作品番号 2017-31
祝新年
持手賀書文字声 手に持つ賀書 文字に声あり
停雲落月到深更 停雲落月 深更に到る
人生流転君頑否 人生 流転 君 頑なるや否や
共祷健康長命盈 共に祷る健康長命の盈つるを
作品番号 2017-32
元旦後天晴過富士見茶屋舊跡遠望見富士雪峰
元旦の後五日、天晴れ、富士見茶屋旧跡を過ぎりて遠く富士の雪峰を望む
松枝竹劍翠如新, 松枝 竹剣 翠 新なるが如く
年後皆為賀歳人。 年後 皆なる、賀歳の人
富士山纔露尖角, 富士山 わづかに尖角を露はし
東京已是滿城春。 東京 已に是れ 満城の春
作品番号 2017-33
元旦
淑氣汪然旭日紅 淑気 汪然 旭日紅たり
元朝天地太平風 元朝の天地 太平の風
兒孫帰省皆無恙 児孫帰省して 皆恙無く
一族團欒笑語同 一族 団欒 笑語同じうす
作品番号 2017-34
年頭詠言
迎新紫気溢乾坤 新を迎えて紫気乾坤に溢れ
沐浴剃髭盥水温 沐浴剃髭 盥水温かなり
武水清流歩朝渚 武水清流 朝渚を歩し
冑山屹立拝初暾 冑山屹立 初暾を拝す
邦家安寧庶民喜 邦家安寧 庶民喜ぶも
殊域紛争兵卒屯 殊域は紛争して兵卒屯す
四海英知須盡力 四海英知 須く力を盡べし
一歌板蕩漫危言 板蕩を一歌して 漫に危言す
「板蕩」: 世が乱れる 『詩経』
「危言」: 国政に対して浴びせられる民間の批判の声のこと。
作品番号 2017-35
応制 詠「野」
野遊焼筍摘芹蓀 野遊筍を焼いて 芹蓀を摘み
春日踏青草色暄 春日青を踏めば 草色暄かなり
除却秋天易悽切 除却す 秋天悽切になり易きを
緑蕪千里爽心魂 緑蕪千里 心魂を爽かにす
「秋天曠野行人絶 馬首東来知是誰」 王昌齢「出塞行」
作品番号 2017-36
謹賀新年
即即光陰走 即即 光陰走り、
無家祝賀間 家に祝賀の間無し。
寒風吹短髪 寒風 短髪を吹き、
渾欲作詩閑 渾て作詩の閑を欲す。
作品番号 2017-37
迎春(交流詩)
訪來神域拝年朝 訪ね来たる神域 拝年の朝
旭日瞳瞳千里遙 旭日 瞳瞳 千里 遙なり
無病息災唯一禱 無病 息災 唯一の祷
巫祝妙舞太平描 巫祝 妙舞 太平を描く
「神域」: 神社
「拝年朝」: 初詣
「瞳瞳」: 朝日の明るいさま
「巫祝」: 巫女さん
「妙舞」: 美しい舞
神社への初詣 能舞台での巫女さんの
五穀豊穣 万民の平穏を祈るが如く舞でした
今年も無病息災の一年であります様に。
作品番号 2017-38
迎春
晨鶏氷解対晴空 晨鶏 氷解け 晴空に対す
万戸門松淑気通 万戸 門松 淑気通ず
一去寒波春盎盎 一去する 寒波 春盎盎
屠蘇快飲太平風 屠蘇 快飲し 太平風
作品番号 2017-39
迎春
丁酉三朝立志新 丁酉三朝 立志新たなり
健全感謝賀正人 健全に感謝 賀正の人
尋花訪景鳥翔處 花を尋ね景を訪うて 鳥翔る処
求句清遊待嬉春 句を求めて清遊す 嬉春を待つ
作品番号 2017-40
愚老丁酉歳旦
平成丁酉九秩年 平成 丁酉 九秩の年
瑞氣盈庵籬落邊 瑞気 籬落の辺 庵に盈つ
唯唯健康謝神佛 唯唯 健康 神仏に謝し
一心清淨托吟箋 一心清浄を 吟箋に托さん
作品番号 2017-41
新年偶作(一)賀状交歓
知己勿辭天地春 知己 辞する勿れ 天地の春
年年歳歳白於銀 年々 歳々 銀よりも白し
先師朋輩傷心訃 先師 朋輩 傷心の訃
爾後爾今誰與親 爾後 爾今 誰と与にか親しまん
薄墨の愈々増えし去年今年
作品番号 2017-42
新年偶作(二)築地問題
築地問題歎隔年 築地 問題 隔年を歎ず
是非誰識世多賢 是非 誰か識らん 世に賢多し
論難相似辺野古 論難 相似たり 辺野古
離島東都豈偶然 離島 東都 豈偶然ならんや
初競りや移転問題の声潜む
作品番号 2017-43
迎春
歳朝門巷五雲新 歳朝の門巷 五雲新た
物換星移幾度春 物換り 星移り 幾度の春
和気揚揚児孫健 和気揚揚として 児孫健なり
双親一句入佳辰 双親一句 佳に入るの辰
元旦世間はすべてが新しい
時代が移り世の中が変わって幾年か過ぎた
子や孫は元気揚々としている
親は一句を作って悦に入っている
作品番号 2017-44
迎春(丁酉歳旦)
東風麗日早梅披 東風の麗日早梅披き
依舊幽香傳歳時 旧に依り幽かに香る 歳時を伝ふ
芳酒幾杯愉醉興 芳酒幾杯 酔興を愉しみ
陶然鄙老入新詩 酔郷の鄙老 新詩に入りたり
今年の正月三ケ日は好天気がつづき
お屠蘇気分で力まずに先づは新年の一作目を・・・・
平和な風景でしたが、世界各地からはテロや暴動のニュースが届き不穏な足音を感じます。
作品番号 2017-45
迎春(星夜)
餘寒茅屋獨深宵 餘寒の茅屋 独り深宵
窗外星辰慰寂寥 窓外の星辰 寂寥を慰む
十里無風無月夜 十里風無く月無きの夜
光芒累累一天遙 光芒累累 一天遙かなり
立春は過ぎても夜空は星が美しい
冬の寂しさの侭に・・・・・
作品番号 2017-46
迎春
初旭紅雲現碧霄 初旭 紅雲 碧霄に現れ
東風拂坌瑞祥漂 東風坌を払ひ 瑞祥漂ふ
青州從事迎茅屋 青州の従事 茅屋に迎へ
椒酒心機轉一朝 椒酒 心機一朝に転ず
今年は天候にも恵まれ幸先の良い正月でした。
銘酒を手に入れ、大いに飲み、楽しい気分に浸りました。
作品番号 2017-47
丁酉新年作
銀髭頻拈米齡人 銀髭 頻りに拈る 米齢の人
人日炊文烹字新 人日文を炊しぎ字を烹ること 新なり
顧慨荊妻已同老 顧みて荊妻を慨かしめ 已に同に老ゆるも
可愉貧計一瓶春 貧計 一瓶の春を愉しむべけんや
作品番号 2017-48
喜迎新春
新春祥瑞溢乾坤 新春の祥瑞 乾坤に溢れ
歳旦風光初計存 歳旦の風光に 初計存す
天候温和迎旭日 天候は温和にして 旭日を迎へ
皇居參賀祝慶旛 皇居の参賀に祝慶の旛
作品番号 2017-49
連日期聽訥鶯
少嘉無日不期鶯
陋巷却愉虚隱名
山寺東林招客意
鄙邦南麓待春情
安居禁足破三笑
緩杖寛心持獨行
簞食單瓢栽一柳
惺惺唯欲畢殘生
作品番号 2017-50
七十五翁迎春書懷
百八鐘聲聞枕前 百八の鐘声 枕前に聞く
鳥飛兔走又新年 鳥飛兔走 又新年
人生百歳不能得 人生百歳 得る能はず
馴悩親煩擬地仙 悩に馴れ煩に親しみ 地仙に擬せん
作品番号 2017-51
新年作
初光燦燦映青空 初光燦燦として青空に映じ
春意歡迎瑞靄中 春意歓び迎ふ 瑞靄中
醉客陶然遊歩處 醉客陶然 遊歩の処
旭旗齊靡太平風 旭旗斉しく靡く 太平の風
作品番号 2017-52
新年雜感
學史思今遠俗塵 史に学び 今を思へば 俗塵遠く
洋洋四海入佳辰 洋洋たる四海 佳辰に入る
滄桑世上風雲斂 滄桑とした世上 風雲斂め
新暦迎來老大春 新暦迎へ来たる 老大の春
作品番号 2017-53
新年作
拾年多病倍身衰 拾年多病 倍す身は衰え
爲却奮心傾好奇 却って心を奮はす為に好奇に傾く
七十七羞戔益世 七十七 世に益すること戔(すくな)きを羞づるも
猶須炳燭作明時 猶ほ炳燭を須(もち)ひて明と作す時
作品番号 2017-54
勅題「野」
新正鳥喜麗初陽 新正 鳥喜びて初陽麗し
有信舊朋懷故郷 旧朋より信有りて故郷を懐ふ
往歳水災侵曲岸 往歳の水災 曲岸を侵す
禱祈再會野梅香 再会を祷祈して野梅の香し
作品番号 2017-55
啓泰平
曙光滄海東 曙光 滄海の東
萬戸盡春風 万戸 尽く春風
應見泰平啓 応に泰平の啓くなるを見るべし
一天淑氣充 一天 淑気充つ
作品番号 2017-56
新年作
鶏聲告旦歳華新 鶏声旦を告げ 歳華新た
松竹呈鮮天壌春 松竹鮮を呈し 天壌の春
白屋門前無轍跡 白屋の門前 轍跡無く
凌寒半禿醉香醇 寒を凌ぐ半禿 香醇に酔ふ
作品番号 2017-57
新春茗溪聯句作一律
雪華萬點落東京, 雪華萬点 東京に落ち,
飛鳥遙觀林外驚。 飛ぶ鳥 遙かに林外を観て驚く。
醉叟醒看樓影暗, 醉叟 醒めて看るに樓影暗く,
美人獨佇鏡池明。 美人 独り佇む 鏡池の明るきに。
莫道詩詞必言志, 道(い)ふ莫れ 詩詞は必ず志を言ふと,
但求字句盡含情。 但(ただ)に求む 字句の情を含み盡すを。
春光普照武陵地, 春光 普く照らす武陵の地,
桃李梅櫻花縱。 桃李梅櫻 花は縱。
<解説>
私が所属する漢詩結社「葛飾吟社」の新年会は、新年の挨拶と飲み食いだけではつまらないということで
毎年、柏梁体の詩をみんなで詠んでいます。
今年はそれに加え、七言律詩をみんなで連句で作ってみようということで詠んだのが上掲作です。
天気予報では、雪が降るかも ということで
まず、陳興さんが
雪華萬點落東京,飛鳥遙觀林外驚。(陳興)
続いて私が
醉叟醒看樓影暗,美人獨佇鏡池明。(鮟鱇)
そして紫陌青猫さんが
莫道詩詞必言志,但求字句盡含情。(青猫)
最後に田旭翠さんが
春光普照武陵地,桃李梅櫻花縱。(旭翠)
この作品、いちおう四人が各二句を詠んだことにしてありますが、
実はみんなでワイワイガヤガヤと作ったものです。
四人の名はそれぞれの二句についての編責みたいなものです。
作品としては
私の詠んだ二句が陳興さんの句をしっかり咀嚼して詠んでいるとは言い難いこと
また、末句の櫻は冒韻であることに誰も気がつかなかったこと
など、問題はありますが、
みんなでわいわい言いながら詩を作るのはとても楽しく
一人で作ることだけが詩ではない、とつくづく思いました。
なお、題にあります「茗溪」は、東京お茶の水界隈のことで、葛飾吟社は月一回の例会をお茶の水で開いています。
作品番号 2017-58
迎新年
耕植遊山保健康 耕植 遊山 健康を保つ
唱吟描画冀清香 唱吟 描画 薫香を冀(こいねが)ふ
凝望天地窺時世 天地を凝望し 時世を窺ひ
心耳傾聽㩳脊梁 心耳傾聴して 背梁を㩳(そばだて)ん
作品番号 2017-59
迎春(一) 四季不欺
干支七度祝三朝 干支 七度 三朝を祝す
麗日殘寒暖尚遙 麗日 残寒 暖尚遥かなり
四季不欺千載事 四季 欺かず 千載の事
香魂黄鳥爲誰招 香魂 黄鳥 誰が為に招かん
花鳥風月夫々出番ありて春
作品番号 2017-60
迎春(二) 成人之日
幾星霜過少年時 幾星霜 過ぐ 少年の時
已老無功未成詩 已に老ゆ 功無く 詩未だ成らず
何料迎春猶料峭 何ぞ料らんや 迎春 猶料峭なり
梧桐最是天下知 梧桐 最も是れ 天下知る
尽く梧葉落ちし侭春迎ふ