第37回 世界漢詩同好会総会(二〇一四年一月二十六日)

 『世界漢詩同好会』の第37回総会は、1月26日、春節の直前に開催します。
 詩題(今回は『迎新年』『立春即事』)と押韻(今回は「上平聲七虞」)を共通として、その日までに各国の幹事サイトに投稿された詩を交流し合うものです。
 今回は特に新年・新春を多くの人で祝うものとし、韻目が異なる詩も交流詩として参加とします。

 日本では、この『漢詩を創ろう』のサイトが幹事となり、皆さんの交流詩を集約、掲載します。



 日本からの参加詩です。投稿順に紹介します。
番号をクリックして下さい。
    作品番号 作 者 題 名 詩 形
   01 常 春 「甲午新年」七言絶句
   02 常 春 「元旦看曙光」七言絶句
   03 明 鳳 「迎新年(其一)」七言絶句
   04 明 鳳 「迎新年(其二)」七言絶句
   05 明 鳳 「迎新年(其三)」七言律詩
   06 哲 山 「迎新年」七言絶句
   07 Y.T 「早春即事 一」五言絶句
   08 Y.T 「新春即事(七十九歳春)」七言絶句
   09 Y.T 「早春即事 二」七言律詩
   10 禿 羊 「甲午新春書懐」七言絶句
   11 東 山 「新年即事」七言律詩
   12 東 山 「新春即事」七言絶句
   13 点 水 「迎新年」七言絶句
   14 点 水 「立春即事」七言絶句
   15 兼 山 「迎新年」七言絶句
   16 兼 山 「立春即事」七言絶句
   17 押 原 「迎新年(初詣即事)」七言絶句
   18 道 佳 「迎新年」七言絶句
   19 杜 正 「迎新年」七言絶句
   20 香@風 「新年賀正」七言絶句
   21 ニャース(在上海) 「迎新年 (臨春節)」七言絶句
   22 謝 斧 「立春即事 一」七言絶句
   23 謝 斧 「立春即事 二」七言絶句
   24 謝 斧 「立春即事 三」七言絶句
   25 謝 斧 「立春即事 四」七言律詩
   26 亥 燧 「立春即事」七言絶句
   27 劉 建 「立春即事」七言律詩
   28 銅 脈 「立春即事」七言絶句
   29 鮟 鱇 「迎新年 其一」五言絶句
   30 鮟 鱇 「迎新年 其二」五言絶句
   31 鮟 鱇 「迎新年 其三」七言絶句
   32 鮟 鱇 「迎新年 其四」七言絶句
   33 鮟 鱇 「迎新年 其五」五言律詩
   34 鮟 鱇 「迎新年 其六」七言律詩
   35 觀 水 「元旦口號」七言絶句
   36 觀 水 「迎新年」七言律詩
   37 勝 江(桐山堂刈谷) 「迎春」七言絶句
   38 眞 海(桐山堂刈谷) 「迎新年」七言絶句
   39 N.I(桐山堂刈谷) 「迎新年」七言絶句
   40 T.K(桐山堂刈谷) 「甲午新春」七言絶句
   41 T.S(桐山堂刈谷) 「迎新年」七言絶句
   42 仁 山(桐山堂刈谷) 「迎新年」七言絶句
   43 Y.I(桐山堂刈谷) 「迎新年」七言絶句
   44 W.I(桐山堂刈谷) 「新年」七言絶句
   45 小 園(桐山堂刈谷) 「甲午新年」七言絶句
   46 M.O(桐山堂刈谷) 「迎春」七言絶句
   47 桐山人 「立春郊行」七言絶句
   48 桐山人 「立春即事」七言律詩


 <こちらは韻目の異なる「新年」の漢詩です>

    作品番号 作 者 題 名 詩 形
   別韻01 兼 山 「甲午新春有感(一)」七言絶句
   別韻02 兼 山 「甲午新春有感(二)」七言絶句
   別韻03 ニャース 「新年作」七言絶句
   別韻04 謝 斧 「詠馬」五言古詩
   別韻05 鮟 鱇 「謹賀新年」七言絶句
   別韻06 鮟 鱇 「東風第一枝・迎接甲午年游香夢」
   別韻07 鮟 鱇 「迎新春・迎接甲午年所懷」
   別韻08 紫 照 「新年口號」七言絶句
   別韻09 風雷山人 「2014年年賀」五言絶句
   別韻10 道 佳 「魁寒梅」七言絶句
   別韻11 亥 燧 「甲午新年書感」七言絶句
   別韻12 押 原 「新年感懷」七言絶句
   別韻13 越粒庵 「新年試作」五言絶句
   別韻14 杜 正 「平成甲午年勅題『静』」七言絶句
   別韻15 香@風 「新年賀正 一」七言絶句
   別韻16 香@風 「新年賀正 二」七言絶句
   別韻17 東 山 「甲午新年 一」七言絶句
   別韻18 東 山 「甲午新年 二」七言絶句
   別韻19 汨羅江(臺中國) 「午馬重來」七言律詩
   別韻20 桐山人 「甲午新年(和汨羅江先生賀詩)」七言律詩
   別韻21 洋 景 「新年作」五言絶句
   別韻22 陳 興(在上海) 「元旦」七言絶句
   別韻23 芳 原 「迎新年」五言絶句
   別韻24 銅 脈 「初春偶成」七言絶句
   別韻25 藤城英山 「希望」七言絶句
   別韻26 藤城英山 「地球聲(二)」七言絶句
   別韻27 越粒庵 「新年感懷」五言絶句
   別韻28 茜 峰 「新年書懷」七言絶句
   別韻29 亥 燧 「新年書感」七言絶句
   別韻30 柳田周 「年頭懷」七言絶句
   別韻31 澄 朗 「平等院」七言絶句
   別韻32 深 溪 「甲午歳旦口占」五言絶句
   別韻33 明 鳳 「東京奥林匹克偶感」七言絶句
   別韻34 豊 邨 「新年作」七言絶句
   別韻35 石川岳堂 「元日書懷」七言絶句
   別韻36 偸 生 「甲午元旦(山棲即事)」七言律詩
   別韻37 桃羊野人 「迎新年」七言絶句
   別韻38 老 遊(桐山堂刈谷) 「新春」七言絶句
   別韻39 觀 水 「新春」七言絶句





































[01]
投稿者 常春 

[甲午新年]

内憂外患在何隅   内憂外患 何隅に在らん

地異天災疎老軀   地異天災 老躯に疎し

迎午八回冥土近   午を迎ふること八回 冥土近し

新春不慶是癡愚   新春慶ばざれば是痴愚ならん

          (上平聲「七虞」の押韻)


   門松はめいどのたびの一里づか馬かごもなしとまり屋もなし

      −一休蜷川狂歌問答

























[02]
投稿者 常春 

[元旦看曙光]

富嶽開天紅雪膚   富嶽 天を開き 雪膚紅し

天城溶海展雲衢   天城 海に溶けて雲衢展く

黎明村社初光出   黎明の村社 初光出づれば

吉語掌聲歡洽呼   吉語 掌聲 歓 洽く呼ばはる

          (上平聲「七虞」の押韻)


























[03]
投稿者 明鳳 

[迎新年(其一)]

春從萬古有還紆   春は万古より 有りてまた紆(めぐ)り

先自履端初詣徂   先ずは履端より 初詣に徂(ゆ)く

~域呈祥風物改   神域は祥を呈して 風物改まり

御籤占託得心娯   御籤の占託に 心娯を得る

          (上平聲「七虞」の押韻)


「履端」: 年の初め
「御籤」: 御神籤
「占託」: 神託























[04]
投稿者 明鳳 

[迎新年(其二)]

家内安全祈願符   家内安全は 祈願の符

古稀有七命成吁   古稀有七に 命(さだめ)は吁(う)と成り

浮生如夢喜無事   浮生は夢の如く 事無きを喜ぶ

無病息災風雅倶   無病息災なれば 風雅を倶(とも)にせん

          (上平聲「七虞」の押韻)

「符」: 護符
「古稀有七」: 七十七歳(喜寿)
「吁」: なげき
「浮生」: 儚い人生、
























[05]
投稿者 明鳳 

[迎新年(其三)]

雅致不知吟得無   雅致知らずして 吟じ得るや無(いな)や

託宣欲問請~符   託宣問わんと欲して 神符を請(もと)む

春從萬古花相似   春は万古より 花は相似て

人自履端年壽殊   人は履端より 年寿は殊なり

温故知新明黒白   温故知新に 黒白(こくびゃく)を 明らかにし

一期一會樂C娯   一期一会に 清娯を楽しむ

尋章摘句詩情顯   尋章摘句すれば 詩情顕(あき)らかに

甲午歳朝心意愉   甲午の歳朝は 心意愉たり

          (上平聲「七虞」の押韻)


「履端」: 年の初め
「年壽」: 人の運命
「歳朝」: 元旦

























[06]
投稿者 哲山 

[迎新年]

迎春温暖古稀奴   迎春温暖 古稀の奴

雖賀常常閉戸愉   賀と雖も常常 戸を閉じて愉しむ

朝筆午書而晩酌   朝に筆とり 午には書を 而して晩に酌むをなす

忘憂倦則狗倶趨   憂ひを忘れ 倦めば則ち 狗倶に趨る

          (上平聲「七虞」の押韻)
























[07]
投稿者 Y.T 

[早春即事]

孟春來客少   孟春 来客少(まれ)なり

獨酌濁醪壷   獨り酌む 濁醪の壷

醉到歓無極   醉ひ到たり 歓 極まり無く

放吟忘老軀   放吟 老躯を忘る

          (上平聲「七虞」の押韻)


























[08]
投稿者 Y.T 

[新春即事(七十九歳春)]

歳旦殘燈照一隅   歳旦 残燈 一隅を照らし

野肴獨酌濁醪壷   野肴 獨り酌む 濁醪の壷

舊歓記得淡於夢   旧歓 記(おも)ひ得(いず)れば 夢よりも淡く

七十九年如隙駒   七十九年 隙駒の如し

          (上平聲「七虞」の押韻)


























[09]
投稿者 Y.T 

[早春即事 二]

殘雪良辰客至無   残雪の良辰 客の至る無く

自家臘酒野叟娯   自家の臘酒は 野叟の娯しみ

籬邊杏樹帯紅玉   籬邊の杏樹 紅(くれない)の玉(ぎょく)を帯び

院裏柳條牽翠珠   院裏の柳條 翠りの珠を牽く

嫋嫋東風弄新草   嫋嫋たる東風 新草を弄び

繊繊偃月照庭蕪   繊繊たる偃月 庭蕪を照らす

濁醪三斗發豪氣   濁醪 三斗 豪気 発し

漫舞高吟且忘吾   漫舞 高吟して 且し吾を忘る

          (上平聲「七虞」の押韻)


























[10]
投稿者 禿羊 

[甲午新春書懐]

三國元来如一軀   三国 元来 一躯の如し

何爲寸地諍邉隅   何為ぞ 寸地 辺隅に諍ふ

不關天上亂雲氣   関せず 天上 乱雲の気

諸彦共遊文雅娯   諸彦 共に遊ばん 文雅の娯

          (上平聲「七虞」の押韻)























[11]
投稿者 東山 

[新年即事]

元朝瑞氣到邱隅   元朝の瑞気邱隅に到り

茅屋野翁衰耗蘇   茅屋の野翁衰耗蘇る

一女居家爲粗餐   一女家に居り粗餐を為り

二男帰省祝觴倶   二男帰省して祝觴を倶にす

昔常酣酔妣憂體   昔 常に酣酔して妣は体を憂ひ

今毎訓蒙妻誚吾   今 毎(たびたび)訓蒙して妻は吾を誚む

父母霊前安泰告   父母の霊前に安泰を告げ

兒曹偕老是寶珠   児曹偕老是宝珠

          (上平聲「七虞」の押韻)
























[12]
投稿者 東山 

[新春即事]

歳旦晴明淑氣殊   歳旦晴明 淑気殊なり

村翁獨酌祝觴愉   村翁独酌 祝觴を愉しむ

菲才何厭唐書ト   菲才何ぞ厭はん 唐書をトしみ

恬淡靜吟一隅   恬淡静吟 一隅にらぐ

          (上平聲「七虞」の押韻)
























[13]
投稿者 点水 

[迎新年]

新春白雪舞交衢   新春 白雪 交衢に舞ひ

家族團欒圍火爐   家族団欒 火炉を囲む

男子漫談乗醉興   男子は漫談 酔興に乗ず

女人茶話滑於酥   女人は茶話 酥より滑らか

          (上平聲「七虞」の押韻)
























[14]
投稿者 点水 

[立春即事]

立春佳日得心娯   立春の佳日 心娯を得たり

信歩逍遥不畏迂   歩にまかせて逍遥 迂を畏れず

風暖寒銷流水畔   風暖かく 寒さきえたる流水の畔

浮沈自在酷ェ鳧   浮沈自在は緑頭の鳧

          (上平聲「七虞」の押韻)
























[15]
投稿者 兼山 

[迎新年]

賀年八秩與誰倶   八秩の年 誰と倶に 賀さんや

莫忘雙親育故吾   忘る莫かれ 雙親 故吾を育みしを

児孫三代心身健   児孫 三代 心身健やかなり

應是自知無上愉   應に是れ 自ら知るべし 無上の愉なるを

          (上平聲「七虞」の押韻)


    初春や親子三代恙なし 兼山
























[16]
投稿者 兼山 

[立春即事]

寒氣未融春尚無   寒氣 未だ融せず 春尚無し

暖冬異變杞人愚   暖冬 異變 杞人の愚

漸膨多少梅花蕾   漸く膨む 多少 梅花の蕾

黄鳥欲鳴空去乎   黄鳥 鳴かんと欲して 空しく去る

          (上平聲「七虞」の押韻)


  杞憂なり春は名のみか四季廻る 兼山
























[17]
投稿者 押原 

[迎新年(初詣即事)]

改歳開端萬象蘇   改歳 開端 万象蘇る

老杉矗矗一雲無   老杉 矗矗 一雲無し

清清瑞氣滿神域   清清たる瑞気 神域に満ち

家族息災祈賽倶   家族 息災 祈賽を倶にす

          (上平聲「七虞」の押韻)


























[18]
投稿者 道佳 

[迎新年]

六度午年家運愉   六度 午年 家運愉(やわら)ぐ

相思偕偶欲長驅   相思 偕偶 長駆を欲す

拝迎初日五山寺   拝迎す初日 五山の寺

祈願鐘聲到古都   祈願の鐘聲 古都に到る

          (上平聲「七虞」の押韻)



<解説>

 そろって六度目の午年を迎え、これからも長く駆けてゆきたいという初詣の思いを作詩しました。
























[19]
投稿者 杜正 

[迎新年]

歳朝寒氣滿庭隅   歳朝の寒気 庭隅に満つ

散策村園風切膚   村園を散策すれば 風 膚を切る

刷刷踏霜慶快響   刷刷 霜を踏めば 慶快に響き

仰望梅蕾待春蘇   仰ぎ望めば 梅蕾 春を待って蘇えらん

          (上平聲「七虞」の押韻)



<解説>

 元旦の朝の寒さが 庭の隅々にまで満ちている
 村園を散策すると 風が膚を切るように寒い
 ところが、刷刷(さくさく)と 霜を踏むと 慶快に響くではないか
 仰ぎみれば 梅蕾が春を待って蘇えろうとしている

























[20]
投稿者 緑風 

[新年賀正]

旭日輝窗瑞氣趨   旭日窓に輝き瑞気はしる

坐看初雀老梅娯   坐して看る初雀 老梅にたのしむを

舊知交誼無雙悦   旧知との交誼 無双の悦び

八十人生如隙駒   八十の人生 隙駒の如し

          (上平聲「七虞」の押韻)


























[21]
投稿者 ニャース 

[迎新年 (臨春節)]

人集車站滬城隅   

相問同郷票買無   

苦幹一年為團聚   

皮箱手重赴長途   

          (上平聲「七虞」の押韻)


「滬城」: 上海の街






















[22]
投稿者 謝斧 

[立春即事 一]

立春此日帯行厨   立春の此の日 行厨を帯び

出戸踏青遊興娯   戸を出でて 青踏し遊興娯しむ

北郭吟梅謀一酔   北郭梅を吟じて一酔を謀るも

生憎竹杖酒錢無   生憎も竹杖 酒銭無き

          (上平聲「七虞」の押韻)


「北郭」: 城郭之北、 或云青邱
























[23]
投稿者 謝斧 

[立春即事 二]

初値立春和病軀   初(漸く)立春に値って病躯和らぎ

暖沙遊目睡雙鳧   暖沙遊目す 雙鳧の睡を

杖頭鵝眼嚢中句   杖頭の鵝眼 嚢中の句

故過青旗酒可沽   故に青旗を過ぎりては酒を沽ふべし

          (上平聲「七虞」の押韻)




























[24]
投稿者 謝斧 

[立春即事 三]

舊寺梅枝破蕾無   舊寺の梅枝蕾を破る無や

立春春淺日当壚   立春春浅く 日日壚に当らん

草廬倦讀無聊久   草廬讀に倦みて無聊久しく

初試出遊傭杖扶   初(漸く)出遊を試みて杖を傭うて扶けん

          (上平聲「七虞」の押韻)


























[25]
投稿者 謝斧 

[立春即事 四]

昨雨初晴草木蘇   昨雨初て晴れて 草木蘇り

立春春淺践青蕪   立春春淺く 青蕪を践む

風寒水冷陽光暖   風寒く水冷たくも 陽光は暖かく

雪解氷銷物象殊   雪解けて氷銷て 物象殊なる

翁抱乳猫時坐睡   翁は乳猫抱いて 時に坐睡し

童追家狗日遊娯   童は家狗を追って日日に遊娯す

幾枝破蕾斜好   幾枝は破蕾して 斜好く

梅影眼明能慰吾   梅影眼に明らかに 能く吾を慰めん

          (上平聲「七虞」の押韻)
























[26]
投稿者 亥燧 

[立春即事]

古書千巻得祥符   古書千巻 祥符を得

洗浄硯池臨歐虞   硯池を洗浄して欧虞を臨す

塵外清遊唯畏老   塵外の清遊 唯老を畏る

戯吾俄演七賢徒   戯れに吾 俄かに七賢の徒を演ずる

          (上平聲「七虞」の押韻)


 年末に沢山の書籍をいただきました。私にはお守り札のようです。
早速、竹林の七賢人を気取って臨書を始めましたが、奈何せん
年とりすぎて・・・とても間に合いそうにありません。

























[27]
投稿者 劉建 

[立春即事]

遙岑雲臥望春湖   遙岑 雲臥し 春湖を望み

踏水羣翔越渡鳧   水を踏み 群翔し 越渡の鳧

樹蔭蒼蒼天欲曉   樹蔭 蒼蒼として 天暁とし

酔顔赫赫日将晡   酔顔 赫赫として 日将に将晡

魚多使釣人投網   魚多ければ 釣人をして投網せしみ

兔少令耕者守株   兔少なければ 耕者をして守株せしむ

爲避寒貧当自活   為に避け 寒貧 当に自活すべし

惟除惡鬼貼桃符   惟だ除く  悪鬼 桃符を貼る

          (上平聲「七虞」の押韻)


「守株」: 自分では努力しないでうまい収穫にありつこうとする。ここでは、転じて株を買う意。
























[28]
投稿者 銅脈 

[立春即事]

苦吟無限月輪孤   苦吟限り無く月輪孤なり

拈毫輕寒一葉梧   拈毫軽ら寒く一葉の梧

燈影新春花半散   新春の灯影花半ばに散る

書窗詩夢心計麤   書窓詩の夢心計麁なり

          (上平聲「七虞」の押韻)


























[29]
投稿者 鮟鱇 

[迎新年 其一]

祭詩年底死,   詩を祭って年底に死に,

破夢歳朝蘇。   夢を破って歳朝に蘇へり。

益壽傾椒酒,   壽を益して椒酒を傾け,

揮毫題玉壺。   揮毫 玉壺を題とす。

          (上平聲「七虞」の押韻)


























[30]
投稿者 鮟鱇 

[迎新年 其二]

鏡中衰鬢雪,   鏡の中の衰鬢に雪,

空谷隙駒驅。   空谷に隙駒驅く。

舊歳誇才氣,   舊歳 才氣を誇れば,

新年誓守愚。   新年 愚を守るを誓ふ。

          (上平聲「七虞」の押韻)


























[31]
投稿者 鮟鱇 

[迎新年 其三]

馬齒徒増抱酒壺,   馬齒 徒(いたづら)に増して酒壺を抱き,

歳朝傾盞坐茅廬。   歳朝 盞を傾けて茅廬に坐る。

一年之計待天兎,   一年の計 天兎を待ち,

隨意裁詩守古株。   意に隨ひて詩を裁し古き株を守らん。

          (上平聲「七虞」の押韻)

























[32]
投稿者 鮟鱇 

[迎新年 其四]

馬不停蹄禿筆驅,   馬は蹄を停(と)めず禿筆は驅け,

大書年計向桑楡。   年計を大書し桑楡に向かふ。

歳朝仍舊再強志,   歳朝 舊に仍(よ)り再び志を強くし,

未恐冬寒害老躯。   未だ恐れず 冬寒の老躯を害するを。

          (上平聲「七虞」の押韻)

























[33]
投稿者 鮟鱇 

[迎新年 其五]

茫茫思往事,   茫茫として往事を思ひ,

夢醒老翁蘇。   夢醒めて老翁蘇へる。

旭日昇東海,   旭日 東海に昇り,

荊妻勸酒壺。   荊妻 酒壺を勸む。

芳香流草舎,   芳香 草舎に流れ,

淑氣滿江湖。   淑氣 江湖に滿つ。

院落梅紅綻,   院落に梅 紅く綻ひ,

瓊姿立畫圖。   瓊姿 畫圖に立つ。

          (上平聲「七虞」の押韻)

























[34]
投稿者 鮟鱇 

[迎新年 其六]

老翁取暖煽冬扇,   老翁 暖を取るに冬扇を煽ぎ,

歳暮祭詩隣夏爐。   歳暮 詩を祭るに夏爐に隣る。

刀筆十年生暗銹,   刀筆 十年にして暗き銹(さび)を生じ,

鬼才一夜作凡夫。   鬼才 一夜にして凡夫となる。

醒來悪夢傾椒酒,   悪夢より醒め來って椒酒を傾け,

滌洗吟魂守古株。   吟魂を滌洗して古き株を守る。

乘興揚揚磨醉墨,   興に乘って揚揚と醉墨を磨き,

擬唐求句望前途。   唐に擬(なぞら)へて求句を求め前途を望む。

          (上平聲「七虞」の押韻)

























[35]
投稿者 觀水 

[元旦口號]

起浴東風半夢ク   起て東風に浴すも半ば夢郷

空杯尚含去年香   空杯 尚ほ含む去年の香

人間萬事多勞苦   人間 万事 労苦多きも

醉裏三朝足福幸   醉裏 三朝 福幸足る

          (下平聲「七陽」の押韻)


はるかぜに目を覚ましても 心はんぶん夢のなか
お酒も空っぽなんだけど 残り香だけは年を越す
世の中なんて何だって 大変なことばかりでも
聞こし召してるお正月 じゅうぶん幸せだと思う


























[36]
投稿者 觀水 

[迎新年]

年年碌碌恰如愚   年年 碌碌として恰も愚の如し

獨把紅箋脱火爐   独り紅箋を把りて火炉を脱す

搖壁凍風驚鬢髮   壁を揺らす凍風 鬢髮驚き

透窓寒氣顫皮膚   窓を透かす寒気 皮膚顫ふ

苦吟守歳詩三首   苦吟 歳を守る詩三首

喜飮迎朝酒兩壺   喜飲 朝を迎ふ酒両壺

好煮濃茶起妻子   好し濃茶を煮て妻子を起こし

共圍祝膳盡歡娯   共に祝膳を囲みて歓娯を尽くさん

          (上平聲「七虞」の押韻)


毎度毎度のことながら あいも変わらぬロクデナシ
ひとり紙束かかえ込み コタツを抜けて部屋を出る
凍える風が壁揺らし 髪の毛ざわざわさわがせて
冷たい空気窓越しに 肌をぶるぶるふるわせる
苦労しいしい詩を作り やっと三首の大晦日
喜びお酒飲み干せば たちまち二本のお正月
さてとお茶でも淹れてやり 妻と子どもを起こしたら
皆でおせちをつつきつつ 愉快に過ごしたいものだ

























[37]
投稿者 勝江 

[迎春]

庭園梅發兩三株   庭園の梅発く 兩三の株

春日幽香黄鳥呼   春日 幽香が黄鳥を呼ぶ

靉靆曉雲佳氣動   靉靆たる曉雲 佳気動く

新年頑健太平圖   新しき年 頑健 太平の図

          (上平聲「七虞」の押韻)
























[38]
投稿者 眞海 

[迎新年]

凜烈裂膚風景殊   凜裂膚を裂く 風景殊なり

歳除老體拂庭隅   歳除 老体 庭隅を払ふ

初陽淑氣祈無恙   初陽 淑気 恙無きを祈る

同友迎春詩酒娯   友と同に春を迎へ 詩酒の娯しみ

          (上平聲「七虞」の押韻)


























[39]
投稿者 N.I 

[迎新年]

淑氣瑞光庭一隅   淑気瑞光 庭の一隅

初鶯梅蕾兩三株   初鶯 梅蕾 兩三の株

親朋談笑喜正旦   親朋は談笑し 正旦を喜ぶ

美酒佳肴醉玉壺   美酒 佳き肴 玉壺に酔ふ

          (上平聲「七虞」の押韻)


























[40]
投稿者 T.K 

[甲午新春]

迎春村舎拂庭隅   春を迎ふる村舎 庭隅を払ふ

淑氣四山風景殊   淑気 四山 風景殊なり

甲午新正傾柏葉   甲午新年 柏葉を傾け

親朋談笑意愉愉   親朋 談笑 意愉愉たり

          (上平聲「七虞」の押韻)


























[41]
投稿者 T.S 

[迎新年]

雲晴微暖鳥相呼   雲晴れ微暖 鳥相呼ぶ

草木青青風景殊   草木青青 風景殊なり

喜壽歳朝身尚健   喜寿 歳朝 身尚ほ健たり

知音茶友共圍爐   知音 茶友 共に炉を囲む

          (上平聲「七虞」の押韻)


























[42]
投稿者 仁山 

[迎新年]

東風微暖拂庭隅   東風 微暖 庭隅を払ふ

南面鶯啼梅一株   南面 鶯啼く 梅一株

傘壽新年身尚健   傘寿の新年 身尚ほ健なり

春盤賀客意愉愉   春盤 賀客 意愉愉たり

          (上平聲「七虞」の押韻)


























[43]
投稿者 Y.I 

[迎新年]

早梅含笑兩三株   早梅 笑ひを含む 両三の株

氷解東風春水湖   氷は解く 東風 春水の湖

物候復更身尚健   物候復た更まり 身尚ほ健

歳朝萬事意愉愉   歳朝 万事 意愉愉たり

          (上平聲「七虞」の押韻)


























[44]
投稿者 W.I 

[新年]

晴日太平風景殊   晴日 太平の風景殊なり

東天明霽鳥相呼   東天 明霽にして 鳥相呼ぶ

春聲微響稱光紫   春の聲 微かに聞こえ 称光紫なり

供祖辛盤酒一壺   祖に供す 辛盤と酒一壺

          (上平聲「七虞」の押韻)


























[45]
投稿者 小園 

[甲午新年]

韶光淑氣滿庭隅   韶光 淑気 庭隅に満つ

樹下鶯聲梅一株   樹下の鶯聲 梅一株

ク友圍鑪茶馥郁   朋輩鑪を囲めば 茶馥郁たり

懷思昔日意愉愉   昔日を懐思し 意愉愉たり

          (上平聲「七虞」の押韻)


























[46]
投稿者 M.O 

[迎春]

東風解凍意愉愉   東風 解凍 意愉愉たり

鶯囀南枝尚友呼   鶯は南枝に囀り 尚ほ友を呼ぶ

柏酒春盤新歳宴   柏酒 春盤 新歳の宴

繍衣笑語楽清娯   繍衣 笑語 清娯を楽しむ

          (上平聲「七虞」の押韻)


























[47]
投稿者 桐山人 

[立春郊行]

立春猶有薄寒虞   立春猶ほ有り 薄寒の虞れ

雙鷺水邉飢凍倶   雙鷺 水邉 飢凍を倶にす

扶老詩翁夕陽裏   扶老の詩翁 夕陽の裏

素梅氷艶映江隅   素梅 氷艶 江隅に映ず

          (上平聲「七虞」の押韻)


























[48]
投稿者 桐山人 

[立春即事]

立春猶有薄寒虞   立春猶ほ有り 薄寒の虞れ

隠鬱低雲夕日孤   隠鬱たる低雲 夕日孤なり

凍雀階前忘聚噪   凍雀 階前 聚噪を忘れ

飢鴉梢上倦凝呼   飢鴉 梢上 凝呼に倦む

弊廬屢屢乏蔬菜   弊廬 屡屡 蔬菜乏しく

窮老常常少盞壺   窮老 常常 盞壺を少(か)く

纔得一香風度處   纔かに得たり 一香 風度る處

素梅氷艶照庭隅   素梅 氷艶 庭隅を照らす

          (上平聲「七虞」の押韻)



























[別韻01]
投稿者 兼山 

[甲午新春有感(一)]

告曉春光瑞色明   曉を告ぐ 春光 瑞色明らかなり

如流淑氣誦經聲   淑氣 流るるが如く 誦經の聲

英山不二無雙體   英山 不二 無双の体

爲貴以和完此生   和を以って 貴しと爲し 此の生を完うせん

          (下平聲「八庚」の押韻)


    十七条第九条は護る可し 兼山


<解説>

 「英山(別号)を名乗るのも烏滸がましいが、不二(山)の如く立派でありたい」との意。
 又、「人間は独りではなく、神仏と一体である」との意を籠めました。

 この国に生まれ来た人間として「十七条の憲法」並びに「新憲法の第九条」の精神は護りたい。 
























[別韻02]
投稿者 兼山 

[甲午新春有感(二)]

再迎新春甲午年   再び迎ふ 新春 甲午の年

往初懷古六旬前   往初を 懐古すれば 六旬前

以來塵世多波亂   以来 塵世 波乱多し

幾許餘生亦可憐   餘生 幾許 亦憐れむ可し

          (下平聲「一先」の押韻)


   傘壽過ぎ二度目の新年甲午 兼山
























[別韻03]
投稿者 ニャース 

[新年作]

申城角落度三年   上海の片隅に越し、三年になります。

呉語慣聽悦耳邉   上海語も耳障りでなくなりました。

喜待新春妻子訪   正月は一家 こちらで水入らず。

鬨聲爆竹到窗前   爆竹の音も部屋まで聞こえてきます。

          (下平聲「一先」の押韻)


























[別韻04]
投稿者 謝斧 

[詠馬]

竹批髦尾長   竹を批ぎて 髦尾長く

繊麗鋒稜容   繊麗 鋒稜の容

高嘶緑野響   高嘶 緑野に響き

汗馬朝靄衝   汗馬 朝靄を衝く

呼風絶地去   風を呼び 地を絶って去り

本無霜蹄蹤   本より 霜蹄の蹤無し

馳驟一千里   馳驟 一千里

騰驤化飛龍   騰驤 飛龍と化す

          (下平聲「七陽」・上平聲「二冬」の通韻)



<解説>

【語句の説明】
「竹批」: 馬の耳が竹をそいだ様に形の良いこと 
「繊麗」: ほつそりして美しい
「鋒稜」: 骨の勁い 
「汗馬」: 汗血馬の事 馬西域産の名馬 
「絶地」: あまりにも速く走るので地を蹴る事がない 
「霜蹄」: 駿馬の蹄 
「馳驟」: 馬に乗って駆け巡る
「騰驤」: 飛び翔がる
























[別韻05]
投稿者 鮟鱇 

[謹賀新年]

馬耳東風吹彼岸,   馬耳の東風 彼岸に吹き,

樗翁醉夢醒清朝。   樗翁の醉夢 清朝に醒む。

千門萬戸迎新歳,   千門萬戸 新歳を迎へ,

一醉三元多酒豪。   一醉すれば三元に酒豪多し。

          (中華新韵六豪平聲の押韻)
























[別韻06]
投稿者 鮟鱇 

[東風第一枝・迎接甲午年游香夢]

午夜鐘鳴,         午夜に鐘鳴り,

霜晨夢醒,         霜晨に夢醒め,

更加馬齡新歳。      更に馬齡を加ふる新歳。

千門萬戸迎春,      千門萬戸 春を迎へ,

萬語千言獻瑞。      萬語千言 瑞を獻ず。

荊妻陪我,         荊妻 我に陪し,

勸椒酒、洗滌腸胃。   勸むる椒酒、腸胃を洗滌す。

啜數杯、暫借紅顔,   啜る數杯、暫く紅顔を借り,

白首放心酣醉。     白首 心を放ちて酣醉す。

        ○  

試詩筆、欲舒心肺,   詩筆を試み、心肺を舒(の)ばさんとするも,

志易挫、枕肱午睡。   志 挫け易く、肱を枕に午睡す。

游魂道伴花容,      魂を游ばせて道伴せし花容,

愛人華妝盡美。      愛人(妻)の華妝 美を盡す。

梅林堪探,         梅林 探るに堪へ,

鶴歩入、紅雲如絵。   鶴歩して入る、紅雲の絵のごときに。

已相誓、皆老同穴,   已に相ひ誓ひし、皆老同穴,

翁嫗旅行連袂。      翁嫗 旅に行きて袂を連ぬ。

          (中華新韵五微仄聲の押韻)

<解説>

 東風第一枝 詞譜・雙調100字,前段九句四仄韻,後段八句五仄韻 史達祖ほか

  ▲●○○,△○▲●,△○▲▲○仄。▲○△●○○,▲▲▲○▲仄。○○▲●,▲▲▲、△○○仄。●●▲、▲●○○,▲●●○○仄。
  △▲▲、▲△▲仄,△●▲、▲○△仄。▲○△●○○,●▲▲○▲仄。△○△●,▲▲▲、△○○仄。●▲▲、▲▲○○,▲▲●○○仄。
























[別韻07]
投稿者 鮟鱇 

[迎新春・迎接甲午年所懷]

馬上看花老,        馬上に花を看て老ひ,

更又迎春無恙,       更にまた春を迎えて恙なく,

傾盞誇洪量。        盞を傾けて洪量を誇る。

醉椒酒、貪虚妄,      椒酒に醉って、虚妄を貪り,

有樗翁、游魂夢想。   樗翁あり、魂を游ばせて夢想す。

未棄世、           未だ世を棄てず、

心願瀛寰晴朗。      心から願ふ 瀛寰の晴朗なるを。

有事當破浪,       事あれば當に浪を破るべく,

求和睦、宜相謙讓。   和睦を求め、宜しく相ひ謙讓すべし。

        ○  

晩年閑靜,         晩年は閑靜,

韵事清爽,         韵事は清爽,

禿筆走,           禿筆 走れば,

錦箋好句高尚。      錦箋の好句 高尚なり。

山妻哂笑白頭喜,    山妻 哂笑す 白頭の喜ぶを,

作詩堪、任意低唱。   作りたる詩、意に任せて低唱するに堪ふるを。

坐三元,           三元に坐さば,

何不飛聲吟豪放?    何んぞ聲を飛ばして吟豪放に吟ぜざらん?

期逃遁塵網,        塵網より逃遁せんと期し,

享受肴膳,         享受す 肴膳を,

壽長滋養。         壽長の滋養を。

          (中華新韵十唐仄聲の押韻)

<解説>

 馬上看花:事をなすに粗略であることをいう。

      迎新春 詞譜・雙調104字,前段八句七仄韻,後段十一句六仄韻 柳永

  ●●●○●,●●○○○仄。○●○○仄。●○●、○○仄。●○○、○○●仄。●●●、○●○○○仄。●●○●仄,○○●、○○○仄。
  ●○○●,●●○仄。○●●,●○●●○仄。○○●●○○●,●○○、●●○仄。●○○,○●○○○○仄。○○●○仄(一四),●●○●,●○○仄。
























[別韻08]
投稿者 紫照 

[新年口號]
          

四海波平萬象新   四海波平らかに 万象新なり

謝恩誓願拝初晨   謝恩を誓願し 初晨を拝す

一家無恙児孫集   一家恙無く 児孫集い

先酌屠蘇草舎春   先ず屠蘇を酌す 草舎の春

          (上平聲「十一真」の押韻)


























[別韻09]
投稿者 風雷山人 

[2014年年賀]

千門旗影暖,   千門旗影暖かなり

萬戸夢中春。   萬戸 夢中の春

独喜清閑日,   独り喜ぶ 清閑の日

三元感更新。   三元 感更に新なり

          (上平聲「十一真」の押韻)
























[別韻10]
投稿者 道佳 

[魁寒梅]

對峙寒風春氣求   寒風に対峙す春気の求め

鬼吹覆壓八荒尤   鬼吹(きすい)は覆圧し 八荒のとが

清香玉骨獨唯放   清香の玉骨 独り唯だ放つ

魁廣天空花實優   魁けて天空に広がり花も実も優れん

          (下平聲「十一尤」の押韻)



<解説>

 寒風と対峙し、強い心で草木の萌えいずる春を待つ。
 なにか国の隅々が禍に覆われてしまい寒々としたものがある。
 その中で、唯独り咲く梅の花の芳しい香りがしてくる。
 寒中先駆けて、天空に広がり花も実も優れている。



「鬼吹」: 人に災いを及ぼす気
「覆壓」: 上から覆い、おしつける
「八荒」: 国の隅々
「尤」: わざわい
「玉骨清香」: 寒い中、清らかな香りの梅
























[別韻11]
投稿者 亥燧 

[甲午新年書感]

佳気晴風處處春   佳気晴風処々に春

歳朝如祝鳥聲頻   歳朝祝ふが如く鳥聲頻りなり

那知老叟生涯計   那ぞ知らん老叟生涯の計

分韻揮毫詩思新   韻を分かち毫を揮ひて詩思新たにす

          (上平聲「十一真」の押韻)



<解説>

 あけましておめでとうございます。

 暖かい正月です。雀が日光浴してます。家内と二人だけの正月をのんびり過ごしています。
 さて今年は何をしようかと、硯を前に思案中です。
























[別韻12]
投稿者 押原 

[新年感懐]

和風麗日拝年晨   和風 麗日 拝年の晨 

濁世無関気自新   濁世 関はる無く 気 自ずから新たなり

一酔醺然詩興好   一酔 醺然 詩興好し

迎来八十有三春   迎え来る八十有三の春

          (上平聲「十一真」の押韻)


























[別韻13]
投稿者 越粒庵 

[新年試作]

元朝佳気動   元朝 佳気動き

椒酒好薫新   椒酒 好薫新たなり

舊友無恙否   舊友 恙なきや否や

遙懐竹馬春   遙に懐ふ 竹馬の春

          (上平聲「十一真」の押韻)


























[別韻14]
投稿者 杜正 

[平成甲午年勅題「静」]

元旦鶏鳴日出初   元旦の鶏鳴 日出づる初め

野人欲賦訪村居   野人 賦さんと欲して 村居を訪ふ

馬群静穏食春草   馬の群は 静穏にして 春草を食む

当歳無争意晏如   当歳 争ひ無くして 意 晏如たり

          (上平聲「六魚」の押韻)



<解説>

 元旦に鶏の聲がし、朝日が上る。
 自分は詩を吟じようと思って、村里の家を訪れると、
 馬の群が、静かに穏やかに春の草を食べていた。
 これを見て、今年、戦は無いと思い、安心するのだった。

 アジアの緊張が高まっていますが、今年、平和な一年であることを祈願いたします。
























[別韻15]
投稿者 黒浴@

[新年賀正 一]

旭日輝窓瑞気高   旭日窓に輝き瑞気高まる

坐看黄鳥老梅翱   坐して看る黄鳥 老梅に羽ばたくを

晴耕雨読今成熟   晴耕雨読  今や成熟

賦得賀詩揮禿毫   賀詩を賦し得て 禿毫を揮ふ

          (下平聲「四豪」の押韻)


























[別韻16]
投稿者 黒浴@

[新年賀正 二]

旭日映窓佳気高   旭日窓に映え佳気高まる

静観黄鳥老梅翱   静観す黄鳥 老梅に羽ばたくを

知己交誼無双悦   知己との交誼 無双の悦び

拝読賀書揮禿毫   賀書を拝読し 禿毫を揮ふ

          (下平聲「四豪」の押韻)


























[別韻17]
投稿者 東山 

[甲午新年 一]

甲午初陽掃俗塵   甲午の初陽 俗塵を掃ひ

肥前山色惠風新   肥前の山色 恵風新たなり

桂冠九歳安茅屋   桂冠九歳  茅屋に安んじ

耳順加三詩酒親   耳順三を加えて 詩酒に親しむ

          (上平聲「十一真」の押韻)
























[別韻18]
投稿者 東山 

[甲午新年 二]

春陽春氣春風復   春陽春気春風 復へり

蒼竹老松寒葉C   蒼竹老松寒葉 清し

電網詩人繙雅句   電網詩人の 雅句を繙き

芳醪靜詠肇年平   芳醪静詠 肇年平らかなり

          (下平声「八庚」の押韻)


























[別韻19]
投稿者 汨羅江 

[午馬重來]

一根網線結萍香C   

隔海飛鴻賀馬年。   

薄紙傳情存友誼,   

開屏歌韻頌團圓。   

日中共慶承平世,   

朝野同揚富裕鞭。   

詩道弘揚人有慶,   

祝君幸福賽神仙。   

          (下平聲「一先」の押韻)
























[別韻20]
投稿者 桐山人 

[甲午新年(和汨羅江先生賀詩)]

一衣帶水結詩緣   一衣帯水 詩縁を結ぶ

同好交流甲午年   同好の交流 甲午の年

拜受賀辭情意湛   拝受の賀辞 情意湛(ふか)く

忽知故友氣魂圓   忽ちに知る 故友 気魂円かなるを

東瀛風鎮迎青帝   東瀛 風鎮まり 青帝を迎へ

南海波平披紫煙   南海 波平らかに 紫煙を披く

三國詞朋聚清韻   三国の詞朋 清韻を聚め

吟聲萬里到神仙   吟聲 万里 神仙に到らん

          (下平聲「一先」の押韻)


























[別韻21]
投稿者 洋景 

[新年作]

旭日曈曈上   旭日曈曈として上り

蓬蓬瑞氣籠   蓬蓬瑞気籠む

新正馳駿馬   新正駿馬馳る

萬里颯春風   万里春風颯たり

          (上平聲「一東」の押韻)
























[別韻22]
投稿者 陳興 

[元旦]

新年舊歳隔今宵,   

聽説外灘人若潮。   

不問霧霾來那處,   

但知元旦即明朝。   

          (下平聲「二蕭」の押韻)


























[別韻23]
投稿者 芳原 

[迎新年]

雨否春煙遠   雨の降るや降らざるや 春煙遠し

祠壇何處鐘   祠壇何れの處ぞ 鐘の鳴る

洛陽城裏旦   洛陽城裏に夜が明ける

改暦老奈重   改暦 老いの重ぬるをいかんせん

          (上平聲「二冬」の押韻)

こぬか雨か春のかすみか
どこかでお寺の鐘が鳴る
ここは京都 東の空に初日の出
馬齢を重ねて新しい暦
老いと時間の駆け比べか

























[別韻24]
投稿者 銅脈 

[初春偶成]

一笑才華無俗塵   一笑す才華俗塵に無し

空堂最愛讀書人   空洞最も愛す読書の人

新春欲去東風夢   新春東風の夢去らんと欲す

吟興寒燈筆墨親   吟興寒灯筆墨に親しむ

          (上平聲「十一真」の押韻)


























[別韻25]
投稿者 藤城英山 

[新年漢詩(「希望」)]
          

人生永旅求希望   人生とは希望を求める永久の旅

苦難悲哀練一場   悲哀や苦難は一場の試練

不幸到來有必幸   不幸が来れば必ず幸せ有り

笑顏挑戰新今行   笑顔で挑戦新たに今行かん

          (下平聲「七陽」の押韻)
























[別韻26]
投稿者 藤城英山 

[新年書懷(「地球聲(二)」)]
          

大氣塵汚山海川   大気はもとより、海、山、川に産廃、放射能等の汚染

異常寒暖自茫然   自然環境が異常になり年々温暖化が進行

洪水熱波多災害   熱波や浸水その他多くの災害が発生しています

環境改良当最先   環境の改善を当に最も先んずべきなり

          (下平聲「一先」の押韻)
























[別韻27]
投稿者 越粒庵 

[新年感懷]
          

寒閨殘夢醒   寒閨に残夢醒む

鶏叫竹林東   鶏は叫ぶ 竹林の東

挙首看窗雪   首を挙げては 窓雪を看

低頭聽北風   頭を低れては 北風を聴く

          (上平聲「一東」の押韻)



<解説>

 少し暗い雪国の目覚めですが、どこの家でも、この後で明るい家庭内行事が続きます。
























[別韻28]
投稿者 茜峰 

[新年書懷]
          

繼續山行愉唱歌   山行を継続し 唱歌を愉しむ

作詩寫景意柔和   作詩 写景 意(おもい)は 柔和す

老生莫失志望氣   老生 失ふ莫かれ 志望の気(こころ)

假使遲遲励琢磨   たとひ遅遅なりとも 琢磨に励まん

          (下平聲「五歌」の押韻)



<解説>

 「年を重ねただけで人は老いない。理想を失うときに初めて老いる。」(米・詩人 サミュエル・ウルマン)の言葉をかみしめながら、自分への励ましと、戒めを込めて、新年の思いを表した。

 山行やコーラス、漢詩づくり、絵手紙等を楽しみながら、出来る限りプラス思考で毎日を過ごしている。
 どれも遅遅として進歩はおぼつかないが、たとえ一歩の前進でもと思い、希望を失わずにいきたいものだ。
























[別韻29]
投稿者 亥燧 

[新年書感]

履端小雪灑窗沙   履端小雪 窓沙に灑ぎ

入夜鳴条冬意加   夜に入って鳴条 冬意加ふ

寒粥梅葅願無病   寒粥梅葅 無病を願ふ

老嬬初見鬢絲華   老嬬初めて見る 鬢絲の華

          (下平聲「六麻」の押韻)



<解説>

 正月三が日は穏やかでしたが急に寒くなり、七草粥を作って一年の無病息災を願いました。
 で、このところ、嫁さんがよう美容院に行くなあと思っていたら、白髪を発見しました。
 手もごっつうなるし、苦労かけてしもうてすまんなあと、この頃になってようやく思うようになりました。
























[別韻30]
投稿者 柳田周 

[年頭懷]

七十四翁身百憂   七十四歳になる老いの身には心配が多い

殊危轉舳急操舟   殊に舳先を転じて急いで舟を操るのが危ぶまれる

少年血氣今安在   若い時の血気は今何処に在るやら

只愧無爲臨斡流   移りゆく流れに臨んで為す事が無いのを只だ愧じている

          (下平聲「十一尤」の押韻)
























[別韻31]
投稿者 澄朗 

[平等院]

瑞氣洋洋甲午年   瑞気 洋洋 甲午の年

清流滾滾玉橋邉   清流 滾滾 玉橋の辺 

雲中菩薩奏楽器   雲中菩薩 楽器を奏で

擴翼鳳凰舞空巓   翼を擴ぐる鳳凰 空巓を舞ふ

          (下平聲「一先」の押韻)
























[別韻32]
投稿者 深溪 

[甲午歳旦口占]

曈曈迎旭日   曈曈たる旭日を迎へ

加七八旬年   八旬年に七を加へたり

平素謝疎遠   平素の疎遠を謝し

賀詞呈一篇   賀詞 一篇を呈す

          (下平聲「一先」の押韻)


























[別韻33]
投稿者 明鳳 

[東京奥林匹克偶感]

君知半世紀前容   君は知る 半世紀前の容を 

技術革新鍾績舂   技術革新は績(てがら)を鍾(あつ)めて舂(うすづ)く

所得倍増民入夢   所得倍増に民は夢に入り

五輪聖火好天従   五輪の聖火に好天は従ふ

          (上平聲「二冬」の押韻)


























[別韻34]
投稿者 豊邨 

[新年作]

歴歴陽光曉色清   

早梅枝上瑞禽聲   

新春走筆村齋裏   

天馬行空墨氣平   

          (下平聲「八庚」の押韻)
























[別韻35]
投稿者 石川岳堂 

[元日書懷]

禁門之北社門南   

安住纔留大隠菴   

猶有文窮無俗黒   

馬齡躋得八旬三   

          (下平聲「十三覃」の押韻)
























[別韻36]
投稿者 偸生 

[甲午元旦(山棲即事)]

鴉來雀譟野翁家   

坐見孱庭四季花   

貧窶何歎無晩運   

老羸偏喜有年華   

空齋拭墨黙漱筆   

敗榻聞香瞑煮茶   

憑枴得時山底出   

講詩歸毎日西斜   

          (下平聲「六麻」の押韻)



孱庭せんてい」: 小さな庭
貧窶ひんく」: 貧しくやつれる
老羸ろうるい」: 老い疲れる
敗榻はいとう」: 古くボロボロになった長いす
かい」: (曲がった)つえ」

  ※語注は桐山人が施しました。
























[別韻37]
投稿者 桃羊野人 

[迎新年]

屠蘇満肚坐春風   屠蘇満肚 春風に坐す

一笑高吟田舎翁   一笑 高吟 田舎の翁

心緒誰知天下志   心緒誰か知る 天下の志

五雲靉靉曙光紅   五雲靉靉 曙光紅なり

          (上平聲「一東」の押韻)
























[別韻38]
投稿者 老遊 

[新春]

晨鶏人日卜占間   晨鶏 人日 卜占の間

豚犬牛羊檻舎閑   豚犬牛羊 檻舎閑かなり

七菜吹羹嘗米粥   七菜羹を吹きて 米粥を嘗め

新春祝馬染朱顏   新春馬を祝ひて朱顏を染む

          (上平声「十五刪」の押韻)




























[別韻39]
投稿者 觀水 

[元旦口號]

起浴東風半夢ク   起て東風に浴すも半ば夢郷

空杯尚含去年香   空杯 尚ほ含む去年の香

人間萬事多勞苦   人間 万事 労苦多きも

醉裏三朝足福幸   醉裏 三朝 福幸足る

          (下平声「七陽」の押韻)


はるかぜに目を覚ましても 心はんぶん夢のなか
お酒も空っぽなんだけど 残り香だけは年を越す
世の中なんて何だって 大変なことばかりでも
聞こし召してるお正月 じゅうぶん幸せだと思う