作品番号 2017-271
豊田煙火
斜陽既落坐河原 斜陽 既に落ち 河原に坐す
夜色漫漫刻待屯 夜色漫漫 刻待ち屯する
煙火開天瞬間燿 煙火 天に開き 瞬間の燿き
毎來詩客樂芳樽 毎来の詩客 芳樽を楽しむ
<感想>
仕上がっていますので、あとは結句の「毎」が必要かどうかですね。
つまり、作者の説明としては「いつも来ている」ということでしょうが、花火の感動や酒を飲むことと「毎年来ている」ということが関わるかというと、やや疑問が残ります。
例えば、「遠來旅客」ではどうなのか、「陶然」など詩人の気持ちを表す言葉を入れてみるなど、今後の推敲を楽しんで下さい。
2017.12.28 by 桐山人
作品番号 2017-272
初夏即事
麥秋白雨暮煙村 麦秋の白雨により暮煙の村
長夏蟬鳴農事繁 長夏 蝉が鳴き 農事繁し
青蜩暮色先忘暑 青蜩 暮色 先づ暑さを忘る
三伏碧花燕語喧 三伏 碧花 燕語喧し
<感想>
「麦秋」は陰暦四月、「長夏」は陰暦六月で晩夏、「三伏」も夏の終わりですので、季節が合いませんね。
蝉や燕が出てきますので、「初夏」はやめて「夏日即事」としましょう。
その他に矛盾するのは、「白雨」と激しい雨が降っているのに「暮煙」、また「蝉鳴」も雨ではおかしくなります。「暮」の字も重複していますね。
さて、そうなるとまず起句ですが、「麦秋」も「白雨」も使えないとなると、場面が浮かび上がってきません。
「夕暮れの靄のかかった村」に何があるのか、とりあえず、「黒乱塩」という形にしておきますが、作者のイメージを広げた物を入れてください。
承句はこれで良いでしょう。
転句は前に「蝉」が出ていますので、また同じようなものを出すのは疑問です。
「先」も何がどうして「先」なのかわかりませんので、暑さを忘れさせてくれるものを入れてください。「暮」の字は使えないのと、二字目を仄字、四字目を平字にすることが大切ですので、ご注意を。
結句は二字目と六字目を平字、四字目を仄字にする「平句」でないといけませんので、「碧花三伏燕声喧」と入れ替えておきましょうか。
2017.12.28 by 桐山人
作品番号 2017-273
晩秋書懷
孤雲風冷見秋毫 孤雲 風冷し 秋毫を見る
薄暮孤村細路高 薄暮 弧村 細路高し
夕陽山野秋將暮 夕陽の山野 秋が暮れる将に
老去悲愁強自號 老い去って悲愁 強いて自から号ぶ
<感想>
「孤」と「秋」が重複していますね。
「細路」が「高」というのは場面が目に浮かびません。「高」は起句に持ってきて、「一天高」として、承句の方は「薄暮寒村細路蒿(よもぎ)」でしょうか。
転句は「秋將盡」で重複を避けましょう。
結句は何故「號」なのかが分からないですが、叫びたい時もあるのかな?ということでしょうかね。
そうしておいて、結句が決まると、二字目が仄声なので、この詩は仄起こりの詩になりますので、起句と承句を入れ替えておきましょうか。
2017.12.28 by 桐山人
作品番号 2017-274
夏景色 長良川
滿天星彩玉晶晶 満天の星彩 玉晶晶たり
漁火光炎照水明 漁火光炎し 水を照らして明かし
承守百年傳統技 承守百年 伝統の技
操鵜手快客人驚 鵜を操る手快 客人驚く
<感想>
鵜飼いは現代の中国でも行われている漁法です。
全体に無理なく作られていますし、前半の景色も具体的で良いですね。
承句については、「光炎」が気になります。起句で光輝く美しさは出していますので、こちらは水上のこととは言え、同じような印象になります。
「漁火多多」のように、数を表すような形が良いかと思います。
転句は「百年」が短いように思います。ここは「千年」で良いと思います。
結句の「客人驚」は悪くはないですが、面白みはありませんね。
「客人」も作者自身なのか、行楽客なのか、すっきりしません。
韻字を替えて、「声」で終るような形、例えば「聚歓声」などで考えてはどうでしょうね。
夏景色 長良川
滿天星彩玉晶晶 満天の星彩 玉晶晶たり
漁火多多照水明 漁火多多 水を照らして明かし
承守千年傳統技 承守千年 伝統の技
操鵜手快聚歡声 鵜を操る手快 歓声を聚む
作品番号 2017-275
早秋有感
颱風一過入新秋 台風一過 新秋に入る
切切蟬吟不暫休 切切と蝉吟 暫くも休まず
日暮丹霞邀夜月 日暮れて丹霞 夜月邀える
茫茫宇宙絳河流 茫々たる宇宙 絳河流る
<感想>
読み下しについては、承句は「蝉吟」につなげるならば「切切たる蝉吟」、あるいは「切切と蝉吟じ」と「吟」を名詞にするか、のどちらでしょう。
転句は「邀える」でなく「邀ふ」「邀へ」ですが、ここは「邀ふ」でしょう。
後半は「丹霞」「夜月」「絳河」と空に関わる語が続きますが、夕暮れから夜へと、秋のつるべ落としの趣を狙ったものですね。秋の月夜で天の川、というのがやや気になりますが、時間の流れを表すとして、これで良いと思います。
そうなると、ややくどく感じるのが「宇宙」で、吹いている風の様子とか作者が何をしているのかとかを描いた方が良くなると思いますよ。
早秋有感
颱風一過入新秋 台風一過 新秋に入る
切切蟬吟不暫休 切切たる蝉吟 暫くも休まず
日暮丹霞邀夜月 日暮れて丹霞 夜月邀ふ
書窗涼氣坐孤愁 書窓の涼気 孤愁に坐す
作品番号 2017-276
晩秋
凄清萬頃白雲高 凄清 万頃 白雲高く
錦繡山遙揮彩毫 錦繍の山遥か 彩毫を揮ふ
古暦立冬霜信早 古暦 立冬 霜信早し
嘯風弄月酒陶陶 嘯風 弄月 酒陶陶
<感想>
詩にまとまりが出るようになってきましたね。
特に結句はとても良い句です。
難点は「晩秋」なのに「立冬」はこれは疑問です。
また、「古暦」もニュースなどで「昔の暦で言えば今日は立冬です」と話されるのが浮かんだのかもしれませんが、「立冬」「立秋」などの節季はもともと旧暦でのことですから、わざわざ「古暦」と入れる必要はありません。
これで二字浮きましたね。
また、立冬の前に「霜降」という節季がやはりありますので、「立冬霜信早」は当たり前と言えば当たり前。
ありきたりですが、例えば「今歳晩秋霜信早」と言う流れならば、きせつてきにはすっきりしますが、ご検討下さい。
2017.12.28 by 桐山人
作品番号 2017-277
夏日即事
疎水群鯉遊泳存 疎水に群鯉 遊泳存す
石上龜居不動屯 石上亀居て 屯して動かず
往古赤貧魚捉食 往古 赤貧 魚を捉へて食す
勤勞終日道吾尊 勤労 終日 吾道尊し
<感想>
起句は「遊泳」という言葉と「存」がすっきりしませんね。「遊泳繁」の方が良いでしょう。
あと、「水」は仄声ですので、取りあえず語順を替えて「鯉魚疎水」としましょう。
承句も下三字、「不動」と「屯」が逆ですね。読み下しのように「屯不動」の並びならば分かるのですが。
「屯」は動作を表す言葉ですので、「不動屯」は「動かないまま集まって(動いて)きた」という奇怪な行動をしたことになります。押韻の関係で文法を破ることはありますが、漢詩は上から順に読みますので、意味がおかしくなるのは良くないですね。
動作を表す「屯」よりも、存在を示す「存」が適するでしょう。
そうなると、同じように存在を示す「居」が邪魔になりますので、こちらも先ほど削った「群」を復活させて「群龜」としましょう。
転句からはやや疑問です。魚は古来から食べていますから、ここは「自分で川に入って」ということでしょうが、それでも「赤貧だから」というのはどうでしょう。また、泳いでいる鯉を見て、魚を捕っていた昔を思い出した、というのも、目の前の鯉を食べたくなったという感じで気になります。
起句承句で生き物を出しましたので、転句では夏の川沿いの風景や植物などを出し、結句で「のんびりとした時間を得ている喜び」という展開ではどうでしょうか。「懷昔……」で始める形でしょうかね。
結句の「道吾」は「吾道」となるのは苦しいですね。
ということで、後半を再考してみましょう。
2017.12.28 by 桐山人
作品番号 2017-278
晩秋書懷
田園黄稲朝陽高 田園 黄稲 朝陽高し
碧葉丹楓著錦袍 碧葉 丹楓 錦袍を著す
群舞川鵜嘗不見 群舞の川鵜 嘗て見ず
暮秋散策快哉號 暮秋の散策 快哉号ぶ
<感想>
前半は沢山の色が出ていて、鮮やかですね。
起句は「田園」でも良いですが、「園田」「郊田」と「田」の字が下に来た方が「黄稲」に合いますね。
承句は「碧葉」と「丹楓(葉)」の組み合わせに面白さを感じたならば良いですが、「錦袍」と来てますから主眼は「丹」、「碧」はどうも邪魔になります。
同じ色になってしまいますが、「霜葉」と持ってきて、句としてまとまりを出してはどうでしょう。
転句は「川鵜が昔は居なかった」ということですが、だからどうなのか、ということがわかりません。「川鵜」はこの秋景に邪魔だと思っているのか、喜んでいるのか、結句にその答があるならば良いのですが、そうではないので疑問が残ったままになります。
ここは下三字を直してもう少し言葉を添えるか、あるいは秋の景として更に川鵜以外の何かを加えるか、だと思います。
結句はこれで良いですので、「快哉を号ぶ」くらいの良い景色になるように、転句を検討してみましょう。
2017.12.28 by 桐山人
作品番号 2017-279
夏日雜詠
亂蟬嘒;嘒滿郊園 乱蝉 ;嘒;嘒 郊園に満ち
連日炎蒸欲斷魂 連日の炎蒸 魂を断たんと欲す
夏午敢爲池畔歩 夏午敢へて為す 池畔の歩
荷香鮮艶忘塵煩 荷香鮮艶 塵煩を忘る
<感想>
転句の読み下しは、書きましたような「夏午 敢へて為す 池畔の歩(ほ)」と考えていましたが、甲賀さんが書かれた「夏午 敢へて池畔に歩すを為し」でも間違いではありません。読んだ時のリズムの違い、「池畔歩」の軽重の違いでしょう。
その他に、「午下覓涼池畔歩」「夏午敢歩池水畔(緑池畔)」なども考えられます。
結句は「香」にすれば「ハスの香りが鮮やかであでやか」、「花」にすれば「花が鮮やかであでやか」となります。
「鮮」と「艶」を別々のものに使うわけではありませんので、「花」か「香」か、どちらが甲賀さんの心に残ったかですね。
両方とも、ということでしたら、「花鮮香艶」と互文にしても良いでしょう。
ただし、その場合には何の花か分からないので、転句を「午下荷池索涼歩」のように「ハスの花」がわかるようにする必要がでてきますね。
2017.12.28 by 桐山人
作品番号 2017-280
晩秋江畔
日暮蘇堤影遁逃 日暮の蘇堤 影は遁逃し
荻花黄葉戰江皐 荻花 黄葉 江皐に戦ぐ
夜昇水閣仰明月 夜 水閣に昇り 明月を仰げば
千里飛來鴻雁號 千里飛来して 鴻雁号く
<感想>
全体によくまとまっていますね。
承句は、上が「荻」、下が「黄」となっていますが、対応させるなら「霜葉」と色を削った方が良いでしょう。
転句は時間経過を表すために「夜」を入れたと思いますが、木曽三川公園の138タワーという高い所に上ったので、「一宵登閣」でどうでしょうね。
結句もしっかりまとめていると思います。
2017.12.28 by 桐山人
作品番号 2017-281
初夏好景
山静清晨垂柳村 山静かにして清晨 垂柳の村
碧雲映水亂蛙喧 碧雲水に映え 乱蛙喧し
窗前滴翠忘塵事 窓前 滴翠 塵事を忘る
風爽閑吟至樂存 風爽やかにして 閑吟 至楽存す
<感想>
全体によくまとまっていて、そんなに大きな修正は必要無いですね。
少し言葉を入れ替えて
初夏清晨垂柳村 初夏 清晨 垂柳の村
碧雲映水亂蛙喧 碧雲水に映え 乱蛙喧し
前山滴翠忘塵事 前山 滴翠 塵事を忘る
樹下閑吟至樂存 樹下 閑吟 至楽存す
転句は「滴るごとく翠」なのは「窓前」ではなく、その向こうの山でしょうから、「前山」としましたが、「連山」「遠山」などでも良いですね。
結句は、この詩の場面を部屋の中からの景ではなく、歩き回っての景としたわけですが、承句の描写からはその方が良いかと思いました。
2017.12.28 by 桐山人
作品番号 2017-282
彼岸花
夕陽雲映鳥聲高 夕陽 雲に映え 鳥声高し
秋氣飄飄覆濕皐 秋気 飄飄 湿皐を覆ふ
千丈河堤人獨歩 千丈の河堤 人独り歩す
朱華爛漫似波濤 朱華 爛漫 波濤に似たり
<感想>
起句は「雲映」ですと「雲は映じ」となります。上二字と入れ替えて、「映雲夕日」とすれば良いですが、下三字への流れを考えるとあまりしっくりしません。
「映雲夕日」ですと「映雲」は夕陽を修飾した言葉になり、結局「夕日が、鳥の声が高い」となり、主語が二つあるような形です。
原案の方が自然な表現で、平仄を合わせるとずれてしまうという例ですね。
ではどうすると落ち着くか、ということになりますが、ここは「夕(暮)雲映日」と入れ替えるか、「彩雲夕日」と名詞を二つ並べて空の景色を言うか、ですね。
承句の「飄飄」は「秋風」ならば合いますが、「秋氣」では疑問です。「蕭然」「蕭條(条)」などの語にするか、中二字に「秋風」を持ってくるかですね。
転句は下三字が苦しい表現で、「人」は必要かどうか、この「河堤」に何か前に動物とか植物が描かれていれば、それに対して「人は」と言えるのですがね。
ということで、ここは「独りで」ということを強調するならば「獨閑歩(独り閑かに歩す)」と挟み平にしてはどうでしょうか。
「独りで」なくても良いなら、「人影少(人影少(ま)れなり)」
結句は、花が「曼珠沙華」ですので、「爛漫」よりも「滿地」「滿畔」「滿滸」などが良いでしょう。
2017.12.28 by 桐山人
作品番号 2017-283
初夏好景
草色嵐光野水郊 草色 嵐光 野水の郊
銜泥春燕積新巢 銜泥 春燕 新巣を積む
散策小徑清風夕 散策 小径 清風夕
朶朶藤花天地包 朶朶 藤花 天地を包む
<感想>
起句は「草色青青野水郊」で良いと思います。
承句はまとまりもありますので、読み下しを「泥を銜む春燕」としておけば良いです。
転句は平仄を間違えましたね。
「小径」とあれば実は「歩」や「散策」の言葉は要らないので、ここは「深閑」のように「小径」の形容を入れると良いと思います。
結句は、藤の花が「天地包」とするのは大げさに感じます。
「朶朶」を「萬朶」とすれば、何とか収まるかな、と思います。
初夏好景(推敲作)
草色青青野水郊 草色 青青 野水の郊
銜泥春燕積新巢 銜泥 春燕 新巣を積む
深閑小徑清風夕 深閑たる小径 清風夕
萬朶藤香天地包 朶朶 藤花 天地を包む
作品番号 2017-284
晩秋
清秋散策鳥聲高 清秋 散策 鳥声高し
朝露侵肌巻客袍 朝露 肌を侵し 客袍を巻く
小徑無人田舎趣 小径 人無く 田舎の趣
黄紅楓樹散風濤 黄紅 楓樹 風濤に散ず
<感想>
起句と結句に「散」がありますので、この重出は解消しなくてはいけません。
「散策」は状況説明として残して、結句の方を検討しましょう。
なお、冒頭は「清秋」よりも「秋山」「秋林」の方が良いですね。
承句は「露が肌を侵す」というのは疑問で、夏の朝なら裸足でも歩きますが、晩秋の季節に露が肌に触れるような素足で散策をするとは思えません。靴下、靴を履くでしょうね。
下三字の「巻客袍」は「旅の服を巻く」ということで、「客衣を包みこむ」「眠りに就く」などを表す言葉ですから、雪や風なら良いですが「朝露」には合わないので、「濡裙侵客袍」というところでしょう。
転句ですが、「田舎趣」がどんな感じなのか、よくわかりません。
「幽寂趣」「閑寂季」などが代替案ですね。
結句は「楓樹」でなく「楓葉」とし、「散」を「舞」「落」にしておけば良いでしょう。
2017.12.28 by 桐山人
作品番号 2017-285
夏日偶吟
河畔逍遙草色暄 河畔 逍遙すれば 草色暄なり
学生斷續二輪奔 学生断続して 二輪奔る
轟音車輛過頭上 轟音 車輌 頭上を過ぐ
君與連吟至樂存 君と連吟 至楽存す
<感想>
仁山さんとご夫婦で、講座にも一緒にお見えになり、いつも仲良しのお二人です。
この詩もお二人で朝の散歩、一緒に吟をしていらっしゃることを詠んだ詩ですが、部分的な修正で良いと思います。
承句は「学生」「二輪」が詩語としてどうかということで、例えば「銀輪堤上學徒奔」のような形も考えられます。
ただ、転句にも「車輌」が出て来ますので、ここは「堰堤斷續學徒奔」でも良いかと思います。
転句は「頭上」では突然何が起きたのか心配します。上を高架の道路が走っていることを表したのでしょうから、「架橋上」でしょうか。
結句は「君と」とすると「與君」になります。
ご主人が登場できず残念がるでしょうが、「同唱連吟」として二人で唱うという形がどうでしょう。
題名に「夏日(川上)與君連吟」と残して了解してもらいましょうか。
2017.12.28 by 桐山人
作品番号 2017-286
夏日即事
清夏蒼茫海面平 清夏 蒼茫 海面平らかなり
南風蜃気聽濤聲 南風 蜃気 濤声を聴く
北窗隔竹華胥夢 北窓 竹を隔つ 華胥の夢
形影相憐懷古情 形影 相憐れんで 懷古の情
<感想>
前半は夏の海村の雄大な景色がよく表れています。
後半がやはり繋がり不足、海に来ていて「懷古情」にどうしてなるのか。
また、転句は昼寝の場面でしょうが、これも「懷古情」にどうやって流れるのか疑問です。
となると、転句まではつながっていますので、結句を再考する形でしょうね。
昼寝から目が覚めたら何が見えたのか、そういう視点で考えて行くと良いでしょう。
作品番号 2017-287
晩秋有感
幽眇郷愁連嶺高 幽眇 郷愁 連嶺高し
飛楓曠野蹴雲濤 飛楓 曠野 雲涛を蹴る
陶然窈窕題紅葉 陶然 窈窕 紅葉に題す
俯仰詩壇揮彩毫 俯仰 詩壇 彩毫を揮す
<感想>
起句はとても良い表現ですね。
承句も良いです。
転句は「窈窕」がどういう役割か疑問です。
「窈窕たる紅葉」という形でつながるのでしょうか。
「窈窕」は「幽眇」と意味合いとして似ていますし、句の意味を不明確にしています。
ここは「陶然題紅葉」で十分なところですから、ここには入る言葉が無いわけです。
ということは、もう一つ、発想を広げる必要がありますね。
「陶然忘我醉紅葉」というような形で検討してみてはどうでしょう。
2017.12.29 by 桐山人
作品番号 2017-288
樂夏
風散半鉤照老幹 風散じ 半鉤 老幹を照らす
幽庭苔蘚聽無聲 幽庭 苔蘚 聴けども声無し
透簾螢火侵窓入 透簾の螢火 窓を侵して入る
逢瀬嬉娯古人情 逢瀬を嬉娯しむ 古人の情
<感想>
起句は「幹」では韻が違います。また、四字目の孤平になっていますので、この句は直さなくてはいけませんね。
あとは、承句の下三字、「聴無声」はちょっとわかりにくいので、「寂無声」としてはどうでしょう。
転句は「透簾」と「侵窓」はどちらも場所ですので、ちょっとくどいですね。螢の形容が二つ並んでいる形ですので、どちらかを削る方向ですね。
結句は「人」が平仄が合いません。ここを修正しましょう。
2017.12.29 by 桐山人
作品番号 2017-289
初夏田園
禾花點點水田發 禾花は点点として 水田に発き
乳燕頻頻簷宇翻 乳燕は頻頻として 簷宇に翻る
孤叟揮鎌巡畔路 孤叟は鎌を揮って畔路を巡り
兒曹抱網止泉源 兒曹は網を抱いて泉源に止まる
<感想>
全対格は内容や表現が単調になりがちですが、この詩の場合は内容的に変化を出していて良いと思います。
ただ、どの句も上二字が主語になっているために、表現としては同じリズムが続きます。
また、起句の「水田發」も「簷宇翻」もどちらも本来は「發水田」「翻簷宇」の倒置表現です。
直すならば、後半を
耕耨野翁巡畔路 耕(こう)耨(どう)の野翁 畔路を巡り
綸竿兒輩止泉源 綸竿の兒輩 泉源に止まる
というように変化させると面白くなると思います。
2017.12.29 by 桐山人
作品番号 2017-290
季夏偶感
開花稲穗滿田園 開花の稲穂 田園に満つ
野叟時能水路蹲 老叟 時に能く 水路に蹲る
豈忘李紳憫農句 思ひ起こしたり 李紳の農を憫むの句
碗中一粒苦辛痕 碗中の一粒 苦辛の痕
<感想>
承句の「時能」はどういう意図か、疑問が残ります。
「時」を用いる熟語は沢山在りますから、「応時」「随時」「時時」などで、内容にすっきりと合うものを選んではいかがでしょうか。
転句は反語表現が、詩を力強くしていると思います。
2017.12.29 by 桐山人
作品番号 2017-291
群松晴嵐
早晨草露濕行装 早晨の草露 行装を湿す
任歩上來鱗甲岡 歩に任せて上り来たる 鱗甲の岡
朝靄湖光看眼下 朝靄の湖光 眼下に看る
松冠催霧就嵐揚 松冠は霧を催し 嵐と就りて揚がる
<感想>
承句の「鱗甲岡」というのはよく分からないのですが、「湖畔岡」とかではいけませんか。もしくは地名を入れても良いかと思います。
転句の「湖光」は「水光」としておけば重複は避けられます。
「靄」も「霧」も同じものを指します。また、「晨」と「朝」の重複も気になりますので、光の形容として「燦爛」などをいれてはどうでしょうね。
2017.12.29 by 桐山人
作品番号 2017-292
夏日感懷
南風流汗歩荒園 南風 流汗 荒園を歩す
驟雨涼生日欲昏 驟雨 涼を生じ 日昏れんと欲す
螢火透簾人靜坐 螢火 透簾 人静かに坐す
一杯酌酒遊子魂 一杯の酒を酌んで遊子の魂
<感想>
それぞれの句では大きな問題はありませんが、流れを見た時に、起句はどう見ても昼の景色、承句は夕暮れ、転句は夜という形で、時間経過の順番は良いですが、少し強引な、バラバラな印象を受けます。
つまり、イメージとしては、夏の午後汗をかいていたら急に夕方になって雨で涼しくなり、おやおやと思う内にもう夜になっちゃった、という慌ただしさが残るわけです。
そうなると選択肢は二つで、起句の夏の暑さを控えるか、承句の涼しさを控えるかです。
承句はよく出来ていますので、起句を直すことにして、「流汗」を「夏日」として、時間帯をぼかしてみると、案外すっきりします。
結句の読み下しは「一杯 酒を酌めば」としておくと良いですね。
2017.12.29 by 桐山人
作品番号 2017-293
晩秋山野
紅葉滿林萬里濤 紅葉 満林 萬里の涛
荒徑虫聲山月高 荒径の虫声 山月高し
新寒脈脈斜陽下 新寒 脈脈として 斜陽の下
詩思閑居一筆醪 詩思ひ閑居 一筆の醪
<感想>
起句は「四字目の孤平」になっていること、また、「萬里濤」というには「林」では小さいので直さなくてはいけません。
承句に「山」がありますが、とりあえずここは「連山」としておきましょう。
承句は仄句でなくてはいけません(「反法」)。
上四字は「虫聲荒徑」と入れ替えればよいですが、下三字はどうしましょうね。
「月光高」でも良いですが、次の句に「斜陽下」がありますので、時間的にずれがありますので、ここは「素風高」「暮天高」でしょうか。
転句は良いですね。
結句は「思ひ」と動詞で使うと平声です。また、山の中を歩いていたのに突然「閑居」も気になりますので、「佚老思詩」として自身を登場させておきましょう。
2017.12.29 by 桐山人
作品番号 2017-294
八方尾根
雪溪遠望日黄昏 雪渓 遠望 日は黄昏
紺碧池邊至樂存 紺碧の池の辺り 至楽存す
三径山莊涼世界 三径の山荘は涼世界
忘歸風爽拷A村 忘帰 風爽 緑陰の村
<感想>
「八方」ですか、爽やかな風が感じられる詩ですね。
起句は読み下しを「遠く望み」とした方が良いですね。
承句は「紺碧池辺」と言うと、池が強く出て、池の周りに視界が限定されてしまい、「至楽」が大げさに感じます。
起句も含めての景色にしたいので、「立八方池至樂存(八方池に立ちて至樂存り)」とか、「翠嶂蒼池」などが考えられます。
転句の「三径」は道が三本有ったのでしょうか、事実だとしても数字を入れる意義があるのか疑問ですね。
他の形容詞である「細蹊」「石徑」「斜徑」など色々と考えられると思います。
結句は読み下しを「帰るを忘る 風爽やかな拷Aの村」としておくと良いでしょう。
「拷A」がやや狭い気がするので、ここに八方を持ってきて「八方村」としても良いですね。
2017.12.29 by 桐山人
作品番号 2017-295
初夏好景
雨餘苔逕歩東郊 雨余の苔逕 東郊を歩す
花氣夏椏V地包 花気 夏栫@天地を包む
蛙吹午雲梅雨近 蛙吹 午雲 梅雨近し
燕飛探餌作営&$24034; 燕飛び 餌を探し 営巣を作す
<感想>
起句で「雨上がり」と言っていますので、転句の「梅雨近」が気になりますね。「碧青」と苔を説明しておくのが良いですね。
承句は「花気」ですと春の感じがします。「花落」として、「夏薫」も「南薫」が良いと思います。
転句は「蛙吹」がどうしたのかが出ていません。「午雲」は「梅雨近」とは関係ありませんので、「蛙吹數聲」「遠響蛙聲」などとしてはどうでしょうね。
結句は「探餌」と「営巣」は場所が違いますので、同時には見にくいですね。
「飛來雙燕」としておくと、句がおさまりがよくなります。
2017.12.29 by 桐山人
作品番号 2017-296
夏日即事
炎威風止自無言 炎威 風止み 自ら言無し
拷A涼求入寺門 緑陰に涼を求めて 寺門に入る
苔徑猶眠人不見 苔径に猶ほ眠り 人見えず
杖音靜歩蟬聲喧 杖音静かに歩くも 蝉の声喧し
<感想>
平仄では、承句の「陰」は平字です。結句が下三平になっていますので、ここは直しましょう。
起句は「炎威」と下五字がつながりにくいので、「軒檐」、あるいはいっそ「檐鈴」としてもよいですね。
承句は語を入れ替えて「求拷A涼(緑陰に涼を求めて)」で良いですが、「緑陰の涼」と訓じても構いません。
転句は「眠」ですと「歩きながら眠った」ことになりますので、作者の意図がつかみにくいのですが、とりあえず、「苔徑無人清淨境」でどうでしょうか。
結句は「音」と「聲」を対比させての狙いですね。
蝉の声がやかましい中で「杖の音」がどう聞こえたか、ということになりますが、「杖音閑寂午蟬喧」「杖音一響暮蟬喧」などでしょうか。
2017.12.29 by 桐山人
作品番号 2017-297
晩秋書懷
黄金揺落目前遭 黄金の揺落 目前で遭ふ
斜日秋陽美景褒 斜日 秋陽の美景を褒む
頭上一枝殘柿実 頭上の一枝 柿実残り
迷禽悲愴探親號 迷禽 悲愴 親を探して号ぶ
<感想>
起句は良い句ですね。
承句は「斜日」と「秋陽」が重なるのと、「美景」が詩語らしくないですね。
「秋日斜陽清麗褒」というところでしょうか。
転句は「柿」と言えば「実」を表しますので、「殘柿絳」が良いでしょう。
結句は「悲愴」が結論を早く出し過ぎで、これは読者が感じ取るようにするところですね。
また「探」は平字の用法がほとんどですので、ここは下三平になります。
「迷禽叫叫索親號」でしょうかね。
2017.12.29 by 桐山人
作品番号 2017-298
初夏即事
南風新葉緑陰繁 南風新葉 緑陰繁し
聒聒蝉吟坐小軒 聒聒たる蝉吟 古軒に坐す
修昼午余入夢喧 修昼 午余 夢に入りて喧し
徒然随意自無言 徒然 随意 自ら言無し
<感想>
起句は「新葉」は結局は「緑葉」ですから、下の「緑陰」と重なります。ここは「清爽」として風の形容にした方が良いでしょう。
承句は良いですが、この蝉の声が昼寝の中に聞こえてくると言うことですね。
その転句ですが、最後の「喧」は韻字ですので、使えません。また、四字目の孤平になっていますので、この下三字は変更しなくてはいけませんね。
作者に考えていただけば良いですが、例えば「○夢裡」として、どんな夢かを考えてみてはどうでしょうね。
結句は「徒然」ではなく「悠然」の方がこの場面には合うと思います。
2017.12.29 by 桐山人
作品番号 2017-299
陸奥晩秋
西風黄葉覆湿皐 西風 黄葉 湿皐を覆ふ
陸奥溪橋水為濠 陸奥の溪橋 水濠を為す
野靄皚皚岑似畫 野靄 皚皚 岑画に似たり
崇朝散策冷綿袍 崇朝の散策 綿袍冷やかなり
<感想>
晩秋の陸奥は一足早く冬の気配でしょうね。
平仄で「湿」は仄字、「爲」は「なす・なる」ですと平字、「ため」の時は仄字です。
とりあえず(正しい場面がわかりませんので)、起句は「覆江皐」とし、承句は「碧水濠」としましょう。
起句を「黄葉西風覆湿皐」とし、承句を「溪橋陸奥水為濠」、つまり上二字中二字の語順を替えて、更に起句と承句を入れ替える方法もあります。どちらが良いかは作者が決めた方がよいでしょうね。
後者の場合には、「溪橋陸奥」ですと「陸奥」がぼやけますので、「橋」はやめて、「幽溪陸奥」とした方がよいでしょう。
後半は問題ありませんので、これで良いと思います。
特に「崇朝」の言葉が、「朝飯前のひと時」の趣をよく出していますね。
2017.12.29 by 桐山人
作品番号 2017-301
夕景
雨餘池畔風竹敲 雨余の池畔 風が竹を敲く
埿水玉葩解香包 埿水の玉葩 香包を解く
蛙鼓草叢春已夏 蛙鼓 草叢 春已に夏なり
郷村行暮歩東郊 郷村 行き暮れて 東郊を歩す
<感想>
平仄のことから見ますと、起句は二六対が壊れていて、六字目は平字でないといけません。逆に承句は六字目が仄にならないといけません。
難しい韻字でしたので苦労したのだと思います。課題を出しておいて申し訳ないですが、この内容ならば、起句は下三字を「竹風渉」と踏み落としにした方がすっきりします。
承句は蓮の花を詠みたいということでしたら、もう少し詳しく描きたいところ、まずは「玉葩」を「芙蓉」「紅蓮」とはっきり述べ、下三字を「發玉包」。
下に「玉」を置くなら上に色を出すのを止めて、「埿水新蓮發玉包」というところでしょうか。
転句は「春已夏」はあまりにも大雑把です。「春已去」として、題名を「初夏夕景」と直すべきですね。
結句は良いと思います。
2017.12.29 by 桐山人
作品番号 2017-302
晩秋書懷
柳垂湖畔一茎蒿 柳は湖畔に垂れ 一茎蒿し
棋樹西風覆濕皐 棋樹の西風 湿皐を覆ふ
伝聞舟行簫鼓鳴 伝へ聞く 舟は簫鼓鳴らして行く
瑤池秋醉玉壺醪 瑤池 秋に酔ひ 玉壺の醪
<感想>
起句の「蒿」はよもぎですので、「一茎の蒿」と読みます。
承句の「棋樹」は何かの字の間違いでしょうか。起句に「柳」「蒿」がありますので、植物はもう要らないかなと思いますので、ここは再検討でしょうか。
転句は、上二字は平仄が合いませんので、「聞道(聞くならく)」としましょうか。「舟行」も意味としては「行舟」としておかないといけません。
転句から話がどう動いたのか、古代の長安の宮中でしょうか、それにしても前半の風景は何だったのか、前半と後半が切れているというか、何を言おうとしているのかが分かりません。
それぞれ二句ずつ見ればまあまあ通じるんですけれどね。
前半後半をつなげる方向で検討して下さい。
結句の「秋醉」はおかしく、「秋の醉い」とするか「秋宴」「夜宴」でしょうね。
2017.12.29 by 桐山人