作品番号 2009-1
(新年漢詩)新春情景
東風解凍入佳辰 東風 凍れるを解きて 佳辰に入る
柳眼青青物候新 柳眼 青青として 物候 新たなり
尾州城外杏花発 尾州 城外 杏花 発き
山色水光蓋四隣 山色 水光 四隣を蓋ふ
鈴木先生 新年、明けましておめでとう御座います。
本年も宜しくご指導下さい。
作品番号 2009-2
(新年漢詩)歳朝偶成
晨鶏送旧曙光催 晨鶏 旧を送り 曙光催す
玉暦回来己丑開 玉暦 回り来たり 己丑開く
白首呈祥情不浅 白首 祥を呈するに 情浅からず
一樽閑酌思悠哉 一樽 閑かに酌みて 思い悠たるかな
<解説>
先生はじめ皆さんの語彙の深さには驚いています。
もっと本を読まなくてはと心がけているのですが・・・・。
一番鶏が鳴いて年が開け空も明るくなってきた。
年はまた回り、二十一年の朝だ。
年は老いても正月を寿ぐ気持ちはまだまだ気合十分。
こころ閑かに酒でも飲みはるかに思いいたすところである。
もう六十有余回もお正月を迎えることだが、それでも矢張り心あらたまって、過ぎしこと、またこれからのことに思いを致すものですねえ・・・・。
作品番号 2009-3
(新年漢詩)詠牛 正月詩
老牛緩慢歩徐行 老牛緩慢 歩して徐行し
深夜先駆功業争 深夜先駆して功業争ふ
不道狡謀騎背上 道はざりき 狡謀背上に騎り
竟令髭子却成名 竟に髭子をして 却って名を成さしむ
「不道」: 不意と同じ おもわざりき 『葛原詩話』では、不道の條を見ると「豈料や図らず」とあるそうです。
文では謂わずですが、詩ではおもわざりきの意味の方が多く、謂わずの例は少ないと言ってます。
「髭子」: 鼠
詠物體なので境の句を入れると題意から外れ易くなりますので、全編興になりました。
詩意は十二支の話を漢詩にしただけで、何の新味もありません。工夫をするべきでした。
作品番号 2009-4
(新年漢詩)御題 生
谷風煦育物皆新 谷風煦育して 物皆新しく
天地和同生意仁 天地和同して 生意仁なり
蟄伏昭蘇初蠢動 蟄伏昭蘇 初て蠢動し
萌芽経雨草花 萌芽雨を経て 草花奄ヒし
「谷風」: 万物を育てる風 習習谷風 「詩・谷風」
「昭蘇」: 冬の間地中に潜んでいる虫類が地上に出ること。明るみにでて生き返る
「天地和同」: 天の陽気と地の陰気が和らぎむつぶ。「天地和同 草木萌動」
「生意仁」: 明道先生曰、「万物生意最可観斯所謂仁也」(『近思録』)
作品番号 2009-5
(新年漢詩)新年
馬齢無恙迓新年、 馬齢 恙無く 新年を迓へ、
一祷緒神更祷天。 一(いつ)に緒神に祷り 更に天に祷る。
昨学私心揺世界、 昨は学ぶ 私心世界を揺るがすを、
人間至福不金銭。 人間の至福は 金銭に不(あ)らず。
作品番号 2009-6
(新年漢詩)新年 二
己丑迎春普万家、 己丑の迎春 万家に普ねく、
偃戈六秩謝平和。 偃戈(えんか) 六秩 平和を謝す。
雖連利己恐慌到、 利己に連(かかわ)り 恐慌到ると雖も、
何日倶謳撃壌歌。 何れの日にか 倶に謳わん 撃壌の歌。
「偃戈」: 戦いをやめる。
「連」: 連累。まきぞえ。
作品番号 2009-7
(新年漢詩)新年 三
祥雲靉靆此迎新、 祥雲 靉靆 此に新を迎へ、
賽客群参天地春。 賽客 群れて参ず 天地の春。
今日邦家宗教満、 今日 邦家 宗教満つ、
迷迷末莫拝銭神。 迷迷して末(はて)に 銭神を拝する莫(なか)れ。
「迷迷」: 私欲に迷う。
作品番号 2009-8
(新年漢詩)新年 四
壟断迷迷絡恐慌、 壟断(ろうだん) 迷迷 恐慌に絡(つなが)り、
民生衰退曠淒涼。 民生は衰退して 曠(むなし)く淒涼。
拝迎新歳為何事、 新歳を拝迎して 何事をか為さん、
先祷諸神更彼蒼。 先ず諸神に祷り 更に彼蒼。
「壟断」: 利益を独占すること。
「迷迷」: 私欲に迷うさま。
作品番号 2009-9
(新年漢詩)己丑新年
雌雄一對像阿吽 雌雄 一對の像 阿吽
慷慨悲歌歎舊今 慷慨 悲歌 舊今を歎ず
七十七齢天所許 七十七齢 天の許す所
無汚晩節費清吟 晩節を汚すこと無く 清吟を費さん
<解説>
今から二十五年前(1983)、当時、那覇市壺屋陶芸組合理事長であった(現代の名工)高江洲育男氏が、総理大臣に就任した中曽根康弘氏に贈呈する為に、一対の大きなシーサーを制作中であった。
これと同寸(高さ七〇糎)の「阿吽像」が、我が家の庭先に君臨している。私が担当した建設工事の竣工記念として特別に注文したシーサーである。
昨今の政界の動きの中で、その中曽根元総理(当年89歳)が、福田・小沢両党首会談の黒幕として現れたのには驚いた。喜寿を迎える年配になったが、晩節を汚すことなく、静かに過したいものである。
壺屋焼シーサー「雌雄一対像阿吽」の写真を添付します。
壺屋焼「現代の名工」高江洲育男氏の作品(1983年)を、(愚妻が)今年の「福岡市美術連盟展」に出品した日本画です。
(小生は)来年、喜寿を迎えます。如何なる詩が書けるでしょうか。
作品番号 2009-10
(新年漢詩)新年偶感
天下風和一夢前 天下の風は和む 一夢の前
新正把酒素心伝 新正 酒を把って素心伝ふ
美哉此国三餘娯 美しい哉 此の国 三餘娯しむ
是以長生自浩然 是 長生を以ってすれば 自ずから浩然たり
<解説>
謹賀新年 今年も宜しくお願いいたします。
米国での黒人大統領の誕生は未だ信じられない。又、サブプライムローンによる金融不安で世界的不況は日本経済をも冷え込ませ、又国内政治も先行き不透明な時世、「三餘」を楽しむゆとりが欲しいですね。
作品番号 2009-11
(新年漢詩)新年即事
繋匏一個隔紅塵 繋匏一個 紅塵ヲ隔テ
陋屋荒籬寄此身 陋屋荒籬ニ此身ヲ寄ス
長坐詩窮更重老 長ニ詩窮ニ坐シ 更ニ老ヲ重ネルモ
四時無事還迎春 四時 事無ク 還 春ヲ迎フ
作品番号 2009-12
(新年漢詩)新年 一
錢愚妄動市場停 銭愚妄動して市場停り
自大濫吹咸少寧 自大濫吹して咸(みな)寧ぎを少く
斬棘披荊不終月 棘を斬り荊を披くは月終えず
切望新歳則天經 切望す新歳天経に則るを
蘇軾「策別十八」為国有三計、有万世之計、有一時之計、有不終月之計
作品番号 2009-13
(新年漢詩)新年 二 青韻 回文
山紫浮雲晨氣泠 山紫に 浮雲 晨気泠し
喜春賀集慶咸寧 喜春 賀に集ひ 咸寧を慶ぶ
還陽一瞬耀頭擧 陽還る一瞬耀頭(日の出)挙がる
頒酒温情交際庭 酒を頒ち 情を温む 交際の庭
新年一 刪韻 回文(倒読み)
庭際交情温酒頒 庭際情を交はし酒を温め頒つ
擧頭耀瞬一陽還 頭を挙げれば耀き瞬にして一陽還る
寧咸慶集賀春喜 寧咸慶び集い春喜を賀す
泠氣晨雲浮紫山 泠気 晨雲 紫山に浮かぶ
作品番号 2009-14
(新年漢詩)歳首賦懐 歳首懐を賦す
両年養病累親朋 両年の養病親朋を累(わずら)わす
今者漸呈治癒徴 今者(こんしゃ)漸く呈す治癒の徴(きざし)
安得新春生気裏 安(いずく)んぞ得ん、新春の生気の裏に
身寧笑与福相乗 身寧くして笑と福と相乗ぜんことを
「今者」: 近ごろ
<解説>
明けましておめでとうございます。
旧年中は小生の病につき、ご心配をおかけし申し訳ございません。
治療については薬効著しいものがあり、ウイルスの退治まで、もう少しの辛抱になりました。
平成二十一年新年漢詩をお送り致します。
作品番号 2009-15
(新年漢詩)迎己丑歳
雨滴天声過 雨滴 天声の如く過ぎ
会風渉大川 かならず風を得て大川を渉らむ
十牛図解説 十牛図解きて
安節迎新年 「(天の声に順じ)心安らかに節度を守って新年を迎える」と説かむ
<解説>
詳細は以下に記しております。
http://members.jcom.home.ne.jp/wa-ga-ya/kansi/kaisanjin/688.html
本年もよろしくお願いします。
作品番号 2009-16
(新年漢詩)新年 五
己丑前年激變周、 己丑(きちゅう)の前年 激変周(めぐ)り、
青天霹靂搖寰球。 青天の霹靂は 寰球を揺るがす。
装忘博愛恐慌起、 博愛を装忘して 恐慌起こり、
壟断私心暴利酬。 私心に壟断して 暴利酬(むく)ゆ。
弱國繁榮止追從、 弱国の繁栄は 追従を止め、
強邦發展奈停留。 強邦の発展は 停留するを奈(いかん)せん。
金融否戟成凶器、 金融は 戟(ほこ)に否(あら)ずとも 凶器に成る、
幾億黎元只杞憂。 幾億の黎元(れいげん)は 只杞憂するのみ。
「寰球」: 地球。
「装忘」: 忘れたふりをする。
「壟断」: うまく利益を独占すること。
「幾億」: 約60億人。
「黎元」: 人民。
作品番号 2009-17
(新年漢詩)平成戊子歳晩書懐
行蔵用捨毎優柔 行蔵 用捨 毎に優柔
六十余年只白頭 六十余年 只白頭
纔得残生楽塵外 纔かに得たり 残生の塵外に楽しむを
胸中巌壑饒清流 胸中の巌壑 清流饒かなり
作品番号 2009-18
(新年漢詩)喜馬拉雅山中迎春 喜馬拉雅(ヒマラヤ)山中迎春
異邦異暦未新年 異邦 異暦 未だ新年ならず
陋館凄凄寞酒筵 陋館 凄凄 酒筵寞たり
窓外無人飛雪裏 窓外 人無し 飛雪の裏
春光一閃燦高巓 春光一閃 高巓燦たり
<解説>
年末年始をヒマラヤで過ごしました。
作品番号 2009-19
(新年漢詩)己丑元旦作
赫赫朝光不可眠 赫赫たる朝光 眠るべからず
呼妻起子祝新年 妻を呼び 子を起こして 新年を祝ふ
歡聲不斷春風裏 歓声 断えず 春風の裏
萬事安寧己丑天 万事 安寧なれ 己丑の天
作品番号 2009-20
(新年漢詩)歳晩偶吟
窮居將歳暮 窮居 将に歳暮ならんとし
無恙想雙親 恙無き双親を想ふ
龕上詩箋拙 龕上の詩箋拙なく
鏡中霜髪新 鏡中の霜髪新たなり
斟來今夜宴 斟み来たる 今夜の宴
語盡去年辛 語り尽くす 去年の辛を
偏憶吟杯裏 偏へに憶ふ 吟杯の裏
相迎幾度春 相迎へん 幾度の春をと
<解説>
家族の忘年会の気持ちを詠んでみました。
これからも無事に新年を迎えていきたいです。
作品番号 2009-21
(新年漢詩)迎春準備
夜市繁忙報歳終 夜市の繁忙 歳終を報じ
醉顔老父話窮通 酔顔の老父 窮通を話す
閑談却憶雙親健 閑談 却って憶ふ 双親の健なるを
椒酒幾年依舊同 椒酒幾年ぞ旧に依りて同にせん
<解説>
これからも無事に新年を迎えていきたいという気持ちを詠みました。
作品番号 2009-22
(新年漢詩)迎 平成二十一年
弧知八十逐年流
削渓砕磐猶不休
東乱西争迷走世
亜州小国実多憂
新年明けましておめでとうございます。
大変ご無沙汰をして申し訳ありません。
作品番号 2009-23
(新年漢詩)正月詩
劫後平和可以全 劫後の平和以って全うす可し
更希世界絶烽烟 更に希ふ世界烽烟の絶ゆるを
黎元本是国家主 黎元は本是れ国家の主
偕誓東西舜堯天 偕に誓ふ東西舜堯の天を
作品番号 2009-24
(新年漢詩)迎春試吟(鶴頭格)
老夫韻事伴雲箋, 老夫の韻事 雲箋を伴い,
牛歩生涯又一年。 牛歩の生涯 又一年。
破舊立新功未樹, 破旧立新の功 未だ樹(た)たずして,
車塵舞處送詩仙。 車塵舞うところ詩仙を送る。
<解説>
老牛破車:四字成語。老牛が破車を挽くこと。才能の低きをいう比喩に用いる。
車塵:走っていく車のたてるほこり。ここでは後塵を拝すの意を含む。
作品番号 2009-25
(新年漢詩)新年作
五十餘年一夢中
硯田野叟笑無功
欲翔千里心猶壮
仰見朝陽新歳空
作品番号 2009-26
(新年漢詩)辻家庭園紅葉観賞
秋雨庭粧繍色撩 秋雨に庭粧ひて 繍色
坐看朱暎洗心韶 坐ろに看る朱は暎て 心を洗って
遠峰隔水風光静 遠峰は水を隔てて 風光静かに
近隴臨山趣到饒 近隴は山に臨んで 趣到
崖面瑤階凡染葉 崖面の瑤階は 凡て葉を染め
園腰苔砌盡敷綃 園腰の苔砌は 盡く綃を敷く
羣青室壁感歎極 羣青の室壁 感歎の極み
築邸經過詞賦超 築邸の經過は詞賦を超ゆ
作品番号 2009-27
(新年漢詩)小寒即事
年来懶慢失居諸 年来 懶慢ニシテ 居諸ヲ失シ
毎毎埃堆几上書 毎毎 埃ハ堆シ 机上ノ書
半酔半醒椒酒盞 半酔半醒 椒酒ノ盞
覚知既是小寒初 覚メテ知ル 既ニ是レ 小寒ノ初メナルヲ
作品番号 2009-28
(新年漢詩)新春書懐
元朝清酒漲瓊巵 元朝清酒けいしに漲り、
可楽今生遇聖時 今生聖時にあうを楽しむべし。
才拙無端親筆硯 才拙きも、はしなくも筆硯に親しみ、
換年不愧又題詩 年を換えても、また詩を題するをはじず。
<解説>
「人生楽しむべし。」をモットーに生きております。
元旦に旨い酒を呑める平和な時代に生を受けたのは本当に有難いことです。
本年も好きな書に親しみ、拙詩を作って送るつもりですのでご講評宜しくお願いします。
作品番号 2009-29
(新年漢詩)平成二十一年年賀
先年政経暴枢機 先年政経 枢機を暴はす
不逞朋曹甚百非 不逞の朋曹 甚だ百非
勿憫人生塞翁馬 憫ふ勿かれ 人生塞翁が馬
愉天知命寿康祈 天を愉しみ 命を知り 寿康祈る
作品番号 2009-30
(新年漢詩)御題 生
電視無端伝爆音、 電視は端無くも 爆音を伝へ、
干戈惨状涙濡襟。 干戈の惨状に 涙 襟を濡(うるお)す。
人間進化只憎悪、 人間の進化 只憎悪のみ、
何日萌生博愛心。 何れの日にか萌生(ぼうせい)せん 博愛の心。
※ 1月15日にテレビで「歌会始」を見ての詩です。