作品番号 2005-16
新年
去北飛南万里征 北に去り南に飛び万里を征き、
客中半老没功名 客中に半ば老いたれども功名はなし。
新年何嘆鬢如雪 新年何ぞ嘆かん鬢 雪の如しを、
無事謝天楽我生 無事を天に謝し我が生を楽しまん。
<解説>
あけましておめでとうございます。
仕事など、苦しいことはありますが、この歳になれば生きているだけで、充分という
気がいたします。
本年も鈴木先生、皆様 ご教示のほどよろしくお願いいたします。
作品番号 2005-17
公元二〇〇四年陽暦除日遊京都御苑 公元二〇〇四年陽暦除日、京都御苑に遊ぶ
老松樹下朶楓枝 老松の樹下(一)朶の楓枝
霜葉半妝新雪垂 霜葉半ば新雪を妝つて垂る
朱雀京華何處是 朱雀の京華 何れの處か是なる
危牆鴉啼影逶迤 危牆鴉啼いて影は逶迤たり
<解説>
明けましてお目出度う御座います。
昨年の年末、京都を訪れましたら、最終日に折好く雪景色に恵まれました。内容としては年末・年始とは余り関りはありませんが、陽暦にて詠み納め・詠み初めということで投稿させて頂きました。
今年も宜しくお願い致します。
作品番号 2005-18
新春憶
自寿杖朝旦 自ら寿す 杖朝の旦、
風和曙色新 風和らぎ 曙色新たなり。
屠蘇誘微酔 屠蘇 微酔を誘い、
遠憶故山春 遠く憶う 故山の春。
<解説>
転句、下三字は特殊調句(挟平格)。
昨日の霙もすっかり晴れ、夏に八十歳になるその元旦を元気に迎えられよかった。屠蘇で少しばかり酔い、遠い昔、今は遠く異国となった(韓国全州市で生まれ育った)少年時代の正月を懐かしく思いだした。
作品番号 2005-19
新春
東雲曙色鳥声頻 東雲の曙色鳥声頻たり
淑気氤氛頌吉辰 淑気氤氛吉辰を頌す
十八暁鐘初日上 十八暁鐘初日上る
千門万戸共逢春 千門万戸共に春に逢ふ
<解説>
お寺の近くの新年の風景を読みました。
作品番号 2005-20
乙酉元旦
凍雲何処穏春回 凍雲何くの処か 穏かに春は回り
已聞南枝綻早梅 已に聞く 南枝に早梅綻ぶ
歳歳脚衰門半掩 歳歳脚は衰えて 門半ば掩い
唯欣花鳥作詩媒 唯花鳥を欣びて 詩媒と作す
作品番号 2005-21
乙酉新年書懐
八十老躯神尚雄 八十の老躯 神尚を雄たり
悠然迎得旭光紅 悠然迎え得て 旭光紅なり
平成乙酉元朝喜 平成乙酉 元朝を喜び
柏葉壽觴千里風 柏葉壽觴 千里の風
作品番号 2005-22
乙酉新年書懐
八十余年一瞬過 八十余年 一瞬に過ぐ
新正迎得奈春何 新正迎え得たり 春を奈何
昨非今是放懐抱 昨非今是 懐を放ちて抱き
破屋三間楽亦多 破屋三間 楽亦多し
作品番号 2005-23
御題 歩
人生行路幾山河 人生行路 幾山河
國歩盛衰今若何 國歩盛衰 今若何
時運唯須匡道義 時運唯須らく 道義を匡すべし
民聲赴處阻風波 民聲赴く處 風波阻む
作品番号 2005-24
乙酉新年書懐
震後十年如夢過 震後十年 夢の如く過ぎ
多難多事所思多 多難多事 思う所多し
此身健在向誰謝 此身健在なるは 誰に向って謝せん
歳晩閑吟撃壌歌 歳晩閑吟す 撃壌の歌を
作品番号 2005-25
初春偶成
淑気春粧好 淑気春粧好し
陶然酔後茶 陶然酔後の茶
南窓無一事 南窓一事無し
閑画早梅花 閑に画く早梅の花
作品番号 2005-26
乙酉新年書懐
旧臘歳除風雪頻 旧臘 歳除 風雪頻りなり
元朝淑気浄無塵 元朝 淑気 浄くして塵なし
人生六秩波瀾濶 人生 六秩 波瀾濶し
尚在青雲草舎春 尚 青雲在り 草舎の春
<解説>
関東地方は21年ぶりの大晦日の積雪、元旦は雲一つない快晴。
近年にない寒いお正月でした。
私事ですが、本年は40年間の会社生活に終止符の年、
但し、何歳になっても青雲の志だけは失いたくはないもの。
作品番号 2005-27
歳朝寄友
鷄鳴報曉入佳辰 鷄鳴曉を報じ佳辰に入る
玉暦回來乙酉春 玉暦回り來りて乙酉の春
元旦懷君追往事 元旦君を懷かしみ往事を追ひ
康寧偏祷此迎新 康寧偏に祷り此に新を迎ふ
<解説>
鶏が暁を報じ目出度い日になり
玉のような暦が回ってきて乙酉の春になる
元旦に君を懐かしみ昔のことを思い出し、
体が丈夫で無事であることを祈り此に新年を祝う
作品番号 2005-28
望春
新正出愧有衾中 新正 衾中に有るを愧じて出れば、
暁日瞳瞳雨雪窮 暁 日瞳瞳として 雨雪も窮まる。
地置銀花天変霽 地 銀花を置き 天変わって霽(は)れ、
東風細細見蒼穹 東風細細とし蒼穹を見る。
作品番号 2005-29
乙酉新年偶感
旧臘歳除寒雨頻 旧臘歳除 寒雨頻り
元朝参道賀正人 元朝の参道 賀正の人
人生過古稀如夢 人生古稀を過ぎ 夢の如し
尚所思多乙酉春 尚所思多し 乙酉の春
<解説>
72歳となった元旦の朝 南宮神社へお参りしたときの心境です。
作品番号 2005-30
新年作
今朝迎得七三春 今朝迎へ得たり七三の春
改対鏡中心緒新 改めて鏡中に対し 心緒新たなり
皺面禿頭而壮健 皺面禿頭而して壮健
一杯祝酒養精神 一杯の祝酒精神を養わん
<解説>
今月10日で73歳となります。
鏡の中の自分の顔を見て改めてびっくりしております。しかし、一方まだまだ壮健といばってみましたが、体力の衰えはいなめません。せいぜい、祝酒で精神だけでも元気づけたいという所です。
これからも、作詩を続けるつもりですので、よろしくお願いします。
作品番号 2005-31
乙酉新年作
三元詩景傷春装 三元の詩景春装を傷む
激震何図印度洋 激震何ぞ図らんインド洋
来襲津波多勢浚 来襲津波多勢を浚う
焚香興復念安康 香を焚き興復安康を念ず
<解説>
このたびの大津波を何とか詩にしたいと悪戦苦闘しました。
まず地名のインド洋を決めたので陽韻が動かせず、平仄の関係で承句と転句のそれぞれ2字ずつの語の並び方も不自然と思います。
しかしとにかく今作らなければと思い、時間もかなり掛かりましたが頑張りました。
今年中に喜寿を迎える私ですが、漢詩と詩吟を生きがいに元気で生きていきたいと思います。ご指導をどうぞよろしくお願い申し上げます。