第44回 世界漢詩同好會總會(二〇一六年六月二十六日)

 『世界漢詩同好會』の第44回総会は、6月26日に開かれます。
 詩題(今回は『夏日即事』)、押韻(今回は「上平声十四寒」「上平声十五刪」)を共通として、その日までに各国の幹事サイトに投稿された詩を交流し合うものです。

 日本では、この『漢詩を創ろう』のサイトが幹事となり、皆さんの交流詩を集約、掲載します。



         日本からの参加詩です。

   掲載は概ね投稿順です。   番号かお名前をクリックして下さい。


    作品番号 作 者 題 名 詩 形
   01深溪「夏日即事」七言絶句
   02兼山「夏日即事 一」七言絶句
   03兼山「夏日即事 二」七言絶句
   04謝斧「夏日即事 一」七言律詩
   05謝斧「夏日即事 二」七言律詩
   06凌雲「夏日即事」五言律詩
   07薫染「夏日即事」七言絶句
   08茜峰「夏日即事(初夏山行)」七言絶句
   09岳城「夏日即事」七言絶句
   10地球人「夏日即事」七言絶句
   11輪中人「夏日即事」七言絶句
   12道佳「夏日即事」七言絶句
   13鮟鱇「夏日即事 其一」五言絶句
   14鮟鱇「夏日即事 其二」六言絶句
   15鮟鱇「夏日即事 其三」七言絶句
   16鮟鱇「夏日即事 其四」五言律詩
   17鮟鱇「夏日即事 其五」七言律詩
   18鮟鱇「夏日即事 其六」五言絶句
   19鮟鱇「夏日即事 其七」六言絶句
   20鮟鱇「夏日即事 其八」七言絶句
   21鮟鱇「夏日即事 其九」五言律詩
   22鮟鱇「夏日即事 其十」七言律詩
   23點水「夏日即事」七言絶句
   24陳興「夏日即事」七言絶句
   25道魔(在広州)「夏日即事」七言絶句
   26楽拾(在北京)「夏日即事」七言絶句
   27成蹊(在アメリカ)「夏日即事」七言絶句
   28杜正「夏日即事」七言絶句
   29劉建「夏日即事」七言絶句
   30劉建「夏日即事」七言絶句
   31Y.T「夏日即事」七言絶句
   32忍夫「夏日即事 一」七言絶句
   33忍夫「夏日即事 二」七言絶句
   34東山「夏日即事」七言絶句
   35ニャース(在上海)「夏日即事」七言絶句
   36智障儿童(内蒙古)「夏日即事」五言律詩
   37明鳳「夏日即事 一」七言絶句
   38明鳳「夏日即事 二」七言絶句
   39常春「夏日即事 一」七言絶句
   40常春「夏日即事 二」五言絶句
   41常春「夏日即事 三」五言律詩
   42觀水「夏日即事 一」七言律詩
   43觀水「夏日即事 二」七言律詩
   44玄齋「夏日即事」七言律詩
   45忍冬「夏日即事」七言絶句
   46(桐山堂刈谷)眞海「夏日水村」七言絶句
   47(桐山堂刈谷)松閣「夏日水村」七言絶句
   48(桐山堂刈谷)勝江「夏日水村」七言絶句
   49(桐山堂刈谷)聖峰「夏日水村」七言絶句
   50(桐山堂刈谷)老遊「夏日水村 一」七言絶句
   51(桐山堂刈谷)老遊「夏日水村 二」七言絶句
   52(桐山堂刈谷)老遊「夏日即事 三」七言絶句
   53(桐山堂刈谷)M.O「夏日即事」七言絶句
   54(桐山堂刈谷)遊人「夏日水村」七言絶句
   55桐山人「夏日即事 一」七言絶句
   56桐山人「夏日即事 二(夏登山)」七言絶句
   57桐山人「夏日水村」七言絶句
   58春空「夏日即事」七言絶句





































[01]
投稿者 深溪 

[夏日即事]

新樹成陰夢故関   新樹 陰を成し 故関を夢みゆ

薫風一陣欲西還   薫風 一陣 西に還らんと欲す

荒寥三径無人訪   荒寥たる三径 人の訪ふ無く

悲喜米年歳月閑   悲喜 米年 歳月閑なり

          (上平声「十五刪」の押韻)




























[02]
投稿者 兼山 

[夏日即事 一]

莫言地震豫知難   言ふ莫かれ 地震 予知難しと

萬物浮生一夢看   萬物 浮生 一夢の看

人世苦辛無涯際   人世 苦辛 涯際無し

天恩神助養衰殘   天恩 神助 衰殘を養ふ

          (上平声「十四寒」の押韻)



   古諺云ふ地震雷には勝てぬ
























[03]
投稿者 兼山 

[夏日即事 二]

雨晴不定在塵寰   雨晴 定まらず 塵寰に在り

懶出浹旬驚我頑   出るに懶く 浹旬 我が頑に驚く

閤閤蛙聲天欲暑   閤閤たる 蛙聲 天暑ならんと欲す

遙雷殷殷草堂閑   遙雷 殷殷 草堂閑かなり

          (上平声「十五刪」の押韻)



   梅雨晴れ間蛙声遠雷響きけり
























[04]
投稿者 謝斧 

[夏日即事 一]

曉起拖筇細褐單   暁起筇を拖いて 細褐単に

爽涼不意夏初寒   爽涼意はざりき 夏初の寒きを

霧晴茂樹生嵐氣   霧晴れて茂樹 嵐気生じ

星砕懸河瀉碧湍   星砕いて懸河 碧湍瀉がん

欲飽幽蹊暫流憩   幽蹊を飽んと欲して暫く流憩

亦攀絶巘極遊觀   亦た絶巘を攀じては 遊観を極めん

戯言一日馭風客   戯れに言ふ 一日風に馭する客

便煉丹砂霞可餐   便ち丹砂を煉って 霞餐すべし

          (上平声「十四寒」の押韻)




























[05]
投稿者 謝斧 

[夏日即事 二]

世途無味故郷還   世途味はふ無く 故郷に還り

夏日遊観戸不關   夏日遊観して 戸は關せず

武庫清流沙觜浦   武庫清流 沙觜の浦

茅渟蒼海石堤湾   茅渟蒼海 石堤の湾

尋涼設簟鷗波靜   涼を尋ね簟を設ければ 鴎波静かに

逃暑傭舟釣渚閑   暑を逃れ舟を傭へば 釣渚閑なり

不似匏瓜繋枝蔓   似(しか)ず匏瓜の枝蔓に繋るを

固窮何厭老田間   固窮するも何んぞ厭はん 田間に老るを

          (上平声「十四寒」の押韻)



「武庫」: 武庫川
「茅渟」: 大阪湾 「匏瓜繋枝蔓」: 匏繋不得従  放翁詩 役に立たない

























[06]
投稿者 凌雲 

[夏日即事]

不暮歸家路   暮れず家路を帰る、

光餘摂晩餐   光余り晩餐を摂る。

揺揺花影趣   揺揺 花影の趣、

處處舗装端   処処 舗装の端。

望靄先虹詠   靄を望んでは虹に先んじて詠い、

占農共雨歡   農を占って雨と共に歓ぶ。

青山雲外殿   青山 雲外の殿、

座惜夕陽殘   座惜しむ 夕陽の残るを。

          (上平声「十四寒」の押韻)




























[07]
投稿者 薫染 

[夏日即事]

湖邊海岸白沙灘   湖辺の海岸 白沙の灘(なだ)

克生生父子歡   緑樹は生生 父子は歓ぶ

爽快連山風靜謐   爽快の連山 風は静謐にして

明光R耀皙空完   明光はR耀し 皙(あか)るき空は完し

          (上平声「十四寒」の押韻)



「即事」: 目の前のこと
「白沙」: 白い砂地
「灘」: 水が流れこむあさせ
「生生」: いきいきしているさま
「爽快」: さわやかで気持ちがよい
「靜謐」: 静かでひっそりしている
「明光」: 明るい光
「R耀」: まぶしくひかり輝く
「完」: ぐるりととりまいているさま


























[08]
投稿者 茜峰 

[夏日即事(初夏山行)]

露珠濡潤陟山巒   露珠の濡潤 山巒を陟る

杜宇殘鶯哢吭闌   杜宇 残鶯 哢吭闌なり

前夜談諧今曉發   前夜 談諧し 今暁発す

眺望銘記健康歡   眺望し 銘記す 健康の歓び

          (上平声「十四寒」の押韻)



 初夏 岡山と鳥取の県境の蒜山に登る。露が光り足が濡れるのも心地よい。
 ホトトギス・ウグイスが 晴天を喜ぶかのように鳴き 私たちの足も軽く感じる。
 昨夜は友と歓談し 今朝は早く出発した。眼下の素晴らしい眺めを楽しみ、健康のありがたさを心に刻んだ。

























[09]
投稿者 岳城 

[夏日即事]

熾日延延百草乾   熾日 延延 百草乾く

炎風倍舊轉艱難   炎風 旧に倍し 転た艱難

心頭滅却其無術   心頭滅却 其の術も無く

午影微涼披戸看   午影の微涼 戸を披き看る

          (上平声「十四寒」の押韻)




























[10]
投稿者 地球人 

[夏日即事]

暑天蟬噪鳥聲歓歡   暑天 蝉噪ぎ 鳥声歓ぶ

日暮微風月上欄   日暮 微風  月欄に上る

緣側納涼開白黒   縁側 納涼  白黒開く

丁丁終局坐團欒   丁丁 局終え 坐て団欒す

          (上平声「十四寒」の押韻)


 日が暮れても暑いので納涼に縁側で囲碁を楽しんでいる様子を描いてみました。 
























[11]
投稿者 輪中人 

[夏日即事]

村郊耕圃一瓢安   村郊 耕圃 一瓢安し

朱夏採瓜今日歡   朱夏瓜を採って今日の歡

蒼樹清陰消午熱   蒼樹の清陰 午熱を消し

與朋忘刻喜芳餐   朋と時を忘れ 芳餐を喜ぶ

          (上平声「十四寒」の押韻)


  
























[12]
投稿者 道佳 

[夏日即事]

夏日追懷焦土歎   夏日の追懐 焦土の歎き

清閑尾瀬唱和歡   清閑なる尾瀬 唱和す歓び

四葩清淨吟梅雨   四葩は清浄 吟ず梅雨

不覆茸雲長久安   茸雲を覆せず 長久の安ぎ

          (上平声「十四寒」の押韻)


 戦後、焦土の歎きの中で、希望を求めて「夏の思い出」(中田喜直曲)を歌った。
 静かな尾瀬青い空とみんなで歌う歓びあふれた。
 いまは、紫陽花が、清らかに咲く梅雨のなかで吟じている。
 再びきのこ雲に覆われることのない、悠久の平和を求めて

























[13]
投稿者 鮟鱇 

[夏日即事 其一 五言絶句]

避暑山莊好,     暑を避くるに山莊好く,

黄昏蟬語單。     黄昏に蝉語單なり。

村醪堪啜飲,     村醪 啜り飲むに堪へ,

醉望落霞丹。     醉って望む 落霞の丹(あか)きを。

          (上平声「十四寒」の押韻)


  
























[14]
投稿者 鮟鱇 

[夏日即事 其二 六言絶句]

避暑應登高處,    暑を避くるに應に高處へ登るべく,

追涼身到雲端。    涼を追って身は雲端に到る。

山莊詩酒堪樂,    山莊の詩酒 樂しむに堪へれば,

夕暮烟霞可餐。    夕暮の烟霞 餐(くら)ふべし。

          (上平声「十四寒」の押韻)


  
























[15]
投稿者 鮟鱇 

[夏日即事 其三 七言絶句]

夕風涼意促憑欄,   夕べの風の涼意 欄に憑(よ)るを促し,

山暮閑聽蝉語單。   山暮れて閑に聽く 蝉語の單なるを。

覺餓無言暗期待,   餓(空腹)を覺へ言なく暗に期待す,

温泉浴後有佳餐。   温泉 浴後に佳餐のあるを。

          (上平声「十四寒」の押韻)


  
























[16]
投稿者 鮟鱇 

[夏日即事 其四 五言律詩]

炎熱烹衰老,     炎熱 衰老を烹(に),

詩朋又臥棺。     詩朋また棺に臥す。

曳杖登山寺,     杖を曳いて山寺へ登り,

回頭憶辛酸。     頭を回らせて辛酸を憶(おも)ふ。

蟬鳴列營葬,     蝉鳴いて營葬に列し,

人立正衣冠。     人 立ちて衣冠を正す。

流汗如垂涙,     汗を流して涙を垂るるごとく,

西天半月殘。     西天に半月殘す。

          (上平声「十四寒」の押韻)


  
























[17]
投稿者 鮟鱇 

[夏日即事 其五 七言律詩]

毎天買酒洗胸肝,   毎天 酒を買って胸肝を洗ひ,

老扮詩人猶苟安。   老いて詩人に扮しなほも苟安。

午睡追涼醒昏暮,   午睡(昼寝)に涼を追って昏暮に醒め,

陽臺傾盞擅言歡。   陽臺(ベランダ)に盞を傾けて言歡を擅(ほしいまま)にす。

繆斯陪我看聲病,   繆斯(ミューズ)我に陪して聲病を看み,

囈語如花開墨盤。   囈語(寝言)は花の如く墨盤(すずり)に開く。

涼意更催蝉亂噪,   涼意 蝉の亂れ噪ぐを更に催(うなが)し,

落霞照映醉眸丹。   落霞は照り映ゆ 醉眸に丹(あか)く。

          (上平声「十四寒」の押韻)


  
























[18]
投稿者 鮟鱇 

[夏日即事 其六 五言絶句]

竹徑多蝉語,     竹徑に蝉語多く,

夕陽依碧山。     夕陽 碧山に依る。

旗亭堪賞景,     旗亭 景を賞(め)づるに堪へ,

妻未欲歸還。     妻は未だ歸還(かへ)らんとせず。

          (上平声「十五刪」の押韻)


  
























[19]
投稿者 鮟鱇 

[夏日即事 其七 六言絶句]

碧瀬清流滾滾,    碧瀬の清流 滾滾として,

緑陰曲徑彎彎。    緑陰の曲徑 彎彎たり。

登高何敢流汗?    高きに登りて何んぞ敢へて汗を流さんや?

消夏應須隱山。    夏を消すには應に須らく山に隱るべし。

          (上平声「十五刪」の押韻)


  
























[20]
投稿者 鮟鱇 

[夏日即事 其八 七言絶句]

夕暮涼臺對碧山,   夕暮の涼臺(ベランダ)碧山に對し,

獨傾啤酒借朱顔。   獨り啤酒(ビール)を傾けて朱顔を借る。

醉乘吟興敲詩句,   醉って吟興に乘り詩句を敲くに,

看到殊無字句刪。   看るに到る 殊に字の刪(けず)るべきの無きを。

          (上平声「十五刪」の押韻)


  
























[21]
投稿者 鮟鱇 

[夏日即事 其九 五言律詩]

風氣涼臺爽,     風氣(かぜ)涼臺(ベランダ)に爽やかに,

獨傾午酒閑。     獨り午酒を傾けて閑なり。

緑陰無世事,     緑陰に世事なく,

黄卷見仙顏。     黄卷(書物)に仙顏(美人)を見ゆ。

含笑招香夢,     笑みを含んで香夢に招かれ,

遊魂上玉山。     魂を遊ばせて玉山に上る。

醒來身月下,     醒め來たれば身は月下にあり,

目送暮禽還。     目送す 暮禽の還るを。

          (上平声「十五刪」の押韻)


  
























[22]
投稿者 鮟鱇 

[夏日即事 其十 七言律詩]

消夏遨遊隔世間,   消夏の遨遊 世間を隔て,

登登幽徑曲彎彎。   登り登る 幽徑の曲がりて彎彎たるを。

蝉鳴石磴舖青蘚,   蝉は鳴きて石磴は青蘚を舖き,

日照火雲纏碧山。   日は照りて火雲は碧山に纏はる。

看到酒旗翻旅店,   看るに到る 酒旗の翻りたる旅店の,

宛如霞洞賣童顏。   宛も霞洞ありて童顏を賣るがごときを。

笑傾雲液與村婦,   笑って雲液を傾け村婦と,

却老高談増壽斑。   老いを却(しりぞ)け高談し壽斑を増す。

          (上平声「十五刪」の押韻)

   壽斑:老人の皮膚に生じる黒斑。


  
























[23]
投稿者 點水 

[夏日即事]

暑威欲避着衣單   暑威避けんと欲し 着衣単なり

焦熱南風入骨酸   焦熱の南風 骨に入りて酸なり

撒水滿庭流汗減   満庭に撒水 流汗も減じ

北窓静坐賦詩観   北窓に静坐 詩を賦して観る

          (上平声「十四寒」の押韻)


  
























[24]
投稿者 陳興 

[夏日即事]

颱風自古恐多頑   

今歳至今聞未還   

雖好滄波千尺浪   

不如呼嘯萬重山   

          (上平声「十五刪」の押韻)


  
























[25]
投稿者 道魔(在広州) 

[夏日即事]

鳥鳴山幽水潺潺,   

坐對藕花倚憑欄,   

心靜自有涼風至,   

夜聽松濤起波瀾。   

          (上平声「十四寒・十五刪」の通韻)


 陳興さんがご友人の作を送って下さったので、日本編に登載させていただきました。
























[26]
投稿者 楽拾(在北京) 

[夏日即事]

空中高閣對汝顏,   

壕蔥蔥仲夜閨C   

風吹雲卷憂患了,   

只留蟬鳴蕩心間。   

          (上平声「十五刪」の押韻)


 陳興さんがご友人の作を送って下さったので、日本編に登載させていただきました。
























[27]
投稿者 成蹊(在アメリカ) 

[夏日即事]

觀花戲蝶暖風閨C   

賞魚聞蟲水雲間,   

素手輕搖錦絹扇,   

情鳥雙棲隱嬌顏。   

          (上平声「十五刪」の押韻)


 陳興さんがご友人の作を送って下さったので、日本編に登載させていただきました。
























[28]
投稿者 杜正 

[夏日即事]

携友攀來雨後山   友を携え 攀じ来たる 雨後の山

遙望絶景嶺雲間   遙に望む 絶景 嶺雲の間

溪泉一浴忘塵事   渓泉にて 一浴すれば 塵事を忘れ

涼處談詩遊子顏   涼処にて 詩を談じる 遊子の顔

          (上平声「十五刪」の押韻)


 友人といっしょに 雨が止んだ後 山に登れば
山頂では遙に 嶺にかかった雲の間に絶景が望まれる。
谷川の温泉で 一風呂あびれば 世の中の事を忘れ、
涼しいところで 詩を談じる旅人の顔だ。

 

























[29]
投稿者 劉建 

[夏日即事 一]

鶯声誘引入林看   鴬声に 誘引せられて 林に入りて看れば

細柳低垂似雪殘   細柳は 低く垂れ 雪残るに似る

忽憶亡魂憮野趣   忽ち憶ふ 亡き魂 野趣を憮しむを

珍珠花下報平安   珍珠花の下 平安を報ず

          (上平声「十四寒」の押韻)


「珍珠花」: バラ科の落葉低木。春に白い花を付け、雪柳を指す。
























[30]
投稿者 劉建 

[夏日即事 二]

太平鳥餓越冬山   太平鳥餓へて 冬山を越へ

帰路求餐往復還   帰路 餐を求めて 往き復還る

夏至花楸將結實   夏至 花楸 将に実を結ばんとし

故園久待散紅斑   故園 久しく待つ 紅斑を散らすを

          (上平声「十五刪」の押韻)


「太平鳥」: 鳥類。黄連雀を指す。
「花楸」: バラ科の落葉高木。春に白い花を付け、冬に赤い実を付ける。七竈を指す。

























[31]
投稿者 Y.T 

[夏日即事]

枇杷実熟石榴丹   枇杷の実 熟し 石榴は丹し

壕深深蟬語闌   緑蔭 深深 蝉語 闌たり

蕉葉扇風涼氣起   蕉葉 風を扇いで 涼気 起こり

無端取得一時歡   端無くも 取を得たり 一時(いっとき)の歓

          (上平声「十四寒」の押韻)


  
























[32]
投稿者 忍夫 

[夏日即事 一]

追求名利倦人間   名利を追求して 人間に倦み、

晩酌消憂暫樂閑   晩酌憂ひを消して暫し閑を楽しむ。

何日隠居無一事   何日か隠居して一事なく、

晴耕雨讀愛青山   晴耕雨読 青山を愛でむ。

          (上平声「十五刪」の押韻)


  
























[33]
投稿者 忍夫 

[夏日即事 二]

溪村寄跡忘人間   渓村に跡を寄せ 人間を忘れ、

澄耳水聲心自閑   耳を澄ます水声 心自ずと閑なり。

獨楽無爲軒下坐   独り無為を楽しみ 軒下に坐せば、

薫風一陣仰青山   薫風一陣 青山を仰ぐ。

          (上平声「十五刪」の押韻)


  
























[34]
投稿者 東山 

[夏日即事]

誘引薫風望翠巒   薫風に誘引せられて 翠巒を望み

C流停歩倚欄干   清流歩を停めて 欄干に倚る

財K徹底小鮮戲   緑潭徹底 小鮮戯れ

童子爭奔投釣竿   童子争ひ奔りて 釣竿を投ず

          (上平声「十四寒」の押韻)


  
























[35]
投稿者 ニャース 

[夏日即事]

他郷盛夏日長歡   

冷酒專來悦野餐   

節制人難痛風得   

医生苦口勸休肝   

          (上平声「十四寒」の押韻)


  
























[36]
投稿者 智障儿童(内蒙古) 

[夏日即事]

暑氣蒸邊塞,   

焉儔數九寒。   

俗人黌内擾,   

慧者亂中安。   

入序天猶曉,   

歸家日已丹。   

炎炎常如是,   

久處一何難。   

          (上平声「十四寒」の押韻)


  
























[37]
投稿者 明鳳 

[夏日即事 一]

夏之陋圃奮鍬完   夏の陋圃に 鍬を奮って完(まっとう)すれば

成果歴然収穫闌   成果は歴然として 収穫は闌(たけなわ)なり

茄子胡瓜緑裡   茄子と胡瓜は 青緑の裡

西紅柹赫葉間看   西紅柿は赫として 葉間に看る

          (」の押韻)


 ナス・キュウリ・トマトの家庭園芸に 精を出した感懐です。

「陋圃」: せまくむさ苦しい畑
「赫」: 赤くかがやくさま


























[38]
投稿者 明鳳 

[夏日即事 二]

茄子初成翠葉間   茄子の初成りは翠葉の間

胡瓜柵圃有餘閑   胡瓜の柵圃に 余閑有り

脇芽翦定西紅柹   脇芽翦定する 西紅柿

除草精勞夏日殷   除草に精労すれば 夏日は殷(さかん)たり

          (上平声「十五刪」の押韻)


  
























[39]
投稿者 常春 

[夏日即事 一]

有期梅雨雨情殫   有期の梅雨 雨情殫き

無慮積雲雲意闌   無慮の積雲 雲意闌(たけなわ)

流汗淋漓萎五臓   流汗淋漓 五臓萎ゆるも

浥嚨麥酒不須餐   嚨(のど)を浥す麦酒 餐を須ひず

          (上平声「十四寒」の押韻)


 梅雨明け、忽ち入道雲の空。だが夕立に縁遠い。
 外出すれば汗まみれ。ビールで喉をうるおす醍醐味、これだけで飯はいらない。


























[40]
投稿者 常春 

[夏日即事 二]

畦草繁延速   畦草 繁り延ぶること速し

衰身熱暑嘆   衰身 熱暑を嘆く

夕涼纔立畝   夕涼 纔に畝に立てば

五夜夢魂安   五夜 夢魂 安らか

          (上平声「十四寒」の押韻)


 畦草の伸びるのは実に早い。老人 暑さを嘆くばかり。
 夕方ちょっとの間、除草に精を出す。
 此の疲れで、明け方までぐっすりと。

























[41]
投稿者 常春 

[夏日即事 三(憶八月六日)]

蕈雲自矛盾   蕈雲 自ずから矛盾

人類用才殘   人類才を用いるを 残(そこな)ふ

無核道程遠   無核の道程遠けれども

有知希望鑽   知あり、希望を鑽(うが)たん

棟梁念眞摯   棟梁の念ひ 真摯

會衆解心丹   会衆 心丹を解す

廣島黎明畫   広島に黎明画し

萬民纔遇安   万民 纔に安に遇ふ

          (上平声「十四寒」の押韻)


  オバマ大統領の広島訪問、演説は真情、そして詩情溢れるものだった。

 「Yet in the image of a mushroom cloud that rose into these skies, we are most starkly reminded of humanity’s core contradiction, how the very spark that marks us as a species, our thoughts, our imagination, our language, our tool making, our ability to set ourselves apart from nature and bend it to our will-those very things also give us the capacity for unmatched destruction.」

「Among those nations like my own that hold nuclear stockpiles, we must have the courage to escape the logic of fear and pursue a world without them.」

「Realizing that ideal has never been easy, even within our own borders, even among our own citizens. But staying true to that story is worth the effort. It is an ideal to be strived for, an ideal extends across continents and across oceans.」

























[42]
投稿者 觀水 

[夏日即事 一]

海邊夏日好偸閑   海辺 夏日 閑を偸むに好し

世上紛紛我不關   世上 紛々たるも我関せず

熱氣雲驕京葉港   熱気 雲は驕る京葉の港

南風鳥飽水天間   南風 鳥は飽く水天の間

歩頭難數白銀浪   歩頭 数へ難し 白銀の波

遊眼漫望藍碧灣   眼を遊ばせ漫ろ望む藍碧の湾

遠笛一聲相喚處   遠笛 一声 相喚ぶ処

吟情容易入仙寰   吟情 容易に仙寰に入る

          (上平声「十五刪」の押韻)


 夏のいちにち海のそば のんびり過ごすのにいいね
 世の中さわがしいけれど そんなの僕の知ることか
 熱い空気に雲のびる 東京千葉のこの港
 南風には鳥が舞う 空と海とのその間
 歩く足元みてみれば 数えきれない白い波
 ぐるり眺める目にうつる 見渡すかぎり青い湾
 遠く汽笛の音がする なんだか呼んでいるようだ
 詩を作りたくなる気持ち 神仙界に入り込む


























[43]
投稿者 觀水 

[夏日即事 二]

海邊夏日好求懽   海辺 夏日 懽を求むるに好し

少醉何悲腹笥寒   少酔 何ぞ悲しまん 腹笥の寒きを

魚影浮沈繋船舶   魚影 浮沈 船舶を繋ぎ

鳥聲斷續和波瀾   鳥声 断続 波瀾に和す

火雲長處爽涼見   火雲 長ずる処 爽涼を見

過雨來時炎暑闌   過雨 来る時 炎暑闌なり

感得風光千變妙   風光 千変の妙を感じ得て

不知吟興滿心肝   知らず 吟興 心肝に満つ

          (上平声「十四寒」の押韻)


 夏のいちにち海のそば 憂さ晴らしにもふさわしい
 日ごろ勉強足りぬのも ほろ酔い加減で気にしない
 魚のかげが浮き沈み 船と船とをつなぐよう
 鳥の鳴くこえ切れぎれに 寄せては返す波に乗る
 雲の大きくなるところ 涼しい感じあるけれど
 雨の降りだす頃合いは 暑さのほうも真っ盛り
 景色いろいろ変化する その面白さわかったら
 いつの間にやら詩を作る 気持ちカラダに満ちている


























[44]
投稿者 玄齋 

[夏日即事]

懷君積翠進山關   君が積翠の山関を進むを懐ひ

幾越雲峯險阻間   幾たびか雲峰 險阻の間を越ゆ

把筆竹風吟颯颯   筆を把りて竹風の颯颯たるを吟じ

漱川石P聽潺潺   川に漱(くちすす)ぎて石Pの潺潺たるを聴く

獨登任足過幽徑   独り登りて足に任せて幽径を過ぎ

深慮省身憶大寰   深く慮りて身を省みて大寰を憶ふ

漸至九衢前路裏   漸く九衢の前路の裏に至り

意堅心淨何時還   意 堅くして心 浄くして何れの時にか還らん

          (上平声「十五刪」の押韻)


あなたが積み重なった緑の山の形に従って建てられた砦(山の関所)を進むのを思って、
何度か雲のかかった峰の険しい間を越えていました。

筆を取って竹の間を通る風がさっと吹く詩を作り、
川の水でうがいをして、石の上を川が流れている浅瀬の渓流の流れる音を聴きました。

一人登って足に任せて静かな小道を過ぎていき、
深く思い巡らして自分の身を省みて、この世界のことを思うのです。

ようやく都の大通りのこれから先の道の中に至り、
気持ちを堅く持って心を清くして、いつの時にか帰ろうと思います。



 昨日、無事に退院して、引越し先の自宅に到着しました。
 今回も七言律詩を作り、自分の気持ちを述べることにしました。

 今回の入院中に生きていくことは、病気の人も健康な人も大変なことだと痛感しました。
病気の中で漢詩を作る、そんな生活の中でも、この漢詩の厳しい状況にも、耐えていける自分にならなければならないと、改めて思いました。

 これからもしっかりと、療養を続けながらも漢詩作りと勉強を、身を入れて進めていこうと思います。






















[45]
投稿者 忍冬 

[夏日即事]

靈泉沐浴洗塵顏   霊泉沐浴 塵顔を洗い

日赫蝉聲欲撼山   日赫 蝉声 山を動かさんと欲す

夏木陰森不知暑   夏木陰森 暑を知らず

拷ラ風動一渓環   緑荷 風動く 一渓の環

          (上平声「十五刪」の押韻)


  
























[46]
投稿者 (桐山堂刈谷)眞海 

[夏日水村(長良川鵜飼)]

涼夜清流篝火丹   涼夜 清流 篝火丹し

長良弦月水中看   長良の弦影 水中に看る

鵜漁巧技傅今古   鵜漁の巧技 今古に伝はり

踊躍香魚宵已闌   踊躍する香魚 宵已に闌なり

          (上平声「十四寒」の押韻)


  
























[47]
投稿者 (桐山堂刈谷)松閣 

[夏日水村]

首夏郷村水色寛   首夏の郷村 水色寛し

蟬啁下午響漫漫   蟬啁 下午 響き漫漫

葵花向日南郊路   葵花 日に向かふ南郊の路

拂暑杯觴風僅殘   暑を払ひて杯觴 風僅かに残る

          (上平声「十四寒」の押韻)


  
























[48]
投稿者 (桐山堂刈谷)勝江 

[夏日即事]

長天淺淺古江寛   長天 浅浅 古江寛し

白水遊魚倚杖看   白水 遊魚 杖に倚りて看る

堤上小亭鶯語盡   堤上の小亭 鶯語尽き

黄昏夕照染前巒   黄昏 夕照 前巒を染む

          (上平声「十四寒」の押韻)


  
























[49]
投稿者 (桐山堂刈谷)聖峰 

[夏日水村]

瀲灔逝川悠遠看   瀲灔たる逝川 悠遠に看る

鴛鴦橋畔別離難   鴛鴦 橋の畔 別離難し

郷村夏午新涼裏   郷村 夏午 新涼の裏

如鏡風懷儘可觀   鏡の如く 風懐 儘観るべし

          (上平声「十四寒」の押韻)


  
























[50]
投稿者 (桐山堂刈谷)老遊 

[夏日水村 一]

欲避炎威寄翠巒   炎威を避さけんと欲し翠巒に寄る

水村一望稲田漫   水村一望 稲田漫し

松間信歩洿池渚   松間歩を信せば洿池の渚

僅得蘋風騒客安   僅かに得たり 蘋風 騒客安んず

          (上平声「十四寒」の押韻)


  
























[51]
投稿者 (桐山堂刈谷)老遊 

[夏日水村 二]

驕陽避暑老農安   驕陽暑を避け 老農は安んずる

萬頃水田松下觀   万頃の水田 松下に観る

謖謖涼風奏琴瑟   謖謖 涼風 琴瑟を奏づ

夢中坐見稲花闌   夢中 坐して見る 稲花の闌なるを

          (上平声「十四寒」の押韻)


  
























[52]
投稿者 (桐山堂刈谷)老遊 

[夏日水村 三]

江畔郊墟野色寛   江畔の郊墟 野色寛し

青青楊柳一望看   青青たる楊柳 一望の看

老農時憩簷陰下   老農時に憩ふ 簷陰の下

雛燕辭巢夏已闌   雛燕 巣を辞して 夏已に闌なり

          (上平声「十四寒」の押韻)


  
























[53]
投稿者 (桐山堂刈谷)M.O 

[夏日即事]

斷梅天霽白雲看   断梅 天霽れ 白雲を看る

溪水潺湲落日丹   渓水潺湲 落日丹し

泉石無人舞螢色   泉石 人無く 螢色の舞ふ

聚星燦爛夜漫漫   聚星燦爛とし 夜漫漫

          (上平声「十四寒」の押韻)


  
























[54]
投稿者 (桐山堂刈谷)遊山 

[夏日水村]

蘇江十里水漫漫   蘇江十里 水漫漫たり

白鷺捕魚蘆岸瀾   白鷺魚を捕るを蘆岸の瀾

洲島津亭無客訪   洲島の津亭 客の訪ふ無く

暑天不厭見投竿   暑天厭はず 投竿を見る

          (上平声「十四寒」の押韻)


「蘇江」:木曽川
























[55]
投稿者 桐山人 

[夏日即事 一]

惚邇ユ日一窗寛   緑帷 日を遮りて一窗寛し

涼氣微生繚几攢   涼気微かに生じ 几を繚りて攅まる

駁雜架書除塵嬾   駁雜たる架書 塵を除くに嬾く

晝眠夢裏已抛翰   昼眠の夢裏 已に翰を抛つ

          (上平声「十四寒」の押韻)


  
























[56]
投稿者 桐山人 

[夏日即事 二(夏登山)]

登至眼前高峻山   登り至らんとす 眼前 高峻の山

溪聲已遠告X閑   渓声 已に遠く 緑は森閑

天風一蹴白雲影   天風一蹴す 白雲の影

素蝶攜人行復還   素蝶 人を携へて 行き復た還る

          (上平声「十五刪」の押韻)


  
























[57]
投稿者 桐山人 

[夏日水村]

雛鷺中天散復攢   雛鷺 中天 散じ復た攅まる

柳楊堤畔水漫漫   柳楊の堤畔 水漫漫たり

一望十里無人語   一望 十里 人語無し

夏日ク村情意完   夏日ク村 情意完し

          (上平声「十四寒」の押韻)


  
























[58]
投稿者 春空 

[夏日即事]

白雲舒巻壓南山   白雲 舒巻して 南山を圧す

赤日炎炎萬物閑   赤日 炎炎として 万物閑なり

樹影猫眠吾待夜   樹影 猫は眠り 吾は夜を待つ

涼風川畔草螢環   涼吹の川畔 草螢環るを

          (上平声「十五刪」の押韻)