第23回 世界漢詩同好会総会(二〇〇八年十月十九日)

 『世界漢詩同好会』の第23回総会は、10月19日に開かれました。
 詩題(今回は『霜秋風光』)と押韻(今回は「下平声八庚」)を共通として、その日までに各国の幹事サイトに投稿された詩を交流し合うものです。
 日本では、この『漢詩を創ろう』のサイトが幹事となり、皆さんの交流詩を集約、掲載します。



 日本からの参加詩です。投稿順に紹介します。
番号をクリックして下さい。
 
    作品番号 作 者 題 名 詩 形
    井古綆「霜秋風光」七言絶句
    井古綆「霜秋風光」七言律詩
    井古綆「霜秋風光」七言律詩
    井古綆「霜秋風光」七言律詩
    井古綆「霜秋風光」七言律詩
    井古綆「霜秋風光」七言律詩
    井古綆「霜秋風光」七言律詩
    井古綆「霜秋風光」七言絶句
    謝斧「霜秋風光」七言絶句
   10 謝斧「霜秋風光」七言絶句
   11 謝斧「霜秋風光」七言絶句
   12 謝斧「霜秋風光」七言律詩
   13 謝斧「霜秋風光」七言律詩
   14 謝斧「霜秋風光」七言律詩
   15 Y.T「霜秋獨在古城憶侶」七言律詩
   16 黒「霜秋風光」七言絶句
   17 黒「霜秋風光」七言絶句
   18 展陽「霜秋風光」五言律詩
   19 博生「霜秋風光」七言絶句
   20 登龍「霜秋風光」七言絶句
   21 忍夫「霜秋風光」七言絶句
   22 忍夫「霜秋風光」七言律詩
   23 玄齋「霜秋風光」七言絶句
   24 嗣朗「霜秋風光」七言絶句
   25 宮前明鳳「霜秋返照風光」五言絶句
   26 宮前明鳳「霜秋菊酒風光」五言絶句
   27 宮前明鳳「霜秋返照風光」七言絶句
   28 宮前明鳳「霜秋菊酒風光」七言律詩
   29 宮前明鳳「霜秋客路風光」七言律詩
   30 点水「霜秋風光」七言絶句
   31 常春「霜秋風光(一)」七言絶句
   32 常春「霜秋風光(二)」七言律詩
   33 鮟鱇「霜秋風光 五絶」五言絶句
   34 鮟鱇「霜秋風光 五律」五言律句
   35 鮟鱇「霜秋風光 七絶」七言絶句
   36 鮟鱇「霜秋風光 七律 其一」七言律詩
   37 鮟鱇「霜秋風光 七律 其二」七言律詩
   38 鮟鱇「霜秋風光 七律 其三」七言律詩
   39 鮟鱇「霜秋風光 七律 其四」七言律詩
   40 鮟鱇「霜秋風光 七律 其五 轆轤體五首之一」七言律詩
   41 鮟鱇「霜秋風光 七律 其五 轆轤體五首之二」七言律詩
   42 鮟鱇「霜秋風光 七律 其五 轆轤體五首之三」七言律詩
   43 鮟鱇「霜秋風光 七律 其五 轆轤體五首之四」七言律詩
   44 鮟鱇「霜秋風光 七律 其五 轆轤體五首之五」七言律詩
   45 杜正「霜秋風光」七言絶句
   46 桐山人「霜秋風光」七言絶句
   47 桐山人「霜秋風光」七言律詩

















[1]
投稿者 井古綆 

[霜秋風光]

春迓青皇嫩葉緑   春は青皇を迓へて 嫩葉は緑に

秋歸白帝霜楓赬   秋は白帝を帰して 霜楓は赬(あか)し

老衰重賞嵐山景   老衰重ねて賞す 嵐山の景

倉惶日月不堪情   倉惶(そうこう)たる日月 情に堪へず



「嫩葉」: やわらかい若葉
「倉惶」: 倉皇、あわただしいさま



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[2]
投稿者 井古綆 

[霜秋風光]

嵐山再訪弄秋晴   嵐山再訪して 秋晴を弄し

心先奔車熟路程   心は奔車に先んず 熟路の程

慈叟尊顔沿水像   慈叟の尊顔 水に沿ふて像し

周翁玉作帯霜清   周翁の玉作 霜を帯びて清し

青皇到處千株緑   青皇到る処 千株緑に

白帝歸時萬樹赬   白帝帰る時 万樹赬(あか)し

惜殺旻天落輝急   惜殺す旻天 落輝急ぎ

昏鐘殷殷醸餘情   昏鐘 殷々 余情を醸(かも)す



「慈叟」: 嵐峡に立つ「豪商角倉了以(すみのくらりょうい)像」を指す
「沿水」: 正しくは「沿坂」だが了以が河川を開削工事を為したためこのように措辞した
「周翁」: 嵐山(亀山公園)に建てられた周恩来の「雨中嵐山」を指す
「旻天」: 秋の空



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[3]
投稿者 井古綆 

[霜秋風光]

一夜新霜滿地輕   一夜 新霜 地に満ちて軽く

奇寒凛冽暁鴉聲   奇寒 凛冽 暁鴉の声

千山錦繍紅黄染   千山 錦繍 紅黄染まり

萬樹斕斑濃淡生   万樹 斕斑(らんぱん) 濃淡生ず

西嶺登高難子美   西嶺 登高 子美に難きも

東籬采菊易淵明   東籬菊を采る 淵明に易(やす)し

猶良置酒秋光下   猶良きは 秋光の下に置酒して

須執吟翰賦詠成   須(すべから)く吟翰を執れば 賦詠成るべし



「斕斑」: 色がまじりあって美しいさま
「子美」: 杜甫のあざな



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[4]
投稿者 井古綆 

[霜秋風光]

晨朝碧瓦白霜輕   晨朝 碧瓦 白霜軽く

凛冽寒威暗恨生   凛冽たる寒威 暗恨生ず

天半高飛群雁度   天半高く飛んで 群雁度り

林間早起暁鴉鳴   林間早起して 暁鴉鳴く

昨爲緑葉春山彩   昨は緑葉を為して 春山彩り

今作紅楓秋景更   今は紅楓と作って 秋景更(あらた)まる

歳月倉皇如過隙   歳月 倉皇 過隙(かげき)の如し

馬齡六紀太崢エ   馬齢 六紀 はなはだ崢エ(そうこう)



「過隙」: 白駒過隙
「六紀」: 紀は十二年
「崢エ」: ここでは曲折した人生が積み重なったこと



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[5]
投稿者 井古綆 

[霜秋風光]

四望晨霜滿地輕   四望 晨霜 地に満ちて軽く

新寒冷冽雁群征   新寒 冷冽(れいれつ) 雁群征く

節留青女鴻圖下   節は青女を留めて 鴻図下り

筆繪紅楓大畫成   筆は紅楓を絵がきて 大画成る

萬樹斕斑窮麗美   万樹 斕斑 麗美を窮め

千山錦%#32353;映澄清   千山 錦繍 澄清に映ず

遇遭佳景誰交戟   佳景に遇遭して 誰か戟(ほこ)を交へん

無盡天恩謝泰平   無尽の天恩 泰平を謝す

「冷冽」: ひややかで清い 「青女」: 霜・雪を降らすという女神、転じて霜の別名 「鴻図」: (天の)大きなはかりごと 「澄清」: 空が晴れ渡っていること。世の中が清らかで治まっていることにも掛ける <解説>



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[6]
投稿者  

[霜秋風光]

一夜新霜布地晶   一夜 新霜 地に布いて晶かに

奇寒凛冽暁鴉鳴   奇寒 凛冽 暁鴉鳴く

天留畫匠鴻図下   天は画匠を留めて 鴻図下り

筆繪旻山大作成   筆は旻山(びんざん)を絵(えが)いて 大作成る

歴亂櫻花競秋色   歴乱たる桜花は 秋色と競ふも

斕斑楓樹勝春榮   斕斑たる楓樹は 春栄に勝る

無邊上帝非無味   無辺の上帝は 味無きにに非(あら)ず

藍尾風光忘我瞠   藍尾(らんび)の風光 我を忘れて瞠(どう)す



「旻山」: 旻は秋空
「上帝」: 天帝
「藍尾」: (今年の)最後
「瞠」:  目をみはる



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[7]
投稿者 井古綆 

[霜秋風光]

過雁高飛凍雀鳴   過雁は高く飛んで 凍雀は鳴く

晨霜一白使人驚   晨霜 一白 人を使て驚かしむ

地衣唐突風光變   地衣 唐突 風光変じ

天運倉皇季節更   天運 倉皇 季節更まる

歴亂櫻花競秋色   歴乱たる桜花は 秋色を競ふも

斕斑楓樹勝春榮   斕斑たる楓樹は 春栄に勝る

山行小杜何吟詠   山行 小杜 何をか吟詠

墨客元來愛泰平   墨客 元来 泰平を愛す



「地衣」: 降霜を地上の敷きものに例えた



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[8]
投稿者 井古綆 

[霜秋風光]

樂天佳詠瓦霜白   楽天の佳詠 瓦霜白く

小杜愛吟楓葉赬   小杜の愛吟 楓葉赬(あか)し

雖擬先賢賦秋杪   先賢に擬して 秋杪を賦すると雖も

一詩未使鬼神驚   一詩未だ鬼神を使て 驚かしめず

   



※結句は石川丈山の五律『幽居即事』の『未使鬼神驚』を借用



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[9]
投稿者 謝斧 

[霜秋風光]

閑領秋光霜気輕   閑に秋光を領すれば 霜気軽く

偕期重九自相迎   偕に重九を期せば 自から相迎ふ

可憐菊酒登高會   憐むべし菊酒登高の會

亦少一人空悼情   亦一人を少ては 空しく情を悼む



「菊酒登高會」是流用古人句



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[10]
投稿者 謝斧 

[霜秋風光]

鯉魚風冷十分晴   鯉魚風冷やかに 十分晴れ

橘柚經霜落子輕   橘柚霜を経て 子を落して軽し

深浅江楓秋色老   深浅江楓 秋色老い

坐聞切切暗蛩聲   坐ろに聞く 切切たり暗蛩の聲





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[11]
投稿者 謝斧 

[霜秋風光]

寒光蕭颯早霜清   寒光蕭颯 早霜清し

九月初三梳月明   九月初三 梳月明らか

此夜相携舊幽約   今日相い携さう 舊幽約

邀朋置酒契真情   朋を邀え酒を置いて 真情を契る





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[12]
投稿者 謝斧 

[霜秋風光]

楓葉染霜秋野晴   楓葉霜を染めて 秋野晴れ

妖紅滿目好山行   妖紅目に満ちて 山行に好し

蜻蛉蓮沼随風影   蜻蛉蓮沼 風に随ふ影

蟋蟀花堤泣露聲   蟋蟀花堤 露に泣く聲

渓上停車牧之意   渓上車を停む 牧之意

林間暖酒楽天情   林間酒を暖む 楽天の情

閑吟可味風懷好   閑吟味わふべし 風懷の好きを

儘日徘徊心地清   儘日徘徊すれば 心地清し



「妖紅」: 一朶妖紅翠欲流 翠是鮮也 東坡詩



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[13]
投稿者 謝斧 

[霜秋風光]

晩風吹払帯霜清   晩風吹き払って霜を帯びて清く

匝水漫山紅葉明   匝水漫山紅葉明らか

滋艶階前凝白露   艶を滋して階前 白露凝り

誇妍籬下綻黄英   妍を誇りて籬下 黄英綻ぶ

坐詩分韻多間趣   詩に坐して韻を分かてば 間趣多く

因酒忘憂少世情   酒に因りて憂いを忘れて 世情少なし

陶子九原如可作   陶子九原 如し作す可けんば

酔餘懽笑結鴎盟   酔餘懽笑して 鴎盟結ばん



「懽笑」: 飲酒詩序



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[14]
投稿者 謝斧 

[霜秋風光]

温泉浴後弄霜晴   温泉浴後 霜晴を弄し

楓葉爛残秋色明   楓葉爛残 秋色明らかなり

池面凝眸隠魚影   池面眸を凝せば 魚影隠れ

花間欹耳断蟲聲   花間耳を欹てれば 蟲聲断ゆ

素娥入戸澄懷冷   素娥戸に入って懷を澄せて冷かに

青女侵衣逼骨清   青女衣を侵して骨に逼りて清し

飲裏八仙歌伐木   飲裏の八仙 伐木を歌ひ

良宵倒屐喜相迎   良宵屐を倒まにして 喜び相ひ迎ふ



「伐木」: 詩小雅
「飲裏八仙」: 嘯嘯會諸子自存遷質



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[15]
投稿者 Y.T 

[霜秋獨在古城憶侶]

返照夕雲樓閣横   返照の夕雲 樓閣の横

胸中怏鬱思難平   胸中 怏鬱 思い平らかなり難し

似鉤繊月挂鴟尾   鉤の似(ごと)き繊月 鴟尾に挂り

如恨松音度古城   恨むが如き松音 古城に度る

颯颯秋風傷侶意   颯颯たる秋風 傷侶の意(こころ)

啾啾蛩雨断腸聲   啾啾たる蛩雨 断腸の聲

更堪梧葉蕭蕭下   更に堪えんや 梧葉の蕭蕭として下(おつ)るを

一夜鬢辺華髪生   一夜 鬢辺 華髪を生ず





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[16]
投稿者 黒浴@

[霜秋風光]

西風颯颯白雲生   西風 颯颯 白雲生ず

紅葉如燃歩歩軽   紅葉 燃えるが如く 歩歩軽し

古刹無人禅寂境   古刹 人なく 禅寂境

暮鐘余韻動吟情   暮鐘の余韻 吟情を動かす

   





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[17]
投稿者 黒浴@

[霜秋風光]

林間紅葉歩趨軽   林間 紅葉 歩趨(ほすい)軽し

黄穂田畴稔熟声   黄穂(こうすい)の田疇 稔熟(じんじゅく)の声

独坐草庵塵外境   独り座す 草庵 塵外の境

残蛩細細送秋鳴   残蛩(ざんきょう) 細細と秋を送って鳴く





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[18]
投稿者 展陽 

[霜秋風光]

稲穂金風細   稲の穂に秋風がかすかに

荷衣玉露清   蓮の葉に玉露がさわやかに

寒空弧雁影   寒空に弧雁の影

草莽乱蛩声   草莽に蛩声が乱れわたり

老樹晨霜落   老樹に朝霜が降り落ち

連山冷色横   連山に冷色が横たわる

秋深紅葉盡   秋も深まり紅葉が尽きて

忽誘惜花情   ふと花を惜しむ情に誘われる





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[19]
投稿者 博生 

[霜秋風光]

玲瓏月色一天明   玲瓏月色 一天明らか

庭院蕭森蟋蟀鳴   庭院蕭森 蟋蟀鳴く

独坐風軒良夜興   独り風軒に坐す 良夜の興

新霜冷気見秋生   新霜冷気 秋の生ずるを見る



澄んだ秋の夜空、庭の木立に虫の声
ひんやりとした軒端に佇めば
そこに秋を見る。



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[20]
投稿者 登龍 

[霜秋風光]

庭隅白靚冷逾清   庭隅白く靚(よそお)ひ 冷逾清し

閑歩郊墟疑雪生   郊墟を閑歩すれば疑ふらくは雪生ずるかと

青女飛霜機杼巧   青女霜を飛ばし機杼巧みに

風光増耀暁晶晶   風光耀きを増し暁に晶晶たり



 庭の隅が白く粧い冷ややかで逾涼しげであり、
 田舎の丘をゆっくり歩くと雪が降ったのかと疑うほどである。
 霜や雪を掌る神が霜を飛ばし機織機械を巧く操作するように、
 風光は耀きを増し朝方きらきらと輝く。



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[21]
投稿者 忍夫 

[霜秋風光]

無風石澗落楓軽   風無き石澗落楓軽く

流水留紅清更清   流水は紅を留め、清し更に清し。

忽識霜秋天易変   忽ち識る、霜秋の天変り易きを。

深山時雨促吟情   深山の時雨吟情を促す。





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[22]
投稿者 忍夫 

[霜秋風光]

沈沈鐘韻満空城   沈沈と鐘韻空城に満ち、

雨後湖頭返照明   雨後の湖頭返照明かなり。

孤雁雲間求友去   孤雁は雲間に友を求めて去り、

残蛩露底伴愁鳴   残蛩は露底に愁ひを伴なうて鳴く。

山容巳痩秋将暮   山容已に痩せて、秋は将に暮れなんとし、

汀葦始枯寒又生   汀葦枯れ始めて、寒又た生ず。

帆影渺茫風一陣   帆影渺茫たり、風一陣、

凋衰時節故園情   凋衰の時節、故園情。





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[23]
投稿者 玄齋 

[霜秋風光]

霜滿暮山秋氣C   霜は暮山に満ちて 秋気清し

叢中切切冷蟲聲   叢中 切切 蟲声冷やかなり

乍過林隙斜陽影   乍ち林隙を過ぎる斜陽の影

染出紅楓處處明   紅楓を染め出して 処処に明らかなり





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[24]
投稿者 嗣朗 

[霜秋風光]

白露黄花美已栄   白露 黄花の美すでに栄へ

階前楓葉満江城   階前の楓葉 江城に満つ、

西郊落日画中景   西郊の落日 画中の景

毫想風霜意又縈   毫(わず)かに風霜を想へば意又縈(めぐ)る。





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[25]
投稿者 宮前明鳳 

[霜秋返照風光]

傳枝風可聽   枝を 伝ふ 風は 聴くべく

四顧動秋情   四顧すれば 秋情を 動かす

返照斜陽白   返照の 斜陽は 白く

降霜滿地清   降霜に 満地 清し



 今回のお題を見て先ず念頭に浮かんだのは、王維の「鹿柴」(返景入深林、復照青苔上、)である。
因って、仲秋も過ぎたこの時期の「霜秋の風光」には、秋の感懐に欠かせないのが「返照」であろう。



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[26]
投稿者 宮前明鳳 

[霜秋菊酒風光]

競馥重陽酒   馥(かおり)を競(きそ)ふは 重陽の酒

傲霜隠逸英   霜に 傲(おご)るは 隠逸の 英

行聞風欲白   行(ゆくゆ)く聞けば 風は白からんと欲し

分外樂浮生   分外に 浮生を 楽しむ



 秋の銘酒は、「菊酒」に限る感懐です。

「傲霜」: 霜に負けない
「隠逸英」: 菊の異称
「分外」: 過分に
「浮生」: はかない人生





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[27]
投稿者 宮前明鳳 

[霜秋返照風光]

四顧眺望陰又晴   四顧する眺望は 陰 又 晴

商聲蕭瑟野情清   商声 蕭瑟(しょうしつ)として 野情 清し

霜秋返照風光白   霜秋の 返照に 風光は 白く

鵙鳥鳴啼速贄營   鵙鳥(げきちょう) 鳴啼するは 速贄(はやにえ)の 営(いとな)み



「鵙(もず)の速贄(はやにえ)」の時期ともなり、商声(秋の声)一段と、冬の訪れ間もなきを覚える「霜秋の風光」である。



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[28]
投稿者 宮前明鳳 

[霜秋菊酒風光]

樽詰貯藏馨釀萌   樽詰めに 貯蔵して 馨り 醸(かも)して 萌(きざ)し

生壜冷却半年横   生壜の 冷や却(おろ)しは 半年 横たふ

霜秋酒熟風光潤   霜秋に 酒 熟して 風光 潤(うるお)ひ

杯面玲瓏白露呈   杯面 玲瓏として 白露 呈す



 冬に醸造した清酒をひと夏貯蔵、熟成させた生詰め酒「石川ひやおろし」が「重陽の節句」(9月9日)、石川県内の酒店で一斉に発売された。これは10月末までの限定販売で、「ひやおろし」は蔵出しの風味を生かすため、加熱殺菌せずに瓶詰めする。半年後の出荷時期には新酒の粗さが消え、味に丸みが出るのが特徴である。
 石川県内の各「造り酒家」夫々が、銘柄を競って蔵出しする23銘柄を一つひとつ嗜むこと、左党には秋の楽しみ、これに優るもの無い。



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[29]
投稿者 宮前明鳳 

[霜秋客路風光]

秋自西郊過雁聲   秋は西郊より 過雁の声

人從客路故園情   人は客路(かくろ)より 故園の情

降霜白處尾花戰   降霜白き処 尾花は戦(そよ)ぎ

掩映紅於錦繍生   掩映(えんえい)の紅於(こうお)は 錦繍生ず

換景日移燈下坐   景(けしき)を換へて 日は移り 灯下に坐せば

喞虫輪唱草中鳴   喞虫(そくちゅう)は輪唱して 草中に鳴く

月華星影酒詩侶   月華星影は 酒詩の侶(とも)なるも

遊子心頭煩悶呈   遊子の心頭に 煩悶呈す



 秋も深まる頃旅に出ると「錦繍の紅葉」と同時に、「霜秋の風光」は清涼として哀愁を伴う。
「月華星影」の黄昏と陰翳の中、集く虫の音に一献酌めば、昨今の世情の報道や痛ましいニュースに、旅の間も感懐は煩悶を呈するのである。



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[30]
投稿者 点水 

[霜秋風光]

繁霜曠野眺望清   繁霜の曠野 眺望清く

田圃河川一様明   田圃 河川 一様に明るし

近在客人虞眩燿   近在の客人 眩燿を虞る

遠来候雁失飛行   遠来の候雁 飛行をあやまつ



 繁霜ですと、野山も真っ白となり、びっくりすることがあります。
 朝のほんのわずかな時間かもしれませんが。そんなことを思いつくりました。



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[31]
投稿者 常春 

[霜秋風光(一)]

驅車遠上雨将晴   車を驅りて遠上 雨将に晴る

眺望連山銀雪晶   眺望の連山 銀雪晶か

遙憶何年携考妣   遙かに憶ふ 考妣携へしより何年ぞ

白駒過隙我今驚   白駒隙を過ぐるごとく我が今に驚く





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[32]
投稿者 常春 

[霜秋風光(二)]

籬菊茅檐依舊清   籬菊 茅檐 旧に依り清し

湯煙處處又風情   湯煙処処 又風情あり

上峰冠雪遠山耀   峰に上れば 冠雪 遠山耀き

下谷被霜紅葉更   谷に下れば 被霜 紅葉更なり

此地曾遊倶考妣   此の地 曾遊す 考妣倶にして

今時再訪頼兒甥   今時 再訪 児甥に頼る

重杯談笑圍爐火   杯を重ね 談笑 炉火を囲めば

自覺光陰如矢征   自ずから覚ゆ 光陰矢の如く征けるを





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[33]
投稿者 鮟鱇 

[霜秋風光 五絶]

人入紅楓徑,   人は紅楓の径へ入り,

山湖孤雁鳴。   山湖に孤雁鳴く。

霜秋午風冷,   霜秋 午風冷たく,

野店酒堪傾。   野店に酒 傾くに堪へり。





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[34]
投稿者 鮟鱇 

[霜秋風光 五律]

幽蹊沿澗響,   幽蹊 澗響に沿い,

紅葉晩秋明。   紅葉 晩秋に明し。

野店臨湖水,   野店 湖水に臨み,

俳人試肉声。   俳人 肉声を試みんとす。

吟風醉村酒,   風に吟じて村酒に酔ひ,

無月擅詩情。   月なくも詩情を擅ほしいままにす。

止宿山中仰,   止宿して山中に仰ぐに,

銀河流錦横。   銀河 錦を流して横たへり。





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[35]
投稿者 鮟鱇 

[霜秋風光 七絶]

山浮碧水鏡湖明,   山は碧水に浮いて鏡湖明るく,

風爽霜秋吟骨輕。   風爽かなる霜秋に吟骨軽し。

游目紅楓滿閑徑,   目を遊ばせるに紅楓 閑径に満ち,

野詩忽就感頻生。   野詩 忽ち就なって 感 頻に生ず。





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[36]
投稿者  

[霜秋風光 七律 其一]

年来少慾酒酲輕,   年来 慾を少なくして酒酲軽く,

老骨多閑無不平。   老骨 閑多くして不平なし。

洗臉霜晨啜稀飯,   臉かおを洗い霜晨に稀飯かゆを啜り,

隨風午徑擅幽情。   風に随い午径に幽情を擅ほしいままにす。

紅楓織錦山如醉,   紅楓 錦を織りて山は酔うごとく,

白髪游魂詩易成。   白髪 魂を遊ばさば詩は成り易し。

啼鳥關關人朗朗,   啼鳥関関 人は朗朗,

金秋酬和喜飛声。   金秋に酬和するを喜びて声を飛ばす。





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[37]
投稿者  

[霜秋風光 七律 其二]

秋色堪尋伴親友,   秋色 尋ぬるに堪えて親友を伴い,

隣家孀婦樂餘生。   隣家の孀婦 余生を楽しむ。

去年洛北嵯峨野,   去年は洛北の嵯峨野にあり,

今歳日光明智平。   今歳は日光の明智平にあり。

天惠風光山織錦,   天は風光を恵みて山は錦を織り,

人吟俳句鳥飛声。   人は俳句を吟じ鳥は声を飛ばす。

荊妻聞此難愚叟,   荊妻 此れを聞いて愚叟を難ずるに,

裝做蠧魚游水清。   蠧魚の裝做ふりして水の清きに游およぎおると。



「洛北嵯峨野」: 在日本京都的地名也。日光明智平:在日本日光的地名也。



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[38]
投稿者 鮟鱇 

[霜秋風光 七律 其三]

紅臉尋花游閙市,   紅臉 花を尋ねて閙市に遊び,

白頭探勝樂餘生。   白頭 探勝して余生を楽しむ。

天香國色歡言酒,   天香国色 歓言の酒,

山骨水光逃世情。   山骨水光 逃世の情。

徑入楓林霜葉好,   径は楓林に入りて霜葉好く,

人揮詩筆野禽鳴。   人は詩筆を揮いて野禽鳴く。

無風無月秋堪賞,   風なく月なくも秋は賞するに堪え,

坐似啼猿飛一聲。   坐して似たり 啼猿の一聲を飛ばすに。



「天香國色」 :牡丹花。也形容女子的美麗。



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[39]
投稿者 鮟鱇 

[霜秋風光 七律 其四]

殘蝉落盡紫穹晴,   残蝉 落ち尽くして紫穹晴れ,

蛩雨蕭條徹夜鳴。   蛩雨 蕭條として夜を徹して鳴く。

秋氣衝天冷霜髪,   秋気 天を衝いて霜髪に冷たく,

月光如水洗餘生。   月光 水の如く余生を洗う。

官途千里無功譽,   官途の千里に功誉なく,

邊土三更聞漏声。   辺土の三更に漏声を聞く。

但有紅楓堪嘆賞,   ただ紅楓の嘆賞するに堪えるあり,

上班閑徑好風情。   班に上る閑径に風情好し。



「上班」: 出勤。



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[40]
投稿者 鮟鱇 

[霜秋風光 七律 其五 轆轤體五首之一]

山醉金秋紅葉明,   山は金秋に酔って紅葉明るく,

人游勝地喜天晴。   人は勝地に遊んで天の晴るるを喜ぶ。

看楓依舊求新賦,   楓を看れば旧に依りて求新の賦,

隨歩登高尚古情。   歩に随い高きに登る尚古の情。

幸見酒旗翻野店,   幸いにも見ゆ 酒旗の野店に翻り,

笑斟玉液似泉声。   笑って斟む 玉液の泉声に似るを。

詩腸堪洗唇宜蕩,   詩腸 洗うに堪えれば唇 宜しく蕩うごくべく,

自聳痩肩吟志清。   自ずから痩肩聳えて吟志清し。





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[41]
投稿者 鮟鱇 

[霜秋風光 七律 其五 轆轤體五首之二]

晝無緑酒白頭賞,   昼に緑酒なくも白頭は賞す,

山醉金秋紅葉明。   山 金秋に酔いて紅葉の明るきを。

隨歩楓林有曲磴,   歩に随う楓林 曲磴あり,

游魂景勝伴溪声。   魂を遊ばす景勝 溪声を伴う。

憐新厭舊詩風好,   新を憐れみ旧を厭えば詩風好く,

送舊迎新約会輕。   旧を送り新を迎えれば約会軽し。

才媛今宵何處飲,   才媛 今宵は何処に飲み,

與誰吟句擅多情?   誰と句を吟じて多情を擅ほしいままにせんや?



「約会」: 会う約束。



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[42]
投稿者 鮟鱇 

[霜秋風光 七律 其五 轆轤體五首之三]

晩境多閑百慮輕,   晩境 閑多くして百慮軽く,

抱壺目送夕陽平。   壺を抱き目送すれば夕陽平なり。

人斟緑酒朱顔競,   人 緑酒を斟んで朱顔を競うは,

山醉金秋紅葉明。   山の金秋に酔って紅葉の明るきなり。

悦目楓林催韵事,   目を悦ばせて楓林 韵事を催し,

聳肩老骨放襟情。   肩を聳やかして老骨 襟情を放つ。

詩無聲病喉才分,   詩に声病なくも喉に才分なくば,

如馬長嘶使鳥驚。   馬の長く嘶く如く鳥をして驚かしめん。





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[43]
投稿者 鮟鱇 

[霜秋風光 七律 其五 轆轤體五首之四]

靈巫含笑盞堪傾,   霊巫 笑みを含めば盞は傾けるに堪え,

共仰銀河暫有情。   共に銀河を仰いで暫くは情あり。

緑酒少功香夢短,   緑酒 功少なくして香夢短く,

赤烏振羽海濤平。   赤烏 羽を振うも海濤平らかなり。

雲歸白首朱顔醒,   雲 帰りて白首の朱顔醒め,

山醉金秋紅葉明。   山は酔いて金秋の紅葉明るし。

爲養壽康將曳杖,   寿康を養わんがために将に杖を曳かんとし,

人穿霜徑早晨清。   人 霜径を穿てば早晨清し。





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[44]
投稿者 鮟鱇 

[霜秋風光 七律 其五 轆轤體五首之五]

白首多閑無不平,   白首 閑多くして不平なく,

讀書欲睡枕肱横。   書を読み睡らんと肱を枕に横たわる。

幸逢仙女陪香夢,   幸いにも逢いたる仙女 香夢に陪し,

先勸霞漿洗世情。   先ず勧めたる霞漿 世情を洗う。

乘興彈琴花貌好,   興に乗り琴を弾きて花貌好く,

搖唇吟句午鷄鳴。   唇を揺らし句を吟ずるに午鷄鳴く。

醒来游目南窗外,   醒め来たって目を遊ばす南窗の外,

山醉金秋紅葉明。   山は金秋に酔いて紅葉明るし。



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[45]
投稿者 杜正 

[霜秋風光]

欲味秋宵訪梵城   秋の宵を味わわんと欲し 梵城を訪ふ

廊前満地月華明   廊前は満地 月華 明らかなり

遥山林径無塵俗   遥山 林径 塵俗 無し

到処玲瓏霜気清   到処 玲瓏 霜気 清し



 秋の宵を味わおうと、お寺を訪問したところ、
 廊下の前の庭は 辺り一面 月のひかりが満ち溢れ 明るかった。
 庭の向こう遥るかな山 そこまで続く林の径 すべて すがすがしく 塵俗が 無いようだ。
 いたるところ、月光下で美しく 霜気が清かった。


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[46]
投稿者 桐山人 

[霜秋風光]

一旦桂香方滿城   一旦 桂香 方に城に満つ

訪花盡日老筇輕   花を訪ねて 尽日 老老筇軽し

秋風寥亮旻天渺   秋風は寥亮 旻天は渺たり

摘句留連霜気清   句を摘みて留連 霜気清し





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[47]
投稿者 桐山人 

[霜秋風光]

碧水蒼旻万頃明   碧水 蒼旻 万頃明らか

遠山秀嶺四望平   遠山 秀嶺 四望平らかなり

雁群如縷暮雲動   雁群 縷の如く 暮雲は動き

楓葉半衰霜気生   楓葉 半ば衰へ 霜気は生ず

樹下叢蟲音切切   樹下の叢蟲 音 切切

路邊残菊郁清清   路辺の残菊 郁 清清

金風偏誘老吟客   金風偏へに誘ふ 老吟客

流憩西郊一盞傾   西郊に流憩し 一盞傾く





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