作品番号 2015-301
孟秋茅屋
立秋旦夕覺新涼 立秋 旦夕 新涼を覚ゆ
驟雨洗檐蘇草堂 驟雨 檐を洗ひ 草堂蘇る
朋誘圍碁時一盞 朋 囲碁に誘ひ 時に一盞
棊論談讌二更常 棋論 談讌して 二更常なり
<感想>
起句で「旦夕」として時間帯を広げると、後半の出来事とのつながりが感じられません。
「立秋七月覺微涼」が良いでしょう。
転句は「朋誘」ですと「朋が誘ふ」となりますので、話がおかしくなりますね。
「誘友」が良いでしょう。
2016. 1. 6 by 桐山人
作品番号 2015-302
立秋富士
天風驟雨洗埃塵 天風 驟雨 埃塵を洗ひ
氣爽披雲富嶽旻 気爽やかに 雲を披く 富岳の旻(そら)
玉立亭亭今昔譽 玉立 亭亭 今昔の誉
在家仰望酌芳醇 家に在りて 仰望 芳醇を酌む
<感想>
起句の「天風」の「天」は承句の「旻」と重なり、面白くないですね。
「一過驟雨」としておき、承句の「氣爽」は「風爽」とした方が「披雲」に合います。
2016. 1. 6 by 桐山人
作品番号 2015-303
金婚旅行舟遊
緩流銀浪遠山明 緩流 銀浪 遠山明らか
新鵠泉兩岸英 新緑 飛泉 両岸英たり
最上川船閑欸乃 最上の川船 閑かに欸乃(あいだい)
容顔翁媼氣將平 容顔の翁媼 気将に平らかなり
<解説>
静岡空港から直行便が出るとのことで庄内地域の観光に行きました。
<感想>
「緩流銀浪」「遠山」「新緑」「飛泉」「両岸」という情景は船から見たものでしょうが、遠近がばらばらとしていて、分かりにくく感じます。
飛泉清冽碧山明
新緑渓流両岸英
と並べ替えるのが良いです。
結句の「容顔」はこれでも良いですが、せっかくですので「金婚翁媼」とした方が記念の詩らしくなります。
その場合には、詩題を「最上川舟遊」としましょう。
2016. 1. 6 by 桐山人
作品番号 2015-304
岐阜可児花園
世界薔薇茲結集 世界の薔薇 茲(ここ)に結集
淡粧濃抹彩丘園 淡粧 濃抹 丘園を彩る
芳香仙境塵縁外 芳香の仙境 塵縁の外
瞠目青葩佳趣存 瞠目の青葩 佳趣存す
<解説>
可児市のバラ園は期待以上でした。
<感想>
結句からは「珍しい青い薔薇を見た」ということに主眼が置かれていると解釈します。
しかし、詩としては本来、可児花園を詠みたいわけですので、まず結句を直すことを考えます。
ここに薔薇園全体の印象を表した言葉を入れたいですが、そうした点では「淡粧濃抹」が一番の語ですから、ここを「濃抹淡粧佳趣存」でどうでしょう。
その関係で行けば、承句を「清芳芬郁繞丘園」としてまとめ、「芳香」を取ってしまった転句の上二字は、「可児」と入れれば良いと思います。
2016. 1. 6 by 桐山人
作品番号 2015-305
再訪惠那峽
湖水滿盈靜碧漪 湖水 満盈 碧漪(へきい)静かなり
巖頭松樹尚今奇 巌頭の松樹 尚を今奇なり
幼年此育鬢霜老 幼年 此に育つ 鬢霜の老
昔日故人何處之 昔日の故人 何れの処にか之(ゆ)かん
<感想>
恵那峡を「湖水」で良いかは合評会でも議論になりました。私は「溪水」派でしたが。
起句は「四字目の孤平」ですので、「碧水滿盈澄浪漪」が良いですね。
転句は「育」よりも「長」、結句の「故人」は「同遊」が遊び仲間という感じで、内容と合うでしょう。
2016. 1. 6 by 桐山人
作品番号 2015-306
富嶽返照
寒林寂寂暮陰中 寒林 寂々として暮陰の中
歸鳥翺翔沈草叢 帰鳥 翺翔(こうしょう)して 草叢に沈む
落日西山墟里暗 落日 西山に墟里暗し
回看雪嶺染鮮紅 回看す 雪嶺 鮮紅に染まる
「翺翔」: 飛び廻る意、往きつ還りつすること。
<感想>
承句の「翺翔」は空を自由に飛び回ることですので、そこから「沈草叢」では動きが大きすぎます。
「盡半空」として目の高さを動かさない方が読者もついて行けます。
結句はこれでも良いですが、時間経過を出して「染」を「尚」としてはどうでしょうね。
2016. 1. 6 by 桐山人
作品番号 2015-307
詣紀三井寺
櫻花雨散漉k鮮 桜花 雨に散じ 緑楊鮮なり
清淨宛如敷白氈 清浄宛かも 白氈を敷くが如し
香火誦經鐘韻響 香火 誦経 鐘韻響く
決心巡禮汲清泉 巡礼を決心し 清泉を汲む
<感想>
起句は「桜花」と「漉k」の対応が悪いので、「桜花」と「柳条」、あるいは「紅花」と「漉k」として句中対にしたいですね。
結句は、古寺めぐりなわけですので、「決心」を「発心」として場面に合わせてはどうか。
2016. 1. 6 by 桐山人
作品番号 2015-308
過壇浦
此地源平古戰場 此の地 源平 古戦場
養和陵下舶船航 養和陵下 舶船 航(わた)る
碑文松籟誘哀感 碑文 松籟 哀感を誘ふ
遺恨潮流水尚蒼 遺恨の潮流 水 尚ほ 蒼し
<感想>
転句は実景でしょうが、「碑文」と「松籟」を並べるよりも、どのような音で松籟が響いていたのかを語った方が「誘哀感」がよく伝わると思います。
結句は「水尚蒼」の結びですと「遺恨」は今でも残っているということになります。
源平両者の恨みはもう消えても良いと思いますので、「遺恨消亡」でいかがでしょう。
2016. 1. 6 by 桐山人
作品番号 2015-309
苦熱
炎炎溽暑火雲天 炎々たる溽暑 火雲の天
過午遲遲猶亂蟬 過午 遅々として 猶ほ乱蝉
簾動風來涼一味 簾動き風来たりて 涼一味
輕衫酌酒北窗前 軽衫 酒を酌む 北窓の前
<感想>
よくまとまった詩になっていると思います。
特に、転句の「簾動風來涼一味」は、簾が動いたことで風を知る、という流れがよく伝わり、実感が表れています。
「北窓前」は陶淵明の句から閑適生活を連想させる効果を狙ったものですね。
2016. 1. 6 by 桐山人
作品番号 2015-310
雪中即事
雪晴出郭十分奇 雪晴れて郭を出づれば十分奇なり
凍雀飛來繞竹籬 凍雀 飛び来たり 竹籬を繞る
枯木新粧憐野興 枯木 新粧 野興を憐れむ
閑人信歩獨思詩 閑人 歩に信(まか)せて 独り詩を思ふ
<感想>
承句は「郭」は町を表しますので、ここは「雪中即事」という題ですから「屋」で、雪が止んだから外に出てみたというくらいが良いです。
「十分奇」という程には承句に好景という印象が無いので、転句の「憐」を「嘉」「僖」などに換え、結句も「獨」では重くなるので、「暫」とすると良いでしょう。
2016. 1. 6 by 桐山人
作品番号 2015-311
遊佐鳴湖
近隣學友性根研 近隣の学友 性根研く
壯健英姿競技船 壮健 英姿の 競技船
鳥類優遊群鷺島 鳥類 優遊 鷺島(さぎしま)に群がり
街中湖畔拷A鮮 街中の湖畔 緑陰鮮やかなり
<解説>
近隣の学生、競技舩の訓練に励み、佐鳴湖は常に若い声が聞こえ、其の一方には小鳥たちが鷺島に遊び、緑鮮やかな湖畔に街中で在る事を忘れる。
<感想>
起句の「学友」は作者自身も学生の場合には良いですが、そうでなければ「学輩」「学党」。
句全体を「学生近在励鑽研」とするのも良いでしょう。
結句の「街中湖畔」は市街地の中に在る佐鳴湖の特徴を出したのでしょうが、一般の人には分かりにくいので「佐鳴湖畔」とするのが良いでしょう。
2016. 1. 6 by 桐山人
作品番号 2015-312
中田島砂丘
波濤滿目打沙州 波濤(はとう) 満目(まんもく) 沙州(さしゅう)を打(う)つ
萬頃風紋忘世愁 万(ばん)頃(けい)の風紋(ふうもん) 世(せ)愁(しゅう)を忘(わす)る
最是悠長吹海岸 最(もっと)も是(これ) 悠長(ゆうちょう)たる 海岸(かいがん)を吹(ふ)く
眺望妙舞立砂丘 眺望(ちょうぼう) 妙(みょう)舞(ぶ)の 砂丘(さきゅう)に立(た)つ
<解説>
大波が見渡す限りの砂丘に打ち寄せ広大の風紋を見るうちに世の愁いを忘れ果てしなく眺め見る妙なる舞の砂丘に立つ
<感想>
起句の「沙州」は結句の「砂丘」の意味ですので、同じ言葉が並んでいます。
ここも地名を入れ、下三字を「中田島」として踏み落としが良いでしょう。
転句は「最是」が何を指して言っているのか、「吹海岸」の主語が不明瞭ですので、「潮韻悠長過海岸」としてはどうでしょう。
結句は「立」という述語を挟んで「妙舞の砂丘」と訓ずるのは無理です。
「妙舞を眺望し砂丘に立つ」と読むか、承句の「風紋」と入れ替える形でしょうね。
2016. 1. 6 by 桐山人
作品番号 2015-313
秋日訪友
楓錦野花秋氣清 楓(ふう)錦(きん) 野(や)花(か) 秋気(しゅうき)清(きよ)し
村莊訪友是平生 村(そん)荘(そう) 友(とも)を訪(と)うて 是(こ)れ平生(へいぜい)
彈琴啜茗閑敲句 琴(こと)を弾(だん)じ茗(めい)を啜(すす)る 閑(かん)に句(く)を敲(たた)く
賦得新詩亦有情 賦(ふ)し得(え)たり新詩(しんし) 亦(また) 情(じょう)有(あ)り
<感想>
起句の「楓錦」は逆の「錦楓」が一般的ですが、平仄のために入れ替えたのでしょうか。
下の「野花」と対応する形で「楓葉」と普通の言い方で良いと思います。
転句の「閑敲句」は転句の「賦得」とつながり過ぎですので、下三字を「久談笑」として友との楽しい時間を描いてはどうでしょう。
2016. 1. 6 by 桐山人
作品番号 2015-314
看菊小集
西風菊發亂黄金 西風 菊発いて 黄金乱る
萬態千枝香轉深 万態 千枝 香 転た深し
趁約詞筵彭澤興 約を趁ふ詞筵 彭沢の興
詩腸未老爽吟心 詩腸 未だ老いず 吟心爽かなり
「彭沢」: 陶渕明
<感想>
承句の「萬態」は起句の「乱」とかぶりますので、「萬萼」として、菊の姿を「千枝」と対にして表すのが良いです。
転句の「趁約」は必要かどうか、「約束だから」という意味にもなりますので、本来心を動かして集う「詞筵」には不似合いです。
「清雅」が良いでしょう。
2016. 1. 6 by 桐山人
作品番号 2015-315
探梅
吟行十里薄寒天 吟行 十里 薄寒の天
遙認疎梅沿澗邊 遥かに認む 疎梅 澗辺に沿ふ
破蕾氷肌情不淺 蕾を破る氷肌 情浅からず
鶯聲巧舌暗香傳 鴬声 巧舌 暗香伝ふ
<感想>
承句は「遙認」と遠くから見ている感じですが、転句ではもう梅をすぐ近くで見ている、ところが結句になると「暗香伝」でまた遠のく、という感じで、画面の展開が不自然ですね。
結句の下三字を「隔林傳」とすると収まります。
2016. 1. 6 by 桐山人
作品番号 2015-316
夏日舟行
舟行帆影釣絲風 舟行 帆影 釣糸の風
橋畔波聲帯玉虹 橋畔 波声 玉虹を帯ぶ
潮湧涼生魚忽躍 潮湧いて涼は生じ 魚忽ち躍る
碧天雲散水連空 碧天 雲散じて 水 空に連なる
<感想>
舟に乗っていることを前提に考えると、「帆影」「橋畔波声」は変です。これは岸から見ている時の描写です。
起句は「舟行一日釣絲風」として、承句は「声」が「帯玉虹」もおかしいので「漾漾滄波帯玉虹」でどうでしょう。
転句は動きが生き生きと出ていて、良い句ですね。
2016. 1. 6 by 桐山人
作品番号 2015-317
夏夜舟行
舘山煙火客驚窮 舘山 煙火 客 驚き窮まる
湖面散花天碎紅 湖面花を散らし 天 紅を砕く
興奮滿身炎熱散 興奮 身に満ち 炎熱 散じ
納涼蹴浪引清風 納涼 浪を蹴って 清風を引く
<感想>
「散」の字が承句と転句で重出していますので、「湖面点花」とするか「炎熱去」として解消しましょう。
転句は「興奮満身」ということと下の「炎熱散」のつながりが気になります。「興奮」すると普通は「アツくなる」のだと思うのですが。
この転句の「炎熱散」と結句の「納涼」がかぶりますので「軽舟蹴浪」とする、あるいは「納涼舟上」と「納涼の舟の上」と続けていくと良いですね。
2016. 1. 6 by 桐山人
作品番号 2015-318
秋日訪友
天高百舌報秋聲 天高く 百舌 秋声を報ず
朋友重來郷土城 朋友 重ね来たる 郷土の城
久闊傾杯喜無恙 久闊 杯を傾け恙が無きを喜ぶ
歡談不盡到三更 歓談 尽きず 三更に到る
<感想>
詩題の「訪友」では「友を訪ねる」ですので「朋友到」にするのが良いですね。
承句の「重來」は再び来たということで、作者の気持ちとしては「以前に一度来たことがあり、二度目の来訪」という気持ちのようですが、読者にはその辺の事情は分かりません。
「続けて来訪した」のに「久闊」(長い間逢っていない)では違和感があります。
これは、丁寧に書こうとしたために逆に分かりにくくなったということでしょう。
「遠來」「訪來」としておいても、「久闊」があれば、十分に伝わります。
2016. 1. 6 by 桐山人
作品番号 2015-319
呉哥(アンコール)遊行 其一
高棉印度古交流 高棉(クメール)印度(インド) 古(いにしえ)より交流
佛海梵天城市周 佛海 梵天(ヒンズー) 城市に周(あまね)ねし
彫像精華千態溢 彫像の精華 千態溢れ
殿堂宏偉百僚謳 殿堂の宏偉 百僚謳ひし
有爲轉變花宮廢 有為転変 花宮廃れ
無已霖霪榕樹稠 已(おわ)る無き霖霪 榕樹(ガジュマル)稠(しげ)る
可見多年淹没質 見るべし 多年淹没(えんぼつ)の質を
呉哥微笑客心優 呉哥(アンコール)の微笑 客心に優たり
「クメール」: カンボジアの古称、民族名。
「仏海梵天」: 仏教とヒンズー教。
梵天、帝釈天、吉祥天など、ヒンズー教の神である。
<解説>
9〜13世紀アンコール王朝は、アユタヤに逐われプノンペンへ遷都。
元の使節が「真臘風土記」で繁華な模様を伝えている。
遷都の後、全く見捨てられたのは謎。熱帯雨林に埋もれた古都の再発見は19世紀半。
アンコールトム(城)には仏教ヒンズー教が交錯し、アンコールワットは梵天吉祥天などヒンズー教の寺という。
不勉強の私には消化不良。
作品番号 2015-320
呉哥遊行 其二 女皇宮
列柱林伽濕婆殿 列柱の林伽 湿婆(シバ)の殿
矮門屈膝美浮彫 矮門 膝を屈(かが)むれば浮彫美し
宛如刺繡女人手 宛かも刺繍女人の手による如し
岩石紅英彌艶妖 岩石の紅英 艶妖弥(いやま)す
<解説>
女皇宮バンテアイスレイの門総て150センチ足らず、石英を含む石が調和。
シバ神もヒンズー教。
作品番号 2015-321
呉哥遊行 其三 洞里薩湖
乾期縮小尚洋洋 乾期に縮小せるも尚ほ洋洋
湖上商場学校郷 湖上 商場 学校の郷
雨時灌入湄公水 雨時 潅入 湄公(メコン)の水
至大包容天惠昌 至大の包容 天恵昌(さか)ん
<解説>
洞里薩湖トンレサップ湖、面積、雨期には乾期の3倍になる、天然の調節湖。
作品番号 2015-322
夏夜舟行
江風吹面夜涼多 江風 面を吹き 夜涼多し
玩得扁舟和棹歌 玩び得たる 扁舟 棹歌に和す
玉笛那邊詩興湧 玉笛 那辺 詩興湧き
月高皓皓弄金波 月高く 皓々 金波を弄す
<解説>
夏の宵、浜名湖の湖畔の情景です。
<感想>
承句の「扁舟」と「棹歌」が「和」すというのは不自然。
「和」を「聞」にという意見も合評会で出ました。
語句を少し入れ替えて、
扁舟湖上夜涼多
吹面清風和棹歌
という形でどうでしょうか。
2016. 1. 7 by 桐山人
作品番号 2015-323
秋夜憶友
蕭颯西風坐夜闌 蕭颯たる西風 夜 闌に坐す
哀鳴孤雁月光寒 哀鳴する孤雁 月光寒し
郷愁憶友秋千里 郷愁 友を憶ふ 秋千里
如夢光陰思渺漫 夢の如くの光陰 思ひ渺漫たり
<解説>
秋夜遠くの友人を思い出しながら作詩してみました。
<感想>
起句の「夜闌」は「夜がたけなわ」ということでしょう。おばしまに出てというなら「欄」の方が良いですね。
転句の「憶」と結句の「思」は同意語ですので、
郷愁千里故人迥
として、重複を避けるのが良いでしょう。
2016. 1. 7 by 桐山人
作品番号 2015-324
遊
濃淡連峰眺望鮮 濃淡の連峰 眺望 鮮やかなり
相携探勝樂陶然 相携えて探勝す 楽しみ陶然
立山雪壁冠天下 立山の雪壁 天下に冠たり
幽賞難忘五月天 幽賞 忘れ難し 五月の天
<感想>
「天」が転句と結句で重複しています。
承句に「樂陶然」とあるのは、主題がここで出てしまって、後半がぼけます。
承句転句を入れ替え、前半に立山の景をまとめる形で
立山雪壁獨昂然
相携越路夏初興
でどうでしょう。
2016. 1. 7 by 桐山人
作品番号 2015-325
漁翁
竿在肩頭魚滿籠 竿は肩頭に在り 魚 籠に満つ
蓑衣涼氣半江風 蓑衣 涼気 半江の風
呂公滿意酒家近 呂公 満意 酒家 近し
晩景歸鴉明月中 晩景 鴉帰る 明月の中
<感想>
こちらの詩も「満」が起句と転句で重複しています。
起句を句中対の形で「竿在肩頭魚在籠」で良いでしょう。
転句の「酒家近」は今から飲むぞという気持ちですが、「帰鴉」は家に帰ることを暗示しますので、しょんぼりしてしまいます。
「帰鴉」を「一鴉」に、「明月」も「晩景」と合いませんので、「弧月」にしたらどうでしょうね。
2016. 1. 7 by 桐山人
作品番号 2015-326
遊小石川後樂園 其三
夷齊見祀得仁堂 夷斉 祀らる 得仁堂
蕭寂山中苔磴長 蕭寂たる山中 苔磴 長し
千古春秋名不朽 千古春秋 名は朽ちず
金風玉露近重陽 金風 玉露 重陽 近し
<解説>
芙蓉漢詩集第十六集に載せた詩の続きです。
「夷斎」: 伯夷叔斉
「得仁堂」: 光圀十八歳の時、史記「伯夷列伝」を読み、感銘を受け、伯夷叔斎の木像を安置した堂
<感想>
よくまとまっていると思いますが、起句の受け身形がややくどいので、「夷齊茲祀」が良いですね。
2016. 1. 7 by 桐山人
作品番号 2015-327
遊大巖堤
獄池塘花影浮 緑柳の池塘 花影 浮かび
鴛鴦比翼只回游 鴛鴦 翼を比べ 只 回游す
離離芳草春將老 離々たる芳草 春 将に老んとす
野寺鐘聲度水幽 野寺の鐘声 水を度りて幽なり
<解説>
私の家の近くにある、ビオトープの一風景です。
時々散歩に出かけては、田舎のよさを発見できる貴重な場所です。
<感想>
こちらの詩は、承句の「只」の意図がよく分かりません。
「何もせずに泳いでいるだけ」ということで何を伝えたいのか。
もう少し明確な言葉が良いですね。
結句の「度水」は、音が水を渡ってくるということで、明解な場面になります。
そこに「幽」はどうでしょうか。
「隔水」とすると整合性が生まれると思います。
2016. 1. 7 by 桐山人
作品番号 2015-328
富士山 其一
夕陽殘雪染 夕陽 残雪染む
四面紫霞時 四面 紫霞の時
春過山中宿 春過ぎし 山中の宿
艱忘富士姿 忘れ艱し 富士の姿
<解説>
春過ぎし頃、富士山の見える宿に到着し、ふと窓の外を看ると夕日に赤く染まる姿がとても美しく今も忘れられません。
そして、刻々とあたりが紫色に霞む時うっとりとして一時、我を忘れたことを・・・・。
<感想>
承句はわざわざ「時」と言わなくても、起句で「夕陽」とあるのでわかりますね。
ここは「紫霞」がどうであるのかを形容すべきです。
「帷」「煕」などが良いでしょう。
2016. 1. 7 by 桐山人
作品番号 2015-329
富士山 其二
白雪霊峰映碧天 白雪の霊峰 碧天に映ず
朝輝暮染變容仙 朝に輝き暮に染まりて 変容仙たり
時聽地異人憂慮 時に聴く地異 人 憂慮す
萬歳温然富士巓 万歳 温然たれ 富士の巓
<感想>
こちらの詩の承句の「変」も余分な言葉ですね。
「朝輝」「暮染」と対語で「変化」を語っていますので、別の言葉を考えましょう。
「麗」「偉」が良いでしょうね。
結句は「温然たれ」と命令(願望)には読みにくく、後半まとめて「富士は時々地を動かして人を困らせるけれど、萬歳(いつも)は穏やかだなあ」となります。
この解釈でも良いと思いますが、作者の思いとずれるようなら、結句を「希冀温然富士巓」とすると良いでしょう。
2016. 1. 7 by 桐山人
作品番号 2015-330
富士山 其三
碧落雪山泛 碧落 雪山泛ぶ
朝輝暮染仙 朝に輝き暮に染まりて仙たり
春望櫻樹後 春望 桜樹の後に
秋眺赤楓前 秋眺 赤楓前に
湧水田園潤 湧水 田園潤し
五湖遊子牽 五湖 遊子牽く
時聽天變難 時に聴く 天変の難(うれい)
永遠富峰巓 永遠たれ 富峰の巓
<感想>
「其二」と同趣旨の内容ですが、律詩になった分、叙景が丁寧に描かれていると思います。
頸聯の対句は「湧水田園潤」に対するなら「環湖羇旅牽」とするのが良いでしょう。
尾聯の展開については、これも「其二」と同様、「天変」があると「永遠」を命令形に読めなくなります。
「古来文墨讃」として、昔から文人墨客に愛されてきた、という形が良いでしょうね。
2016. 1. 8 by 桐山人