第6回 桐山堂詩會(2019年12月15日)





作品番号  題 名 作 者   詩 形
   
06-01 冬日所感 ニャース  五言絶句 
06-02 冬日懷札幌雪節 東 山  七言絶句 
06-03 冬日偶成 緑 風  七言絶句 
06-04 冬日偶成 遥 峰  七言絶句 
06-05 冬日 深 渓  七言絶句 
06-06 冬日 観 水  七言律詩 
06-07 冬日焚火 常 春  七言絶句 
06-08 冬日採果 常 春  七言絶句 
06-09 冬日偶成 瓊 泉  七言絶句 
06-10 冬日 道 佳  七言絶句 
06-11 冬日寒宵 岳 峰  七言絶句 
06-12 歳晩詩興 岳 峰  七言絶句 
06-13 冬日新晴 鮟 鱇  五言絶句 
06-14 冬日徘徊 鮟 鱇  七言絶句 
06-15 冬日遇花魁 鮟 鱇  五言律詩 
06-16 冬夜玩明月 鮟 鱇  七言律詩 
06-17 冬日述懐 一 (桐山堂半田) 靖 芳  七言絶句 
06-18 冬日述懐 二 (桐山堂半田) 靖 芳  七言絶句 
06-19 冬日獲蟹 (桐山堂半田) 輪中人  七言絶句 
06-20 冬日(別歳) (桐山堂半田) 睟 洲  七言絶句 
06-21 冬日 (桐山堂半田) 眞 海  七言絶句 
06-22 冬日 (桐山堂半田) I・F  七言絶句 
06-23 冬日 (桐山堂半田) 昇 洲  七言絶句 
06-24 冬日 (桐山堂半田) F・K  七言絶句 
06-25 冬日 二 (桐山堂半田) F・K  七言絶句 
06-26 冬日即事 (桐山堂半田) 醉 竹  七言絶句 
06-27 冬日出遊(訪高尾山神護寺) (桐山堂半田) 醉 竹  七言絶句 
06-28 冬日感懐 (桐山堂半田) 健 洲  七言絶句 
06-29 冬曉 (桐山堂刈谷) T・K  七言絶句 
06-30 佐久西港冬晨 (桐山堂刈谷) 老 遊  七言絶句 
06-31 冬日 (桐山堂刈谷) 松 閣  七言絶句 
06-32 冬日 (桐山堂刈谷) 汀 華  七言絶句 
06-33 冬日出遊 (桐山堂刈谷) 游 山  七言絶句 
06-34 冬日 (桐山堂刈谷) A・K  七言絶句 
06-35 冬日 (桐山堂刈谷) 美 豊  七言絶句 
06-36 冬日水霧 陳 興  七言絶句 
06-37 戯與兒桃源遊 (芙蓉漢詩会) 石 甫  七言絶句 
06-38 山寺觀楓 (芙蓉漢詩会) 柳 村  七言絶句 
06-39 冬日偶成 (芙蓉漢詩会)柳 村  七言絶句 
06-40 冬日遭異客 (芙蓉漢詩会) K・K  七言絶句 
06-41 吟行会 (桐山堂名古屋) K・N  七言絶句 
06-42 冬夜登高樓 (桐山堂名古屋) Y・T  七言絶句 
06-43 冬日雪景 (桐山堂名古屋) Y・K  七言絶句 
06-44 冬日 (桐山堂名古屋) S・N  七言絶句 
06-45 冬日 桐山人  七言絶句 
06-46 日無事 恕 水  七言絶句 
06-47 冬日吟行 岳 城  七言絶句 




































[01] 参加者  ニャース 


  冬日所感        

城裏渡霜風、   城裏 霜風 渡れば、

路辺樹葉紅、   路辺の樹葉は紅、

年年如此過、   年年 かくのごとく過ぎ、

不覚已成翁。   覚えず すでに翁となる。

          (上平声「一東」の押韻)


 






















[02] 参加者  東山 


  冬日懷札幌雪節        

七歳留連札幌空   七歳の留連 札幌の空

厳冬滿客大逵通   厳冬満客 大逵通る

鬼工滑梯雪雕像   鬼工 滑梯雪雕像

囘想嬉嬉戲小童   回想す嬉々として 小童と戯るを

          (上平声「一東」の押韻)


 






















[03] 参加者  緑風 


  冬日偶成        

小春決意裏山陟   小春 意を決し 裏山に陟(のぼ)る

凍雀争枝飛散中   凍雀 枝を争ひ 飛散の中

古寺鐘聲幽寂韻   古寺の鐘声 幽寂の韻

雲間残照淡玲瓏   雲間の残照 淡き玲瓏

          (上平声「一東」の押韻)


 






















[04] 参加者  遥峰 


  冬日偶成        

孤峯寂歴浮霜月   孤峯 寂歴 霜月に浮かび

村巷C玄蟄露風   村巷 清玄 露風に蟄る

忽聽半天雷一吼   忽ち聴く 半天 雷一吼

越州還在雪聲中   越州 還た在り 雪声の中

          (上平声「一東」の押韻)


「寂歴」: ものさびしいさま。
「清玄」: 清く静かなこと。
「蟄」: 閉じこもる。
「雷」: 雪起こしと呼ぶ雷、日本海側で雪を伴って発生します。

 






















[05] 参加者  深渓 


  冬日        

小春短景夕陽舂   小春 短景 夕陽舂く

静坐蕭条日没鐘   静坐 蕭条 日没の鐘

深大古坊先拝佛   深大 古坊 先ず佛に拝す

老躯火閤入初冬   老躯 火閤 初冬に入る

          (上平声「二冬」の押韻)


「小春」: 小春日和。
「短景」: 短い日。
「夕陽舂」: 日が沈むこと。
「蕭条」: 寂しい。
「深大古坊」: 調布深大寺。
「老躯」: 老いの身。
「火閤」: 炬燵。  






















[06] 参加者  観水 


  冬日        

平明不用更重衾   平明 用いず 更に衾を重ぬるを

萬事相宜自適心   万事 相宜しく自ら心に適ふ

訪室朝光何睡臥   室を訪ふ朝光 何ぞ睡臥せん

映窓冬色好行吟   窓に映ず冬色 行吟に好し

一枝銀白新霜薄   一枝の銀白 新霜薄く

四野紅黄落葉深   四野の紅黄 落葉深し

時戲北風晴日下   時に北風に戯る晴日の下

閑雲出處咏詩尋   閑雲 出づる処 詩を咏じて尋ねん

          (下平声「十二侵」の押韻)


 どうやらけさは掛布団 追加しなくて良さそうだ
 万事よろしくいい感じ 我が意を得たりというところ
 部屋に差し込む朝日影 寝坊している場合じゃない
 窓の外には冬景色 さっそく出かけて行ってこよう
 ひと枝よくよく見てみれば 真新しい霜うっすらと
 四方をぐるりとながめれば 落ち葉たっぷり赤黄色
 天気も晴れてることだから 北風小僧と戯れて
 のどかに雲の湧くところ 尋ねてみよう詩を詠んで























[07] 参加者  常春 


  冬日焚火        

落葉枯枝庭偶重   落葉枯枝 庭隅に重なる

體操終了適無風   体操終了 適に無風

身軽余裕即焼却   身軽く余裕 即ちに焼却

忽上焚煙馥氣充   忽ち上る焚煙馥気光つ

          (上平声「一東」の押韻)


 






















[08] 参加者  常春 


  冬日採果        

克黄斑香氣融   緑樹に黄斑 香気融

採収果實自伸躬   果実採収すれば自ずから躬伸び

疲勞輕度喫茶娯   軽度の疲労 喫茶娯しむ

浮柚浴湯心地豐   柚を浮かす浴湯 心地豊か

          (上平声「一東」の押韻)


 






















[09] 参加者  瓊泉 


  冬日偶成        

冷雲似雪痩山容   冷雲 雪に似て 山容痩す

盡日杜門身更慵   盡日 門を杜ざして 身更に慵し

坐愛爐邊田舎趣   坐ろに愛す 爐邊 田舎の趣

灰中芋栗茗香濃   灰中には芋栗 茗香は濃やかなり

          (上平声「二冬」の押韻)

























[10] 参加者  道佳 


  冬日        

雪中紅葉大川寒   雪中紅葉大川寒し

霏散揺揺流美観   霏散揺揺流れる美観

不久来春桃色満   久しからずして春来たり桃色満さん

温温遊覧客船闌   温温 遊覧 客船闌はに

          (上平声「十四寒」の押韻)


「大川」: 天神祭が真夏に施行される河川
























[11] 参加者  岳峰 


  冬日寒宵        

霏霏寒雨夜方深   霏霏たる寒雨 夜まさに深し

感遇浮生不可尋   感遇の浮生 尋ぬべからず

物我相忘塵外境   物我相忘る 塵外の境

歳云暮矣坐澄心   歳云(ここ)に暮れたり 坐ろに心を澄ます

          (下平声「十二侵」の押韻)

























[12] 参加者  岳峰 


  歳晩詩興        

光陰如矢句成遅   光陰矢の如きなるも 句成ること遅し

何料詩情賦所思   何ぞ詩情を料らんや 思ふところをす

我亦怱忙余一日   我亦怱忙にして 一日を余すのみ

炎威朔雪歳云移   炎威朔雪 歳ここに移る

          (上平声「四支」の押韻)

























[13] 参加者  鮟鱇 


  冬日新晴        

冬日臨茅舎,   冬日 茅舎に臨み,

檐氷輝碧空。   檐氷 碧空に輝く。

庭梅雪如蕾,   庭梅に雪 蕾の如く,

瘦叟待春風。   痩叟 春風を待つ。

          (上平声「一東」の押韻)

























[14] 参加者  鮟鱇 


  冬日徘徊        

冬日徘徊避朔風,   冬日の徘徊 朔風を避け,

尋梅覓句硯池東。   梅を尋ね句を覓(もと)む 硯池の東に。

横枝綴玉如巾舞,   横枝 玉を綴りて巾舞せる如く,

款待蒼顏詩想中。   款待す 蒼顏の詩想の中なるを。

          (上平声一東)

  瑶舟:酒杯の意あり。

























[15] 参加者  鮟鱇 


  冬日遇花魁        

冬日傾杯好,   冬の日は杯を傾くるが好く,

酒温腸肚空。   酒は腸肚の空なるを温む。

試揮螺子筆,   試みに揮ふ 螺子の筆(墨筆),

吟歩硯池東。   吟じ歩む 硯池の東。

臨水花魁笑,   水に臨んで花魁笑まば,

流香詩想充。   香流れて詩想に充つ。

欣喜春來早,   春の來たること早きを欣喜し,

蒼顏醉臉紅。   蒼顏の醉臉紅し。

          (上平声一東)

  各有千秋:人それぞれに長所・特色があること。
  晩恋:老いらくの恋。蝉は生涯の最後に恋をする。
  瑶舟:酒杯の意あり。
























[16] 参加者  鮟鱇 


  冬夜玩明月        

薄雲恰似氷肌凍,   薄き雲 恰も氷肌の凍れるに似て,

月是天臍輝紫穹。   月は是れ天の臍にして紫穹に輝く。

桂闕寒閨眠寡婦,   桂闕の寒閨に眠る寡婦,

城隈蝸舎醉鰥翁。   城隈の蝸舎に醉へる鰥翁。

馳思欲跨靈犀走,   思ひを馳せて靈犀の走るに跨んとし,

張翼將求晩戀充。   翼を張りて將に晩戀の充つるを求めんとす。

有意詩毫潤殘酒,   意有りて詩毫 殘酒に潤ひ,

情書堪寫寄溟鴻。   情書 寫して溟鴻に寄するに堪ふ。

          (上平声「一東」の押韻)

























[17] 参加者  (桐山堂半田) 靖芳 


  冬日述懐 一        

多年志業愧無功   多年の志業 功無くを愧づ

白髪蒼顔一老翁   白髪 蒼顔 一老翁

冬日窗前紅葉散   冬日 窗前 紅葉散ず

人生晩節意融融   人生 晩節 意融融

          (上平声「一東」の押韻)

























[18] 参加者  (桐山堂半田) 靖芳 


  冬日述懐 二        

初冬落葉去年同   初冬の落葉 去年に同じ

殘菊疎籬一徑通   残菊 疎籬 一径通じ

歳月推移懐往事   歳月は推移し 往事を懐ふ

平生靜坐白頭翁   平生 静かに坐す 白頭の翁

          (上平声「一東」の押韻)

























[19] 参加者  (桐山堂半田) 輪中人 


  冬日獲蟹        

蕭然小至古江東   蕭然 小至 古江の東

早曉舟行淡淡風   早暁 舟行 淡淡の風

寒淺正迎冬蟹季   寒浅く正に迎ふ 冬蟹の季

大漁三昧白頭翁   大漁三昧の白頭翁

          (上平声「一東」の押韻)

























[20] 参加者  (桐山堂半田) 睟洲 


  冬日(別歳)        

月白星稀冽冽風   月白く 星稀に 冽冽たる風

待春別歳草盧中   春を待ち 別歳 草盧の中

詩朋來訪楽吟唱   詩朋 来訪し 吟唱を楽しむ

長夜歡談宴未終   長夜の歓談 宴未だ終らず

          (上平声「一東」の押韻)

























[21] 参加者  (桐山堂半田) 眞海 


  冬日        

寒雲凛烈重冬空   寒雲 凛烈 冬空に重く

茅屋繙書爐火紅   茅屋 書を繙き 爐火紅なり

三更已過横窗月   三更 已に過ぎ 窓に横たふ月

冷氣稜稜繞谷風   冷気 稜稜 風は谷を繞る

          (上平声「一東」の押韻)


 初冬の夜長を読書を楽しみ、ストーブの側で詩書を繙く様を詠みました。






















[22] 参加者  (桐山堂半田) I・F 


  冬日        

散策林園鳥語工   散策す 林園 鳥語工なり

小春午下對霜楓   小春の午下 霜楓に対す

橙黄落葉堆客屐   橙黄の落葉 客屐に堆し

案句清閑一樹風   句を案じ 清閑 一樹の風

          (上平声「一東」の押韻)


 近くの広い公園を散歩しました。
 鳥がしきりに鳴き、赤く色づいた紅葉がきれいでした。
 落葉した木々は初冬の気配。
 小春日の中、句作をしました。























[23] 参加者  (桐山堂半田) 昇洲 


  冬日        

霜風黒部満山紅   霜風の黒部 満山紅し

峻嶺登攀白髪翁   峻嶺 登攀 白髪の翁

歳月遷移催萬感   歳月 遷移す 万感を催す

雄姿自若古来同   雄姿 自若 古来同じ

          (上平声「一東」の押韻)

























[24] 参加者  (桐山堂半田) F・K 


  冬日        

新寒林徑早霜風   新寒 林径 早霜の風

晩菊白黄斜照中   晩菊 白黄 斜照の中

茅室開爐迎雅友   茅室 炉を開き 雅友を迎ふ

茶香一服樂無窮   茶香 一服 楽しみ窮まり無し

          (上平声「一東」の押韻)

























[25] 参加者  (桐山堂半田) F・K 


  冬日 二        

疎枝葉盡故園中   疎枝 葉尽き 故園の中

一夕寒行誰共同   一夕寒行 誰と共に同じうせん

煖酒林間看微月   酒を煖めて 林間 微月を看る

行雲流水聽仁風   行雲流水 仁風を聴く

          (上平声「一東」の押韻)

























[26] 参加者  (桐山堂半田) 醉竹 


  冬日即事        

秋花凋落詠天風   秋花凋落 天風詠ず

小院冬来寒気充   小院 冬来 寒気充つ

金盞銀臺香馥郁   金盞銀臺 香は馥郁

山梅招鳥放炎紅   山梅 鳥を招いて 炎紅を放つ

          (上平声「一東」の押韻)


厳冬期の我が家の、ちいさな庭の實景を詠んで見ました。






















[27] 参加者  (桐山堂半田) 醉竹 


  冬日出遊(訪高尾山神護寺)        

季冬佳日訪高雄   季冬の佳日 高雄を訪ぬ

古刹石階堆落紅   古刹の石階 落紅堆し

秘佛拝觀神護寺   秘仏拝観 神護の寺

荘嚴寶塔聳天空   荘厳宝塔 天空に聳える

          (上平声「一東」の押韻)


 紅葉の名所京都高尾山に12月1日に行って来ました。
 已に紅葉はほとんど落ち尽くしていましたが、目当ては神護寺の『五大虚空蔵菩薩』の特別拝観でした。























[28] 参加者  (桐山堂半田) 健洲 


  冬日感懐        

細雨蕭蕭舞北風   細雨蕭蕭として 北風に舞ふ

他ク就業苦寒窮   他郷 業に就き 苦寒窮む

家書再三問歸日   家書再三 帰日を問ふ

獨把壺觴寂室中   独り壺觴を把る 寂室の中

          (上平声「一東」の押韻)

























[29] 参加者  (桐山堂刈谷) T・K 


  冬曉        

凛烈寒威呼朔風   凛烈の寒威 朔風を呼ぶ

窓前飛霰一望空   窓前 飛ぶ霰 一望空し

庭荒葉落氣將雪   庭荒れ 落ちて 気将に雪らんとす

冬日開爐白屋中   冬日 炉を開いて白屋の中

          (上平声「一東」の押韻)

























[30] 参加者  (桐山堂刈谷) 老遊 


  佐久西港冬晨        

霧籠舫艇湊江東   霧は舫艇に籠む 湊江の東

一夜乾坤寒氣中   一夜乾坤 寒気の中

宿鳥鳴聲早晨客   宿鳥 鳴声 早晨の客

漁家烏壁白霜篷   漁家 烏壁 白霜の篷

          (上平声「一東」の押韻)


 「佐久」: 愛知県三河湾の佐久島
 「舫艇」: もやい舟(停泊で繋がれた舟)
 「篷」: 家屋のおおい、竹などで覆った粗末な小舟























[31] 参加者  (桐山堂刈谷) 松閣 


  冬日        

添炭紅爐白屋中   炭を添へ 紅炉 白屋の中

一杯方覺暖回雄   一杯 方に覚ゆ 暖回りて雄なり

窗前暗照半輪月   窓前 暗照 半輪の月

半醉醒來句忽工   半酔 醒め来たりて 句忽ち工なり

          (上平声「一東」の押韻)

























[32] 参加者  (桐山堂刈谷) 汀華 


  冬日        

山村寒景雪花風   山村 寒景 雪花の風

草屋蕭条小窓凍   草屋 蕭条 小窓凍る

呵硯臨池磨古墨   硯を呵し 臨池 古墨を磨る

安閑終日樂無窮   安閑 終日 楽しみ窮まり無し

          (上平声「一東」の押韻)

























[33] 参加者  (桐山堂刈谷) 游山 


  冬日出遊        

九華城址大江東   九華 城址 大江の東

鎭國祠邊橋似虹   鎮国祠辺 橋は虹に似たり

探賾詩碑丘隴裏   詩碑を探賾す 丘隴の裏

戊辰役詠白頭翁   戊辰の役詠ず 白頭の翁

          (上平声「一東」の押韻)

























[34] 参加者  (桐山堂刈谷) A・K 


  冬日        

西風吹老凍雲空   西風吹き老いる 凍雲の空

庭上霜新見落楓   庭上 霜新たに 楓が落つるを見る

昨夜凝寒冬已早   昨夜 凝寒 冬已に到る

忽看窗外雪花中   忽ち看る 窓外 雪花の中

          (上平声「一東」の押韻)

























[35] 参加者  (桐山堂刈谷) 美豊 


  冬日        

橘陽短景颯山風   橘陽 短景 山風颯たり

停足寒原對錦楓   足を停め寒原にて錦楓に対す

幽賞猩紅忘日暮   幽賞 猩紅 日暮を忘る

到家針線亦愉窮   家に到らば 針線 亦た愉しみ窮まらん

          (上平声「一東」の押韻)

























[36] 参加者  陳興 


  冬日水霧        

水霧漫窗欲寫詩   

醒來覺夢復堪疑   

入冬東北不知冷   

暖氣遠看雲起時   

          (上平声「四支」の押韻)

























[37] 参加者  (芙蓉漢詩会) 石甫 


  戯與兒桃源遊        

孫童招老稿囲中   孫童 老を招く 稿囲(こうい)の中

倣母和親弁舌窮   母に倣ひ 和親 弁舌窮す

促食泥材歓笑応   促食 泥材 歓笑して応ふ

桃源至福夕陽翁   桃源 至福 夕陽の翁

          (上平声「一東」の押韻)


「稿囲」: 藁で柵を編み、野菜くずや堆肥になるものを入れていた。

 子供のままごとに誘われ、楽しむ老人。
 泥の団子も楽しく戴く。いつしか老人は心から桃源郷の世界にいるようだ。
 寒い冬でも心も温かくなり、夕日はおりしも楽しそうな老人を照らしている。























[38] 参加者  (芙蓉漢詩会) 柳村 


  山寺觀楓        

石磴攀來古梵宮   石磴 攀じ来る 古梵宮

嗒焉停杖立霜風   嗒焉 杖を停めて 霜風に立つ

閑庭落葉無人掃   閑庭の落葉 人の掃く無し

四顧如燃萬樹楓   四顧すれば燃ゆるが如き 万樹の楓

          (上平声「一東」の押韻)

























[39] 参加者  (芙蓉漢詩会) 柳村 


  冬日偶成        

小春富嶽玉玲瓏   小春の富岳 玉玲瓏

丹柿黄橙數葉楓   丹柿 黄橙 数葉の楓

信歩西郊吟袖爽   歩に信せ 西郊 吟袖爽やかなり

山茶花徑訪仙翁   山茶花の径 仙翁を訪ふ

          (上平声「一東」の押韻)

























[40] 参加者  (芙蓉漢詩会) K・K 


  冬日遭異客        

北遠山群雨霧中   北遠の山群 雨霧の中

奇岩曲路遍紅楓   奇岩の曲路 紅楓遍し

幽湖歩畔遭孤客   幽湖畔を歩めば 孤客に遭ふ

佇立端然碧眼翁   端然佇立するは 碧眼の翁

          (上平声「一東」の押韻)


 森町から春野町の初冬の山々を走った。
 寒々とした霧と雨の曲がりくねった道は、それでも紅葉が鮮やかで、岩や石の周りを覆っている。
 山上に不思議な湖がひっそりと姿を現したが、地元の人でさえ滅多に行かない場所だ。
 そこにたった一人見慣れぬ人が雨宿りしていた。
 聞けばドイツから来たという。
 「何でまたこんな辺鄙なところを!」「SNSで探して歩いてきた」
 ただそれだけだが、忘れがたい出会いだった。























[41] 参加者  (桐山堂名古屋) K・N 


  吟行会        

窗外飛鳶舞朔風   窓外 飛鳶 朔風に舞ふ

鳳來峰嶂餞秋紅   鳳来峰嶂 秋を餞して紅なり

吟朋賽到龍潭寺   吟朋 賽し到る龍潭寺

青史禪庭幽趣中   青史 禅庭 幽趣の中

          (上平声「一東」の押韻)


 晩秋から冬へと山々は秋の終わりを告げる紅葉
 大空には北風に鳶飛が楽しそうに舞っている。
 そして、直虎の菩提寺へ。























[42] 参加者  (桐山堂名古屋) Y・T 


  冬夜登高樓        

冷氣北來凍夜空   冷気北来し 夜空凍える

無雲繊月獨天中   雲無く 繊月 獨り 天中

高樓眼下光芒集   高樓眼下 光芒の集まり

一R一営人世充   一R 一営 人世充つ

          (上平声「一東」の押韻)

























[43] 参加者  (桐山堂名古屋) Y・K 


  冬日雪景        

携杖遊行邑里中   杖を携へて遊行す 邑里の中

暮天雲滿雪花風   暮天雲満ち 雪花の風

夜明日出驚相見   夜明け日出でて 驚き相見る

絶景皚皚迫老翁   絶景皚皚 老翁に迫る

          (上平声「一東」の押韻)

























[44] 参加者  (桐山堂名古屋) S・N 


  冬日        

遙岑四野玉玲瓏   遥岑 四野 玉玲瓏

竹橇小兒群舞風   竹橇の小児 群れて風に舞ふ

寂寞山園餘一日   寂寞たる山園 一日を餘し

琴書伴侶待春融   琴書 伴侶 春融を待つ

          (上平声「一東」の押韻)

























[45] 参加者  桐山人 


  冬日        

寒林踏入曉霜充   寒林 踏み入れば 暁霜充ち

細徑石苔堆葉中   細苔 石苔 堆葉の中

一鳥哀鳴人語絶   一鳥 哀鳴し 人語は絶え

茶梅花發滿枝紅   茶梅花発きて 満枝紅し

          (上平声「一東」の押韻)

























[46] 参加者  恕水 


  日無事        

柴門短日帯繁霜   柴門 短日 繁霜を帯ぶ

稲獲山鐘野趣長   稲獲 山鐘 野趣長く

父老農談鶏犬静   父老 農談し 鶏犬静かなり

童穉遶屋列金香   童稚 屋を遶り 列金の香

          (下平声「七陽」の押韻)


 日が短くなり、粗末な家にも霜が降りるようになった。
 稲は収穫され、山からは鐘の音が聞こえる。自然のままの素朴な風情だ。
 年寄りたちは、農事について語り合い、鶏や犬は、騒ぎ立てたりしない。
 子どもたちは、家の周りで遊び、みかんの香りが漂っている。























[47] 参加者  岳城 


  冬日吟行        

路邊廣野映朝陽   路辺の広野 朝陽に映え

寛緩清流是我郷   寛緩たる清流 是れ我が郷

名句無為更漫歩   名句 為す無く 更に漫歩

蕉翁憧憬苦吟長   蕉翁への憧憬 苦吟 長し

          (上平声「一東」の押韻)


「寛緩」: 緩やかな
「蕉翁」: 松尾芭蕉
「憧憬」: 憧れる