作品番号 2007-1
元旦酌与友 元旦に友と酌む
令月佳辰花色開 令月 佳辰 花色 開き
東風解凍喚春来 東風 凍を解いて 春を喚来る
三元客到須歓酔 三元 客到れば 須べからく歓酔すべし
向晩共傾椒酒杯 晩に向ひて 共に傾く 椒酒の杯
新春おめでとう御座います。
本年もどうか宜しくお願いします。
作品番号 2007-2
新年所感
五雲相映曙光新 五雲 相映じて 曙光新たなり
丁亥三元憶故人 丁亥 三元 故人を憶ふ
逝者如斯川上嘆 逝く者は 斯くの如しか 川上の嘆
阿蒙知是坐傷神 阿蒙 知んぬ是れ、坐に傷神
「喪中に付き」と印刷された葉書を貰うのが、年年多くなる。
同窓生の三分の一が既に他界している。
今の處、自分が歳を取ったという実感はあまり無いが。
孔子の「川上の嘆」の字句ををそのまま採った。
作品番号 2007-3
和松涛和尚高韻 松涛和尚ノ高韻ニ和ス
春風一到四時周 春風一到 四時周ル
庭上梅花瀑布流 庭上梅花 瀑布ニ流ル
白鸛飛来新歳夢 白鸛〔ハクカン〕飛来 新歳ノ夢
順風満帆更何求 順風満帆 更ニ何ヲカ求メン
大意:
師匠の漢詩にを和韻しました。
春風が吹き込み正月を迎えました。
庭に咲く梅花が瀑布〔滝〕〔寺の山号「瀑布山」〕に流れる。
白鸛=コウノトリが飛んでくる初夢をみた。
長男〔一歳〕も生まれ幸せであるのにもう一人子供が欲しいと願ってもいいのだろうか。
毎年師匠の漢詩を和韻して年賀状かわりに出してます。
師匠は現在寺併設の幼稚園の建て替えの準備中です。
五黄猪突太平周
臨機応変和江流
革故鼎新園舎夢
着着進行設計求
松籟さんは、以前は「坊主」の雅号でしたが、改められたとのことです。
作品番号 2007-4
御題 月
良宵迎月有情不 良宵月を迎るも(月に)情有りや不や
酔舞花間得好儔 酔って花間に舞いて好儔(月)を得ん
縦使詩人動高趣 縦ひ詩人をして高趣を動かさんも
勿令遊子起羈愁 遊子をして羈愁を起さしむ勿れ
「酔舞花間」:李白詩 『月下独酌』 花間一壷酒 我舞影零亂
「起羈愁」 :李白詩 『静夜思』 低首思故郷
作品番号 2007-5
新年作
鯨韻遠聞恬送旧 鯨韻遠く聞いて恬(シズカ)に旧を送り
鶏声高報此迎新 鶏声高く報じて此に新を迎ふ
履端祈願一家幸 履端祈願するは一家の幸
改暦希求万国親 改暦希求するは万国の親
作品番号 2007-6
新春所感
先年世界脱危難 先年 世界は危難を脱すも
未北鮮伊洛治安 未だ 北鮮 伊洛 治安ならず
拡大庶民貧富隔 拡大す 庶民の貧富の隔たり
今和同応議交歓 今こそ和同し応に交歓を議るべし
作品番号 2007-7
平成十九年歳首詠
秩父畳峰青渺渺 秩父畳峰 青くして渺渺(びょうびょう)たり
都幾流水白潺潺 都幾の流水 白くして潺潺(せんせん)たり
訛音時雑行徒語 訛音(かいん)時に雑(まじ)う行徒の語
故里風情好暮年 故里の風情 暮年に好ろし
語註:
都幾=埼玉県中西部を流れる荒川支流
作品番号 2007-8
新春偶成
瑞気陶然万象新 瑞気陶然万象新たなり
梅花馥郁一枝春 梅花馥郁一枝の春
全家寿席屠蘇酒 全家寿席屠蘇の酒
祥福招来興最真 祥福招来興最も真なり
作品番号 2007-9
頌春
無事平凡不厭貧 無事平凡貧を厭わず
行雲流水自由身 行雲流水 自由の身
往時回顧謝交誼 往時を回顧して交誼を謝し
読画裁詩復頌春 読画裁詩、復頌春
作品番号 2007-10
元旦言志
六紀偸生樗檪身 六紀生を偸む樗檪の身
吟花詠月亦迎新 吟花詠月亦新を迎ふ
堆堆陶犬瓦鶏句 堆々たる陶犬瓦鶏の句
猶使一詩驚鬼神 未だ一詩をして鬼神を驚かしめず
「六紀」=小生今年72歳になります
「陶犬瓦鶏」=鶏肋以下のつもりです
作品番号 2007-11
新年偶成
七十九回迎歳新 七十九回の 歳新を迎ふ、
健康医薬未相親 健康にして 医薬 未だ相親しまず。
屠蘇一盞朱顔裡 屠蘇 一盞 朱顔の裡も、
韻事難抛癖此身 韻事 抛ち難し 此の身の癖となす。
〇 七十九回目の新春を迎えることができました、
〇 お蔭様で健康にして医薬ともに縁が薄く。
〇 屠蘇の酒にも酔って赤い顔になる始末でも、
〇 ボケ防止の作詩も捨てることもできず苦しみもがいています。
作品番号 2007-12
迎春試吟
野翁猪勇闘詩魔, 野翁の猪勇 詩魔と闘い,
未愧凡才拙作多。 未だ凡才を愧じずして拙作多し。
春探百花芳遠近, 春には百花の遠近に芳しきを探り,
秋玩孤月領山河。 秋には孤月の山河を領するを玩ぶ。
如今傾盞乘酣興,
依舊揮毫題協和。 旧に依り毫(ふで)揮って協和を題とす。
四海迎春應醉飽, 四海 春を迎えなば応に酔飽すべく,
千門無恙暫高歌。 千門 恙なくば暫く高歌すべし。
作品番号 2007-13
丁亥年頭所懐
金玉科條六十年 金玉科條六十年
浮埃褪色四囲纏 浮埃褪色四囲に纏わる
頽衰老化自然理 頽衰老化は自然の理
何整周期検討箋 何ぞ整えざる周期検討の箋
<解説>
60年前の憲法施行当時、これを心から喜んだ人は多くはありませんでした。戦後新編の歴史教科書を事後検閲で、手渡されると同時に墨で塗りつぶしてから教わる時代、製品は「made in occcupied Japan」でした。
ところが、朝鮮の事態が緊迫化し、これが戦争に発展します。占領軍は警察予備隊の新設を命令します。戦争に巻き込まれるとの危機感が、急速に憲法擁護に向かわせました。
これ以来憲法は不磨の大典、アンタッチャブルとして、本文を変えることなく、新解釈を繰り返してきました。このことが、わが国を何か、タブーの多い国に変容させた気がします。「金剛石も磨かずば・・・」の言葉のとおり、常に手入れを怠らないことが大切ではないでしょうか。何事にも手入れ怠らずすがすがしい年を迎えたいものです。
作品番号 2007-14
迎年所感(交流詩)
馬齢七秩迓新年 馬齢七秩の新年を迓へ
旭日曈曈罩瑞煙 旭日曈曈瑞煙を罩む
心泰身寧謝康健 心泰身寧康健を謝し
神恩佛徳供清泉 神恩仏徳清泉を供ふ
無汚晩節祝元旦 晩節を汚す無く元旦を祝ひ
何背彝倫求惡錢 何ぞ彝倫に背いて惡錢を求めんや
雖爾難除腹中賊 しかりと雖も腹中の賊を除し難く
忘機洗耳勉參禅 機を忘れ耳を洗って参禅に勉めん
作品番号 2007-15
迎年所感(交流詩)
丁亥春光照四辺 丁亥(ひのといのしし)の春光 四辺を照らす、
夜來積雪暖生烟 夜来の積雪 暖 烟(けむり)生ず。
今朝正坐吟初譜 今朝 正坐して 初譜(しょふ)を吟ず
只管敲詩過一年 只管(ひたすら) 詩を敲たき 一年を過ごさん。
<解説>
平成19年の春の太陽が燦々と周囲を照らしている。
昨夜からの雪も止んで、積もる積もった雪が暖められ、煙が出ているようである。
元旦の朝、正坐して、自分で作った年始めの漢詩を吟じた。
今年も一途に詩を作って過ごしたいものだ。
新年を迎えての気持である。ゴロゴロしていても一年。それで今年は漢詩を作り、節を付け、詠うのも良いのではないか、と。ささやかではあるが、自分を叱咤激励した。
丁亥(ひのといのしし)=干支でいう西暦2007年のこと。
春光=元旦の太陽
只管(ひたすら)=いちずに、只ひとすじに
作品番号 2007-16
迎年所感(交流詩)
平成丁亥吉祥年 平成 丁亥 吉祥の年
四海洋洋旭日鮮 四海 洋々 旭日鮮やか
薄髪老躯身尚健 薄髪 老躯 身なお健なり
朋歓眉壽草堂前 朋と 眉寿を歓ぶ 草堂の前
作品番号 2007-17
迎年所感(交流詩)
蓬屋虚園草未穿 蓬屋の虚園 草 未だ穿(めぶ)かず
寒梅漸發暖香傳 寒梅 漸く発いて 暖香を伝ふ
老大迎春意無限 老大 春を迎え 意(おもい) 限り無し
含杯迥望白雲天 杯を含んで 迥かに望む 白雲の天
作品番号 2007-18
迎年所感(交流詩)
人以言旁信字傳 「人」は「言」を以て「信」の 字を 伝へ
爲人不遜僞辭纒 「人(ひと)」と「為(なり)」不遜なれば「偽」辞 纏(まつ)わる
堯天政治耕田樂 堯天の 政治は 田を 耕して 楽しみ
舜日經濟賑市宜 舜日の 経済は 市(いち)を 賑(にぎわ)して 宜し
教育再生朝夕迫 教育の 再生は 朝夕に 迫り
學修徹底必須鞭 学修の 徹底は 必須の 鞭
塞源改革焦眉急 塞源の 改革は 焦眉の 急
侃諤議論心欲然 侃諤(かんがく)の 議論に 心 然(もえ)んと 欲す
<解説>
@「爲人」は「ひととなり」と読む、A「堯天」「舜日」は共に「よく治まる御世」、B「塞源」は「抜本塞源」のこと、C「侃諤」は「侃侃諤諤(かんかんがくがく)」のこと。
作品番号 2007-19
迎年所感(交流詩)
光陰駒隙餞徂年 光陰駒隙徂年に餞す
心迹難舒愧瓦全 心迹舒べ難く瓦全を愧ず
玉暦開端旗影暖 玉暦開端旗影暖かに
雖貧言志學高賢 貧と雖も志を言ひ高賢に学ぶ
<解説>
大意
起句 月日は早く過ぎ徂年に別れを告げる、
承句 心の跡は陳べる事が難しく役に立たない事を恥じる。
轉句 新しい暦を開き始め旗の影が暖かに、
結句 貧乏といえども志を言い昔のずば抜けた賢人に学ぶ。
作品番号 2007-20
迎年所感(交流詩)
戌去亥回浮世遷 戌去り亥回るは 浮世の遷り
暗雲國政亂昏傳 暗雲の国政 乱昏伝ふ
人間品格革新礎 人間の品格 革新の礎
但使児悲立命蹎 ただ児を悲しましむは 立命蹎く
<解説>
戌去り亥回るは・・・小泉政権から安部政権に代わって
乱昏 ・・・・・・・・・道理が失われる様
立命 ・・・・・・・・・安心立命
作品番号 2007-21
迎年所感(交流詩)
昨今詩草在爐邊 昨今の詩草 爐邊に在り
品格不高詞不鮮 品格高からず 詞 鮮ならず
百八鐘声滌煩腦 百八の鐘声 煩腦を滌ふ
二三佳作俟明年 二三の佳作 明年を俟たん
作品番号 2007-22
新年雑賦(交流詩)
百八鐘声響陌阡 百八の鐘声 陌阡に響き
逸居矮屋又新年 逸居矮屋 又新年
忙裡執耡畦畝畔 忙裡 耡を執る 畦畝の畔
閑時策杖月花邊 閑時 杖を策す 月花の邊
紅顔私畫人生計 紅顔 私かに画す 人生の計
白髪空重悔悟員 白髪 空しく重ぬ 悔悟の員
老去何論來日事 老去 何ぞ論ぜん 来日の事
廟頭靜点一香煙 廟頭 静かに点ず 一香煙
<解説>
歳をとって、来し方を振り返ると悔やまれることばかり。
とは言え、明日に向かって如何こうしよう等と言う気力も無い。
ただただその日その日の無事を祈るだけ。
どれ、歳も明けたことだし、線香の一本も仏様に上げるか。
作品番号 2007-23
新年所感(交流詩)
一衣帯水鎖溟煙 一衣帯水 溟煙鎖し
遙夜未明迷去船 遙夜未だ明けず 去船迷ふ
遭虐難忘舊凶事 虐に遭って忘れ難き 舊凶事
省過偏願太平年 過を省りみて偏えに願う 太平年
台湾内政真愁絶 台湾の内政 真に愁絶
半島外交空黯然 半島の外交 空しく黯然たり
四海人皆自兄弟 四海人は皆 自から兄弟たり
鬩牆何異坐鍼氈 鬩牆 何んぞ異らん 鍼氈に坐するを
作品番号 2007-24
迎年所感(交流詩)
歳暮竃Z人未眠 歳暮の竃Z 人 未だ眠らず
三更雑沓寺鐘傳 三更の雑沓 寺鐘伝う
中東殺伐無情極 中東の殺伐 無情極まる
強欲平和滿一年 強く欲す 平和 一年を満たらんことを
<解説>
平和な日本では、忙しいながら新鮮な気持ちで新年を迎えようとしている。
しかし、混迷のまま、新年を迎えるイラク情勢は、遠く離れた日本でも憂慮する出来事である。
来年こそは、戦争の無い一年であって欲しい。
作品番号 2007-25
迎年所感 五絶(交流詩)
迎春清筆硯, 迎春
試繪早梅妍。 試みに
画裡春風底,
關關鶯語圓。 関関として鴬語円かなり。
<解説>
画裡:絵の中
作品番号 2007-26
迎年所感 五律(交流詩)
白首傾椒酒, 白首 椒酒を傾け,
三元憶少年。 三元 少年を憶う。
青春花上露, 青春 花上の露,
朱臉酒中仙。 朱臉 酒中の仙。
依舊揮詩筆, 旧に依りて詩筆を揮い,
履新怩瓦全。 新を
吟如凡鳥哢, 吟ずれば凡鳥の哢るごとく,
鳳字走紅箋。 鳳字 紅箋を走る。
<解説>
鳳字:才能のないこと。鳳は字分解すれば凡鳥となる
履新:新年を迎える
瓦全:役に立たずに長らえること
作品番号 2007-27
迎年所感 五排(交流詩)
愚生到花甲, 愚生 花甲に到り,
還暦欲迎年。 還暦 年を迎えんとす。
依舊傾殘酒, 旧に依りて残酒を傾け,
祭詩佯散仙。 詩を祭り散仙と
官途無鵠志, 官途に鵠志なく,
草舎有陶篇。 草舎に陶篇あり。
乞骨晴耕處, 骨を乞い晴耕の処,
偸閑雨讀天。 閑を偸む雨読の天。
擬唐揮禿筆, 唐に擬して禿筆を揮い,
得意聳吟肩。 意を得て吟肩を聳やかす。
旭日穿窗照, 旭日 窗を穿ちて照らせば,
偸閑雨讀天。 朱顔 雪 顛に満つ。
作品番号 2007-28
迎年所感 七絶(交流詩)
人傾椒酒醉三元, 人 椒酒を傾けて三元に酔い,
依舊題詩吟聳肩。 旧に依りて詩を題し吟じ肩を聳やかす。
偶有中庭家雀囀, たまたま中庭に家雀の囀るありて,
巧酬拙句喜新年。 巧みに拙句に酬い新年を喜ぶ。
<解説>
家雀:雀
作品番号 2007-29
迎年所感 七律 其一(交流詩)
庭梅未綻氣猶寒, 庭梅 未だ綻ばず気はなお寒くも,
新暦新春春半傳。 新暦の新春 春なかばを伝う。
右送西山銀兎落, 右に西山に銀兎の落つるを送り,
左迎東海赤鴉圓。 左に東海に赤鴉の円かなるを迎う。
白頭依舊傾椒酒, 白頭 旧に依りて椒酒を傾け,
朱臉如今入午眠。 朱臉
晩境多閑無一事, 晩境 閑多くして一事なく,
歳朝擧止若前年。 歳朝の擧止 前年の
<解説>
銀兎:月
赤鴉:太陽
作品番号 2007-30
迎年所感 七律 其二(交流詩)
白頭依舊坐樽前, 白頭 旧に依りて樽前に坐し,
醉臉迎春紅欲然。 酔臉 春を迎えて紅く然えんとす。
笑語荊妻侑椒酒, 笑語す 荊妻の椒酒を侑め,
宛如玉女宴詩仙。 宛も玉女の詩仙に宴するがごときに。
人無功譽有吟思, 人に功誉なくして吟思あり,
筆走縱横構對聯。 筆は縦横に走りて対聯を構う。
平仄諧調擬唐律, 平仄諧調す 擬唐の律,
善哉香墨染雲箋。 善き哉 香墨 雲箋を染む。