作品番号 2006-1
丙戌の歳を迎えるにあたり『易』をひきて『同人』『大有』に充て、詩を作して祈る。
迎平成丙戌歳
同人広野会 人と同じくして広野に会す
時節合応天 時節 まさに天に応ず
万物明帰一 万物 明にして帰一
駆車大笑前 車を駆るに 大笑もて
作品番号 2006-2
新年作
仁風颯颯幾山川 仁風颯々として 幾山川
我道夢中初志伝 我は道ふ 夢中 初志伝ふ
旭旆全家迎旭日 旭旆全家 旭日を迎え
春回丙戌意欣然 春は回る丙戌 意 欣然たり
政治、経済だけに限らず不道徳的な事件も多かった酉年であったが、丙戌の年に変われば何か新鮮で、民が安心で、健康な生活が出来るような気がしていい年に成りそうだ。
国旗を掲げ、初心を忘れず、残された人生を楽しみたい。
作品番号 2006-3
迎新年
春光照瑞雲 春光 瑞雲を照らし
椒酒自陶酔 椒酒 自ずと陶酔
題詩墨吐香 詩を題せば 墨は香を吐き
長憶少年志 長憶す 少年の志
新年おめでとう御座います。
本年もどうぞ宜しくお願いします。
作品番号 2006-4
歳首詠
青山畳畳西天下 青山畳畳たり西天の下
白水浅浅南畝中 白水浅浅たり
臨老倍佳郷里景 老に臨んで
改年先拝土神宮 年改まれば先ず拝さん土神の宮
作品番号 2006-5
九四歳書懐
神州惨敗志泡終 神州惨敗し 志は泡と終はりて
経済飛揚獲富豊 経済は飛揚し 獲富の豊かさを獲る
外侮我邦民欠義 外は我が邦の民の義を欠くを侮れども
祈求更改怪呆翁 更に改むるを祈求す 怪呆の翁
星宮さんのこの詩は、お手紙でいただきました。
九十四歳のお誕生日を機に、私の本を読んで漢詩作りに取り組み始められたそうです。お役に立つことができ、本当に嬉しく思います。
お元気で、これからも漢詩に取り組んでください。
作品番号 2006-6
新年偶成
新詩欲賦歳將終 新詩賦さんと欲するも歳將に終らんとす。
未就傾杯老阿蒙 未だ就さずして杯を傾く 老いし阿蒙
百八鐘聲煩悩裏 百八の鐘聲 煩悩の裏
明旦依舊向禪宮 明旦 舊に依り 禪宮に向わん
作品番号 2006-7
七十八齢歳旦偶成
歳朝初日上 歳朝 初日上りて
白屋照荒庭 白屋の荒庭を照らす
許我屠蘇酒 我に許す 屠蘇の酒
先斟祝晩齢 先ず斟んで 晩齢を祝わん
〇今年の正月も初日が上がり、目出度いことです
〇天下平等に粗末な家の庭先を照らして呉れました
〇私にも屠蘇の酒を許されまして
〇先ず有り難く頂いて年老いた余生を祝うことができました。
作品番号 2006-8
迎 春
賣車買狗到三元, 車を売り狗を買って三元に到り,
還暦偸生又一年。 還暦 偸生 又一年。
洗臉笑傾椒酒好, 臉を洗ひ笑って椒酒の好きを傾け,
温臍醉踏午天暄。 臍を温め醉って午天の暄なるを踏む。
快哉義蓄牽吾輩, 快き哉 義蓄 吾輩を牽き,
料得佳吟在水邊。 料り得たり 佳吟の水邊に在るを。
悦目春池輝似鏡, 悦目の春池 輝いて鏡に似て,
梅枝破蕾玉花鮮。 梅枝 蕾を破り 玉花 鮮やかなり。
<解説>
[語釈]
「三元」:元日。
「偸生」:無駄に生きながらえる。 小生今年還暦です
「椒酒」:屠蘇
「義蓄」:犬。
作品番号 2006-9
元旦偶言
歳朝開戸広曇天 歳朝戸を開ければ曇天広く
叔気微通較悄然 叔気、微に通えどもやや悄然たり
世態荒蕪身又老 世態は荒蕪にして身又老い
不須綺語入詩篇 もちいず、綺語の詩篇に入るるを
作品番号 2006-10
丙戊新年書懐
歳朝春色初旭鮮 歳朝春色 初旭鮮やかに
瑞気蓬蓬興悠然 瑞気蓬蓬として 興悠然
山郭紺園還有趣 山郭紺園 還た趣有り
紙鳶高舞溜池邊 紙鳶高く舞う 溜池の邊
作品番号 2006-11
丙戊御題 笑
花咲鳥鳴天地春 花咲ひ 鳥鳴いて 天地春なり
呼慶笑貌記來真 慶を呼び笑貌 記し來って真なり
詼謔大度平和阯 詼謔大度は平和の阯
自得諸方撃壌人 自得せよ諸方 撃壌の人
作品番号 2006-12
丙戊新年書懐
探梅買醉三杯酒 探梅醉いを買う三杯の酒
磨墨彫蟲一曲歌 磨墨彫蟲一曲の歌
不辨餘年更須惜 辨ぜず餘年 更に惜むを須いず
逢歓甚少引愁多 歓に逢いも甚だ少き 愁を引くこと多し
作品番号 2006-13
丙戊御題 笑
膝前雛女笑嘔唖 膝前の雛女 笑って嘔唖
髪搖微風唇如花 髪は微風に搖れて唇花の如し
其態天真看不足 其の態は天真にして 看れども足らず
解顔人亦思無邪 顔を解く人も亦 思ひ邪なし
作品番号 2006-14
初春偶成
暁雪人跡断 暁雪人跡断ち
皚皚画景真 皚皚 景を画いて真なり
一樽多喜色 一樽喜色多し
殊域此迎新 殊域 此に新を迎ふ
作品番号 2006-15
元旦賞梅
東風萬里曉光催 東風萬里曉光催す
玉暦三元春又回 玉暦の三元春又回る
何料庭隅梅有信 何ぞ料らんや庭隅梅信有り
呈祥香気一枝開 祥を呈す香気一枝開く
新しい年も宜しくお願いします。
[大意]
東風が萬里に到り朝日が兆し、
新しい年の元旦に春が回って来る。
如何して推し量ることが出来ようか庭の隅に梅が咲いていることを
目出度い兆しを示し香りが漂い一枝咲いているのである。