作品番号 2021-01
令和三年元日作
盡日杜門醉夢中 尽日 門を杜(とざ)して酔夢の中
相忘世事臥東風 世事 相忘れて東風に臥す
蟄居不爲憂冠疫 居に蟄るは冠疫を憂ふ為ならず
疎懶新正歳歳同 疎懶の新正 歳歳同じ
新年明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。
いちにちウチに引き籠り 聞こし召しては夢の中
世間ことはさておいて 初春の風に身をまかす
ステイホームはコロナ禍を 心配しているわけでなく
無精怠惰の寝正月 去年も今年も変わらない
作品番号 2021-02
祭詩
莫道裁詩多沒書 道(い)ふ莫れ 詩を裁して没書多く
春秋濫費似癡愚 春秋 濫費すること 痴愚に似たり と
人生妙味此中在 人生の妙味 此の中に在り
五百餘吟不負吾 五百余吟 吾に負かず
言ってくれるな「下手な詩に むやみに月日を費やして
無駄紙ばかり積み上がる まったく馬鹿なこと」なんて
わが人生の愉しみは この中にこそあるわけで
六百くらいと思うけど 全部が自分そのものさ
作品番号 2021-03
新年詩
自練三千里, 一年 三千里走って鍛え、
詩文備退休, 詩文を退職後に備えてやってます。
双難花甲近, 還暦近い自分にとって両方とも難しく、
進歩慢如牛。 進歩は遅いこと牛歩のようです。
作品番号 2021-04
辛丑醉吟
悪疫漾天時節巡 悪疫天に漾ひ時節巡る
塞門箝口告哀辛 門を塞ぎ口を箝(つぐ)む意艱辛
善哉舒暢反芻丑 善き哉 舒暢たる反芻の丑
披闇来迎心自春 闇を披く来迎 心自づから春
※
この詩、文字と戯れ、各句の末字を「巡辛丑春」としました。
また句頭は結句から起句に向かって「○善○悪」、「勧善懲悪」に近い意味をと探しましたが見つからず、「披善塞悪」(善を披らき悪を塞ぐ)としました。
作品番号 2021-05
新年作
旅雁一行人字飛 旅雁 一行 人字飛ぶ
晨炊幾處趁朝暉 晨炊 幾處か 朝暉を趁(お)ふ
世間縱是才元旦 世間 縱是(たと)ひ 才(わず)かに元旦なれども
萬里前程羽翼揮 萬里の前程に 羽翼揮ふ
作品番号 2021-06
真紅南天
吹断寒風枯葉飛 吹断す寒風 枯葉飛び
雪華獨秀美花緋 雪華 獨り秀づる 美花緋し
吉祥掛軸南天実 吉祥の掛軸 南天の実
丑歳祭壇春気希 丑歳の祭壇 春気の希み
作品番号 2021-07
新春
晨鶏寒気引初曦 晨鶏 寒気 初曦を引く
椒酒陶然迎友時 椒酒に陶然として友を迎える時
氷解春風旗影暖 氷は解け 春風 旗影暖かなり
五雲靉靆早梅披 五雲 靉靆にして 早梅披く
作品番号 2021-08
新年書懐
旭日滔滔樂昊天 旭日 滔滔 昊天を楽しむ
過來多難病魔年 過ぎ来たるは 多難の病魔の年
前庭萬兩蕡其實 前庭の万両は 蕡たる其の実
物換陶然開酒筵 物換って 陶然と酒筵を開く
「滔滔」: 陽光の盛んな様
「昊天」: 春の空
「万両」: 赤い実をつける木
「蕡其實」: 実がつぶらにふくらんだ様。「詩経」/「周南」の詩「桃夭」に出てくる。
今年の歌会始のお題は「実」。
「陶然」: 心地よく酔った貌
「酒筵」: 酒の席
作品番号 2021-09
辛丑新春口號
喜壽新年淡淡迎 喜寿の新年 淡淡として迎ふ
回看庚子甚崢�エ 回看すれば庚子 甚だ崢�エたりき。
老人幽獨惜殘夢 老人 幽独 残夢を惜しむ、
山水梅花巧囀鶯 山水 梅花 巧囀の鶯。
作品番号 2021-10
新年口占
依舊春風到我廬 旧に依って 春風 我が廬に到り
又迎新歳萬難餘 又た新歳を迎ふ 万難の余
應期轉禍却爲�� 応に期すなるべし 禍を転じて却って福と為すを
笑把吟杯意晏如 笑って吟杯を把れば 意晏如たり
全国の詩盟の皆様、明けましておめでとうございま〜す!(^o^)/
昨年はもれなく散々な年でしたね。さすがの極楽とんぼの私も、一時へこみそうになりました。
でも明けない夜はない、トンネルには必ず出口があると信じて、何とか踏ん張りました。
今年は絶対にいい年になりますよ!みんなで一緒に頑張りましょう!
作品番号 2021-11
令和辛丑元旦書懐
疫病蔓延風馬牛 疫病 蔓延するは 風馬牛
従令感染死悠悠 従令 感染して死するも悠悠たらん
歳除雪嶺孤征夢 歳除 雪嶺 孤征の夢
七十九翁邀日頭 七十九翁 日頭を邀(むか)ふ
七十九歳は数え年です。
作品番号 2021-12
初春偶成 chu1 chun1 ou3 cheng2,
景物新正淑氣移, jing3 wu4 xi1n zheng4 shu1 qi4 yi2, (景物新正 淑氣移る)
朝吟暮詠獨題詩。 chao2 yin2 mu4 yong3 du2 ti2 shi1. (朝吟暮詠 獨り詩を題す)
初暘燦燦清�闢�, chu1 yang2 can4 can4 qing1 xian2 ri4, (初陽燦燦 閑日清らか)
六十三齡憶舊時。 liu4 shi2 san1 ling2 yi4 jiu4 shi2. (六十三齡 旧時を憶ふ)
最近はNHKカルチャーラジオ「漢詩を読む」も、絶句、律詩のときは現代中国語で発音するので、自分も訓読文よりピンインをつけるようになりました。
押韻や平仄がよくわかって面白いです。
作品番号 2021-13
辛丑新年
九十有三迎歳時 九十 有三 歳を迎える時
回頭萬象感懐滋 頭を回らせば 萬象 感懐滋し
太平世下浮萍似 太平 世の下 浮萍と似たり
不戦誓盟七六移 不戦 誓盟 七六と移る
辛丑新年は陰暦十二月である。
作品番号 2021-14
辛丑新年書感
齋憂國患此迎新 斎(ひと)しく国患を憂い此に新を迎え
救世疫苗期待晨 救世の疫苗 期待の晨
只慶健康身体有 只 慶ぶは健康の身体 有り
賀莚姻戚酒千巡 賀莚の姻戚 酒 千巡
「辛丑(しんちゅう)」: かのと うし
「国患」: 新型コロナウイルス
「疫苗」: ワクチン
作品番号 2021-15
正月
恒例寫真家族貲 恒例の写真 家族の貲(たから)
歳朝撮影好容姿 歳朝の撮影 好容姿
久離縁者平安信 久離(きゅうり)の縁者 平安の信
無恙身邊慶記詩 恙無き身辺 慶び詩に記(しる)す
もう十数枚の写真 今年も全員 元気に揃うことが出来ました。
「久離」: 長い間離れている
正月は市内に住む娘夫婦が孫四人を連れて年賀に来る。
孫は成人が2人 中高生が1人ずつ
家族の記念写真を撮るのが恒例となっております。
愛犬の柴犬も仲間入り。
作品番号 2021-16
立春
處世全身学柳枝 処世 身を全うするは 柳枝に学び、
風搖細腰想萌時 風に揺るる細腰 萌時を想ふ。
櫻華相彩陽光拂 桜華 相彩り 陽光払ひ、
且見春霞淡婉姿 且見る 春霞 淡婉なる姿。
作品番号 2021-17
新年
即即多忙歳末期 即即 多忙なり 歳末期、
寒街夕暮日遲遲 寒街の夕暮 日に日に遅遅。
元旦淑淑明無事 元旦淑淑と明けて無事なり、
令和三年謹作詩 令和三年 謹み詩を作らん。
作品番号 2021-18
正月
浮雲不定只風追 浮雲は定まらず 只風は追ひ、
美酒新杯不定辭 美酒の新杯 辞するべからず。
寛笑豈言疎白髪 寛く笑ひて 豈に言はんや疎なる白髪を、
妻觀手相試占宜 妻は手相を観て 試みに宜しきを占ふ。
作品番号 2021-19
迎新春
経過元旦一朝明 元旦を経過 一朝明らか
瑞氣蓬蓬感更新 瑞気 蓬蓬 感更に新たなり
視力衰微形骸醜 視力 衰微 形骸 醜し
餘年守拙樂人生 余年 拙を守り 人生を楽しまん
89歳を迎え、身の衰え避けがたいけれども、なんとか頑張っております。
作品番号 2021-20
令和三年新春(一)
新歳如何佳意萎 新歳如何せん 佳意萎む
内憂外患見傾危 内憂外患 傾危を見る
日東本是日昇處 日東本是れ 日の昇る処
一億一心興復期 一億一心 興復の期
作品番号 2021-21
令和三年新春(二)
元朝一炷拝厳慈 元朝一炷 厳慈を拝し
七十人生猶忸痴 七十の人生 猶ほ痴なるを忸づ
然泰貧居孫子健 然れども貧居に泰んじて 孫子健やかなり
少斟新酒獻新詩 少しく新酒を斟んで 新詩を献ぜん
作品番号 2021-22
令和三年新春(三)
春囘茅屋怯寒威 春回るも茅屋 寒威に怯え
衰體圍炉襲暖衣 衰体炉を囲んで 暖衣を襲ぬ
加妖痾未兆終熄 加へて妖痾 未だ終熄を兆さず
古希僅祝出門稀 古希僅かに祝ひて 門を出ること稀なり
作品番号 2021-23
五絶・辛丑新年所懷
牛歩登詩路, 牛歩して詩路を登り,
夢中迎旭光。 夢の中で旭光を迎ふ。
三元醒延壽, 三元に醒めて寿を延ばし,
但願世安康。 ただに願ふ 世の安康を。
作品番号 2021-24
五絶・辛丑新年謝椒酒
牛歩前途遠, 牛歩 前途は遠し,
三元夢醒時。 三元 夢醒むる時。
仰天先感謝, 天を仰いでまず感謝す,
椒酒滿金卮。 椒酒の金卮に満つるを。
作品番号 2021-25
七絶・辛丑新年所懷 其二
牛高馬大愛裁詩, 牛高馬大(体はでかく)も詩を裁くを愛し,
不顧才疏文苑馳。 才の疏なるを顧みず文苑を馳す。
元旦蘇生又延壽, 元旦 蘇生してまた寿を延ばし,
醺然試筆潤金卮。 醺然と試せし筆は金卮に潤ふ。
作品番号 2021-26
七絶・辛丑新年所懷 其三
牛角挂書人愛詩, 牛の角に書を挂けたる人は詩を愛し,
光陰如箭老瑤池。 光陰 箭の如くして瑶池に老ゆ。
無聊晩境揮才筆, 無聊なる晩境に才筆を揮ひ,
玩世悠悠喜弄痴。 世を玩んで悠悠と痴を弄するを喜ぶ。
作品番号 2021-27
五律・辛丑新年所懷 其四
牛心追繆斯, 牛心 繆斯(ミューズ)を追ひ,
不顧菲才痴。 菲才を顧みざるは痴なり。
一日聽琴韻, 一日 琴韻を聴き,
廿年裁屎詩。 廿年(二十年)屎詩を裁す。
迎春更延壽, 春を迎えて更に寿を延ばし,
磨墨且謳思。 墨を磨いて且(まさ)に思ひを謳(うた)ふ。
莫笑樗翁喜, 笑ふなかれ 樗翁 喜ぶを,
揮毫潤酒卮。 揮ひし毫(ふで)の酒卮に潤ふを。
作品番号 2021-28
七律・辛丑新年所懷 其五
老馬識途牛若何? 老いし馬は途(みち)を識るに牛は若何(いかん)ぞ?
常吃稿草賦詩多。 常に稿草を吃(た)べて詩を賦すること多し。
繆斯彈奏琴音促, 繆斯(ミューズ)琴音を彈奏して促す,
才筆潤含瓊乳濁。 才筆の瓊乳(けいにゅう)を潤ひ含んで濁るるを。
如此醉思年底夢, 此くの如く醉って思ひし年底の夢,
延齡蘇醒歳朝舌。 齡を延ばして蘇醒せる歳朝の舌。
先傾椒酒後磨墨, 先ず椒酒を傾けて後に墨を磨き,
覓句醺然裁小歌。 句を覓(もと)めて醺然と裁く 小さき歌を。
作品番号 2021-29
七律・辛丑新年所懷 其六
牛歩文林遶硯池, 文林を牛歩して硯池を遶り,
幸聽琴韻試裁詩。 幸ひ琴韻を聴きて詩を裁くを試む。
喜騎仙鶴張輕翰, 喜び騎(の)れば仙鶴 輕き翰を張り,
遠訪桃源買美辭。 遠く訪ねて桃源に美しき辭(ことば)を買ふ。
山鬼誑人春爛漫, 山鬼 人を誑かして春は爛漫,
瘋魔陪酒夢繁滋。 瘋魔 酒に陪して夢は繁滋。
神遊免費醉遐想, 神遊 免費(ただ)にして遐想(ファンタジー)に醉ひ,
不顧才疏擅所思。 才の疏なるを顧みず所思を擅(ほしいまま)にす。
作品番号 2021-30
七律・辛丑新年所懷 其七
牛歩堂堂逐鼠思, 牛歩 堂堂と鼠思(うれい)を逐(お)はんとするも,
新冠疫鬼跨年馳。 新冠(新型コロナヴィルス)の疫鬼 年を跨いで馳す。
閉門舊歳多求句, 門を閉じて旧歳は多(おお)いに句を求め,
開眼新年尚遁時。 眼を開くも新年 なほ時(時の世)より遁れんとす。
何日清遊探形勝, 何日(いつの日)清遊して形勝を探(たず)ね,
那天行樂喜杯卮? 那天(いずこの天)に行樂して杯卮を喜ばんや?
只今鬱鬱祈東帝, 只今 鬱鬱として東帝に祈るに,
撒布菌苗花綻枝? 菌苗(ワクチン)を撒布すれば花は枝に綻ばんかと。