第24回 世界漢詩同好会総会(二〇〇九年一月十八日)

 『世界漢詩同好会』の第24回総会は、1月18日に開かれました。
 詩題(今回は『送舊迎新』)と押韻(今回は「下平声九青」)を共通として、その日までに各国の幹事サイトに投稿された詩を交流し合うものです。
 日本では、この『漢詩を創ろう』のサイトが幹事となり、皆さんの交流詩を集約、掲載します。



 日本からの参加詩です。投稿順に紹介します。
番号をクリックして下さい。
 
    作品番号 作 者 題 名 詩 形
    1 井古綆「送舊迎新 一」七言絶句
    2 井古綆「送舊迎新 二(賛諾貝爾賞受賞)」七言絶句
    3 井古綆「送舊迎新 三」七言絶句
    4 井古綆「送舊迎新 四」七言絶句
    5 井古綆「送舊迎新 五」七言律詩
    6 井古綆「送舊迎新 六」七言律詩
    7 兼山「送舊迎新」七言絶句
    8 黒「送舊迎新」七言絶句
    9 道佳「送舊迎新」七言絶句
   10 博生「送舊迎新」七言絶句
   11 登龍「送舊迎新」七言絶句
   12 Y.T「除夜聴寺鐘」七言絶句
   13 明鳳「送舊迎新 一」七言絶句
   14 明鳳「送舊迎新 二」七言絶句
   15 明鳳「送舊迎新 三(今年的漢字是『變』)」七言絶句
   16 明鳳「送舊迎新 四(世界經濟恐慌)」七言絶句
   17 明鳳「送舊迎新 五(世界同時不況)」七言律詩
   18 明鳳「送舊迎新 六(世界金融危機)」七言律詩
   19 忍夫「送舊迎新」七言絶句
   20 忍夫「送舊迎新」七言律詩
   21 杜正「送舊迎新」七言絶句
   22 謝斧「送舊迎新 一」七言絶句
   23 謝斧「送舊迎新 二」七言絶句
   24 謝斧「送舊迎新 三」七言絶句
   25 謝斧「送舊迎新 四」七言絶句
   26 謝斧「送舊迎新 五」七言絶句
   27 謝斧「送舊迎新 六」七言律詩
   28 観水「送舊迎新」七言絶句
   29 点水「送舊迎新」七言絶句
   30 常春「送舊迎新 T」七言絶句
   31 常春「送舊迎新 U(回文體 倒讀是刪韻)」七言絶句
   32 常春「送舊迎新 V」七言絶句
   33 鮟鱇「送舊迎新 七律」七言律詩
   34 鮟鱇「送舊迎新 七律其二」七言律詩
   35 禿羊「喜馬拉雅山中歳晩」七言律詩
   36 東洸「送舊迎新」七言絶句
   37 桐山人「送舊迎新」七言絶句




























[ 1]
投稿者 井古綆 

[送舊迎新 一]

恐慌倉卒作玄冥、   恐慌 倉卒 玄冥と作り、

己丑新年底靖寧。   己丑(きちゅう)の新年 底(なんぞ)靖寧。

遠望冬山毋落胆、   冬山を遠望して 落胆する毋(なかれ)、

春來必至萬柯青。   春来たれば必至 万柯青し。



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[ 2]
投稿者 井古綆 

[送舊迎新 二(賛諾貝爾賞受賞)]

邦彦四名稱勒銘、   邦彦(ほうげん) 四名 勒銘(ろくめい)に称され、

空前受賞耀瓏玲。   空前の 受賞 瓏玲(ろうれい)と耀く。

英髦可立新年志、   英髦(えいぼう) 立てるべし 新年の志し、

合以榮光記汗青。   合(まさ)に栄光を以って 汗青に記さるるべし。



「諾貝爾賞」: ノーベル賞。
「邦彦」: 我国の中ですぐれた人物。
「四名」: 元日本国籍二名を含む。
「勒銘」: 人の功名などを金石に彫り付けること。
「英髦」: すぐれた才能の人。



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[ 3]
投稿者 井古綆 

[送舊迎新 三]

恐慌怱遽襲家庭、   恐慌 怱遽(そうきょ) 家庭を襲ひ、

此迓新春意自冥。   此に新春を迓へて 意自ずから冥(くら)し。

不意冬雷長不響、   不意の冬雷 長く響かず、

梅開李綻順番馨。   梅開き 李綻び 順番に馨る。



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[ 4]
投稿者 井古綆 

[送舊迎新 四]

蕭条景況襲家庭、   蕭条たる景況 家庭を襲ひ、

己丑新春重老齡。   己丑(きちゅう)の新春 老齢と重なる。

遮莫人生塞翁馬、   遮莫(さもあらばあれ)人生は 塞翁が馬、

先忘舊禍酌清醽。   先ず旧禍を忘れて 清醽(せいれい)を酌まん。 


「清醽」: うまざけ。 



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[ 5]
投稿者 井古綆 

[送舊迎新 五]

恐慌激烈作玄冥、   恐慌 激烈 玄冥と作り、

此迓新春意底寧。   此に新春を迓ふるも 意底(なん)ぞ寧(やす)からん。

絢爛文明崩一瞬、   絢爛たる文明は 一瞬に崩れ、

渾沌現世失三經。   渾沌たる現世は 三経を失ふ。

奸商壟斷求高利、   奸商は 壟断して 高利を求め、

策士狂奔否勒銘。   策士の 狂奔するは 勒銘(ろくめい)に否(あら)ず。

釋老先師與基督、   釈老(しゃくろう)と先師と基督(キリスト)と、

古來随所記餘馨。   古来 随所に 余馨(よけい)を記す。



「文明」: ここでは金銭文明。
「三経」: 天子が政治をするときの三つの綱領。
「壟断」: うまく利益を独占すること。
「勒銘」: 人の功名を金石に彫り付けたもの。
「釈老」: 釈迦と老子。
「先師」: 孔子。
「余馨」: 余香。



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[ 6]
投稿者 井古綆 

[送舊迎新 六]

景況蕭条収入零、   景況 蕭条 収入は零(れい)、

蒼生失職滅家庭。   蒼生 失職して 家庭を滅す。

舊年藍尾誇充實、   旧年の 藍尾(らんび)は 充実を誇り、

新歳芳樽只外形。   新歳の 芳樽は 只外形のみ。

弱國繁榮斷追從、   弱国の 繁栄は 追従(ついじゅう)を断たれ、

強邦發展奈沈停。   強邦の 発展は 沈停するを奈(いかん)せん、

民心安定焦眉急、   民心の 安定は 焦眉の急、

當路倶須努靖寧。   当路 倶(とも)に須(すべから)く 靖寧に努めるべし。



「旧年」: ここでは一昨年。
「藍尾」: ここでは(一年の)最終。
「当路」: (各国の)為政者。



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[ 7]
投稿者 兼山 

[送舊迎新]

鐘聲百八念安寧   鐘聲 百八 安寧を念ず

戰火砲音随處聽   戰火 砲音 随處に聽く

遮莫征戎非我事   遮莫 征戎 我が事に非ず

迎來己丑樂餘齢   迎へ來る 己丑 餘齢を樂しまん

<解説>

 除夜の鐘は百八にも及ぶ人間の煩悩を鎮静する為に撞くと言うが、地球上の各地に於ける内憂外患は止む事を知らぬ。
 だが、正義とは何か。アフガン報復攻撃、或いはイラン・イラク戦争の実態は何だったのか。遠くの火事騒動なのか。安穏と喜寿を楽しむほど、日本は本当に平和なのだろうか。


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[ 8]
投稿者 黒浴@

[送舊迎新]

除夜鐘声欹枕聽   除夜の鐘声 枕を欹(そばだ)てて聽く

客年世界大凋零   客年 世界は 大凋(ちょう)零(れい)

勿憂人事邯鄲夢   憂ふること勿れ 人事は邯鄲(かんたん)の夢

朋友愉天禱壽齢   朋友と天を愉しみ 壽齢を禱る




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[ 9]
投稿者 道佳 

[送舊迎新]

民力殄殲無大経   民力の殄殲(てんせん)は大経無し

史編明鏡照原形   史編 明鏡は原形を照す

善光寺詣牽牛後   善光寺詣、牛後に牽れて

念誦倫常祈祖霊   倫常を念誦し、祖霊に祈る

<解説>

 古来、「国に常経(常に守るべき規範)無くんば、民力必ず竭きん」(管子・法法)と言われているが、旧年は、本当に、規範のない社会の中、民衆が枯渇し、困り果ててきている。
 こうしてまさに歴史上、明鏡は形を照らすと言われてきているように、民衆が困窮にあるいまの世をを映し出す手がかりともなっている。
 こうした中、新年を迎え、善男善女が、幸せを願い、牛にひかれて善光寺詣りをし、倫常を願い、先祖の霊に祈る。


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[10]
投稿者 博生 

[送舊迎新]

己丑元朝四海寧   己丑元朝 四海寧し

全家無恙幸充庭   全家恙なく 幸庭に充つ

顧思去歳心憂懼   顧みて去歳を思い 心憂懼す

不是春来吉夢醒   是れ春は来たらず 吉夢醒む

<解説>

世界規模の不況拡大、社会不安を抱えたこの年明け。
「祝」の字は消え、めでたさも三分、気を引き締めねば。


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[11]
投稿者 登龍 

[送舊迎新]

欣欣窺鏡使吾醒   欣欣として鏡を窺い吾をして覚ましむ、

不咎他人令徳馨   他人を咎めず令徳馨し

浄域崇嚴神鼓響   淨域崇嚴神鼓の響

賽人祓穢列仙庭   賽人穢れを祓い仙庭に列ぬ

   

   

   

   



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[12]
投稿者 Y.T 

[除夜聴寺鐘]

守夜爐邊酒数瓶   守夜の爐邊 酒 数瓶

只要陶酔不須醒   只 陶酔を要(もと)めて 醒むを須(もち)ひず

人生解患杜康爾   人生 患ひを解くは 杜康のみ

百八鐘声清耳聴   百八鐘声 耳を清して聴く



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[13]
投稿者 明鳳 

[送舊迎新 一]

老驥思千里   老驥(ろうき)は 千里を 思ふも

舊陳策可停   旧陳の 策は 停(とど)むべし

今崇誠意證   今 崇(たっと)きは 誠意の 証(あかし)

新義案無形   新義の 案には 形 無し


「老驥伏櫪、志在千里」とは謂うものの、今の時代は、昔執った杵柄が通用するとは思えない。
将に、誠意のある新機軸を編み出す為に、その気概を鼓舞するのみである。

「舊陳」: 古くて陳腐な
「新義」: 新しい意義
「案」: 妙案



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[14]
投稿者 明鳳 

[送舊迎新 二]

舊交吟友集   旧交の 吟友は 集(つど)ひ

新貴履端齡   新貴なるは 履端の 齢

互壽賀正宴   互に 寿(ことほ)ぐは 賀正の 宴

呈椒酒馨   祥を 呈して 椒酒(しょうしゅ)は 馨(かお)る


新年に際して、旧交も亦 毎歳 新貴にして、頌賀の互礼と賀正の宴では、屠蘇のお酒を酌み交わし、新春を寿いだ。

「履端」: 年のはじめ
「齡」: (広辞苑に依れば、)「齢」は「歯」とも書き、「歯(し)する」の訓読から、仲間に加わること、伍すること、の意味がある。



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[15]
投稿者 明鳳 

[送舊迎新 三(今年的漢字是『變』)]

漢字揮毫肝所銘   漢字の揮毫は肝に銘ずる所

變之字賦舊年形   変の字賦は旧年の形

新春抱負何由得   新春の抱負は何に由って得ん

温故還知萬物寧   故を温ねて 還た知れば 万物 寧らかなり


昨年一年の世相を象徴する漢字は「変」だった。因みに一昨年は「偽」だったが、それを引き摺って「変」な一年だったと謂うべきか。
新春と共に、温故知新を例として、良い方に向かって欲しいものだ。



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[16]
投稿者 明鳳 

[送舊迎新 四(世界經濟恐慌)]

景況低迷舊弊停   景況は 低迷して 旧弊 停(とど)まり

變遷世相日無寧   変遷する 世相は 日に 寧(やす」)きこと 無し

開新生面百年計   新生面を開くは 百年の 計

經國濟民喫緊銘   経国済民が 喫緊(きっきん)の 銘


百年に一度の世界的な経済恐慌だと謂うが、この時にこそ「百年の大計」を揮う英断が有って欲しいものだ。

「舊弊」: 昏迷し狭窄な旧態の様
「喫緊」: 差し迫って大切なこと
「銘」: 戒めとする語句





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[17]
投稿者 明鳳 

[送舊迎新 五(世界同時不況)]

恐慌先來影與形   恐慌 先ず 来(きた)るは 影と 形と

江湖企業幾旋停   江湖の 企業は 幾たびか 旋(ま)た 停(と)まる

雇傭切捨禍明白   雇傭の 切り捨て 禍(わざわい)は 明白

生活不安顔色青   生活 不安に 顔色 青し

社會成行窮困極   社会の 成り行きは 窮困の 極み

經濟趨勢太漂零   経済の 趨勢は 太(はなは)だ 漂零(ひょうれい)す

寄新春信獨題句   新春の 信(たより)を 寄すに 独り 句を 題し

除夜鐘聲依舊聽   除夜の 鐘声は 旧に 依って 聴く


 米国発の世界同時不況は、今の時代の成り行きと趨勢かと、笑って済まされない深刻な問題である。
 そして「変」な成り行きは、政治・経済・社会のあらゆる分野に瀰漫して、除夜の鐘声と共に旧年を慨嘆し、新年の安寧を祈りつつ、元旦を迎えた。

「影與形」: 米国発のサブ・プライム問題とリーマンブラザースの破綻が引き金となったこと
「切捨」: 派遣社員の解雇問題
「成行」: 「変」な世相が瀰漫して
「漂零」: 落ちぶれること



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[18]
投稿者 明鳳 

[送舊迎新 六(世界金融危機)]

國政劇論欹耳聽   国政の 劇論 耳を 欹(そばだ)てて 聴くも

議而無決幾還停   議して 決する 無く 幾たびか 還(ま)た 停(とど)まる

金融恐慌江湖洽   金融の 恐慌は 江湖に 洽(あまね)く

景況不安天地腥   景況の 不安に 天地も 腥(なまぐさ)し

社會成行凡困憊   社会の 成り行きは 凡(すべ)て 困憊(こんぱい)し

經濟趨勢且漂零   経済の 趨勢は 且(まさ)に 漂零す

危機管理各人責   危機管理は 各人の 責

送舊迎新悪夢醒   送旧迎新して 悪夢の 醒めんことを


 我が国の国会議論は「政局か政策か」で混迷し、激論を闘わすと言うよりも「劇場舞台劇」か「ワイドショー」的な「劇場論陣」と「駆け引き」に堕した感がして久しい。
 亦、直前まで一兆円を越える利益を誇っていた企業が赤字に転落するなど、金融危機に伴う経済と社会状勢のもとでは、国民の生活は疲労困憊である。
 斯くして、この度の金融と経済危機に伴う不況下の「危機管理」は、「修身・斉家・治国・平天下」の謂い慣わしに従って、先ずは個人の身を守ることから始めるより他に道は無いのであろう。



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[19]
投稿者 忍夫 

[送舊迎新]

送旧迎新古刹庭   旧送り、新を迎える古刹庭、

鐘声百八入玄冥   鐘声百八玄冥に入る。

唯今只有閑天地   唯今只有り閑天地、

冬夜清澄無数星   冬夜清澄にして無数星。




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[20]
投稿者 忍夫 

[送舊迎新]

除夜寒光幾点星   除夜寒く光る幾点星

家人寝静一灯青   家人寝静りて一灯青し。

禅書読罷思知足   禅書読み罷りて知足を思ひ

鐘韻鳴初穿混冥   鐘韻鳴り初めて混冥を穿つ。

送旧痛哀多厄禍   旧を送り多かりし厄禍を痛哀し、

迎新切願日安寧   新を迎え日々の安寧を切願す。

半生未厭金樽伴   半生いまだ金樽の伴となるを厭ず、

先祝健康清酒馨   先ず健康を祝して、清酒馨る。




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[21]
投稿者 杜正 

[送舊迎新]

瑞気今朝酒未醒   瑞気の今朝 酒 いまだ醒めず

春色靉靆小家庭   春色 靉靆(あいたい) と小家の庭

早梅破蕾清香遍   早梅 蕾を破り 清香 遍(あまね)し

揮筆描枝水墨屏   筆を揮(ふる)い 枝を描く 水墨の屏(びょう)

<解説>

 めでたい元日の朝になったが、大晦日の夜遅くまで飲んだ酒がまだ醒めない。
 我が家の庭にはもう春色が漂っている。
 早梅が蕾を破って 清香が広がってくる。
 思わず、筆で屏風に梅の枝を水墨で描いた。



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[22]
投稿者 謝斧 

[送舊迎新 一]

破船迷走似浮萍   破船迷走して浮萍の似く

昨夜波荒航路冥   昨夜波荒れて航路冥し

唯願今朝順風足   唯願ふは今朝順風足く

精知當難得安寧   精知難に當れば安寧を得ん




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[23]
投稿者 謝斧 

[送舊迎新 二]

廟堂盡策久伶俜   廟堂策盡きて久しく伶俜し

誰恃風雷時局寧   誰か風雷を恃んで時局寧んず

歳始欲書匡国計   歳始書せんと欲す国を匡す計

空吟板蕩恤生霊   空しく板蕩を吟じては生霊を恤れむ

「恃風雷」 九州生気恃風雷 龔自珍『己亥雑詩』



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[24]
投稿者 謝斧 

[送舊迎新 三]

邦家本是恤生霊   邦家本より是れ生霊を恤れむ

去歳憂時政策冥   去歳時を憂えて政策冥し

冗子迎新無一事   冗子新を迎えて一事無く

唯思経済豈安寧   唯経済を思えば豈安寧ならんや




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[25]
投稿者 謝斧 

[送舊迎新 四]

迎新擲舊未安寧   新を迎え舊を擲って未だ安寧ならず

却喜熙春草色青   却って喜ぶ熙春草色の青きを

病父等閑行路悪   病父等閑す世情の悪しきを

壺中角上小茅亭   壺中角上の小茅亭




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[26]
投稿者 謝斧 

[送舊迎新 五]

迷舸難航漂海溟   迷舸難航して海溟に漂う

捜探未見北辰星   捜探すも 未だ見ず 北辰の星(北極星)

迎新暁旦希平穏   新を迎えて暁旦に平穏を希うも

怒浪狂風不少停   怒浪狂風少しも停まらず



昨年世界之経済甚混迷 譬如巨船迷走於大海 果難破
國破家亡 人人失職 住無居 甘露宿
今朝迎新亦依然悲哉噫噫噫


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[27]
投稿者 謝斧 

[送舊迎新 六]

時弊紛紛国歩冥   時弊紛紛国歩冥く

兎烏猝猝逝無停   兎烏猝猝 逝きて停る無く

市人雑踏身忙碌   市人雑踏して 身は忙碌

田父閑居心撫寧   田父閑居して心撫寧

送舊祭詩蕎麺食   舊を送り 詩を祭りて 蕎麺を食し

迎新呼酒樊鐘聴   新を迎え酒を呼びて 樊鐘を聴く

驕兒叩首拏裾訴   驕兒叩首して 裾を拏んで訴え

頻泥小銭來誦経   頻に小銭を泥って 來りて経を誦す


「国歩」: 国の先行き
「兎烏」: 兎走烏飛 星月で歳月
「泥」: ねだる



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[28]
投稿者 観水 

[送舊迎新]

歳去年來栢酒馨   年去り 年来って 栢酒馨しく

時迎賀客不知醒   時に賀客を迎えて 醒むるを知らず

三朝好景君須記   三朝の好景 君須く記すべし

草木山川萬物寧   草木 山川 万物寧




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[29]
投稿者 点水 

[送舊迎新]

緊迫金融市場零   緊迫せる金融 市場もおつ

奥林匹克印心霊   オリンピックは心霊に印す

去年世態交悲喜   去年の世態 悲喜こもごも

迎歳願望惟大寧   迎歳 願望するは これ 大寧



 去年は金融の混乱で市場もすっかり落ちてしまいました。
しかし、オリンピックは印象に残っています。ということで、今年はおだやかなことを願います。



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[30]
投稿者 常春 

[送舊迎新 T]

錢愚妄動市場停   銭愚妄動して市場停り

自大濫吹咸少寧   自大濫吹して咸(みな)寧ぎを少く

斬棘披荊不終月   棘を斬り荊を披くは月終えず

切望新歳則天經   切望す新歳天経に則るを



 蘇軾「策別十八」為国有三計、有万世之計、有一時之計、有不終月之計



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[31]
投稿者 常春 

[送舊迎新 U(回文體 倒讀是刪韻)]

山紫浮雲晨氣櫬   山紫に 浮雲 晨気櫬し

喜春賀集慶咸寧   喜春 賀に集い 咸寧を慶ぶ

還陽一瞬耀頭擧   陽還る一瞬耀頭(日の出)挙がる

頒酒温情交際庭   酒を頒ち 情を温む 交際の庭




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[32]
投稿者 常春 

[送舊迎新 V]

歳暮禍多心不寧   歳暮禍多くして心寧まらず

飢寒騒亂報如霆   飢寒騒乱の報 霆の如し

人間萬事塞翁馬   人間万事 塞翁が馬

吉夢四方還瑞星   吉夢 四方に瑞星還る



「人間萬事塞翁馬」はわが身の事ならともかく,他事には慎む言葉かなとも思いましたが、「禍与福如糾纆」 福近しと祈らざるを得ません。



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[33]
投稿者 鮟鱇 

[送舊迎新 七律]

日照三元椒酒馨,   日は三元を照らして椒酒馨り,

温臍取暖洗心靈。   温臍を温め暖を取り心靈を洗う。

吾人得意搖唇詠,   吾人 意を得て唇を揺らして詠ずれば,

妻子開顔側耳聽。   妻子 開顔して耳を側てて聴く。

送舊迎新求好句,   送旧迎新 好句を求むるも,

半新不舊到高齡。   半新不舊 高齡に到る。

年頭尚有旅游計,   年頭なおあり 旅游の計,

閑話連綿談不停。   閑話 連綿として談 停まず。




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[34]
投稿者 鮟鱇 

[送舊迎新 七律其二]

歳除窗外北風停,   歳除 窗外に北風停やみ,

日落暮山天欲冥。   日は暮山に落ちて天 冥くらくならんとす。

黄髪祭詩如草露,   黄髪 詩の草露の如きを祭り,

白駒過隙見晨星。   白駒 晨星のみゆる隙を過ぐ。

憐新棄舊人無日,   新を憐れみ舊を棄つる人に日なくして,

送舊迎新酒一瓶。   舊を送り新を迎える酒は一瓶。

乘興元朝執禿筆,   興に乗り元朝に禿筆を執るに,

題梅花綻暗香馨。   題は「梅花綻び暗香馨る」。

「黄髪」: 老人のつやのない髪。老人。
「白駒過隙」: 人,生天地之間,若白駒之過郤,忽然而已。(莊子)
「無日」: 日ならず。まもなく。



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[35]
投稿者 禿羊 

[喜馬拉雅山中歳晩]

異邦歳晩在山亭   異邦 歳晩 山亭に在り

亭主慇懃客不寧   亭主慇懃なるも 客寧からず

醪酒精漓心髄冱   醪酒 精漓(うす)くして 心髄冱(こお)り

牛矢火弱爐辺冷   牛矢 火弱くして 爐辺冷やかなり

旅中窮苦似晴雪   旅中の窮苦は晴雪に似て

塵外去来真漾萍   塵外の去来は真に漾萍

春夏秋冬楽随処   春夏秋冬 随処に楽しむ

放縦何用覓椿齢   放縦 何ぞ用いん 椿齢を覓むるを





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[36]
投稿者 東洸 

[送舊迎新]

梵鐘撞鐘舊年經   梵鐘撞鐘(とうきょう)旧年は経(めぐ)り

煩悩妄迷猶念瞑   煩悩妄迷(もうまい)猶念(おも)いは瞑(くら)し

樓内只祈迎日泰   楼内(ろうだい)只祈る迎日の泰(やす)きを

盈杯醳醁酔餘齡   醳醁を杯に盈(みた)して余齡を酔わしめん



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[37]
投稿者 桐山人 

[送舊迎新]

早梅一朶已清馨   早梅 一朶 已に清馨

池水解氷萌草青   池水 氷解け 萌草青し

歳旦春光催淑氣   歳旦 春光 淑気を催し

惠風萬里萬方寧   惠風萬里 萬方寧し


祈願 世界平和、萬民幸福。



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