作品番号 2012-211
望富士山
竹籬梅信兩三枝 竹籬の梅信 両三枝
小徑横斜詩景宜 小径の横斜 詩景宜し
隣近逍遙家盡處 隣近の逍遥 家 尽きる処
展開富岳絶風姿 展開する富岳 風姿 絶まる
<解説>
共に富士を眺めての詩、一首は、家の周りを散策した時。
もう一首は、春の日に家の窓より眺めて。
<感想>
起句「竹籬」の「梅」というのはイメージしにくく、「東籬」「南籬」くらい。あるいは外を歩いているなら、「庭籬」「鄙籬」でしょうか。
承句の「詩景宜」は主情が表れているので、ここで出してしまうと、結句の「絶風姿」が緩くなります。承句では我慢して、叙景に徹した方が良いですね。
2012.10.31 by 桐山人
作品番号 2012-212
初春偶成
梅信書窓夢 梅信 書窓の夢
輕寒老大身 軽寒の 老大身
春光天地好 春光 天地 好し
小院鳥聲頻 小院の 鳥声頻なり
<感想>
起句は「梅信」と「夢」がつながらないので、ボヤーとした印象になっています。例えば「書窓下」くらいで抑えておいても良いでしょう。
結句は「頻」では気持ちが表れず、余韻が甘くなります。「鳥声新」としておくところでしょうか。
2012.10.31 by 桐山人
作品番号 2012-213
穗高連峰 其一
穗岳攅の旧字千嶂 穂岳 千嶂を攅め
崚嶒復阻深 崚嶒として復た阻深たり
雲噴山岫口 雲は山岫の口から噴き
霧捲澗松潯 霧は澗松の潯を捲く
空谷遊啼泬 空谷 啼泬遊び
喬柯巣語禽 喬柯 語禽巣ふ
梓川流太古 梓川 太古より流れ
幾歳日昇沈 幾歳ぞ 日 昇り沈む
<感想>
首聯・頷聯と遠景を並べ、頸聯に音を出す(聴覚)構成はオーソドックスで無理がなく仕上がっていると思います。
部分的な点では、頷聯の読み下しは「雲は噴く 山岫の口/霧は捲く 澗松の潯」と倒置で読んだ方がリズムが良いでしょう。
尾聯で「梓川ははるか昔から流れ続けている」という上句の下三字はこの語順では苦しく(「梓川太古流」となるべき)、「流」を「留」としておくところでしょうか。
「幾歳」の「幾」は基本的には十より小さい数を対象としますので、「太古」と対応するには「幾千」「幾万」とするところ。ここは「万歳」と落ち着かせるのがよいでしょう。
2012.10.31 by 桐山人
作品番号 2012-214
穗高連峰 其二
嶒崖梯百級 嶒崖 梯百級
登覧倚危岑 登覧 危岑に倚る
閭井帯田遠 閭井 田を帯びて遠く
戸窓擁樹深 戸窓 樹を擁して深し
朶雲蔽鳥路 朶雲 鳥路を蔽ひ
雷鼓震猿林 雷鼓 猿林を震はす
槍岳雨如幕 槍岳 雨 幕の如く
萬山結暮陰 万山 暮陰を結ぶ
<感想>
頷聯の「閭井」はどちらも「村」を表す言葉で、「戸窓」と対応しています。
頸聯の「朶雲」は「垂れ下がった雲」で熟語の構成は「形容詞+名詩」、「雷鼓」は「名詩+名詩」ですので対応が悪いですね。「驚電」というところでしょうか。
尾聯は「万山」では遠景過ぎる印象です。「千山」くらいが適当でしょう。
2012.10.31 by 桐山人
作品番号 2012-215
新年口號
天地蓬蓬彌惠風 天地蓬々 恵風弥る
佳辰四海旭光紅 佳辰四海 旭光紅なり
復興災害萬民思 災害の復興 万民の思い
切望今年精氣充 切望す今年 精気充るを
<解説>
今年は旧年のような災害もなく又旧年の災害の復興を国民あげて期待する。
<感想>
起句の「蓬蓬」は「草木が繁る、風が吹く」ことを表す言葉で、新春の雰囲気を出していますね。
転句の「復興災害」は語順が逆で、「災害を再び興す」と誤解される恐れがあります。逆に「災害」は「復興」があれば分かることですので、「復興専一万民念」など、換えてみてはどうでしょうか。
2012.10.31 by 桐山人
作品番号 2012-216
祝結婚
相思相愛鴛鴦夢 相思相愛 鴛鴦の夢
良縁良媒祝賀筵 良縁良媒 祝賀の筵
當知父母家風築 当に知るべし 父母家風を築きしを
苦樂相携子孫傳 苦楽相携へ 子孫に伝へよ
<解説>
甥の結婚式に招待され 詩を携えて参列す。
<感想>
お祝いの詩ですので、おめでたい言葉を並べるのは良いことです。ただ、起句と承句の対は、同字のパターンが続き、ややくどく感じます。
転句の「父母家風」の内容が具体的に示されると、説得力が増すでしょう。
2012.10.31 by 桐山人
作品番号 2012-217
訪加藤幸兵衛窯
年歳家聲妙作陶 年歳家声 作陶の妙
名工不屈古顔調 名工不屈 古顔調へ
復元三彩黄藍 復元 三彩 黄藍緑
獨創倍加傳統窯 独創倍加す 伝統の窯
<語釈>
「年歳」: 年月を重ね
「家声」: 家のほまれ
「古顔」: 古い顔料
「三彩」: 唐三彩
「倍加」: 二倍に増える 倍増
<感想>
承句は「古顔調」は「調古顔」の語順、訓読も「古顔を調ふ」とすべきところ、また「古顔」で「古い顔料」と理解するのは相当困難です。
それを意識されたのか、転句で改めて説明をしているのは、逆に「古顔」の必要性をますます薄くしている印象ですので、承句の下三字は直した方が良いでしょうね。
転句は良い句です。
2012.10.31 by 桐山人
作品番号 2012-218
訪代官屋敷江川邸
半天富士一望悠 半天富士 一望悠なり
伊豆坦庵遺邸遊 伊豆 坦庵の遺邸に遊ぶ
庭裡櫻楓宿生樹 庭裡 桜楓の宿生樹あり
絶佳錦繡普窮陬 絶佳の錦繍 陬を窮めて普し
<語釈>
「坦庵」: 江川太郎左衛門の号
「寄生樹」: 桜の木に楓の木が宿っている
<感想>
題名は「代官屋敷江川邸」では重複があります。また、承句の「坦庵遺邸」と「江川邸」とがどんな関係なのかが分かりにくく、語注よりも題名を変更し、承句も「伊豆山中遺邸遊」としてはいかが。
結句の読みは「普く陬を窮む」としましょう。
2012.10.31 by 桐山人
作品番号 2012-219
闘病無情
敲戸強風覺不安 戸を敲く強風 不安を覚ゆ
四旬朋友宿痾難 四旬の朋友 宿痾 難し
歐州美國周遊共 欧州 美国 周遊 共にす
一夜訃音啼泣歎 一夜 訃音 啼泣の歎き
<解説>
一昨年の十二月に学友を亡くし又昨年末会社での四十年来の親友を癌で失い、我ながらそういう年次となってきたことに思いが及ばざるを得ない今日この頃です。
<感想>
起句は「強風」よりも不安感を強くする「暗風」とし、四字目の孤平を避けるため「覚」を「心」「神」としておきましょう。
承句の「四旬朋友」は「四十歳の友人」かと思いますので、「多年朋友」が落ち着くと思います。
2012.10.31 by 桐山人
作品番号 2012-220
沖繩探訪
航路蒼天島影明 航路は蒼天 島影 明らかなり
街衝花發暖風盈 街衝 花 発き 暖風 盈つ
朱甍丹漆高樓麗 朱甍 丹漆の 高楼 麗し
妻喜帯同春日行 妻 喜び帯同す 春日の行
<解説>
念願の沖縄へ静岡空港から家内と観光に行きモノレール、レンタカーを利用楽しい旅でした。特に首里城の壮麗さに、又茶菓の接待に堪能しました。
<感想>
起句はわかりやすい描写になっていると思いますが、承句で急に町中に入るのは、やや急ぎ過ぎの感があります。「街衝」を「眼前」くらいで抑えておきましょう。
転句は「朱甍」と対させるならば「丹壁」「丹闕」が良いでしょう。
結句は「帯同」が気になるようでしたら、「同遊」で。
2012.10.31 by 桐山人
作品番号 2012-221
春日山行
白雲來往惠風暄 白雲来往 恵風暄かなり
鳥語喈喈輕脚跟 鳥語喈々 脚跟軽し
萬克l望千里眼 万緑四望 千里の眼
猶欣一帯百花繁 猶ほ欣ぶ 一帯百花繁し
<解説>
緑の中を暄かな風に吹かれての山歩きが好きな私ですが、ことさら春の山は鳥の声を聞きながらまた種々多様な花に出会え身も心も軽やかに自然にとけこんでいくことが出来ます。
<感想>
山歩きの詩では、どうしても視点の遠い景が多くなり、作者の姿が見えにくくなりがちですが、承句の聴覚や「軽脚跟」で工夫されていると思います。
転句の「万緑」は初夏の語で季節が合わないことと、後半に立て続けに数詞が並ぶのは気になりますので、せめて「万緑」だけでも変更するのが良いでしょう。
2012.10.31 by 桐山人
作品番号 2012-222
偶成
金風吹老稻花香 金風 老いを吹き 稲花香し
頼杖低徊參拜常 杖を頼り低徊 参拝 常なり
鳥語蕭蕭詩思淡 鳥語 蕭々 詩思 淡し
澄心懷古護祠堂 心を澄まし古を懐ひ祠堂を護らん
<解説>
折節、人生をふり返りしみじみと思うに、何時も様々な方々のご支援と温かい情愛に助けられた。
見えざる人、見える人には深く感謝をいたさねばと考えている。
<感想>
承句の「参拝」がやや唐突な印象です。これは詩題の方に少し事情を加えることで解消するでしょう。
全体に、作者の姿が伝わってくる作品になっていると思います。
2012.10.31 by 桐山人
作品番号 2012-223
寒波豪雪
凍雲連影淡冬光 凍雲影を連ね 冬光淡し
晝夜延延豪雪強 昼夜 延々 豪雪強し
滿目皚皚人跡絶 満目皚々 人跡絶え
寒波來襲轉凄涼 寒波来襲 転た凄涼
<解説>
今年も又、大雪で北国の人たちは大変にご苦労をされておられるとの事、心よりお見舞い申し上げます。私共は雪を知らず少し降られただけで大変に困難を致しました。
<感想>
起句に「凍雲」とあって、結句で更に「寒波襲来」と来るのは説明的で、あまり効果がありません。
「寒波」を感じさせる象徴的なものを配置した方が良いでしょう。例えば、「犬声一叫」とか「遠声孤犬」など。
2012.10.31 by 桐山人
作品番号 2012-224
詠元旦
靈峰富士拜鷹揚 霊峰富士 鷹揚を拝し
初日彩雲龍玉煌 初日の彩雲 龍玉煌たり
謹賀迎春清筆硯 謹賀の迎春 筆硯を清め
賦詩書室一枝香 詩を賦す書室の 一枝香し
<解説>
薄曇りの元日の彩り綺麗な雲の割れ目から覗かす、太陽を眺め竜の手に在る玉を拝し、輝く良い年であることを願い詠んでみました。
<感想>
転句の「清筆硯」とつなげるには、結句は「賦」よりも「裁」として、書くことを感じさせる言葉の方が良いでしょう。
2012.10.31 by 桐山人
作品番号 2012-225
夏日舟行
輕航湖水碧玲瓏 軽航 湖水 碧玲瓏
白日天高鷗舞風 白日 天高く 鴎 風に舞ふ
潮湧波心無酷暑 潮湧いて 波心 酷暑無し
連山開處海連空 連山開く処 海 空に連なる
空と湖
澄み渡りたる
佐久米路に
幾重にも舞う
ユリカモメの群れ
<感想>
結句の「連」の字の重複は、同句の中ですので瑕疵とは言いにくいですが、どうしても使わなくてはならないとは感じず、働きは弱いですね。
「連山」は「聚山」「遠山」でも良いでしょう。
また、「海」は起句の「湖水」、「空」は承句の「天」とも重なりますので、下三字は「赤雲隆」「一雲通」「昊雲通」などでいかが。
常春さんからは「この詩の結句、作者の意図は、浜名湖から太平洋を望むところです。下三字、外洋◎ と入れられないでしょうか。この場合韻字、何がよいでしょうか」とのご意見をいただきました。
そうですね、最初の私の感想は、作者のお気持ちへの理解が不足していたかもしれませんね。
「外洋」に続ける韻字は「通」「驕vでも通じるでしょうが、私でしたら、少し感情を籠める形で「雄」とか、意外性で「紅」(これを使うなら転句までに時間の流れを出しておく必要があるでしょうが)などをベースにして考えると思います。
2012.10.31 by 桐山人
作品番号 2012-226
消夏雜詩
湖邊漸集納涼儔 湖辺漸く集ふ 納涼の儔
白日入山風意柔 白日山に入り 風意柔かなり
煙火煌天散波水 煙火 天に煌めき波水に散る
清清脈脈氣如秋 清々脈々 気 秋の如し
夏の夜の
空いっぱいに咲き乱れ
華やかに散る
大輪の花
<感想>
起句の「漸」は人々が少しずつ集まってくるという時間経過を表しているのでしょうが、花火を見るには間延びした感があります。
「已」とした方が承句と合わせてドラマチックになるでしょう。
2012.10.31 by 桐山人
作品番号 2012-227
雪中作
乾坤一夜白銀盈 乾坤 一夜 白銀 盈つ
枯木新粧花忽生 枯木 新粧 花 忽ち生ず
疑是貧庭化仙界 疑う是れ 貧庭の 仙界と化すかと
靜懷投雪幼時爭 静かに懐う 雪投げる幼時の争
<感想>
起句は読みを「乾坤 一夜にして 白銀盈つ」とした方が良いでしょう。
転句で「仙界」を思っただけで、転句で急に子どもの頃の思い出に移るのは違和感があります。「仙界」とつながることを思い出すか、「仙界」を替えるかすると良いでしょう。
結句の読みは「投げる」でなく「投ぐる」で。
2012.11. 7 by 桐山人
作品番号 2012-228
晩春即事
無情紅雨雨如塵 無情の紅雨 雨 塵の如し
煙樹鵠風色新 煙樹 緑肥 風色 新なり
啼鳥不來庭院寂 啼鳥 来たらず 庭院 寂し
銷魂托賦惜花人 銷魂 賦に托す 花を惜む人
<感想>
よくまとまった詩だと思います。
承句は「煙樹 緑は肥え」と読んだ方が良いですね。
推敲するとしたら、転句の下三字、寂しいことは十分に分かっていますので、句中対を使うことを考えてはいかが。
2012.11. 7 by 桐山人
作品番号 2012-229
安曇野點景
穗高山麓野 穂高 山麓の野
蕎麦白花茵 蕎麦 白花の茵
傍見媼翁碣 傍に見る 媼翁の碣
温容道祖神 温容たり 道祖神
<解説>
易水のほとりまで来ると 道祖神を祭って荊軻が歌った「風は蕭々として易水寒し 壮士一たび去って復た還らず」
刺客として出発する悲壮な情景で始まった道祖神だが、安曇野の道祖神は、ただただ微笑ましい。
<感想>
五言絶句らしいリズム感のある詩ですね。
結句の「道祖神」が詩の焦点ですので、転句はやや配置し過ぎか。
「道祖神」は和習くさいところですが、これで行きたいという作者の気持ちが感じられますね。
2012.11. 7 by 桐山人
作品番号 2012-230
不忍池亭
活潑千頭鴨 活溌 千頭の鴨
摧殘萬柄荷 摧残す 万柄の荷
深窺四時運 深く窺う 四時の運
淺酌一心和 浅酌すれば一心和む
<解説>
上野不忍池 十二月の光景。葉が枯れ落ち、茎が立ち或は折れて蓮田は寒々としていた。
その近く水の広がるところ、色とりどりの水鳥の活発なこと。
<感想>
全対格で整えていますので、律詩に持っていっても良いかと思います。
その場合には、「一心和」は結聯に取っておきたい言葉ですね。
2012.11. 7 by 桐山人
作品番号 2012-231
訪爾靈山
遺構温存戰跡閑 遺構温存して 戦跡閑なり
瞰臨依舊瞭灣環 瞰臨すれば旧に依り 湾環瞭か
山形隱裹百年樹 山形 隠し裹む 百年の樹
鐡血精靈猶鎮山 鉄血の精霊 猶 山に鎮まる
<解説>
一万七千余の犠牲をだした二〇三高地。死闘をくり広げた地肌は日本統治時代に植樹された木々の下に眠っている。
この地は日清戦争直後に三国干渉した当のロシアが僅かの期間に軍港と要塞を築いた。
二〇三高地占領直後の児玉源太郎の感懐「十年煩事一朝露」が思い出される。
<感想>
大連郊外の203高地、この山を「爾霊山」と詠んだのが乃木将軍であったことに、詩人としてのあり方を考えさせられます。
結句の「鉄血」は「武器と兵士の血」を表していますので「精霊」との対応も良いでしょう。
転句の「山形」は「山姿」「山容」の方が落ち着きますね。
常春さんからは、私の感想に対して
この詩の転句、「百年樹影蔽形勢」としていましたが、あいまいなので、乃木希典の詩にある「鉄血覆山山形改」を踏まえました。
乃木の詩は山の字、起句でひとつ、転句でふたつ、そして結句の韻字として、と4回用いています。
「山形」を変えると、鉄血が引き立たなくなるのではと恐れています。
とのお返事をいただきました。
乃木希典の詩を参考に出せば、
爾靈山
爾靈山嶮豈攀難
男子功名期克艱
鐵血覆山山形改
萬人齊仰爾靈山
の詩になりますね。
この詩を踏まえておられますが、「山形」が転句の冒頭にありますので、「鉄血」とのつながりとしては弱い印象です。敢えて「山形」を用いるならば、「隠裏」をより時間経過を明確にして、「山形既改百年樹」とするのかな、と思いますが、いかがでしょうか。。
2012.11. 7 by 桐山人
作品番号 2012-232
京都議定書殘影
消光韜晦十餘年 消光韜晦 十余年
欲避羈縻連帯絆 避けんと欲す 羈縻連帯の絆
主宰京都熱意不 京都主宰せし熱意ありやいなや
新春靜想地球難 新春静かに想ふ 地球の難
<解説>
COP17で日本は事実上京都議定書より離脱した。十五年前橋本内閣が議長国として取りまとめた約束事を不公平と苦情をつけ、鳩山内閣の約束をも反故にして・・・
COP3当時詠んだ詩
白熱京都議徹宵 最終合意定条標
百論方策果多少 実践加強努力要
<感想>
仄韻の詩ですが、起句も押韻したいところですね。
転句は「京都」とするよりも「邦家」として、責任の所在を明確にしておく方が強さが出るでしょうね。
国家としての責任感が希薄なことを感じる昨今ですので。
2012.11. 7 by 桐山人
作品番号 2012-233
早春偶成 浜名湖畔
雪粧北嶺曙光天 雪粧の北嶺 曙光の天
荒克R腰漾碧漣 荒緑の山腰 碧漣に漾ふ
漁父操舟勤一意 漁父舟を操り 一意に勤しみ
寒風凛冽尚冬纏 寒風は凛冽として尚冬纏ふ
<感想>
まとまった詩ですが、早春という趣をどこで出すかが難しいですね。
結句は「寒風」ですと、これでもか、と冬の景が強まります。他の言葉を考えるのが合評会の宿題でしたが、「海風」とぼかすか、あるいは「夕風」と時間を限定するかたちでしょうか。
2012.11. 7 by 桐山人
作品番号 2012-234
奉納手筒煙火
夏深此夜祭炎煙 夏深くして此の夜 炎煙の祭
躍動手筒神域連 躍動する手筒 神域に連なり
火焰上吹焦夜色 火焔吹き上げ 夜色を焦がす
堂堂陣鼓昔時傳 堂々たる陣鼓 昔時を伝へん
<感想>
「夜」の字が重複していますので、ここは修正しなくてはいけませんね。「炎」と「火焔」の重複もあるので、転句を「一撃閃光拆天闕」としておきます。
起句の下三字は「人が多く集まった」ことを表すと承句へとつながりやすくなるでしょう。
韻字については、承句は「全」、結句は「然」あたりが良いでしょう。
2012.11. 7 by 桐山人
作品番号 2012-235
新年参拜
新年齋戒誓心迎 新年 斎戒 心に誓って迎ふ
參道森嚴人並行 参道 森厳 人並行す
祈祷神前多福願 神前に祈祷し福多くを願ふ
屠蘇椒酒祝元正 屠蘇椒酒 元正を祝す
<感想>
転句の「神前」は「廟前」「堂前」の方が和習を避けられるでしょう。
結句の「参拝」は「御神酒」を飲んだということでしょうが、「屠蘇」ですと家庭内の出来事というイメージが強く、題名の参拝とは合わないのでもう少し推敲した方がよいでしょう。
2012.11. 7 by 桐山人
作品番号 2012-236
萬葉森曲水宴
天平朝服傍流並 天平の朝服 流れに傍いて並び
一詠一觴歌會芳 一詠一觴 歌会 芳ばし
我亦緊張披講役 我亦 緊張す 披講の役
手箋聲朗抑還揚 箋を手に声朗たり 抑また揚
<解説>
毎年万葉の森公園で行われる曲水の宴は天平時代の貴族の遊びで、盃が流れてくるまでに歌を一首詠みます。
私はその歌を朗詠する役を毎年やっております。
「朝服」: 朝廷で着る服
「披講」: 一人一人の歌を読み上げる
<感想>
大役を務めていらっしゃるのですね。
転句の「緊張」ということで考えると、結句の「手箋」は「拝箋」としてはいかがでしょうか。
2012.11. 7 by 桐山人
作品番号 2012-237
盂蘭盆會大念佛
提燈隊列鼓鉦鳴 提灯の隊列 鼓鉦鳴る
知是初盆念佛聲 知る是れ初盆 念仏の声
遺影焚香靈位拜 遺影に香焚いて 霊位に拝す
先人供養攝光明 先人の供養 光明に攝す
<解説>
遠州大念仏は、郷土行事のひとつで、初盆を迎えた家から依頼されると、その家の庭先で大念仏を誦します。
隊列を組み提灯を先頭に笛・太鼓・鉦を打ち鳴らし、初盆の家を供養します。
<感想>
句の「攝光明」は「光明を捧げ持つ」ということで、灯明に照らされて厳かな気持ちになることも含んでいるのでしょう。
転句は「遺影」と「霊位」を入れ替えた方が文脈が分かり易くなるでしょう。
2012.11. 7 by 桐山人
作品番号 2012-238
天龍川
諏訪清流忽千峰 諏訪の清流 忽ち千峰
飛泉落灑碧淙淙 飛泉灑ぎ落ち 碧淙々
猿聲嶺上羇愁惹 猿声は嶺上に 羇愁を惹く
蕩蕩長河幽趣濃 蕩々たる長河 幽趣濃やかなり
<感想>
起句の「忽」は「貫」の方が勢いが出るでしょう。
承句の「落灑」は語順は逆にしておきましょう。
転句の「羇愁惹」は本来の語順とは異なりますが、それよりも、内容的に寂しい思いを表していて、結句の「幽趣濃」と景観に感動する気持ちと矛盾していますので、検討が必要でしょうね。
2012.11. 7 by 桐山人
作品番号 2012-239
看夜櫻
鐘樓朧月上 鐘楼 朧月 上り
淡淡照櫻枝 淡々として 桜枝を照らす
何快微風度 何ぞ快なる 微風 度り
飛花與雪疑 飛花 雪かと疑ふ
<解説>
学生時代 目黒不動尊に近い恩師金子清超先生のお宅に下宿させていただき、桜の候になるとふと時になつかしい思い出にひたることがあります。
<感想>
結句の「與雪」は「與」が読みにくいのと、「飛花」の比喩は新鮮さが無いのがやや残念です。
「疑」の字が邪魔ですので、「高節師」「清雪帷」などの表現ですっきりとさせてはどうでしょうか。
2012.11. 7 by 桐山人
作品番号 2012-240
秋日有感
自知天地一閑人 自ら知る天地 一閑人
醉後詩成感亦新 酔後 詩成り 感亦た新たなり
瓶菊清香彭澤興 瓶菊 清香 彭沢の興
澹然樂道保天眞 澹然として道を楽しみ天真を保たん
<解説>
静かに坐り、今日も充実した一日になり菊の香に心をほぐしていただき感謝。
<感想>
落ち着いた詩になっていると思います。秋の趣や景物がもう少し出ていると、一層よくなると思います。
承句の「亦」だけがやや甘いので、「更」としてはどうでしょうか。
2012.11. 7 by 桐山人