作品番号 2017-01
丁酉元旦(一)無官之樂
太多悲喜丙申年 悲喜 太だ多し 丙申の年
丁酉歳朝詩有縁 丁酉 歳朝 詩縁有り
八秩四齡無官樂 八秩 四齡 無官の楽
高吟醉斷憶從前 高吟 酔断 従前を憶ふ
新玉の年の初めの祝ひ詩
作品番号 2017-02
丁酉元旦(二)守護憲法
丙申丁酉太平光 丙申 丁酉 太平光
劫後人心百事忘 劫後 人心 百事忘る
守護玉條非容易 守護 玉条 容易に非ず
勿辭決意拝年忙 辞する勿れ 決意 拝年忙はし
警世の憲法九条年賀状
作品番号 2017-03
丁酉新年書懷(一)八秩四齡
八秩四齡迎歳時 八秩 四齡 歳を迎ふの時
東風放馥早梅披 東風 放馥 早梅披く
人生萬事恍如夢 人生 万事 恍として夢の如し
一醉滄桑増鬢絲 一酔 滄桑 鬢糸を増す
酉年や八十四才年男
作品番号 2017-04
丁酉新年書懷(二)干支七巡
干支七度歳華回 干支 七度 歳華回る
宇宙無涯人去來 宇宙 無涯 人去り來る
多事多情忘塵俗 多事 多情 塵俗を忘れ
耽吟欲賦奈吾才 吟に耽じ 賦さんと欲すれど 吾が才を奈せん
地動説か天動説か歳巡る
作品番号 2017-05
新春書懐
肥州地割満悲歌 肥州 地割け 悲歌 満ち
三陸颱風毀稲禾 三陸の颱風 稲禾を毀つ
応須忘却昨年禍 応に須からく 昨年の禍を忘却し
偏願今春好事多 偏へに願ふべし 今春 好事多かれと
明けまして御目出度う御座います。
熊本の大地震と東北の台風災害を思い、作りました。
作品番号 2017-06
迎新年
迎新客舎飾門松
陽暦無人打寺鐘
妻子相来団聚楽
他郷何処酒香濃
新年を迎えるにあたり、中国の宿舎にも門松を飾る。
陽暦の新年は中国ではお寺の鐘をつく人がいない。
(このような正月気分がでない中国でも)妻子がもってきた、おせちで団欒を楽しめば、
どこが他郷なのか(ここが故郷になるではないか)酒の香りも濃くおいしいぞ。
門松はミニですが。(笑)
中国は旧正月ですから、あまり元旦気分ではありません。
休みも31日〜1月2日です。
漢詩は折にふれ、書いております。
作品番号 2017-07
迎春
九旬我喜又迎春 九旬を我れ喜び 又春を迎ふ
一醉爲詩答吉辰 一酔 詩を為りて 吉辰に答ふ
華髪頽齡身尚健 華髪 頽齢 身尚を健なり
期頤遐算感更新 期頤の遐算 感更に新たなり
「九旬」: 九十。
「吉辰」: 目出度い朝。
「華髪」: 白髪頭。
「頽齢」: 老齢。
「期頤」: 百歳。
「遐算」: 遥かに数える、長生き。
作品番号 2017-08
卒寿偶感
丁酉迎春感更新 丁酉の春を迎て 感更に新たなり
算齡九十養天真 齢を算ふこと九十 天真を養はん
寺東茅屋希人訪 寺東の茅屋 人の訪ふ希なり
歩歩詩心老大身 歩歩 詩心 老大の身
「丁酉」: 平成二十九年。
「算齢」: 年齢を数える、数え年。
「天真」: 自然のまま、飾り気のない心。
「寺東」: 深大寺東町。
「茅屋」: 愚老宅。
「歩歩」: 一歩一歩。
「希人訪」: 人の訪れが少ない、珍しい。
「詩心」: 詩を理解し、これに趣味を感じる人。
「老大身」:年老いた身、老人。
〇 丁酉の今年、数えて九十才になる。
昭和初年の世代は尋常ならず戦争戦禍に明け暮れ、吾少年にして参戦、敗戦後、衣食住にと諸々苦難に苛まされるも、
戦争や戦災で失った人々の分まで生き延びてよし百歳まで生きようと・・・・・
詩など吟って泰平を喜ぶ今日である。
〇古来より壽賀は数え年で祝うと・・・近年満年齢なるか。
作品番号 2017-09
平成丁酉新年試筆
今日吾生計四旬 今日 吾が生 四旬を計ふも
惑心猶似去年春 惑心 猶ほ似たり 去年の春に
試呵凍筆詩如箇 試みに凍筆に呵せば 詩箇くの如し
足否自稱風雅人 自ら風雅の人と称するに足るや否や
今年になって私も 数えでいえばもう四十
なのに心の惑いよう 去年と変わりありません
試しに筆をあたためて できましたのがこの詩です
風雅の人を名乗るのに これで足りるかどうかしら
明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願い申し上げます。
誕生日は年の後半なので、満年齢でいえば不惑まではまだ2年近く残っている勘定なのですが、
新しい年の初めにあたって、ついいろいろと考えてしまいます。
作品番号 2017-10
丁酉新年(一)
早拂柴門閑迓晨 早に柴門を払ひ 閑に晨を迓へ
心齊一炷先拝親 心齊一炷 先ず 親を拝す
光澄氣洌盈家内 光澄み気洌く 家内に盈ち
翁媼相斟祝肇春 翁媼相斟んで 肇春を祝ふ
先生、新年おめでとうございます。
今年の元旦は全国的に良いお天気で、良い兆しを感じました。
10月の愛知大会、是非行きたいと思っております。
本年も宜しくご教導をお願いいたします。
作品番号 2017-11
丁酉新年(二)
因歳幾多還看春 歳を因ねて幾多 還た 春を看て
春尋草屋又監人 春は草屋を尋ねて 又 人を監る
人生遮莫偸生慘 人生 遮莫 偸生の惨
慘淡獨斟嗤自因 惨淡 独り斟んで 自らの因を嗤ふ
作品番号 2017-12
丁酉新年 観大国動向有感 其一
衆庶旧懐夢未醒 衆庶旧懐の夢 未だ醒めず
雄邦内向索安寧 雄邦内に向かい安寧索む
初頭一着果何奈 初頭の一着 果たして何奈
刮目衰翁忘我齢 刮目して衰翁 吾齢を忘る
生まれ年の干支が七巡して八回目を迎えた時、この一年健全に生きれるかとの不安が過りました。
それから3年、平均寿命を疾うに越して余命を生きている今日、「the end」 を気にせず、何事にも関心、好奇の眼を持ち続けたいとの想いが強くなりました。
作品番号 2017-13
丁酉新年 観大国動向有感 其二
投票選挙旧年揺 投票選挙 旧年揺れ
昔比今非期待潮 昔に比し今は非と、期待潮す
先進国家何向奈 先進国家 向かふは何奈
関心持続加齢銷 関心持続して 加齢鎖さん
作品番号 2017-14
丁酉新年 観大国動向有感 其三
迎拝曙光先頌椒 曙光迎拝 先づ頌椒
息災悦楽硯池邀 息災悦楽 硯池邀ふ
旧年世事好奇夥 旧年世事 好気夥し
排他自私声作潮 排他自私の声潮を作す
作品番号 2017-15
丁酉新年 観大国動向有感 其四(離合詩)
偶否高言排他聯 偶か否か 高言排他聯ねれば
人心熱気一時然 人心の熱気 一時に然ゆ
惹起声援澎湃浪 惹起す 声援澎湃たる浪
若奈先進国家前 若奈んぞ 先進国家の前は
この詩、離合詩。隠し文字を含みます。
作品番号 2017-16
年頭自況
庭梅玉蕾吐清香 庭梅の玉蕾 清香を吐き
山頂朝暉放瑞光 山頂の朝暉 瑞光を放つ
最慶家人身好在 最も慶ぶ家人 身の好在を
一陽来復酒三觴 一陽来復 酒 三觴
何はともあれ健康第一
今年も「百薬の長」を欠かすことなく過したい。
作品番号 2017-17
丁酉初詣深大寺
元朝春氣滿園庭 元朝の春気園庭に満つ
吶吶鶯聲側耳聽 吶吶たる鶯声耳を側だて聴く
世界政情撩亂兆 世界の政情撩乱の兆し
祈求外内共安寧 外内共に安寧を祈り求む
深大寺境内の隅からまだ若い鶯の声も聴けて、平和な風景でした。
しかし、世界各地からテロや暴動のニュースが届き、不穏な足音を感じます。
作品番号 2017-18
昔日新春
梵鐘聲裏一年除 梵鐘声裏一年除(さ)り、
盛饌盤前祝意攄 盛饌盤前祝意攄(の)ぶ。
礼物得收兒不住 礼物収め得たれば児は住(とど)まらず、
風鳶羽子興村墟 風鳶 羽子 村墟に興ず。
「礼物」: お年玉
「羽子」: 羽根つき
作品番号 2017-19
丁酉元旦口占
百八鐘聲掃俗塵 百八の鐘声俗塵を掃ひ、
醒於短夢五雲晨 短夢醒むれば五雲の晨。
三杯椒酒爲藍尾 三杯の椒酒 藍尾を為す、
投老何須事隠淪 投老 何ぞ須ひん隠淪を事とするを。
「隠淪」: 隠遁生活
作品番号 2017-20
迎接丁酉年 其一 五言絶句
金鷄報酉年, 金鷄 酉年を報じ,
白首醒茅庵。 白首 茅庵に醒む。
椒酒清香洗, 椒酒 清らかに香りて洗へば,
詩筆走雲箋。 詩筆 雲箋を走る。
作品番号 2017-21
迎接丁酉年 其二 五言絶句
青女花唇吐, 青女(霜雪の神)の花の唇は吐く,
金鷄報酉年。 金鷄の酉年を報ずるを。
三元忝三酉, 三元(元旦)三酉(酒)を忝くし,
切願世平安。 切に願ふ 世の平安を。
作品番号 2017-22
迎接丁酉年 其三 七言絶句
鳴送神猿歸故山, 鳴いて神猿の故山へ歸るを送り,
金鷄新報曙光鮮。 金鷄 新たに報ず 曙光の鮮やかなるを。
千門萬戸賀春處, 千門萬戸 賀春の處,
但願和平遍宇寰。 但(ただ)に願ふ 和平の宇寰(世界)に遍きを。
作品番号 2017-23
迎接丁酉年 其四 七言絶句
去歳如猿取月啼, 去歳は猿の月を取らんと啼く如く,
今年逞志作金鷄。 今年は志を逞しくして金鷄とならんとす。
高鳴破曉迎新旭, 高らかに鳴いて曉を破り新旭を迎へ,
却老揮毫競好奇。 老いを却(しりぞ)け揮毫し好奇を競はん。
作品番号 2017-24
丁酉迎春偶成 七言律詩
夢叩竅門尋繆斯, 夢に竅門(秘訣)を叩いて繆斯(ミューズ)を尋ね,
恭恭致敬忝金卮。 恭恭として致敬(挨拶)し金卮を忝(かたじけな)くす
霞漿馥郁洗塵垢, 霞漿 馥郁として塵垢を洗ひ,
老叟欣然接睿知。 老叟 欣然として睿知に接す。
悟道舊愚迷贅語, 道を悟るに舊愚は贅語に迷ひし と,
買虚新筆選華辭。 虚を買へば新筆 華辭を選ばんか と。
醒來弟子從調教, 醒め來たれば弟子は調教に從ひ,
鷄犬昇天作好詩。 鷄犬 昇天して好詩を作る。
作品番号 2017-25
迎接丁酉年 其五 漢俳
金鷄破曉鳴, 金鷄 曉を破りて鳴き,
千門萬戸賀春聲。 千門萬戸に賀春の聲。
欣欣頌泰平。 欣欣として泰平を頌(たた)ふ
作品番号 2017-26
迎接丁酉年 其六 漢俳
三元啜三酉, 三元に三酉(酒)を啜り,
吟競金雞與詩友。 吟じて金鷄と競ふ 詩友と。
風流當共有。 風流 まさに共有すべし。
作品番号 2017-27
迎春樂・丁酉新懷
金鷄破曉鳴開朗, 金鷄 破曉に開朗(ほがらか)に鳴き,
白頭醒、喜無恙。 白頭醒めて、恙なきを喜ぶ。
賀新年、 新年を賀し、
笑對良妻諒, 笑って對せば良妻 諒とす,
傾玉盞、誇洪量。 玉盞を傾け、洪量を誇るを。
〇
到正午、遊魂酣暢, 正午に到り、魂を遊ばせて酣暢,
試醉筆、裁詩堪賞。 醉筆を試みて、詩の賞するに堪ふるを裁す。
字眼清輝吉兆, 字眼 清らかに輝くは吉兆,
浩氣充天亮。 浩氣 天の亮(あきら)かなるに充つ。
作品番号 2017-28
賀聖朝・丁酉新年試筆
金鷄旭旦高鳴報, 金鷄 旭旦(日の出)に高らかに鳴いて報ず,
春來蓬島。 春の蓬島に来たるを。
白頭無恙, 白頭 恙なく,
醒來相對, 醒め來って相ひ對す,
愛人花貌。 愛人(つま)の花貌に。
〇
賀年傾酒, 年を賀して酒を傾け,
遊魂試筆, 魂を遊ばせて筆を試し,
染箋多少。 箋を染むること多少。
贅翁思願, 贅翁(隠居の老人)は思ひ願ふ
和平周遍, 和平(平和)周遍(あまね)く,
全球修好。 全球 修好せるを。
作品番号 2017-29
賀熙朝・丁酉新年試筆
朗朗金鷄鳴破曉, 朗朗と金鷄 破曉に鳴いて,
酉年將報, 酉年にまさに報ぜんとす,
蝸居安好。 蝸居の安好なるを。
旭光明耀, 旭光 明らかに耀やき,
醉翁清醒, 醉翁 清らかに醒め,
愛人花貌, 愛人(妻)の花貌,
柔媚含笑。 柔媚に笑みを含む。
〇
眼前椒酒洗蒼老, 眼前の椒酒 洗ひたる蒼老,
借暫且紅顏, 借るは暫且(しばらく)の紅顏,
乘興揮毫巧。 興に乘れば揮毫 巧みなり。
妙思得詞藻, 妙思 詞藻を得れば,
箋上樂園, 箋上の樂園,
滿地芳草。 滿地の芳草。
作品番号 2017-30
玉女迎春慢・丁酉新年試筆
鳴送猴年, 鳴いて猴年(申年)を送り,
金鷄報、 金鷄は報ず、
歳序更新清曉。 歳序の更新せる清曉。
贅叟偸生醒覺, 贅叟 生を偸んで醒覺(目覚め),
旭日燒雲臨照。 旭日 雲を燒いて臨照す。
傾杯多少, 杯を傾けること多少,
共賀正、 賀正を共にす、
與妻偕老。 妻の老いを偕(とも)にせると。
温顔嬌媚, 温顔 嬌媚にして,
椒酒洗滌, 椒酒は洗滌す,
詩筆輕巧。 詩筆の輕巧なるを。
〇
醺然暫且瞑思, 醺然として暫且(しばらく)瞑思し,
遊魂欲問, 魂を遊ばせて問(たず)ねんとす,
繆斯微笑。 繆斯(ミューズ)の微笑せるを。
望斷雲箋渺渺, 望斷せる雲箋 渺渺として,
恰似氷原皓皓。 恰も似たり 氷原の皓皓たるに。
詠懷張翼, 詠懷 翼を張り,
到紫洞、 紫洞に到り、
謁言花貌。 花貌に謁言せり。
玉女歡迎, 玉女は歡迎す,
遠客篤學訣竅。 遠客の訣竅(秘訣)を篤く學びをるを。