第7回 桐山堂詩會(2020年2月4日)

 第7回桐山堂詩會を開催します。

 桐山堂恒例の「新年漢詩」と合同での開催です。


 既に「新年漢詩」には掲載していますが、年末関係の詩を省き、下平声「八庚」韻の詩を先にまとめさせていただきました。



  「下平声八庚」韻詩  

作品番号  題 名 作 者   詩 形
   
   01 庚子新春 青眼居士 七言絶句 
   02 令和二年新春 東 山 七言絶句 
   03 壽令和二年新春 東 山 七言絶句 
   04 欲作立春詩 恕 水 七言絶句 
   05 年初雜詠 其一 梅蕾 常 春 七言絶句 
   06 年初雜詠 其二 目白鳥 常 春 七言絶句 
   07 年初雜詠 其三 百人一首 常 春 七言絶句 
   08 年頭憂感 常 春 七言律詩 
   09 新年雜詠 (芙蓉漢詩会) 柳 村 七言絶句 
   10 新歳偶成 (芙蓉漢詩会) 石甫途 七言絶句 
   11 新春暖風 (芙蓉漢詩会) K・K 七言絶句 
   12 新年書懷 (芙蓉漢詩会) S・W 七言絶句 
   13 庚子元旦 一 (芙蓉漢詩会) F・U 七言絶句 
   14 庚子元旦 二 (芙蓉漢詩会) F・U 七言絶句 
   15 迎新年 (桐山堂半田) 靖 芳 七言絶句 
   16 五輪新年 (桐山堂半田) 昇 洲 七言絶句 
   17 新年作 (桐山堂半田) 輪中人 七言絶句 
   18 籬垣梅 (桐山堂半田) 睟 洲 七言絶句 
   19 新年書懷 (桐山堂半田) 醉 竹 七言絶句 
   20 新年作(一) (桐山堂半田) I・F 七言絶句 
   21 新年作(二) (桐山堂半田) I・F 七言絶句 
   22 春日即事(一) (桐山堂半田) F・K 七言絶句 
   23 春日即事(二) (桐山堂半田) F・K 七言絶句 
   24 元日 (桐山堂半田) 健 洲 七言絶句 
   25 立春 岳 城 七言絶句 
   26 立春偶成 岳 城 七言絶句 
   27 新春山行即事 茜 峰 七言絶句 
   28 初春誓 芦 泉 七言絶句 
   29 立春探梅 楊 川 七言絶句 
   30 新年立春 凌 雲 五言律詩 
   31 庚子新年 (桐山堂刈谷) 聖 陽 七言絶句 
   32 新年書懷 (桐山堂刈谷) 聖 陽 七言絶句 
   33 新年 一 (桐山堂刈谷) A・K 七言絶句 
   34 新年 二 (桐山堂刈谷) A・K 七言絶句 
   35 庚子初詣 (桐山堂半田) 小 圃 七言絶句 
   36 新年 (桐山堂刈谷) Y・N 七言絶句 
   37 立春即事(其一) 玄 齋 七言絶句 
   38 立春即事(其二) 玄 齋 七言律詩 
   39 立春 道 佳 七言絶句 
   40 立春閑詠 觀 水 七言絶句 





  「下平声八庚」韻以外の詩  

作品番号  題 名 作 者   詩 形
   
   他韻-01 元日偶成 觀 水 七言絶句 
   他韻-02 新春 ニャース 七言絶句 
   他韻-03 年賀 香@風 七言絶句 
   他韻-04 年賀(二) 香@風 七言絶句 
   他韻-05 迎春 翠 空 七言絶句 
   他韻-06 歳晩即事 亥 燧 七言絶句 
   他韻-07 元朝仰富士 (芙蓉漢詩会) 柳 村 七言絶句 
   他韻-08 山上臨富嶽 (芙蓉漢詩会) M・M 七言絶句 
   他韻-09 新春 地球人 七言絶句 
   他韻-10 庚子新年書感 岳 城 七言絶句 
   他韻-11 新年作 深 溪 七言絶句 
   他韻-12 庚子元旦 遙 峰 七言絶句 
   他韻-13 拜年有作 風雷山人 七言絶句 
   他韻-14 謹賀新年 鮟 鱇 五言絶句 
   他韻-15 庚子迎春謝天恩 鮟 鱇 五言絶句 
   他韻-16 庚子新春迎子女 鮟 鱇 七言絶句 
   他韻-17 鼠年元旦黄泉醉 鮟 鱇 七言絶句 
   他韻-18 庚子三元啜椒酒 鮟 鱇 七言絶句 
   他韻-19 三元試筆 鮟 鱇 七言絶句 
   他韻-20 庚子新年所懷 鮟 鱇 七言絶句 
   他韻-21 夫唱婦聽含笑妍 鮟 鱇 五言律詩 
   他韻-22 三朝夫婦醉閑聊 鮟 鱇 七言律詩 
   他韻-23 鼠年試筆題東壁 鮟 鱇 詞・醉公子 
   他韻-24 三元夫婦交紅友 鮟 鱇 詞・霜天曉角 
   他韻-25 鼠年元旦吟詩 鮟 鱇 詞・東坡引 
   他韻-26 三元翁嫗喜遊仙 鮟 鱇 詞・雙頭蓮令 
   他韻-27 新春迎子孫 鮟 鱇 詞・月宮春 
   他韻-28 迎春在黄泉 鮟 鱇 詞・陽臺夢 
   他韻-29 三元待盛春 鮟 鱇 詞・玉漏遲 
   他韻-30 三元念春遊 鮟 鱇 詞・瑞鶴仙 
   他韻-31 三元子孫來 鮟 鱇 詞・高山流水 











































[01] 参加者  青眼居士 



  庚子新春        

寺鐘音絶入新正   寺鐘音絶えて新正に入る

少壯更須初日生   少壮は更に須つ 初日の生ずるを

老漢逢春有何喜   老漢春に逢ふも 何の喜びか有らん

賀詞故託聖賢罌   賀詞 故(ことさ)らに託す 聖賢の罌

          (下平声「八庚」の押韻)


    

























[02] 参加者  東山 



  令和二年新春        

元朝旭日C   元朝 旭日清く

里社賽人明   里社 賽人明らかなり

唯尚無殃禍   唯だ尚はくは 殃禍無く

萬邦億兆平   万邦億兆の平らかなるを

          (下平声「八庚」の押韻)


 

























[03] 参加者  東山 


  壽令和二年新春        

去年艾節令和聲   去年艾節 令和の声

新帝秋成儀典C   新帝秋成 儀典清し

瑞兆驚希玉虹架   瑞兆驚き希む 玉虹の架かるを

元朝還嘉一天明   元朝 還た嘉して 一天明らかなり

          (下平声「八庚」の押韻)


    

























[04] 参加者  恕水 



  欲作立春詩        

春到曙鴉求友声   春到り 曙鴉 友を求むる声

燕来花笑集群英   燕来たり 花笑き 群英を集む

秀吟繚乱我興奮   秀吟 繚乱 我興奮す

終日苦辛詩不成   終日 苦辛 詩成らず

          (下平声「八庚」の押韻)


 春になった。明け方、カラスの友を呼ぶ声がする。
 その声に応じて、燕は来る、花は咲く、その春の気配が詩人たちを集める。
 花が咲き乱れるように、素晴らしい詩が咲き乱れ、我も負けじと奮い立つ。
 一日中悪戦苦闘するも、結局詩はできず。


























[05] 参加者  常春 



  年初雜詠 其一 梅蕾        

日日暖冬梅蕾萌   日々暖冬 梅蕾萌え

嫩紅枝節待春情   嫩紅の枝節 春を待つ情

時移何u老還疾   時移るは何ぞuき 老還(ま)た疾し

未練猶期百囀鶯   未練 猶期す 百囀の鶯を

          (下平声「八庚」の押韻)


    

























[06] 参加者  常春 



  年初雜詠 其二 目白鳥        

阪タ白眼二三声   緑翅白眼 二三の声

求蜜銜花彼此縈   蜜を求め花を銜え彼此縈(めぐ)る

過午庭前日光浴   過午 庭前 日光浴

放鬆至上老心平   放鬆至上 老心平か

          (下平声「八庚」の押韻)


    

























[07] 参加者  常春 



  年初雜詠 其三 百人一首        

百人一首定家誠   百人一首 定家の誠

朗詠和歌覺有情   和歌を朗詠すれば有情覚ゆ

反映幾多承久影   反映幾多 承久の影

秘胸逆境斷魂清   胸に秘す逆境 断魂清し

          (下平声「八庚」の押韻)


    

























[08] 参加者  常春 



  年頭憂感        

年頭殺戮自誇聲   年頭殺戮 自ら誇る声

即應高呼報復盟   即に応ず 高呼 報復の盟

統領胸中專選擧   統領の胸中 専ら選挙

尊師背後豈油阬   尊師の背後 豈油阬のみならんや

紛騷連累無辜恐   紛争の連累 無辜恐れ

經濟低迷有識評   経済の低迷 有識評す

優先家國與私意   家国と私意 優先すれば

今恃覇權何處迎   今恃む覇権 何処迎ふや

          (下平声「八庚」の押韻)


    

























[09] 参加者  (芙蓉漢詩会) 柳村 



  新年雜詠        

旭日曈曈瑞氣生   旭日 曈曈 瑞気生ず

窗梅數點好詩情   窓梅 数点 詩情好し

新年消息人如問   新年の消息 人如し問はば

自適悠悠杯酒傾   自適 悠悠 杯酒を傾けんと

          (下平声「八庚」の押韻)


    

























[10] 参加者  (芙蓉漢詩会) 石甫途 



  新歳偶成        

五彩瑞雲應太平   五彩の瑞雲 太平に応ふ

鷄聲告曉景風盈   鶏声 暁を告ぐれば 景風盈つ

南枝春信花香朶   南枝 春信 花香の朶

已有朝陽山色清   已に朝陽有り 山色清し

          (下平声「八庚」の押韻)


    

























[11] 参加者  (芙蓉漢詩会) K・K 



  新春暖風        

君容我弊気澄明   君我が弊を容れ 気澄明

我許君瑕意穏平   我君の瑕を許し 意穏平

五十親交無別事   五十親交 別事無し

光頭対酌恵風行   光頭対酌すれば 恵風は行く

          (下平声「八庚」の押韻)


 人は皆欠点を持っているが、お互いに受容してやれば対立はない。
 50余年にわたる付き合いも、何も特別なことは無かった。
 新年に遠来の友を迎えて、禿げ頭同士が飲めば、何とも心地よい風が、そっと抜けて行く。

  お互いの 癖欠点を 受け流し
       五十余年を  飲みきたる哉   


























[12] 参加者  (芙蓉漢詩会) S・W 



  新年書懷        

歳朝參詣暖風輕   歳朝 参詣 暖風軽し

家室相揃和氣生   家室 相揃ひて 和気生ず

拝拱爲君存宿志   拝拱す 君が為 宿志を存ずを

三兒笑語喜心平   三児の笑語に心平を喜ぶ

          (下平声「八庚」の押韻)


 元旦の朝、恒例の初詣へ出かけた。近くの氏神様をお参りする。
 暖かなお正月、家族が揃い和やかなひと時。
 子供達のために手を合わせて祈った。
 三人息子の笑い話を聞きながら、何事も無く安らかな今に幸せを感じた。


























[13] 参加者  (芙蓉漢詩会) F・U 



  庚子元旦 一        

曈曈初日照鴟甍   曈曈たる初日 鴟甍を照らし

一脈春風颭旆旌   一脈の春風 旆旌を颭(そよが)す

先献佛前新歳水   先に仏前に献ず 新歳の水

令和御宇願昇平   令和の御宇 昇平ならんことを願ふ

          (下平声「八庚」の押韻)


「御宇」: 天下を治めている期間。御代。
    

























[14] 参加者  (芙蓉漢詩会) F・U 



  庚子元旦 二        

歳旦風和節序更   歳旦 風和し 節序更まり

三元天地入春晴   三元の天地 春晴に入る

遙看白雪嶽芙蓉   遥かに看る 白雪の嶽芙蓉

旭日放紅山色明   旭日 紅を放って 山色明らかなり

          (下平声「八庚」の押韻)


    

























[15] 参加者  (桐山堂半田) 靖芳 



  迎新年        

淑気洋洋天地清   淑気 洋洋として 天地清し

茅門草木已春聲   茅門の 草木 已に春聲

笑談喜色身多幸   笑談 喜色 身多幸

歳旦一家椒酒盈   歳旦 一家 椒酒盈たす

          (下平声「八庚」の押韻)


    

























[16] 参加者  (桐山堂半田) 昇洲 



  五輪新年        

五輪歳旦曙鷄聲   五輪の歳旦 曙鷄の声

賀客来門瑞気生   賀客 門に来たりて 瑞気生ず

世界融和天地祭   世界の融和 天地の祭

紛争絶滅萬民盟   紛争の絶滅 万民の盟ひ

          (下平声「八庚」の押韻)


    

























[17] 参加者  (桐山堂半田) 輪中人 



  新年作        

淑気東窗入五更   淑気東窗五更に入る

歳朝旭日転鮮明   歳朝の旭日は転鮮明

頽齢自寿身康健   頽齢自ら寿ぐ身は康健

賦欲新詩尚未成   賦せんと欲して新詩尚未だ成らず

          (下平声「八庚」の押韻)


    

























[18] 参加者  (桐山堂半田) 睟洲 



  籬垣梅        

老筇郊野寂無聲   老筇 郊野 寂として声無し

白雨寒光不記萌   白雨 寒光 萌を記(しる)さず

漫視籬垣梅綻玉   漫ろに視る 籬垣 梅は玉を綻ばす

幽香豊艷獨怡情   幽香 豊艶 独り情を怡しむ

          (下平声「八庚」の押韻)


 知多市岡田はかつて知多木綿織の産地、今も古民家が残っていて、狭い路地の籬垣に四季の花が咲く。

























[19] 参加者  (桐山堂半田) 醉竹 



  新年書懷        

曉光瑞靄入新正   暁光 瑞靄 新正に入る

初詣村祠參道清   初詣 村祠の参道清し

祈念萬民災禍少   祈念す 万民災禍少きを

願望内外政經平   願望す 内外政経 平かなるを

          (下平声「八庚」の押韻)


 大災害が多く発生し、貧富の格差が拡大した平成時代が終わり、令和の新年を迎え、皆が等しく安らかな生活を遅れることを祈ります。

























[20] 参加者  (桐山堂半田) I・F 



  新年作(一)        

歳旦風和暖氣生   歳旦 風和らぎて 暖気生ず

緩行小院早鶯聲   緩行す 小院 早鶯の声

煕煕淑景吟情動   煕煕たる淑景 吟情動く

筆硯新詩心自平   筆硯 新詩 心自ら平らかなり

          (下平声「八庚」の押韻)


 今年の元旦は晴れて、穏やかな日和でした。早春を感じさせる新年の始まりを詩にしてみました。

























[21] 参加者  (桐山堂半田) I・F 



  新年作(二)        

正旦參宮神樂清   正旦 参宮 神楽清し

相和管弦祥氣生   相和す管弦 祥気生ず

花顏巫女浦安舞   花顏の巫女 浦安の舞

瑞雲韶景喜時平   瑞雲 韶景 時平らかなるを喜ぶ

          (下平声「八庚」の押韻)


 元旦に近くの神社に参詣しました。新築の神楽殿で管弦や舞を見ました。

























[22] 参加者  (桐山堂半田) F・K 



  春日即事(一)        

惠風送暖動紅情   恵風暖を送りて 紅情を動かす

樹上祥雲淑氣横   樹上の祥雲 淑気横たふ

ク友笑顔交柏葉   郷友 笑顔 柏葉を交す

茅門柳眼自生生   茅門の柳眼 自ら生生

          (下平声「八庚」の押韻)


 正月に実家で会食した事を思い出して作りました。

























[23] 参加者  (桐山堂半田) F・K 



  春日即事(二)        

韶光滿溢暖風輕   韶光 満溢 暖風軽し

一朶仙馨忘世情   一朶の仙馨 世情を忘る

茅屋春盤朋盡樂   茅屋の春盤 朋尽く楽しむ

長酣笑語已深更   長酣 笑語 已に深更

          (下平声「八庚」の押韻)


 正月はゆっくり飲みます。

























[24] 参加者  (桐山堂半田) 健洲 



  元日        

門外星移残月明   門外星移りて残月明らかなり

寒窓入耳曙鶏聲   寒窓耳に入る曙鶏の聲

旧年処処天災遍   旧年処処天災遍し

今歳迎春念太平   今歳春を迎へ太平を念ふ

          (下平声「八庚」の押韻)


 元日朝早く起きて新聞を読みながら、昨年は大きな災害が多くの地域で起きた、
 今年は災害の少ない年であって欲しいとの気持ちで作ったもの。


























[25] 参加者  岳城 



  立春        

暖冬小徑入新晴   暖冬の小径 新晴に入る

先訪野梅吟屐輕   先ず訪ふ野梅 吟屐 軽し

花發横斜春二月   花は発く横斜 春二月

三三五五聴鶯声   三三五五 鶯声を聴く

          (下平声「八庚」の押韻)


    

























[26] 参加者  岳城 



  立春偶成        

狗兒遊歩早朝營   狗児の遊歩 早朝の営

暦日立春天欲明   暦日は立春 天 明けんと欲す

村野路旁霜如雪   村野の路旁 霜 雪の如し

四望靜淑一心平   四望 静淑 一心 平なり

          (下平声「八庚」の押韻)


    

























[27] 参加者  茜峰 



  新春山行即事        

寒風側面一山行   寒風を側面に 一(はじめて)の山行

緩歩老軀愉道程   緩歩の老躯 道程を愉しむ 

瀬戸眺望談笑友   瀬戸の眺望 友と談笑す

謝恩不撓保心情   謝恩し 不撓の心情を保たん

          (下平声「八庚」の押韻)


 今年の初山行は 六甲山でした。
 いつまで歩けるかわかりません。
 ゆっくり山行であってもくじけずに、今年も前向きに山行を楽しみたいと思います。    


























[28] 参加者  芦泉 



  初春誓        

箱根山谷早鶯聲   箱根山谷 早鶯の声

鳴響心滲詩思清   鳴響(めいきょう)心に滲みて 詩思清し

真似耽吟春尚淺   真似て眈吟するも 春尚浅し

初春堅誓一天晴   初春の堅き誓いに 一天晴れる

          (下平声「八庚」の押韻)


 箱根を訪れると、早、鶯が鳴いている
 その響きは心に滲み 清く美しい
 鶯の鳴き声を真似て吟ずるも (私にとって)春はまだ浅い
 庚子の年の新たな誓いが、爽やかな青空に届いて欲しい


























[29] 参加者  楊川 



  立春探梅        

近ク梅信促詩情   近郷の梅信 詩情を促し

習習融風歩午晴   習習 融風の午晴を歩む

馥郁幽香春尚淺   馥郁たる幽香 春尚浅く

閑吟頃刻暮寒生   閑吟頃刻 暮寒生ず

          (下平声「八庚」の押韻)


    

























[30] 参加者  凌雲 



  新年立春        

遙遙山岳遠   遙遙 山岳遠く、

近澤雪融清   近き沢 雪融けて清し。

正月年年賀   正月 年年の賀、

東風日日晴   東風 日日の晴れ。

春躊遲散杏   春は躊し 遅く散る杏、

冬暖早開櫻   冬は暖かく 早く開く桜。

令和麒麟夢   令和 麒麟の夢、

謹謳是太平   謹んで是の太平を謳はん。

          (下平声「八庚」の押韻)


    

























[31] 参加者  (桐山堂刈谷) 聖陽 



  庚子新年        

遼遠寺鐘歳月更   遼遠 寺鐘 歳月更む

寒窗煖酒一燈C   寒窓に酒を煖め 一灯清し

元朝風歇東方白   元朝 風歇み 東方白し

盎盎卿雲曉色明   盎盎たる卿雲 暁色明らか

          (下平声「八庚」の押韻)


 大晦日、一年を振り返る時間(昭和の子どもの頃を思い出して)
 新しい令和初のお正月を迎える朝の空気、日本人で良かった。


























[32] 参加者  (桐山堂刈谷) 聖陽 



  新年書懷        

令和無恙歳朝迎   令和 恙無く 歳朝迎ふ

瑞靄晨鷄曉一聲   瑞靄 晨鶏 暁に一声

肅肅曈曈初日上   肅肅 曈曈と初日上る

惠風満地久安平   恵風 地に満ち 久しく安平たり

          (下平声「八庚」の押韻)


  

























[33] 参加者  (桐山堂刈谷) A・K 



  新年 一        

夜來積雪一窗明   夜来 積雪 一窓の明かり

歳旦風和春草萌   歳旦 風和み 春草萌ゆ

破蕾梅花通淑氣   破蕾の梅花 淑気通る

正迎喜壽氣愈清   喜寿を正に迎へ 気愈よ清し

          (下平声「八庚」の押韻)


    

























[34] 参加者  (桐山堂刈谷) A・K 



  新年 二        

梅花蕾破動春情   梅花 蕾破れ 春情動く

送舊迎新看曉リ   旧を送り 新を迎へ 暁の晴を看る

有限人生好忘老   有限の人生 好し 老を忘れん

和顏喜壽暖風輕   顏を和ませ 寿を喜ぶ 暖風軽やか

          (下平声「八庚」の押韻)


    

























[35] 参加者  (桐山堂半田) 小圃 



  庚子初詣        

雨過元朝樹色明   雨過ぎ 元朝 樹色明るし

淙琤石瀬瑞風生   淙琤の石瀬 瑞風生ず

携兒参詣門前路   児を携へて 参詣 門前の路

歡語笑顏嘉泰平   歓語 笑顔 泰平を嘉す

          (下平声「八庚」の押韻)


 よちよち歩きの幼子と、令和最初の初詣に心穏やか。

























[36] 参加者  (桐山堂刈谷) Y・N 



  新年        

四海祥雲瑞氣生   四海 祥雲 瑞気生ず

迎春萬戸曉鐘聲   春を迎ふる万戸 暁鐘の声

令和元旦身多幸   令和 元旦 身は多幸

試筆朝陽心自平   試筆の朝陽 心自ら平らかなり

          (下平声「八庚」の押韻)


 令和の元号初の元旦を迎えて

























[37] 参加者  玄齋 



  立春即事(其一)        

立春幽徑暖風輕   立春の幽径 暖風 軽し

芳信來如雪未リ   芳信 来りて雪 未だ晴れざるが如し

梅發年年香脈脈   梅 発く年年 香 脈脈

枝闡f艷眾花C   枝間 素艶の衆花 清らかなり

          (下平声「八庚」の押韻)


立春を迎えて、梅の花を眺める場面を、七言絶句に詠みました。
これからも体調に気を付けて頑張っていきます。
新型肺炎(しんがたはいえん)には十分に気を付けようと思います。

 立春の小さな小道では、暖かい風が軽やかに感じられ、
 花の咲いた知らせがやって来て、雪が未だ晴れていないように感じられました。

 梅の花が開く毎年、香りが続いて絶えず、
 枝の間では、白い色の多くの花々が、清らかに咲いていました。    


























[38] 参加者  玄齋 



  立春即事(其二)        

郊園料峭立春迎   郊園 料峭の立春を迎へ

十里探梅吟骨輕   十里 梅を探りて吟骨 軽し

絶景空山雲漠漠   絶景の空山 雲 漠漠

濃香老幹玉晶晶   濃香の老幹 玉 晶晶

醉歌芳節荷衣冷   酔ひて芳節を歌へば荷衣 冷ややかに

閑看冰姿詩思C   閑かに氷姿を看れば詩思 清らかなり

隱逸一年花萬點   隠逸 一年 花 万点

東風到處句纔成   東風 到る処 句 纔かに入る

          (下平声「八庚」の押韻)


 この二首目は経験の浅い隠者が梅の花を眺めて何とか一句を作る、そんな光景を詠んでみました。
 隠者と梅の姿がきちんと描けていると良いなと思います。

町の外の田畑の中の林は、風の寒い立春を迎え、
十里の遠くに梅の花の名所を訪ねて、詩人の魂が軽くなったように感じられました。

非常に良い景色の人気(ひとけ)の無いひっそりした山には雲が果てしなく広がり、
濃厚な良い匂いの老いた梅の樹木の幹には、宝玉のようにきらきらと光る白い花が咲いていました。

酒に酔って、花の香る春の季節を、声に節を付けて歌うと、蓮の葉で作った隠者の服が冷ややかに感じられて、
静かに飾り気が無く上品な梅の姿を眺めると、詩を作りたいという思いが清らかになっていました。

世を避けて隠れる隠者の生活が一年続いて、梅の花が多く点々と咲いていて、
春風がやって来る所で、詩句がやっと完成していました。



 これからも体調に気を付けて頑張っていきます。
 この時期は新型肺炎に特に気を付けて過ごしていきます。
 新型肺炎で亡くなられた方々にはお悔やみを申し上げ、今も新型肺炎で苦しんでおられる方々にはお見舞いを申し上げます。

 新型肺炎が早期に終息するように願っています。


























[39] 参加者  道佳 



  立春        

凌寒梅信薆澄清   寒を凌ぐ梅信 薆(かお)るは澄清

無雪平章不面爭   雪なく 平章 面争せず

氣候変容明日患   気候の変容 明日の患ひ

女兒告發地球聲   女児の告発 地球の声

          (下平声「八庚」の押韻)


    

























[40] 参加者  觀水 



  立春閑詠        

立春風暖白雲輕   立春 風暖かにして 白雲軽し

好日豈言慵遠行   好日 豈に言はんや 遠行慵しと

出野草間尋蛺蝶   野に出でて 草間 蛺蝶を尋ね

回林枝上想鶬鶊   林を回りて 枝上 鶬鶊を想ふ

長嘯乘興興無限   長嘯 興に乗じて 興無限

緩歩案詩詩有情   緩歩 詩を案じて 詩に情有り

世事紛紛身碌碌   世事 紛紛として 身は碌碌たるも

十分可樂是吾生   十分 楽しむべし 是れ吾が生ならん

          (下平声「八庚」の押韻)


 立春の風あたたかく 雲かろやかに飛んでいく
 こんな好い日に出かけない なんてものぐさ言うわけない
 草のあいだに蝶々を さがしたりする野っぱらや
 枝のうえにはウグイスを 想いうかべるもりのなか
 長くうたえば興もわき 興のわくこと限りなく
 ゆっくり歩いて詩をつくり 詩のできばえもいいかんじ
 世の中いろいろあるわけで わが身もたいしたことないが
 じゅうぶん楽しみ見つけてる そんなこんなの生きかたさ


























[他韻-01] 参加者  觀水 



  元日偶成        

一歳新加四十三   一歳 新たに加へて四十三

百年天命尚堪貪   百年の天命 尚ほ貪るに堪へたり

世間多事暫忘却   世間 多事なれども 暫く忘却せん

今者合欣嘉宴酣   今者(いま) 合に欣ぶべし 嘉宴の酣なるを

          (下平声「十三覃」の押韻)


  新たに一年加わって ことしで数えで四十三
  おれは百まで生きるから この先まだまだ楽しめる
  面倒事もあるけれど しばらく忘れておこうかね
  今のところは正月を 祝い慶びそれでよし


























[他韻-02] 参加者  ニャース 



  新春        

新春懶過在家郷、   

慙愧家人作菜忙、   

華髪年年心願少、   

唯祈無恙拝朝陽。   

          (下平声「七陽」の押韻)


    

























[他韻-03] 参加者  黒浴@



  年賀        

門生六歳意軒昂   門生 六歳 意 軒昂

野叟清遊導吉慶   野叟の清遊に 吉慶を導かん

聲動梁塵吟士夢   声道梁塵 吟士の夢

詩歌百遍氣堂堂   詩歌 百遍 気 堂々

          (下平声「七陽」の押韻)


    

























[他韻-04] 参加者  黒浴@



  年賀(二)        

卿雲靉靆麗初陽   卿雲 靉靆 初陽麗し

和氣満庭梅雪香   和気 庭に満ち 梅雪香る

白髪老軀猶壯健   白髪の老躯 猶 壮健

悠悠自適禱壽康   悠々自適 壽康を祷る

          (下平声「七陽」の押韻)


    

























[他韻-05] 参加者  翠空 



  迎春        

令和庚子曙光W   令和庚子 曙光Wく

遥看東天皓鶴飛   遥かに看る東天 皓鶴飛ぶ

「子」字肯云一加了   「子」字 肯えて云ふ 一を了に加へたり

積年至願決開扉   積年の至願 扉を開かんと決す

          (上平声「五微」の押韻)


 今年こそは長年の大願を成就し前進するぞという決意を詩にして、頑張っていこうと思っています。    

























[他韻-06] 参加者  亥燧 



  歳晩即事        

媼為御節太匆匆   媼は御節を為り太だ匆匆たるも

翁作野詩猶夢中   翁は野詩を作ってなお夢の中

世路崢エ看世變   世路崢エ 世の変わるを看るも

草居風景古今同   草居の風景は古も今も同じ

          (上平声「一東」の押韻)


本年もどうぞよろしくお願いします。

 忙しい妻を尻目に本を読んだり詩を作ったり、たまに釣りに行ったり。
 世の中大変というのに年が改まっても同じ。
 相変わらずのぐうたら生活でお恥ずかしい。


























[他韻-07] 参加者  (芙蓉漢詩会) 柳村 



  元朝仰富士        

初旭冉冉萬境閑   初旭冉冉 万境閑かなり

玲瓏富嶽照塵寰   玲瓏たる富嶽 塵寰を照らす

乾坤一白神威儼   乾坤 一白 神威儼かなり

遠仰扶桑第一山   遠く仰ぐ 扶桑第一の山

          (上平声「十五刪」の押韻)


    

























[他韻-08] 参加者  (芙蓉漢詩会) M・M 



  山上臨富嶽        

駿灣眼下浪波靜   駿湾 眼下 浪波静まり

遠見山巒重畳嵎   遠く見る 山の巒(みね) 重畳嵎(かさ)なる

富嶽悠望穿碧落   富嶽 悠かに望み 碧落を穿つ

木花神祐普村徒   木花(このはな)天祐 村徒に普し

          (下平声「七陽」の押韻)


  

























[他韻-09] 参加者  地球人 



  新春        

歳朝会友把杯觴   歳朝 友と会し 杯觴を把る 

唱和推敲意気揚   唱和し 推敲  意気揚がる

馥郁庭梅春信早   馥郁たる庭梅  春信早し

詩成快飲喜迎祥   詩成りて 快飲 喜び祥を迎ふ

          (下平声「七陽」の押韻)


    

























[他韻-10] 参加者  岳城 



  庚子新年書感        

瑞氣旁旁歳此新   瑞気 旁旁(ほうほう) 歳 此に新まる

光風齊月一閑人   光風齊月 一閑人

妻兒歡笑身康健   妻児 歓笑 身 康健なり

無恙餘生詩酒親   恙無く余生 詩酒に親しまん

          (上平声「十一真」の押韻)


「風動」: 風が激しく吹く
「雄強」: 勇ましく強い
「毅魄」: 何ものにも屈しない強い気魄
    

























[他韻-11] 参加者  深溪 



  新年作        

自改明令和二年   自ら改る 明けて令和 二年

東風放馥一枝妍   東風 馥を放ち 一枝妍なり

九旬餘二心身健   九旬 二を餘し 心身健なり

筆硯題詩寫碧箋   筆硯 詩を題し 碧箋に寫さん

          (下平声「一先」の押韻)


    

























[他韻-12] 参加者  遙峰 



  庚子元旦        

雲闖遠彩窗邊   雲間の初日 窓辺を彩り

戴雪茶梅紅国N   雪を戴く茶梅 紅緑鮮やか

一幅一篇應有此   一幅一篇 応に此に有り

殊更擇墨翕州前   殊更 墨を択す 翕州の前

          (下平声「一先」の押韻)


「紅緑」: 紅花緑葉。
「一幅」: 書画の掛物の一つ。又、一つの景色。
「一篇」: 一つのまとまった詩や文章。
「翕州(きゅうじゅう)」: 「端渓」同様、産地名で呼ぶ、翕州産の硯です。

    

























[他韻-13] 参加者  風雷山人 



  拜年有作        

乾坤自改願年豐,   乾坤自ら改り 年豊を願ふ

世上全傢笑語同。   世上の全傢 笑語同じくづ

瑞氣洋洋風日靜,   瑞気洋洋 風日静か

春光萬里喜無窮。   春光 万里 喜び窮まり無し

          (上平声「一東」の押韻)


 最近は単体の漢詩よりも、叙事詩の中の挿入詩として、情景や登場人物を描くために作詩しています。

























[他韻-14] 参加者  鮟鱇 



  五絶・謹賀新年        

子年延壽處,   子年 寿を延ばせしところ,

椒酒滿金杯。   椒酒 金杯に満つ。

共願令和世,   共に願はん 令和の世,

天恩更炳輝。   天恩の更に炳輝せるを。

          (中華新韻五微平声の押韻)



























[他韻-15] 参加者  鮟鱇 



  五絶・庚子迎春謝天恩        

鼠鳴猪遯走,   鼠鳴けば猪は遯走し,

夢醒還延壽。   夢醒めればまた寿を延ばす。

夫婦謝天恩,   夫婦 天恩に謝し,

欣然啜椒酒。   欣然と啜る 椒酒を。

          (中華新韻七尤仄声の押韻)



























[他韻-16] 参加者  鮟鱇 



  七絶・庚子新春迎子女        

鼠鳴香夢醒新春,   鼠鳴いて香夢 新春に醒め,

延壽喜傾椒酒醇。   寿を延ばし喜び傾く 椒酒の醇なるを。

感謝天公翁嫗喜,   天公に感謝して翁嫗喜び,

歡迎兒女伴孫孫。   歓迎す 兒女(息子と娘)の孫らを伴ふるを。

          (中華新韻九文平声の押韻)



























[他韻-17] 参加者  鮟鱇 



  七絶・鼠年元旦黄泉醉        

鼠鳴聲大猪逃散,   鼠鳴いて声大きければ猪は逃散し,

夢醒樗翁傾祝盞。   夢醒めて樗翁 祝盞を傾く。

孫子未來夫婦歡,   孫と子の未だ来たらずを夫婦歓び,

黄泉元旦天圓滿。   黄泉の元旦 天は円満。

          (中華新韻八寒仄声の押韻)



























[他韻-18] 参加者  鮟鱇 



  七絶・庚子三元啜椒酒        

鼠鳴聲大猪逃走,   鼠鳴いて声大きければ猪は逃走し,

夢醒三元又延壽。   夢 三元に醒めてまた壽を延ばす。

感謝天公慈老翁,   天公の老翁を慈しむに感謝し,

欣然傾盞啜椒酒。   欣然と盞を傾け椒酒を啜る。

          (中華新韻七尤仄声の押韻)



























[他韻-19] 参加者  鮟鱇 



  七絶・三元試筆        

鼠目寸光勤取材,   鼠の目の寸光 取材に勤しみ,

晩年韻事在寒齋。   晩年の韻事 寒斎に在り。

三元試筆朝陽裡,   三元の試筆 朝陽の裡(なか),

喜暖初心寫所懷。   初心を暖むるを喜びて所懐を写す。

          (中華新韻四開平声の押韻)



























[他韻-20] 参加者  鮟鱇 



  七絶・庚子新年所懷        

莫笑老翁裁屎詩,   笑ふ莫れ 老翁 屎のごとき詩を裁き,

鼠肝虫臂亂修辭。   鼠肝虫臂の修辞を乱すを。

暮年不拘世評處,   暮年(晩年)世評に拘らざるところ,

禿筆當然潤酒卮。   禿筆 当然 酒卮に潤ふ。

          (中華新韻十三支平声の押韻)



























[他韻-21] 参加者  鮟鱇 



  五律・夫唱婦聽含笑妍        

鼠鳴猪遯走,   鼠鳴いて猪は遯走し,

夢醒叟延年。   夢醒めて叟は年を延ばす。

感謝天恩厚,   天恩の厚きに感謝し,

淺斟椒酒先。   椒酒の先ずるを浅く斟む。

旭光輝玉盞,   旭光 玉盞に輝いて,

詩興涌雲箋。   詩興 雲箋に涌く。

夫唱低聲處,   夫 低き声にて唱せるところ,

婦聽含笑妍。   婦(つま)は聴きて笑みを含んで妍なり。

          (中華新韻八寒平声の押韻)



























[他韻-22] 参加者  鮟鱇 



  七律・三朝夫婦醉閑聊        

鼠鳴香夢醒三朝,   鼠鳴いて香夢 三朝に醒め,

樗叟更延年壽高。   樗叟 更に延ばす 年寿の高きを。

感謝天公恕夫婦,   感謝す 天公の夫婦に恕たるを,

笑傾祝酒解疲勞。   笑みて傾く 祝酒の疲労を解くを。

醉來回憶浮生路,   酔ひ来って回憶す 浮生の路,

老去欣歡引口醪。   老い去って欣歓す 引口の醪(口に入りやすき酒)。

緩帶醺然與妻子,   帯を緩めて醺然と妻と,

離題隨意樂閑聊。   題を離るること隨意に閑聊(閑談)を楽しむ。

          (中華新韻十三支平声の押韻)



























[他韻-23] 参加者  鮟鱇 



  醉公子・鼠年試筆題東壁        

鼠鳴香夢醒,   鼠鳴いて香夢醒め,

延壽三元靜。   寿を延ばして三元静かなり。

椒酒滿金杯,   椒酒 金杯に満ち,

老妻伸黛眉。   老妻 黛眉を伸ばす。

  〇           〇   

醉試揮禿筆,   酔って試しに禿筆を揮ひ,

空想題東壁。   空想 東壁(壁宿)を題とす。

但願世安寧,   但(ただ)に世の安寧を願へば,

修辭含美聲。   修辞 美声を含む。

 (中華新韻十一庚仄声、五微平声、十二斉仄声、十一庚平声の押韻)



























[他韻-24] 参加者  鮟鱇 



  霜天曉角・三元夫婦交紅友        

鼠鳴猪遁走,     鼠鳴いて猪は遁走し,

歳朝人益壽。     歳朝 人は寿を益す。

感謝上天恩惠,    上天の恩恵に感謝し,

傾金盞、啜椒酒。   金盞を傾け、椒酒を啜る。

   〇            〇   

偕老共白首,     偕(とも)に老いて共に白首,

夫婦交紅友。     夫婦 紅友(酒)と交はる。

美醉朦朧花眼,    美酔し朦朧たる花眼(老眼)に,

仙娥笑、是佳偶。   仙娥の笑ふあり、是れ佳き偶(つれあい)なり。

          (中華新韻七尤仄声の押韻)



























[他韻-25] 参加者  鮟鱇 



  東坡引・鼠年元旦吟詩        

鼠鳴猪遁走,     鼠鳴いて猪は遁走し,

元旦人延壽。     元旦に人は寿を延ばす。

夫妻感謝天恩厚,   夫妻 天恩の厚きに感謝し,

欣然傾美酒。     欣然と美酒を傾く。

   〇            〇   

屠蘇更促,      屠蘇 更に促す,

清濁可口,      清濁の口に可なるを,

乘佳興、佯詩叟。   佳興に乘り、詩叟の佯(ふり)をせるを。

尋章覓句題紅友,   章を尋ね句を覓(もと)むるに紅友を題とし,

吟詩成對偶,     詩を吟ずるに対偶を成す。

          (中華新韻七尤仄声の押韻)



























[他韻-26] 参加者  鮟鱇 



  雙頭蓮令・三元翁嫗喜遊仙        

鼠鳴香夢醒三元,   鼠鳴いて香夢 三元に醒め,

老叟壽還延。     老叟の寿 また延ぶ。

荊妻勸酒洗胸肝,   荊妻の勧めし酒 胸肝を洗ひ,

緩帶醉醺然。     帯を緩めて酔いて醺然。

   〇            〇   

自乘雅興仰晴天,   自ずから雅興に乘り晴天を仰ぎ,

携手喜遊仙。     手を携へて仙に遊ぶを喜ぶ。

紅唇媚笑撫琴弦,   紅唇 媚笑して琴弦を撫で,

尋章覓句題紅友,   章を尋ね句を覓(もと)むるに紅友を題とし,

白首舞詩箋。     白首 詩箋に舞ふ。

          (中華新韻八寒平声の押韻)



























[他韻-27] 参加者  鮟鱇 



  月宮春・新春迎子孫        

鼠鳴香夢醒新春,   鼠鳴いて香夢 新春に醒め,

延年樗叟欣。     年を延ばして樗叟欣ぶ。

朝傾椒酒自醺醺,   朝に椒酒を傾ければ自ずから醺醺,

午餐迎子孫。     午餐 子と孫を迎ふ。

   〇            〇   

女婿酒豪狂飲醉,   女(むすめ)の婿は酒豪にして狂飲して酔ひ,

兒媳賢媛笑容温。   兒(むすこ)の媳(よめ)は賢媛にして笑容温(おだやか)なり。

各有千秋恰好,    各(おのおの)に千秋ありて恰も好し,

老妻慈幼裙。     老妻は幼裙を慈しむ。

          (中華新韻九文平声の押韻)



























[他韻-28] 参加者  鮟鱇 



  陽臺夢・迎春在黄泉        

鼠鳴將破詩翁夢,   鼠鳴いて將に破らんとせる詩翁の夢,

更延年壽三元醒。   更に年寿を延ばして三元に醒む。

老軀無恙謝天公,   老躯 恙なければ天公に謝し,

仰蒼穹靜靜。     仰ぐ 蒼穹の静静たるを。

   〇            〇   

欣傾夫婦酒,     欣び傾けたる夫婦の酒,

恭賀新禧酩酊。    恭賀新禧 酩酊す。

未曾期待子孫來,   未だ曾(かつて)期待せず 子孫の来たるを,

共在黄泉境。     共に黄泉の境に在れば。

          (中華新韻十一庚仄声の押韻)



























[他韻-29] 参加者  鮟鱇 



  玉漏遲・三元待盛春        

鼠鳴香夢醒,      鼠鳴いて香夢醒め,

朝陽入眼,       朝陽 眼に入り,

贅翁延命。       贅翁 命を延ばす。

感謝天公,       天公に感謝す,

夫婦兩人無病。     夫婦 両人に病の無きを。

悦目荊妻卻老,     目を悦ばせて荊妻 老いを却(しりぞ)け,

點輕妝、笑傾清聖。   軽妝を点じ、笑みて清聖(清酒)を傾く。

香味好,        香味好く,

洗滌腸肚,       腸肚を洗滌し,

促乘詩興。       詩興に乗るを促す。

   〇             〇   

憶起舊歳行遊,     憶(おも)い起すは旧歳の行遊,

喜共賞櫻雲,      喜びて共に賞(め)でたる桜雲,

繞湖酣涌。       湖を繞りて酣(さかん)に涌けり。

艷雪飄零,       艶雪 飄零し,

泛水鱗鱗輝映。     水に泛んで鱗鱗と輝き映ぜり。

黄鳥碧天巧囀,     黄鳥 碧天に巧みに囀り,

正堪和、高聲吟詠。   正に和して、高き声にて吟詠するに堪へり。

裁小令,        小令を裁き,

三元待春佳境。     三元に待つ 春の佳境を。

          (中華新韻十一庚仄声の押韻)



























[他韻-30] 参加者  鮟鱇 



  瑞鶴仙・三元念春遊        

鼠鳴猪遯散,      鼠鳴いて猪は遯げて散り,

香夢醒,        香夢醒め,

老骨延年開眼。     老骨 年を延ばして開眼す。

東窗旭光閃,      東の窓に旭光閃き,

謝天公,        天公に謝す,

寛恕樗材舒慢。     樗材の舒慢せるに寛恕たるを。

山妻笑勸,       山妻 笑みて勧む,

啜屠蘇、充盈玉盞。   屠蘇の玉盞に充ち盈つるを啜れ と。

賀新年靜謐,      新年の静謐たるを賀し,

歡談計劃,       歓談して計画す,

旅遊清晏。       旅遊の清晏なるを。

   〇             〇   

舊歳尋春嘆賞,     旧歳 春を尋ねて嘆賞せり,

櫻雲盛涌,       桜雲の盛んに涌いて,

繞圍湖畔。       湖畔を繞り囲むを。

風花爛漫,       風にとぶ花 爛漫として,

浮碧水,        碧水に浮き,

若銀漢。        銀漢のごとし。

望佳光,        佳光を望み,

求句寓情於景,     句を求めて情を景に寓(よ)せ,

吟競黄鶯巧囀。     吟じ競へり 黄鶯の巧みに囀ると。

喜馳思短算,      思ひを馳せて短算すれば,

詩魂已張彩翰。     詩魂はすでに彩翰を張る。

          (中華新韻八寒仄声の押韻)



























[他韻-31] 参加者  鮟鱇 



  高山流水・三元子孫來        

鼠鳴好夢醒三元,    鼠鳴いて好夢 三元に醒め,

有樗翁、無恙延年。   樗翁ありて、恙なく年を延ばせり。

花眼仰蒼穹,      花眼(老眼)蒼穹を仰ぎ,

欣欣感謝神天。     欣欣として神天に感謝す。

傾椒酒、美醉醺然,   椒酒を傾けて、美酔して醺然と,

褒妻子,        妻を褒む,

妝點芳姿艷麗,     妝点せる芳姿の艷麗にして,

卻老嬌妍。       老いを却(しりぞ)けて嬌妍なり と。

正徐娘淺哂,      正に徐娘 浅く哂(え)みて,

勸我盞圓圓。      我に勧む 盞の円円たるを。

   〇             〇   

怡歡,         怡び歓ぶ,

男孫笑來到,      男孫の笑って来たり到るに,

如率領、父母開顏。   父母の開顔せるを率領(したが)ふる如きを。

高擧祝杯餘,      高く祝杯を挙げてののち,

爭吃眼底佳餐,     争い吃(く)ふ 眼底(眼の前)の佳餐。

有一家、簇聚團欒。   一家の簇聚(つど)いて団欒せるあり。

兒媳婦,        兒(むすこ)の媳婦(よめ),

謙遜高深趣味,     高深なる趣味を謙遜せるも,

小聳吟肩。       小さく吟肩を聳やかす。

擬唐絶句,       唐に擬へたる絶句,

伴清韻,        清韻を伴ひ,

喚春暄。        春暄を喚ぶ。

          (中華新韻八寒平声の押韻)

     徐娘:年を取るもなお風韻を保っている女性。