一真」の押韻)


   コロナ禍で鬱陶しい日が続く。

 この詩は、遊びとして連環体しりとりを取り入れた。
























 2021年の投稿詩 第236作は静岡芙蓉漢詩会の 岳游 さんからの作品です。
 対面での合評会は開けませんでしたが、各自で感想を送り合い、
 推敲を経て完成作を『芙蓉漢詩集 第28集』としてまとめました。

作品番号 2021-236

  犀崖(さいががけ)古戰場        

鶴翼陣崩歸己城   鶴翼(かくよく)の陣崩れ 己が城に帰す

欲酬一矢詐謀縈   一矢を酬ひんと 詐謀(さぼう)縈(めぐ)らす

奈何軆面布橋策   奈何(いかん)せん 体面 「布橋(ぬのはし)の策(さく)」たり

發火冥茫撃敵營   火を発つ 冥茫(めいぼう) 敵営を撃つ

          (下平声「八庚」の押韻)


「鶴翼陣」: 家康軍が三方原合戦に鶴翼の陣形を引くも武田軍にすぐさま破られる
「布橋策」: 崖に布を張って橋に見間違う様、暗夜に敵を誘き寄せる策。今も「布橋ヌノハシ」とい地名があります。


「犀崖」は現在公園になっていて、毎年八月の旧盆に、武田軍の崖に落ちて亡くなった兵士を弔って遠州大念仏の踊りが執り行なわれています。























 2021年の投稿詩 第237作は静岡芙蓉漢詩会の 岳游 さんからの作品です。
 対面での合評会は開けませんでしたが、各自で感想を送り合い、
 推敲を経て完成作を『芙蓉漢詩集 第28集』としてまとめました。

作品番号 2021-237

  夕景小濱灣(福井)        

鷗影斜陽入海佳   鴎影斜陽 海に入りて佳し

潮聲曲浦歩濱廻   潮声曲浦 浜を歩みて廻る

浴衣颯颯涼風裡   浴衣 颯々 涼風の裏

岬角燈臺暢醉懐   岬角(こうかく)の灯台 醉懐暢(の)ばす

          (上平声「九佳」の押韻)


 小浜での酒肴の味と小浜湾の夕景は、心に残る旅となりました。























 2021年の投稿詩 第238作は静岡芙蓉漢詩会の 岳游 さんからの作品です。
 対面での合評会は開けませんでしたが、各自で感想を送り合い、
 推敲を経て完成作を『芙蓉漢詩集 第28集』としてまとめました。

作品番号 2021-238

  筍之詩        

破土萌胎動   土を破して 胎動萌はし

龍孫告快哉   竜孫 快哉(かいや)と告ぐ

抽芽幽鳥囀   芽を抽(だ)さば 幽鳥囀り

抱籜瑞雲開   籜(たく)を抱きて 瑞雲開く

萬竹育千筍   万竹 千筍を育み

七賢離俗埃   七賢 俗埃を離る

叢篁懸夕月   叢篁 夕月懸り

村里暮鐘催   村里 暮鐘催す

          (上平声「十灰」の押韻)


「龍孫」: たけのこ
「籜」: たけのこの皮
「勁節」: 強くてかたい節
「繊身」: しなやかなみき

























 2021年の投稿詩 第239作は静岡芙蓉漢詩会の Y ・ H さんからの作品です。
 対面での合評会は開けませんでしたが、各自で感想を送り合い、
 推敲を経て完成作を『芙蓉漢詩集 第28集』としてまとめました。

作品番号 2021-239

  荒村        

山間集落草茫茫   山間の集落 草茫茫

破屋媼翁嘆故郷   破屋 媼翁 故郷を嘆く

瀑布眺望空獨占   瀑布 眺望 空しく独占

過疏孤立未無方   過疎 孤立 未だ方無し

          (下平声「七陽」の押韻)


 天竜区の中山間地は、過疎化が進み人口流失が著しい。
 若者は転出し、居住するのは高齢者世帯が多い。
 買い物難民、通院難民と日々の生活に支障をきたしている。
 昔の景色は変わらないが、行政の過疎化対策は進んでいない。難しい問題である。
























 2021年の投稿詩 第240作は静岡芙蓉漢詩会の Y ・ H さんからの作品です。
 対面での合評会は開けませんでしたが、各自で感想を送り合い、
 推敲を経て完成作を『芙蓉漢詩集 第28集』としてまとめました。

作品番号 2021-240

  金原明善翁        

大局觀望高志威   大局 観望 高志の威

植栽治水滅私揮   植栽 治水  滅私揮はん

天龍杉柏造林美   天龍の杉柏 造林美し

ク土先人歴史輝   郷土の先人 歴史に輝く

          (上平声「五微」の押韻)


 金原明善翁は、浜松市で生まれ天竜川の治水や治山事業などに貢献した。
 全財産の寄付を申し出て、補助金の承認を得る。
「実を先にして名を後にす」「行を先にして言を後にす」「事業を重んじて身を軽んず」
 この三つを信条とした。

 再来年は没後百年となります。